※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D~情念の炎~(完全版)   作:ドミトリ

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 ついに尊とレイナーレはコカビエルと相まみえる。共通の敵を抱えつつも反目する2人とグレモリー眷属たち。

 グレモリー眷属を圧倒するコカビエルに尊とレイナーレは【二プルブラスト】で勝負をかけるが…そしてヴァーリと鬼崎、二人の思惑は…?


第14話・至高の彼女

 俺はディヴェリクス。尊の神器【情念の炎(フレイム・パッションズ)】に宿るドラゴンで【情念の龍神(パッションズ・ドラゴン)】の異名を持つ。そして俺は昔からの知り合いと話している。

 

 その相手は俺と同じドラゴン……今はヴァーリ・ルシファーに宿る【白い龍(バニシング・ドラゴン)】の異名を持つ【アルビオン】だ。

 

 「起きていたか、黒いの」

 「おう、この前は挨拶程度しか出来なかったが、白いの、あんたも元気そうでなによりだ」

 

「ああ、だが黒いの、お前もずいぶんと敵意が低いじゃないか?」

「それを言うなら白いの、あんたも同じじゃねえか」

 

「そうだな。お互い、戦い以外の興味ある対象が出来たって事か」

「ああ、そういう事だ。しかし、あんたとは違ってあの赤いの……ドライグの奴は違ってな。あいつの宿主と俺の宿主がどうにもならねえくらいに仲が悪くてな」

 

「ああ……そうだったな。この前、見せてもらった。お前も災難だな」

「全くだぜ……赤いのの宿主の小僧が、俺の相棒の彼女を憎みきってやがるからな。白いの、あんたの宿主は女に全然興味ねえからその点は楽だな」

 

「あいつもその気になればいくらでも女なんか出来るんだがな。しかし興味深い。赤いのの宿主は多情で多くの女を愛するタイプ。黒いの、お前の宿主は一人の女をどこまでも愛するタイプ。そして俺の宿主は女にまるで興味なしとは……」

「ああ、よくもまあ、ここまではっきりと分かれたもんだぜ。だが、それが面白れえじゃねえか!」

 

「ああ、そうだな。まあ、お互い楽しもうか」

「そうだな。これから俺たちの宿主はコカビエルとご対面。そして赤いのともな。三尾のドラゴンが久しぶりに一堂に会するってわけだ。ワクワクするじゃねえか」

 

 俺とアルビオンは、主について語り合った。全くミコト、お前といると俺は退屈しねえぜ。

 

 

****************************************************************

 

 

 僕は祐斗たちを追って全速力で駆ける。彼らの姿は見えないが、どちらに向かったかは大体検討がつく。

 

 だが、かなり走ったところで、僕は自分の方に向かって駆けて来る人影を見た。そしてそれが誰であるかを僕はすぐに悟る。

 

「祐斗!!」

「!!? 陽太郎くん!! どうしてここへ!!?」

 

「久しぶりに駒王町に来たところに、イッセーに会って彼に頼まれたのさ。祐斗、君の仇討ちを……君の本懐を遂げさせるために力を貸してやってくれってね。でも、部外者の僕がしゃしゃり出ると、教会から遣わされたあの二人にいらぬ疑いを抱かせるんじゃないかと思って、君たちとは別行動でフリードを探していたんだ。そうしたら祐斗、君があの二人と共にフリードたちを追っていくのを偶然、見つけてね。追って来たってわけさ」

「そうか、イッセーくんが……ゴホッ……ゴホゴホ……」

 

 祐斗は激しく咳き込む。体に目立った傷はないが、死に物狂いで駆けて来たのが分かる。

 

「一体、何があった?」

「バルパーとフリードを追って、僕たちは彼らのアジトまで攻め入った。僕にとってバルパーは絶対に許せない仇敵だ。だから、後先考えずに突っ込んだ。だけど、そこにいたコカビエルはさすがに堕天使の大幹部……これまで僕が戦った相手とはケタ違いの強さだった……紫藤さんは倒され、僕とゼノヴィアは命からがら逃げるはめとなった……」

 「そうか……祐斗、話してくれないか? 君がそれほどに聖剣を憎む訳を……君を苦しめた【聖剣計画】がどんなものだったかを……」

 

 僕は思わずそう口にしていた。

 

 「陽太郎くん……」

 祐斗は僕をじっと見つめて、そして言った。

 

「うん……陽太郎くんはあの初めて会った時に僕に露骨に疑われても怒らなかった……あの憎い國原尊に倒された僕を救ってくれた……あのイッセーくんを苦しめた憎い堕天使に僕たちの気持ちを代弁してはっきりと言ってくれた……そして今回も僕たちを助けようとやって来てくれた……そんな陽太郎くんになら話すよ……僕の過去を……」

 

 そう言った祐斗の瞳は透き通るように澄んでいた。僕は思わず胸がズキッ! と痛むのを感じる。

 な、何を僕は……! いや、これはたまたま痛くなっただけだ! 僕は自分にそう言い聞かせる。

 

 そして祐斗は話した。聖剣計画の研究所での来る日も来る日も辛く非人道的な実験に苛まれた毎日。自由を奪われ、人として扱われず、それでも特別な存在に……聖剣を扱える存在になれると信じてひたすら耐えた日々を。そしてその挙句の果てに【聖剣に適応できなかった者】として毒ガスを浴びせられて【処分】された事を……

 

 共に苦難の日々を過ごした仲間たちを殺され、それでも研究施設から逃げおおせた祐斗は、毒ガスで身を蝕まれて死ぬ寸前でリアス部長に出会い、助けられて彼女の眷属となって現在に至っているのだ。

 

 「陽太郎くん。僕は同志たちの無念を晴らしたい。いや、彼らの死を無駄にしたくないんだ。僕は彼らの分も生きて、エクスカリバーよりも強いと証明しなくてはいけないんだ」

 祐斗はそう、強い意思の籠った目で僕を見つめて言った。

 

 「分かったよ。祐斗、君の想いの強さを。だから、僕は君に力を貸したい。いや、貸させてくれ」

 僕はそう言いつつ、自分に言い聞かせていた。これはあくまでも自分の目的を達成するための手段なのだと、祐斗の事は、そして彼を含めたグレモリー眷属たちはその目的のために利用しているだけなのだと……

 

「ありがとう。コカビエルたちはもうすぐ駒王学園を襲う。だから僕はあそこへ戻らなくてはいけない。陽太郎くん、君が力を貸してくれるならとても心強い」

「もちろんだよ。同行させてもらうよ」

「本当にありがとう。でも、陽太郎くん、一つだけ約束して欲しいんだ」

「何だい?」

 

「エクスカリバーを持ったフリードとの戦い。これだけは僕に任せて欲しい。陽太郎くん、君は僕など比較にならないほどに強い。君の力なら聖剣を持っていようとフリードなど簡単に倒せるだろう。でも、それではダメなんだ! 僕自身が彼に勝ってエクスカリバーを砕かなければ! 頼む! 陽太郎くん、僕が決着をつけるまでは手を出さないと約束して欲しい」

 

 祐斗はそう懇願する。僕はその彼の肩にポンと手を置いて、そして伝える。

 「分かったよ。約束しよう」

 

 すると祐斗は微笑み、僕に手を差し出す。そして僕と祐斗は握手をしてうなずき合い、駒王学園に向かって駆け出した……

 

 

****************************************************************

 

 

 僕たちは駒王学園を目指して夜の空を飛ぶ。もっとも、飛行能力のない僕はレイナーレに抱き抱えられてだが。いつもの卑猥な黒のボンデージ姿になった愛しい彼女の張り詰めた大きな乳房の感触を背に感じながら。そしてレックスは地面を猛スピードで駆けてくる。その速さは僕たちが空を飛ぶ速さに勝るとも劣らない!

 

 「っていうかあのケルベロス、お前たちを追い抜かないように加減してるぜ」

 ディヴェリクスがそう言った。さすがはその敏捷さで知られるケルベロスのレックス……! 心強い!

 

 そして僕たちは駒王学園の様子を見渡せるところまで来た。

 「あれは……!! ミコト、様子が分かる?」

 

 レイナーレに聞かれて僕は前方を見つめる。

 「うん! 分かるよ!」

 

 以前の僕ならばとてもこの距離と暗さなら何も確認出来なかったに違いない。でも、今は視線の先にある人物の姿も、その動きもすべてがはっきりと確認出来る! 

 

 これがあのアザゼル様のご命令を受けて行った、空間認識能力を高める修行の成果……! 

 僕はこの緊迫した場において大きな喜びを感じた。

 

 10枚もの黒の翼を広げた男……それはまぎれもなくあの写真で見たコカビエルだ! 彼が校庭に降り立っている。そしてその周囲を兵藤にグレモリー先輩、姫島先輩、搭城、木場のグレモリー眷属の面々とゼノヴィアさんが取り巻いている。そしてもう一人……!

 

 あれは……! 鬼崎!?

 そう、それはあの鬼崎陽太郎だった。

 

 そして木場の近くに、血まみれになって倒れている人物が2人いる。

 「あれは……フリードにバルパー・ガリレイ!」

 

 フリードの生死は分からないが、バルパー・ガリレイの方は体に大きな穴が空いている。完全に絶命しているようだ。

 

 「あれは……木場くんが!?」

 僕の言葉にレイナーレは首を振る。

 

「いいえ、フリードの方はそうかもしれないけれど、バルパーの方はあれは明らかに光槍によるものよ。つまり、殺したのはコカビエルという事……」

「コカビエルが……」

 

 たとえ仲間であっても平気で殺す。利用価値がなくなれば平然と切り捨てる。それが彼のやり方という事か……

 

 そのコカビエルはその体から強大なオーラを漂わせている。その圧倒的な魔力は離れた場所にいる僕たちも威圧されるほどだ。

 

 そしてコカビエルが笑みを浮かべつつ何かを言い、それに対してグレモリー先輩が怒鳴る。何を言っているのかここからでは聞こえないが、グレモリー先輩が相当激高しているのが分かる。

 

 

 レイナーレがそれを聞き取って、僕に説明してくれる。

 

 「コカビエルが、【限界まで赤龍帝の力を上げて、誰かに譲渡しろ】と言ったのよ」

 「それは……兵藤くんは自分の力を仲間に与えて、仲間の攻撃力を強化する事が出来るという事?」

 「そういう事になるわね……」

 

 兵藤はそんな事まで出来るようになっているのか!?

 

 僕たちはそのまま様子をうかがう。やがて兵藤が【赤龍帝の籠手】が付いた右腕を上げる。すると彼の神器の宝玉から赤い閃光がほとばしる。

 

 そのまま数分間、そこにいる誰もが動かなかった。グレモリー眷属の皆が決死の表情を浮かべているのに対し、コカビエルは平然とした様子でそれを見ている。

 

 やがて兵藤の籠手がより眩く輝いた。それを見てグレモリー先輩が兵藤に歩み寄り、2人は手を握り合う。兵藤の宝玉からあふれる力がグレモリー先輩に乗り移り、彼女の体を紅い魔力のオーラが包み込む。

 

 絶大な魔力がグレモリー先輩の手に宿る。もし、あれが僕たちの体を直撃すれば、僕たちは間違いなく塵一つ残さず消し飛ばされるだろう。

 

 レイナーレは気丈にそれを見つめているが、彼女の腕はかすかにふるえている。堕天使界での訓練を通じて自信と誇りを取り戻し、強めてきた彼女だが、あの夜、教会で追い詰められた時のトラウマが、いまだ心の奥底に残っているのだろう。

 

 しかし、その凄まじい魔力を向けられている当のコカビエルは嬉しそうに笑っている。その彼の異形の顔には狂気に彩られた表情が浮かんでいる。アザゼル様が仰った通り、彼は戦う事に心から喜びを感じているのだ。

 

 グレモリー先輩の手から、最大級の魔力の塊が滅びの力を帯びて撃ち出された。

 ゴォォォォオオオオオオンッツ!!!

 

 地の底まで響き渡るような振動は離れている僕たちにも伝わり、強大な一撃がコカビエルに向かっていく。それに対してコカビエルは両手を前に突き出して迎え撃つ。彼の両手に堕天使のオーラの源である光力が集まっていく。

 

 ドウゥウゥウゥゥゥゥンッツ!!!

 コカビエルはグレモリー先輩が放った最大の一撃を真正面から受ける。グレモリー先輩の魔力は徐々に勢いを殺され、形も崩れていく。あの魔力でもコカビエルは防げるのか!

 

 コカビエルも無傷ではなく、身にまとう黒いロープの端々が破れ、受け止める手からも血が噴き出している。しかし、魔力の塊は徐々に縮小していく。

 

 グレモリー先輩は疲弊したようで肩で激しく息をしている。あれほどの一撃、連発は無理だろう。しかも魔力の消費量からいっても次は撃てないのでは……

 

 姫島先輩がグレモリー先輩の魔力を受け止めているコカビエルに雷撃を放つが、しかしその雷はコカビエルの黒い翼の羽ばたき一つで消滅する。

 

 コカビエルが姫島先輩に何かを叫び、それに姫島先輩は激高した様子で叫ぶと雷を連発するが、全てコカビエルの翼がそれを薙ぎ払う。

 

 「今、コカビエルは彼女に【バラキエルの娘】と叫んだわ。そしてそれに彼女は【私とあの者を一緒にするな!】と叫んだの……」

 「そうなんだね……」

 

 レイナーレの言葉に、僕は姫島先輩たちがレイナーレの引き渡しを求めて堕天使本部に押しかけて来た時に、アザゼル様からバラキエル様の事を触れられた時に彼女が激高した様子を思い起こす。

 姫島先輩がそこまで実の父であるバラキエル様を憎み嫌う理由は何だろうか……?

 

 そしてコカビエルはグレモリー先輩の魔力を完全に消滅させるとグレモリー先輩と何か怒鳴り合う。というか、グレモリー先輩が激高し、コカビエルはそんな彼女を挑発して楽しんでいる様子だ。

 

 その時、ゼノヴィアさんと木場がうなずき合い、二人はコカビエルに向かって剣を構える。するとディヴェリクスが叫んだ。

 

 「おい! あの騎士の小僧が持っている剣! ありゃ【聖魔剣】だぜ!」

 「【聖魔剣】って!?」

 「聖と魔の両方の特性を有する剣だ。それを持っているって事は……あの小僧、神器の禁手化を果たしたって事か」

 「【禁手化】って!?」

 「神器は所有者の想いを糧に変化と進化をしながら強くなっていくんだ。だが、それとは別の領域があるんだ。所有者の想いが、願いが、この世界に漂う【流れ】に逆らうほどの劇的な転じ方をした時、神器は至る。それが【禁手化】だ」

 

 「そ、それじゃあ、彼は……」

 ディヴェリクスの説明に僕は思わず木場を見つめる。

 

「ああ、あの小僧はこれまでよりさらに強くなった。相棒、お前もうかうかしちゃいられねえぜ!」

「……!!!」

 

 レイナーレを憎悪して彼女の美しい体に平気で斬りつけてケガを負わせ、彼女を殺そうとする木場……その彼がますますパワーアップしたという事実に僕は思わず冷や汗が流れるのを感じた。

 

「そして、あの聖剣使いの娘が持っている剣、あれは【デュランダル】だ」

「【デュランダル】!」

 

 僕はまた驚く。【デュランダル】といえば中世フランスの叙事詩『ロ―ランの歌』に登場する英雄ローランが用いた聖剣! それをゼノヴィアさんは使いこなしているのか!

 

 驚きの連続の僕。とはいえ、今は彼らとコカビエルとの戦いの行方の方が重要だ。僕は再びそちらに目を向ける。

 

 ダッ! と同時にコカビエルに斬りかかるゼノヴィアさんと木場。だが、コカビエルは光の剣を創り出すとそれでゼノヴィアさんの剣を受け止め、彼女の体を浮かせて腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。しかしゼノヴィアさんは空中で体勢を立て直すと地面にうまく着地し、再びコカビエルに斬りかかる。そして木場も同時に斬りかかる。だが、コカビエルはもう片方の手にも光の剣を創り出し、ゼノヴィアさんと木場の攻撃を共に難なくいなす。

 

 その時、塔城がコカビエルの背後から拳を撃ち込もうとしたが、その瞬間、それまで黙って見ていた鬼崎が後ろから塔城の体を捕まえて後ろへ飛びのいた。その次の瞬間、コカビエルの黒い翼が鋭い刃物と化した。もし、あのまま塔城が突っ込んでいたら体を切り刻まれていたに違いない。それを悟った塔城は自分を離した鬼崎に恥ずかしさからか、顔を赤く染めつつお礼を言った様子だ。

 

 思わずその様子を見つめる木場。その瞬間、コカビエルの光の剣が彼を襲い、それを受け止めた彼の剣にひびが入る。そして次の瞬間、ゼノヴィアさんと木場は吹っ飛ばされた。二人はなんとか体勢を立て直すも二人は相当疲労した様子で肩で息をしている。

 

 凄い……! レイナーレが言った通りだ。堕天使の大幹部とはこれほどまでに強いのか……! あれほどの力を持つグレモリー眷属たちが完全に手玉に取られている。

 

 だが、木場は再び剣を握りなおしてコカビエルに向かう。その剣の先ほどのひびはもう消えていた。なるほど、あれが【聖魔剣】というものか……!

 

 木場が何か叫ぶと、コカビエルの周りに多くの聖魔剣が出現して彼を取り囲む。だが、コカビエルは笑うと、彼の10の黒き翼が全ていくつも重ねられた剣のようになって、周囲の聖魔剣を打ち砕く。

 

 それを見た木場は今度は正面からコカビエルに斬りかかる。だが、コカビエルは彼の聖魔剣を右手の人差し指と中指だけで受け止める。すると木場は左手に新たな聖魔剣を創り出し、二刀目をふるうが、それもコカビエルは左手の指二本でなんなく受け止める。

 

 だが木場は口を開けて口周りに聖魔剣を創り出すと、その柄を歯で押さえ、勢いよく首を振った。

 

 さすがのコカビエルも虚を突かれたようで、彼は押さえていた聖魔剣を解き放ち、後ろへ退いた。そのコカビエルの頬には横一文字の薄い切り口。血が少しだけ滲み出している。恐ろしいまでの木場の執念……! 僕はそれに驚くと同時にこんな男の憎しみを買っている事に恐怖を覚える。レイナーレも気丈に振る舞っているが、その瞳には恐怖の色が浮かんでいる。

 

 兵藤といい、この木場といい、なんて凄まじい執念なんだ!!

 

 さしものコカビエルも苦笑を浮かべたと思うと、次の瞬間に彼は大笑いを始めた。そして何かを叫んだ。するとその瞬間!

 

 それを聞いたグレモリー眷属たち全員が愕然とした表情を浮かべ、ゼノヴィアさんは放心状態になってその場にくずおれた。いや、僕を抱いているレイナーレも、そしてミッテルトちゃんも驚愕の表情を浮かべている。

 

「そ、そんな……!」

「し、信じられないっす……!」

 

 「レイナーレ、コカビエルは一体、何て言ったの?」

 彼女たちのただならぬ様子に僕はそう声をかける。だが、レイナーレが答える前にヴァーリさんが代わりに言った。

 

 「【神は先の天使・堕天使・悪魔の三つ巴の戦いで四大魔王と共に死んだ】と言ったのさ」

 な、何だって!! 

 

 その言葉に僕も驚く。そうならばかつては天使として神に仕える身であったはずのレイナーレやミッテルトちゃんが驚愕するのは当然だ。ましてや現役の神に仕える身であるゼノヴィアさんがあそこまで狼狽するのも理解できる。神に仕える事を使命として生きて来た存在である彼女からすれば、これまで持ってきた生きがいを失った訳なのだから……

 

 「まあ、俺は以前から知っていたがな……」

 ヴァーリさんはつぶやくように言った。

 

 「それじゃあ、アザゼル様はこの件をご存じなのね……?」

 レイナーレの問いにヴァーリさんはうなずく。

 

「もちろんだ。アザゼルにミカエル、そしてサーゼクス、三大勢力のトップとそれに近いごく一部の者は知っている。だが、他に漏らす訳にはいかなかった。人間の中の多くがそんな事を知ったら心の均衡を保てなくなってしまうからな。堕天使や悪魔にも知らせるわけにはいかない。どこから神が死んだと人間にバレるか分からなかったからな」

 

 ヴァーリさんはそう淡々と話した後、改まった様子で言った

 「さあ、俺たちもあそこへ行くぞ。そろそろ決着をつけるべき時だからな。俺としてもぐずぐずしている訳にはいかないからな」

 「はい……」

 

 僕たちは緊張と恐怖を感じつつも返事をする。そして僕たちは駒王学園の屋上へと降り立つ。地面を駆けて追って来たレックスもそれを見るとバッ! と凄まじい跳躍力で屋上まで飛び上がって僕たちのすぐそばに着地する。僕はそれを確認するとレックスの首輪の魔力を緩める。いつ戦闘になっても彼が力を発揮できるようにするために。するとレックスは元の三つ首の姿へと戻り、体も僕たちを乗せて走れるほどに大きくなる。

 

 すると僕たちに気付いた兵藤たちグレモリー眷属の面々が一斉に僕たちを見つめる。

 

「なっ!! レイナーレっ!! 國原っ!! てめえら何しに来やがったっ!! 俺たちがコカビエルにやられるのを期待して高みの見物にでも来やがったかっ!!」

 

 兵藤が例によって、憎悪に満ちた表情で僕とレイナーレを睨みつける。その他のグレモリー眷属の面々も僕たちを見ていたが、好意的でないのは確かだ。一方、ゼノヴィアさんは驚いた表情でつぶやく。

 「ミコト……! レイナーレ……!」

 

 そしてコカビエルも僕たちの方を見上げた。あのギラギラと赤く光る目に、耳まで裂け、鋭い牙が並んだ大きな口の恐ろしい風貌で。

 

 「ほう……お前が例のご粗末な事件を起こした下っ端のレイナーレか」

 コカビエルはレイナーレを侮蔑した態度で見つめた後、今度は僕を品定めするように見つめる。

 

 「そしてお前が神器【情念の炎】……黒い龍……【情念の龍神】を宿した小僧か」

 

 さらにコカビエルはレックスを見つめる。

 「そしてそいつは俺が買っていたケルベロスの一匹……そういえばフリードたちがケルベロスが一匹、お前たちにやられたと言っていたが、そいつの事か……下っ端堕天使どもに敗れたばかりかその飼い犬になるとは……見下げ果てた奴め。後でゆっくりと処刑してやる」

 

 そうコカビエルはレックスを侮辱する。するとレックスもそんなコカビエルの悪意を感じ取ってか、かつての主に向かってうなる。

 「ギャウン! ギャウウウウウウッツ!」

 

 「ダメだよ。レックス。君はもう僕たちの仲間だ。君を死なせる訳にはいかない」

 今にもコカビエルに向かって飛び掛かりそうなレックスの体を僕は押さえる。実際、あのコカビエルにレックスではとても相手にならない。ならば、大切な彼を無駄に死なせる訳にはいかない!

 

 「キュウウウン……」

 レックスはそんな僕を見つめてうなずく。どうやら僕の気持ちを分かってくれたようだ。

 

 「フッ、人間に飼われた事でさらに臆病になったようだな」

 コカビエルはレックスをそう嘲笑った後で再び僕に視線を向けた。

 

「この連中(グレモリー眷属)に無様に負けたその下っ端女に用はないが、小僧、お前には興味がある……どうだ、俺に付かんか? そんな下っ端女よりよっぽど良い思いをさせてやるぞ」

 

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 レイナーレを嘲り、見下すコカビエルの態度に僕の心に怒りが沸き上がる。冗談じゃない!

 こんな仲間を平気で切り捨て、僕の最愛の女性を見下して侮辱するような男になど従える訳がない!!

 

 僕はコカビエルに対して怒りの声を上げようとして……

 

 その時、レイナーレが前に出た。胸を張って、皆に見せつけるように。

 

 「お言葉ですがコカビエル様。私たちはアザゼル総督閣下のご命令であなた様を逮捕に参りましたの。おとなしく従っていただきたく存じます」

 

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 【私は至高の堕天使なのよ】

 

 ずっとレイナーレが言ってきた言葉。その言葉が嘘でない事を僕は改めて思い知った。

 

 今のレイナーレは、兵藤にも、グレモリー先輩にも、木場にも、塔城にも、そしてコカビエルにも、一歩も引いていなかった。僕が一番好きなレイナーレの、一番大好きな姿が、そこにいた。

 

 僕は心の底で思った。レイナーレを舐めない方が良いぞ。レイナーレを馬鹿にしたら大変な事になるぞ、と。

 

 レイナーレはさらに語る。

 「それに、ミコトにそんな事を言われても無駄ですわ。この子は私を一途に愛してくれていて、私を他の何よりも大切に思ってくれているんですもの。そして私のこの体が、私のこの胸がこの子の神器の力の源ですもの。ねっ♪ ミコト、そうよね♪」

 

 向けられる無邪気な瞳。それは自らへの絶対の自信と、お茶目な僕への挑戦の両方が含まれていた。僕には分かる。レイナーレが瞳の奥で何を思っているか。

 

 ミコト、あなたはこの至高の堕天使に応えられる?

 

 もちろん!

 

 「もちろんだよ! レイナーレ! 君こそが僕の全て! 君のその綺麗な顔が! 君のその大きくて張り詰めた素敵な胸が! 君のいやらしい乳首が僕の力の源だもの!」

 

 そして僕はコカビエルに伝える。

 「コカビエル様。レイナーレは僕の全て。彼女を裏切るなんて僕にはあり得ません。そしてあなたはその彼女を侮辱した。そんなあなたに仕えるなどあり得ません!」

 

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「そうですわ。コカビエル様。あなた様は上級堕天使で戦力的には私など問題にされないでしょうけれど、ミコトにとってはこの私の方が遥かに価値がある存在ですわ。ミコト、帰ったらいっぱい愛し合いましょうね♪ ウフッ……♪ あなたが大好きなこのいやらしい乳首を好きなだけ触らせてあげるわ♪ 吸わせてあげるから♪」

「うん! 約束だよ! 僕のレイナーレ!」

 

 「て、てめえら……どこまでふざけてやがるっ!!」

 兵藤が鬼のような形相で僕たちを睨みつけて罵る。目前の強敵であるコカビエルとの対決よりも、僕たちへの憎悪と復讐心の方が彼の中でははるかに上回っているようだ。

 

 たとえ自分がレイナーレに殺された件やアーシアさんの件があるとはいえ、いつもは可愛らしい女の子と見れば見境なしにセクハラ行為をしているくせに、レイナーレに対してだけは異常なほどに執念深い憎悪をたぎらせ続け、平気で彼女を殺そうとする彼に僕は心の中で憤りを感じる。

 

 一方、コカビエルは僕の返答に大笑いする。

 「フハハハハハッ! お前ら、下っ端の雑魚の分際でそれほどの大口を叩いておいて無事に帰れるとでも思っているのか? 丁度良い。お前らを殺してその首をアザゼルの元に送ってやろう!」

 

 平静を装っているが、実際のところはプライドを傷つけられてかなり怒っているようだ。自分以外の相手を見下し、利用する事しか考えていない。度量が大きくて人を見る目に優れたアザゼル様とはまるで器が違う! でも、この男は自分では【俺の方がアザゼルよりも上】だと思い上がり、勘違いしているのだろう。たとえ強大な力を持っているにしても、こんな男がアザゼル様に勝てる訳がない!

 

 僕は目の前のコカビエルに憐憫に似た気持ちを抱いた。そしてレイナーレも彼に僕と同じ印象を抱いたのは間違いない。そして彼女はコカビエルの脅しにひるむ事なく言い返す。

 「あら? そうですの。でもあなた様のお相手をするのは……」

 

 だが、そこで彼女も、そして僕も近くにいるはずのヴァーリさんがいつの間にか姿を消しているのに気付く。

 

「えっ! ヴァーリ! 何処へ行ったの!?」

「ホ、ホント、どこへ行ったっすか!? あの人っ!?」

 

 余裕の表情だったレイナーレとミッテルトちゃんは思わず焦る。僕も内心動揺する。そしてそんな僕たちの様子を見てコカビエルは嘲笑う。

 「どうした? あれほどの大口を叩いておいて今更怖気づいたのか?」

 

 そこで僕は意を決する。

 「コカビエル様。先ほどあなたはグレモリー眷属たちに御自分を全力で攻撃するチャンスを与えられましたよね? 僕たちにもそのチャンスを与えて頂きたいのですが。与えて頂ければ、先ほどの彼らよりももっと威力ある攻撃をあなたにお見せ出来ます」

 

 その僕の言葉を聞いて兵藤たちは激高あるいは嘲りの言葉を口にする。

 「何だとてめえ!! 俺たちより威力ある攻撃だと!? ふざけんじゃねえぞ!!」

 「私たちより威力ある攻撃? ずいぶんと思いあがったものね……」

 「なかなかの大言壮語をするね」

 「あいつら……何を……」

 

 グレモリー眷属の面々がさまざまな言葉を投げかける中、鬼崎だけは腕を組んで面白そうな表情で僕たちを見つめている。そういえば、彼だけはまだコカビエルに攻撃をしかけていない。

 

 「ほほう……下っ端の分際で赤龍帝の力を最大限に譲渡された魔王の妹よりも威力ある攻撃を出来るとほざくか! 面白い! やってみろ。ただし期待外れだった場合はその場で貴様らを消し去る!」

 そうコカビエルは言った。

 

 「ミコト……」

 レイナーレがさすがに不安そうな表情で僕を見つめる。その彼女を僕は安心させようと微笑む。

 

「レイナーレ、これは時間稼ぎだよ。ヴァーリさんが戻ってくるまでの。大丈夫。彼はすぐに戻ってくるよ。それに……ここで怖気づいて何もしなければ間違いなく殺される。なら、最善を尽くそうよ。最善を尽くしてこそ道は開ける! だから、見せてあげようよ。僕と君の愛の証を! 」

 

 僕のその言葉に不安そうだったレイナーレは悪戯っぽい表情を浮かべて微笑む。彼女も覚悟を決めたようだ。

 「ミコト……ウフッ……そうね。仕掛けましょう。あなたと私の愛の結晶を!」

 

 不思議と怖くはなかった。やはりお互いに最愛の人と一緒にいる事からくる高揚感からだろう。そう、僕は計算していた。僕たちがああいう風に申し出ればコカビエルは興味を引かれ、僕たちがあの技を打ち出すまでは待ってくれるだろうと。それでコカビエルをもし倒せるのなら一番だが、そうでなくてもその間にヴァーリさんが戻って来るかもしれない。それでも戻ってこない場合は……その時はその時だ!

 

 「レイナーレ、いい?」

 「ええ、ミコト」

 

 僕の言葉にレイナーレはうなずき、僕はレイナーレの張り詰めた大きな乳房に食い込んでいる、黒の胸当ての上にくっきりと浮き出している彼女の大きな乳首をギュリッ!と強くひねり上げる。

 

 「あっ!! あはああああっ!!! ミ、ミコトおおおっ!!! ふひゃああんっ!!!」

 レイナーレの甘い絶叫と共に彼女の体から黒のボンデージが散り散りにはじけ飛び、彼女は黒の手袋と足の黒のブーツのみを残して全裸となり、その美しくいやらしい素晴らしい裸体をさらす。

 

 そしてレイナーレの体からはじけ飛んだ黒のボンデージの布は僕の両手に吸い寄せられ、黒の手袋となって装着される。

 

 「て、てめえらいきなり何してやがるっ!!」

 「洋服崩壊(ドレスブレイク)の亜種かしら……? あの堕天使たちは何を……」 

 「見苦しい痴態ですわね……ですが、彼らの技を見て対策できるのは収穫ですわ」

 

 グレモリー眷属が何を言おうと、それが怒声であろうと、嘲りだろうと、誉め言葉だろうと、何であってもどうでも良かった。

 

 コカビエルも目元をひくつかせる。

 「何のつもりだ……?」

 

 その彼にレイナーレは見事な裸体を見せつけつつ、胸を張って美貌に不敵な表情を浮かべて叫ぶ。

 「さあ、コカビエル様。見せて差し上げますわ! 私とミコトの愛の結晶を! さあ、ミコト! 来てっ!」

 

【挿絵表示】

 

 目の前のレイナーレの見事に張り詰めた美しい大きな乳房……膨れ上がって石のようにカチカチに硬く勃起してビン! と突き出している、あまりにも卑猥な大きな乳首……引き締まったへそにくびれた腰……黒い陰毛に覆われた秘部……しなやかに伸びた手足……滑らかな白い肌……自信に満ちた表情の美貌、彼女の全てが僕の心を熱く燃やす!

 

 ああっ! レイナーレっ! こんなに素敵な君を、こんなに素晴らしい君の体をあんな男に傷つけさせたりはしないっ!

 

 そして僕はレイナーレの素晴らしい裸体に近付き、【ニプルブラスト】発動に取り掛かる。まずは彼女の乳首をすりっとさする。

 「あっ!! あはあんっ!!」

 

 レイナーレが甘い声を上げて裸体をのけぞらせる。その彼女の反応に僕はいつもと同じく股間を激しくうずかせ、さらに彼女の乳首をすりっ、すりすりっ、すりりいっ、と何度も何度もさすり回す。僕の指の動きと共に彼女の大きないやらしい乳首がぶるぶるっ! ぶるるっ! とまるで生き物のように卑猥にうごめく。

 「あっ!! あっ!! あはああんっ!! ミ、ミコトおっ!! 好きよっ!! 大好きいっっ!! ああああんっ!!」

 

 

 「て、てめえらっ…………」

 「いったいどういうつもり……? こんなこうい…………」

 「おまえら、うちのねえさまをばかに……」

 

 僕にはもう、レイナーレ以外の声は何も聞こえていなかった。

 愛しいレイナーレの乳首を、ひたすら攻めた。

 

 ギリッ! と僕はレイナーレの硬く大きな卑猥な両乳首を強くひねり上げる。

 「ふっ!! ふひいいいいいっ!!」

 

 そしてさらに僕は彼女の乳首をギュリッ! ギュリギュリッ! ギュリリィ! と激しく強くひねり回す。

 

 「ふっ!! ふぎゃああんっ!!! ミ、ミコトおおっ!! ち、乳首が熱いいいっ!!! 熱いわあああっ!!!」

 絶叫し、長い黒髪を振り乱し、裸体をのけぞらせて絶叫するレイナーレ。その彼女の硬く大きな乳首がさらに卑猥に膨張して、そこから眩い閃光がほとばしる!

 

 「ああっ!! ミコトっ!! 出たわっ!! あなたと私の愛の結晶が!! さあ、最大限に高めてお見舞いするわよ!!」

 レイナーレが僕に大きな乳首をひねられてあえぎつつ、僕の肩を抱いて叫ぶ。

 

【挿絵表示】

 

 「うんっ!!」

 

 僕とレイナーレはうなずき合い、僕は彼女の乳首をつまんでいる指にさらに力を込める。

 

「あっ!! あっ!! あはあああああああっ!!! ミ、ミコトおおおっ!!! 愛してるっ!! 愛してるわああっ!!! あっ!! あああああああああああーーーっ!!!」

「ああっ!! レイナーレっ!! 僕も愛してるっ!! 誰よりも君をっ!!!」

 

 僕はレイナーレの乳首をひねり回しつつ、彼女への想いと彼女の乳首への欲望を最大限にたぎらせる。僕の股間がもう耐えきれないほどに大きく猛り立ち、それと同時にレイナーレの乳首から発する閃光がさらにその輝きを増して最大限となる。それはこれまで発したものよりもずっと大きなエネルギーだと僕は感じる!

 

 「【ニプルブラスト】おおおおおっ!!!」

 僕は全身全霊を込めて渾身の一撃をコカビエルに向かって放つ!

 

 ゴォォォォオオオオオオオオオンッ!

 先ほどのグレモリー先輩が放った魔力の塊をしのぐ振動を辺りに撒き散らして、僕とレイナーレの愛の証はコカビエルに向かう。

 

 だがコカビエルはそれをさっきと同じく両手で受け止めようと身構える。

 「ほう……! お前たちが魔王の妹にも勝る魔力を打ち出せるとはな! これは面白い! 面白いぞ! 【黒龍王】! まさか好きな女の乳首をいじくる事でこれほどの力を出すとは!」

 

 余裕の表情を崩さないコカビエル。彼は再び両手に光力を集めて僕たちの力を真正面から受け止める。

 

 ドオォォォォォォオオオオオオンッ!!

「ぬぅぅぅぅぅぅぅうううううんっ!!」

 

 僕たちの一撃はグレモリー先輩の一撃と同様に、コカビエルの黒いロープをあちこち破り、それを受け止めた手から血を流させた。そしてその光はコカビエルを吹き飛ばす……

 

 はずだった。

 

 「面白かったぞ……小僧どもっ!!!!!」

 

 コカビエルは、私たちの全力を弾いた。弾かれた光弾は、空のかなたに消えていった。

 

 「面白いものを見せてもらった。だが、これで終わりだ」

 そうコカビエルは余裕の表情で言うと、僕たちに構わず拳を天にかざして高らかに宣言する。

 

「俺は戦争を始める。これを機に! お前たちの首を土産に! 俺だけでもあの時の続きをしてやる! 我ら堕天使こそが最強だとサーゼクスにも、ミカエルにも見せつけてやる!」

 

 そしてコカビエルは僕たちの方を振り返ると宣告する。

 「では、まずはお前たちをまとめて消してやろう! お前らの首を送れば、平和ボケのサーゼクスとアザゼルには良い気付になるだろう」

 

 「…………!!」

 グレモリー眷属の面々がその言葉に決死の表情で身構える。

 

 僕は全裸のレイナーレをしっかりと抱き締める。彼女の体はふるえてはいない。

 「大丈夫よ。ミコト。あなたが一緒なら私は……!」

 「僕もだよ。レイナーレ」

 

 「ギャオオオオオオオオンッ!!」

 レックスがコカビエルに向かって唸り声をあげ、ミッテルトちゃんが叫ぶ。

 

 「レックス! ウチとアンタで姉さまとミコトくんが逃げる時間を稼ぐっすよっ!!」

 その叫びに僕も、そしてレイナーレもハッ! とする。

 

 そうだ! 僕たちはここであきらめる訳にはいかない! ミッテルトちゃんもレックスも僕たちのために命懸けでコカビエルに立ち向かおうとしているんだから!

 

 そして僕たちが再びコカビエルに立ち向かおうとしたその時……!

 

 

****************************************************************

  

 

 コカビエルが僕たちの殲滅を宣言したその時、それまでは僕たちの後ろに控えていた陽太郎くんが前に進み出る。

 

 実は陽太郎くんは僕と共にここに来た時、コカビエルとの戦いになったら最初から手を貸す事を申し出てくれていた。だが、それを蹴ったのはリアス部長だ。

 

【気持ちはありがたいけれど、これは私たちグレモリー眷属が売られた戦い。コカビエルは私たちのこの街を土足で踏みにじった。だからこの決着は私たちがつけるべきなの】

 

 イッセーくんたちもそれに同意した。そのために陽太郎くんはこれまでは後ろで控えていたのだ。それでもさっきは危機に陥った小猫ちゃんを救ってくれたが。

 

 「やれやれ、もう勝った気でいるとは気が早いね。堕天使の大幹部さん」

 勝ち誇っていたコカビエルに陽太郎くんは不敵な表情で言った。彼のその姿からは、堕天使の大幹部であれほどの力を見せつけたコカビエルを恐れている様子など全くない。

 

 平然とした様子でコカビエルに歩み寄っていく陽太郎くん。どうやら一人で彼と戦うつもりだ。そんな彼に僕たちはさすがに心配となって叫ぶ。

 

 「陽太郎くん!! 無茶だよ!!」

 「鬼崎!!」

 「陽太郎!!」

 

 だが、陽太郎くんはそんな僕たちに手を振るとそのままコカビエルに向かい、彼の正面に立った。

 

 その彼をコカビエルは怪訝そうに見つめる。

 「何だ? お前は? これまで怖気づいて俺に全く向かって来ようともしなかったザコか? いる事すら忘れていたぞ」

 

 「いや、伝説の堕天使の力というのを見て見たくてね。その戦いぶりを見させてもらっていたんだ。でも、あなたが彼らを殺そうと言ったのでね。僕は彼らを……グレモリー眷属を気に入っているんだ。だから戦う事にした。これまで見ていてあなたの実力の程も分かったしね」

 そう陽太郎くんは微笑しながらコカビエルを見つめる。

 

 「ほう……俺の実力が分かったと。ならば圧倒的な力の差にあきらめて自暴自棄になって俺に殺されに来たか?」

 コカビエルのその言葉に陽太郎くんは皮肉に満ちた微笑みを浮かべる。

 

「いや。そんなに大した事ないって分かった」

「な、何だと! ほう……それほど大口を叩くならその力を見せてみろ。それを見せられないならばこの場で消し去ってやる」

 

 コカビエルの言葉に陽太郎くんはまた微笑みながら強烈な皮肉で返す。

 「いや、やめておくよ。こちらから仕掛けたら弱い者イジメになってしまうからね。せめて正当防衛という形にしないと僕の方でも心が痛むんでね」

 

 「ザコが!! 調子に乗るなっ!!」

 コカビエルが激怒して無数の光槍を出現させる。

 

 だが、陽太郎くんは少しも恐れるようなそぶりはなく、そっと両腕を突き出して瞑想するような仕草をする。すると彼の手にまばゆい光が集まり、それは金色の曲がった刀身に、狼の頭部を象った鍔を持つ剣となった。

 

 コカビエルの光槍が一斉に陽太郎くんに振り注ぐ。

 「陽太郎くんっ!!」

 「鬼崎っ!!」

 

 僕とイッセーくんが思わず叫ぶ。だが、陽太郎くんは全く平然とした表情で手に持った剣を凄まじい速度で回転させる。その速さは僕の視線でも全く捉えられないほどだ。

 

 そしてその高速で回転する剣はまるで日輪のように燦然と輝き、コカビエルの降り注ぐ光槍をいともたやすく薙ぎ払い、消滅させた。

 

 そして陽太郎くんは不敵な笑みを浮かべてコカビエルを見つめる。

 「こんなものかな? 伝説の堕天使様」

 

【挿絵表示】

 

 

 「小癪なっ!! ではこれならどうだっ!!」

 コカビエルは先ほど放った光槍の数倍の大きさを持った巨大な光槍を創り出すと陽太郎くんに放った。あんなものを喰らえば跡形もなく体は吹き飛ぶはず!

 

 だが、陽太郎くんは少しも慌てず、飛んできた槍を剣で事もなげに受け止める。

 

 バリリリンッ!!!

 凄まじい音と共に光槍は砕け散り、陽太郎くんは全くケガをした様子もなく平然としている。

 

 す、凄い! 陽太郎くんが暴走化したイッセーくんを簡単に止めたという話はリアス部長から聞いていたけれど……あのコカビエルの攻撃を彼はたやすく受け止めている!

 

 「す、凄え……!」

 「陽太郎が強いのは分かっていたけれど……これほどだったなんて……」

 イッセーくんとリアス部長も驚きの表情を浮かべている。

 

 「き、貴様! 何者だ!」

 「僕は鬼崎陽太郎。魔人さ」

 

 コカビエルが激高して尋ねたのに対して陽太郎くんは少しも息を乱す様子もなく名乗った。

 

 

****************************************************************

 

 

 鬼崎がその圧倒的な実力の片鱗を見せ、コカビエルに明らかな焦りが見えたその時!

 

 「ふふふ、面白いな。楽しませてもらったよ。だが、そろそろ真打ち登場といこうか」

 という声が空から響いてきた

 

 この声は……! ヴァーリさん……!!

 

 白く輝く鎧に全身を包まれた人物……ヴァーリさんが空から闇を切り裂くように降り立った。その彼は顔まで鎧に覆われ、背中からは8枚の光の翼が生えて、神々しいまでの輝きを放っている。

 

 「す、凄いっす……!!」

 「綺麗ね……!!」

 「うん……!!」

 

 ミッテルトちゃん、そしてレイナーレも僕も、その鎧姿のヴァーリさんの姿に思わず目を見張る。もっとも僕にとっては、愛しいレイナーレの裸体の方がもっと美しいが。

 

 そしてヴァーリさんは鬼崎に伝える。

 「悪いが、その堕天使は俺の獲物だ。俺に任せてもらおう」

 

 鬼崎はフッと笑って答える。

 「それはこちらのセリフだよ。これは僕の獲物だ。奪いたいというなら勝負といこうか」

 

 するとヴァーリさんは一枚の書状のようなものを鬼崎に突き付けた。鬼崎はそれを受け取って中身を見ると、それをグレモリー先輩に渡した。

 

 それを一読したグレモリー先輩は不服そうな表情を浮かべつつも言った。

 「仕方ないわね……陽太郎、彼に譲ってあげて」

 

 それに鬼崎は苦笑してうなずく。

 「仕方ないね……」

 

 鬼崎は後ろに下がり、代わってヴァーリがコカビエルに向かって進み出る。

 

 「【白い龍(バニシング・ドラゴン)】……」

 コカビエルがつぶやき、そして舌打ちする。

 

 「【白い龍】! やはり、そうなのね! ヴァーリのあの姿は彼の【白龍皇】の力を解放させた状態!」

 レイナーレはそうつぶやいた。

 

 「【神滅具】の一つ、【白龍皇の光翼】……鎧と化しているという事は、既にその姿は禁手(バランス・ブレイカー)状態である【白龍皇の鎧】か……忌々しい限りだ」

 

 コカビエルは不快そうに吐き捨てるように言った。その彼の様子からは「面倒だ」という様子は伺えるものの、それでも彼は自分がよもや負けるとは思っていないようだ。

 

 「赤と黒に惹かれたか……【白い龍】よ。邪魔立ては……」

 コカビエルがそう言いかけた次の瞬間……!

 

 

****************************************************************

 

 

 「ぐわあっ!!!」

 コカビエルの絶叫が響き渡り、彼から鮮血が飛び出し、彼の翼が宙を舞った。

 

 「まるでカラスの羽だ。薄汚い色をしている。アザゼルの羽はもっと薄暗く、常闇のようだったぞ?」

 ヴァーリが嘲りの言葉を口にする。彼は手に黒き翼を持っていた。あまりに素早くて、私の目では到底捉えきれなかったが、ヴァーリがコカビエルを襲い、彼から翼をもぎ取ったのは確かだ……

 

 「き、貴様っ!! 俺の羽をっ!!」

 「フッ……」

 

 翼をもがれ、怒り狂うコカビエルに対して、ヴァーリは嘲りの笑みを浮かべる。

 

 「どうせ墜ちた印だ。地より下の世界に墜ちた者に羽なんて必要ないだろう?まだ飛ぶつもりなのか?」

 ヴァーリは言い放った。

 

 「【白い龍】っ!! 俺に逆らうのかっ!!」

 逆上したコカビエルの体からまばゆいオーラが発せられ、それと同時に夜空に無数の光槍が出現した。

 

 しかしその時、ヴァーリの体から、しかしヴァーリとは別の人格らしい声が響く。

 「我が名は【アルビオン】」

 

 あの声がヴァーリに宿る【白い龍】……!

 

 「【Divide(デイバイド)】」

 その【白い龍】……アルビオンの声が響く。するとそれまでコカビエルの体からまばゆいばかりに発していたオーラが一気に減少し、宙に漂っていた光槍もその半数が一気に霧散した。

 

 「こ、これは……!?」

 愕然とするコカビエルにアルビオンの声が響く。

 

 「我が神器、【白龍皇の光翼】の能力のひとつ。触れた者の力を十秒ごとに半分にさせていく。コカビエル、お前の力は我が糧となる。時間はないぞ。早くこちらを倒さねば、お前は人間にすら勝てなくなる」

 

 「ふざけるなっ!!」

 コカビエルは叫びつつ、残った翼を羽ばたかせて、コカビエルは光槍と光剣で白龍皇……ヴァーリに立ち向かっていくが、ヴァーリの光速ともいえる早い動きに翻弄される。その様子はまさに【もてあそばれている】という状況だ。

 

 「【Divide】」

 「おのれっ!!」

 

 コカビエルは必死で光槍と光剣を繰り出すが、ヴァーリは腕を横に薙ぐだけでそれらを消失させてしまう。その様子に、私はかつて自分が【赤龍帝の籠手】でパワーアップした一誠の腕の一振りで自分の光槍を消し去られて恐怖におののいた、あの夜の事を思い起こす。

 

 そしてコカビエルが苦戦している内に、アルビオンの【Divide】の声が何度も響き、その度にコカビエルの力はどんどん失われていき、もはや、私でも容易に相手に出来るほどにまで落ち込んでいた。

 

 「もはや、中級の堕天使並みか……つまらない。もう少し楽しめるかと思ったんだが……終わらせるか」

 ヴァーリは心底失望したという感じでつぶやくと、目にも止まらぬ早さでコカビエルに近付き、強烈な拳の一撃をコカビエルの腹に叩き込む。

 

 「ぐばあああああっ!!!」

 絶叫と共にコカビエルは体をくの字型に折り曲げて、ごぼあっ!! と汚物を地面に撒き散らした。その彼の姿に伝説の強大な堕天使の……かつて私たちの間で【英雄】と呼ばれていた者の面影は微塵も感じられない。

 

「げほっ……バ、バカな……こ……この俺が……」

「なんだ、ありきたりのセリフを吐くんだな。バカな? この俺が? か……その後は何だ? そんなはずはない、か?」

 

 激しい苦痛と衝撃、そして屈辱に身をふるわせているコカビエル。そしてそんな彼をヴァーリは容赦なく嘲笑する。

 

 ヴァーリはガタガタとふるえているコカビエルに冷徹に宣告する。

 「あんたを無理やりにでも連れて帰るようアザゼルに言われているんだ。あんたは少しばかり勝手が過ぎた」

 

 そのヴァーリの宣告を聞いたコカビエルはようやく悟ったらしい。

 「き、貴様っ!! そうか! アザゼルが……アザゼルうううっ!! 俺はあああああっ!!」

 

 愕然としてアザゼル様への恨みの絶叫をあげるコカビエル。その彼の顔面にヴァーリはドガアアッ!! と容赦なく強烈な拳の一撃を叩き込む。

 

 「ぐぼおおおおおっ!!!」

 絶叫と共にコカビエルの顔面は血にまみれ、彼はその場にくずおれて、そのまま地面にドサッ!と突っ伏した。

 

 伝説の堕天使のあまりにも無様な敗北。その彼の有様に私はかつての自分の姿を重ね合わせていた。そう……自らを【至高の堕天使】と自惚れ、自らの実力も測れずに、下賎な転生悪魔と侮っていた一誠に圧倒され、無様に怯え、敗北した自分の姿を……

 

 私は隣にいる尊を見つめた。

 

 「………………」

 その尊も突っ伏しているコカビエルの姿をじっと見つめている。彼もコカビエルの無残な敗北を見て、思うところがあるようだ。そして私はその尊にそっと寄り添う。その私を尊は優しい目で見つめて、そっと抱き締めてくれる。

 

 

****************************************************************

 

 

 僕は見た。【伝説の堕天使】であり、強烈な自信にあふれていたコカビエルが、一人であのグレモリー眷属たちを圧倒していた彼が、【白龍皇】の力を発揮させたヴァーリさんの前に手も足も出ずに、一方的にいたぶられて無様な敗北を喫した姿を。そしてその彼の姿に、僕はかつて僕の愛しいレイナーレが、憎悪に燃えたぎる兵藤に追い詰められ、恐怖で泣き叫んでいた姿を重ねる。

 

 これが自らの力に溺れて、暴走した者の末路。でも、僕のレイナーレも、あの時、ひとつ誤ればこうなっていた。いや!あのグレモリー眷属の手にかかったら、もっと酷い事に……!!

 

 そう思うと、僕はコカビエルの事を笑ったりは到底出来なかった。

 

 そのヴァーリさんに圧倒されて無様な姿をさらしているコカビエルの姿を、レイナーレも複雑な表情で見つめていた。僕が思ったのと同様に、彼女もきっとそのコカビエルの姿に、以前、自分が兵藤に圧倒され、追い詰められた時の姿を重ね合わせていたに違いない。

 

 レイナーレ! 大丈夫だよ! 絶対に君をこんな目に遭わせたりしないから! 僕が君を必ず守るから!

 そう僕は改めて心に誓って、寄り添ってきた彼女を抱き締めた。

 

 そしてヴァーリさんは自らが倒したコカビエルの体を肩に担ぎ上げ、次いでやはり倒れていたフリードの体も腕に抱えた。そして彼は僕たちの方を見つめて言った。

 

 「お取り込み中済まないが、俺はこの二人をアザゼルの元に連行しなくてはならない。君たちもここは居心地が悪いだろう? 取りあえず、ここから去るとしよう」

 

 そう、僕たちは今、僕たちを憎悪しているグレモリー眷属たちのまっただ中にいる。こんな場所からは一刻も早く去りたい。それにホテルには意識を失ったイリナさんと、彼女を看病しているカラワーナさんもいるのだ。

 

 そこで僕とレイナーレ、そしてミッテルトちゃんはそのヴァーリさんの後に続こうとする。しかしその僕たちに罵声が飛ぶ。

 

 「てめえらっ!! 逃がすかっ!!」

 思った通り兵藤が憎悪の叫びを上げて襲いかかろうとし、木場も同様に僕たちを殺意のこもった目で睨みつけ、剣を構える。

 

 その彼らに対して、僕も急いでポケットからレイナーレの胸当てを取り出して、神器を装着し、レイナーレとミッテルトちゃんも身構える。 レックスも

 「ギャオン! ギャオオオオオン!」

 と唸りながら身構える。その時……

 

 ヴァーリさんが、グレモリー眷属たちを冷静な表情のまま見つめて口を開いた。

「赤龍帝にグレモリー眷属の君たち、君たちは魔王サーゼクス・ルシファーから取りあえずは二人に手を出すなと言われているはずだが? それに事情はどうあれ、今回二人は君たちのコカビエルとの戦いに協力もした。にも関わらず、ここで二人を襲おうというのは【同義にもとる行為】というものではないのか?」

 

 ヴァーリさんの言葉に兵藤は怒りの形相で叫ぶ。

 「お前、声からしてこの前、アザゼルやこいつらと一緒にいたあのいけすかねえイケメンか!? そいつらはアーシアの仇で絶対に許せねえ奴らなんだ!! 邪魔はさせねえぞ!!」

 

 その兵藤にヴァーリさんは言った。

 「その事についてはアザゼルが改めて話し合いをしようとの事だ。今回、この二人はアザゼルの部下として彼の命令でここに来た。この二人に手を出すというのはサーゼクスの命令に背いた上に、堕天使に戦争を仕掛けるという事にもなるが、君はそれでも良くても君の主はどうかな……?」

 

 「…………!!」

 「イッセー。耐えて」

 グレモリー先輩の声だった。決然とした響きがそこにあった。

 

 「もう一度言うわ。イッセー。ここは耐えて」

 「部長……」

 

 グレモリー先輩は僕たちに視線を向ける。その彼女を見て、僕は彼女には僕たちを追い込む、何か秘策のようなものを心に秘めているのではないかと感じた。

 

 あの駒王町のレイナーレの教会を襲撃した時も、グレモリー先輩はそれを行う事で、それが悪魔と堕天使との全面戦争に繋がりはしないかと慎重に調査を進めていた。

 

 そしてレイナーレのあの計画が彼女が堕天使本部に無断で進めていた事で、たとえ自分たちが彼女を始末したところで堕天使本部は介入しないと見極めた上で、彼女たちを殲滅しようと行動を起こした。そういう思慮深さ、冷徹さがグレモリー先輩にはある。

 

 さらに兵藤の前に、ゼノヴィアさんが立ちふさがった。

 「キミにとってあの2人が敵だという事は知っている……だが、キミたちにとってどうあれ、私にとってはあの2人はコカビエルの手で重傷を負わされたイリナを助けてくれた恩人だ。もし、あの2人にどうあっても手を出そうというのなら、私が相手をしよう」

 「ゼノヴィア、お前……」

 

 木場も兵藤にささやく。

 「イッセーくん。君の気持ちはとても分かるし、僕も同じ気持ちだけれど今回は仕方ない。彼女たちに報いを与えるのは次の機会にしよう」

 「木場……!」

 

 木場の顔には見るからに無念という表情が浮かんでいる。彼の胸の中も兵藤と同じく僕たちへの憎悪で煮えくりかえっているのだろう。

 

 鬼崎も兵藤のもとに歩み寄って彼の肩にポン! と手を置いて言った。

 「イッセー、祐斗の言う通りだ。僕もあの二人にここで報いを与えられないのは残念だし、あの【白龍皇】と勝負したい思いもあるけど……ここはリアス部長の立場もある。今回はここで引こう」

 「鬼崎……!」

 

 「……………」

 仲間たちに諫められた兵藤は憤懣やるかたないという表情で僕たちとヴァーリさんを睨んだ。そして下を向いて身をふるわせる。怒りを懸命に堪えているという風だ。

 

 その彼にヴァーリさんはささやく。

 「全てを理解するには力が必要だ。強くなれよ。俺の宿敵くん」

 

 「………………」

 兵藤はそのヴァーリさんの言葉に答えず、怒りに体をふるわせてうつむいている。

 

 そのような状況の中、1人だけ全く違う行動を見せている者がいた。

 

 塔城小猫。

 

 塔城は、じっと僕たちを見つめていた。何を考えているのだろう。わからない。わかるはずもない。

でも、その眼は敵意以外の何かの光を帯びていた。

 

 

 「では、行こうか」

 「はい」

 「ええ」

 「OKっす」

 「キャオンッ!」

 

 ヴァーリさんの言葉に僕たちはうなずく。グレモリー眷属の視線を感じながら、僕たちはその場を後にした。

 

(次回に続く)




 ついにこの令和2年も最後の日を迎えました。いつもこの作品を読んで応援してくださっている方々、本当にありがとうございます! 皆様の応援を励みに、何とか、コカビエルとの決戦話を今年中に間に合わせる事が出来ました!(*´∀`*) 

 今回の第14話はかなり多くの変更がありました。まず、前のお話にはなかった尊&レイナーレ対コカビエル、鬼崎対コカビエルの戦闘場面が新たに付け加えられた事。

 以前のお話では、尊とレイナーレがコカビエルとの対決を決意した時にヴァーリが来てコカビエルを倒してくれたので、結局、二人とコカビエルの対決は実現しませんでしたが、【尊とレイナーレが主役である以上は二人がコカビエルと戦う場面がある方が良い】という読者の方からのご指摘もあり、対決の場面を設けました。

 これまで、あの夜の教会で一誠に惨敗し、彼の怒りと殺意に脅えたトラウマからグレモリー眷属たちを見ると恐怖におののいていたレイナーレですが、尊の一途な愛と愛しい彼がいつも傍にいることに勇気付けられ、また堕天使界での特訓で実力を高めて自信を取り戻した事により、今回の彼女はそのグレモリー眷属にも、そして階級と実力でははるかに上のコカビエルにもひるむことなく立ち向かっています。このレイナーレの毅然とした態度も、以前のお話とは変わっている所です。

 尊とレイナーレがお互いへの愛を込めて放った【ニプルブラスト】、コカビエルには通じませんでしたが、それでもコカビエルに手傷を負わせ、【リアスの魔力攻撃に勝る威力】との評価を得た事は二人にとって大きいです!

 今回は鬼崎が大いに活躍しました!彼が一誠の【木場を助けたい!】という思いとそこからくる行動に力を貸した事、木場を助けて勇気付けた事、そしてグレモリー眷属のピンチに彼がコカビエルを圧倒した事、これらによってグレモリー眷属の鬼崎に対する信頼は揺るぎないものになりました。その事に関して鬼崎は複雑な心境をのぞかせていますが、果たしてこれから彼はどうなっていくのか…今後の彼の行方をご期待ください!

 ちなみに鬼崎がヴァーリにコカビエルを倒す役目を譲った事、これはもちろん両者の間であらかじめ決まっていた事です。鬼崎はヴァーリと互角の力を持っていますので、あのまま彼がコカビエルの相手を続けても、彼の圧勝は間違いなかったのですが、コカビエル打倒とその身を堕天使界へ連行するのはヴァーリがアザゼルから依頼されていた事なので、鬼崎としては友の顔を立てたという形です。

 後はレックスが旧主のコカビエルと対面した場面。レックスは完全に新たな主の尊やレイナーレになついて、旧主のコカビエルに敵対しています。自分を単なる使い捨ての道具としか見ておらず、愛情など欠片もなかったコカビエルと、自分に心からの愛情を注いで大事にしてくれる尊たちとでは、レックスの想いも全く違うという事です。

 コカビエルの打倒と逮捕は果たしたものの、尊&レイナーレとグレモリー眷属の険悪な関係、一誠たちの二人への激しい憎悪は相変わらずであり、これは今後も依然として尾を引いていく事になります。

 今回、レイナーレと尊に対する憎しみから暴走しかけた一誠を抑え、尊に「彼女には僕たちを追い込む、何か秘策のようなものを心に秘めているのではないか」と思わせたリアスの様子、そして最後の場面の心に何かを秘めた小猫の様子、これらは今後の物語の展開に繋がっていきます


 次回第14話はコカビエルの事件の後日談、その後は原作4巻の三勢力会談&【禍の団】襲撃編に向けてのストーリーとなります。今後、尊は天使長ミカエルや魔王のサーゼクスやセラフォルーといった面々と対面を果たしていき、物語がさらに大きく動いていきます!

 それでは、次回をお楽しみに! そして来年もどうぞよろしくお願い申し上げます!(*´∀`*)
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