※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D~情念の炎~(完全版)   作:ドミトリ

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 堕天使・悪魔・天使、三勢力の指導者たちによる会談の挙行が間近に迫った駒王町。そこに現れるヴァーリ、鬼崎、そして……。果たして彼らの目的は?

 一方、希望と決意を胸に三勢力会談に臨む尊とレイナーレ。2人は会談に先立ち、天界の長、天使長ミカエルと対面する。


第16話・天使の贈り物

 俺は今、駒王町の空に浮かび、街を見回している。

 

 今夜、アザゼルの提案でこの街の、リアス・グレモリーや【赤龍帝】兵藤一誠の通っている学校に、堕天使・天使・そして悪魔、長い間争って来た三勢力のトップたちが集まって会談が行われる。三勢力間の戦争を完全に終わらせて和平を結ぼうと。

 

 俺はその会談にアザゼルや國原尊、レイナーレたちと共に参加する為にこの街に来ている。彼らのボディーガード兼、何か起こった場合の戦闘要員という形で。そして今はちょっと用事があるからとアザゼルに断って、別行動を取らせて貰っている。仲間に会うために。

 

 その俺は浮かんでいる青空とは真逆の憂鬱な気持ちを抱えている。

 

 和平……争いのない平和な日常? そんなものの何が面白い? ただただ退屈なだけだ。俺は血沸き肉躍るスリリングな戦いを楽しみたいんだ。アザゼル、俺はあんたの事は嫌いじゃないが、その点だけは根本的に合わない。

 

「いよいよ今夜か……お偉いさんが雁首揃えてつまらない話し合いをするんだろうな……」

「つまらない世界には興味はない」

 

 知っている声が響く。俺が振り向いた先、電柱の上に立つ、足元まである長い黒髪の少女。その吸い込まれそうな大きな黒い瞳。

 

「オーフィスか?」

「ああ」

 

 そう。こんなか弱そうな姿だが、彼女こそ伝説の最強のドラゴン……【無限の龍神(ウラボロス・ドラゴン)】のオーフィスだ。

 

 ふと見るといつの間にか彼女は電柱から建物の屋根へと移っている。

 

「ヴァーリ、いつもそう言っている」

「ああ、俺はつまらない世界には興味がないんだ。ところでオーフィス、その姿をしているという事は……」

 

 普段の彼女は幼女の姿をしている。だが、今は人間界でいえば高校生くらいの成長した女の姿をしている。彼女がこの姿をしているという事は……

 

 「ああ。我、陽太郎と会う」

 オーフィスがかすかな笑みを浮かべる。普段は無表情な彼女が陽太郎のそばではほのかな喜びの感情を示す。

 

 まあ、そういう事だ。伝説の最強のドラゴンがこんな感情を見せるなど、俺も最初は信じられなかったが……

 

 「やあ、オーフィス。ヴァーリ」

 背後から声が響く。オーフィスは振り向いて嬉しそうな表情で相手を見つめる。

 

「陽太郎。待ってた」

「オーフィス、来てくれて嬉しいよ」

 

 オーフィスがいた建物の屋根に陽太郎が飛び移って彼女に歩み寄り、オーフィスは彼の体にそっと身を寄せる。

 

【挿絵表示】

 

 「陽太郎の体、温かくて気持ち良い」

 「オーフィス……」

 

 陽太郎がオーフィスの黒髪を優しく撫で、オーフィスは気持ち良さそうに身を任す。

 

「いよいよ今夜だな」

「ああ、そうだね……」

 

 うなずき合った瞬間、陽太郎の通信機が鳴る。

 「もしもし……あっ、リアス部長。何の用かな? えっ、そちらに来て欲しい? 分かったよ。すぐに行くから」

 

「リアス・グレモリーか?」

「ああ、話したい事があるから、すぐに来て欲しいって」

「こんな時に電話してくるとは……おそらく今夜の会談についての事だな。陽太郎、本当に君は彼女たちに信頼されたようだね」

「うん。でも、これからも怪しまれないよう、慎重に行動していくよ」

 

「陽太郎、行く?」

「うん。今夜の事もあるし、ここはグレモリー眷属たちの頼みに応えないとね。帰ったらまた一緒に過ごそう」

 

「我もヴァーリと同じ。つまらない世界に興味はない。でも、陽太郎と一緒にいるのは楽しい。陽太郎は好きに行動して良い。我はそれに付いていく」

「オーフィス……」

 

 陽太郎はオーフィスを愛しげに見つめると、その唇にチュッ……とキスをする。

 「んっ……」

 

 陽太郎は唇を離すともう一度、オーフィスに微笑む。

 「じゃあ、行ってくるよ」

 「うん。陽太郎、我、待ってる」

 

「ではヴァーリ、また今夜」

「ああ、よろしくな」

 

 陽太郎はさっ!とその場を去っていった。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 僕は2人と分かれて、リアス部長たちの待つ駒王学園へと向かう。別れ際、オーフィスは少し寂しそうにしていたが仕方がない。

 

 オーフィス! 帰ったらゆっくりと愛し合おう!

 心の中で彼女に叫びつつ、道を急ぐ。

 

 駒王学園の敷地内に入ると、女生徒たちが一斉に僕を見つめる。

 「えっ! ちょ、ちょっと! あの彼、スゴいイケメン!」

 「カッコ良いわね!」

 

 そんな声が響くが、僕は気にせずオカルト研究部の部室へと急ぐ。

 

「あっ! 陽太郎! 来てくれたのね!」

「鬼崎! 来てくれたか!」

「陽太郎くん!」

「陽太郎!」

「鬼崎先輩」

 

 グレモリー眷属の面々が僕を笑顔で迎えてくれる。いや、1名、僕とは初対面の金髪で色白で小柄な女の子がビクビクとふるえて一誠の背中に隠れつつ、怯えた表情で僕を見つめている。

 

「皆、久しぶり! ところでイッセー、その子は?」

「ああ、こいつはギャスパー。ハーフヴァンパイアでこんな姿してるが、れっきとした男だ」

 

 「えっ、男?」

 一誠の言葉に驚く。その容姿といい、身に付けている女子用の制服の似合い振りといい、怯えて一誠にすがっている様子といい、気弱な美少女にしか見えない。

 

「ああ、こいつ、女装趣味でな。人見知りが激しくて怖がりなんだ。大目に見てやってくれ。ほら、ギャスパー、こいつがこれまで何度も俺たちを助けてくれている鬼崎だ。挨拶しな」

 

 一誠に促されて、彼……ギャスパーは涙目で恐る恐るという感じで僕に頭を下げる。

 「き、鬼崎先輩……ぼ、僕、ギャスパー・ヴラディです……よろしくお願いします」

 「ああ、よろしく。僕が魔人の鬼崎陽太郎だ」

 

 僕は彼にうなずき、リアス部長の方へ振り返る。

 「ところで、リアス部長、僕に用というのは?」

 「あっ、そうね。ではそろそろ……お兄様」

 

 【お兄様】……!!

 

 その瞬間、部屋の奥から、長身で燃えるような長い赤い髪に青い瞳の美青年が姿を現した。その髪と美貌、醸し出す気品と威厳。間違いない。彼はまさしくリアス部長の兄の……

 

「初めまして。鬼崎陽太郎くん。私がリアスの兄、サーゼクス・ルシファーだ。先日のコカビエルの事件で妹たちを守ってくれて、さらにその前も力が暴走したイッセーくんを救ってくれたそうだね。リアスの兄として、そして魔王として心から礼を言わせて貰うよ。ありがとう」

 

 彼……魔王サーゼクス・ルシファーは頭を下げた。

 

「魔王様、魔王様ともあろう方が僕などにそのような事をなさって恐縮です。僕は大切な友達を助けたいと思っただけです」

「そうか。妹とその眷属たちをそのように思ってくれて嬉しいよ。そんな君を見込んでお願いがあるのだが」

 

「はい、何でしょうか?」

「今夜、私とセラフォルー・レヴィアタン、そしてアザゼルとミカエル、悪魔と堕天使、天使の三勢力の代表がこの学校に集まり会談を行う。我々の、そしてこの世界のこれからを決める重要な会談だ」

「はい……」

 

 「その会談に、鬼崎くん、君にも出て欲しいんだ」

 魔王の直々のお願いに僕は驚く。

 

「えっ? しかし、僕はグレモリー眷属でもなく、悪魔ですらない、完全な部外者。そんな僕がそのような地位の高い方々が集まる重要な会談に参加するなど……」

 

「鬼崎くん。今回の会談では君もよく知っている、我が妹とその眷属たち……特にイッセーくんと深い因縁のある、あの堕天使レイナーレと彼女の恋人の國原尊くん、その2人の処遇について話し合われる。リアスとイッセーくんを始め、ここにいるグレモリー眷属のほとんどは彼女たちに対する厳しい処罰を望んでいる」

「………………」

 

 僕は一誠とリアス部長、祐斗たちの顔を見回す。皆、一様に険しい表情だ。それは分かりきった事ではあるが、魔王の話の通り、彼らが皆、厳しい断罪を求めている事を示している。ただ、國原尊やレイナーレと親交のあったゼノヴィアは戸惑った表情で、ギャスパーは何の事か分からないという様子だが。

 

「だが、その2人はアザゼルのお気に入りだと聞くし、また、特に國原尊くんには大いに目をかけるべき所があると聞いている。彼のレイナーレに対する想いも真摯なようだ。だから私としては双方の話をよく聞いた上で態度を決めたいと思う」

「お兄様……!」

 

 リアス部長が不服そうに声を上げるが、サーゼクス・ルシファーは腕を差し出して黙るように伝え、リアス部長も渋々それに従う。

 

「そこで鬼崎くん、君にも会談に出て、意見があれば述べて欲しいんだ。君はレイナーレとも國原尊くんとも面識があり、妹やイッセーくんたちからの信頼も厚い。それに今回の会談は、こういう事は起こって欲しくないのだが……場合によってはとんでもない事態に発展しかねない。あのコカビエルをも圧倒する力を見せた君なら、そうした場合、大いに頼りになる。だから頼む。会談に出席して欲しい」

 

 サーゼクス・ルシファーは再び僕に頭を下げる。

 

 「陽太郎、私からもお願いするわ」

 「鬼崎、俺からも頼むぜ!」

 「陽太郎くん、頼むよ!」

 そこにいる他の皆も一斉に僕に頭を下げて頼んでくる。

 

 僕は彼らにうなずくと、サーゼクス・ルシファーの方に向き直って伝える。

 「分かりました。魔王様がそこまで仰り、そしてリアス部長と僕の大切な友達たちも望むのなら、引き受けさせて頂きます」

 

 「ありがとう。鬼崎くん」

 「陽太郎、ありがとう…」

 「鬼崎、すまねえ……ありがとよ!」

 「陽太郎くん、ありがとう……」

 サーゼクス・ルシファーが笑顔で僕に握手を求め、リアス部長と祐斗が心から嬉しそうな表情を浮かべ、一誠は僕の肩をバンバンと叩いた。

 

 当初、思っていた形とは違ったけれど、これで堂々と今回の会談に介入出来るし、魔王からの信頼も得られた。実に好都合!

 

 その後、僕はしばらく時間が欲しいと言って一旦、駒王学園を出て、ヴァーリに事の次第を報告した。

 

 僕がオカルト研究部の部室に戻って来ると、その場は騒然としていた。サーゼクス・ルシファーとリアス部長からその事情を詳しく聞いた僕は、急遽ある儀式の手伝いをする事となった。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 いよいよ三勢力会談の当日となった。会談の場となる駒王学園に向かうのは、アザゼル様と尊と私、カラワーナとミッテルト、ヴァーリの総勢6名だ。ちなみに私はさすがにいつものボンデージ姿という訳にはいかず、胸元が大きく開いた白のブラウスに黒のミニスカートという、いわゆる【女教師スタイル】をしている。尊はいつも通りの白のワイシャツに黒のズボンという姿だ。

 

「ううっ……!さすがにドキドキするっすよぉ~~!」

「ああ……私も正直大変緊張している……」

 

 ミッテルトとカラワーナは緊張を隠す事ができずそわそわとしている。私だって緊張で胸が張り裂けそうだし、尊も緊張のせいか表情が厳しくなっている。

 

 一方、アザゼル様はさすがに堂々としておいでで、ヴァーリもいつも通りの飄々とした態度だ。

 

「じゃあ、準備はいいな? では行くぞ!」

「はっ!!」

 

 「キュウウンッ……」

 レックスが寂しそうな声で鳴く。でも、さすがに今回の会談の席に彼を連れ込むという訳にはいかない。

 

「レックス、ごめんね。さっきも言ったけれど今回は連れて行けないんだ」

「レックス、ごめんなさい。帰ってきたらご馳走してあげるから」

「キュウン……」

 

 レックスは悲しそうな声をあげつつも頭を下げて承諾の意思を示す。尊と私はそんな彼の三つの頭を撫でる

 

 そして我々は床に描かれた魔方陣の中に足を踏み入れる。全員が魔方陣に入ったところでそれがまばゆい光を発して、私たちは一瞬の内に駒王町へとワープした。

 

 駒王町へ到着した私たち。このまますぐに駒王学園に向かうのかと思ったのだが……

 

「尊、レイナーレ、実はしばらく前にミカエルの奴から連絡があってな。会談の前にお前たちに内密で会いたいそうだ」

「えっ! ミカエル天使長様がでございますか!?」

 

「ああ、この前のコカビエルの一件でお前たちに礼を言っておきたいんだとよ。場所はこの先にある教会の敷地内だそうだ。奴はお前たち二人とだけで話をしたいそうだ。俺たちは近くのこの店で時間をつぶしてるから、終わったらここへ来い」

 

 「はっ! 承知いたしました!」

 アザゼル様のお言葉を受け、私と尊は終わった後の待ち合わせ場所を確認した上でその教会へと向かう。尊と手を繋いで。

 

「ミカエル天使長……どんな方なのかな?」

「私も会った事はないけれど……イリナやゼノヴィアの話からも、そして今回、私たちに個人的に会って礼をしたいという事からしても、きっと良い方なのだと思うわ」

 

 私の言葉に尊は微笑みつつ頷く。

 「うん! そうだよね!」

 

 その尊の笑顔を見つめつつ私は思う。

 ミコト、私はかつては天使として天界にいたけれども、最下級の下級堕天使に過ぎなかった私は、到底、当時から天界でも最上級の地位にあったミカエル天使長にお目通り出来るような立場ではなかったわ。

 

 それは堕天してからも同じ……やはり下級堕天使に過ぎない私はアザゼル様にもお目通りは叶わない立場だった。だから私は手段を選ばずに出世して、アザゼル様へのお目通りを果たそうとしてあんな事件を起こしてしまった。

 

 でもミコト、あなたはそんな私を愛して救ってくれて、私がこれまでどうあがいても叶わなかったアザゼル様へのお目通りをあっという間に果たさせてくれて、アザゼル様の信頼を勝ち取った! さらに私はあなたのおかげで今こうして、ミカエル天使長へのお目通りも果たそうとしている! あなたはなんてすごい子なの!! 私のミコト!!

 

 私の心に尊を愛おしく想う気持ちがあふれる。

 

 「あっ!あの教会だね!以前、見た事があるよ」

 尊が目的地の教会を見つけて、私は彼に手を引かれてその敷地内へと入った。するとそこには……

 

 「初めまして、あなたが黒龍王……國原尊くんですね?そしてあなたが堕天使のレイナーレさんですね? とても美しい方ですね……」

 そう語りかけてきた青年がいた。

 

 な、なんて美しい人……! 本当に男性なのかしら!? そしてこの人が……!!

 

 長く綺麗な金髪に青い目の整った美貌。豪華な白いローブに身を包み、頭の上には私が遠い昔に失った、天使の証たる光輪が浮かんでいる。そして背中には上級天使の証である金色の十二枚の翼が生えている。

 

 尊もさすがにその美貌に驚いていたようだが、しばらくして少し緊張した面持ちで彼に話しかける。

 「初めまして。僕がアザゼル総督閣下の部下の國原尊です。よろしくお願いいたします」

 

 尊が一礼したのを見届けて私も挨拶する。

 「初めまして、同じくアザゼル総督閣下の部下で、ミコトの恋人の堕天使レイナーレでございます。どうぞお見知りおきを」

 

 「ミカエル天使長様でございますね?」

 尊が彼に確認する。

 

 するとその美青年……ミカエル天使長は優雅に微笑む。

 「はい、私がミカエルです。どうぞよろしく」

 

 そう言いつつ、ミカエル天使長は尊に手を差し出して握手を求めた。尊はさすがに恐縮した様子を見せたが、天使長としっかりと握手を交わし、続いて私も握手をした。

 

「なるほど、このオーラの質、まさしくディヴェリクスですね。懐かしい限りです」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 僕はレイナーレと共に待ち合わせ場所である教会の敷地内に入って、ミカエル天使長と初めて会った。

 

 な、何て美しい人だ……!

 僕は一目見てそう思った。アザゼル様はワイルドな感じのイケメンだが、このミカエル天使長は女性と見違えるような美男だ。よく【天使のように美しい!】とか言うが、それはこのミカエル天使長のためにある言葉のような気がする。

 

 とはいえ、僕のレイナーレの美貌と美の女神にも勝る美しくていやらしい体の魅力はそれ以上だけれど……

 

「先日の事件の際には私の部下のイリナとゼノヴィア……ゼノヴィアはやむを得ぬ事情があって私の部下ではなくなってしまったのですが……2人が大変お世話になったとの事でありがとうございました」

 

 頭を下げるミカエル天使長、恐縮する僕たち。

 

「い、いえ、僕たちは天界の方々と良い関係を築いていきたい、その事を願っておりますので……それにコカビエルは我が堕天使陣営の幹部でもありましたので、その事で困難な状況に立たされたイリナさんやゼノヴィアさんを助けたのは当然の事です」

 

 ミカエル天使長はその端正な顔に微笑を浮かべる。

 「尊くん。イリナからも聞いておりますが、あなたは本当に誠実な人のようですね。あなたは堕天使のレイナーレさんを命を賭けて一途に愛して守り続け、先日は私の部下たちを助けてくれた……」

 

「イリナから聞きましたが、あなたは人間の身で堕天使のレイナーレさんと愛し合って彼女と添い遂げるために彼女と同じ堕天使になる事を望んでいると……その件ではあなたの主であるアザゼルからも話がありました。それでよろしいですね?」

 

 何よりも待ち望んでいた事がミカエル天使長の口から出て、僕の鼓動は一気に高鳴る。

 「は、はい! 僕はレイナーレを……彼女を心から愛しています! だから彼女と永遠に添い遂げたいのです! ですので天使長様、どうかお願いします!」

 

 僕は深々と頭を下げる。

 

「顔をお上げなさい。あなたが誠実な人柄である事、心から恋人のレイナーレさんの事を愛している事はイリナやゼノヴィアとの事、そして今のあなたの様子を見ていて間違いないだろうと思います。さらに私たちにはあなたに貸しもある。その事を考えればあなたの願いを聞き届けてあげたい。そう思います」

 

 ミカエル天使長の言葉に僕の心は希望に沸き立つ。だが、そこで天使長は少し厳しい表情を浮かべる。

 「ですが……」

 

「確かに私たちは転生天使を生み出すための技術の開発に取り組んでいます。あなたたちも既にご存じだと思いますが、我らの主、神は先の大戦でお亡くなりになられ、純粋な天使はもはや減る一方という状態が続いておりましたので、この技術の開発の正否は私たち天使の種族の存続において死活問題です。ですから真剣に取り組んでおります。ですが、その技術は現在ではまだ未完成の状況です……」

「そう、なのですね……」

 

 その技術が完成するのはすぐなのか、それともずっと先なのか、どうなんだろう……?

 先程から一転して僕の心に不安が広がる。ミカエル天使長は今度はレイナーレの方を見つめた。

 

 「レイナーレさん、あなたはあの赤龍帝……兵藤一誠くんを欺いて殺害した、さらに私たちの教会から追放されたアーシア・アルジェント、彼女の持つ神器【聖母の微笑】を奪うために彼女を殺害した。そのためにその赤龍帝をはじめとするグレモリー眷属の怒りを買って、彼らに追われていると聞きました」

 「はい、その通りでございます……」

 天使長の言葉にレイナーレは苦悶の表情を浮かべてそれを認める。その彼女に天使長は話を続ける。

 

「アーシア・アルジェントがそのような状況に追い込まれてしまった事については、彼女をやむなくですが追放してしまった私たちにも責任があります。ですので、その事であなたを責める資格は私にはありません。ですが、赤龍帝をはじめとするグレモリー眷属たちがあなたに対して怒っているのは当然かと思います」

「仰る通りです。私が愚かな事をしてしまったが故に……私は多くの人に多大な悲しみや苦しみ、迷惑をかけてしまいました」

 

 レイナーレの体がふるえる。僕は彼女の肩をそっと抱く。

 

「ですが、イリナから聞きました。レイナーレさん、あなたは過去に犯したそれらの罪を一切隠す事なく正直に打ち明けてくれたと……そして現在は過去の罪を悔いて、愛し合っている尊くんとやり直していこうと頑張っていると、そう聞きました。さらにあなたはコカビエルとの戦いで重傷を負ったイリナを介抱して助けてくれました」

 

 「ならば、私としてはあなたと尊くんの事を応援したいと思います」

 ミカエル天使長……ミカエル様は優しい目でレイナーレと僕を見つめて仰った……

 

「天使長様……!」

 

「尊くん、レイナーレさん、私は今度の会談を三大勢力が手を取り合う大きな機会だと思っているのですよ。先ほどの話の通り、私たちの神は大戦で亡くなられ、敵対していた旧魔王たちも戦死し、堕天使も大きな犠牲を出してアザゼルももう戦争を起こしたくないと少なくとも建前上は口にしています」

 

「天使長様! アザゼル様のそのお言葉は決して建前などではありません! アザゼル様は本当に、先の大戦で多くの部下の方々を死なせてしまったと心の底から悔いておられます! そして戦争を絶対に起こしてはならないと強く思っておいでなのです!」

 

 そう、僕は知っている。アザゼル様は本当にそのような情の厚いお方だと。

 

 するとミカエル様は僕を見て微笑まれる。

 「尊くん……あなたは心からアザゼルの事を信じて、そして尊敬しているのですね……」

 

「はい!アザゼル様はグレモリー眷属に憎まれて追い詰められた僕たちを保護してくださり、僕のレイナーレへの気持ちを、レイナーレの犯した罪を悔いてやり直したいという気持ちを理解してくださり、レイナーレの罪を許してくださいました。そしてグレモリー眷属の反発を買ってでも僕たちを守ってくださり、常に気遣ってくださっています。僕はそんなアザゼル様を心から尊敬しています」

 

 「なるほど……私は過去にアザゼルとは色々とありましてね。正直、彼の言葉を信じ切れない部分があるのですが、でも、尊くん、あなたがそう言うのならそうなのでしょうね……」

 ミカエル様はまた優しい微笑みを浮かべた。

 

「それならば、なおの事、これは好機ですよ。無駄な争いを無くすためのチャンスなのです。このまま小規模な争いが断続的に続けば、いずれ三大勢力は滅ぶ。そうでなくても、横合いから他の勢力が攻め込んでくるかもしれません」

 

 【他の勢力】……それは一体?

 

「それで、尊くん」

「は、はい!」

 

「先ほどの転生天使を生み出す技術についてなのですが……実はその実現のためには堕天使と悪魔、その両陣営の協力を得る事が不可欠なのです」

「えっ?」

 

「この事はまだ内密という事でお願いしますが……私たちの開発しようとしているその技術は、あなたの主アザゼルの技術と、転生悪魔を生み出す【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】の技術を応用するというものなのです」

 

 そうか……その【悪魔の駒】によって、兵藤や木場は人間から悪魔へと転生したんだ。そしてアザゼル様の持つ技術は、天界でも模範とされるほどの高度な技術なんだ。それならその技術を用いて、レイナーレが望んでいた【聖母の微笑】に代わる力を彼女が身につける事はもちろん、僕が堕天使になる事もきっと可能に……!

 

 僕は目の前にまた大きな可能性が開けた気がした。

 

「ですから、その二つの技術を本格的に学ぶためには堕天使と悪魔、その双方との和平が絶対不可欠なのです。そのためにもこの会談は必ず成功させなければなりません」

 

 決意を込めた表情でミカエル様は言い、僕とレイナーレを見つめる。

 「そして和平が成立して我々の技術開発が成功したならば、その時は……尊くん、レイナーレさん、あなたたちのお願いに応える事ができるはずです」

 

 「天使長様! あ、ありがとうございます!」

 僕とレイナーレは共に感激しつつ、ミカエル様に礼を申し上げた。アザゼル様と同じく、このミカエル様もやはり人の上に立つべき寛容さ・度量を持ち合わせている。あの度量の狭い、憎しみに凝り固まったグレモリー眷属たちとは全く違う!

 

「まだ礼を言うのは早いですよ。まずは会談を成功させる事、それが大事です。そこでは尊くん、あなたも発言されるのでしょう? 頑張ってください。それが終わった所で、具体的な話をする事にしましょう」

「はい! 頑張ります!」

 

「よろしい。その意気ですよ。ところで、レイナーレさん」

「は、はい!」

「あなたがアーシア・アルジェントから奪った【聖母の微笑】、あれについては?」

 

「は、はい。もちろん、あれはグレモリー家へお返しします。あれがあればアーシア……さんは転生悪魔として蘇る事ができるという事なので……その為に既に私の体から抜いて、今はアザゼル様がお持ちです。そして今日の会談の際に返還する事になっております」

 

「なるほど。そうしなければ悪魔側も誰一人として納得はしないでしょうから……それでレイナーレさん、あなたはその【聖母の微笑】に代わる力を得たいとは思いませんか?」

 

 レイナーレは自分が望んでいた事を思いもかけずミカエル様に言われて驚きつつも、真摯な表情でミカエル様を見つめつつ答える。

 「えっ!? そ、それは欲しいです。でも、あのアーシアさんの神器を欲した時の気持ちとは違います。あの時の私は自分の身勝手な目的のために何の罪もないアーシアさんを犠牲にしてしまいました……本当に彼女には申し訳なかったと思います。でも、今は愛しいミコトのために、彼を支えるために私は癒しの力が欲しいのです! 私を一途に愛してくれて、私を何よりも大切にしてくれているミコトのために、私は力が欲しいのです!」

「レイナーレ……」

 

 「そうですか。ならば、これをあなたに差し上げましょう」

 ミカエル様は白く光り輝く【何か】をレイナーレに差し出した。よく見るとそれはカプセルに覆われていて、中に白く輝く液体のようなものが入っていて、それが渦巻いている。

 

「天使長様……これは……?」

「はるか昔、神がエジプトから脱出したイスラエルの人々に与えたという神の食物【マナ】それを基に作り出したいわば人工の【マナ】です。本物のマナが砂漠で食料を得られないイスラエルの人々を支え続けたように、この【マナ】はこれを宿す本人と、その本人が大切に思う人の傷や疲れを癒す事ができます。このエネルギーは使ってもカプセルの中で絶えず再生を繰り返し、使い続ける事ができます」

 

 あの『旧約聖書』の「出エジプト記」に出てくる神の食物【マナ】を基にした癒しのエネルギー! アーシアさんの【聖母の微笑】は傷を癒すだけだけれども、これは疲れをも癒す事が出来る! そ、それは凄い! でも……

 

「天使長様、これはどのようにして使えば良いのでしょうか?それと、今、【大切に思う人】と仰いましたが、それはどのような範囲の人を指すのでしょうか?」

 

 「最初の質問についてですが、これは保有者が自分の体内に取り込む事によって使う事ができます。神器保有者であればその神器に統合するという形で使用できるのですが、レイナーレさんの場合、現在神器を持っていませんので、アザゼルの【人工神器】の技術とこの【人工マナ】の技術を組み合わせて、新たな神器を作り出すという形にするのが良いでしょう。アザゼルに頼めばすぐにやってくれるでしょう」

 僕の問いにミカエル様はそう仰った。

 

「あの、天使長様……【人工神器】の技術というのは?そしてそれをアザゼル様にお願いすればというのはどういう事でございましょうか?」

 

 【人工神器】について初めて聞いたレイナーレが当然疑問を呈する。そこで僕は彼女に説明する。

 

「レイナーレ、君はアーシアさんの体から神器を抜き取って自分の体内に取り込んだわけだけれど、実はそれは君の体にとって大変危険な事だったんだ」

「えっ!?」

 

「他人の神器を自分の体内に取り込む。それは君も聞いた事があると思うけれど【拒絶反応】を起こす可能性が極めて高いんだ。体が外から入った【異物】である神器を受け入れずに、そのために体に障害を起こしたり、自分の寿命を縮めてしまったり……だから、今回、こういう形でもアーシアさんに神器を返したのは君にとってもとても良い事だったんだ」

 

 「………………」

 さすがにレイナーレはショックを受けている様子だ。おそらく彼女はそういう可能性がきわめて高確率で起こるという事実を全く念頭に置いていなかったのだろう。

 

「だからアザゼル様はそうした【拒絶反応】が起こらないように、神器を持たない者が安全に神器を持てるようになる事を望まれて、それぞれの人の体に合った【人造神器】の開発に取り組まれたんだ。僕はそれを先日のあの兵藤たちの襲撃をアザゼル様に報告に行った時にアザゼル様ご自身から聞いたんだ。でも、アザゼル様は君にはそれをまだ伝えないようにと仰った。神器を抜く大変な苦痛を伴う儀式を前に君にショックを与えたくないからと……だから君には黙っていたんだ」

 

「そう……だったのね……だからあの時、アザゼル様はミコト、あなただけを呼んでお話しになったのね……」

 

 「レイナーレ、ショックだった?」

 「ええ、確かにショックだったわ……だってあの時の私がどこまで愚かだったか、それを改めて思い知らされたから……あの行為にそんな危険が伴う事も全く頭になくて……アザゼル様のお気持ちも知らず……自分の実力も計れず……ミコト、心から私を愛して心配してくれたあなたが止めるのも聞かずにあんな事をしてしまって……そんな自分が本当に情けなくて……」

 レイナーレはうつむきつつ悔恨の表情で言った。

 

 しかし、次の瞬間、彼女は顔を上げてしっかりと僕を見つめて言った。

 「でも、そのアザゼル様の【人造神器】のお話だけれど、それをもうアザゼル様はしっかり実用化されているという事よね?」

 「うん、そうだよ。アザゼル様は【まだ、本物の神器に比べて若干、性能が劣る部分もあったりするが、ちゃんと使える物が出来ている】と仰っていた。だからアザゼル様にお願いすれば、きっと、先ほどいただいた装置を基にレイナーレ、君が望む神器を作ってくださるよ」

 

 「じゃあ、私はこの天使長様からいただいた神器を基に癒しの力を手に入れられるのね! ミコト、あなたをこれで支える事ができるのね! 良かったっ! 良かったっ!」

 レイナーレの美貌が歓喜に輝く。そんな彼女を見て僕もとても嬉しく、彼女を愛おしく思う気持ちに満ちあふれる。

 

 「それでは、レイナーレさんもしっかりと事情を理解出来たようですし、話を進めてよろしいですか?」

 「も、申し訳ありません! お待たせしてしまいまして」

 僕はミカエル様を待たせてしまっていた事を謝罪する。

 

「良いのですよ。そして、第二の質問についてですが……【マナ】は元々、食物ですので、それを基にしたこの【人造マナ】も経口摂取、すなわち癒しを受ける人は口から体内に取り入れる事になります。ですから……少し申し上げ難いのですが……保有者の唾液や汗……レイナーレさんの場合はその……女性ですから……【乳汁】という形で提供するという事になると思います」

 

 ミカエル様は、さすがに神聖なる天使の長だけに美貌を赤く染めて恥ずかしげだ。そしてレイナーレもやはり美貌を真っ赤に染めて恥ずかしがっている。

 

 でも、僕は確かに恥ずかしさも感じたけれども気持ちは大いに高揚している。

 レイナーレのあのいやらしい素晴らしい乳首から乳汁が吸える……! しかもそれが僕にとっての癒しの力に……!! なんてなんて素晴らしい事なのっ!!

 

 そしてレイナーレも人前だから恥ずかしがってはいるけれど……

 

 「私のこの乳首があなたの神器の発動の源……あの【ニプルブラスト】の凄まじいパワーもこの乳首から出る。それならその力をあなたを癒す力にも還元できるんじゃないかと思うの」

 そう、彼女は自分の乳首が僕を癒す力になる事を切望してくれている……!

 

 僕の脳裏に、レイナーレがあのいやらしい乳首から乳汁をあふれ出させている姿が浮かび、僕の股間は激しく猛り立つ!

 

【挿絵表示】

 

 そんな僕の様子に気付いているのかいないのか、ミカエル様は恥ずかしそうな様子で話を続けられる。

 「そんな訳ですので……この【人工マナ】を基にした神器で癒す事が出来る対象は、通常、保有者にとって特別な人に限られます」

 

 それはそうだよね……だってこれで癒されるためには、癒される人は保有者の乳首を吸うか、キスをするか、汗をなめるか、いずれかしかないんだものね……よほど特別な関係でなければとても出来ないよね……でも、僕とレイナーレなら……!

 

 「以上で私の説明は終わります。その上でレイナーレさん、あなたはこの神器を欲しますか?」

 ミカエル様はレイナーレにやはり顔を赤く染めつつ聞く。

 

 レイナーレもやはり顔を赤く染めつつも叫ぶ。

 「はい! 天使長様! 私はその力を欲します! 確かに恥ずかしくはございますが、でも愛しいミコトを支える為ですもの! そんな恥ずかしさなんかに負けるわけにはいきませんわ! ありがたく頂戴いたします!」

 

 レイナーレ!!

 彼女の言葉に僕の心は歓喜で高鳴る……!

 

 「そうですか。では、どうぞお受け取りください」

 ミカエル様はレイナーレに【人工マナ】の装置を手渡し、それをレイナーレはうやうやしく受け取る。

 

「その【人工マナ】は和平を結ぶに際しての、私から堕天使サイドへのプレゼントです。あなたたちならまず間違いはないかと思いますが、正しく使って役立ててください」

「はい! 大事に正しく使わせていただきます!」

 

 「では、そろそろ私はひとまず退散します。また後ほど会談の席でお会いしましょう。そしてその際にはまた改めて先ほど約束した件についてお話ししましょう」

 「はい! よろしくお願いいたします!」

 ミカエル様と僕たちはひとまずお別れの挨拶をした。

 

 次の瞬間、ミカエル様の全身を光が包み込む。僕たちはそのミカエル様に改めて礼を述べる。

 「天使長様!!ありがとうございます!!」

 

 ミカエル様が微笑んだ瞬間、その姿は消え去った。その場に残った僕とレイナーレはお互いを見つめ合う。

 

「ミカエル様、とてもよいお方だね……」

「そうね……私たちの事をとても気遣ってくださっていたわね。これできっと和平も成立するわね!」

「うん……そうだね!」

 

 そう、堕天使と天使のそれぞれの長が、共に強い決意を持って和平を結ぼうとされている事がこれではっきりと確認できた。さらにリアス・グレモリーの兄の魔王サーゼクス・ルシファーも和平に心が大きく傾いていると聞く。これはレイナーレと僕に執拗な憎悪と殺意を抱く兵藤をはじめとするグレモリー眷属たちを抑える大きな力になる!

 

 それにしても……アザゼル様もミカエル様も、共に一大勢力の長としての賢明さと大きな度量、寛容な心をお持ちだ。部下の人たちからお二人は大変慕われていると聞くが、それも心から納得出来る。あの狭量で執念深く、感情のままに暴発するグレモリー眷属たちとはやはり違う!

 

 僕がそんな事を考えていると、レイナーレが僕を悪戯っぽい目で見つめる。

 「ところでミコト、あなた、ミカエル様が【人工マナ】の説明をしていた時、オチンチンをずいぶんと大きくしていたわよね……? ウフッ……どうせ頭の中で私を裸にしていやらしい事ばかり考えていたんでしょ? エッチ♪」

 

【挿絵表示】

 

 レイナーレは薄いブラウスの上にくっきりと浮き出している大きく卑猥な乳首を、僕を常に虜にしてやまないいやらしい乳首を指でいじって見せつけつつ、妖艶な表情で僕を見つめる。

 

 「そ、そうだよ!その通りだよ! 僕は君が好きでたまらないんだもの! そういう君だってミカエル様に【確かに恥ずかしくはございますが、でも愛しいミコトを支える為ですもの! そんな恥ずかしさなんかに負けるわけにはいきませんわ!】と言ってくれたじゃない!」

 僕はあえて開き直って堂々と叫んだ。

 

 するとレイナーレは僕を潤んだ目で見つめて言う。

 「ウフッ、そうね。その通りよ。だってミコト、あなたは私を一途に命を賭けて愛してくれて、滅びの道をひたすら歩んでいた私を救い出してくれて、私にそれまで一度もなかった素晴らしい幸せを与えてくれているんだもの。そんなあなたを支える為なら、私はどんないやらしい事も平気だもの……ミコト、私、必ずこの装置を基に癒しの力を身につけるわ! そしてこの体であなたを癒して支えるわ!」

 「レイナーレ……!」

 

「そしてミコト、あなたならこの後の会談をきっと間違いなく乗り切って堕天使になる事が出来るわ! そして永遠に私と一緒にいて! 私のミコト!」

 

 そう叫んでレイナーレは僕に抱きついてくる。僕はその彼女をしっかりと抱き締める。彼女の張り詰めた大きな胸の感触を感じつつ。

 

「ああっ! ミコト! 私を絶対に離さないで!」

「離さないよ! 絶対に君を離すものか! 僕のレイナーレ!」

「ああっ……! ミコト……! 嬉しい! 嬉しいわ!」

 

 僕たちはそっと互いに顔を寄せて唇を重ね、舌と舌を合わせる。

 「あむっ……ああっ……ミコトっ……愛してる……愛してるわっ……るろっ……れろれろっ……」

 「ううんっ……ぷはあっ……ああっ……レイナーレっ……僕も……僕も愛してるっ……愛してるよっ……」

 

 そして……

 

 「じゃあ、そろそろ行こう! アザゼル様が指定されたお店へ! 皆が待っているから!」

 「ええ! 行きましょう!」

 僕とレイナーレは手を取り合ってその場所へと急ぐ。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「ほう! ミカエルの奴、お前たちにプレゼントか! あいつも粋な計らいするじゃねえか! それにしても【人工マナ】……レイナーレの乳から摂取ってか! ミコト、良かったなぁ! ハッハッハッ!!」

 

 僕たちの報告を聞いて大笑いするアザゼル様。さすがに僕たちも恥ずかしく、レイナーレは顔を真っ赤にする。

 

「そ、総督閣下……せ、せめてお声を……周りに多くの人がいるわけでございますし……」

「ああ、こいつはすまねえ」

 

 頭を掻くアザゼル様に僕はお願いする。

 「そ、それで総督閣下……大変恐縮なのですが、このいただいた【人工マナ】と総督閣下の【人工神器】の技術によって、レイナーレのための神器を作っていただければと思うのですが、お願いできますでしょうか……?」

 

「おう! 任せときな! この会談から帰ったらすぐにやってやるぜ! なあに、この俺にかかりゃあ、そのくらいあっという間だぜ!」

「あ、ありがとうございます!」

 

 基になる素材があるからといって神器を作り出すのを「あっという間」って……アザゼル様はどれほどすごい技術をお持ちなんだろう!

 

「いいって事よ。それから尊、ミカエルの奴はお前が堕天使になる事にも協力するって言ってたんだろ?」

「は、はい……それで総督閣下、これについてはミカエル様はまだ内密にと仰っていたのですが……転生天使を生み出す技術の開発には総督閣下の【人工神器】の技術と、【悪魔の駒】の技術、その二つを学ぶ必要があるとの事でした。その事もあってミカエル様は今回の和平の実現に大いに期待していると仰いました」

 

 アザゼル様はうなずかれる。

 「それはそうだよな……神が死んで以来、純粋な天使は減り続け、種の存続が危うい状態になってるからな。先の大戦で三大種族はいずれも手酷え打撃を受けた。またでかい戦いが起こりゃ、今度は間違いなく三大種族は共倒れで滅んじまう。そうならないようにするには和平を結んでお互いの種族の存続に協力し合う……それしかねえんだ。そしてそれをミカエルもサーゼクスも理解してる。だからこの和平は必ず成立するはずだ」

 

 そのお言葉を聞いて、僕の胸は大いに高鳴る。

 和平が成立すれば、アザゼル様は天界に【人工神器】の技術を伝授され、一方、天界は悪魔陣営からも【悪魔の駒】の技術を伝授される。そうすれば僕はミカエル様によって転生天使にしていただき、そして念願の堕天使になれる!

 

 僕は隣にいるレイナーレを見る。するとレイナーレも目を輝かせて僕に大きくうなずき、僕は彼女の手を取る。

 

 「レイナーレ様、ミコト殿、良い結果になりそうで良かったです!」

 「姉さま、ミコトくん、良かったっす!」

 カラワーナさんとミッテルトちゃんもそう言ってくれる。

 

 一方、ヴァーリさんは一人、その端正な顔につまらなそうな表情を浮かべて黙っている。

 

 ヴァーリさん……?

 僕は彼の様子が少し気になったが、あえて聞かなかった。

 

「喜ぶのはまだ早いぜ。その和平を結ぶ三勢力会談はこれからだからな。お前たちもこれまでの事から分かってるように、グレモリー眷属の奴らは絶対、レイナーレ、お前に対する厳罰を要求してくるのは間違いねえ……まあ、それを聞いてサーゼクスが連中の感情に流されたり、ミカエルが気持ちを翻したりする事はまずねえと思うが、どうせなら尊、サーゼクスもお前の意見にしっかりと同意させてみろ」

「は、はいっ!!」

 

「ミコト、お願いね!」

「ミコト殿、お願いいたします!」

「ミコトくん、お願いっす!」

 

 「うんっ!! 任せて!!」

 皆の言葉に僕は大きく頷く。絶対にグレモリー眷属からレイナーレを弁護して彼女を守る! その決意を込めて。

 

 そして僕はふと気になった事をアザゼル様に尋ねる。

 「そういえば総督閣下、レイナーレの体から除いたアーシアさんの神器、あれは会談の時に返すのでしょうか?」

 

 「ああ、あれはもうグレモリー眷属の奴らに返したぜ」

 「えっ!?」

 僕もレイナーレもびっくりして思わず大声を上げる。

 

 「さっき、お前たちを待っている間にな。結構時間がかかりそうだったし、ちょっくら駒王学園に行って渡してきた」

 「あっ……! そう言えば総督閣下、先ほど【ちょっと出かけてくる。何、すぐに戻ってくる】と仰せになって席を外されましたが……私どもはどなたかに連絡を取りに行かれたのかと思いましたが……その際に……!」

 カラワーナさんが驚いた様子で言った。

 

 「ああ、奴ら俺を思いっきり警戒しててな……俺が神器を返してやったらしこたま驚いてやがった……」

 アザゼル様はおかしそうに笑われる。

 

「って訳でな、これからやる会談にアーシアも出てくるかもしれねえぜ。グレモリー眷属の一員としてな」

「そ、そうでございますか……」

 

 レイナーレは不安そうな表情を見せる。僕はそんな彼女にささやく。

 「大丈夫だよ」

 

「総督閣下、僕はレイナーレと話があるので、しばらく席を外したいのですが、よろしいでしょうか?」

「ああ、構わねえぜ」

 

 僕はアザゼル様に一礼すると、レイナーレの手を取って席を立つ。

 「レイナーレ、ちょっとあちらに……」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 ミカエル様との謁見の後、尊と共にアザゼル様ご指定の待ち合わせ場所に直行した私。そしてアザゼル様は私たちの神器作製のお願いを快く引き受けてくださり、さらにこれから行われる和平会談が成功するであろう事を告げられた。

 

 これで私はミコトを支える神器を持てるのね! そして和平が結ばれればミコトは私と同じ堕天使に……!

 私の心に大きな希望が広がる。

 

 だが、その後、アザゼル様は私たちを待っている間にグレモリー眷属の奴らにアーシアの神器を返した事を告げられた。私はてっきり、会談の結果、和平が成立した折に、その証として返すものだと思っていたが。

 

 そしてアザゼル様は神器を返した事によって、すぐにもアーシアが転生悪魔として蘇って、あの娘が三勢力会談の場にも出てくるかもしれないと仰っていた。私も一誠はともかく、アーシアには心から申し訳なかったと思っているし、今回、神器を返した事であの娘が蘇るのは良かったと思う。

 

 だが、会談であの娘が私の姿を見たなら、一誠と同様に私を激しく憎んで非難し、私を断罪する事を主張するのではないかという恐れもある。なにしろ私は自分の身勝手な野望のために罪もないあの娘を殺してしまったのだから……そしてもし、そのような事になったら、それで和平の実現が失敗したり、私を本当に断罪するなどということにはならないとしても、会談の雰囲気はきわめて悪くなり、後々に大きな問題を残すことになるのは間違いない。

 

 私がそんな事を思っていると、尊は私の様子から私のそんな不安を感じ取ったようで、アザゼル様に「少し彼女と話をしたいので席を外させていただきたい」と申し上げた。するとアザゼル様も尊と同様に感じられておられたようで、それに許可を与えられた。

 

 尊は私の手を取って、少し離れた場所に連れてきて聞いた。

 「レイナーレ、君はアーシアさんが蘇って会談に出てくる事について不安を感じているんだよね?」

 

 「ええ、だって私、あの娘にあんな酷い事をしてしまったから……あの娘が一誠と同じく私を憎んで私の断罪を求めてくるんじゃないかって……」

 私は率直に自分の気持ちを伝えた。

 

 「そう? 僕は逆にこれは君と僕にとって良い方向に繋がると思うし、アザゼル様もそうお考えになっての事だと思うんだけど」

 「えっ!?」

 

「前に僕がグレモリー眷属たちに、アーシアさんの神器を返すから、レイナーレ、君の事を許して欲しいと願った時に、兵藤は【アーシアの命をダシに取引をもちかけるとは汚い奴】と罵ったよね。でも、今回、会談より先に神器を返す事によって、そう言う彼の主張を封じる事が出来るし、兵藤たちはともかく魔王や天界に対して、あの事件の事を強く反省しているという事を示す事も出来る」

「あっ……!」

 

「それにね、レイナーレ。僕はアーシアさんは兵藤とは違うと思うの。兵藤は君を執念深く憎んで報復する事ばかりを考えているけれど、アーシアさんは……もちろん、あんな事があった訳だから、君に対する恐れはあるかと思うけれど、君が心から反省して謝れば、改心してやり直したいと伝えれば、彼女ならきっと許してくれると思うの」

「えっ……」

 

 尊の話に私は考える。確かにあの【聖女】と呼ばれたアーシア……あの娘なら許してくれるかもしれない。でも……

 

 「で、でも……いくらあの娘が優しい子だからといって、本当にあんな事をしてしまった私を許してくれるのかしら?」

 私は拭いきれない不安を口にする。

 

「大丈夫だよ。僕はアーシアさんとそれなりに話をしているし、彼女ならきっと許してくれると確信しているよ。ただ、それにはさっきも言ったように君がしっかりと彼女に謝る必要がある。出来るよね?兵藤に対しては難しくてもアーシアさんに対してなら。もちろん僕も一緒に謝るよ。だから一緒にアーシアさんに謝ろうね!」

尊はそう言った。私を力づけるようにしっかりとした口調で。そんなこの子の優しさに、心強さに私は強く勇気づけられる!

 

 「ええ! ええ、ミコト! 私、アーシアに、あの娘にしっかりと謝るわ!!本当に心から申し訳なかったって!」

 そう叫んで私は尊に抱きつく。尊はそんな私を優しい目で見つめて強く抱きしめてくれる。

 

 私と尊はそっと顔を寄せて、唇を重ねた。そして私たちは皆の待つ席へと戻った。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 その日の深夜、ついに三勢力会談の時が来た。僕たちはその会場を目指して、夜の駒王学園の校内をアザゼル様を先頭に歩いている。僕にとっては見慣れた場所であるものの、こうして真夜中の校内を歩くのは初めてだし、もちろんレイナーレたちにとっては初めての場所だ。ちなみに今はレイナーレは本来の堕天使としての彼女の姿、すなわちあの性的魅力にあふれた素晴らしい体のほとんどが露出した黒のボンデージ姿に戻っている。

 

 その会場は学園内の職員会議室。聞けば、現在、この学園全体が強力な結界で囲まれ、今回の会談出席者とその関係者以外は誰も中に入れなくなっているそうだ。さらに会談が終わるまでは中にいる者も一切外には出られないとの事だ。ちなみにこの学園は旧校舎と新校舎に大きく分かれ、職員会議室は新校舎にある。

 

 結界の外は、天使・堕天使・悪魔の三勢力の軍勢が囲んでいるとの事。いずれも殺気立っていて一触即発の状態だという事だ。それぞれの陣営のトップは争う気はなくても下の者たちはそうではない。これまでの長い戦いによる深い憎しみ、不信感は相互の間に深く陰を落としているという事だろう。あの、堕天使に対して強烈な嫌悪と不信感を抱いているグレモリー眷属のように……

 

 つまり、もし協議が決裂したり、会談中に何かあればすぐさま戦闘が始まるということなのだ。アザゼル様やミカエル様の和平成立に賭ける強い思いを知り、サーゼクス・ルシファーも和平に乗り気だと聞いている僕としてはそんな事はないはずと思うが、それでも不測の事態がもし起こったら……という不安は禁じ得ない。

 

「うわぁ~~ウチ、体がふるえてどうしようもないっすよぉ~~」

「バカ! あまりガタガタふるえるな! みっともない!」

「そういうアンタだって思い切り冷や汗かいてるじゃないっすかぁ~~」

 

 そんなミッテルトちゃんとカラワーナさんの会話が後ろから聞こえる。僕の隣のレイナーレも必死で動じまいとしているが、やはり緊張と恐れとで体がふるえている。僕はそんな彼女の手をしっかりと握る。

 

 「あっ……」

 「大丈夫だよ。僕に任せて」

 僕は彼女を安心させようと必死で緊張を抑えて笑顔を見せる。

 

 「ええ、ありがとう……ミコト……!」

 レイナーレも勇気を奮い立たせて僕を見つめる。僕はそんな彼女の健気さに胸が熱くなる。

 

 ついに僕たちは会場の職員会議室の前に到着する。

 

 「じゃあ、入るぜ」

 アザゼル様が先頭に立って中に入り、続いてヴァーリさん、僕とレイナーレ、さらにカラワーナさんとミッテルトちゃんが続いた。

 

(次回に続く)

 

 




 今回の第16話。以前のお話との大きな変更点は、伝説の最強のドラゴンにして【禍の団】のトップ、そしてこの物語においては鬼崎と相思相愛の関係にあるオーフィスの初登場の場面が入っている事です。

 以前のお話ではオーフィスの初登場は三勢力会談の後だったのですが、恋人の鬼崎の登場が大きく早まった事もあり、彼女の登場も早くなりました。

 無表情で無口であり「何を考えているのか分からない」と言われるオーフィスですが、鬼崎の前では恋する乙女のような様子を見せる、そして普段、大胆不敵で計算高い様子の鬼崎が彼女に対しては愛情をはっきりと示している、この2人が今後どうなっていくのか?それも今後の見所となります。

 ちなみに今回のお話し中に出てきたように、普段は幼女の姿をしているオーフィスが鬼崎といる時には成長した大人バージョンの姿になります。この事も彼女にとって鬼崎が特別な存在である事を示しています。

 グレモリー眷属一同とサーゼクスによって会談の場に出る事を頼まれて了承した鬼崎、及び会談による和平が成立する事が【つまらない】と露骨に不満を示しているヴァーリ、彼らが会談の場においてどんな行動に出るかも注目です。

 一方、尊とレイナーレの2人に関わる場面では、前回の第15話に引き続き、今回も神器関係の話がメインになりました。第15話でレイナーレがアーシアから奪った神器が彼女の体から抜かれた訳ですが、今回、それがアザゼルの手によってグレモリー眷属に返還されました。

 原作・アニメにおいては、この神器を手に入れた事でレイナーレはどう転んでも悲劇しかなかったわけなのですが(ToT)、この作品ではレイナーレはこの力で愛する尊をサポートし、傷ついたイリナをこの力で癒した事でミカエルの好意も得たという訳で、短い期間ですが大いに役立ちました!

 尊&レイナーレとミカエルの初対面。これは原作における一誠とミカエルの初対面の場面を参考にしていますが、原作の場所が神社だったのに対し、この作品では教会の敷地内に変えました。これは原作では神社の巫女である朱乃が一誠とミカエルの間を取り持ったのに対して、この作品で対面したのは天使長と堕天使陣営の者であり、神社でというのは不自然なので教会でという事にしました。

 また、原作ではミカエルから一誠への贈り物は聖剣であり、一誠はその聖剣を赤龍帝の籠手に統合させていましたが、尊は彼の【仇敵】の一誠や木場のような接近戦タイプのキャラではないので聖剣は似合いませんし、【聖母の微笑】を手放したレイナーレが愛しい尊を支えるために新たな癒しの力を求めるというのはストーリー的にしっくり来ると考え、あのような形に変えました。

 そして【マナ】。これは作品中で述べられたように『旧約聖書』の「出エジプト記」に出てくるもので、聖書の中に書かれているその形態と味(白くてミルクのように甘い)、そしてレイナーレと尊がお互いを片時も離さないほどに甘々ラブラブな関係で、尊がレイナーレの乳首が大好きといった事からこういう設定を考えました(笑)

 アザゼルとミカエル、この2人は姿的にはワイルドなイケメンのアザゼルに対し、女性と見違えるような美男のミカエルと好対照ですが、共に思慮深さと種族や地位の違いにこだわらない度量の広さを持ち、部下たちの信頼は厚いという共通点がありますね。

 それに対してグレモリー眷属の面々は若いだけに血の気が多くて、感情のままに突っ走って過激な行動に走りやすく、しばしば不寛容な態度も見せるといった部分があって、それが尊&レイナーレとの関係にも大きく影響している部分があります。

 次回はいよいよ三勢力会談の場面を描く事になります。レイナーレへの厳罰を求める一誠たちグレモリー眷属に尊がどう反論するのか、その結果は果たしてどうなるのか、ご期待ください!^^
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