彼は試験に合格しなかった、でも才能はという感じで含みを持たせています。
少しシリアスになってしまった、ぎゃぐっぽくしたかったのに
でもスカーが出せたので良かったことにしよう
「先生、乗って下さい、すぐに追いついてみせますよ」
ジープなら早いだろう、だが、キンブリーの口調は確実に追いつける、遠くに行っていないと確信している様だ、何故、そんな事が言えるのか不思議だった。
「ショウ・タッカーという男の名前を聞いた事はありますか」
合成獣の権威として有名な男でした、自分の妻と子供を実験台に使ったんですと笑いながら言葉を続けた、その言葉にマルコは息苦しさを覚えた。
「実は、その男の資料にホムンクルスの事についての記述がありまして」
合成獣、キメラを作るほどの知識をもって居るとんれば、その男もかなりのものだろう、だが、試験には合格していないんですよとキンブリーはいう。
「その資料とやらは見つかったのか」
「実はホムンルクスですが」
話を変えられたとマルコは思った、聞いても答えないだろう、資料派と聞くと、それも言葉を濁す、資料は
(軍が保管していたが、誰かが持ち出したのかもしれない)
試験に受からなかったというが、知識と材料、そして可能な施設があれば。
(この男、どこまで、いや、関わっているのか)
引っかかるのはキメラを作った錬金術師が今どうしているのかだ。
死んだのか、それとも軍が処理したのか。
目の前の男は大柄な体格をしていながら動きが速い、子供もだ、まさか、これほどとは思わなかった、油断できない、負けるわけにはいかない。
それに少女は自分が背負っていた女を見て言った、あなた人攫いですねと、だから逃げようと思ったのだ、この二人は自分を怪しいと思っている。
スカーは自分の蹴りと突きが、いとも簡単に跳ね返された事に驚いた、自分の攻撃が簡単に避けられる、いや、互角に持ち込まれる。
もどかしさを感じずにはいられない。
(起きて、早く)
耳元で誰かが呼びかけている、休みじゃない、もう少し寝かせてと言いたかった。
まるで急かす様な声につられて薄く目を開ける、わずかに見えたのはドア、大きな扉だ。
わずかに開いた、そこから聞こえてくるのは電車の音、アナウンス、あの扉の向こうは自分の世界だ。
帰らなければ、自分は、そう留守番を預かっているんだから、早く、帰らないと、そう思って目を開けた。
目を凝らしているとはっきりと見えてきた。
往診に出かけたはずの、どうして、何故、ここにいるのかと疑問が浮かんだが、自分の近くに立っている男に気づいた、一緒に来るんだと自分を連れ出そうとした男だ。
男の太い腕にしがみつくようにして止めようとしたが、あまりにも自分は非力だ、止めることができない。
自分に逆らおうとする背中の女動きに男は苛立ちを覚えた体をゆすり、女を地面に落とすと、その腕を掴んだ。
マルコが思わず叫んだのは掴まれた女の手の異変に気づいたからだ。
(折れた)
女の顔、その表情に早く助けなければと気持ちが焦る、だがそんな自分に。
「先生、ここから動かないで下さい」
キンブリーは手を合わせた。
(こんなところで使いたくはないが)
ポケットから出した赤い石、まがい物といってもいい、だが、今、使わなければまずい事になるのでは、それは予感だった、だが、口に含もうとした瞬間、赤い石は粉々に砕けた。
それは、あまりにも小さな振動だったので気づかなかった、誰もだ。
空気が震えるような不思議な音は少しずつ大きくなっていく、まるで何かを飲み込む、いや、何かを吐き出すかのように。