※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D~情念の炎~(完全版)   作:ドミトリ

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 いよいよ三勢力和平会談が始まり、リアスや一誠たちグレモリー眷属はレイナーレたちの断罪を強く求め、それに反論する尊。果たして会談の行方は……!



第17話・三勢力会談

 三勢力会談の場である駒王学園職員室に入った僕たち。そこに入った瞬間目にしたものは……

 

 今日のこの会談のために特別に用意したのだろう。大きく豪華なテーブルがそこには置かれ、それを囲むように既にやってきていた天界と悪魔陣営のトップたちであろう人々が座っている。さすがに事が事だけに皆が真剣な面持ちだ。その中で僕が見知っている顔は金色の翼を生やしたミカエル様と、テーブルから離れた壁際にある椅子に座っている支取生徒会長……ソーナ・シトリー先輩だけだ。もっとも支取会長については顔はよく知っているが、これまで直接話した事はない。そしてもう一人、僕たちを驚かせたのが……

 

 鬼崎!!?

 そう、そこにいたのはあの鬼崎陽太郎だった。彼は例の不敵な笑みを浮かべて僕たちを見つめている。彼もあの僕と兵藤との戦いや、コカビエルの事件に直接関わったから、事件の当事者という事で悪魔陣営の要望で参加しているという事か……

 

 ………………

 僕の胸に、そしてレイナーレの表情にも緊張が走る。

 

 「ほう、あの魔人の小僧、こんなとこにまで出張ってきやがったか……」

 アザゼル様は鬼崎を一睨みする。鬼崎はそれにまるで動じる様子もなく、静かに会釈をする。

 

 「……フン」

 アザゼル様は鬼崎に対して【お前から目を離さないぜ!】という警告の意味を込めた感じでもう一睨みした後、ミカエル様をはじめとする他の会談参加者の方へ向き直る。

 

 「よう! 久しぶりじゃねえか! 天界と悪魔の諸君!」

 アザゼル様の挨拶はいつも通りのおどけた感じで、そこにいる皆が呆れたような表情を浮かべる。

 

「アザゼル、今日はこのような重要な場です。少しはそれをわきまえては?」

「ミカエル、お前、相変わらず堅えなぁ~~」

 

 ミカエル様の指摘にもアザゼル様はその飄々とした態度を崩さない。そんなアザゼル様の様子に僕たちは心強さを覚える。他勢力の人たちから見ればバカにしているように映るかとも思うが。

 

 「あれが、ミカエル天使長……!」

 「ふえええ……! 綺麗な人っす!」

 ミカエル様を始めて見たカラワーナさんとミッテルトちゃんが、その男性とは思えない美貌に驚いている。

 

 ミカエル様の隣には、やはり長い見事な金髪で青い目で、レイナーレと同様に胸が大きくてスタイル抜群の素晴らしい美女が座っている。彼女の翼はミカエル様と異なり金色ではなく純白だ。

 

「総督閣下、あの方は……?」

「ああ、そういや尊、お前がこの中で知ってるのはミカエルとソーナだけだったか?

「いえ、会長は顔は何度も見ていますが、まだ直接話した事はありません」

 

「そうか。じゃあ、そこにいる連中を俺が紹介してやる。まずはお前が気になったあの女……あれはミカエルの側近の上級天使ガブリエルだ。どうだ? いい女だろ?」

 

 アザゼル様は彼女……ガブリエル様を紹介しつつニヤリと笑う。そして僕とガブリエル様の目が合う。彼女はにっこりと微笑む。その彼女に僕は慌てて会釈を返す。すると、僕はグイッ! といきなり袖を引っ張られる。

 

 「ちょっと……ミコト……何をデレデレしてるのよ……」

 レイナーレが目を怒らせている。

 

 「そんな事ないよ!僕には君だけだよ!」

 そう、ガブリエル様を見て美しいとは思うけれど、僕にとってレイナーレに勝る女性はいない! 心からそう思っているから……!

 

「本当に……?」

「もちろんだよ!」

 

 「分かったわ。嬉しいわ、ミコト!」

 僕の返答にレイナーレは嬉しそうに微笑む。僕が言いよどんだりせずに、しっかりと言い切った事で安心してくれたのだろう。彼女が誤解を解いてくれた事に安心する僕。

 

 「尊、お前、完全に尻に敷かれてんなぁ~~」

 「全く……ミコト殿とレイナーレ様はこんな時にまで……」

 アザゼル様が呆れたような口調で、カラワーナさんは怒ったような口調で言い、ミッテルトちゃんはニヤニヤと悪戯っぽく笑っている。

 

 「まあ……ミコトさんとレイナーレさんは本当に仲がよろしいんですね。ウフフ」

 ガブリエル様はにこやかに微笑んだ。

 

 「じゃあ、改めて紹介するぜ。あそこに座ってるのがリアスの兄貴で現魔王の一人、サーゼクス・ルシファーだ」

 アザゼル様がミカエル様たちと離れた場所に座っている、こちらも大変な美青年を紹介した。燃えるような赤い髪に青い目に整った顔……それは確かにグレモリー先輩によく似ていた。

 

「やあ、君が噂の國原尊くんか。そして君が堕天使レイナーレ……我が妹たちとは色々とあったようだね……それについてはこの後、よく話を聞かせてもらうよ」

「はっ、魔王様。アザゼル様の部下でレイナーレの恋人の國原尊でございます。この度は僕たちに申し開きの機会を与えて頂き、ありがとうございます。そして本当に申し訳ありません」

「堕天使レイナーレにございます。私が犯してしまった罪については弁解の仕様もございません。魔王様、本当に申し訳ありません」

 

 魔王に対して深々と頭を下げて謝罪する僕とレイナーレ。僕はその魔王……サーゼクス・ルシファーの言葉と僕たちを見つめる目に、僕の、そしてレイナーレの心を見透かそうとするような意思を感じた。さすがに妹たちと深すぎる因縁を持つ僕たちに対しては簡単に心を許すわけには魔王としてもいかないのだろう。

 

 レイナーレは必死で気丈に振舞っているが、魔王の言葉と視線に恐怖を感じたのだろう。強い緊張感を漂わせた表情をしている。僕はまたその彼女の手を握って勇気づける。

 

「じゃあ、次だ……サーゼクスの隣に座ってる、あれがサーゼクスと同じ現魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタン、ソーナの姉だ」

 

 えっ!? 彼女が!!?

 僕は驚いた。そこにいるのは、長い黒髪をツインテールにまとめた童顔の可愛らしい美少女。

 この女の子が魔王の一人! いや、どう見ても僕と同学年くらい、いや、年下にも見える。ちなみにその童顔に似合わず、スタイルはなかなか良い。はっきり言って胸は小さい妹のソーナ…支取会長に比べると明らかにその点は勝っている(失礼)

 

 すると彼女……セラフォルー・レヴィアタン様はハイテンションな調子で話しかけてきた。

 「キミがあの有名な【黒龍王】のミコトくん? なかなか可愛らしいじゃない☆ そしてあなたがレイナーレちゃんね☆ ふふっ☆ ずいぶんと綺麗な子ね☆ あっ、そうそう私、魔王セラフォルー・レヴィアタンです☆ 【レヴィアたん】って呼んでね☆」

 

 ピースサインをするセラフォルー様。その彼女に僕も、レイナーレも呆気にとられながらも挨拶する。

 

「は、はじめまして、國原尊です。人間ですが、アザゼル様にお仕えしています。よろしくお願いいたします」

「私はアザゼル様の部下で、ミコトの恋人の堕天使レイナーレです。どうぞよろしくお願いいたします」

 

「うんうん、聞いてるわよ☆ キミたち、とってもラブラブなんだって☆ そしてミコトくんは大好きなレイナーレちゃんのためにとっても頑張っちゃってるって☆ ところでサーゼクスちゃん、ダメでしょ☆ さっきはこんなラブラブな二人を脅かすような事を言って☆ めっ☆」

 

 セラフォルー様はサーゼクス・ルシファーに対し僕たちを庇う態度を示してくれた。先ほどからの好意的な発言といい、彼女は僕たちに好感を持ってくれているようだ。

 

 「セラフォルー……私とてここで堕天使と和平を結びたいし、彼女たちを罰したい訳でもない。ただ、妹たちの事もあって、私としても今回の件はいい加減に済ます訳にはいかないのだよ。というわけで尊くん、レイナーレ、私は君たちの話をしっかりと聞きたい。妹たちの話しか私はまだ聞いていないからね」

 サーゼクス・ルシファーの青い瞳が僕とレイナーレをしっかりと見つめる。

 

 「はっ! 承知しました!」

 僕は答えつつ思う。このサーゼクス・ルシファーも妹やその眷属に僕たちに厳しい態度を!と迫られつつも、僕たちの言い分も聞いて、出来るだけ公平に対応しようと考えてくれているようだ。

 

 アザゼル様やミカエル様はもとより、このサーゼクス・ルシファーもセラフォルー様も、やはり人の上に立つ者だけの事はある。グレモリー眷属たちの一方的な言い分だけでは判断しようとせず、僕たちを先入観なしに観察し、今回の事件を最も互いに良い形になるよう裁決しようと考えている事が分かる。僕たちへの憎悪にとらわれ、報復することばかりを考えている狭量なグレモリー眷属たちとは全く器が違う!

 

 「こんにちは。國原くん。顔は何度も合わせていますが、こうして直接話すのは初めてですね」

 今度はソーナ・シトリー先輩……支取生徒会長が話しかけてきた。

 

「は、はい、会長、よろしくお願いいたします」

 

 「そしてあなたが國原くんの恋人の堕天使レイナーレさん。リアスから色々と聞いていますが、彼女たちグレモリー眷属、特に兵藤一誠くんとは色々とあったようですね……」

 会長はレイナーレを、彼女の心を見透かそうとするような眼差しで見つめて言った。

 

 「は、はい……その事は大変申し訳なく思っております……」

 レイナーレは緊張した面持ちで頭を下げる。やはり彼女としても相手はグレモリー家と並ぶ悪魔の名門の令嬢で現魔王の妹だ。これまでの経緯もあり、心中は複雑だろう。

 

「よく分かっているとは思いますが、兵藤くんをはじめグレモリー眷属の皆はいまだあなたに強い怒りを抱いています。くれぐれも言動には注意を」

 

 会長の言葉にレイナーレの表情は曇る。会長としては警告という事で言ってくれたのではないかと思うが。

 

 「………………はい…………」

 レイナーレはうなだれつつうなずく。僕はその彼女の肩を抱く。

 

「大丈夫……僕が一緒にいるから」

「ミコト、ええ……!」

 

 そんな僕たちの前をメイド姿の女性がお茶や菓子を載せたプレートを持って通りかかり、彼女は僕たちを一瞥して通り過ぎた。

 …………!!

 

 編んだ長い銀髪に青い目、そして赤い唇が印象的な女性。顔もスタイルも抜群だが、僕は彼女の鋭い目つき、視線が気になった。

 「総督閣下、あの女性の方はどなたでしょうか……?」

 

「ああ……あいつはグレイフィア・ルキフグス。サーゼクスのワイフ。つまりリアスの義理の姉だ」

「えっ!? 魔王様の奥様!? で、でも、そんな方がメイド姿で給仕をしているなんて……」

 

 「ああ、あれはあいつがそれが好きだから、趣味でサーゼクスと結婚してからもずっとやってるんだとよ」

 驚く僕にアザゼル様はそう説明して下さった。

 

 「ちなみにあいつは絶対に怒らせねえ方がいいぜ……昔は【銀髪の殲滅女王】と呼ばれて、セラフォルーと【最強の女性悪魔】の座を争ったほどの女だ」

 「そうなのですね……」

 なるほど……さっき彼女の視線を受けてすごい威圧感を感じたけれど……それほどに強い女性なんだ……

 

「サーゼクスの奴も完全にあいつの尻に敷かれてるからな。何かあった時にグレイフィアの名前を出せばサーゼクスは思いっきりビビるってのは有名な話だ」

 

 すると彼女……グレイフィア・ルキフグス様のドスの効いた低い、しかしよく通る声が響く。

 「アザゼル総督、何をコソコソと話されているので……?」

 

 「い、いや、何でもねえよ……」

 アザゼル様はやや気後れしたような感じで話を打ち切った。

 

 「アザゼル、そろそろリアスとその眷属たちがこちらに到着するから、自分の席についてくれ。尊くんたちは……あちらの席に座ってくれたまえ」

 サーゼクス・ルシファーが僕たちに支取会長が座っている席の向かい側の壁際にある席を示す。

 

 「では、こちらへ……」

 グレイフィア様が僕とレイナーレ、カラワーナさんとミッテルトちゃんの4人を案内してくれる。

 

「じゃあ、尊、頑張れよ」

「はっ!」

 

 アザゼル様の激励を受け、僕たちは案内された席に座る。否応梨なしに緊張が高まる中、僕は隣のやはり緊張した面持ちのレイナーレの手をまた握る。そしてしばらくして、コンコン! と扉を叩く音が響いた。

 

 「失礼します」

 グレモリー先輩の声が聞こえ、それに続いて彼女を先頭にグレモリー眷属の面々が部屋の中へと入って来る。そして……

 

 アーシアさん!!

 兵藤の後に入って来た金髪の小柄な少女……そう、それはまぎれもなく、以前、レイナーレの手で神器を抜き取られて死んだあのアーシアさんだった。

 本当に……! 蘇ったんだ! アーシアさん!

 

 「レイナーレ様……! そしてミコトさん……!」

 僕たちの姿を見つけたアーシアさんは僕たちの名を叫びつつ、ビクッ! と小さな体をふるわせると、怯えたような表情でレイナーレを見つめ、兵藤の服の端をつかむ。すると兵藤は彼女の手を握りつつ、レイナーレと僕を憎悪のこもった凄まじい表情で睨みつける。だが、さすがに場が場だけに、兵藤も僕たちを睨みつけながらもそれ以上の事はせずに部屋の中へと進み、それに続いて姫島先輩、木場、ゼノヴィアさん、塔城が入ってくる。

 

 他の面々が兵藤同様にレイナーレと僕を憎悪の目で睨んでいるのに対して、アーシアさんは当初の怯えたような表情から困惑したような表情に変わって、レイナーレと僕の方をチラチラと見ている。そしてゼノヴィアさんは心配そうな表情でやはり僕たちを見ている。

 

 僕としてはレイナーレのためにも、すぐにでもアーシアさんに語りかけて、あの時の事を謝罪したかったが、さすがにこの場にいる高位の方々の手前、いきなり僕がこの場で発言する訳にはいかない。

 

 「私の妹と、その眷属だ」

 サーゼクス・ルシファーが会場の皆に紹介し、グレモリー先輩が一同に会釈をする。

 

 「先日のコカビエル襲撃の際、彼女たちが活躍してくれた」

 「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」

 サーゼクス・ルシファーの言葉をを受けてミカエル様が丁重に礼を述べられた。

 

 それに対してグレモリー先輩は黙って会釈を返しただけだった。天界の長の丁重な礼に対して無礼な気がするが、恐らく彼女は堕天使に対してほどではないにしても、天使に対してもいまだ不信感が強いのだろう。

 

 「悪かったな。俺のところのコカビエルが迷惑をかけた」

 アザゼル様はいつも通りの口調でそう仰った。アザゼル様らしい態度だと思うが、グレモリー先輩は反省の色なしと見たのだろうが怒りで口元をひきつかせ、兵藤や木場、姫島先輩らも怒りの表情でアザゼル様を睨んでいる。

 

 「あなたのところが迷惑をかけたのはその件だけじゃないわね。あちらに座っている彼女たちの事も……まあ、それについてはこれから言わせてもらうわ」

 グレモリー先輩がアザゼル様を、そしてレイナーレと僕の方を怒りの目で睨みつけ、彼女たちは支取会長の隣、僕たちの反対側の壁際の席に腰掛ける。当然のごとく、僕たちに対して彼らの憎悪に満ちた視線が注がれる。

 

 そこでそれまで立っていた鬼崎も木場の隣の席に歩み寄り、そこに腰かけた。何か声を掛け合っている二人。その様子から察するにこの二人はかなり仲が良いようだ。

 

 「全員が揃ったところで、会談の前提条件を一つ。ここにいる者たちは最重要禁則事項である【神の不在】を認知している」

 サーゼクス・ルシファーがその場の全員を見回しつつ言った。皆が一様にうなずく。

 

 「では、それを認知しているとして、話を進める」

 サーゼクス・ルシファーのその一言で三勢力会談が始まった。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 目の前ではミカエル様、サーゼクス・ルシファー、そしてアザゼル様がそれぞれの考えを述べている。

 

 やはり三人とも和平を結ばねば三勢力は共に衰退し、滅ぶ事になるという事で意見は一致しているという事か……

 

 僕はその事を確認して少し安堵する。とはいえ、ミカエル様とサーゼクス・ルシファーが至極真面目に話しているのに対して、アザゼル様は時折それを茶化すような事を言い、それに周囲の面々が不快感を示してその場が凍り付くという場面が度々あって、僕はヒヤヒヤする。

 

 僕は隣にいるレイナーレを見つめる。彼女の顔はこれ以上ないほどに緊張して、冷や汗が流れ落ちている。無理もない。ただでさえ、緊張する三勢力のトップたちの会談だという事に加え、グレモリー眷属たちの憎悪に満ちた視線にその身をさらし、その上、かつて自分が殺してしまった相手が目の前にいるというのだから。

 

 僕はそのレイナーレの美しい顔……ほとんど全裸に近いボンデージ姿の彼女の素晴らしい魅惑の美しくいやらしい体に目を注ぐ……彼女の情熱的な赤い瞳の整った美貌……香しい匂いの艶やかな長い黒髪……張り詰めた美しく大きな胸……その胸に食い込んでいる黒の胸当てを今にも突き破りそうなほどに硬く勃起して、くっきりと浮かび上がっている大きく卑猥な乳首……引き締まったへそ……くびれた腰……しなやかな手足……

 

 僕の脳裏に、全裸になったレイナーレが、そのたとえようもないほどに美しくいやらしい裸体を、特にあまりにも過敏な大きく卑猥な乳首を僕に攻められて甘い声であえぎ、絶叫する姿が、そして淫らにあえぎながら

「ミコト……! 愛してるわ……!!」

 

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と僕に愛の言葉を叫ぶ彼女が浮かび、僕の股間は激しくうずき、僕の胸に彼女を何としてでも守りたいという熱い想いが沸き立つ……!

 

 僕はまたレイナーレの手を握る。本当なら、今、この場で彼女を思いきり抱き締めたいのだが、さすがにそうはいかないのでそれしか彼女を励ます術がないから。するとレイナーレは微笑み、そして僕の手を握り返してくる。

 

 「ミコト、ありがとう……! 私、ミコトの手から勇気をもらっているのよ……!」

 彼女は小さな声でささやいた。そして、僕はそんな僕たちの様子をアーシアさんがその青く澄んだ瞳でじっと見つめているのに気がつく。

 

 しばらくしてサーゼクス・ルシファーが僕たちとグレモリー先輩たちの方を交互に見つめて言った。

 「さて、ではそろそろ、例の事件について話してもらおうか。まずはリアスとイッセーくんに事件の概要を話してもらい、その上で尊くんとレイナーレ、さらには二人の主たるアザゼルにそれについて話を聞くという形にしたいのだが、それで良いかな?」

 

 「はい、それで構いません」

 「承知致しました」

 「ああ、それでいいぜ」

 僕とレイナーレが一礼しつつ同意し、アザゼル様もうなずかれる。ついにその時が来たのだ!

 

 まずグレモリー先輩が立ち上がって話を始めた。

 「こちらにいる堕天使レイナーレとその部下たちは、私の縄張りであるこの駒王町に勝手に入り、そしてこのレイナーレは私の駒王学園の生徒であるこちらの兵藤一誠に【あなたの彼女になりたい】と騙して近付き、彼の心を弄んだ末に殺害しました」

 

 「レイナーレ、今、リアスが言った事はそれで相違ないかな?」

 「はい、相違ございません……」

 サーゼクス・ルシファーの問いにレイナーレはうつむきつつ答える。

 

 グレモリー先輩はそんな彼女を冷たい眼で見据えつつ続ける。

 「そしてその直後、私はレイナーレに殺された一誠を【悪魔の駒】により蘇らせ、転生悪魔として私の眷属としました」

 

 「ではイッセー、この後はあなたが皆様にお伝えして」

 「はい」

 今度は兵藤がグレモリー先輩の後を引き継ぐ形で説明を続ける。

 

 「レイナーレ……こいつとそこにいるその仲間たちは、俺が悪魔として蘇った後も、何度も俺を襲撃しました。部長から警告も受けたのにそれを無視して……たとえばそこにいるそいつとか……」

 兵藤はカラワーナさんを指さして糾弾する。

 

「さらにこいつらは俺たちと契約を結んだ人を【汚らわしい悪魔と契約を結んだから】と言って残酷な方法で殺しました。さらにこいつはそこにいるアザゼルに取り入って出世したいという身勝手な目的でここにいるアーシアから神器を奪って彼女を殺しました。そして俺の事を散々に嘲笑しました」

 

 兵藤は憎悪に満ちた表情でレイナーレを指さしつつ彼女を糾弾する。レイナーレは彼の容赦ない言葉に体をふるわせつつ必死で耐えている。僕はそんな彼女の手を握って彼女を支える。

 

「そこで俺たちはこいつらに当然の報いを受けさせようと、こいつらのいた教会を攻めてこいつらを追い詰めました。だけど、そこにいる國原、こいつが【レイナーレは僕が好きな女だから】とかばい立てして刃向かい、こいつらは罪を償う事なく逃げ出しました。そしてこいつらは恥知らずにも上司のアザゼルに頼んで匿ってもらい、アザゼルもリアス部長からの要請を無視してこいつらを庇い続けています」

 

 僕たちを罵り、アザゼル様の事も呼び捨てにして、無礼極まる態度を取る兵藤……そしてその彼の糾弾を聞いたサーゼクス・ルシファーは僕たちの方を見てまた尋ねた。

 「今、イッセーくんが言った事もそれで相違ないかな?」

 

 「それは……」

 「レイナーレ、それについては僕が話すよ」

 僕はレイナーレを押しとどめて返答する。

 

「大体においては事実です。しかし、彼らと契約を結んだ方を殺害した件についてはレイナーレは無実です。あれは当時、彼女に仕えていたエクソシストで、その後、彼女を裏切ってコカビエルの下に行ったフリード・セルゼン、彼の勝手な独断によるものです。その事については僕もレイナーレがその件で彼を問い正すところを見ておりますので間違いありませんし、実行犯が彼である事は、今、そこで語った兵藤くんもその場で見ているはずですので」

 

 「ケッ、仮にそうだったとしてもてめえの部下の監督不行き届きって事じゃねえか! 親分が汚ねえ奴だから部下も汚ねえ奴になるんだよ!」

 兵藤が忌々しげに叫んだ。

 

「なるほど……では、事件に関する報告はひとまずこんな所かな。ではリアス、君たちがこの事件に関して求める事を述べてみなさい」

「はい。私は彼女たちが停戦協定を無視して私たちの縄張りに勝手に入り、そこで勝手な事をした事、私の眷属である一誠を先ほど彼が述べたように私の警告も無視して何度も襲撃した事、私たちと契約を結んだ人を惨殺した事、自分の身勝手な目的の為にアーシアを殺して神器を奪った事……このような大罪を彼女たちは幾つも犯している以上、私たちがこれまで要請してきた通り、私たちに彼女たちの身柄を引き渡してもらい、その処分は私たちに一任する……そのようにお願いします」

 

 そうグレモリー先輩は冷徹な表情でレイナーレを睨みつけつつ、当然だという口調で述べた。そしてそれを聞いたレイナーレの体が激しくふるえる。

 

 「大丈夫だから」

 僕は小声で彼女にささやき、力づける。

 

 「そうか……では、今のリアスの主張に対して、君たちに言いたい事があれば忌憚なく述べて欲しい」

 「はい」

 僕はうなずきつつ立ち上がり、反論を始める。

 

 「グレモリー先輩、あなた方の求める【処分】というのは、あなた方の手でレイナーレやカラワーナさん、ミッテルトちゃんたちを処刑する……そういう事ですよね?」

 僕はずばり聞いた。

 

 「そうよ。当然じゃない。レイナーレの所業はもとより、そこのカラワーナとかいう部下の女も私が警告をした後も理不尽にもイッセーを襲った。これだけの事をした相手にはそれだけの処置をしなければ私たちのメンツが立たないし、イッセーをはじめ、私の眷属たちも納得出来ないわ」

 グレモリー先輩はそう言い放ち、その彼女の言葉に兵藤はもちろん、木場も姫島先輩も搭城も、そして鬼崎も至極当然だとうなずく。

 

 しかしアーシアさんは戸惑った表情を浮かべ、ゼノヴィアさんも

 「それは……」

と困惑した様子を見せている。そのグレモリー眷属の面々のそれぞれの反応は僕が予想していた通りだ。

 

 「グレモリー先輩、その件については僕も心からお詫びいたします。そしてアーシアさんと兵藤くんには特に……僕もレイナーレの恋人として、彼女のその目的を知っていながら彼女を止める事が出来ませんでした……ですから僕も同罪です。本当に申し訳ありませんでした」

 僕はまずはそう謝罪した。

 

 「ミコト……」

 「ミコトさん……」

 レイナーレが潤んだ目で僕を見つめ、アーシアさんも僕をじっと見つめている。

 

 一方、兵藤は嫌悪感に満ちた目で僕を睨む。

 「ケッ! 白々しくもよく言うぜ! 本当は悪いなんて欠片も思ってねえクセしやがってよ!」

 

 「ただ言葉だけの謝罪ではね……ちゃんと目に見える形でケジメをつけてもらわないと誰も納得出来ないよ」

 鬼崎が冷徹な表情で僕たちを見据える。

 

 僕は彼らの言葉に言い返しはせずグレモリー先輩に語りかける

 「ですが、グレモリー先輩、今、あなたが仰ったレイナーレたちのした事への報復は、もう十分果たされていると思うのですが」

 

 「えっ!?」

 「國原、てめえ何をふざけた事を……!」

 グレモリー先輩が驚き、兵藤は僕に怒りを露わにする。僕はそんな二人に努めて冷静に語りかける。

 

「グレモリー先輩、あなた方はレイナーレたちへの報復の為、あの教会を襲撃し、レイナーレにとって大切な存在だったドーナシークさんを殺害し、レイナーレたちを追い詰めて死の恐怖を味あわせて、あの教会から追放しました。そして彼女たちはその後もお尋ね者として追われて、いつ捕らえられて殺されるかという恐怖にずっと襲われ続けてきました。もうそれであの時の報復は十分果たされていると僕は思うのですが。この上、さらにレイナーレやカラワーナさん、ミッテルトちゃんを殺すというのは、それはいわば【倍返し】、【過剰報復】と言えるのではと思いますが」

「ふざけないで!」

 

 僕の言葉にグレモリー先輩は叫んだ。

 「あなたたち人間界の法律ではそうかもしれないけれど、私たちの世界では私たちの流儀、ルールがあるのよ! 自分たちのテリトリーが荒らされたら、眷属たちが危害を加えられたら、それにしっかりと報いを与えなければ私たちのメンツが立たないし、秩序が保てないのよ!」

 

 その彼女の主張は僕は完全に予想していた。そこで僕はこう切り返した。

 「それならば、今後は冥界も、人間界のルールに学ぶべきではと思うのですが」

 

【挿絵表示】

 

「な、何ですって!?」

「その【受けた危害に対しては倍返しでやり返す事でメンツを保ち、相手を牽制して味方の結束を固める】という姿勢が、これまでの三勢力間のお互いの憎悪と対立をどんどん増幅させ、戦争をより激しく、残酷にさせて、それを長引かせてきたのではないでしょうか?」

 

「人間界でははるか昔、【ハンムラビ法典】というものが出されました。これは相手から加えられた危害と同じだけの報復をする事で収める事によって、報復の【倍返し】による争いのエスカレートを防ぐ事で社会の秩序を保とうとするものです。そうした人間界のルールを冥界でも取り入れる事が、今、和平を結ぼうとしている三勢力間では必要なのではないでしょうか?」

 

 「う~~む……なるほど……」

 「確かに一理あるよね……」

 僕の言葉にサーゼクス・ルシファーは考え込む様子を見せ、その隣のセラフォルー様もうなずいている。だが、そこで今度はまたグレモリー先輩が反論する。

 

「なるほどね。でも、それを言うなら、少なくとも実行犯のレイナーレとカラワーナの2人にはしっかりと刑に服してもらう義務があるわよね。レイナーレはイッセーとアーシアの命を奪い、さらにアーシアを誘拐した時にもイッセーに光槍を突き刺したわ。そしてカラワーナも私の警告を無視してイッセーを襲い殺人未遂を犯した。この罪を野放しには出来ないわよね?」

 

 僕も即座に反論する。

 「でも、あなた方もドーナシークさんを殺しましたよね?」

 「!……」

 

 グレモリー先輩は眉をピクリと上げる。

 「グレモリー先輩には取るに足らない相手だったかもしれませんが、レイナーレたちにとっては大切な仲間だったのです」

 

 僕がそう述べたところで、サーゼクス・ルシファーとセラフォルー様が割って入った。

 

「もう、ここまでで良いだろう。これ以上争うなら、もう戦うしかなくなる。それは我々悪魔も、堕天使も双方、得しない。リアス、イッセーくん、君たちグレモリー眷属も、そして尊くん、レイナーレたち、君たちも、共に将来大きく伸びる素質を持っている。そんな君たちがここで潰し合うなど、あまりにも惜しい」

「そうだよ! キミたちとても有望で将来の悪魔と堕天使の未来を担う人材なのに、ここで潰し合うなんてもったいないよ!」

 

 サーゼクス・ルシファー……サーゼクス様とセラフォルー様はグレモリー先輩と兵藤たち、そして僕とレイナーレたちの両方を真摯な目で見つめつつ説得した。

 

「お兄様……セラフォルー様……」

「サーゼクス様……セラフォルー様……」

 

 魔王2人の説得に、グレモリー先輩も兵藤も考え込む様子を見せる。そしてしばらくしてグレモリー先輩は顔を上げ、サーゼクス様と兵藤に言った。

 「確かにそうですわね……私たちはもう十分に報復は果たした。そしてあの堕天使……ドーナシークの主を守ろうとするあの姿は立派だった。だから彼に免じて、もう彼女たちを追い詰めるのは終わりとしますわ。ただし、イッセーとアーシアにはしっかりと謝罪してもらいますけど。イッセー、あなたは気が済まない部分があると思うけれど……ごめんなさい。それで納得して頂戴」

 

「リアス。ありがとう。嬉しいよ」

「分かりました。正直まだ納得出来ない所はありますが、サーゼクス様とセラフォルー様、そして部長もそう言うのなら、俺は従います」

 

 グレモリー先輩の言葉にサーゼクス様は嬉しそうに微笑み、兵藤も厳しい表情は浮かべつつも承諾の意を明らかにした。木場や姫島先輩、塔城たちは不満気な表情を浮かべるが、魔王2人と主のグレモリー先輩が僕たちを許すと決めた以上、彼らも表立って反対は出来ないはずだ。

 

「という事だ。尊くん、レイナーレ、私たちが君たちに求めるのはイッセーくんとアーシアさんへの謝罪のみ。受け入れてくれるね?」

「はい。魔王様、ありがとうございます」

 

 僕とレイナーレはサーゼクス様に深々と頭を下げて心からの礼を述べ、その後、僕はその場にいる皆を見つめて伝える。

 「皆様、レイナーレはあの時の事を心から悔いています。そしてアーシアさんと兵藤くんに謝罪をしたいと申しています。この場を借りて、それをさせて頂いてよろしいでしょうか?」

 

 僕の言葉にサーゼクス・ルシファーがうなずき、皆に聞く。

 「リアスとイッセーくんもああ言った事だし、レイナーレの謝罪を聞いた上で私たちが正式に裁決を下すという事で皆、問題ないね?」

 

 「もちろん異議なし☆」

 「ええ、それでよろしいかと思います」

 セラフォルー様とミカエル様が快く同意してくれた。

 

 「では、レイナーレ」

 僕が彼女に促し、彼女はうなずくと、まずアーシアさんの方を向いて、その場にひざまずき謝罪する。

 

「アーシア……さん、私は自分の愚かしい目的の為にあなたに酷い事をしてしまった……本当に申し訳ないと思っているわ……ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」

 

 そう叫ぶ彼女の目から涙があふれ落ちる。アーシアさんはそんな彼女をじっと見つめている。

 「レイナーレ様……」

 

「でも、アーシアさん。私はミコトに愛されて、彼に命懸けで守られて、愛する人と共に生きる幸せ、それが出世や名声などよりもずっと大切なものという事を知ったの……だからお願い! 死ぬ事ではなくて生きて、あなたの役に立つ事であなたにこれまでの事を償わせて! お願い! お願いします!」

 

【挿絵表示】

 

 レイナーレは涙ながらに訴える。その彼女にアーシアさんの声が響く。

 「レイナーレ様、お顔をお上げください」

 

 アーシアさんは涙に濡れた顔で自分を見つめているレイナーレに優しい声で語る。

 「レイナーレ様……確かに以前、私はあなたを恐れていましたし、あなたのされた事を恨みに思った事もありました。でも、私、リアスお姉様に蘇らせていただいた後、ゼノヴィアさんから聞きました。あなたが大きく変わられたという事を……そして先程からのミコトさんとの様子を拝見して、それが間違いないと確信しました」

 「ア、アーシアさん……」

 

「それに私、今はとっても幸せですから……! 大好きなイッセーさんと、そしてリアスお姉様に朱乃さん、祐斗さんに小猫ちゃんにゼノヴィアさんにギャスパーくん、イッセーさんのお父様にお母様……皆、とっても良い人に囲まれて、私はこれまでで一番幸せな日々を過ごしています……! ですからレイナーレ様、もう私は過去の事は恨んでいません。だから、あなたもミコトさんとどうぞお幸せに過ごしてください! それと、私の事はこれまで通り【アーシア】と呼び捨てで良いですよ」

 

 アーシアさんは慈愛に満ちた……まさに【聖女】の呼び名にふさわしい優しい笑顔を見せた。

 

 「ア、アーシア……ありがとう……! ありがとう!」

レイナーレは感激の涙をポロポロと流し、僕もその様子を感動の思いで見守る。

 

 アーシアさん……! 悪魔になっても、彼女の心の優しさ……清らかさは全く変わっていない!

 

 「アーシアさん、僕からも謝るよ。僕はレイナーレの恋人なのに彼女を止める事が出来なかった。そして君をあんな事に……ごめんなさい」

 「良いのですよ! ミコトさんは私に優しくしてくださいましたし、レイナーレ様もミコトさんが一緒なら、もう絶対大丈夫だって私は確信していますから! ミコトさん、レイナーレ様の事をよろしく頼みますね!」

 僕の謝罪にアーシアさんはそう微笑んだ。

 

 「アーシアさん……ありがとう!!」

 僕はアーシアさんに心から礼を述べた。

 

 そして僕は周囲を見回す。三大勢力の長の方々は、祝福するように微笑み、その中でもセラフォルー様は感激して涙ぐんでいる。

 「アーシアちゃん……レイナーレちゃん、私、感動しちゃったわ☆」

 

 僕は思わず嬉しさで胸がいっぱいになりつつも、そこで気を引き締める。そう、まだ兵藤に対する謝罪が残っているのだ。

 

 「では、レイナーレ、次は兵藤くんに……」

 僕は彼女に今度は兵藤への謝罪を促す。アーシアさんに対する時とは全く違う、重苦しい気持ちを抱えつつ。

 

 「ええ……」

 レイナーレは気後れした様子を見せつつもうなずく。

 

 そしてレイナーレは今度は兵藤の方に向き直る。

 「一誠くん……私……あなたの気持ちを踏みにじって殺してしまった事、そしてその後もあなたを侮辱した事、そしてあなたの大切なアーシアにあんな事をしてしまって……本当にごめんなさい……」

 

 レイナーレは先ほどと同様にひざまずいて兵藤に謝罪した。兵藤はその彼女をしばらく見つめた後、険しい表情のまま口を開いた。

 

「俺はアーシアほど優しくねえからな。レイナーレ、お前を許すなんてとても出来ねえよ」

「…………」

 

「だが、俺の大切な友達のアーシアがお前を許すと言った。リアス部長も、お前の為に命を捨てたあの堕天使……ドーナシークといったか? あいつに免じてお前を許すと決めた。だから俺は少なくとも今後、お前を許す事は出来ねえが、お前たちには一切、手を出さねえ。お前が再び俺たちに敵対した時は話は別だがな」

 

 兵藤の言葉に僕とレイナーレは顔を見合わせる。少なくともこれでレイナーレの身の安全は保障される事が確定したのだ……!

 

 「國原!」

 兵藤の声に僕は彼の方を見る。

 

「お前のこいつへの愛、俺にゃ理解出来ねえ。だがお前がこいつへの想いを力に、俺と二度に渡って引き分けたのは忌々しいが事実だ」

「…………」

 

 「だから、俺はお前と戦いてえ。もっともっと強くなって、後悔しないようにはっきりと決着をつけてえ。サーゼクス様やアザゼル、そしてお前の了承の上で」

 「受けますよ、僕たちは」

 僕の返答に、兵藤は少し目を見開いた。

 

「ただし、断っておきます。僕が君との戦いを受けるのは強くなりたいからじゃありません。君に恨みをぶつけるためでもありません」

「じゃあ、何なんだ?」

 

「レイナーレのためです。そしてカラワーナさんや、ミッテルトちゃんのためです。サーゼクス様は【尊くんたち】と言いました。でも兵藤くん、君は僕1人と戦いたいと言いました。僕は君に、彼女たちは君の思っているような者ではない事を証明するために戦うんです」

 

「ミコト……」

「ミコト殿……」

「ミコトくん……」

 

 レイナーレが、カラワーナさんとミッテルトちゃんが僕を見つめる。そして僕の言葉を聞いた兵藤はフッと笑った。

「楽しみにしてるぜ」

 

「とにかくこれで、アーシアさんはレイナーレの謝罪を受け入れて彼女を許し、イッセーくんも許しはしないまでも今後、彼女に報復はしないと誓った。では、後は私たちで裁定を下せば良いね。アザゼル、ミカエル、セラフォルー、こちらへ来てくれ」

 

 サーゼクス様の呼びかけで三勢力の長の方々が少し離れた所に集まり、話し合う。そしてそれは短時間で終わり、4人は元の席へと戻った。

 

「では、今回の事件についての裁決を言い渡す。被告、堕天使レイナーレは自らの罪を認め、アーシア・アルジェントから奪った神器を返還し、改悛の気持ちを明らかに示している。そして彼女らは先日のコカビエルの事件においても事件の解決に大いに貢献した。従って彼女とその部下たちへの処分は、今後の行動によって償っていく事、それで良しとする。なお、これは我ら三勢力代表の総意である」

 

 サーゼクス様が代表してそこにいる皆に裁決を伝えた。そして僕とレイナーレ、そしてカラワーナさんとミッテルトちゃんはその場にひざまずく。

 

 「寛大なるご処置、感謝申し上げます! これから、このご恩を忘れず、三勢力の和解と互いの繁栄のために頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いいたします!」

 僕たちは三勢力の長の方々に心からの感謝と誓いを述べてその場にひれ伏した。

 

 「はい、よろしくお願いします」

 「よろしくね☆」

 ミカエル様とセラフォルー様が笑顔でうなずかれる。

 

「尊くん、さっき、ミカエルやセラフォルーと話したが、君の知恵と勇気、そして愛する人を守ろうとする覚悟、気に入ったよ。これから大いに私たちに力を貸して欲しい」

 

 サーゼクス様が笑顔で僕に握手を求められ、僕は恐縮しつつそれを受ける。

 「はっ、魔王様! どうぞよろしくお願いいたします!」

 

 最後にサーゼクス様はアザゼル様に語りかけた。

 「アザゼル、君の部下に対する私たちの裁定は以上だ。それに対して堕天使総督としての意見を聞きたい」

 「俺の部下たちに寛大な裁定をしてくれて感謝するぜ。裁定の通り、ここにいる四人には今後、天界や悪魔に様々な面で協力させる事で償わせていく事を約束する。そして今回、部下をこのような行動に走らせちまった事には俺にも責任がある。って事で、俺も色々な点でお前たちに協力させてもらうぜ。それで良いか?」

 

 そこにいた皆からはアザゼル様があくまで謝罪の言葉を口にされない事に不満の声が上がったが、僕はこれがこのお方のスタンスなのだと思う。言葉で謝罪をするより、実際の行動で相手の役に立つ事で償っていくという。

 

 こうしてレイナーレの起こした事件をめぐる裁定は終わった。アーシアさんとゼノヴィアさんが駆け寄って来て、僕たちを心から祝福してくれた。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 私はアーシア・アルジェント、元は教会に仕えるシスター(修道女)だったのですが、ある時、怪我をされて教会に入って来られた悪魔の方を神様から授かった神器の力で癒した事により、教会から追われてしまい、紆余曲折あって堕天使のレイナーレ様に仕える事になりました。

 

 しかし私は、当時のレイナーレ様たちの、自分の目的のためには手段を選ばないやり方に納得できず、また悪魔ですがとても優しくしてくれるイッセーさんと知り合った事で、レイナーレ様の下を逃げ出してイッセーさんの下へと逃れました。でも、私は私の神器を求めるレイナーレ様に強制的に連れ戻され、レイナーレ様に神器を抜かれて殺されてしまったのです。

 

 でも、レイナーレ様はその後、私の仇を討とうとしたイッセーさんに敗れた事、ご自分を命に代えても愛して守ろうとするミコトさんに救われた事、ご自分の為に部下のドーナシークさんが命を落とされた事でこれまでの自分の行いを反省して悔い改め、私が蘇る事が出来るようにと、私から奪った神器を返してくださいました。それによって私はリアスお姉様の手によって、大好きなイッセーさんと同じく、リアスお姉様の眷属……転生悪魔として生まれ変わったのです。

 

 これまで神に仕える者であった自分が悪魔になった事は正直、若干複雑な気持ちですし、蘇った後、皆さんから【神様が既にお亡くなりになっていた】という事実を聞いて大きなショックを受けはしましたが、それでも大好きなイッセーさんをはじめ、多くの大切な人たちがたくさんできて、一緒に暮らす事が出来て、私は今、とても幸せです!

 

 ですから私はもう、レイナーレ様を憎んではいません。レイナーレ様が本当に心から以前の事を悔いていらっしゃる事は、今日、再びお会いして直接、謝ってくださった事によってしっかりと確認出来ましたから……!

 

 でも……イッセーさんはいまだレイナーレ様への憎しみの気持ちを捨てられないようです。イッセーさんとしては初めて自分を好きになってくれたと思っていたレイナーレ様に裏切られて殺された、そのショックがあまりにも大きいのだと思います……

 

 聞けば、レイナーレ様はミコトさんにもイッセーさんと同じ目的で当初は近付かれたのだという事。でも、ミコトさんはレイナーレ様が正体を明かして自分を殺そうとしても、なおもレイナーレ様を愛して命を賭けて求めた。レイナーレ様はそんなミコトさんの一途な想いに心を打たれて、お二人は本当の恋人同士になったのだという事です。

 

 私にとってイッセーさんが誰よりも大切な存在であるように、レイナーレ様にとってはミコトさんこそが運命の方であって全てであるという事ですね。もし、レイナーレ様がイッセーさんではなく、最初からミコトさんに出会っていたらと思うと……人の運命って本当に分からないし、難しいものですね。とにかく、私としては早く、イッセーさんとレイナーレ様、そしてミコトさんが和解して仲良くなる事、それを切に願います!

 

 それにしても……レイナーレ様とミコトさん、こうして傍目から見ていても本当に仲がよろしくて……お互いに片時も離れたくないという感じで……うらやましいなと感じます。

 

 私も大好きなイッセーさんのそばにいられて幸せですけれど、イッセーさんはミコトさんとは違って本当に多情な人で……リアスお姉様も……朱乃さんも……小猫ちゃんもと、これからもどんどん好きな女性が増えそうで……正直、レイナーレ様がミコトさんの愛を独占しているように、私もイッセーさんの愛を独占できたら……と思う事もありますが、でも、イッセーさんがどうあろうと、私には好きな男の人はイッセーさんしか考えられませんし、これが私の宿命だと思っています。

 

 それはともかく、和平をめぐる会談が一段落したところで、イッセーさんはミカエル様に対して事前に私に許可を取った上で

 「なぜアーシアを教会から追放したんですか?」

と聞きました。

 

 それに対してミカエル様は真摯に答えてくださいました。神様が亡くなられた事によって天界のシステムに不都合が生じてしまい、他の信者の方々の為にも、悪魔や堕天使をも癒す神器を持った私と、神の不在を知ってしまったゼノヴィアさんを教会から追放するしかなかった、そうミカエル様は私とゼノヴィアさんに説明された上で、私たちに心からの謝罪をしてくださいました。

 

 私もゼノヴィアさんもそれで心から納得できました。理由を聞けば、それは仕方のなかった事だと理解できましたし、何よりもそれがあって、今、私もゼノヴィアさんも現在のこの幸せを享受できているのですから……

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 和平成立についての会談がひとまず終わった所で、一誠の奴はアーシアが教会から追放された件についてミカエルに問いただした。そしてそれが終わったところで、俺はアーシアとレイナーレの間で起こった事について奴に話しかけた。

 

 「そうだ! 俺もそいつに殺されたけど、それ以上にアーシアだ! あんたの知らないところで起きた事かもしれないが、そいつはあんたに憧れて、あんたのためにアーシアを殺したんだからな!」

 一誠はまたレイナーレを非難した。そんな奴に俺は事情を説明する。

 

「俺たち堕天使は、害悪になるかもしれない神器保有者を始末しているのは確かだ。組織としては当然だろう? 将来、外敵になるかもしれない者を事前に察知できれば始末したくなる。それでお前は死んだ。理由はなんの才能もない人間のお前では赤龍帝の力を使いこなすことができずに暴走させて俺たちや世界へ悪影響を与えかねないからだ」

 

 「おかげで俺は悪魔だ」

 「嫌か? 少なくとも周囲の者たちはお前が悪魔になった事を喜んでいると思うぜ」

 なおも不満気な奴に俺は言ってやった。

 

 「い、嫌じゃない! 皆が良い人で優遇してもらっているのも分かる! けど!」

 奴は現状に満足しつつも、ここに至った事情についてはなおも受け入れられない、レイナーレや俺たち堕天使に対しての憎しみ、反発は捨てられないという様子を見せる。

 

 「今更俺が謝っても後の祭りだろ? だから、俺は俺にしか出来ない事でお前たちを満足させようと思う」

 俺の言葉に一誠は何の事か分からないという様子でキョトンとした様子を見せる。

 

 俺はここで今後の世界に大きな影響を及ぼしそうな奴に話を聞く。まず隣にいるヴァーリ。

 

 「お前は世界をどうしたい?」

 「俺は強い奴と戦いたいだけだ」

 ヴァーリはそう即答しやがった。

 

 大丈夫かこいつ……和平が成立した後の平和な世界にこいつは適応していけるのか……?

 俺は不安を覚えつつも、次に俺は尊に同じ質問をする。

 

「僕は、和平が成立して堕天使も天使も悪魔も、そして人間も全ての種族が平和で暮らしていける、そんな世界がこれから続いていく事を望みます」

「なるほど、お前らしい答えだな」

 

「僕自身も大好きなレイナーレがもう、危険に身をさらすのを見るのは嫌ですから……彼女とずっと平和の中で過ごしていきたいですから……」

「ミコト……」

 

 早速、甘い世界に突入する尊とレイナーレ。尊は頭が良くて物事を理解する洞察力に優れた奴で、さっきのリアスとのやり取りでもそれを大いに発揮してくれたが、ただ、レイナーレの事となるとどうにも歯止めが効かなくなるのがな……一誠の奴が白けた目で自分たちを見てるのもお構いなしだ。

 

 最後に俺は一誠に質問する。

 「小難しい事ばかりで頭が混乱してる。世界がどうこう言われてもなんというか実感がわかない」

 

 全く尊とは対照的だ。この学園でも尊は優等生で、こいつは問題児とまさに対極的な存在だったそうだからな。女についても尊はレイナーレ一筋で、こいつは、この点は俺と似てるがハーレム主義だからな。反発し合うのも仕方がねえか……

 

「俺らが戦争したら、赤龍帝の力を持つお前も表舞台に立つ必要が出てくる。そうなりゃ、リアスを抱けない。和平を結べばリアスとセックスしまくり、戦争ならセックスはなしだ。さあ、お前はどっちを選ぶ?」

 

 俺がそう言ってやると一誠はこう即答しやがった。

 「和平が一番!」

 

 本当に分かりやすい奴だ。

 

 まあ、タイプは違うが、尊も一誠も好きな奴のために平和を望んでいるのは同じだ。時間がこいつらの間のわだかまりを解決する。取りあえずはそれを期待するしかねえか……

 そう俺が思った瞬間、異変が起こった!

 

(次回に続く)

 




 今回の三勢力会談編ですが、以前のお話との大きな違いとして、前のお話ではサーゼクスやセラフォルーの後押しもあり、一応、今後グレモリー眷属はレイナーレたちに手を出してはならないという裁決が下されましたが、一誠やリアスたちグレモリー眷属は全く納得しておらず、両者の対立・いがみ合いはその後もずっと尾を引いていくという形になっていたのに対し、今回のお話では一誠やリアスたちにいまだレイナーレたちへのわだかまりはあるものの、一応、彼らは裁決を納得して受け入れ、両者の争いはここで幕を閉じるという形になりました。

 これは以前の話の形だと、あまりにもリアスや一誠が感情に捉われて思慮に欠けた風になってしまう。彼らは実際にはもっと思慮深くて、状況を見て政治的な判断が出来る人物だという指摘を複数の方々から頂き、こうした形にしました。そういう訳でこれ以降、尊とレイナーレたちと、一誠やリアスたちグレモリー眷属の関係は新たな段階へと入っていきます。とはいえ、これまでの経緯もあり、すぐに仲良くという訳にはもちろんいきませんが……

 前回、アーシアの神器をグレモリー眷属に返還するのが会談の場ではなく、事前にアザゼルが返すという形にした事について、これは会談の席で返すという形だと、以前の話で一誠が尊を罵ったように、まさに【取引】という感じになってしまう事、それから会談の場で既にアーシアが復活している事によって、そのアーシアが直接その場でレイナーレの謝罪を受け入れて彼女を許す、という形を今回取りたかったからです。

 アーシアの性格なら、レイナーレが真摯に謝罪すれば必ず許すと思いますし、あの事件の直接の被害者であるアーシアが許したとなれば、裁定する三勢力の長たちに与える影響も大きいですからね。

 そしてレイナーレたちに対する処置をめぐっての尊とリアス&一誠の対決の場面……これはグレモリー眷属のレイナーレたちへの報復を【当然】と取るか、それとも【過剰報復】と取るかによって大きく分かれます。リアスや一誠は【当然】としているのに対して、尊は【過剰報復】としているわけで。

 私もこの件については多くの方々のご意見を伺ってきましたが、その中に「確かに人間的な見方で見れば過剰で過酷な報復かもしれないが、激しく苛烈な戦いに身を投じてきた悪魔などの感覚からすれば当然なのではないか」というご意見をいくつも目にしたという事があり、それならば長年の戦いに終止符を打って和平を結ぶに当たって、人間に冥界が学ぶという主張もありだと思い、尊があのような形でリアスたちの【冥界では当然!】の主張に対して切り返す、というストーリーを考え付きました。

 ちなみに尊がこの時に出した【ハンムラビ法典】、これは【目には目を、歯には歯を】という言葉から、血なまぐさい残酷な法というイメージを持たれがちなのですが、実はこれは「相手にされたのと同じだけの事をする事で満足するように」というもので、復讐の倍返しによって憎しみが増幅され、争いがエスカレートするのを防ぐという趣旨のものなのですよね。尊は優等生であって特に歴史が得意という設定から、このストーリーは考え付きました。

 そして尊がリアスへの反論にあたって、自分たちを救うために命を散らしたドーナシークの事を出した事、これは尊のドーナシークへの思いと、リアスが自分の眷属であり、この段階では階級的には下級悪魔に過ぎない一誠たちを情愛を持って大切にしている事をふまえ、これを聞けばリアスも心に強く響くものがあるということでこのような展開にしました。

 同時にそれは尊が、リアスたちが堕天使に対しては長年の敵対関係からくる偏見を抱いていた、その事をふまえての話でもあります。原作中ではレイナーレが一誠を【人間から転生したばかりの下賤な下級悪魔】と見下していたという点ばかりが強調されていますが、リアスや一誠たちも初期には堕天使に対する偏見とそこからくる嫌悪を露骨に示していますのでそこはお互いさまという事ですね。

 それでは次回は【禍の団】襲撃編となります。果たしてどんな展開になるのか……ご期待ください!^^
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