この数日、色々なことがありすぎた、だが、悩んだところでどうしようもない、自分はできる事をやるだけだ、気になるのは死んだと思った連中が生きていたことだ。
となれば軍が出てくる可能性もあるだろう、考えたところで仕方ない、そう思ってベッドに入ろうとするとノックの音がした。
「先生、起きてますか」
何かあったのか、女の声にマルコは慌ててドアを開けた。
「どうしたんだね」
「あのー、先生の部屋で寝てもいいですか」
何を言っているのか、すぐにはわからなかった。
「お邪魔します、先生」
突然、女の後ろから顔を覗かせたのはメイだ、そして小さなパンダが、ちょこちょこと部屋に入ってきた。
板間にシーツを敷いて二人と一匹は座り込む。
「いや、風邪でも引いたら」
自分の言葉など耳も貸さず、ごろんと寝転がった、ここまでされたら、出て行かせるのは無理かもしれないとマルコは思った。
「大丈夫ですよ、私、体術と錬成が得意なんです、それに先生は元、錬金術師です、心配しないで下さい」
メイの言葉に女は、うんうんと何度も頷く、その様子にマルコはああそうかと納得する。
(不安、そうだな、当然だ)
あんなことがあったのだ、明日、起きたらベッドを用意しよう、それから服だ、キンブリーが用意したのは、趣味が悪いとはいわない、だが、体の線と胸が強調された、あれは正直、目のやり場に困る。
「スカーさんはお坊さんなのね、お寺で修行とかするの」
「寺はなくなったんです」
「ターミネーターの人みたい、あの人」
「なんですか、それ」
「映画に出てくる正義というより、悪役っぽい人だね、人間じゃないのよ、サイボーグというか、死にかけても何度でも蘇ってくるの、アイルビー、バックって言いながらね」
話を聞いていたメイはスカーさん、そのまんまだと思った、悪役っぽいというのもちょっと、いや、ぴったりだ。
「怖い顔をしているんですけど、優しい人なんです」
「優しいか、そうかあ」
会話が突然、途切れた。
「どうしたの、シャオ」
小さなパンダが、とことことと窓に向かって歩き出した、何かあったのだろうかとメイも窓の外を覗き込む。。
「あっ、雪」
「えっ、本当、ここって、雪が降るの」
女も起き出して窓に張り付くように外を見た。
「本当だ、積もるかな」
「朝になったら一面、雪です」
「そんなに、凄いなあ、本当に、日本じゃないんだ、ここは」
ニホン、国の名前か、それがどこにあるのかと自分にはわからない、だが、遠いのだろうという事は想像できた。
「そろそろ寝ましょうか」
女の言葉にメイがはいと頷く、だが。
「あれっ、車、誰か来たみたいです」
リンの言葉にマルコはベッドから体を起こした、同時にキンブリーの言葉を思い出す、もう来たのか、真夜中過ぎの来訪など、訪問客ほど傍迷惑なモノはない。
ロイ・マスタングの訪問に嫌みの一つも言いたい気分になった。
尋ねてくるのは構わないが、何もこんな時間にと思ってしまう、普通に考えて常識がないと思わないのかと文句の一つも言いたくなる。
「先生、こちらにも事情があってね、すまない」
すまないす、便利な言葉だ、それで謝ったつもりなのだから、軍人特有のあれだと思っているとドアが開き、女がコーヒーを運んで来た。
「先生、こちらの女性は」
すると、マルコが口を開くより先に助手ですと女が、はっきりと答えた。
「助手、ですか」
マスタングは、にっこりと笑った。
「どちらのご出身でしょう」
「シン国です」
「ほう、ですが、目の色がらして、そうは」
「父がイシュバールの出身なんです」
「珍しいですね、しかし」
女は、ちらりとマルコを見ると、すっと目をそらした。
「では母上はシン国の方ですか」
「父は複数の女性がいて、誰が母親とは私も知らないのです」
(うん、我ながらうまい言い訳だ)
「なるほど、貴方には女優の才能がおありのようだ」
部屋の中は、しんとなった、完全に嘘だとばれていると女は思った。
「実は、ここ最近、ホムンクルス、ご存じですか、人造人間なんですが、増えている、その件に関与している人間がいるという事が最近わかったんです」
人間、関与、男の目が気になる、そんな事を思うのは気のせいだろうか。
「あなたを保護したい、軍の安全な場所で」
保護、安全な場所、それ、もしかして牢屋の中とか、軍関係、小説や映画等で、よくあるパターンだ、正直、遠慮したいと女は思った。
「大佐、詳しい説明もなしに」
口を挟んだのはマルコだ、だが、それを制するようにマスタングは言葉を続けた。
「死んだと思った、あいつらが現れた、原因は正直、分からない、しかも関わっている人間杯、忽然と、ある日、現れているんです、どこから来たのか分からない」
「関係しているというのか、彼女が」
「詳しい事は、まだ、しかし」
そのとき、ドアが開き、男が入って来た。
「後手、後手ですね」
肩をわずかに竦めて、仕方のない人だと口元に笑みを浮かべてキンブリーは女の隣にぴったりと寄り添うように立った。
「彼女を連れて行くというなら、まずは、私を通して頂かないといけませんねえ」
間違えて同じファイル、話をアップしていました、すみません。
夜中の更新だったので寝ぼけていたのか。