一方、レイナーレはディオドラが自分を狙った理由をアザゼルから聞き、大きなショックを受ける。そんな彼女を慰める尊。
そしてカラワーナと流音の二人を不測の事態が襲う……!
その翌日、駒王学園に登校した僕は放課後、体育館裏に一誠と祐斗を呼び出した。
「おう、待たせたな鬼崎」
「陽太郎くん、待たせてごめんね」
「悪いね。急にこんな所に呼び出したりして」
「良いって事よ。それで、何だよ? 話したい事って?」
「ここに僕たちだけ呼び出すというのは、大事な内密の話だって事だよね?」
「う、うん……」
打ち明ける事を決意したはずなのに、いざとなると僕は怖気づいてしまっている。
「陽太郎くん。君が何かをずっと思い悩んでいるのを僕も、イッセーくんも、リアス部長も皆が気付いていたよ。でも、あえて聞かなかった。君が自分から話してくれるのを待っていたんだ。でも、君は今日、それを僕たちに打ち明ける決意をしてくれた。そうだよね?」
「ああ……」
「じゃあ、それを話してくれるよね? とても言いにくい事だというのは君の様子を見ていて思うけれども、僕たちは友達なんだから」
「そうだぜ。木場の言う通りだ。俺たちは友達だ。隠し事は無しだぜ。鬼崎、話してくれ。俺たちはお前の力になりたいんだ」
祐斗と一誠の真っ直ぐな眼差しに僕はもはやこれ以上、黙っている事は不可能だと悟る。
「分かった。じゃあ、話すよ。イッセー、祐斗、僕は実は【禍の団】の一員なんだ……」
「……!」
僕の告白にさすがに一誠も祐斗も驚いた表情を見せる。
「君たちも知っているヴァーリや美猴、黒歌とチームを組んでいたんだ。イッセー、祐斗、君たちと初めて会った時に國原尊とレイナーレのもとに導いたのも、悪魔と堕天使の間の対立を再燃させて、再び両者の戦いを引き起こそうという企みだったんだ」
「その後、僕はコカビエルとの戦いで君たちに協力してその信頼を得て、三勢力会談にもサーゼクス様直々のお願いがあって参加した。もちろん、コカビエルの事件の時のヴァーリとのやり取りや、三勢力会談の時の美猴との戦いは、あらかじめ彼らと示し合わせた上でのヤラセだった。ただ、これだけは言っておきたい。コカビエルとの戦いの時に祐斗、君を助けたいと思った気持ちに偽りはなかった。三勢力会談の時も、君たちを騙している事に僕は心の中で苦悩していた……」
「あの後、僕は改めてリアス部長の元を訪れて、自分を仲間に加えて欲しいと言った。そしてリアス部長の許可を得た僕は駒王学園に転入してオカルト研究部の一員になったんだ……でも……」
僕がそこまで語ったところで一誠が言った。
「そうか……鬼崎、確かに今、言ってくれたように、お前はずっと悩んでいた様子だった。そして今日、お前は俺たちに真相を話してくれた。それは何故なんだ? 話してくれねえか?」
一誠は僕の目をしっかりと見据えた。
「ああ……僕はさっき話した通りの目的でここに来た。でも、僕は最初からイッセー、祐斗、君たちの姿に心惹かれるものを感じていたんだ。あの、國原尊やコカビエルとの戦い時に見せた、君たちのお互いを大切に思い合う姿に……その大切な仲間の為ならば自らの危険も顧みない姿に僕は魅かれた。そして、ここで君たちと共に過ごす中でどんどんその気持ちは強くなっていったんだ」
「あの冥界での合宿中も、ずっと僕は悩んでいた。君たちに本当の事を打ち明けて真の仲間になりたいと。でも、怖かったんだ。僕が君たちに近づいた真相を知ったなら……当然だけど、君たちは僕に怒りと嫌悪の表情を向けるんじゃないかって……だから……」
そこまで語ったところで、胸にこみ上げてくる思いで言葉が続かなくなった。だが、その僕の肩を一誠はポンと軽く叩き、ニヤッと微笑んだ。
「鬼崎、よく分かったぜ。お前の思い」
「イッセー……」
「陽太郎くん、よく話してくれたね」
祐斗も僕に優しく微笑んでくれる。
「イッセー、祐斗、僕は君たちを騙していたんだよ……それを恨んでいないのかい?」
「恨む訳ねえだろ。お前はそんなに俺たちの事を大切に思ってくれて、これまで俺たちの為にそんなに悩んでいた。そんなお前を憎める訳がねえよ。鬼崎、これからもよろしく頼むぜ!」
「イッセー……!」
「そうだよ! 陽太郎くん、君が【禍の団】の一員だと聞いた時は正直驚いたけれど……君がそれほどまでに僕たちの事を大切に思っていてくれたと知って、僕もとても嬉しかったよ! これで僕たちは心の底から本当の仲間になったね! 陽太郎くん、改めてよろしくね! 頼りにしているよ!」
「祐斗……! そしてイッセー……ありがとう……! 本当にありがとう……!」
僕は心の底から礼を言って、二人とガッチリ握手をした。そして僕は、既にヴァーリと美猴に【禍の団】を抜けて、彼らとのチームを解消する決意を伝えた事、それをあの二人が快く受け入れてくれた事を伝えた。
「そうか……あいつら、よくわからねえ奴らだけど……そうだったか……」
一誠はちょっと複雑そうな表情を浮かべた。
「よし! じゃあ、リアス部長たちにも伝えようぜ。大丈夫! 俺たちがついているからよ!」
一誠が笑って僕の手を取る。
「うん! そうだね。あっ、後、もう一つ、僕は君たちに話さなくてはいけない事があるんだ!」
そう、それはあのディオドラの事。それを僕が話そうとした瞬間……
「どうやら、話はひとまず終わったようだな」
あのアザゼルが姿を現した。怪訝そうな表情を浮かべる一誠。
「先生、どうしてここに……?」
「そろそろ、そいつがお前たちに告白する頃じゃねえかと思ってな。見張ってたって訳だ」
アザゼルはニヤッと笑った。どうやら、僕の考えは彼には完全に見透かされていたようだ。
さすがは百戦錬磨の堕天使総督。
「先生! 鬼崎は自分から事実を打ち明けて、【禍の団】から抜ける事、そして本当に俺たちの仲間になる事を誓ってくれました! だから……」
一誠が僕の事を弁護して叫ぶ。それにアザゼルはうなずく。
「ああ、分かってるぜ。だからこそ俺としちゃ、こいつに聞きてえ事があってな。じゃあ、鬼崎、今、言いかけた事を話してみな。あのディオドラの事だろ?」
「何!?」
「!?」
驚く一誠と祐斗、その二人に僕はうなずき、アザゼルの方に向き直る。
「はい。ディオドラは【禍の団】と結んでいます」
「何だと……!」
「やはりな。じゃあ鬼崎、奴らの計画についてお前の知っている限りの事を話せ」
「はい。今回行われるグレモリー家とアスタロト家のレーティングゲームには現魔王や各勢力の幹部クラスの方々も来る。それを襲撃して殲滅して、この世界を転覆させようというものです」
「その計画の首謀者は【禍の団】の旧魔王派の連中……旧ベルゼブブと旧アスモデウスの子孫だな?」
「はい、その通りです」
僕はアザゼルの問いに答えつつ、目の前の堕天使総督が見事なまでにこちらの計画について既に読んで備えている事に舌を巻いた。
ディオドラは言うに及ばず、あのシャルバもクルゼレイも到底敵う相手じゃない……器が違いすぎる……!
「じゃあ、ディオドラの野郎が【禍の団】と手を結んだ目的は……」
「そう、旧魔王派の権力奪回の計画に協力する見返りにアーシアさんを我が物にする事、さらに新たな魔王の座を手中に収める事だね」
「あの野郎……!」
僕の言葉に一誠が怒りに身をふるわせる。
「最近、あのグラシャラボラス家の次期当主が不慮の事故死をしたのをはじめ、現魔王に関与する者たちが不審死していたのも、皆、旧魔王派の連中が手にかけてたって訳だな?」
「その通りです」
「そんな陰謀が進行していたとは……つまり、僕たちの試合は最初から旧魔王派に狙われていたという事……」
祐斗がつぶやく。
「あのアガレス家とのゲームでディオドラの魔力が急激に上がったのはオーフィスの力を借りての事だろ?」
「はい、そうです」
「あのクソ野郎……なんて汚ねえ奴だ!」
一誠の顔に激しい怒りと嫌悪の表情が浮かぶ。
「それにしても、ディオドラがその力をゲームで使った事は旧魔王派の連中も計算外だったろうぜ。鬼崎、お前もさぞ驚いて呆れたんじゃねえのか?」
「はい……」
「だから俺たちとしても、グラシャラボラス家の一件と併せて、今回のゲームで何かが起こるかもしれねえと予想が出来たんだ。しかし、奴らは作戦を途中で覆さなかった。そうだな? 鬼崎」
「はい。彼らは自らの力を過信していますので」
「よし! じゃあ、鬼崎、とりあえずお前の素性について話すのはイッセーと木場の二人に留めておけ。イッセーと木場もリアスたちにはまだ話すな。あいつらには後で俺から事情を伝えるからよ」
「えっ!? で、でも……」
アザゼル……アザゼル先生の言葉に驚く一誠と祐斗。
「奴らにしてみりゃ、とにかくこちらを始末出来りゃいいんだろうが、俺たちとしてもまたとない機会なんだ。今後の世界に悪影響を出しそうな旧魔王派を潰すにはちょうどいい。現魔王、天界のセラフたち、オーディンのジジイ、ギリシャの神、帝釈天とその仏どもも出張ってテロリストどもを一網打尽にする寸法って訳だ。連中にテロの可能性を極秘裏に示唆して、この作戦に参加するかどうか聞いたが、どいつもこいつも応じやがった。という訳で、俺としちゃ、お前たちのゲームが開始する寸前までは事を進めておきてえんだ。奴らもそこで仕掛けてくるはずだからな」
「…………」
一誠と祐斗は戸惑いの表情を浮かべている。それはそうだろう。彼らに自分の身を危険にさらせと言っているようなものなのだから。
「先生、もし、俺たちが万が一死んじゃったらどうするんですか?」
「俺もそれ相応の責任を取るつもりだ。俺の首で事が済むならそうする。済まねえ。ここは俺に従ってくれ。お前たちの身の安全は出来る限り確保するつもりだから……」
先生は二人に頭を下げた。
「分かりました。先生がそこまでの覚悟をしているなら、俺たちも腹を決めます」
「ありがとよ」
本当にこのアザゼル先生、敵に回したら実に恐ろしいが、味方となればこれほどに頼もしい男もないだろう。あの國原尊やレイナーレが心から心服しているのも分かる。
「という訳で、木場、鬼崎、話は決まったぜ! 俺たちはアーシアをあのディオドラのクソ野郎から守って、奴と旧魔王派の連中の汚ねえ野望を粉砕する! それまで心苦しいが、部長たちにはこの話はしない。いいな?」
「うん! 分かった!」
「では、先生、俺たちはこれで失礼します!」
「あっ、済まないけれど僕はもう一つ、アザゼル先生に話したい事があって……イッセー、祐斗、少しだけ外で待っていてくれないかな?」
「ああ、分かった」
「じゃあ、僕たちは外で待っているね」
一誠と祐斗は快く応じてくれた。
そして一人残った僕はアザゼル先生と一対一で向かい合う。
「それでその話なのですが……」
「ちょっと待て。その前に俺もお前に確認したい事がある」
「以前、冥界に合宿に行った際、魔界列車の車掌のレオナルドがお前の身元照合を行ったがお前はそれに引っかからなかった。俺もお前の素性を一応探りはしたが何も探り当てる事は出来なかった。お前の中にすげえ魔力が働いているのは間違いねえ。その魔力の主はズバリ、お前ら【禍の団】のトップのオーフィスだな?」
先生はズバッと核心を突いてきた。
「はい、その通りです」
もはや隠す必要がない僕はそれを認める。
「よし。じゃあ、お前の話したいって事を言ってみろ」
「はい。実は話とはそのオーフィスの事なのですが」
「何……? オーフィスの事だと……?」
先生は訝し気な表情を浮かべる。
「はい。僕はオーフィスと……彼女と愛し合っています」
「何……!?」
僕の告白にさしもの先生も明らかに驚いた表情を見せる。
「マジか……?」
「もちろんです」
僕は先生にオーフィスとのデートの時に撮った僕と彼女が一緒に映っている写真を見せる。
「そうか……あいつ、今はこんな姿をしてんのか……」
写真を見つめつつ感慨深いといった表情の先生。
「そうか……あいつがお前とな……信じ難かったがそうか……それで、お前があいつの事で話したい事とは何だ?」
「はい。オーフィスは一応、【禍の団】の首領という立場に置かれてはいますが、彼女は単に旧魔王派の者たちに象徴として担がれて利用されているに過ぎません。彼女自身はあの連中が考えている企みには何の関心もない。ですから、今後、彼女が【禍の団】のトップの座を降りたら、彼女を疑わずに受け入れて頂きたいのです。堕天使にも悪魔にも、天界にも、三勢力いずれにも影響力を持たれているアザゼル先生であれば、力を貸して頂ければ大きな力になると思いますので。お願いします」
僕は深々と頭を下げて頼んだ。
先生はそんな僕をしばらくじっと見つめてた後、言った。
「分かった。お前の話にゃ驚いたが、どうやらお前の気持ちに嘘はなさそうだ。ただ、俺としてもこの場で全て信じるという訳にゃいかねえ。オーフィスに直接会ってあいつの真意を確かめる。それでお前の言っている事が間違いねえと分かったら、力になってやる」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。では、近々、オーフィスを連れて伺いたいと思います。では、失礼します」
僕が挨拶して外に出ようとする所を先生が呼び留めた。
「待て。俺の方でもお前に一つ聞きたい事がある」
「何ですか?」
「ディオドラが何故かレイナーレを狙っている。この前、あいつが尊と共にいる所をディオドラの部下の連中が襲って来て尊により撃退されたが、その連中ははっきり【命令によってレイナーレを拉致する】と言ったそうだ。それはヴァーリの奴が尊たちに【ディオドラの仕業】とはっきり伝えた事で裏付けも取れてる」
ヴァーリが……なるほど、彼らしいな……彼はああいうやり方は嫌うからな。
「だが、レイナーレは初めて奴に会ったのはあの冥界での若手悪魔の集会の時で、奴に恨まれるような覚えは全くないと言ってる。レイナーレや尊の話を聞く限り、奴は以前レイナーレがアーシアを殺した事を恨んでいるという訳でもねえようだ。鬼崎、お前はその事情について聞いてねえか?」
僕としてはレイナーレは、彼女がかつて一誠やアーシアさんに加えた仕打ちから、あの女は未だに好きになれないが、今、ここでアザゼル先生に悪印象を持たれるのはまずいし、ここで【知らない】と答えても不信感を抱かれるだけだろう。
「はい。ディオドラはこう言っていました……」
僕はディオドラから聞いた話をそのまま正直に先生に伝えた。
「なるほどな……分かった。では、今日はこれで帰っていいぞ」
そこで僕は先生のもとを辞して、外で待っている一誠と祐斗のもとへと向かった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
やはり、俺の思った通りだった。あの鬼崎の奴、一誠たちに心を惹かれてやがった。
俺としても奴は相当な実力者に違いねえし、そうした奴を味方にするのは今後の為にも大いに役立つし、心強い。何よりも今回のグラシャラボラス家の次期当主の不審死とディオドラ・アスタロトの魔力増大について、あいつの証言によってほぼ確証が取れた。俺の考えは当たっていたって訳だ。ディオドラの小僧がレイナーレを狙った理由も分かった。本当に心根の捻じ曲がった野郎だぜ。あの小僧……!
だが、あいつのあの告白には驚いたぜ。まさかあのオーフィスがあの小僧とそんな関係になっているとはな……【彼女は旧魔王派の連中に利用されているだけ、彼女を敵視しないで欲しい】とはな……あのオーフィスの奴、一体何考えてるのか分からねえ奴だが、意外と根は純真な奴なのか? とんでもねえ力と悠久の時を生きているあいつが……いや、そう簡単に鵜呑みにする訳にもいかねえ。直接、あいつに会って確認しねえとな。
とにかく事実を確認した俺はサーゼクスに連絡を取る。
「通信で悪りぃな、サーゼクス。例のグラシャラボラス家の次期当主の不審死とディオドラ・アスタロトの魔力増大についてだが、ほぼ確証が取れたぜ」
「そうか。やはり繋がったか……悪魔は未だ問題を抱えるばかりだ」
「そういう事だ。他勢力の連中とも既に連絡を取った。どいつもOKだとよ。って訳で例の案、もはややるしかねえぜ。ったく、身内のイベントでただでさえテンション低いのによ」
「聞いているよ。グレゴリの幹部がまた一人婚姻したようだな」
「どいつもこいつも焦りやがって。何よりも俺に黙って他勢力の女とよろしくやっていたなんてよ……クソ、そろそろ独り身は俺だけか!」
「フフフ、アザゼルも身を固めたらどうだ?」
「嫌だね。俺は趣味に生きる男だぜ。お、女なんていくらだっているぜ!」
「そうだな。そういう事にしておこう。さて、例の案だが……」
「ああ、既にイッセーと木場には話をして納得してもらった。リアスたちにゃまだ話してねえ。そこは少々悪りぃがな……」
「そうか……まあ、そこはお前を信じる。では、頼んだぞ」
「ああ、任せとけ」
そんなやり取りの後、俺は通信を切った。
さてと、次は尊たちにディオドラの奴がレイナーレを狙った事情を伝えた上で、あいつらに用心するよう伝えとかねえといけねえな……レイナーレはショックを受けるだろうが、尊がいれば大丈夫だろ。だが、こうなってくると昨日、あのイベントで尊たちと一誠たちを和解させておいたのは良かったぜ。これでいざって時には協力体制が取れるってもんだ。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
あの堕天使界でのテレビ出演から帰った翌日、僕とレイナーレ、そしてカラワーナさんにミッテルトちゃんと流音くんの5人はまたアザゼル様に呼び出された。
「おう、来たか! 昨日はご苦労だったな!楽しかったか?」
アザゼル様はニヤニヤと悪ノリした表情をして聞いてくる。
「は、はい……」
「そうかそうか! お前たちもすっかり有名人だからな!まあ、さらにその名を轟かせるように頑張ってくれ!」
「はっ。それで総督閣下、今回、僕たちを呼び出されたのはどのようなご用件でしょうか?」
僕が聞くとアザゼル様はそれまでの様子から一変して真顔となる。
「ああ、今から話す事は他言無用だぜ」
「は、はっ!」
「実は今日、鬼崎の奴が一誠と木場に自分の素性を告白した。あいつは【禍の団】の一員で、ヴァーリたちの仲間だったんだ」
「えっ!?」
「総督閣下、それは本当でございますか!?」
「ああ、尊、お前も言っていただろう。あのディオドラの奴がアーシアに求婚した時、あいつの様子がおかしかったと。無理もねえ、あいつは【禍の団】の一員でディオドラと取引してたんだ」
「えっ!?」
驚く僕たちにアザゼル様は説明される。
「つまり、【禍の団】の旧魔王派の連中……旧ベルゼブブと旧アスモデウスの子孫がディオドラに【我々に味方すれば成功の暁にはアーシアと次期魔王の座を進呈する】と持ち掛け、ディオドラはそれに乗ったという事だ。奴の眷属とグレモリー眷属のレーティングゲームの試合には現魔王たちはもとより、各勢力の幹部たちもやって来る。それを【禍の団】のテロリストどもが襲って殲滅し、奴らの望む世界転覆の足掛かりにしようって計画だ」
「そんな大それた計画が進行していたなんて……あっ!」
しばし驚いていたレイナーレは、やがて何かに気付いたという声を上げた。
「ミコト、アスモデウスって……」
そこで僕も思い起こす。
「うん……! あのカテレアさんの恋人が確か……アスモデウス……! クルゼレイ・アスモデウスといったはず!」
「ええ!」
僕とレイナーレはうなずき合う。そんな僕たちをアザゼル様はしばし見つめていたが、その後、さらに話を続けられる。
「鬼崎の奴がここに来たのもお前たちとグレモリー眷属の対立を煽って、それを糸口に俺たち堕天使と悪魔との戦いを再燃させるのが目的だった。だが、奴はグレモリー眷属の連中と共に過ごす内に、次第にあいつらの姿に……仲間を信じて支え合い、困難に立ち向かっていく姿に魅かれるようになったんだそうだ。そこで奴は悩んだ末についに【禍の団】を抜けて真にグレモリー眷属の一員になる事を決意したって事だ」
「総統閣下、その彼の言葉は本当なのでしょうか?」
「ああ、間違いねえだろう。一誠と木場に素性を告白する様子を俺もこっそり窺ってたが、奴のあの時の顔は嘘をついている顔じゃねえ。それに奴から聞いた話は俺の調査ともピッタリ合う」
アザゼル様は断言された。
レイナーレが不安げな表情を浮かべる。彼女としては、以前、鬼崎に浴びせられた、ひどい侮辱の言葉が今だに心に深く残っているのだろう。そこで僕は彼女の肩を抱く。
「あっ……ミコト……」
「大丈夫だよ……今、総督閣下が仰ったように彼はもう改心して、そして彼の仲間のグレモリー眷属と僕たちはもう和解したんだから。それに僕がいつも一緒だから……」
「ありがとう……」
僕に抱き寄せられたレイナーレは一瞬驚くも、すぐに嬉しそうに微笑んで僕に寄り添う。
「そうそう、尊、レイナーレ、お前たちが気にしていた、何故、ディオドラがレイナーレを捕えようとしたかって話だが、鬼崎の奴がディオドラからそれを聞いたという事で話してくれたぜ。レイナーレ、お前にとっちゃ、ショックな話じゃねえかと思うがな……」
「えっ!? 総督閣下、それはどのような話でございますか!?」
アザゼル様の言葉にレイナーレは驚き、尋ねる。そんな彼女をアザゼル様はじっと見つめる。
「どうしても聞きたいか?」
「は、はい!」
レイナーレは強い決意を秘めた目でアザゼル様を見つめる。
「分かった。実はな、そもそもアーシアが元々いた教会を追い出されて、レイナーレ、お前のもとにやって来たのは、最初からディオドラの奴に仕組まれての事だったんだ」
「えっ!!?」
レイナーレは驚きのあまり大声を上げ、僕も大いに驚く。
「総督閣下、それはどういう事なのでしょうか?」
「つまり、教会で【聖女】として崇められていたアーシアのもとへわざと自分で自分の体を傷つけたディオドラが入り込み、襲われて必死で傷つけられて逃げて来たという演技をする。すると優しいアーシアは何の疑いも抱かず、奴を治療した。その結果、奴の目論見通り、アーシアは憎むべき敵である悪魔を癒したとされて教会から追放されて堕天使の庇護下に入り、レイナーレ、お前のもとへとやって来たという訳だ」
「何ですって……!」
アザゼル様の口から衝撃の事実を知ってレイナーレは思わず絶句する。
「そしてお前はアーシアの神器を欲して彼女を殺した。それも奴の計算の内だったのさ。そうすれば奴はそこに乗り込んでお前を殺し、その上でアーシアを蘇らせて自分の眷属にするつもりだった。だが、そこに乗り込んできた一誠が、予想外にもお前に勝ってしまった。それで奴の目論見は崩れたって訳だ」
「……っ!」
あまりの真実にレイナーレの顔は蒼白になり、彼女の体はガタガタとふるえ、その目から涙がぽろぽろと溢れ出す。
「レイナーレ……!」
僕は思わずガバッ! と彼女の体を強く、強く抱きしめる。
「わ、私はあの男に操られていたというのっ!! あの男の掌で踊らされて……そのせいでドーナシークは犠牲にっ……!! 私は……私はっ……!!」
僕の胸で激しく泣きじゃくるレイナーレ。僕はそんな彼女を抱きしめつつ、アザゼル様に聞く。
「総督閣下、では、ディオドラが彼女を狙うのは……?」
「ああ、レイナーレが一誠に負けたせいで自分の計画が狂った。その罰を与えると……そうディオドラが言うのを聞いたと鬼崎が言っていた」
「何だって……!」
僕は全身の血が逆流するのを感じた。自分の欲望の為に僕の愛しいレイナーレを利用して彼女を殺そうとし、さらに理不尽極まる理由でまた彼女に危害を加えようというディオドラ。そんな彼に対して僕は怒りに体がふるえる。
ディオドラ……! 僕はあなたを絶対に許さない!
「本当に……なんて奴だ!」
「ムチャクチャっす! あの細目悪魔!」
「ひどすぎます!」
カラワーナさんもミッテルトちゃんも、流音くんも皆、ディオドラのあまりにも理不尽な悪意に対して怒りを露わにしている。僕は泣いているレイナーレに告げる。
「レイナーレ、大丈夫だよ! 僕が絶対にあんな男に君に手を出させたりしないから!」
そして僕は彼女を抱き締めつつアザゼル様を見つめ、言った。
「ディオドラは……彼は【禍の団】と結んでサーゼクス様たちを裏切ったばかりか、諸勢力のトップの方々も巻き込もうとしている! そんな彼には必ずその報いが下されるはず! そうですよね? 総督閣下!」
「ああ、その通りだ。もう明後日にはグレモリー眷属とディオドラのアスタロト家とのレーティングゲームとの試合だ。奴らは必ずそこで仕掛けてくるはず。既にサーゼクスやミカエル、オーディンのジジイをはじめ諸勢力のトップの連中とは連絡を取って、奴らが仕掛けてきたら逆に一網打尽にする手はずは整っている。そうなりゃ、あのディオドラの小僧はその報いを受ける事になる」
「はっ!」
僕はアザゼル様に一礼して愛しい彼女に伝える。
「レイナーレ、今のアザゼル様のお言葉、聞こえたよね? だから大丈夫だよ」
するとレイナーレは涙に濡れた顔を上げて僕を見つめる。
「ミコト……ええ、そうね……! 今の私には誰よりも私を愛してくれるあなたがいる……そして総督閣下がいてくださる……カラワーナも、ミッテルトも、ルオンくんも私を支えてくれる……だから私はあんな男には負けないわ!」
僕はそんな彼女を愛おしく思う想いがこみ上げて、僕はそっと彼女に口づけをする。
「ミコト……ありがとう!」
そう涙に濡れた顔で微笑むレイナーレ。その彼女の顔からはもう、悲しみの表情は消えている。
「よし、では、ディオドラと【禍の団】の奴らとの決着がつくまで、お前たちはくれぐれも気を付けろ。いつ、ディオドラの一味がお前たちを襲ってくるかわからねえからな。レーティングゲーム当日となりゃ、奴らだってそんな余裕はねえだろうが、とりあえず明日は特に要注意だ。分かったな?」
「はっ! 承知いたしました!」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
僕たちが、あのディオドラがレイナーレ先輩を狙うあまりにも理不尽な理由を知ったその翌日……
僕たちはいつも通り登校している。とはいえ、僕も、カラワーナ先生もミッテルトちゃんも落ち着かない。それはそうだ。何しろ明日はグレモリー先輩や兵藤先輩たちグレモリー眷属とディオドラの眷属とのレーティングゲーム……いや、殺し合いが起こるのだから……
さらにレイナーレ先輩が狙われている。この状況で落ち着けという方が無理だろう。特に当事者であるレイナーレ先輩と國原先輩は気が気でないはずだ。とはいえ、僕たちは出来るだけ普段通りに過ごすよう心掛けている。そして今、僕は……
「ルオン、ありがとう。助かるぞ」
カラワーナ先生が笑顔で僕に語り掛ける。僕は先生が授業で使う資料を運ぶ手伝いをしているのだ。
「いえ、このくらい何でもないです!」
僕は彼女に笑顔で答え、彼女に放課後の事について語り掛けようとする。あのディオドラの事もあるし、物騒だから一緒に帰りましょうと。
ちなみに今日は【ミューステリオン部】の活動はなく、國原先輩とレイナーレ先輩、ミッテルトちゃんは放課後はすぐに帰るという話だが、カラワーナ先生は仕事があるので遅くなるという事なのだ。だから僕が一緒に帰ればという話だ。だが、その時……
「カラワーナ先生、ちょっと」
学年主任の佐藤先生がやって来て、自分の方に来るようにとカラワーナ先生に手招きする。
「は、はい。ルオン、すまない。先に行っていてくれないか」
「は、はい……」
僕は残念に思いつつも先に授業教室へと向かう。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「佐藤先生、話とは?」
流音と語り合いながら歩いている最中に突然呼び止められた私は、その先輩教師に人のいない特別教室まで連れていかれた。そこで私は彼にそう聞く。すると彼は声を潜めつつささやく。
「水神の事だが……実は数人の生徒たちから【最近、カラワーナ先生が水神くんとばかり一緒にいる】という話を聞いてね。それは皆、女生徒なのだが……」
「い、いえ……そんな事は……」
「私もそう聞いて、カラワーナ先生と水神の様子を見ていたが、少し仲が良過ぎるのではと感じてね……水神は真面目で礼儀正しくて良い子で、カラワーナ先生が気に入るのも分かるが……ここは学校で、しかもあなたと彼とは教師と生徒の関係だ。あらぬ噂を立てられたりしないよう、もっと緊張感を持つべきではと思うが」
彼は苦虫を噛み潰したような表情で言った。
「ドイツではどうなのか知らないが、ここは日本だしね。それにカラワーナ先生、あなたは美人で生徒たちからの人気も高くて、常に生徒たちの注目も浴びている。その辺りももっと自覚して欲しい。以上だ。今後は気を付けてくれ」
そう言って彼は教室から出て行った。私は思わず呆然とする。
私とルオンはそんなに周囲からはベタベタしていると思われているのか……?
普段、レイナーレ様とミコト殿のあまりにも濃厚な熱愛ぶりを見せつけられている私としては十分、気を付けているつもりだったのだが、周囲の見方は違うのか?
そう思いつつ、私が本来行く教室へと向かう途中、私は2人の女生徒と会う。
「カラワーナ先生! カッコいい!」
「素敵っ!」
よく私を見て、そんな黄色い声を上げる生徒たちだ。その2人は私を見るやいなや駆け寄って来て口々に叫んだ。
「カラワーナ先生っ! 最近ひどいですっ! いつも水神くんとばっかり一緒にいてっ!」
「そうですよ! 授業の時はいつも水神くんの方ばかり見てるし、彼といるといつも嬉しそうにしてるし、放課後も休み時間もしょっちゅう一緒にいるって、女子たち、皆、文句言ってますよっ!」
二人は怒ったような表情で叫ぶ。
「そ、そうか? そんなつもりは全くないのだが……」
「大ありですよ! 女子たち、もしかしてカラワーナ先生ってショタコンじゃないかって皆、言ってますよっ!」
「カラワーナ先生、凄くカッコ良くてクールな感じなのに、実はああいう女の子みたいな、なよっとした子が好きなのかしら? そんな趣味だとしたらショックっ! て嘆いてますよっ!」
二人は言いたい放題叫ぶ。
…………っ!
さすがに私もカッとなったが、ここで怒鳴る訳にもいかない。
「そんな事があるわけがないだろう。私はもう行くぞ」
と務めて冷静に言い、まだ騒いでいる2人を置いて教室へと向かう。
だが、そこまで噂になってしまっているのか……私とルオンの事が……
私は思い悩む。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
佐藤先生に呼び止められたカラワーナ先生はしばらくして授業の教室へとやって来た。だが、僕はなんとなく彼女の表情が優れないのが気になった。先ほどまではとても明るい表情だったのに……
もしかして、佐藤先生に何か言われて……
そう思った僕はカラワーナ先生に聞いた。
「何かあったんですか?」
「いや、何にもない。気にするな」
彼女はそう言って顔をそむける。やはりおかしい……
そして放課後……
僕は職員室に行き、カラワーナ先生のもとに行く。僕の視界に入った彼女は頬づえをついて何かを考えているようだ。
「カラワーナ先生」
僕が呼びかけると彼女はハッとした様子で僕の方を振り向き、つとめて明るい表情を作る。
「あっ……ああ、ルオン」
「あの、先生、今日はいっ……」
そこまで僕が言いかけたところでカラワーナ先生はそれを遮るように言った。
「ちょっと待ってくれ。お前に話したい事がある。ここじゃなんだから一緒に来てくれないか」
「は、はい……」
僕は彼女について教師と生徒が内密の話をするために設けられた相談室へと向かう。決して良くない内容の話である事は彼女の様子からも明らかで、僕は不安にかられる。
「座ってくれ」
相談室に入った僕はカラワーナ先生に言われたように生徒用の椅子に座り、教員用の椅子に座った先生と向かい合う。
「実はな……今日、私がお前と親しくし過ぎていると注意を受けてな……」
「あっ……あの佐藤先生の……」
「ああ……最近、私がお前とばかり一緒にいる……そう女生徒たちから不満があがっているとな……実際、その後、2人の女生徒からそう抗議を受けた」
僕は唖然とした。僕としては注意は十分払っているつもりだったが、カラワーナ先生に憧れている女生徒たちから見ればそんなに気に障るものだったのか……
「それでな……当面は学校ではあまり親しくしているように見えないように、気を付けなくてはと思うんだ。私も気を付ける。そしてお前も……頼む……私も辛いんだ……」
「はい……」
僕は納得できない思いは抱えつつも、同意せざるを得ない。決して生徒と教師の関係を逸脱したような行為を学校でした覚えはないのだが、カラワーナ先生は女生徒に大人気であり、その女生徒たちの嫉妬を僕は浴びてしまったのだ。そして生徒からそういう声が上がって、それが耳に入れば佐藤先生をはじめ他の先生たちも捨て置く訳にはいかない、そういう事なのだろう。
「済まない。少なくとも【ミューステリオン部】の活動の時間だけはこれまで通りに振舞えるから。あそこなら身内ばかりだし、何の気兼ねもなく振舞えるからな……」
カラワーナ先生は努めて笑顔を作って言った。
「はい……」
僕は苦しい思いを抱えつつうなずく。カラワーナ先生だって彼女が言っている通り辛いのだと自分に言い聞かせつつ。
「本当に済まない。これもお前がこの学校を卒業するまでの辛抱だ。卒業してしまえば、もう何の気兼ねもなく付き合えるのだからな。これで話は終わりだ。じゃあ、私はこれで職員室に戻るぞ」
カラワーナ先生は立ち上がった。その彼女を僕は引き止める。
「待ってください。それはそうと、今日は一緒に帰りましょう。あのディオドラという人の件がありますし、ここは警戒しないと……」
だが、カラワーナ先生は首を振る。
「ダメだ。そんな所を生徒たちや他の教員に見られたらどうなる? それこそ大騒ぎになるぞ」
「で、でも……もしディオドラの一味の人たちに襲われたら……」
食い下がる僕にカラワーナ先生は笑う。
「大丈夫だ。私とて堕天使の戦士の端くれでレイナーレ様の部下。それに先日の合宿で訓練もして以前より強くなっている。それに、奴らが狙っているのはレイナーレ様。私などははなから気にも留めてないだろう。そしてレイナーレ様には常にミコト殿がついておいでだ。だから大丈夫だ。心配するな」
本当に大丈夫だろうか……?
僕は不安を感じるが、確かに現在の状況で僕とカラワーナ先生が一緒に帰っているところを誰かに見られれば大騒ぎになるのは間違いない。それが僕にこれ以上話をするのをためらわせた。
「分かりました……でも、何かあったらすぐに連絡をください」
「ああ、分かった」
そして僕は相談室を後にした。
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流音と別れて職員室に戻った私。話をした時の流音の辛そうな表情と、一緒に帰ろうという提案を断った時の彼の不安そうな顔に私の胸は痛んだが、やむを得ない事と自分に言い聞かせて仕事に励む。
その後、生徒の最終下校時間が過ぎてかなり経った後、私は家へ帰る事にして学校を後にする。その途中、夜の人気のない通りに差し掛かった時……
「…………!?」
私は不穏な気配を感じて周囲を見回す。すると私の前、さらに後ろからフードを被った連中がぞろぞろと出て来た。
しまった……! つけられていたのか!
私は思わず夜空を見上げる。こうなったら空中に活路を求めようと。だが、その空にも何人もの敵が浮かんでいる。その背にはあの悪魔の象徴であるコウモリの翼が……!
「貴様ら!! ディオドラの手の者か!!?」
私は叫ぶ。だが奴らはそれに答えず、ジリジリと間合いを詰めてくる。
「くっ!!」
私は光槍を作り出そうとするも、その瞬間、私に向かって四方から何かが投げつけられる。それは漁に使う網のようなもので、不意を突かれた私はかわす事も出来ず、それはもがけばもがくほど体に絡みついてくる……!
くっ……! ここでルオンがいれば……!
そう、流音がいれば、彼の神器【聖光の障壁(セイント・ライト・オブ・バリア)】で相手の攻撃を防ぎつつ攻撃出来るし、その間にミコト殿やレイナーレ様に連絡を取る事も可能だ。だが、それを言ってももはや後の祭り……
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僕はカラワーナ先生の説得に応じていったん家に帰ったものの、僕の胸には不安がどんどんこみ上げてくる。
カラワーナ先生は【奴らが狙っているのはレイナーレ様。私などははなから気にも留めてないだろう】と言っていた。だが、相手はレイナーレ先輩に対するあの理不尽きわまる悪意から見ても、常識は全く通じない相手だ。
それに彼らはこの前、レイナーレ先輩と國原先輩を襲って大失敗に終わった。その経験をふまえて二人に対して【侮り難し】という思いを少なくともある程度は抱いたはず。そうなると標的を変えるという事も考えられるのでは……すなわち、カラワーナ先生か、ミッテルトちゃん、そして僕、そのいずれかを襲って人質にしてレイナーレ先輩たちをおびき出す。そういう手段を取ってくる可能性もあるのでは……と僕の中で不安はどんどん広がってくる……
カラワーナ先生は【私とて堕天使の戦士の端くれでレイナーレ様の部下。それに先日の合宿で訓練もして以前より強くなっている】と言っていた。でも、彼女は國原先輩やレイナーレ先輩と比べれば、その実力で大きく劣る事は否めない。少人数ならともかく、大勢の悪魔たちに襲撃されたら……!
そう思った僕はいても立ってもいられなくなる。
「僕、ちょっと用事があるから出かけてくるね!」
僕は両親に伝えると、急いで家を飛び出していつも通っている駒王学園への通学路を走る。すると人通りのない寂しい通りで……
「カラワーナ先生っ!!」
僕は目の前でカラワーナ先生が大勢のフードを被った人たちに拘束されて、今にも連れ去られようとしている様子を見た。その人たちの背中にはコウモリのような翼が生えていて、それが悪魔たちである事が分かる。そしてカラワーナ先生の体には網のようなものが絡みついているのが見える!
「ル、ルオンっ!!」
カラワーナ先生が叫ぶ。僕は気が動転してしまい、無我夢中で彼女の方に向かって駆け寄る。
「カラワーナ先生―――――っ!!」
「ル、ルオンっ!! 危ないっ!! 来るなーーーーっ!!」
カラワーナ先生が絶叫する。その瞬間、悪魔たちの一人が僕に向けて衝撃波を放った。
「ぐわっ!!」
僕は全く無防備でその衝撃波の一撃を受けて倒れこむ。凄まじい衝撃と激痛……! 必死で立ち上がろうとするも体が全く言う事をきかない……!
「ル、ルオーーーーーンっ!!」
カラワーナ先生の悲痛な声が響き、彼女を捕えた悪魔たちは飛び去っていく。
「カ、カラワーナ先生っ……」
僕は薄れゆく意識の中で連れ去られていく彼女の姿を見つつ、意識を失った……
(次回へ続く)
今回の第39話は前半が鬼崎をメインとしたお話に、そして後半がカラワーナと流音がメインのお話となりました。珍しくレイナーレと尊、主役2人の挿絵が登場せず、前回に引き続いて二人のエッチシーンもないお話となりましたね……
鬼崎は、レイナーレについては、彼女と彼が好きな一誠や木場たちグレモリー眷属たちとの過去の事もあって今だに嫌悪感を持っていますが、一誠たちに対する思いは本物という訳で、今回、自らの素性を打ち明けた彼を一誠も木場も快く受け入れました。次回はいよいよ対ディオドラ戦が始まりますが、そこで鬼崎はどんな行動を見せるのか?
鬼崎の「オ―フィスと愛し合っている」という告白に驚くアザゼル。果たして今後、オーフィスの事をめぐって、どんなやり取りが行われ、どんな形になっていくのか……?
ディオドラが自分を狙う理由を知りショックを受けるレイナーレ。しかし今の彼女には尊がいて、彼の愛に満ちた言葉に落ち着きを取り戻す彼女。この【最強バカップル】の前ではどんな精神的揺さぶりも通用しない! 二人が一緒にいる限り!(笑)
そしてカラワーナ誘拐事件! この展開を予想できた方はいらっしゃるでしょうか?
ディオドラ側としては前回の失敗で、少なくともディオドラの部下たちの力で尊とレイナーレに勝つのは不可能であると知った。それに自他共に認める【最強バカップル】のレイナーレと尊はいつも一緒にいてまず離れる事がないので隙がない!(笑)
それゆえに標的をより実力で劣るカラワーナたちに切り替え、彼女たちの内、誰かを人質にしてレイナーレたちをおびき出すという計画を立てた訳です。
しかも彼らにとって都合が良い事にカラワーナが単独行動をしていた。まだ、神器を持っておらず、一度に多くの相手を相手に出来る能力のないカラワーナだと、一人で大勢の、ある程度の力のある悪魔たちを相手にするのは困難な訳です。作品中にもあった通り、もし、彼女が流音と一緒であれば、流音が神器の力で敵の攻撃をしのいでいる間に、尊たちに連絡を取って状況を打開する事も可能だったのですが。
カラワーナと流音にとっては運の悪い事に、こんな時に学校でニ人の事が教師や一部の生徒に槍玉に上げられてしまった訳で……別に二人としては特に生徒と教師の関係から逸脱した行為を学校でした訳ではないのですが、カラワーナがなまじ女生徒に人気があるせいで流音が彼女たちから嫉妬の対象にされてしまったという事で。生徒たちからそうした声が上がれば学校としても立場上、それを放っておく訳にはいかないという訳です。
いよいよ次回は対ディオドラ戦の開始! 一誠たちグレモリー眷属とディオドラの一味、さらに旧魔王派のメンバーも絡んでくる戦いに尊たちがどう絡んでくるのか? 尊たちはカラワーナを無事救えるのか? そして鬼崎はこの戦いにどう絡む事になるのか?
色々と盛りだくさんですがお楽しみに!^^