※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D~情念の炎~(完全版)   作:ドミトリ

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 いよいよ【計画】の実行へと本格的に動き出したディオドラ。苦悩する鬼崎はついに自らの進むべき道についての決断を下す!

 一方、尊とレイナーレたちはディオドラの動きに警戒心を抱きつつ、堕天使・悪魔共催のあるイベントに参加する事に……


第38話・信じる心

 冥界から人間界から戻ってすぐ、僕は【禍の団】本部から、驚くべき知らせを受けた。あのディオドラ・アスタロトが先日、僕が来るべき【計画】に備えて若手悪魔の会合の際に密かに渡した秘密兵器……【オーフィスの蛇】を、大公アガレス家とのレーティングゲームに使ってそのゲームに勝ったというのだ。

 

 僕は呆れて二の句が継げない気持ちだった。今、あの男がシャルバたち【旧魔王派】の面々と結んで進めているあの計画は、彼にとって、まさに一世一代の大勝負のはずだ。その重大な計画をわざわざ事前に敵に気づかせるような事をやってしまったのだ。

 

 あのレーティングゲームは悪魔界の魔王たちは言うに及ばず、堕天使総督のアザゼル、天界のセラフ、北欧の神オーディンなど、各勢力のトップやその側近たちが招待されて見に来ていたのだ。そこで突然、それまでのあの男からは考えられないような力を出せば当然、見ていた者たちは不審がるだろう。少なくともアザゼルも、リアス部長の兄の魔王サーゼクス・ルシファーもそれに疑念を抱かないような愚か者ではない。

 

 聞けば、僕を仲介者としてディオドラとの交渉を進めてきたシャルバも、ディオドラのあまりの愚かさに呆れ果てたとの事だ。しかし、彼は計画の中止や延期はせず、このまま決行するとの決断を下した。たとえ事前に敵にある程度感づかれて備えられたとしても、きっと押し切れると考えたという事だ。まあ、あの男もディオドラ同様に旧魔王の血を鼻にかけて、他人を見下す点では全く同じだから、サーゼクス・ルシファーやアザゼルを甘く見ているのだろう。

 

 それにしてもあのディオドラ……軽薄な男だとは思っていたが……ここまで思慮に欠けて愚かだったとは……

 僕は心底呆れ果てたが、一方で、僕はそれにホッとしている自分も感じる。リアス部長や一誠、祐斗たちグレモリー眷属の皆と共に過ごす内に、彼らにどんどん惹かれてきている僕にとって、あの計画が失敗に終わる事は今では望ましい事に変わってきているのだ。

 

 だが、僕はまだ、自分の素性を、自分が彼らに近づいたその目的を、あの男と共に進めてきたあの計画を彼らに打ち明ける事が出来ないでいる。もう、【その時】はどんどん迫って来ているのに、僕は真実を知られる事で、彼らに嫌われ、憎まれて拒絶される事を恐れて踏み出せないでいる。

 

 そんな重い気持ちを抱えつつ、僕は今、グレモリー眷属の皆と共にオカルト研究部の部室にいる。今日は、今後行われるレーティングゲームの対戦相手の試合のチェックをするために、先日のグレモリー眷属とシトリー眷属以外の間で戦われた試合の記録映像を皆で見る事になったのだ。そして部の顧問であるアザゼルもその場にいる。

 

 ちなみに、グレモリー眷属の次の試合の相手はディオドラのアスタロト家と決まった。なぜ、あの男が相手と決まったのか、その理由を僕は当然知っているのだが、それだからこそ、僕は真実を打ち明ける決意が出来ない自分に苛立っている。

 

 「陽太郎くん、どうしたの? 顔色が冴えないけれど……」

 「いや、何でもないよ。大丈夫さ」

 祐斗が気遣って聞いてくるのに、僕は平静を装って答える。

 

 「そう……」

 祐斗はまだ心配そうだったが、それ以上は聞かないでいてくれる。アザゼルがそんな僕たちをじっと見つめる。彼は僕の事を以前から疑い、警戒しているが、今回、この記録メディアを僕が視聴する事については別に何も言わなかった。あるいは僕の反応を窺おうと考えているのか。

 

 ちなみに一誠は小猫ちゃんを膝の上に乗せて座っている。冥界でのあの黒歌との一件で、小猫ちゃんは本格的に一誠に惚れたようだ。とにかく最近、リアス部長も朱乃さんも、そしてアーシアさんもこの小猫ちゃんも、皆、一誠に対する愛情表現が露骨に激しくなってきている。

 

 ただ、その対象である一誠が彼女たちの想いにまるで気付かない、というより、あえて気付かないようにしているように感じられる。冥界でリアス部長の両親から、あれだけ露骨に将来の娘婿に! とアプローチをかけられても、まるで【何のことやら?】という風であったのと同様に。その理由は分からないが……

 

 その記録映像だが、まずはサイラオーグ率いるバアル家と、ゼファードル率いるグラシャラボラス家の試合が映し出される。あの若手悪魔の会合の会場でサイラオーグに一撃でKOされたゼファードルにとってはまさに復讐戦であった戦いだ。

 

 ちなみにゼファードルは本来、グラシャラボラス家の跡取りであった訳ではなく、本来の次期当主とされていた者が突然、事故死した事によって代理としてグラシャラボラス家の代表として出ている。僕はその本来の次期当主の【事故死】の真相も知っている。

 

 その試合だが……サイラオーグのまさに圧勝だった。ゼファードルの攻撃は全くサイラオーグには通用せず、動揺するゼファードルはサイラオーグの腹部への拳の一撃でくずおれ、悶絶した。そしてゼファードルは恐怖に怯えて自ら敗北を認め、泣き崩れるという無様な敗北を喫したのだった。

 

 アザゼルは若手悪魔ナンバーワンと呼ばれる、サイラオーグの圧倒的なパワーについて説明した。ゼファードルとの戦いでも彼は全く本気ではなかったと……

 

 サイラオーグの圧倒的強さに驚く一誠や木場。だが、僕は彼に勝てる自信がある。しかしそれはあくまでも【現時点での話】だ。

 

 サイラオーグを【天才】と言った一誠に、アザゼルは首を振って言った。彼はバアル家始まって以来の才能がなかった純血悪魔だと。そして彼はその家の才能を引き継ぐ純血悪魔が本来しないもの……凄まじい修行、敗北に敗北を重ねて何度も屈辱にさいなまれた末に、その努力で天才たちを追い抜いたのだと。そしてその努力によって彼はバアル家の次期当主に選ばれ、今は魔王になろうとしているのだと。

 

 それを聞いた一誠の顔が決意と気迫に満ちる。彼はサイラオーグの生きざまに強く共感し、だからこそ、そんな彼に勝ちたいという思いに燃えているのだ。

 

 そう……そんな一誠だからこそ、【人間から転生したばかりの下賤な下級悪魔】と侮られながらも、その根性と気迫、そして努力で、自分を侮辱した、本来、彼よりもはるかに実力が上だったはずの相手を次々と撃破してどんどん強くなり、今や若手悪魔の中でも注目される存在となり、グレモリー眷属の仲間たちの絶大な信頼を得ているのだ。そしてヴァーリも、最初は見くびっていた彼を自分のライバルとして認めているのだ。自分に迫り得る、そして追い抜くかもしれない存在として……そして僕も、祐斗やリアス部長のようにそんな彼に惹かれているのだ!

 

 だからこそ、一誠も、そして彼が今、目標としているサイラオーグも、この僕をも追い抜く可能性を持っている。もちろん、僕だってそう簡単に追い越させはしない! 一誠や祐斗と共にさらに修行を重ねて共に強くなっていきたい! だが、そのためには……!

 

 僕がそんな事を考えていると突然、部室の片隅に転移用魔方陣が現れて光り輝く。その紋様は……そして閃光の中から現れたのは……そう、僕を悩ませている元凶であるあの男……

 

 「ごきげんよう、ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いに来ました」

 彼はあの、偽りの爽やかな笑顔で挨拶をした。

 

 そしてしばらくして……

 

 部室のテーブルにはリアス部長とディオドラ、そして顧問のアザゼルが座り、朱乃さんがディオドラにお茶を入れ、リアス部長の傍らに待機する。

 

 一誠や祐斗たち他の眷属と僕は部室の片隅にいて状況を見守る。皆、ディオドラに対しては不信感を抱いているものの、相手はリアス部長と対等の上級悪魔。一応の敬意を払っているという事だ。

 

 ディオドラの目的であるアーシアさんは、一誠の隣で困惑した表情をしていて、一誠はそんな彼女を安心させようと彼女の手を握っている。

 

 「リアスさん。単刀直入に言います。【僧侶(ビショップ)】のトレードをお願いしたいのです」

 ディオドラは優し気な笑みを浮かべながら、その表情と丁寧な言葉遣いとは裏腹の、無神経極まる言葉を口にする。

 

 仮にも求婚した相手をトレードで手に入れようという発想そのものが非常識極まる上に、その行為はその交換要員にしようとしている自分の眷属も物扱いしているという事になる。自分の眷属に深い情愛を注いでいるリアス部長とすれば怒り心頭の発言だろう。

 

 実際、それを聞いた瞬間にリアス部長の表情はひきつり、アーシアさんは隣にいる一誠にすがるような視線を送っている【嫌だ! 絶対に拒否して欲しい!】という意思表示だろう。その他の眷属たちも皆、嫌悪に満ちた表情を浮かべている。

 

 仮にも見た目は穏やかそうな好青年という風貌なのだし、事を成就させるための手段として、せめて見せかけだけでも誠実そうに振舞えば良いものを、その軽薄さと愚かさ、自らの血筋を誇って他人を見下す歪んだ心性が言動の節々にすぐに見えてしまう。本当にどうしようもない男だ。

 

 だが、ディオドラはそんな周囲の空気には全くお構いなしに言い放つ。

 「僕が望むリアスさんの眷属は……【僧侶】アーシア・アルジェント」

 

 アーシアさんに視線を向けるディオドラは彼女に向けて爽やかな笑みを投げかけるが、アーシアさんは青ざめている。

 

 「こちらが用意するのは……」

 ディオドラが自分の下僕たちの情報が載っているであろうカタログらしきものを出そうとするが、その瞬間、リアス部長はそれを遮るようにはっきりと言った。

 

「だと思ったわ。けれど、ごめんなさい。その下僕カタログみたいなものを見る前に言っておいた方が良いと思ったから先に言うわ。私はトレードをする気はないの。それはあなたの【僧侶】と釣り合わないとかそういう事ではなくて、単純にアーシアを手放したくないから……私の大事な眷属悪魔だもの」

 

 そのリアス部長の言葉に、一誠は心から嬉しそうな表情を浮かべる。リアス部長がカタログを見ようとすらしなかったのは、確認する事で少しでもアーシアさんと比べるような態度を自分の眷属たちに見せたくなかったからに違いない。そんな彼女だからこそ、自分の眷属たちから絶大な信頼を得ているのだ。

 

 「それは能力? それとも彼女自身が魅力だから?」

 リアス部長に尋ねるディオドラ。この男には彼女の心情などまるで理解出来ないのだろう。根本的に上に立つ者としての資質が欠如しているとしか言いようがない。

 

 「両方よ。私は彼女を妹のように思っているわ」

 「……部長さんっ!」

 リアス部長の言葉に、アーシアさんは口元に手をやってその瞳を潤ませる。リアス部長が【妹】と自分の事を言ってくれたのが心底嬉しかったのだろう。

 

 リアス部長はディオドラに対して皮肉を込めた笑顔で続ける。

 「一緒に生活している仲だもの。情が深くなって、手放したくないって理由はダメなのかしら? 私は十分だと思うのだけど。それに求婚した女性をトレードで手に入れようというのもどうなのかしらね。そういう風に私を介してアーシアを手に入れようとするのは解せないわ。ディオドラ、あなた、求婚の意味を理解しているのかしら?」

 

 笑顔で言っているものの、彼女が激怒している様子ははっきりと分かる。自分の眷属を家族同様に慈しむリアス部長にとって、大事なアーシアさんを、そして自らの眷属をまるで物のように交換しようと言うディオドラの態度は我慢がならないのだろう。

 

 手厳しく拒絶されたディオドラだが、彼は笑みを浮かべたままだ。おそらく内心では恥をかかされたと激怒しているのだろうが……

 

 「……分かりました。今日はこれで帰ります。けれど、僕は諦めません」

 ディオドラはなおも言うと、立ち上がり、一誠と共にいるアーシアさんのもとへと近寄る。

 

 「…………!!」  

 当惑するアーシアさん。

 

 その彼女の前にディオドラは立つと、その場に跪き、彼女の手を取り、芝居がかった口調でぬけぬけと言った。

 「アーシア、僕は君を愛しているよ。大丈夫、運命は僕たちを裏切らない。この世の全てが僕たちの間を否定しても、僕はそれを乗り越えてみせるよ」

 

 アーシアさんの態度を見れば、誰が見ても彼女が迷惑がっている事は明白なのに、この男は……僕はディオドラのあまりの鉄面皮ぶりに呆れるのを通り越してある意味感心する……

 

 そしてディオドラは取ったアーシアさんの手の甲に強引にキスしようとするが、そこでついに堪忍袋の緒が切れたのだろう。一誠がディオドラの肩をつかんでそのキスを静止させた。

 

 するとディオドラはそんな一誠を例の笑顔で見つめつつ侮蔑の言葉を吐く。

 「離してくれないか?薄汚いドラゴンくんに触れられるのはちょっとね」

 

 するとそれまでは自分にいくら迫られても抵抗しなかったアーシアさんが眉を吊り上げ、バチッ! とディオドラの頬に思い切り平手打ちを浴びせた。

 

 僕も、一誠もリアス部長も、他のグレモリー眷属たちも、皆、驚きの表情でアーシアさんを見つめる。人並みはずれて温厚で優しい彼女が、まさかディオドラに平手打ちをするなど予想もしなかったからだ。張られたディオドラの頬は赤くなっている。

 

 アーシアさんは一誠に抱きつき、ディオドラをキッ! と睨んで叫んだ。

 「そんな事を言わないでください!」

 

 ここまで彼女が怒るとは……! アーシアさんとしては自分に対する迷惑行為は許せても、彼女が一途に愛している一誠を侮辱されたのは許せなかったのだろう。

 

 ここまではっきりと拒絶され、醜態をさらしたディオドラだが、それでも彼は笑みを止めない……ここまで来ると不気味さを覚える……

 「なるほど……分かったよ。では、こうしようかな。次のゲームで僕は赤龍帝の兵藤一誠を倒そう。そうしたら、アーシアは僕の愛に答えて欲し……」

 

 ディオドラがそこまで言ったところで一誠は憤然とした様子でディオドラを睨みつけて叫ぶ。

 「お前に負けるわけねぇだろっ!!」

 

 もはや、上級悪魔に対する礼儀など関係ないという様子だ。そしてリアス部長も祐斗たちも、もうそれを止めない。皆、あまりにも厚かましいディオドラの態度に激怒したのだ。

 

「赤龍帝、兵藤一誠。次のゲームで僕は君を倒すよ」

「ディオドラ・アストロト、お前が薄汚いって言ったドラゴンの力、存分に見せてやるぜっ!」

 

 睨み合う一誠とディオドラ。一誠の表情からは絶対にアーシアさんは渡さないという気迫が感じられる

 

 その時、アザゼルの携帯が鳴った。いくつかの応答の後、アザゼルは告げた。

 「リアス、ディオドラ、ちょうど良い。ゲームの日取りが決まったぜ。5日後だ」

 

 「そうか、5日後か……では赤龍帝、首を洗って待っていたまえ。アーシアは僕のものだ」

 「首を洗って待つのはお前の方だ!」

 ディオドラの挑発に一誠がやり返す。

 

 そうか……5日後か……もう猶予はないな……

 僕はいよいよ決断の時が目前に迫った事を認識する。

 

 ディオドラは不敵な笑みを浮かべつつ、その場から立ち去って行った。その後、僕たちはディオドラ率いるアスタロト家とアガレス家の試合を観戦した。

 

 僕たちが事前に伝えられた通り、ディオドラはゲームの途中から突然パワーアップしてアガレスの女当主を破った。それまでは押され、追い詰められていたのが、突然、爆発的な魔力をふるってずっと格上とされていた相手に勝ったのだ。

 

 当然、それを見ていた皆がそれを疑問に感じ、訝しく思った。中でも、共に以前からディオドラを知っていたアザゼルとリアス部長は特にそれを不審に感じたらしい。

 

「ディオドラはあそこまで強い悪魔ではなかった」

と口を揃えて言った。おそらくアザゼルはそれについて徹底的に調べるに違いない。

 

 それから数時間後、僕とディオドラは駒王町のはずれにある喫茶店で会っていた。

 

 「手厳しくやられたね」

 「そうだね……この僕をあそこまでコケにした償いは必ずあの連中に払わせるよ。兵藤一誠……リアス・グレモリー……フフフ……必ず無様な死を与えてやるよ」

 ディオドラはそれまでの穏やかな表情とは全く違う、狂気の表情で笑った。

 

 やはりそうだった。平静を装っていたが、内心は一誠やリアス部長に大恥をかかされたとドス黒い恨みでいっぱいなのだ。

 

 「ところでレーティングゲームは5日後という話だけれど、計画の方は順調かな?」

 「大丈夫、完璧だよ。シャルバやクルゼレイとしっかり打ち合わせて、準備は万端さ。僕の邪魔になる現魔王やその関係者、そしてその連中と強調する各勢力のトップたちを一挙に殲滅する! ああ! その時が楽しみだよ!」

 僕の問いを受け、ディオドラは自らの期待する光景を夢想して酔った表情を浮かべている。

 

 殲滅されるのは果たしてどっちかな……? それに仮に勝った所で……

 僕は愚かしい夢想にふけるディオドラを見て、少し哀れに思ったものの、もちろんそんな感情はおくびにも出さない。

 

 「ところで、そちらの準備はどうかな?」

 「もちろん大丈夫さ。グレモリー眷属たちは完全に僕を信用しきっている。彼らの油断を突く事は造作もない」

 ディオドラに問われ、僕は内心の思いとは裏腹に冷然とした口調で答える。

 

 「それは頼もしいね」

 ディオドラは茶を飲みつつ笑う。するとその時、突然、6人の高校生くらいの外見の女子たちがやって来て、一礼した後、ディオドラに伝えた。

 

 「ご主人様。申し訳ありません。堕天使レイナーレの拉致、失敗いたしました」

 深々と頭を下げて謝罪する彼女たち。

 

 なるほど……彼女たちはディオドラの眷属の下僕悪魔……そしてディオドラはレイナーレを彼女たちに襲わせたが失敗に終わったという事か……

 

 彼女たちはディオドラの好みだろうか、皆、童顔であどけない顔立ちで胸も控えめだ。それはともかく、彼女たちから感じる魔力はあまり強くなく、というかオーフィスや黒歌と普段接している僕から見れば全く低レベルでその実力の程度が伺われる。

 

 「情けないね。相手はたかが下級堕天使数人、それをその人数で襲って無様に負けたというのかい?」

 ディオドラは笑みを浮かべたまま、彼女たちを問い詰める。

 

 「申し訳ございません。しかし……あのレイナーレと共にいる國原尊という少年……思ったよりも強く……私たちではとても……」

 「言い訳はいらない。本当に役立たずだね。後でたっぷりとお仕置きをするから待っておいで」

 「は、はい……」

 申し開きをしようとする彼女たちにディオドラは冷たく言い放ち、そんな彼に彼女たちは怯えた表情で頭を下げる。

 

 「やれやれ……あの堕天使の女を捕らえて、以前ドジを踏んで僕の計画を台無しにしてくれた罰を与えようとしたんだけれど……この役立たずの下僕たち、あんな人間から転生したばかりの下級堕天使に負けるなんて……」

 ディオドラはいかにも不甲斐ないという風に嘆いてみせる。

 

 僕はそれを聞いて内心思う。

 何を言っているのだか……当然の事だ。この程度の者たちであの國原尊に勝てる訳がない。

 

 そう、あの國原尊は外見こそ線が細くてひ弱そうに見えるが、芯は強く、2回に渡って一誠たちとの戦いに引き分け、その優れた戦略家ぶりはアザゼルやサーゼクス・ルシファー、天使長ミカエルたち三勢力のトップにも一目置かれている存在だ。

 

 それに彼は先日の冥界での合宿での訓練で神器の禁手化に成功し、黒歌ともそれなりに張り合えただけの力をつけてきている。そんな彼にこの程度の者たちが歯が立つはずがない。いや、聞くところによればあの時の訓練でレイナーレも禁手化を果たしてそれまでよりもずっと強くなったとの事。この下僕たちでは今のレイナーレにも到底勝てないだろう。

 

 ただの下級堕天使だと見下して、ろくに彼らについて調べもせずに【この程度の刺客で十分】と思って差し向けたという事か。どこまで愚かな男だ。まあ、近々、この男は自分のその愚かさを身をもって知る事になるだろうが……

 

 僕は内心、ディオドラの愚かさに呆れ果てつつ、彼に話を合わせて彼が計画の成功を夢想する姿を眺め続けた。その後、店を出た僕は自分の進むべき道について決意を固める。正直不安は大きい。だが、もう前に進むしかないのだ……!

 

 僕は夜空を眺める。僕の大切な人たちの事を思って……

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 レイナーレを狙ったフード姿の女たちの襲撃を退けた翌日、僕たちは放課後、アザゼル様のいる化学室を訪れ、事の次第を申し上げた。

 

「何? そんな事があったのか。それで、レイナーレ、尊、お前たちにはその襲ってきた連中について心当たりはあるのか?」

「はっ……証拠はありませんが、僕はあのディオドラ・アスタロトが怪しいと考えています」

 

 僕はその根拠として、以下の事をお伝えした。

 

 ①:以前、既にアザゼル様にお伝えしたように、ディオドラが明らかにレイナーレに悪意を持っている事。

 

 ②:あの若手悪魔の会合の時にディオドラが連れていた彼の眷属たちが皆、フード姿の女性で今回の襲撃者たちと共通点がある事。

 

 ③:そしてその襲撃者たちの実力が僕が一人で余裕で制圧できる程に低く、彼女たちを差し向けた者が僕たちの力を見くびっている事が明らかで、それはディオドラがレイナーレや僕に示した侮蔑に満ちた態度と重なる事。

 

「なるほどな……確かにディオドラ、奴はそれ以外にも臭い所があってな」

「えっ?総督閣下、それはどのような事で?」

「昨日のオカルト研究部でのディオドラとのレーティングゲームに備えての打ち合わせの時にグレモリー眷属の連中にはもう伝えたんだが……あの冥界でのグレモリー眷属とシトリー眷属の試合の時、ディオドラのアスタロト家も大公アガレス家とのレーティングゲームを戦ったんだ」

 

 大公アガレス家……ああ、あの時、ゼファードルにセクハラ発言されて激怒して彼とやり合っていたあの女性の……確か名前は【シーグヴァイラさん】といった……

 

 僕はあの若手悪魔の会合の会場で会った、灰色の長い髪の眼鏡の女性を思い起こした。

 

「その時、ディオドラはアガレス家の姫君に当初、追い詰められていたんだ。だが突然、あの小僧は魔力を急激にパワーアップさせてアガレスの姫君に勝ちやがった……」

「と仰いますと、本来ならシーグヴァイラさんの方がディオドラよりも実力が上と?」

「ああ、少なくともディオドラはあそこまで強い悪魔じゃなかった。それが突然あそこまでパワーアップするとは……うさんくせえ臭いがプンプンするぜ」

 

 「そ、それで総統閣下はそのディオドラの異様なパワーアップの理由について心当たりはおありなのですか?」

 レイナーレが聞いた。

 

 「ああ……だが、今のところはまだ確たる証拠がねえ。もう少し調べてからお前たちに話すつもりだ」

 さすがはアザゼル様、もうディオドラについてかなり身辺調査を進めておられるようだ。

 

「後は尊、お前が考えている通り、ディオドラがレイナーレを襲わせた犯人だとして、問題はその動機だな。レイナーレ、お前は奴に会ったのはあの若手悪魔の会合の時が初めてだったんだな?」

「はっ、間違いございません」

「そうか……それで奴がお前と会った時にお前を侮辱したとの事だが、その時の奴はどんな感じだった?」

 

 その問いに僕がレイナーレに代わって答える。

 「怒っているという感じでは全くなく、心底彼女を見下して嘲っているという感じでした」

 

「ふむ。という事はやはり、レイナーレがアーシアに以前した事への怒りからってわけじゃねえようだな。実はな、昨日のオカルト研究部での打ち合わせの時に、そのディオドラの奴が突然、部室までやって来てな」

「えっ!?」

「ほ、本当でございますか?」

「ああ。そして奴はそこでリアスに対して自分の眷属とアーシアのトレードを要求してきやがった。リアスはブチ切れて断ってたけどな」

 

「あの人にとってアーシア先輩はプロポーズした相手ですよね。その相手をトレードで手に入れようって……」

「ああ、非常識も甚だしい奴だな」

「あの赤毛悪魔は大嫌いっすけど、それに怒る気持ちは分かるっす」

「信じられない感覚ね……」

 

 流音くん、カラワーナさん、そしてミッテルトちゃんにレイナーレ、その場にいる皆が唖然とし、ディオドラに対する嫌悪感を露わにしている。そう、それは求婚した相手であるアーシアさんも、そして交換要員とする自分の眷属も、その両方を物扱いしているという事なのだから。

 

 やはりそうか! 彼はアーシアさんに対して、決して心からの愛情を抱いている訳じゃない。ただ、ちょっと気に入った人形を集めようという程度の事。

 

「かと言ってレイナーレ、今の尊の話を聞く限りじゃ、奴はお前に興味を持って手に入れようと欲したって訳でもねえようだな」

「は、はい、それは確かかと思います……」

 

 アザゼル様の問いかけにレイナーレは表情をこわばらせて答える。きっと自分にひどい侮辱を加えた、あの時のディオドラの悪意に満ちた表情を思い起こしたのだろう。僕はそんな彼女の肩をそっと抱く。

 

 「あっ……ミコト……ありがとう……」

 少し驚いた様子を見せるレイナーレだが、すぐに嬉しそうな表情を浮かべて僕に身を任せた。

 

 「とにかく、今のところはまだ何も確証はねえが、ディオドラがうさん臭え奴である事は間違いねえ。皆、よくよく気を付けろ。そして何かあったらすぐに俺に知らせろ。俺も新たにあの小僧について分かった事があればすぐに知らせる」

 「はっ! 承知いたしました!」

 アザゼル様に感謝の念で頭を下げつつ、僕はもう一つ気がかりになっていた事を思い出す。

 

「総督閣下、実はもう一つ気がかりな事があるのですが……」

「何だ? 言ってみろ」

「はい……実はあの鬼崎くんの事で……」

 

 僕はアザゼル様に、あの冥界から戻った日にアーシアさんに求婚しに現れたディオドラが鬼崎に目配せし、それに鬼崎もうなずいたように見えた事、さらにその時の鬼崎の様子がおかしかった事を告げた。

 

「そうか。お前もそれに気づいていたか」

「えっ? では、総督閣下もお気づきになられていたのですか?」

 

「ああ。俺もずっとあいつの様子は監視していたし、昨日のディオドラが現れた時の奴の様子も見ていたが、俺は奴の考えている事が見えてきた気がするんだ。近々、奴はそれを行動に移すに違いねえと思う」

「そ、そうなのですか!?」

「ああ……だが、それはお前たちが思っているような事じゃねえと思うぜ」

 

 えっ? それは一体……?

 「総督閣下、それは一体どのような事でございますか?」

 僕が疑問を発する前にレイナーレが聞いた。彼女は以前、鬼崎からひどい脅迫じみた暴言を浴びせられた事があるだけに当然、それは大いに気になるはずだ。

 

「それについちゃ、俺も今の段階じゃ証拠もねえから言えねえ。取り合えず奴の件についちゃ俺に任せてくれねえか? 奴はオカルト研究部の部員で、俺はその顧問だからな。はっきりした事が分かったらお前たちにも知らせるからよ」

「はっ、承知いたしました」

 

 アザゼル様がそう仰る以上、僕たちもそれ以上は聞けなかった。

 一体、アザゼル様の仰る【奴の考えている事】とはどんな事なんだろう……?

 という疑問はいまだ頭の中にあったが……

 

 僕たちは化学室を退室した後、僕とレイナーレとミッテルトちゃんは共に学校を出て帰宅の途についた。カラワーナさんはまだ仕事があるという事で、流音くんもいつも通り、そんな彼女を下校時間ギリギリまで待つという事で学校に残った。そして家への途中で……

 

 「おひさ、黒龍王、ニプルクィーン」

 聞き覚えのある声がかかった。驚き、その声のした方を振り向く僕たち。するとそこには……

 

「美猴さん!?」

「な、何故、あなたがここに……!?」

 

 そう、それはあの孫悟空……美猴! ただ今回はこれまでの鎧姿ではなく、今風のいわばチャラチャラとした感じのラフな服装をしている。

 

 「ま、相棒の付き添いでさ」

 驚き、警戒する僕たちに美猴は笑い、後ろに顔を向ける。するとそこに……

 

 「久しぶりだな。國原尊、レイナーレ」

 白いワイシャツ姿の【白龍皇】ヴァーリさんが姿を現した。

 

 「ヴァーリさん……!」

 「二人とも見事に禁手化を果たしたそうだな?嬉しいよ」

 ヴァーリさんはその端正な顔に微笑を浮かべる。僕はいざという場合はレイナーレの盾となろうと彼女の前に立ちつつ問う。

 

 「どんな御用ですか?」

 「なるほど……兵藤一誠は俺の姿を見た途端にいきなり戦闘態勢を取ってきたが、國原尊、君は理性的だな」

 ヴァーリさんは僕を褒めて(?)くれた。

 

 確かに、あの兵藤ならそうだろうな。

 「ありがとうございます。それで、今日はどんな御用ですか?」

 「本当に君は礼儀正しいな……まあ、それはそうと昨日、君たちは敵に襲撃されたそうだな」

 ヴァーリさんは突然、僕たちが今、一番気になっている事にズバリ触れてきた。

 

「何故、それを……? ヴァーリさん、あなたはその犯人を知っているのですか?」

「その口調だと、君は俺がその犯人だと疑ってはいないようだな。一応、現状では俺たちは君たちと敵対関係にある訳だが……」

「ええ、敵対しているとはいえ、あなたや美猴さんはそういうやり方をするタイプではない。僕たちを襲うのなら正々堂々と自分たち自身で襲ってくると思っていますので」

 

 「へえ~~こいつは嬉しいねぃ。俺っちたちをそんな風に買ってくれているとはねぃ」

 「そうか……君のそんな所は嫌いじゃないぞ」

 美猴が嬉しそうに笑い、ヴァーリさんもうっすらと微笑む。

 

「嬉しい事を言ってくれたお礼に教えてやろう。昨日、君たちを襲ったのはディオドラ・アスタロトの手の者たちだ」

「…………!」

 

 ヴァーリさんの言葉に、僕のディオドラに抱いていた疑念は確信に変わる。彼はこういう場合、嘘をつくタイプではない。そう言い切るのは確たる証拠があっての事なのだろう。

 

 「どうやら、君も既に彼の事を疑っていたようだね」

 「それは確かなのね?」

 レイナーレが真剣な表情で問う。

 

「ああ、間違いない。ただ俺も、何故、彼が君を標的にするのか、その理由は知らんがね。そういう訳で、気を付けた方がいい。理由は分からないが君たちは彼に狙われている。そしてこれも君たちは既に知っていると思うが、ディオドラ・アスタロトがアガレス家の姫君とのレーティングゲームで発揮した力の件もあるしな。話は以上だ。帰るぞ、美猴」

 

 その場を去ろうとするヴァーリさんを僕は呼び留める。

 「待ってください! それを僕たちに告げにわざわざ来てくれたのですか?」

 「近くに寄ったから、未来のライバルの一人に忠言をしに来ただけさ」

 「じゃあな、黒龍王、ニプルクィーン」

 

 ヴァーリさんは涼しい表情で答え、美猴も僕たちに手を振りつつ笑った。

 「そ、その名前で呼ばないでって言ってるでしょっ!!」

 

 レイナーレが顔を真っ赤にして叫ぶも、二人はそれを平然と聞き流して姿を消した。

 

 「ホントに変わった連中っすね……」

 「そうね……本当に変わった人たち……」

 ミッテルトちゃんとレイナーレが唖然とした様子でささやき合う。

 

「そうだね。変わった人たち……でもお陰で、あの事件の首謀者がディオドラだってはっきりしたね。これで対策も立てやすくなる。レイナーレ、明日、早速、アザゼル様にまたご報告しよう」

「ええ、そうね!」

 

 ディオドラ……! どんな理由なのか知らないけれど……僕のレイナーレを狙うなんて許せない!

 僕は心の中でディオドラへの怒りを強く感じる一方、この情報をわざわざ知らせに来てくれたヴァーリさんに対して感謝の思いを抱いた。

 

 ヴァーリさん……彼の事は敵対はしつつも何か憎めなかったけれど……今日の事で余計にその思いが……いずれ和解できれば良いけれど。

 

 その翌日、僕たちはアザゼル様にヴァーリさんから伝えられた話を報告した。

 

 「そうか……実はヴァーリの奴、一誠のもとにも訪れてディオドラの件について用心しろと伝えたそうだ」

 そういえばヴァーリさん、兵藤にも会いに行ったという事を言っていたな……

 

 アザゼル様は改めてディオドラの事を徹底的に調べ上げる事を約束してくださり、さらに僕たちにくれぐれも用心するようにと伝えられた。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 ディオドラがオカルト研究部の部室にやって来て、彼らとグレモリー眷属のレーティングゲームの日が決定した翌日の夜。僕は下宿しているアパートを出て、夜道を歩いている。そしてある人通りのない寂しい通りに差し掛かった時、突然、僕に声がかかる。

 

 「よぉ、陽太郎、久しぶりだねぃ」

 「美猴……そしてヴァーリ……来てくれたんだね」

 そう、それは僕の仲間であるヴァーリと美猴の2人だった。

 

「ああ、君が改まった感じで【伝えたい事があるから来てくれ】なんて言うから少々驚いたがな」

「直接、俺っちたちに伝えたいって事はかなり重要な事なんでねえのぃ」

 

 「ああ……その通りさ……実は……君たちには悪いんだが……チームを抜けようと思ってね」

 「ほう……それはどんな訳でかな?」

 「俺っちたちは自由に生きるのがモットーだからねぃ。そりゃ自由だけど、訳くらいは聞かせてもらいたいねぃ」

 二人は怒る訳でもなく、穏やかな感じで聞いてくる。そこで僕は二人に自分の今の思いを率直に語る。

 

「うん……知っての通り、僕は【赤龍帝】や【黒龍王】を近くでよく観察したい……さらにその【赤龍帝】たちグレモリー眷属と、【黒龍王】及びレイナーレの間にある深いわだかまりを煽って、三勢力の和平崩壊に持っていければと思い、人間界へ出向いて駒王学園に編入した……だけど……」

 

「僕はね……こんな事を言ったら君たちに呆れられるとは思うけれど……その駒王学園に入ってグレモリー眷属の皆と過ごす内に、彼らに魅かれていったんだ……あの【赤龍帝】兵藤一誠の、何があってもあきらめずに仲間のために身を張って戦い、不可能事とされていた事を乗り越えていく根性と漢気、リアス・グレモリーの自分の眷属たちへの深い情愛、そしてそんな兵藤一誠やリアス・グレモリーを慕って、結束してどんな困難にも立ち向かっていくグレモリー眷属たちの互いの信頼感と結束力……そんな彼らの姿に僕はどんどん魅かれていったんだ……そして思ったんだ……ずっと彼らと共にいて、仲間として喜びも苦労も分かち合いたいと……」

 

 ヴァーリと美猴は僕の話をじっと聞いていた。しばらくしてまずヴァーリが口を開いた。

 「なるほど……俺も最初は君を目的の為には手段を選ばない冷徹な男だと思っていたが……あのオーフィスに向ける眼差しといい、今の話といい、内心はあの兵藤一誠や國原尊と同じく熱い心を持った男だったという事か」

 

 「まあ、あの【赤龍帝】って面白い奴だしねぃ。陽太郎の気持ちも分かるねぃ」

 美猴もそう言って笑った。

 

「分かった。君の思う通りにするがいい」

「ヴァーリ……」

 

「ただし、君が正式にグレモリー眷属の一員になるというのなら、今後、俺たちとは敵として相まみえる可能性が高い。その時は昔の仲間だからと容赦はしない。そちらも手加減無用だ。なあ、美猴」

「そうだねぃ。本気の陽太郎と一戦交えるというのもまた面白いねぇ♪ 陽太郎、そん時ゃ、盛大に楽しもうや♪」

「美猴……」

 

 僕は二人が僕の心情を理解してくれて、普段と変わらない様子で送り出してくれるその気持ちが嬉しかった。

 ヴァーリ……美猴……ありがとう……

 

「しかし陽太郎、君のその決断はオーフィスにはもう話したのか?」

「いや、まだだ」

 

「なら、それをすぐに彼女に伝えるべきだろう。彼女は一応、我々【禍の団】のトップだし、何よりも君にとって一番大切な存在だろう。事前に伝えないという訳にはいくまい」

「もちろん、彼女には事前に直接伝えるつもりだ。そこですまないが、彼女に僕に会いに来てくれるようにと伝えてくれないか?」

 

 「ああ、分かった」

 ヴァーリは僕の頼みを快諾してくれた。

 

 「じゃあ、陽太郎、君がグレモリー眷属につくと決めた以上、数日後には大変な事になると思うが頑張ってくれ」

 「じゃあ陽太郎、達者にな~~」

 二人は去っていった。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 ヴァーリさんたちと遭遇して、あの襲撃事件の黒幕がディオドラだと知らされた翌日の放課後、ミューステリオン部の部室に集まった僕たちのもとに突然、アザゼル様がやって来た。

 

「よう、皆、揃ってるか」

「総督閣下、どうされたのですか?」

「突然で悪りぃが、取材が入ったんだ。先日、俺たち堕天使と悪魔の和平が実現した事を祝して、両陣営共催で【若手悪魔&堕天使特集】ってテレビ番組を作る事になった。そして堕天使陣営からはお前たち、悪魔陣営からはグレモリー眷属の連中が出演する事になったって事だ」

 

 「えっ!! ええええっ!?」

 「テ、テレビ番組っ!! しかもあの悪魔どもと一緒すかぁ~~!?」

 流音くんとミッテルトちゃんの驚きの声が響き渡り、僕とレイナーレ、カラワーナさんも驚く。

 

 あの対グレンデル戦で尊が初めて【ニプルブラスト】を発動した時にも僕たちは大いに取材を受けたが、それ以来の事だし、何よりも悪魔陣営との共催で兵藤たちと一緒に取材を受けるという事なのだ。当然、悪魔の人たちからの取材も受ける事になるだろう。   

 

 「で、でも、僕たちはまだ悪魔の人たちに憎まれて……」

 「…………」

 僕の脳裏に、先日の冥界合宿の際に悪魔の人々に暴言を浴びせられ、石をぶつけられた記憶が蘇る。レイナーレたちもその事を思い起こしているのだろう。皆、深刻な表情を浮かべている。

 

「お前たちの言いたい事は分かるぜ。だが、だからこそ、今回の番組がとても重要なんだ。お前たちが悪魔界のホープたち、しかも以前は激しく憎み合った者と共に番組に出演して、そこで和解をアピールする。それは悪魔の連中のお前たちに対する見方を大きく変える事になる。サーゼクスやセラフォルーもそういう効果を期待して俺と一緒にこの企画を考えたんだ」

 

 確かに仰る通りだ。悪魔界でグレモリー先輩がアイドル的な人気と強い信望を集めている事、兵藤が悪魔界の若手のホープ的存在として悪魔の人たちから大きな期待をかけられている事は先日の訪問で実感している。さらにサーゼクス様やセラフォルー様も堕天使との和解促進に加えて、僕たちの立場も考慮されての御提案、となれば断るなど思いもよらない……!

 

 僕は隣のレイナーレを見つめる。彼女も真剣な表情で僕を見つめてコクリとうなずく。それを見て僕はアザゼル様に申し上げた。

 「承知いたしました」

 

 早くもその翌日、僕たちは魔方陣で堕天使界へと戻り、その取材イベントが行われる堕天使界と悪魔界の境界に位置する町へと向かい、そこに設営された会場に入った。

 

 そして着くなり、待機していた堕天使と悪魔の両方からなるスタッフの人たちに丁重に出迎えられた。

 

「お待ちしておりました。國原尊さん、レイナーレさん、そしてカラワーナさんにミッテルトさん、水神流音さん。悪魔の皆さんは既に到着しておいでです。さあ、こちらへどうぞ」

「俺はお前たちとは別の番組に出演するからここで分かれる。じゃあ、頑張れよ」

 

 アザゼル様は手を振ってその場を立ち去っていく。僕たちは一礼して主を見送った後、プロデューサーの人に導かれてエレベーターを使って上層階へ昇る。ちなみにレイナーレは堕天使としてのいつもの恰好、すなわち僕が大好きな、あのセクシーな黒のボンデージ姿。僕と流音くんは駒王学園の制服姿、カラワーナさんとミッテルトちゃんはそれぞれ、例の赤のボディコンスーツと黒のゴスロリ衣装だ。

 

「レイナーレ、見て!」

「あっ!」

 

【挿絵表示】

 

 移動中の壁には僕とレイナーレがペアとなったポスターが貼ってあった。それには

 【我が堕天使界の新生カップル! 新たな時代のヒーロー&ヒロイン登場!】

 と派手な見出しが書かれている。その隣には兵藤とグレモリー先輩がやはりペアとなったポスターが貼られている。

 

「レイナーレ……これって……」

「ええ……アザゼル様の差し金に違いないわね……」

「うん……」

 

 レイナーレの言う通り、僕とレイナーレ、兵藤とグレモリー先輩を【堕天使界と悪魔界の良きライバル】として演出しようというアザゼル様の思惑が働いている事は間違いない。

 

 「イヒヒ……ミコトくんに姉さま、いよいよ最強エロエロバカップル伝説の始まりっすかね♪」

 「わあ……! 國原先輩とレイナーレ先輩、すっかり冥界の人たちの間で有名なんですね……! すごいです……!」

 戸惑う僕たちをミッテルトちゃんは悪戯っぽく笑い、流音くんは素直に感動している。

 

 さらに廊下を進んで行くと、あちこちにレイナーレとグレモリー先輩のポスターが貼られている。堕天使と悪魔の2人の美女をまるで競い合わせるように。そのレイナーレの姿はとても美しくてセクシーで、その魅力はグレモリー先輩を上回っていると僕は思い、彼女の恋人として誇らしい気持ちとなる。

 

 その後、スタジオらしき場所に案内され、中に入ると、そこには既にグレモリー眷属の面々が控えていた。

 

「こんにちは。今日はどうぞよろしくお願いします」

「よろしくお願いするわね」

 

 僕の挨拶にグレモリー先輩がいつもの素っ気ない感じで、でも、以前と比べればずいぶん穏やかな表情で答え、兵藤も以前の露骨に嫌そうな表情とは違った、何か思うところがありそうな表情で僕たちを見つめる。塔城も同様の表情だ。姫島先輩と木場はこれまでと変わらないが。

 

 「こんにちは! よろしくお願いします!」

 「やあ、お互い緊張するね!」

 アーシアさんとゼノヴィアさんはいつも通りの笑顔で迎えてくれる。

 

 アーシアさんはディオドラの事で心労が溜まっていると思うが、つとめて元気に振舞おうとしている感じだ。ギャスパーくんは兵藤の後ろに隠れて、怯えた表情で僕たちの方を見つめている。

 

 イリナさんと鬼崎の姿はない。今回の取材の対象はあくまでもグレモリー眷属と僕たちだけで、グレモリー眷属ではなく悪魔でもない二人は対象外という事なのだろう。

 

「お初にお目にかかります。堕天使界第一放送の局アナをしている者です」

「私は悪魔界の第一放送の局アナをしている者です。以後、お見知り置きを」

「こちらこそ、よろしくお願いしますわ」

「よろしくお願いします」

 

 堕天使と悪魔、双方のインタビュアーの女性が挨拶をしてきて、それにグレモリー先輩も僕たちも笑顔で応じ、打ち合わせに入る。スタジオには観客用の椅子も大量に用意されている。つまり、堕天使と悪魔の双方から多くの客が招かれるという事。もちろん、客の選定に当たっては厳しい選定がなされ、危険な考えを持つ者、堕天使と悪魔それぞれに強い敵意を持つ者、粗暴な者などは全て外されているので安心して欲しいとの説明がなされた。

 

 今回の取材のメインとなるのは、悪魔側ではグレモリー先輩と兵藤、堕天使側では僕とレイナーレという事なので、四人が並んで、ただし、僕たちとグレモリー先輩と兵藤の間はいくらか空ける形で座って取材を受ける形になる。その辺りはさすがに僕たちと二人の過去の事も考慮して気を使ってくれているのだろう。

 

 番組が始まった。まずは僕とレイナーレ、グレモリー先輩と兵藤がそれぞれ個別にインタビュアーからの質問を受ける。

 

「お二人のなれそめは?」

「(レイナーレ)最初は彼の神器を確かめる為に近づきましたが、彼の私を一途に見て愛してくれる気持ちに、彼の優しさに触れるうちに彼が愛おしくてたまらない気持ちになっていました」

「(僕)もう会ったその時から彼女に魅せられていました。さらに彼女が僕に本来の姿を見せてくれた時に、さらにその美しさの虜になりました」

 

「ミコトさんは現在、悪魔界の希望の星とされている、そちらの兵藤一誠さんとレイナーレさんを守る為に対決された訳ですが、その時のお気持ちは?」

「(僕)彼はとても強いですし、正直怖くもありましたが、レイナーレを失ってしまう事はそれよりもずっと怖くて……彼女を失いたくない! 何としても守る、その気持ちで必死でした」

「(レイナーレ)あの時は私が犯してしまった過ちのせいで、愛しい彼にとても辛い事をさせてしまって本当に悔やんでも悔やみきれない気持ちでした……でも、あの時、彼が命を懸けて私を守ってくれたお陰で、今、私はここにこうしています。それを思うと彼が愛しくてたまりません……!」

 

「ミコトさんはレイナーレさんと添い遂げるために、天使長ミカエル様のお力を持って人間から堕天使になったとの事ですが、その時のお気持ちは?」

「(僕)とても嬉しかったです! これで寿命を気にする事なく、愛しい彼女とずっと共に過ごせると思うと……最高の気分でした。そんな僕の願いをかなえてくださった、総督閣下や天使長様に心から感謝しました」

 

「もちろん、お二人はいずれご結婚される訳ですね?」

「(レイナーレ)もちろんですわ。ただ、現在暮らしている人間界のしきたり……ミコトのお父様、お母様のご意向によって、ミコトが駒王学園を卒業したところで結婚式を挙げる予定です」

 

 ここまではまともなインタビューが続いていた。だがその後……

 

「ミコトさんが発動する必殺技【ニプルブラスト】はずいぶんと特殊な技ですが……それを発動する時のミコトさんとレイナーレさんのお気持ちは?」

「(僕)は、恥ずかしい気持ちがないと言えば嘘になりますが……あの技は僕とレイナーレの愛の結晶で、彼女と大切な仲間たちを守る為のものです。ですから恥ずかしいなどと躊躇する訳にはいきません」

「(レイナーレ)わ、私も恥ずかしくないと言えば嘘になりますけれど……今、ミコトが申しました通り、あの技は私とミコトの愛の結晶ですから、愛しい彼を支えられる喜びと比べたら恥ずかしさなんて何でもないですわ」

 

「お二人はお持ちの神器を用いた戦いぶりから【ニプルドラゴン】、【ニプルクィーン】の異名を頂戴した訳ですが、それについてはどう思われますか?」

「(僕)あ、あの……どこでその話を……?」

「総督閣下が【禍の団】の構成員で指名手配犯である黒歌容疑者と美猴容疑者との戦いにおいて、お二人がその名で呼ばれるようになったと話しておられたのですから……」

「(僕)…………もちろん恥ずかしいですが仕方ないです」

「(レイナーレ)………………」

 

「ライバルの兵藤一誠さんは【乳龍帝(おっぱいドラゴン)】の名で有名になっています。それに対してミコトさんは【ニプルドラゴン(乳首ドラゴン)】。そう並び称される事についてはどう思われますか?」

「(僕)そ、それは……僕は僕、彼は彼ですから……僕はレイナーレと大切な仲間を守る為に結果としてああしている訳で……兵藤くんもグレモリー先輩や仲間の人たちの為に頑張っているのがああした形になっているのだと思いますし、特に僕たちの事を意識している訳ではないと思います……」

 

 僕が傍にいるグレモリー眷属たちや会場の悪魔の人たちに配慮しつつ、恥ずかしさをこらえつつ答えていると突如、兵藤の大きな声が響いた。

 

 「ち、乳龍帝えぇぇぇぇぇっ!!」

 恐らく、僕たちに対するのと同様の質問をされたのだろう。

 

 それにしても、僕の「ニプルドラゴン」といい、兵藤の「乳龍帝」といい、恥ずかしいが絶妙なネーミングだと認めざるを得ない。もっとも僕とレイナーレの強い愛の絆による技と、兵藤の女性であれば誰であろうが構わないという多情な欲望から繰り出す技を一緒にされるのは極めて不本意ではあるが。

 

 とにかく、そうした具合にどんどん、変な方向へとインタビューは流れていき、周囲の客たちから掛け声がかかる。

 

 「さすがは噂の最強バカップル!」

 「ニプルドラゴンにニプルクィーン……ぜひ、その戦いを見てみたいものだ!」

 「ニプルドラゴン! ニプルクィーン! いいぞっ!」

 僕たち二人は恥ずかしさに穴にでも入りたい気持ちを必死でこらえる。

 

 一方、グレモリー先輩と兵藤の方も、インタビューの声は聞こえないが……

 

 「リアス様あああっ!」

 「スイッチ姫っ!」

 「よっ! 乳龍帝っ!」

 と盛んに声がかかり、二人は顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。

 

「では最後に、将来悪魔界と堕天使界を背負う存在と期待される4人の方々にお互いへの思いを語って頂きます!」

 

 インタビュアーに最初にマイクを向けられた兵藤がまず答える。

 「こいつらとは過去に色々とありましたが、コカビエルや【禍の団】との戦いでは助けてもらったし、今は共にアザゼル先生の教えを受けている身。わだかまりがないと言えば嘘になるが……これからは仲良くしていきたいと思います」

 

 「兵藤くん……」

 「…………」

 思いがけない兵藤の言葉に、僕もレイナーレも驚きつつ彼を見つめる。インタビュアーの人も彼の言葉に胸を打たれた様子だ。

 

「まさに、悪魔と堕天使の和解、両陣営の新たな門出を象徴する言葉ですね! それで一誠さん、現在、堕天使界においてもレーティングゲームの導入が検討されているとの事ですが、ミコトさんたちとレーティングゲームをやってみたいと思いますか?」

「実は以前、既にあいつらに申し入れました。実現するのはまだしばらく先になると思いますが、やる事になったら全力で倒します。絶対に負けません」

 

「これは力強い言葉ですね。それほどの強い思いを持つ理由は何故ですか?」

「俺が【赤龍帝】だからです。グレモリー眷属の……大切な主と仲間たちの思いに応えないといけないからです」

 

 「イッセー……」

 グレモリー先輩がうっとりとした表情で兵藤を見つめ、近くにいるグレモリー眷属の面々も嬉しそうな表情で彼を見つめる。

 

「リアス・グレモリー様、いかがですか?」

「イッセーも言った通り、そこの堕天使たちとは色々ありましたし、私としてもわだかまりがないと言えば嘘になりますが、ここまで私たちと張り合って来たのはさすがだと思いますし、助けになってくれたのも確かなので、今度は良きライバルとして励み合っていければよいと思いますわ」

 

「グレモリー先輩……」

「…………」

 

 そこでグレモリー先輩は立ち上がるとレイナーレを見つめる。

 「レイナーレ。あなたとはこれからは良いライバルになれそうね。戦士としても、女としても」

 「ええ、私もあなたが相手なら不足はないわ。共に愛する人を支える女として、そして戦士として張り合っていきましょう」

 

 グレモリー先輩とレイナーレは共に美貌に勝気な表情を浮かべる。そして二人は握手を交わす。そこで、レイナーレは宣言する。

 「皆さん、私は誓います。過去に犯した過ちを償う為にも、私は愛するミコトと共に、ここにいるリアス・グレモリー様たちと協力してこの冥界のために頑張っていきます」

 

 「レイナーレ!!」

 「リアス様!!」

 会場にいる堕天使と悪魔の双方から二人に盛大な拍手が鳴り響いた。かつては激しく憎み合う仇敵同士であった堕天使と悪魔を代表する二人の美女。その二人がこのような形で、100パーセントでないにしても和解を宣言するのは本当に絵になるし素晴らしい……!

 

「では、最後に國原尊さん、いかがですか?」

「今日、この場でこのようにしてグレモリー眷属の皆さんと本格的な和解へと歩めた事は嬉しいですし、僕の愛するレイナーレの過去の過ちを赦して受け入れて下さった兵藤くんとグレモリー先輩を始めとする方々に感謝致します。愛するレイナーレと共に堕天使と悪魔、二つの種族の為に頑張っていきますのでどうぞよろしくお願いします」

 

 僕は兵藤の方へと向き直る。

 「兵藤くん。君がグレモリー先輩と仲間たちの思いに応えたいと思うように、僕も愛しいレイナーレと大事な仲間たちの思いに応えたい。だから君と勝負となったら負けないように精一杯頑張るよ」

 「おう。俺の思いとお前の思い、どちらが強いか勝負だぜ」

 

 僕と兵藤は握手を交わす。兵藤の手は僕よりも大きく、そしてたくましい。強く握られた手は痛かったが。

 

 そんな形で僕たちのインタビューは終了し、その瞬間、会場内は割れんばかりの拍手に包まれた。

 

 「やれやれだぜ……この俺が事もあろうに【ニプルドラゴン】とはよ……」

 ディヴェリクスがそうぼやく。ごめんね……ディヴェリクス……

 

 「ちなみにドライグの奴は大泣きしてるぜ。【二天龍】と呼ばれたあいつが【乳龍帝】……おっぱいドラゴンだからな……」

 そうなんだね……【ニプルドラゴン】と【おっぱいドラゴン】、どちらがより恥ずかしいのかな……

 

 「では、兵藤さんは別のスタジオへご案内します」

 スタッフの人に何やら台本らしきものを渡されて促される兵藤。

 

 「あっ、國原尊さんはこちらで。さすがにあれは……刺激が強過ぎますので……」

 …………?

 

 何の事か分からない僕を置いて、スタッフの人は怪訝そうな顔で僕を見つめている兵藤を促して部屋から出て行った。一体、兵藤は何をするのか? そして僕はそれはしなくて良いという事らしいが、どういう事……?

 

 その後、まずカラワーナさんと流音くんへのインタビューが行われた。周囲から黄色い歓声が上がる。

 「カラワーナさん! 素敵っ!」

 「ルオンくん! 可愛いっ!」

 

 二人は顔を真っ赤にしている。カラワーナさんはそのクールビューティな雰囲気が若い女性に人気で、流音くんはその母性本能をくすぐる可愛らしさが年上の女性たちの心を揺さぶるんだそうだ。

 

 この二人の場合、【年齢差&逆身長差カップル】という部分がさらに皆の興味を掻き立てるようで、二人は次々来るきわどい質問にあたふたとしていた。

 

 少し離れた場所では木場と姫島先輩がインタビューを受けていて、木場は女性客から、姫島先輩は男性客から大歓声を浴びていた。いずれも駒王学園でいつも見る風景だ。

 

 次いでミッテルトちゃんと塔城、二人が並んでのインタビューが行われた。

 

 「ミッテルトちゃん! 可愛いよ!」

 「小猫ちゃんもすごく可愛い!」

 「二人とも、彼氏はいるの!?」

 といった声が盛んにかかっていた。二人には結構コアなファンが多いらしい。そんな声にミッテルトちゃんはいつもの茶目っ気たっぷりな調子で、塔城は例の不愛想な様子で応えていた。

 

 「では、キュートなライバル同士という事で、お互いに抱負をお願いします」

 「ウチはコイツに勝つために、強くなる為に頑張るっす!」

 「この堕天使はまだまだ弱いですが、根性だけはあります。せいぜい修行して、私と少しはまともに戦えるようになるのを期待して待っています」

 「こ、このドチビ……」

 け、喧嘩だけはやめてね……

 

 ようやく撮影が終わった時、さすがに僕たちも疲れ果てたが、でも良かった! 長かったグレモリー眷属との因縁がようやくほぼ解消されて、会場にいる堕天使と悪魔の双方にあんなに温かく歓迎され、応援されて……これで以前、レイナーレに浴びせられた【自分の身勝手な野望の為に悪魔との戦争の危機を招こうとしたとんでもない女】という汚名はもはやほぼ払拭され、彼女は堕天使界の人気者となり、悪魔界でも受け入れられつつある。さらにカラワーナさんと流音くん、ミッテルトちゃんも、今回の事で皆の人気者になれた。だから良かった……! そしてアザゼル様はこうなる事を望まれて、今日のこの場を用意して下さったんだ!

 

 僕は疲れつつも充実感とアザゼル様への感謝の思いにあふれていた。隣に寄り添っているレイナーレも明るい表情で、それがまた僕を嬉しくさせる。

 

「レイナーレ、色々と大変だったけれど、でも良かったね♪」

「ええ、アザゼル様のお計らいに感謝しないといけないわね♪」

 

 僕の言葉に笑顔で応えるレイナーレ。僕はその彼女をそっと抱き寄せて唇を重ねる。

 

 ちなみに兵藤が別のスタジオに行った要件について、後でゼノヴィアさんから聞いたところによれば、スタッフから本放送までは秘密にして欲しいと言われたそうで、グレモリー先輩にもまだ話していないとの事だ。

 

 その後、僕たちが帰る直前、あのレイヴェル・フェニックスが突然、兵藤を訪ねて来た。彼女は兵藤に自分の手作りのチョコケーキを差し出し、それを兵藤はその場で食べる。

 

 「うまいよ。レイヴェル。ありがとう」

 レイヴェルは目を潤ませ、顔を真っ赤にしている。彼女の兵藤の事が好きな気持ちか伝わって来る。

 

 「イッセー様、今度の試合、応援してます!」

 レイヴェルはそう叫んでグレモリー眷属たちに一礼する。僕たちとは目も合わせようとしないが。そして彼女は足早にその場を立ち去り、グレモリー眷属の女子たちが怖い表情を兵藤に向け、兵藤はそれに一体どうした? という表情を浮かべている。

 

 女性の気持ちへの鈍感さは相変わらずのようだ。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 今日、リアス部長や一誠たちは冥界でのテレビ番組出演の為に出かけている。僕はオカルト研究部員ではあってもグレモリー眷属の一員ではないので対象外という事でそれには同行しない。この時間を利用して僕は駒王町内のデートスポットである遊園地へと出かける。そしてそこには……

 

 「陽太郎、待った?」

 高校生の女生徒くらいの年恰好になったオーフィス……僕の最愛の彼女が来た。可愛らしい黒のワンピース姿で。そう、先日、ヴァーリと美猴に自分の決意を伝えた時、【彼女にここに来て欲しいと伝えて欲しい】と彼らに頼んだのだが、二人は約束通りすぐに彼女にそれを伝えてくれて、ではちょうど良い日程はという事で今日会うという形にしたのだ。

 

 僕とオーフィスは観覧車に乗った。そこで僕と彼女は向かい合ってお互いを見つめ合う。オーフィスの吸い込まれそうな黒い瞳がじっと僕を見つめる。

 

 「我、こうして陽太郎と二人きりでいるの、とても楽しい」

 オーフィスがうっすらと微笑を浮かべつつ言う。

 

 「僕もオーフィス、君とこうやって過ごすのが楽しいよ」

 「そう、我、嬉しい」

 そしてオーフィスはまた僕の顔を見つめる。

 

 「陽太郎。我に何か話したい事、ある?」

 よく皆からは【何を考えているのかさっぱり分からない】と評される彼女だが、意外なほどに他者の様子には敏感なのだ。

 

 「うん……実は、前々から考えていた事なんだけれど……僕、【禍の団】を抜けようと思うんだ」

 僕は彼女に自分の決意を伝える。すると。

 

 「陽太郎、我に飽きたか?」

 そう問う彼女の顔には怒りではなく寂しさが浮かんでいる。

 

「そうじゃない!」

「では、何故、我から離れようと?」

「違う!オーフィス、僕は君から離れるつもりなんかない!」

「では、何故、【禍の団】を抜ける?」

 

 そう問いかけるオーフィスの腕を僕は思わずつかむ。

 「オーフィス、僕は君と一緒に【禍の団】を抜けたいんだ!」

 

「我と一緒に……? だが、我は【禍の団】の長」

「違う!あのシャルバやクルゼレイといった連中は、君を自分たちの野望を遂げるための道具として利用して祭り上げているだけだ! 君を決して大切に思ってなどいない!」

 

 もちろんそれは彼女も十分に分かっているはず。元々、連中は【あの交換条件】を示す事で彼女を担ぎ出したのだから。でも僕はそれをあえて叫んだ。僕があの連中とは違って、本気で彼女を大切に思っている。それを示したかったから……

 

「陽太郎……だが、【禍の団】を抜けてどこへ行くつもり?」

「僕が一緒にいるグレモリー眷属のもとへ! 一緒に行こう!」

 

「グレモリー眷属……でも、あの者たちと共にいるアザゼルも魔王たちも我を恐れ、敵視してる……我を受け入れるはず、ない」

「大丈夫だよ! 彼らなら本当の君を知ったなら、きっと受け入れてくれる! もし、受け入れなかったらその時は、僕も君と共にする。その時は以前の約束通り、【次元の狭間】を目指そう!」

 

 僕はオーフィスの手を握って訴える。正直、本当にグレモリー眷属の皆やアザゼルたちが彼女を受け入れるのか、実際は確信はない。だが、僕はそれを信じたかったのだ。

 

「陽太郎……」

「オーフィス、君は前に言ったよね……【我、陽太郎が決めた事なら、それに従う。だから、陽太郎の思いのままにして良い】と……だから、ここは僕の事を信じて欲しい」

 

 オーフィスはまたしばらく僕をじっと見つめた後、微笑んだ。

 「分かった。我、陽太郎を信じる。だから従う」

 

 その瞬間、僕の胸に彼女を愛おしく思う気持ちが激しくこみ上げる。

 「ありがとう!オーフィス!」

 

 僕は叫びつつ、彼女を強く抱きしめる。そして彼女にそっと唇を重ねた。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 僕は遊園地でのデートの後、オーフィスを連れて自分の現在暮らしているアパートの部屋に入る。そこで僕はまた彼女を抱きしめてキスする。

 「あむっ……ううんっ……」

 

 唇を離した僕をオーフィスはまたじっと見つめる。

 「陽太郎、何故、彼らと共にいたいと思った?」

 「うん……彼らの常に努力してあきらめることなく目標に向かって突き進む強い意志と行動力、そしてお互いを思って支え合う絆……それに魅かれてという感じかな……」

 

 「【あきらめることなく目標に向かって突き進む強い意志】……」

 オーフィスは僕の言葉を反芻する。

 

「オーフィス、君も知っての通り、近々、あのディオドラ・アスタロトとグレモリー眷属が激突する。君はどちらが勝つと思う?」

「ディオドラ・アスタロト。彼には陽太郎を通じて我の蛇を渡した。あれを飲めば力が増大する。まず勝てない。たとえ勝てたとしても大変な苦戦するはず」

 

「僕はそう思わないな。この勝負、あの男と直接対決するのはおそらく【赤龍帝】兵藤一誠だけど、僕は間違いなく一誠が勝利するはずだと確信しているよ」

「何故? 陽太郎も知っているはず。我が蛇、飲めばたちまち強大な力を得られる」

 

 僕の言葉に信じられないという様子のオーフィス。あまりにも強大な力を持ち、他者から恐れられ、敬遠されて孤独の中で生きてきた彼女。その彼女には強い意志を持って目標に向かって努力する意思、仲間を、愛する者を守ろうという強い想い、それがとてつもない力を生み出すという事が理解できないのだろう。

 

 「君ももうすぐ、それが理解できるようになるよ」

 「我、よく分からない。でも、陽太郎が言うのだからきっと正しい」

 オーフィスはその黒い、吸い込まれるような瞳で僕を見つめる。

 

 「我、ずっと一人でいた。それを何とも思わなかった。でも、今は陽太郎と離れたくない。そう、陽太郎が我を変えた。だから我は陽太郎を信じる」

 その彼女の言葉を聞いて、僕の彼女を愛おしく思う気持ちがまた激しく募り、僕は彼女を無言で強く抱きしめる。

 

 「あっ……陽太郎……」

 僕は上着を脱ぎ捨て、オーフィスの着ている服を脱がせる。露わとなる彼女の白いなめらかな肌……

 

「あっ……」

 

 全裸となったオーフィス。大人の姿になった彼女の乳房はリアス部長や姫島先輩、レイナーレや黒歌ほどではないが大きくて張りつめていて、その頂の乳首はまだ男を知って間もない事を示す綺麗な桜色だ。腰はくびれておへそも引き締まってとても美しい……!

 

 「陽太郎、我の体、いつも夢中で見つめる。我、嬉しい」

 オーフィスはその可愛らしい顔をほんのりと赤らめて僕を見つめ、僕の頬に手を当てる。彼女の白くなめらかな手の感触がとても心地よい。

 

 僕は彼女の華奢な肩を抱いて、引き寄せる。

 「あっ……」

 

【挿絵表示】

 

 オーフィスの裸体を自分の胸に押し当てる。彼女の張りつめた乳房が僕の体にむにゅっ!と押し付けられ、その感触が僕の胸を高鳴らせる。

 

 「陽太郎の体……たくましくて良い感触……」

 オーフィスはそのなめらかな白い綺麗な手で、僕の胸板を、腹筋を撫で回す。

 

 僕はその感触の心地よさに思わず声を上げる。

 「あっ……ああ……」

 

 「陽太郎、気持ち良い? 我、嬉しい……」

 オーフィスはその可憐な顔に本当に嬉しそうな表情を浮かべて僕の体をさらに撫で回す。彼女の手が僕のズボンをはいた股間に触れる。

 

「あっ……!」

「陽太郎のココ……すごく硬く、大きい……我、慰めたい」

 

 そう言ってオーフィスは僕のズボンに手をかけてそれを脱がせにかかる。僕のズボンがするりと脱がされ、僕はパンツ一丁になる。オーフィスはそのパンツに両手をかける。

 

 「あっ!」

 僕の思わず発した声と共にパンツが僕の体からずるっ……と引き剥がされ、僕の猛り立った男根がぶるんっ! と弾みつつさらされる。それをオーフィスは手に取る。

 

 「あっ!」

 男根を包み込むオーフィスのひんやりとした手の感触に僕はあえぐ。

 

 「陽太郎のココ……すごく大きい……我に興奮して……嬉しい……」

 オーフィスは僕の男根をさすり回し、さらにそれをはむっ……と口にくわえる。

 

 「あっ!! あああっ!!」

 僕は思わず大きな声を上げる。

 

 「陽太郎、そんなに気持ち良い?」

 オーフィスは微笑むと、くわえた僕の猛り立った男根を舌でなめ回し、吸い上げる。その気持ち良さに僕の男根はもう耐えがたいほどに膨れ上がる。

 

「ああああっ!! オ、オーフィスっ!! ぼ、僕もうっ!! で、出るよっ!!」

「あむっ……れろれろ……ぺちゃあっ……ああ……陽太郎、良い……出す」

 

 「あっ!! あああああーーーーっ!!!」

 絶叫と共に僕は猛り立った男根から精液をビュビュビュビュッ! と噴出させ、それがオーフィスの顔にかかる。

 

 「ああ……陽太郎……こんなにたくさん……熱いの……」

 オーフィスが僕の精液まみれになった顔で微笑む。僕はしばらく体を休めた後、起き上がって彼女の顔についた精液をティッシュで拭き取り、今度は彼女を満足させてあげるべく、彼女の両足を開く。

 

「あっ……」

「いくよ……オーフィス」

 

 僕は自分の猛り立った男根をオーフィスのピンク色の秘部へと突き入れる。

 「あっ!! ああっ!!」

 

 オーフィスが普段は決して発する事のない大きな声を上げる。僕は激しく腰を動かして彼女の中に男根を深く突き入れる。

 

「あっ!! あっ!! 陽太郎のモノ!! すごく熱い!! あっ!! あああああっ!!!」

「ああっ!! オーフィスっ!! オーフィスっ!!」

 

 「よ、陽太郎っ!! わ、我、も、もうっ、あっ!! あああああああーーーーっ!!!」

 絶叫と共にオーフィスの体がビクビクとふるえ、彼女は絶頂に達した。

 

 「ああ……陽太郎……ううん……」

 僕は汗に濡れた裸体をベッドに横たえているオーフィスの艶やかな黒髪を撫でつつ思う。

 

 さあ……! 後はいよいよイッセーや祐斗、リアス部長たちに事実を告白するだけだ!

 果たして彼らは僕を受け入れてくれるのか……? いや、もう迷っている時間はない! もし受け入れられなかった……拒絶された場合はオーフィスと二人だけで歩むのみ! そして受け入れられたなら、僕は全力でイッセーたちをサポートする!

 僕はそう心に誓った。

 

(次回に続く)




 今回はいよいよグレモリー眷属とディオドラとの決戦が迫る中で、ディオドラの理不尽な悪意によってそれに巻き込まれつつある尊&レイナーレたちと、ついにグレモリー眷属側につく事を決意した鬼崎の心の動き、彼とヴァーリや美猴との友情、オーフィスとの愛を描いた回となりました。

 尊たちとヴァーリ、美猴との接触。2人に会った際の尊の反応、一誠のものとは対照的で、両者の性格の違いがよく表れています。尊たちにとってヴァーリたちは一応、敵対関係ではあるけれども時には助けてくれて、何だか憎めない存在という感じですね。お互いがお互いをそれなりに認め合っていて、ヴァーリたちとグレモリー眷属との関係と共通点があります。まあ、特にヴァーリは裏で色々と画策したり、卑怯な手で相手を陥れたりするやり方には嫌悪感を抱くタイプですからね。

 アザゼルの思惑により組まれた、リアスや一誠たちグレモリー眷属と尊&レイナーレたちの合同取材! 以前書いたお話では尊たちのみの単独インタビューだった訳で、今回のお話における大きな変更点であった訳ですが、これによって長く続いた両者の因縁を解消すると共に、尊やレイナーレを堕天使界の未来の期待のホープ、ヒーローとヒロインに仕立て上げるという策略だったわけです。

 これによって尊たちとグレモリー眷属は協力して共に冥界を守っていく同士、という形になった訳で、まだ一誠の心にはレイナーレに対するわだかまりはあるにせよ両者の対立は公的に終止符がうたれた訳です。またこれはアザゼルが、かつてレイナーレが犯した罪からきていた彼女の悪評を一掃して、彼女が堕天使界で受け入れられ、支持される存在にする、さらに悪魔界でも受け入れられるようにするという気遣いと、尊に将来堕天使界を背負う存在になって欲しいという強い期待を込めた訳で、尊とレイナーレもその彼の思いをしっかりと感じ取り、感謝しています。この変更により、今後の対ディオドラ戦の展開も以前のお話とはかなり変わる事になると思います。

 ちなみに一誠が途中で別のスタジオに呼ばれた理由、そして尊は同行は不要と言われた理由、それは今後、明らかになります(笑)

 さらにアザゼルは既に鬼崎について、彼をよく観察していて、どう対応するか思うところがあるようです。今回はっきりと「あいつの事は俺に任せろ」と言っていますからね。それがどのような形かは、次回明らかになります。

 鬼崎がヴァーリと美猴に対して自らの決意を打ち明ける場面。敵に対する憎しみではなく、戦いによる高揚感、ロマンを求めるヴァーリと美猴は、一誠たちグレモリー眷属の姿に魅かれる鬼崎の気持ちを理解して、彼の決意を受け入れています。そんなおおらかさが彼らの魅力ですね。

 そして鬼崎がオーフィスに自らの決意を打ち明ける場面。こちらはヴァーリ、美猴との場面とは違って、かなり緊張感あふれるものとなりました。しかし結局、オーフィスも鬼崎の決断を受け入れます。決め手となったのは鬼崎の愛が自分を変えたというオーフィスの中の実感、それゆえに彼を【信じる気持ち】ですね。

 鬼崎&オーフィスの二人が愛し合う場面。尊&レイナーレのものとは違った感じのシチュエーションでというのを心掛けましたがいかがだったでしょうか?

 次回はいよいよ、鬼崎が一誠たちに自分の素性を打ち明けます。それを聞いた一誠たちが彼にどう対応するのか? さらに尊&レイナーレの周りでも思わぬ事態が発生します。それはどのような事なのか?

 それでは、次回をお楽しみに!^^
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