多少設定が変わっているところもあるかもしれません。
やっとスカーを出せたけど、少しです、何だかキンブリーへの愛が、マシマシになってきたわ
キンブリーの話を最初から疑っている訳ではない、半信半疑だ、信じろといわれても素直にはという気持ちがあった、だが、こんな田舎まで来たということは、もしかして本当の事を言っているのかと思ってしまう自分がいた。
「ところで、どこまで着いてくるつもりだ」
「おや、お茶の一杯ぐらい、御馳走してくれないんですか」
この男は家までついて来るつもりか、内心呆れた、だが、そんな自分の気持ちなどお構いなくといわんばかりに相手は肩を竦めてにっこりと笑った。
「何か都合の悪い事でもあるんですか」
少し迷ったが、患者だと医者は短く呟いた。
「怖がらせたくないんだよ」
「怖い、この私がですか、そんな事を言われるとは正直、傷つきますよ」
普段からにこにこと笑い、一見、人当たりが良さそうに見える、だが、この男の笑顔は見せかけだけど、他人に本心は見せない男だと思っていた。
すると、そんな自分の胸の内を見透かすように男は言った。
「変わりますよ、先生、監獄、逃亡、命のやりとりが長く続けば、私みたいな人間でも、もし、人並みの暮らし、生活がしたいなんて言ったら笑いますか、先生、この私が、そんな事を思っているなんて」
笑い飛ばすより、信じられるかと言いたいくらいだ、軍を辞めたというのは本当だろう、組織や仲間というものが、この男にはあっていなかったのか、もし、枷、重荷の様に感じていたならあり得るかもしれない。
彼女を見ても、深く詮索はしないかもしれない、そうだ、新しく雇った助手だと誤魔化せばいいと思っていた、ところが。
家に着き、ドアを開けようとした自分をキンブリーの手が制した、どうしたんだと言いかけたが、自分を見る視線が違う。
「患者がいると言いましたね、先生」
ドアを開けようとする男の手が静かに動いた。
家の中は静かだ、いや、静かすぎるといったほうがいいだろう。
診療所、奥の部屋に彼女の姿はない事に驚いた、出かけている、いや、もしかして出て行ったのか、そんな素振りはなかった、出かける時も留守番してますからと言っていたではないか。
このとき何かを踏んだ、かさりと言う音にマルコは視線を落とした。
花が床に落ちていた、どうして、いや、部屋に飾ろうと今朝、言っていなかったか、外に咲いている花だが、花だけではない、床が濡れている、花瓶代わりの皿が割れている、欠片が散らばっていた。
「これ、何だと思います」
キンブリーが指さした床の一部、そして、これはと言葉を続けた。
「かすかに臭いがします、人の血のような」
「久しぶりですね、先生の家に行くの」
少女の言葉に隣を歩く男は頷いた、肌の色は褐色で顔面には傷があり、体もかなり大きいので一見、怖い人に思われがちだ、だがリンといるときは優しい表情も見せる、可愛い、小さい生き物が好きなのだ、勿論、彼女の肩に、いつも乗っているパンダのシャオメイもだ。
突然、肩に乗っているパンダのシャオメイがリンの頬をちょんちょんと突いた。
あれを見てと言わんばかりの仕草に少女も気づいた。
リンは隣の男の袖を引っ張っぱると小声で呟いた。
おかしくないですかと。
探しに行きましょうとキンブリーが言った。
「聞きたい事が色々とあるんです、後でね、ただ、これだけは聞かせて下さい、先生、患者と言いましたね、女性ですか」
女性、何か引っかかる様な言い方だ、意味があるのだろうかと思う自分に子供の事ですがと、キンブリーは医師の顔を見た。
「父親はホムンルクス、でも相手の女性は人間です、普通のなんです、問題は、そこなんですよ、先生」
背中の重みを感じながら、女が眠っていることに男は安心した。
今のうちに、ここから遠くへ行こう、誰も邪魔しない場所に。
追いつけない遠いところに、この当たりに自分以外の気配、ホムンルクスは感じられない。
だが、油断はできない、空気や気配から察した者達が追いかけてくるかもしれないからだ。
ようやく夢が叶う、やっとなれるのだ、人に。
自分は人間になれる、その為に必要なのだ、イシ、石が、賢者の石が。
「ちょっと、待って下さい」
男は突然、目の前に現れた少女の声に驚いた、いつの間に。
だが、一人だけではない男もいる、自分と同じくらいの体の大きさだ、嫌だなと思ったのは男の視線だ、だが、子供、少女を自分を見る目が。
これは怪しんでいる、そうだ、男は一歩、一歩と後ずさりした。
(邪魔をするなら、殺す、そう、消せばいいんだ)
苛立ちと不快な感情が、男の体を満たし始めた。