※この作品はR-18です。

麻雀天使VS怨みの種付けおじさん~メスの本能、わからせます~   作:路地裏リンゴ

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今回はエロ描写無しの繋ぎ回です。


原村和編「囮は籠の鳥」

痛む足を引きずりながら自宅に戻ると、和は自室のベッドに倒れ込んだ。時間にすれば数分間の体験だったが、それが和の心身に与えた影響はあまりに大きかった。

和はシーツを強く握り締めながら、過呼吸気味な程の荒い息を漏らす。痛み、屈辱、恐怖、そして快楽。全てがない交ぜになった異様な感覚が和を支配し、体は熱を持ったまま冷めようとはしてくれなかった。

 

それでもどうにか、痺れの残った脳と熱の残った体を動かす。ベッドの上に投げ捨てたリュックを引き寄せると、その中から男の落とした写真を取り出した。

自分を襲った男の物など本来だったら汚らわしくて触りたくもないのだが、彼女は男を追い詰める手掛かりになるかもしれないと思い持ち帰ったのだった。その写真を改めてチェックした和は、ある事実に気付き身震いした。

 

(この写真……何ヶ月にも亘って撮られています)

 

そう。最初に見た時は咲とのツーショットを撮られていたとしか認識していなかったが、服装や背景を記憶と照らし合わせればいつどこで会った時に撮られたものか分かる。

和の優秀な頭脳、特に愛する少女との記憶が強く脳に刻まれていたことが皮肉にも彼女に恐怖の気付きを与えた。

思わずヒッ、と声を漏らしながら写真を払いのける。写真はヒラヒラと舞い、裏返しになって床に落ちた。

 

床に落ちた写真、その裏面を横目で見た和は更なる恐怖に襲われることになった。写真の裏面には、マジックで「#72」「#850」などのナンバーが書かれていたのだ。

 

(な、何ですか……あの数字。もし、写真の通し番号だとしたら……落とした写真はほんの一握りで、何百枚も撮られたことになります。最低でも、800枚以上)

 

男が自分と咲をそれだけ長期間執拗に監視していたという事実。そして、その歪んだ欲望をついに直接ぶつけた来たという事実。

それに気付いた和は慌ててスマートフォンを手に取り、男のもう1人の監視対象、標的である咲の元へ電話を掛けた。

 

「……もしもし!?咲さん、今どこですか!?外なら、早くお家に戻ってください!もう帰っているなら、1人で外には出ないで!」

「うん、家だけど……。それにしてもどうしたの和ちゃん、急に」

 

(良かった……あの男は咲さんの所にはまだ行っていないようだし、お家の中なら安全でしょう。しかし、咲さんに不思議がられてしまいました。唐突にこんなことを言ったのだから当然ですが……なんと説明しましょう)

 

正直に言うべきか一瞬考えた後、和は事情を誤魔化すことにした。それは、たとえ強引にでも男に体を触られて汚されたことを愛する、可憐で純粋な少女に知られたくないという気持ちからだった。

 

「驚かせてすみません……。実はこの辺りに不審者が出て、清澄の生徒を狙っているという話を耳にしたものですから、不安になってしまって」

「ああ、そうだったんだ……。心配してくれてありがとう、和ちゃん。しばらくは気を付けるよ。明日からは休みだけど、なるべく出掛けないしどうしてもの時はお父さんに付いて来てもらうことにする。和ちゃんも気を付けて」

「はい……気を付けてくださいね。咲さんにもしものことがあったら本当に、本当に悲しいですから。では」

 

電話を切り、この警告で咲のひとまずの安全が確保出来たことに安心しながらも和はこれから先のことに思案を巡らせた。

 

(警戒すること、1人にならないことである程度は安全になりますが……。やはり根本的な解決の為にはあの男を捕まえなければなりません。でも、どうしたら)

 

男が落とした写真や触れられた制服を調べれば指紋が出てくるし、あの男が前科者であれば警察のデータベースと照合して身元を割り出すことも出来るだろう。

しかしそうでなかった場合、指紋はあまり役に立たない。「怪しい」とされた人物が犯人かを判定する証拠にはなるが、イチから犯人を捜すという使い方には向かない材料なのだから。

それに、男が前科者で身分を特定できたとしてもすぐ逮捕出来るとは限らない。自宅や職場などに立ち寄らず、フラフラと移動された場合には見つけることに時間がかかってしまう。

 

(警察に頼るにしても、すぐ逮捕してもらえるということにはならなそうです……となると、やはり自分で直接会い、捕まえるしかないでしょうか。たとえ危険でも、咲さんに魔の手が及ぶ前に、あの汚らわしい男を)

 

和が、自らの身に危険の及ぶ手段を選択しようとした理由。それは、本当に憎き男を直接捕まえたいという恨みと正義感だけなのだろうか?

男にもう一度会い、あの快楽を味わいたいという欲望は無かったのだろうか?ともあれ、和は男と対峙するという手段を選ぶことにした。

 

しかし、少女である和の身体能力では男にそのまま太刀打ちすることは出来ない。現に、今日は男の蹴りでなんなく転ばされてしまったのだ。

男を捕まえる為に必要となるもの、護身用具を購入しようと和はスマートフォンで通販のサイトを開いた。

 

スタンガン、特殊警棒など様々な武器の中から和が選んだのは催涙スプレーだった。

これなら他のものと違い離れた距離から相手の動きを止めることが出来るし、噴射されるものなのでよけることも難しい。

力で劣る相手に立ち向かうにはうってつけの武器だ。幸い、大手通販サイトなだけあって翌日の夕方には届くようだった。これで、男と対峙する準備は整う。

 

(武器は手に入りました、これで相手の動きを止めてすぐに警察に電話すれば……。あとは、咲さんに手を出される前に私の元に男が来ればいいだけです)

いつの間にか男の襲来を望むような思考になっている和は、ふと昨日見たテレビ番組を思い出した。警察の捜査や取り締まりを特集した、所謂「警察24時」と呼ばれるドキュメンタリー番組である。

普段テレビ番組をあまり見ない和だったが、両親が法律関係者であるせいかその手のドキュメンタリーには興味があり見ることにしていたのだ。

 

その番組の中で「おとり捜査」というものが取り上げられていた。あえて犯罪を行わせ、その現場に潜入して仲間の警官を呼び現行犯逮捕させるという捜査手法である。

 

(あの番組では薬物を売買する組織を摘発する為に、そういったものに興味のありそうな素行の悪い若者の格好をして売人に声をかけさせていしました。そして売買の場所まで付いていった所で仲間の警官を呼んで逮捕という手法です。でも、今回の場合は……)

 

おとり捜査には犯人を引き寄せる為、彼等が声を掛けてきそうな格好をする必要がある。そして、相手が性犯罪者ならば。

(あの男が性的に興奮するような服装、でしょうか。特に、あの男が執拗に揉んでいた胸を強調する服……あの男を悦ばせる為に服を選ぶようで癇に触りますが、手を出そうとしてきた所を撃退するためにはこれしかないです)

 

男を興奮させる服装を選ぶ。「おとり捜査」「直接対峙して捕まえる」そんな言葉を使いながらも、和の思考や行動は男を誘惑する方向に向かっていた。

 

(あの男、許せません。無理矢理胸を触って、あんなものも押し付けて来て……それを、私が悦んでいるような言い方まで。本当に許せません。思い出したくもないですが、闘う為には怒りも必要です。許さない為に思い出して、怒りを刻むんです……ああ、体が熱くなってきました。これが怒り。あの男を倒し、捕まえる為の武器)

 

男に体を触られたことを思い出し、体を熱くする和。それは客観的に見れば、情事を思い出し発情する淫らなメスでしかなかった。

そもそも、麻雀では冷静に、機械的に闘っている和が怒りを武器にしようとしている時点でおかしいのだ。それは、男との情事を思い出す為にこじつけた理屈に過ぎない。

 

何せあの時、情事は“偶然”入った邪魔により中断された。

彼女は与えられた快楽に絶頂という形でケリをつけ、発散することが出来なかったのだから。燻った昂りが体の芯に残ったままなのだから。

 

翌日。夕方、宅配便で受け取った催涙スプレーを鞄に詰め、持っている服の中で最も露出度の高い胸元の大きく開いた白いワンピースを着ると和は家を出た。

 

いつでも催涙スプレーを取り出せるように鞄の口を少し開け、スマートフォンの通話画面を開き「110」の数字を入力し通話ボタンを押せばすぐ警察に通報出来る状態にする。

男と闘う準備を整えたまま、和は男が手を出して来やすい場所--人のあまり来ない裏通りを選び、ゆっくりと歩いていく。30分程歩いた所で、和の後ろから声がした。

 

「和ちゃぁん……昨日の“続き”しようよ。そんなドッスケベな服着てさあ、俺を誘ってるんだろ?」

 

粘っこく熱っぽい、欲望にまみれた声。その声を聞き、和は振り向きざま催涙スプレーを噴射した。

それが顔に浴びせられ、男はもがき苦しみ身動きが取れなくなる……筈だった。

 

「そんな…どうして」振り返った和が、見た男の姿。それは、フルフェイスのヘルメットで完全に顔を防備したものだった。

用意した武器が役に立たなかったことに驚き、絶望しながらも110番で救助を求めることだけはしようと和は通話ボタンをタップした。

 

しかし、そんな和の行動を読んでいたかのように男は和に更なる絶望を与える言葉を発した。

「ああ、電話なら出来ねえよ……俺が持ってる電波妨害装置、携帯ジャマーがあるからな。俺が近くに入る以上、携帯は役に立たねえよ。そしてこっちには……こんな武器もある」

 

男はスーツの上着の内側から、黒い機械の先端に長い金属の棒が付いたものを取り出した。バチバチ、と音を立てながらそれを和の目の前に突き付ける。

 

「いいだろ?このスタンガン。リーチが長くてさあ、電流も強いんだよ……まあ、一般には売ってねえ特殊開発のモノなんだけどな。諦めなよ和ちゃん、君の“おとり捜査”は失敗に終わったんだ……じゃあ、これでちょっと眠ってもらうかんな。ゆっくり愉しめる場所に移動するためによォ」

 

まるで、和が今日やろうとしたことを読んでいたかのような男の言葉を聞き、和は驚きと絶望感に襲われ逃げることも抵抗できないまま、スタンガンを首に押し付けられる。

 

強い刺激と共にブラックアウトする和の意識の中で、咲との思い出がフラッシュバックしていた。

それは、走馬燈――気絶させられただけで死ぬことは無いのだが、これから純潔を奪われて彼女との愛を蹂み躙られ、「尊く美しい純愛」が終わるという意味での――死を目前とした人間の見る、走馬燈だった。




男の使う道具は『悪の経典』リスペクト。次回!ついに連れ出した和ちゃんの純潔奪って完堕ちさせちゃうゾ~。
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