※この作品はR-18です。

ハイスクールD×D~情念の炎~(完全版)   作:ドミトリ

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 レイナーレの【計画】の内容を知り、その無謀な計画を思いとどまるよう彼女に願う尊。それに従ったかに見えたレイナーレだが……



第4話・対決

 数日後、地下牢に入れられていたフリードが釈放された。レイナーレが言うのには性格に大いに難はあるが、戦力としては優秀であり、また様々な事情によって、出さざるを得ないとの事だ。

 

 もちろん、この教会の長はレイナーレであり、彼女が決めるここの人事に僕が口を出せるものではない。とはいえ、彼は部下としてはあまりに毒があり過ぎて、何かまたしでかさないか正直気がかりであるし、それに……

 

 フリードを出すというのは……レイナーレは内心、やはり悪魔たちと争おうと考えているのでは……

 僕の心に不安が宿る。

 

 釈放されて僕に改めて引き合わされたフリードは一応、謝りはしたものの、その表情といい、態度といい、到底反省しているようには見えず、むしろ僕に対する敵意を露骨に感じさせるようなふてくされた様子を見せ、レイナーレもムッとしたような表情だった。

 

「大丈夫よ。私もドーナシークたちも、あの男があなたに危害を加えたりしないようにしっかり見張っているから」

 

 僕は彼女の言葉を信じて、うなずくしかなかった。

 「うん、ありがとう」

 

 そしてもう一つ、気がかりなのがアーシアさんの様子だ。僕と廊下で会うとペコリと礼儀正しく頭を下げて挨拶はしてくれるものの、僕が話しかけようとすると早々に立ち去ってしまう。

 

 一体、どうしたのかな? やっぱり理由は僕が【レイナーレの恋人】だから……?

 

 僕はアーシアさんと初めて話した時、最初は明るい表情であった彼女が、【レイナーレの恋人】だと僕が名乗った途端、様子が一変したのを思い起こす。

 

 アーシアさん、兵藤と仲が良いみたいだから、兵藤から彼がレイナーレに殺された事を聞いたんだろうか? それとも他にレイナーレとの間に何かあったのか?

 

 そんな事を考えていた僕はつい注意がおろそかになって廊下に置かれていた家具に思い切り足をぶつけてしまった。

 「うわっ!! い、痛っ……!」

 

 僕がズボンをまくり上げると、膝の下から血が流れている。

 

 「あっ! 大丈夫ですか?」

 アーシアさんの声が聞こえて、彼女がパタパタと駆け寄って来る。彼女は僕の足の傷口にそっと手を当てた。

 

 「えっ?」

 アーシアさんの手から淡い光が発せられる。足を覆う心地よい温かな感触。見る見るうちに僕の足の傷口はふさがり、元通りになった。

 

 「アーシアさん。これは?」

 「これは治癒の力、私が神様からいただいた素敵なものなのですよ」

 

 僕の問いにアーシアさんは微笑んだ。しかし僕はその彼女の笑顔にどことなく寂しそうな影があるのを感じ取った。

 

 これはおそらく神器の力。アーシアさんも僕と同じ神器の所有者。レイナーレはこの事を知っているのかな?

 

 そう思いつつも、僕はあえてレイナーレの名前は出さずに彼女に問う。

 「アーシアさん、ありがとう! それでちょっと聞きたい事があるんだけれど」

 「は、はい、何でしょう?」

 

「アーシアさんは、兵藤一誠くんと知り合いなんだよね?」

「えっ? ミコトさん、イッセーさんと知り合いなのですか?」

 

 僕の問いにアーシアさんは驚いた表情を見せる。

 「うん、僕と彼は同じ学校の生徒なんだ。実は僕がここに来た時に、アーシアさんと兵藤くんが一緒にいるのをたまたま見かけて」

 

 「そうだったのですね……イッセーさん、とても良い方ですよね!親切で優しくて」

 顔を赤らめるアーシアさん。

 

 「うん、そ、そうだね……」

 まさか彼とあまり良くない関係にあるとは言えず、僕はそう相槌を打つ。

 

 それにしても、アーシアさんって本当に兵藤の事が好きみたい。

 

「そ、それでアーシアさんはその、兵藤くんから彼の事をいっぱい聞かされたのかな? た、例えば最近、彼に起こった事とか……」

 

 僕の問いにアーシアさんは目を丸くする。

 「いえ、私はまだイッセーさんとは出会ったばかりで、まだ詳しい事は何も……これからいっぱいお話ししてもっとあの方の事を知る事が出来れば良いと思ってます。あ、あの、イッセーさんに何かあったのですか?」

 

「い、いや、別に何もないよ。ごめんね、変な事を聞いて」

「?」

 

 首をかしげるアーシアさんに僕は愛想笑いを浮かべつつ、改めて礼を言う。

 「治療してくれてありがとう」

 

 僕はその場を後にしつつ思う。

 どうやら、アーシアさんはレイナーレと兵藤の間に起こった事については何も知らないみたいだ。じゃあ、なぜ彼女は……?

 

 僕の胸にまた疑問が広がる。

 

 僕はその夜、いつものようにレイナーレと激しく求め合った後、ベッドで共に全裸で彼女と抱き合いながら、彼女に聞く。

 

「ねえ、レイナーレ」

「何?」

 

「実は僕、今日、うっかり足をぶつけて、全然大した事ないんだけれどちょっと怪我しちゃったの。でも、アーシアさんが神器の力で治してくれたの」

「そう……」

 

「レイナーレ、君はあのアーシアさんの神器の事を知っているの?」

「ええ、あれは【聖母の微笑(トライワイト・ヒーリング)】といって、どんな傷もたちどころに治してしまう、私たち堕天使や天使はもちろん、悪魔の怪我すら治してしまう素晴らしい神器なのよ。神の加護を失った私たち堕天使にとってあの力はまさに羨望の力なの」

 

 レイナーレはうっとりとした表情で言った。その彼女の夢見るような表情の美貌ははとても美しく、僕は思わず彼女に見惚れる。しかし僕は同時にその彼女の姿にどことなく危うさも覚える。

 

「そうなんだ。それで君はアーシアさんのあの神器の力を見て、彼女をここに呼んだんだね?」

「ええ、そうよ」

 

「それで、君はアーシアさんに傷ついた堕天使の人たちを治療して欲しいと思っているのかな? そうする事で同族の人たちの役に立って欲しいと」

「えっ、そ、そうね……ま、まあ、そんなところよ……」

 

 僕の問いにレイナーレは明らかに動揺したような、そわそわとした様子を見せた。

 レイナーレ……

 

 僕は明らかに何かを隠しているようなレイナーレの様子と、アーシアさんがレイナーレの名を聞いた時の明らかに動揺した様子を思い浮かべて不安に思う。そこで僕は思い切って彼女に伝える。

 

「レイナーレ、実はね。僕はここに来る時に、やはりここに向かっているアーシアさんの姿を見かけたの。その時、アーシアさんは兵藤と一緒にいたんだ。そして兵藤はアーシアさんをこの教会が見える所まで見送っていた」

「何ですって!? 一誠と!?」

 

 レイナーレは明らかに驚いた様子を見せる。その彼女に僕は話を続ける。

 「そう。この前話したように、僕は彼とは良くない関係だから気付かれないようにしていたけれど……アーシアさんと兵藤、とても仲が良くて、さっき話を聞いても、アーシアさん、兵藤の事がとても好きなようだった。その一方でアーシアさんは僕がレイナーレ、君の恋人だって言ったらひどく動揺していた」

 

 「…………………」

 僕の話を聞いているレイナーレの表情が曇る。

 

「それでレイナーレ、兵藤がアーシアさんとここまで来たという事は、もうこの場所はグレモリー先輩たちに知られていると考えた方がいいと思う。その上、アーシアさんは兵藤と仲が良い。もし、アーシアさんに何かあったら、兵藤やグレモリー先輩はきっと君を……あっ! あむっ!」

 

 そこまで言いかけた僕をレイナーレがぎゅっ! と抱き締め、僕の顔が彼女の張り詰めた大きな乳房にむにゅっ! と押しつけられ、彼女の硬くコリコリとした大きく卑猥な乳首が僕の頰をすりすりとくすぐる。

 

 「もうっ! ミコトったら何を心配性になってるのよ! 大丈夫よ! 私は悪魔どもと事を構えようなんて気はないし、アーシアの事は大切にするつもりだから。だからミコト、あなたが心配する必要なんて全くないのよ」

 僕を抱き締めつつ、潤んだ目で見つめて言うレイナーレ。

 

「レイナーレ、本当だよね? 大丈夫だよね?」

「もう、大丈夫だって言ってるでしょ。だからこれ以上、あの汚らわしい悪魔たちの話なんてしないで」

 

 レイナーレが自分の唇で僕の口をふさぐ。僕はひたすらレイナーレの魅惑の体に、彼女との愛欲に溺れた。

 

 

****************************************************************

 

 

 僕がアーシアさんの件でレイナーレに尋ねた翌日の夜、事件は起こった。僕がちょっと用を足しに僕たちの、つまりレイナーレの部屋から出て廊下を歩いていると……

 

「うっ……うううっ……」

「えっ!?」

 

 すすり泣くような声を聞いて僕はハッ! とする。

 これは、アーシアさんの声……

 

 僕がその方向を見ると、アーシアさんが座り込んですすり泣いていた。彼女の服はあちこち破れている。

 

「アーシアさん! どうしたのっ!?」

「あっ……ミコトさん……」

 

 僕が呼びかけるとアーシアさんは涙に濡れた顔を上げて僕を見つめた。彼女の頰は殴られたらしく赤く腫れている。間違いなく彼女は何者かに暴行を受けたのだ。

 こんな事をするのは、おそらく……!

 

「一体、何があったの?」

「…………」

 

 取りあえずは事実を確認しようと僕はアーシアさんに尋ねた。彼女はしばらく黙っていたが、やがて意を決したように話し出す。

 

「実は今日、フリード神父から『仕事のサポートをして欲しいから一緒に来てくれ』と言われたのです。そう大した仕事ではないから』と……私はあの方が正直苦手で、お断りしようとしたのですが、とても強引で断れなくて……」

 

 やっぱりフリードか。でもそれは……

 「フリード神父から? それはレイナーレの許可を受けてのものなのかな?」

 

 僕の問いにアーシアさんは首を振る。

 「分かりません……」

 

 おとなしくておっとりしていて優しいアーシアさんと、あの粗暴で嗜虐的なフリード。誰が見ても最悪の組み合わせだ。そんな二人にレイナーレがあえて一緒に行くようにと命令を? いや、あのフリードの事だ。許可を得ていない勝手な行動の可能性は十分ある!

 

 アーシアさんの話は続く。

 「そしてある家に行って、そこで私はフリード神父がその家の人を……ああっ! とてもむごたらしいやり方で殺したのを目にしたのです! その人は普通の人間だったのですが、悪魔と契約を結んだからと……! うっ! ううっ……」

 

 話している内にアーシアさんの華奢な体がガタガタとふるえ、彼女の目から涙があふれる。その惨たらしい光景が思い起こされたのだろう。僕は彼女に同情しつつも、彼女の言葉の一節が気になる。

 

「悪魔と契約を結んだから?」

「はい、そうです。そしてその殺された方と契約されていた悪魔の方がちょうどそこにやって来られて……その方が……ミコトさんもご存じのイッセーさんだったのです」

 

 「兵藤が!!?」

 僕は思わず大声を上げた。

 

 アーシアさんは驚いた顔で僕を見つめる。

 「ミ、ミコトさん、どうしたのですか?お顔が真っ青ですよ?」

 

 僕は内心激しく動揺しつつも彼女に促す。

 「あっ……ご、ごめんね。話を続けて」

 

「は、はい、フリード神父とイッセーさんが戦いになりそうなのを見て、私は争いを止めようとしました。たとえ悪魔でも、イッセーさんは私の恩人でとても良い方ですから……そうしたらフリード神父が怒って……」

 

 そうか、それでアーシアさんはフリードから暴行を受けたと……

 

「そこにイッセーさんのお仲間の悪魔の方たちがいらっしゃって、イッセーさんは私に一緒に来るようにと仰ってくださったのですが……それは無理だという事で、それで結局、私はこちらに戻ってくる事になったのです」

「そう……だったんだね」

 

 僕はいてもたってもいられない気持ちだった。グレモリー眷属の側からすれば、レイナーレの配下の一人であるフリードが、彼らが契約を交わした人間を惨殺した。これはもう、これまでの度重なる兵藤襲撃の事実と合わせて、宣戦布告と受け取っても当然の事だ。たとえそれがレイナーレに無断でフリードが勝手にやった事だとしても、グレモリー眷属側はそうは考えないだろう。

 

 それに、そのような状況だったのなら、当然、兵藤はアーシアさんの事をとても心配して、彼女をここから救い出そうと思い、その許可を主たるグレモリー先輩に頼んだ事だろう。これはもう一刻の猶予もない!! 早くレイナーレと話さないと!!

 

 僕はそう思い、アーシアさんに告げる。

 「事情は分かったよ。もう二度とこんな事がないように、僕からレイナーレに話をしておくよ」

 

「レイナーレ様に……ですか……は、はい……」

 

 レイナーレの名を聞いて、またアーシアさんの表情に動揺が見える。そこで僕は思いきって彼女に聞く。

 「アーシアさん、君はレイナーレの事を信用していないの?」

 

 するとアーシアさんはしばらくうつむいていたが、やがて顔を上げると言った。

 「レイナーレ様の恋人のミコトさんにこんな事を言うのは申し訳ありませんが……正直、私……あの方が怖いです。レイナーレ様たちがその……神器を持っている方々を殺しているという話を聞いておりますし……ここに来てからレイナーレ様自身に何かされたりとかいう事はありませんけど……あの……私を単なる道具としてしか見ていないという感じがして……」

 

 やっぱりそうか。アーシアさんはレイナーレに不信感を持っている。今回の事でその不信感は倍増されたに違いない!

 

「あ、あの! 気を悪くされましたよね……? ご、ごめんなさい!」

 

 アーシアさんは僕に謝った。僕はその彼女を安心させようとニッコリと微笑みつつ言う。

 「ううん……気にしないで。でも、恋人の僕から言わせてもらうと、レイナーレ、傍から見れば冷たそうに見えるのかもしれないけれど、実は結構優しいし、情が深いんだよ。僕からまた変な誤解を与えないように彼女に話しておくから」

 

 「は、はい……ありがとうございます……」

 アーシアさんは頭を下げ、僕たちはそこで別れた。アーシアさんの表情や声から見て、彼女の不安を取り除けたとは到底思えなかったが、僕としては今はとにかくレイナーレと話さねばならない!その思いで一杯だった。

 

 

****************************************************************

 

 

 「何ですって!! フリードが!!?」

 僕の話を聞いたレイナーレは驚愕した様子で叫んだ。

 

 「うん……レイナーレ、君はその事を知らなかったの?」

 「知らないわよ!! あ、あの男、勝手に!!」

 レイナーレは部屋を飛び出す。その彼女の後を僕も追いかける。

 

 そして……

 

 「ふわぁ~~なんすか姉さん? こんな夜中にお呼びたぁ~~」

 フリードがあくびをしつつ、横柄な態度で客間に入ってきた。

 

 その彼をレイナーレが問い詰める。

 「フリード、あなた、私に無断でアーシアを連れ出したみたいじゃないの!! その上、勝手に悪魔と契約した者を殺してそれをあの娘に見せ、その上、あの娘に暴力を振るった。そうでしょう!?」

 

 するとフリードはニタニタと笑いながら、例の小馬鹿にした口調で話し出す。

 「へえへえ、そうでござんすよぉ~~あのアマ、見習いだし、先輩の俺様の仕事手伝わせてもいいかな~~って思って。それに姉さん、いつも言ってるじゃないすかぁ~~悪魔どもなんて汚らわしい、悪魔と契約する人間も同じく汚らわしいってぇ~~そんなクソ悪魔と契約したクソ野郎を殺してやったまででーーす」

 

「そしてあのアマ、クソ悪魔を庇うばかりか、『悪魔や悪魔と契約した人だからって殺すなんて間違ってます! 悪魔にだっていい人はいます!』なんて寝言ほざくもんだからついカーーッとなっちまいましてねぇ~~」

 

 そうベラベラと薄笑いを浮かべながら話すフリード。その態度からは上司であるレイナーレへの敬意など微塵も感じられない。そんな態度のフリードにレイナーレは苛立ちを隠せない。

 

「あの娘は私たちにとって大切な存在なのよ!! 私たちの計画になくてはならない存在なの!! だから儀式まで大事にしろと、あの娘に余計な不安や疑念を感じさせないようにしろと、そう言ったでしょう!!」

 

 彼女の叫びに僕は驚く。

 「レイナーレ、【私たちの計画】って、それと【儀式まで】って一体何!?」

 

 「あっ……!」

 レイナーレはしまったという表情で口を押さえる。

 

 するとそれを見ていたフリードがニタニタと笑いながら、その【計画】の内容を平然と暴露する。

 「確かミコトくんとかいいやしたかぁ~~? 姉さんの彼氏だってのにそんな事も知らされてねえんでやんすかぁ~~? 実はこの姉さん、キレイだけど中々腹黒なお方でやんしてねぇ~~あのアマ……アーシアちゃんの神器を奪って自分のモノにしてぇ~~そいで堕天使総督のアザゼルのおっさんに取り入ろうって計画を立ててるんでやんすよぉ~~」

 

「レイナーレ、本当なの!!?」

「………………」

 

 僕は驚いて彼女に尋ねる。すると彼女はうつむいて黙っている。それはフリードの言葉が事実だと認めたという事。

 

「そうそう、神器を抜き取られた人間は死んじゃうってぇ事を知っていながらねぇ~~」

「何だって!!?」

「………………」

 

 フリードの言葉に僕はまた驚愕する。そしてレイナーレはまた沈黙を守っている。

 レイナーレ……君は……

 

「そうなんすよぉ~~この姉さん、この俺様を非難できるような立場じゃ全然ねえんですがねぇ~~その上、この姉さんはその計画を堕天使のお偉いさんたちに無断で進めてるんすよぉ~~停戦中の悪魔どもと勝手に争い事を起こすようなマネすんなという命令を破ってねぇ~~」

 

 フリードは調子に乗ってレイナーレを嘲笑する。レイナーレは怒りに体をふるわせつつ耐えている。

 

「姉さん~~俺、ムチャクチャ頭にきちゃってるんすよぉ~~このナヨナヨ野郎との喧嘩で恋人だからってえこひいきしてぇ~~俺様を檻にぶち込んで自分はこいつとイチャイチャやってぇ~~やっと出したと思ったらぁ~~こいつに謝れなんて言うわぁ~~俺がもし、堕天使のお偉いさんにあんたの【計画】をチクったらぁ~~あんた、どうなりやすかねぇ~~?」

 

 「!!!」

 レイナーレが激怒して手をかざして光槍を出現させる。

 

「おお怖っ~~!! まあ、その辺の事を頭に置いておいてくださいな~~取りあえずは黙っておくでございますからぁ~~さーーて、これからそのナヨナヨ坊ちゃんとどうなりやすかねぇ~~? それじゃ、姉さん、おやすみなさいでございますぅ~~」

 

 フリードはどこまでも人を愚弄する、不快な態度を見せつつ出て行った。レイナーレは今にも彼に光槍を投げつけそうであったが、なんとか自制したらしい。

 

「レイナーレ……」

「そうよ……あいつが言った通りよ! ミコト、私の事を軽蔑した? 嫌いになった?」

 

 レイナーレはふるえる声で言った。彼女の目には涙がにじんでいる。

 「そんな事ないよ! そんな事ぐらいで嫌いになるくらいなら、あの時、君に命を差し出したりなんかしなかったよ」

 「ミコト……!」

 

 僕の言葉にレイナーレの目が潤む。その彼女に僕は叫ぶ。

 「でも、君のその計画はすぐにやめて! アーシアさんを解放するんだ! そして今回の契約者殺しの件について、すぐにグレモリー先輩たちに謝って! 部下が勝手に暴走してしまい、申し訳なかったって!」

 

 「い、嫌よっ!! この計画のために、私が何年、懸命に努力してきたかあなたにわかるのっ!!? それにあの悪魔どもに頭を下げるなんてまっぴらよっ!!」

 レイナーレは怒鳴った。その彼女の目に涙があふれ、こぼれ落ちる。

 

 彼女は言葉を続ける。

 「ミコト、大丈夫よ。もう少しで私があの娘の神器をこの体に取り込む儀式を執り行えるの……そうすれば私は【至高の堕天使】になって、あの悪魔どもなんか簡単に倒す事ができるわ。それにこの神器を手に入れた事を知れば、きっとアザゼル様もお喜びくださって、私は最高の栄誉を受ける事ができるの。そうすれば、ミコト、あなたも幸せに……」

 

 理想の未来を思い浮かべて美貌を輝かせるレイナーレ。その彼女の恍惚とした表情はとても美しい。でも、それは滅びの道でしかない!

 「レイナーレ、お願い、考え直して」

 

 重ねて願う僕をレイナーレはキッ! と睨んで叫ぶ。

 「ミコト、あなた、アーシアが、あの娘が可哀想だと思ってそう言っているの!!?」

 

 その彼女に僕は答える。彼女への強い想い、僕の情念を込めて。

 「それもあるよ。でも、僕はそれ以上にレイナーレ、君の事が心配だから言っているの。君を絶対に失いたくない! 君に何かあったら僕も終わりだから」

 「ミコト……」

 

 レイナーレの表情が揺らぐ。その彼女に僕は問う。

 「レイナーレ、冷静になって考えてみて。アーシアさんの神器を手に入れたからといって、それで本当にグレモリー先輩たちに勝てるの? 彼女たちの実力を君は本当に知っているの? それに仮にグレモリー先輩たちに勝ったところで、その後には激怒した魔王たちとの戦いが待っているんだよ。それらにも全て勝てるという確かな確証が君にあるの?」

 

 「そ、それは……」

 レイナーレは動揺した様子を見せる。やはり彼女の計画は自身の希望的観測に基づくものでしかないようだ。僕はさらに彼女に問う。

 

「後、君は【アザゼル様もお喜びくださる】と言っていた。それは確かなの? 君は今回の計画を堕天使上層部に極秘で進めている。それは【停戦中の悪魔たちと勝手に争いを起こすようなマネをしてはいけない】という命令があるからでしょう? だったら、むしろ命令違反を咎められて罰せられる可能性が高いとは思わないの?」

 

「し、神器を……あの【聖母の微笑】を手に入れればきっとアザゼル様も……」

「ダメだよ!! そんな希望的観測で事を起こしては! レイナーレ、僕にとっては君は今でも【至高の堕天使】だよ! 僕は君が一緒にいてくれさえすればそれでいい。君がいて、ドーナシークさんやカラワーナさん、ミッテルトちゃんたちと楽しく平穏に過ごせれば十分に幸せ。だから君もそう考えて! あえて身を滅ぼしかねないような危険を犯して栄光を得ようなんて考えないで!」

 

 「ミ、ミコト……!」

 レイナーレは激しく動揺している。

 

 「お願い……考えさせて……」

 彼女はそう言って、先に部屋へと戻った。

 

 僕は客間に残ってディヴェリクスに問う。

 「実際のところ、どうなの? その【聖母の微笑】を手に入れたら、グレモリー眷属に対抗できるの?」

 

「まず無理だな。あの神器は傷は癒せるが、失った体の一部を再生したりする事はできねえ。それに疲労や打撃で受けたダメージを回復する事もできねえ。つまり、圧倒的な力の差のある相手に力で圧倒されりゃ、どうにもならねえって事だ」

「なるほど」

 

「あの神器を頼りにグレモリー眷属と戦おうなんざ、まさに自殺行為以外の何者でもねえ。だが、あの女が現実を直視できねえのが一番の問題だな。プライドから自分の実力を過大評価して、何の根拠もなく相手を見下して【勝てる】と思っちまってる」

「うん……でも、さっきの僕の言葉で彼女の【自信】も揺らいだようだし、また説得してみるよ」

 

 そんな会話をディヴェリクスと交わした後、僕はレイナーレがいる部屋へと戻る。

 

 「あっ、お帰りなさい」

 僕が部屋に入ると、レイナーレが出迎えてくれた。彼女は微笑みを浮かべているが、かなり悩みぬいたのだろう。目には泣きはらした後が見える。

 

 「レイナーレ、さっきの件だけれど……」

 僕は彼女に話しかける。

 

「ええ、あれからずいぶん考えたけれど。確かにあなたの言う通りね。あの計画はやめるわ」

「ほ、本当!!?」

 

「ええ、私も長年、準備してきた計画を断念するのは正直、ずいぶんと抵抗があったし、悩んだわ。でも、ミコト、愛しいあなたがそこまで私の事を心配して止めるのなら、私、あなたに従うわ」

「レイナーレ……!」

 

 僕の心が歓喜に満ちあふれる。

 「レイナーレ、ありがとう! 僕の話を受け入れてくれて。じゃあ、早速、明日にでもアーシアさんを解放して、グレモリー先輩に謝罪して……君が直接、グレモリー先輩に会うのが嫌なら、僕が代わりを務めても良いよ!」

 

「ミコト、ありがとう。ええ、そうお願いできるかしら? でも、今は私をいっぱい愛して! 私、今、あなたに思い切り愛されたい気分なの!」

「うん! レイナーレ! 君をいっぱい愛してあげる!」

 

 「嬉しいわ、ミコト、じゃあ……」

 そう言うとレイナーレは自ら身につけている黒のボンデージを散らして全裸となる。

 

 僕を常に魅了して虜にする、彼女の張り詰めた見事な球形の大きく美しい乳房が……その頂の、カチカチに硬く勃起してビン! と突き出している、僕が見ただけで射精しそうになる、卑猥すぎる彼女の大きな乳首が……引き締まったへそが……くびれた腰が……引き締まった丸く美しい尻が……髪と同じ黒い陰毛で覆われた秘部が……彼女の美しくいやらしい魅惑の裸体が僕の目にさらされる。

 

【挿絵表示】

 

 レイナーレはその魔性の裸体を僕に見せつけ、美貌に妖艶な笑みを浮かべて僕を誘う。

 「さあ、私の可愛いミコト、いらっしゃい」

 

 その彼女の表情に、その美しくいやらしい裸体に、さらに僕の説得を受け入れてくれた彼女を愛おしく思う気持ちで僕の胸は激しく高鳴り、僕の股間は激しくうずく!

 

「ああっ!! レイナーレっ!! 好きっ!! 大好きっ!!」

「ああっ!! ミコトっ!! 私も!! 私もあなたが大好きっ!!」

 

「レイナーレっ!!」

「ミコトっ!!」

 

 僕は愛しいレイナーレの名を叫びつつ、彼女の裸体にむしゃぶりつき、レイナーレはその僕を優しく抱き締めてくれる。僕の顔がレイナーレの張り詰めた大きな乳房にむにゅっ! と押しつけられ、彼女のビンビンに勃起した、硬くいやらし過ぎる大きな乳首が僕の頰をくすぐる。

 

 僕とレイナーレはお互いを見つめ合う。そこで僕は彼女に誓いを立てる。

「レイナーレ、僕は絶対に君と添い遂げる。何があっても君を守り抜くよ」

 

僕の誓いの言葉にレイナーレは目を潤ませて応えてくれる。

「ミコト、嬉しいわ……! ええ、あなたと私は何があっても一緒よね! お願い、何があろうと私を離さないで。大好きよ。愛してるわ。私のミコト」

 

レイナーレの言葉に僕はうなずき、彼女にそっと顔を近づけ、唇を重ねる。

 「あふっ……あむっ……」

 

 レイナーレの舌が僕の歯をこじ開けるようにして僕の口内に侵入し、彼女の舌が僕の舌に絡みつき、彼女の舌が僕の口内を余すところなくなめ回し、彼女の唾液が僕の口内に注ぎ込まれる。

 

「はむっ! じゅるるるるーーーーっ! ぷはあっ! るろっ……るろるろ……ぺちゃあっ……ああっ! ミコトっ! 愛してるっ! 愛してるわっ! あむっ! ちゅううううっ!」

「うううんっ……! ぷはっ! はああっ……! 、僕も愛してるっ! 愛してるよっ! 僕のレイナーレっ! はむっ! ふううううんっ!」

 

 お互いの舌をむさぼり合うレイナーレと僕。長い濃厚なキスの末にようやくレイナーレが僕の口から唇を離す。僕と彼女の唇の間に一瞬、唾液の糸がつながり、消える。

 

 「キスの次は胸」の言葉通り、というか僕たち2人の場合、それは絶対なのだが、僕の目は目の前にパンパンに張り詰めているレイナーレの大きく美しい乳房に、その頂の、僕が毎日、何時間も繰り返し指でさすり、ひねり回して吸いまくり、舌でなめ回して歯で噛みつきと激しく愛撫している、僕を常に虜にしてやまない彼女の大きくいやらしい乳首に注がれる。

 

 むにゅっ! と僕の手がレイナーレの張り詰めた大きな乳房を握り締める。

 「あっ!! ミコトっ!! ああんっ!!」

 

 僕の指がレイナーレの張り詰めた乳房に深々と食い込み、彼女の乳房が卑猥な形に変形する。僕はそのまま、彼女の乳房をぐにゅっ! ぐにゅぐにゅっ! ぐにいっ! と激しく揉みしだく。彼女の張り詰めた弾力にあふれる乳房が僕の手を押し返してきて、彼女の硬くコリコリした大きな乳首が僕の手のひらをくすぐる。

 

「ああっ!! レイナーレっ!! 君の胸っ!! 大きくてムチムチで最高だよっ!!」

「ああんっ!! ミコトおっ!! む、胸揉まれるのっ!! す、すごく気持ち良いのおっ!! お、お願いっ!! もっともっと揉んでえっ!! あはあんっ!!」

 

 僕はレイナーレの乳房を存分に揉みしだいた後、手を離して彼女のビン! と突き出して僕を誘っている卑猥極まる大きな乳首を見つめる。その乳首は毎日、僕の激しい指と舌、歯による激しく執拗な攻めを受けているため、充血して淫らな色に変色し、膨れ上がって長く伸びて突き出している。その景観は実にいやらしく、僕の性欲を激しく掻き立てる。僕の心を捕らえて離さない、まさに【魔性の乳首】だ。

 

 僕はその彼女の【魔性の乳首】につん! と指で触れる。

 「あっ!!」

 

 ただそれだけでレイナーレはビクン! と裸体を大きくふるわせてあえぐ。さらに僕は彼女の乳首をすりすりっ! すりっ! と指で何度もさすり回す。

 

「あっ!! あっ!! ああんっ!! ミ、ミコトっ!! ち、乳首気持ち良いわあっ!! あっ!! ああんっ!!」

 

 レイナーレの甘いあえぎ声と共に彼女の大きな乳首がぶるっ! ぶるぶるっ! ぶるんっ! と弾むように卑猥にうごめく。僕は入念に、執拗に彼女の乳首をさすり続ける……乳頭を……側面を……乳輪を……

 

 その乳首の卑猥な形と、指に感じる硬いコリコリ感とムッチリとした弾力感、そして

 「あっ!! あはあんっ!! はあんっ!! ミ、ミコトおっ!! 愛してるっ!! 愛してるわあっ!! もっともっと乳首触ってえっ!! あああんっ!!」

 

 美貌に恍惚とした表情を浮かべて淫らにあえぐ彼女の声。その全てが僕を激しく魅了する。

 

「うんっ!! もっともっと乳首触ってあげるっ!! もっともっと君をいやらしくもだえさせてあげるっ!! 僕の、僕のレイナーレっ!!」

 

 そう叫んで僕はレイナーレの乳首をぎゅりいっ!と強くひねる。

 「ふっ!! ふぎいいいいいっ!!!」

 

 乳首を襲った強烈な刺激にレイナーレが目を見開いて絶叫する。さらに僕は彼女の乳首をぎゅりっ! ぎゅりぎゅりっ! ぎゅりりいいいいっ! と激しくひねり回し、引っ張る。

 

「ああっ!! レイナーレっ!! 君の乳首っ!! このコリコリしてムチムチした感触っ!! 僕っ!! たまらないっ!! たまらないよおっ!!」

「ふっ!! ふうぎいいいいいいいいっ!!! ミ、ミコトおおおっ!!! わ、私いいいっ!! そ、そんなにっ!! ふひっ!! ち、乳首攻められてえっ!! はひいっ!! お、おかしくなっちゃいそうよおおっ!! ひいいいっ!! はあひいいいいいいいっ!!!」

 

 僕の激しい乳首攻めにレイナーレは目から涙を流し、口元から涎を垂れ流し、長い黒髪を振り乱し、裸体をのけぞらせて淫らにもだえ狂う……

 

 そして……

 

「はあっ……はあはあっ……ああんっ……」

 

 レイナーレはベッドの上で、魅惑の裸体をびっしょりと汗に濡らして甘い声でもだえている。僕もさすがに疲れて椅子に腰掛けて体を休めている。

 

 しかしレイナーレはやがてベッドから起き上がると、妖艶な目で僕を見つめて微笑む。

 「うふっ……ミコトったら本当に私の乳首が大好きね♪ そんなあなたにとっておきのサービスをしてあげるわ♪」

 

 「えっ?」

 思わず聞き返す僕の前で、レイナーレはベッドの近くに置いてあった小さなビンを手に取ると、その中の液体を指につけると、それを自分のビンビンに勃起した大きな乳首に塗りつけた。

 

 「!!?」

 その液体でテカテカと光る彼女の大きな乳首、それは実に卑猥で僕の股間はまた激しく猛り立つ。

 

「うふっ♪ ミコトったらまたそんなにオチンチン大きくしてっ……! 可愛い子……! さあ、いらっしゃい♪ 私のこのエッチな乳首をなめ回してっ……! 吸ってっ……! 私……あなたに乳首攻められまくって……乳首がジンジンうずいちゃってたまらないのっ……! だから思い切り私の乳首を愛しまくってっ……! お願いっ……!」

 

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 そう言って液体でテカテカと輝くいやらしい大きな乳首を見せつけて僕を誘うレイナーレ。

 「…………!!」

 

 ゴクッ! と僕は思わず唾を飲み込むと、彼女の傍に寄って、そのテカテカと卑猥に光るレイナーレの大きくいやらしい乳首に顔を寄せると、それを舌でるろおっ! となめ上げた。

 

 「あっ!! あはあんっ!!」

 レイナーレがまた甘い声を上げて裸体をのけぞらせる。

 

 一方、僕はなめ上げた彼女の乳首の味に驚く。

 「えっ!? 甘いっ!」

 

 「うふっ♪ あなたのために乳首に甘~~いシロップを塗ってみたの♪ どう? おいしい?」

 妖艶な表情で微笑むレイナーレ。

 

 その彼女に僕は嬉しさに心躍らせて答える。

 「う、うんっ! とってもおいしいよっ! 君のシロップ漬け乳首っ! お願いっ!もっともっと吸わせてっ!」

 

「うふっ♪ 喜んでくれて嬉しいわ♪ さあ、シロップはまだいっぱいあるのよ♪ もっともっと私のシロップ漬け乳首をなめ回してっ! 吸ってっ! 私のミコトっ!」

「ああっ!! レイナーレっ!!」

 

 僕はレイナーレの裸体に抱きつくと、彼女のシロップ漬け乳首を舌でなめ回し、吸い上げ、しゃぶりまくる。シロップを完全になめ取ると、また小ビンからシロップを出してそれを彼女の乳首に塗り込んで、またなめ回すという行為を繰り返す。

 

「るろっ……れろれろ……ちゅううっ! ちゅばっ! ああっ! レイナーレっ!!おいしい! 本当においしいよおっ! 君のシロップ漬け乳首っ! はむっ! じゅるるるるーーーっ!」

「あはあんっ!! ミ、ミコトおっ!! わ、私もあなたに乳首いっぱい吸われてっ!! し、幸せよおっ!! わ、私のミコトおっ!! あああんっ!!」

 

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 僕は夢中でレイナーレのシロップ漬け乳首をなめ回して吸い上げ、レイナーレはその僕の頭を優しく抱いて、美貌に恍惚とした表情を浮かべ、口元から涎を垂れ流して、僕の愛撫にもだえている。だが……

 

 えっ……!?

 僕は突然、強烈な眠気に襲われる。

 

 お、おかしいな!? 何でこんなに急に!? ま、まさか……!?

 

 僕はレイナーレの乳房から顔を上げて彼女を見つめる。しかし、その瞬間、僕の視界は大きくぼやけ、僕はガクッ、とよろめくと彼女の胸に顔をつっぷした。

 

 「ごめんなさい……」

 薄れ行く意識の中で、僕はレイナーレの声を聞き、そのまま彼女の胸の上で意識を失った。

 

 

****************************************************************

 

 

 ここは教会の礼拝堂の中。暗闇の中、レイナーレが全裸で翼を生やした姿で突っ伏している。その彼女の前にグレモリー先輩が立ち、彼女を冷ややかな目で見降ろしている。その傍で兵藤も彼女を冷たい目で見つめている。

 

 かつては兵藤も魅了されたはずのレイナーレの素晴らしい美貌と体。だが、もはや彼女を憎悪の対象としてしか見ていない今の兵藤にとっては、彼女のその類まれな美しさも忌むべきものでしかないのだ。

 

 僕は木場と塔城によって床に押さえ付けられて身動きが出来ない。必死で二人を跳ねのけてレイナーレのもとに行きたいのに、万力のような力で押さえ付けられ、ピクリとも動けない!

 

 「は、離してくれ……!! お願いっ!! 離してっ!!」

 僕は必死で二人に懇願するも、二人はそれを冷然と無視する。

 

 「ミ、ミコトっ……!!」

 レイナーレが涙を流して僕を見つめる。

 

 「どうやら悪運尽きたようね。堕天使さん。ここであなたには消えてもらうわ」

 グレモリー先輩が冷徹な憎悪と蔑みの目でレイナーレを見つめて死刑を宣告する。

 

 その言葉にレイナーレはビクッ! と体をふるわせる。

 「い、嫌よっ!! 死にたくないわっ!! わ、私はミコトと一緒に生きたいのっ!! だ、だから、お願いっ!! 許してっ!!」

 

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 泣き叫び、哀願するレイナーレ。僕も床に押さえ付けられながらも必死で叫ぶ。

 「グレモリー先輩っ!! お願いですっ!! レイナーレを……彼女を許してあげてくださいっ!! 僕と彼女で償いは必ずしますからっ!!」

 

 だが、僕たちの哀願をグレモリー先輩は冷たい目で退ける。

 「もう遅すぎるのよ。この堕天使は私の再三の警告を無視して、この街で好き勝手な事を繰り返した。私の可愛い下僕の心を弄び、愚弄した。その所業は許せるものではないわ」

 

 グレモリー先輩は兵藤を見て聞く。

 「イッセー、あなたはどう? この堕天使を許せるの?」

 

 すると兵藤は大きく首を振る。

 「いいえ、許せませんっ! こいつは俺の心を踏みにじって弄んだ。何よりもあの誰よりも優しくて健気なアーシアを自分の身勝手な目的の為に殺した! こんな奴を許すなんて……部長、俺、もう限界です。お願いします!」

 

 そうはっきりとレイナーレを殺す事をグレモリー先輩に頼む兵藤。僕は思わず全身の血が引くのを感じ、必死で叫ぶ。

 「ま、待ってくださいっ!! せめて一度だけは彼女にやり直すチャンスを与えてあげてくださいっ!! お願いですっ!!」

 

 だが、グレモリー先輩は僕の方を振り返ると言った。

 「大丈夫よ。あなたもしばらくすれば目が覚めて、これで良かったと思えるようになるから。この堕天使に誑かされていた事に気が付いてね」

 

 それからグレモリー先輩はレイナーレの方に振り返り、右手を掲げる。すると彼女の手に、禍々しい赤のエネルギーが集まる……! あれはグレモリーの一族に伝わるという恐るべき【滅びの力】!!

 

「や、やめてっ!!! やめてくださいーーーーーっ!!!」

 

 僕は絶叫するが、グレモリー先輩はそれを平然と無視し、恐怖で涙を流してふるえているレイナーレを憎悪の籠った冷酷な目で見つめ、言った。

 「吹き飛べ」

 

「い、いやあああああああああああああっ!!! ミ、ミコトおおおっ!!! た、助けてえええええええっ!!! きゃあああああああああーーーーーーーっ!!!」

 

 レイナーレの絶叫と共に、彼女を【滅びの力】が包み込み、僕を虜にしてやまない彼女の美しい裸体は瞬く間に崩れ去り、消滅した。彼女の黒い翼の残骸が聖堂内を舞う……

 

「レ、レイナーレえええええっ!!! う、うわああああああああああっ!!!」

 

 

****************************************************************

 

 

 「ミ、ミコト殿っ!! 落ち着いて!! 落ち着いてくださいっ!!」

 僕を呼ぶ声に、半狂乱になっていた僕はハッ! と我に返る。僕はカラワーナさんに抱きかかえられていた。目から涙があふれ落ち、体はガタガタとふるえている。

 

 「カ、カラワーナさん……レイナーレは?」

 僕は恐る恐る彼女の事を聞く。

 

 「レイナーレ様はご無事です。ご心配なさらず」

 カラワーナさんの言葉に僕はようやく落ち着きを取り戻す。どうやらあれは夢であったようだ。

 

 ホッとした所で僕は辺りを見回す。僕がこれまで見た事のない部屋だ。僕がいるのはなかなかに上等なベッドの上で、家具一式も揃っていて居心地は悪くはない。だが、僕はある事に気付く。

 窓がない!

 

 そう、この部屋には窓というものが一切ない。さらに入り口の扉を見ると、とてもいかめしく頑丈な造りになっているのが分かる!

 

 「カラワーナさん、ここは?」

 僕の問いにカラワーナさんは申し訳なさそうな表情を浮かべつつ答える。

 

「ここは……地下牢です」

「地下牢……」

 

 そうか。レイナーレはフリードを一時、地下牢に入れたと言っていた。それがここだったのか……

 

「はい。レイナーレ様はお眠りになったミコト殿をこちらに入れて、私にお世話をするようにお命じになりました」

 

 カラワーナさんの説明を聞いて僕は思い起こす。

 そうだ。僕はレイナーレと愛し合っていて、彼女がとっておきのサービスだと言って乳首に甘いシロップを塗って、僕はそれを嬉々としてなめ回して。でもそうしていたら急に凄まじい睡魔が僕を襲って……

 

 間違いない。レイナーレはあのシロップの中に睡眠薬を仕込んでいたんだ。僕にあの計画を邪魔させない為に。僕はかなりの時間、ここで眠りこけていたようだ。

 

「でも、カラワーナさん、この部屋って牢屋にしてはずいぶんと設備が整っているし、居心地も良いよね?」

「はい。レイナーレ様は仕方なくそうするのだと仰っていました。ミコト殿の事は心から愛しているが、ご自分の【計画】にあくまでも反対するのでやむなくと……【計画】を遂行したならすぐに解放する。【至高の堕天使】となった自分をミコト殿が見たならきっと喜んでくれる、そう仰っておいででした」

 

 

【計画】を遂行してから? それじゃダメなんだ!! レイナーレ、君の力では到底、グレモリー先輩たちには勝てないのに!!

 

 僕の脳裏に先ほどのあの恐ろしい夢が浮かび上がり、僕の心は恐怖と焦りにさいなまれる。このままでは本当にあの夢の通りになってしまうのは間違いない!!

 

 レイナーレ!! 君が殺されてしまったら!! 僕は!! 僕は!! 絶対に正気を保つ事は出来ない!!

 

「それでミコト殿、実はあの後、アーシアがここから逃げ出したのです。そして彼女はあの兵藤一誠のもとへ……」

「えっ!? 兵藤のもとに!?」

 

 カラワーナさんの言葉に、僕の心に一瞬、期待が膨らむ。

 アーシアさんが兵藤の、グレモリー眷属の保護下に入れば、レイナーレとしても手は極めて出しにくくなる! そうならばまだ妥協の余地が!

 

 だが、その期待は次のカラワーナさんの言葉で完全に打ち砕かれた。

 

「はい……ですがレイナーレ様はご自分でアーシアを探しに行かれ、アーシアを守ろうと抵抗するあの少年から、彼女を奪い返しました。彼はとても悔しそうだった、そうレイナーレ様は仰っていました」

「何だって!!」

 

 僕は驚愕する。レイナーレが【儀式】の遂行のために、ここから逃げ出したアーシアさんを兵藤から奪い返した。そうなれば絶対に兵藤は、アーシアさんを奪回する事をグレモリー先輩に強く求めるに違いなく、グレモリー先輩もおそらく……

 

 その時、突然、僕のスマホの着信音が鳴った。レイナーレは僕をここに閉じ込めはしたものの、僕が憎くてそうしたわけではなく、僕を愛してくれている彼女は所持品を取り上げたりなどの事は一切していなかったようだ。

 

 僕はそのスマホの画面に映っている番号を見る。

 グレモリー先輩!!

 

 僕は激しい胸騒ぎ、不安を覚えつつも急いで電話に出る。

 「もしもし、國原です!!」

 

 「ミコト、とても残念な事になってしまったわね……イッセーはそちらに殴り込んで何があっても絶対にアーシアを取り戻す気よ。私たちももう、一切容赦しないわ」

 グレモリー先輩の冷徹な声が響く。

 

「グレモリー先輩……」

「私、あなたに繰り返し伝えたわよね? 絶対に彼女を暴走させないようにって。でも、あなたはそれを守れなかった……先日は彼女の部下が私たちと契約した人を惨殺した」

「あ、あれは、あの男が……フリードが勝手に暴走して、レイナーレは全く知らなかった事です」

 

「ふうん……たとえそうだとしても部下の監督不行届きは免れないわよね。さらに今回はアーシアと一緒にいたイッセーを彼女は攻撃してアーシアを無理矢理奪い去った。これはどう弁解するのかしら? まさかアーシアは堕天使に仕えていた人間だから、こちらに口出しする権利はないとでも言うつもりかしら? もしそうだとしたら、私はあなたを心底軽蔑するわ。私、そういうの大嫌いだから」

「………………」

 

 グレモリー先輩の冷たい声が響く。僕はそれに言い返す事が出来ない。

 

「そもそも、堕天使たちがこの街で好き勝手な行動を繰り返し、私の眷属であるイッセーを私の警告を無視して何度も襲い、私たちと契約を結んだ人を惨殺した。これだけで私たちには彼女たちに報復する権利が十分にあるわ。それでも私がこれまで報復を控えていたのは、一つには堕天使と再び戦争なんて事態を避けたかった事、もう一つはミコト、あなたへの配慮……」

「………………」

 

「でも、あなたはその期待に応えられなかった。あなたなりに精一杯努力はしたのかもしれないけれど、結果が全てよね。そして、この街で彼女たちがやっていた事、その全てが堕天使上層部に無断でやっていた事も確認できたわ。つまり、私たちが彼女たちをどうしようが、堕天使上層部は一切、介入しないという事」

「………………」

 

 「ミコト、同じ学園の生徒として、一度だけあなたにチャンスを与えるわ。今すぐ彼女たちと手を切って、あの教会を去りなさい。そうすればあなたの身の安全は保障するわ」

 グレモリー先輩のその言葉にそれまで黙っていた僕は即座に答える。

 

「嫌ですっ!! 何があっても僕は彼女と一緒にいます!! 彼女が滅びるなら僕も一緒に滅びる!! あなた方が彼女を殺そうというのなら、僕は命を賭けてあなた方と戦います!! それは間違っている事かもしれない……でも、僕は以前お伝えしたように何があっても彼女を愛し続け、彼女を守ります!!」

「そう言うと思ったわ。私の眷属たちも皆言っているけれど、まさに【盲愛】ね……いいわ。私たちはもうすぐそちらに着くから、そこで決着を付けましょう。では」

 

 そこでグレモリー先輩からの電話は切れた。これでもはや完全にグレモリー眷属との和解の可能性は絶たれた。

 

 「ミコト殿……今のは?」

 カラワーナさんが不安げな表情で聞いてきた。彼女もおそらく話の大体の内容は分かっているのだろうが。

 

「グレモリー先輩から。彼女たち、今からすぐにここを襲うって。もう一切容赦はしないって。そう言っていた」

「…………………」

 

 カラワーナさんも沈痛な表情を浮かべる。おそらく彼女もずっと、この事態の展開に強い不安を抱いていたのだろう。それに分かっているのだろう。自分たちの力ではグレモリー眷属に勝てない事を……

 

 その瞬間、大きな声が響いた。

 「カラワーナ!! グレモリー眷属の悪魔どもが乗り込んでくるぞ!! 今、密偵から奴らがこちらに向かっているとの報せが届いた!! 我々は奴らを迎え撃ちに出る!!」

 

 この声は!! ドーナシークさん!!

 

 「そうか!! 私も行くぞ!!」

 椅子に座って僕と話していたカラワーナさんが立ち上がる。

 

 彼女は僕の方を振り返って言った。

 「ミコト殿……あなたはどうぞご自由に行動されてください。この場から逃げ出されても、グレモリー眷属の連中に庇護を求められても、私たちは一切、あなたを非難は致しません。この事態を招いた責任は、全てミコト殿の仰る事を聞かなかったレイナーレ様と、それを止められなかった私たちにあるのですから……」

 

 そのカラワーナさんの表情にはかすかな微笑が浮かんでいた。それを見て僕は悟る。彼女はもはや死を覚悟しており、ドーナシークさんやミッテルトちゃんも同様に違いないと!

 

 僕の答えはただ一つだ。

 「カラワーナさん、僕は逃げないよ。レイナーレのもとに駆け付けて彼女を守る! 君たちと共に悪魔たちと戦う!」

 

 僕の言葉にカラワーナさんは僕の目を真っ直ぐに見つめて聞いてきた。

 「ミコト殿……レイナーレ様はあなたとの約束を破って、あなたを騙してここに入れたのですよ。ご自分の野望を達成するために。それでもミコト殿はレイナーレ様を命を賭けてでも救いたいのですか?」

 

 その問いに僕は即答する。

 「うん! だって僕はレイナーレが、彼女がどうしようもなく好きだから! 彼女を失ってしまっては僕はもう終わり、そう思っているから。それに、彼女は彼女なりに僕の事を愛してくれている。それは確かだもの!」

 「ミコト殿……そこまでレイナーレ様の事を……」

 

 そこで僕は自分の思いの丈をカラワーナさんに伝える。この状況になっても自分の主、僕の愛しい女性の為に自らを捧げようとしてくれて、僕の事を心から心配してくれている彼女への感謝の思いを込めて。

 

「それにね……僕、ここに来て本当に良かったと思っているの。僕はこれまで、学校でも彼女どころか友達すらいなくてずっと一人だった。だからといってそれで特に寂しいなんて思った事もなかった。でも、ここに来て僕は最愛の女性と共に一緒に暮らす喜びを……そしてカラワーナさんやドーナシークさん、ミッテルトちゃんたちと楽しく語り合って過ごす喜びを得たの。そう、皆が僕にとって大切な存在……そんな皆を僕は守りたい! カラワーナさん! 一緒にこの危機を乗り越えようね! ここは捨てなくてはならなくなると思うけれど、また一緒にどこかで皆で暮らそうね!」

 

 「ミコト殿……!!」

 僕を見つめるカラワーナさんの目から涙があふれ出す

 

「カラワーナさん……涙が……」

「あっ! これは嬉し涙です。ミコト殿がそれほどまでにレイナーレ様の事を……私たちの事を大切に思っていてくださるのが嬉しくて……」

 

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 「カラワーナさん……」

 僕の胸に熱いものがこみ上げる。そして僕とカラワーナさんは一緒に地下牢の外へと出る。そこにはドーナシークさんとミッテルトちゃんが待っていた。

 

 「ミコト殿……このような事態となってしまい、申し訳ありません」

 「ミコトくん、ごめんなさいっす……」

 ドーナシークさんとミッテルトちゃんが僕にそう謝罪する。

 

 僕はそれに首を振って、僕の愛しい女性にどこまでも忠義を尽くしてくれている二人に感謝の思いを伝える。

 「ううん、仕方ないよ。むしろ僕はとても感謝しているの。こんな状況になってもレイナーレを支えようとしてくれて……ドーナシークさん、ミッテルトちゃん、ありがとう!」

 

 「ミコト殿……」

 「ミコトくん……」

 僕をじっと見つめるドーナシークさんとミッテルトちゃん。

 

 「ミコト殿、ちょっと失礼します」

 ドーナシークさんが僕に一礼すると、僕から少し離れた場所へと移動し、カラワーナさんに手招きする。

 

 「カラワーナ、こっちへ来い」

 カラワーナさんとミッテルトちゃんがドーナシークさんの元へと歩み寄り、3人は何やら話をしている。その内にカラワーナさんの顔がなぜか赤く染まり、ドーナシークさんが彼女の肩を叩き、ミッテルトちゃんは彼女のお尻を叩いた。

 

 話が終わると、カラワーナさんは僕の方へと歩み寄って来る。彼女の顔はやはりまだ赤い。

 い、一体何を話していたのかな……? 

 

 そしてドーナシークさんが言った。

 「では、ミコト殿、私とミッテルトはこの教会の裏口へ行き、そこで悪魔どもを迎え撃ちます。ミコト殿はカラワーナと共にレイナーレ様のもとへとお行きください。グレモリー眷属の悪魔どもは二手に分かれてここを襲うつもりのようですので」

 

 「えっ!!? で、でも……」

 僕は戸惑う。ドーナシークさんとミッテルトちゃん、二人だけでグレモリー眷属と戦うのはあまりにも危険だ! というよりほとんど自殺行為とも思える。

 

 僕は二人の身を案じて引き留めようとした。するとディヴェリクスが

 「相棒、あいつの言う通りだ。ただでさえ敵の戦力は圧倒的にこちらを上回ってる。向こうの戦力を集結させちまったら、こちらは一巻の終わりだ」

 

「だ、だけど……それじゃあドーナシークさんとミッテルトちゃんが……」

「お前!! あの女を何としてでも救いたいんだろうが!! だったらその事だけを考えろ!! 今のお前にゃあれもこれもするような余裕なんざ全然ねえんだ!! それにお前と一緒にいたって、あいつらが無事だなんて保障はどこにもねえぞ!!」

 

 ディヴェリクスに一喝される僕、そんな僕をドーナシークさんとミッテルトちゃんは不思議そうに見つめた後、一礼する。

 「それではミコト殿、失礼致します。カラワーナ、ミコト殿とレイナーレ様を頼むぞ!」

 「ミコトくん、カラワーナ、姉さまを頼むっす!」

 

 二人は黒い翼を広げて飛び立った。その姿を僕は見送りつつ、切に願う。

 ドーナシークさん、ミッテルトちゃん!! お願い!! 無事でいて!!

 

 僕はカラワーナさんに尋ねる。

 「カラワーナさん、それでレイナーレはどこにいるの?」

 

「レイナーレ様は、地下の祭壇で神器をアーシアの体から取り出して、自分の体に取り込む儀式を行っておられます。今はその最中かと……」

 

そこで僕は先ほど思い付いた【ある計画】を実行に移す。

 

「分かった! 僕はそちらに急ぐ! カラワーナさんっ! お願いがあるの!」

「は、はい! 何でしょうか?」

 

「今からすぐに駒王学園に忍び込んで、そこの音楽室からスピーカーを取って来て欲しいの! 今、グレモリー眷属たちは皆、こちらに向かっていて、真夜中だから先生たちももういないはず。駒王学園は手薄になっているに違いない。カラワーナさんならすぐに忍び込めるはず!」

 

僕の突然のお願いにカラワーナさんは戸惑う。

「そんな……スピーカーなんて、一体、何に使うのですか!?」

 

「ごめんなさい! 説明している時間はないの! でも、これはレイナーレを救うために絶対に必要なの!  このメモにそのスピーカーの使い方を書いておいたからこれを読んで!」

 

僕はカラワ━ナさんにそのメモを渡す。それを見たカラワ━ナさんはハッ!とした様子で僕を見つめる。

 

「分かりました……! 出来るだけ早く戻って来ます! ミコト殿、お気を付けて! 」

 

「ありがとう! カラワーナさんも気を付けて!」

僕の言葉にカラワーナさんはうなずくと、その場から駆け去って行った。

 

 カラワーナさんと別れた僕は大急ぎで駆け出す。もし、その儀式の遂行を未然に防ぐ事が出来たなら……つまり、アーシアさんの命を助ける事が出来たなら、グレモリー先輩たちにレイナーレの助命を約束させる事は十分可能と。それに懸けて! その場合はカラワーナさんにしたお願いは無駄になってしまうが、もちろん、その方がはるかに良い!

 

 だが、その途中で、地下牢から上へ駆けあがった所で、僕はこの教会に仕えていたエクソシスト……すなわちフリードと同じ悪魔祓い神父たちが続々と、ほうほうの体で逃げてくるのを見た。彼らはいずれも体に傷を負い、その表情は恐怖に怯えていた。彼らは僕の姿を見ても留まる事なく、我先にと教会の外へと飛び出していく。

 

 僕はその内の顔見知りの一人を捕まえて聞く。

 「ちょっと! 何があったの!? レイナーレは無事なのっ!?」

 

 「ミ、ミコト様……レイナーレ様はあの娘から神器を取り出す儀式を終えられました。だが、そこに悪魔どもが乗り込んで来て……あの連中、まだ子供でわずか3人なのに恐ろしく強くて……我々は必死で戦いましたが、とても歯が立たず……」

 彼は恐怖にガタガタとふるえながらそう言った。僕はその彼に尋ねる。

 

「その3人はどんな姿だったの!?」

「金髪の剣士の少年に、白髪の小柄な、しかしとても敏捷で力の強い娘……それに逆立った髪の少年、その3人でした……」

 

 木場に、塔城、兵藤の3人か! なら残るグレモリー先輩と姫島先輩がドーナシークさんたちと……!

 

「それで、レイナーレは無事なのっ!?」

「あの金髪の剣士の少年に斬りつけられ、腕に傷を負われて、その場から逃げて行かれるのを見ました……その後は存じません」

 

 そのエクソシストの言葉に僕の不安は一気に増大する。レイナーレが木場に傷を負わされたというのに加え、彼女が既に儀式を終えてしまった……つまり、アーシアさんの命を奪ってしまった以上、もはやグレモリー眷属の面々は絶対に彼女を許さないだろう。見つかって捕えられれば彼女は間違いなく殺される。もはや一刻の猶予もない!

 

 「ディヴェリクス!! レイナーレはどこにいるか分かる!?」

 僕はディヴェリクスに尋ねる。彼女の居場所を知るのにはもう彼しか頼れる者はない。

 

「もうここにはいねえな……分かったぜ! あの建物だ!」

「どこっ!? 教えてっ!!」

 

「焦るなって! まずはここに攻め込んでいる悪魔どもに途中で見つからねえようにしなくちゃならねえからな……俺の指示通りに動け」

「うん、頼むよ!」

 

 ディヴェリクスは一定の範囲の中なら、特定の人物がいる場所を察知する能力があるらしい。このレイナーレがいる教会を探し当てた時といい、この前のカラワーナさんが襲われた時といい、本当に頼りになる!

 

 レイナーレ!! お願いっ!! 僕が行くまで無事でいてっ!! 僕の愛しいレイナーレっ!!

 僕はそう祈りつつ、ディヴェリクスの先導のもと、彼女のいる場所へと急いだ。

 

 

****************************************************************

 

 

「そ、そんな……あり得ないわっ!! 光は悪魔にとって猛毒のはず!! なのにどうしてっ!!?」

 

 私は目の前の状況に気が動転していた。目の前の兵藤一誠……つい先ほどまで私の攻撃に圧倒されていた、この下級悪魔が、私の光槍によって両足を貫かれて到底動けないはずであるのに起き上がったばかりか、私を憎悪に歪んだ凄まじい表情で睨みつけ、強烈なオーラ(闘気)を発して私に向かって来るのだ! その威圧感は先程までとは比べものにならない!!

 

 私はあの儀式でアーシアから神器を抜き取って自分の体に取り入れて、その癒しの力を身に付けた。その力はあの剣士の少年に付けられた腕の傷もたちどころに癒してくれた。これによって私は念願の【至高の堕天使】になったはずだった。

 

 しかし、私が侮っていたあの下級悪魔は、そんな癒しの能力など一撃で吹き飛ばしてしまう、それほどの凄まじいパワーを全身から放っている。

 「こ、これは何かの間違いよっ!! こ、こんなパワーが人間から悪魔になったばかりの下級悪魔にあるはずがないわっ!!」

 

 「てめえが一番ムカつくんだよおおおっ!!!」

 一誠が凄まじい憎悪に満ちた表情で罵声を浴びせ、私ににじり寄る。私は恐怖に怯えつつも、懸命に光槍を作り出してそれを投げつける。しかし一誠はその光槍を神器を装備した腕の一振りで消し去る。

 

「ひっ!! ひいいっ!!!」

 

 恐怖に怯える私に一誠は憎悪の叫びを上げる。

 「吹っ飛べっ!! クソ天使っ!!」

 

 神器を装着した腕で私に殴りかかる一誠。グオオンッ!! と強烈な一撃が私を襲う。

私を。尊以外の男が!

 

 「きゃあああああっ!!!」

 

私は辛うじて身をかわした。それは明らかに私の力だけによるものではなかった。かわせたのはきっと、尊以外の男に自分の体を触られたくなかったから。

 

かつてはこの体で多くの男たちを篭絡してきた私。でも、尊と愛し合うようになって以来、私の体は尊だけを求めるようになっていたのだ。だから体が自然に反応したのだ。

 

しかし一誠の凄まじい一撃で、私のボンデージは散り散りにはじけ飛び、私は両手の手袋を除いて全裸となった。

 

 「あっ……ああああっ……」

 恐怖のあまり、私の裸体はガタガタとふるえ、私の目から涙があふれ落ち、私の全身から汗が流れ落ち、私のむき出しになった乳首は普段よりもさらに大きく膨れ上がる。それは愛しい尊の心を虜にしている私の自慢の体……

 

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 しかし、目の前の憎悪に燃えた男は、そんな私の姿を見ても、いささかのためらいも見せない。

 

 「へっ、その体を見せつけて泣いてみせりゃ、男は皆、てめえを許してくれるとでも思ってんのかよ? 確かに國原じゃそうかもしれねえな……だが、俺はもうそんな演技に騙されねえぜ!! 俺はてめえが絶対に許せねえんだよ!! アーシアの敵討ちだ!!ぶっ飛ばしてやる!! 覚悟しやがれ!!」

 そう憎悪に歪んだ顔で叫ぶと、一誠は再び私を殴ろうと身構える。

 

 「ひっ!! ひいいいいっ!!! ミ、ミコトおおっ!! た、助けてえっ!!! 助けてえーーーーっ!!!」

 

【挿絵表示】

 

 私は恐怖のあまり、泣き叫んで愛しいあの子に助けを求める。するとその瞬間……

 

 

 ビシュッ!! と熱線が飛んできて私に今にも殴りかかろうとしていた一誠を襲った。

 

 「ぐっ!!」

 私への憎悪に凝り固まっていた一誠は、完全に不意を突かれたようで、熱線は彼の右肩を直撃し、それなりのダメージを与えたようだ。そして……

 

 「ミ、ミコトっ!!!」

 そう、尊が……あの子が私を助けに来てくれたのだ! 私はあの子を騙して牢に入れてしまった。でも、それでもあの子は私を助けに来てくれた!! 私の尊!!

 

 

****************************************************************

 

 

 僕はディヴェリクスの助けで、何とかレイナーレがいる場所に、グレモリー眷属の面々に見つかる事なくたどり着いた。場所は教会の礼拝堂。僕がそこに入った瞬間、兵藤が全裸になったレイナーレを今にも殴りつけようとしていた。僕は無我夢中で兵藤に向けて熱線を放った。その熱線は彼の肩を直撃した。

 

 「ミ、ミコトっ!!!」

 レイナーレが涙に濡れた目で僕を見つめ、叫んだ。兵藤は振り向くと、僕を憎悪に満ちた目で睨みつける。

 

「國原……てめえっ!!」

 

 「レイナーレっ!! 今のうちに早くこっちへっ!!」

 僕は彼女に向かって叫ぶ。

 

 「!!!」

 レイナーレはハッ! とした様子で、大きな乳房を揺らせながら僕に向かって駆け寄って来る。

 

 「てめえっ!! 逃がすかあっ!!」

 兵藤が憎悪に満ちた叫び声をあげつつ、彼女を捕らえようとする。その兵藤に僕は第二撃を加える。

 

 「チッ!!」

 兵藤はいかにも硬く頑丈そうな神器を装着した腕を振るって熱線と光槍を防いだ。そしてその間にレイナーレは僕の元にたどり着いて、僕の背後に隠れる。

 

 レイナーレが兵藤の手から逃れた事にひとまず安堵する僕。しかし、僕は礼拝者の座る座席に、半裸の姿で横たわっているアーシアさんの姿を見つける。彼女は明らかに息をしていない!

 

 アーシアさん……

 僕はアーシアさんを襲った悲劇を、そしてそれが僕の最愛の女性がした事だと改めて認識する。

 

 兵藤はそんな僕を憎悪に燃える目で見つめて言う。

 「おい、見たかよ國原。てめえの彼女がやった事をよぉ……そいつはてめえが出世したいという身勝手な目的のために、何の罪もねえ、優しいアーシアを殺しやがったんだ。そいつは顔や体は綺麗でも心は悪魔以上に悪魔な最低の堕天使なんだ。そんなそいつを庇おうっていうんなら、てめえも同類だぜ」

 

 「兵藤くん……アーシアさんには本当に申し訳なかったと思っている。ごめんなさい。でも、僕にとってレイナーレは……彼女はどうしても失いたくない最愛の女性なんだ! 頼む!! 彼女を許してやって欲しい!! 僕と彼女で出来る限りの償いはするから!! お願い!!」

 

 僕は兵藤に頭を下げて頼み込む。聞き入れられるはずもない、虫の良すぎるお願いだとは承知の上で。そんな僕をレイナーレは

 「ミコト……」

と涙で濡れた目で見つめている。

 

「ああっ!? てめえはバカか!? どこの世界にそんなムシの良い話があるってんだ!? てめえの彼女ならどんな悪事を働いても庇おうっていうのかよ? そいつは取り返しのつかねえ事をしやがったんだ!! アーシアはもう戻ってこねえんだよ!!」

 

 僕はその場にひざまずいて兵藤に懇願する。

 「兵藤くん、本当にごめんなさい。彼女がしてしまった事、それを止められなかった僕、それには弁解の余地もない……でも、お願い! 彼女に償うチャンスを一度だけでも与えてあげてください! お願いですっ!!」

 

「ふざけんじゃねえよ。許せる訳がねえだろ。そいつはついさっき、俺を騙して弄んだ事を愉快そうにさんざんバカにしやがった……アーシアを殺した事についても反省するどころか、この子から奪い取った力をこれ見よがしに俺に見せつけて自慢しやがった……そいつは改心なんざ望めねえ、最低の外道女なんだ。殺すしかねえんだよ!」

 

 そう兵藤はますますいきり立った様子で憎悪をたぎらせる。でも、それでも僕は彼に懇願する。

 「お願いです!! あと一度だけ、彼女にやり直す機会を与えてくださいっ!!」

 

「うるせえっ!! そんな外道堕天使にそこまで執心しやがるとは……どうしようもねえ野郎だぜ、てめえはっ!! そんなてめえの身勝手なお願いなんか聞けるわけねえだろっ!! バカ野郎がっ!!」

 

 その兵藤の叫びに、僕は絶望感に囚われる。そんな僕にディヴェリクスの声が響く。

 

「相棒、奴はお前の願いを聞き入れる気は一切ねえ。これ以上はもはや時間の無駄だぜ。ぐずぐずしてると他のグレモリー眷属の連中も駆けつけてくる。覚悟を決めな」

 

 その言葉に僕は決断する。僕は立ち上がり、兵藤を見つめて彼に伝える。

 「確かに彼女がしてしまった事に、僕がそれを止められなかった事に弁解の余地はない。兵藤くん、申し訳ない。アーシアさんには謝っても謝り切れない。でも、君がレイナーレを……彼女をどうしても殺そうというのなら、僕は君に立ち向かう!! どんなに罪深くても、レイナーレは僕が誰よりも好きな女性だから、彼女を守りたいから、おかしいと言われても、気が違ってると言われても僕は愛しい彼女を守る!! それが僕の定めだから!! この僕の神器【情念の炎】に誓って!!」

 

 その僕をレイナーレは涙を流しつつ見つめ、叫ぶ。

 「ミ、ミコト……あ、ありがとう……!! それほどまでに私を愛してくれて……!! そしてごめんなさい!! 私のせいでこんな事に!!」

 

「次から次へと屁理屈並べ立てやがって……どこまでおかしい野郎なんだ、てめえは!! いいぜ、そこまでそいつと一緒にいてえんなら、二人仲良く俺がぶちのめしてやる!!」

 

 兵藤は憎悪にたぎった目で僕たちを睨みつけ、戦闘態勢を取る。僕は涙に濡れたレイナーレの顔を、全裸の彼女の美しくいやらしい魅惑の裸体を見つめる。僕が負ければ、確実に彼女は殺される。この美しい魅惑の体も全て悪魔たちに消し去られてしまう! そんな事は絶対に許せない!!

 

 「ミコト!!」

 レイナーレが涙に濡れた目で僕を心配そうな表情で見つめる。

 

 その彼女を僕は安心させようと力強く言う。

 「大丈夫だよ! 絶対に君を守り抜いて見せる!」

 

 そして僕は彼女の勃起した大きな乳首を指ですりっ! とさする。

 「あっ!! ああんっ!!」

 

 指に伝わる、レイナーレの乳首のコリコリな硬さとムッチリとした弾力を兼ね揃えた素晴らしい感触、彼女の甘い声、それを僕は何としてでも守る!

 

 その決意の下、僕はポケットから常に持っているレイナーレの胸当てを取り出して両手に持つ。するとその胸当てが瞬く間に僕の手に絡みつき、装着される。

 

「そうか……そのクソ堕天使がてめえの力の源か!! そんな力に負けてたまるかよ!!」

 

 憎悪に顔を歪め、殺気を全身からほとぼしらせて圧倒的なオーラを放つ兵藤……正直恐ろしい。だが、レイナーレを、彼女を失ってしまうのはもっと怖い!!

 

「相棒!! 奴の力はお前よりはるかに上だ!! 神器の力が超強力な上に、元々の基礎体力……腕力も瞬発力もお前を大きく上回ってる。その上、奴は悪魔、お前は人間だ。まともにやったらまず勝ち目はねえ!!」

「…………」

 

「だが、お前に有利な面もある! それはまず奴が完全に神器の能力にまだ目覚めてねえ事……特に神器のドラゴンと意思疎通ができてねえ事だ! それに比べてお前はこうして俺とちゃんと連携が取れてる!」

「うん!!」

 

「もう一つは、お前のすぐ傍にお前の力の源がいる事だ! 奴の神器……【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】の特性、それは10秒ごとに力を倍加させていくという能力だ」

 

 「10秒ごとに力が倍加!?」

 僕は思わずゾクッ!とする。

 

「ああ、だがな、お前のこの神器も実はよく似た特性を持っているんだ。お前が守りたい……情念を注ぐ相手への想いが強まれば強まるほど、その力がどんどん上がっていくという特性をな!」

「僕の神器にそんな力が!!」

 

 僕はその守りたい相手、僕の情念を注ぐ相手……僕の傍らで涙に濡れた目で僕を見つめているレイナーレを再び見つめる。彼女の泣き濡れた美貌……香しい匂いの艶やかな長い黒髪……張り詰めた大きく美しい乳房……その頂のカチカチに硬く勃起してビン!と突き出している卑猥極まる大きな乳首……引き締まったへそにくびれた腰……丸く形の良い美しい尻……黒い陰毛に覆われた秘部……すらりと伸びた手足……

 

 僕の心に【彼女を何としてでも守りたい!】その想いがさらに強烈に駆け巡る! すると僕の全身に力がみなぎり、僕の体から、兵藤と同様に光輝くオーラが発せられる。

 

 「ミ、ミコトっ!!」

 「く、國原……てめえ……」

 レイナーレが目を見張り、兵藤が少したじろいだ様子を見せる。

 

 「よし、オーラをまとったな! 相棒、お前に最初に忠告しておく。絶対に手加減はするな! 殺す気で戦え! 奴はお前が手加減出来るような、そんな甘い相手じゃねえ! いいか!お前が負けたら、間違いなくあの女は殺される! それが嫌ならそうするんだ!」

 「うん!!」

 ディヴェリクスの言葉に僕は覚悟を固める。

 

「それともう一つ……あまり長引かせるな! 今、殺す気でやれと言ったが、それは奴との決着をこの場で完全につけろという意味じゃねえ。さっきも言ったが、長引かせると、奴以外のグレモリー眷属の連中がここに駆けつけて来る。そうなったら絶対に勝ち目はねえ! それまでに何としてでもこの女と共にここを脱出するんだ! その頃合いは俺が知らせる!」

「うん!! 分かったよ!!」

 

 僕と兵藤は共にオーラをまといつつ、対峙する。

 

 

****************************************************************

 

 

 私の虚飾に満ちたプライドは粉々に打ち砕かれた。私の心にあった自らの能力への自信、長年思い描いてきた栄光に満ちた未来、それらは全て、私の無知から来る、愚かな虚像に過ぎなかったのだ。

 

 念願だったアーシアの神器を手に入れたにも関わらず、私はあの【人間から転生したばかりの下級悪魔】と侮っていたあの男に圧倒され、無様に追い詰められた。その事実は私に、自らの能力のなさを、愚かさを徹底的に思い知らせた。

 

 だが、私はその代わりに素晴らしいものを得た。それは目の前にいる尊……私は自分の愚かしい野望のためにこの子の信頼を裏切り、この子を騙して一時的なつもりだったとはいえ、この子を牢に閉じ込めた。しかしそれでもこの子はあくまでも私への愛を貫いてくれて、私を救うために駆けつけてくれた! それは私を心から感動させた。

 

 しかし、この子はそのために、あの凄まじい憎悪に身を焦がした恐ろしい一誠と命を賭けて戦わなくてはならなくなってしまった! この子は何も悪くないのに! 全ては私の愚かさが招いた事なのに!!

 

 この子が負けたら、殺されてしまったら、その恐怖が私の心をさいなむ。もちろんこの子が負けたら最後、私は確実に殺される事は分かっている。だが、それ以上に愛しいこの子が殺される、それを何よりも恐れる自分がいる。

 

 ミコト!! もう私にはあなただけなの!! これまで抱いてきた自分への自信も、野望も、全てが潰え去った私。でも、これほどまでに私を愛してくれるあなた……そのあなただけが今の私の心の支えなの!! そんなあなたを失いたくない!!

 

 尊への熱い想いが私の体の中を駆け巡る。その時、私に声が響いてきた。

 「おい!! 聞こえるか!?」

 

 

 「えっ!?」

 私は思わず辺りを見回した。しかし周囲にはもちろん誰もいない。そして再びその声が響く。

 

「俺はあんたの心に語りかけているんだ。堕天使レイナーレ」

「あ、あなたは誰なの!?」

 

 驚く私にその声は答える。

 「俺は【情念の龍神】ディヴェリクス。あいつの、國原尊の神器に宿るドラゴンだ」

 

「ドラゴン!? ミコトの神器に宿る!?」

 私は思わず聞き返す。まさか尊の神器に伝説的な存在であるドラゴンが宿っていたとは……尊が危険な神器の保有者として危険視されたのもそれならば納得がいく。

 

「そうだ。よろしくな。我が相棒の彼女さん。って、和気藹々と話をってワケにもいかねえ。今、あいつはあんたのしでかしちまった事のせいで、あの凄まじい力を持った小僧と命を賭けて戦わなくちゃならねえハメに陥っちまってる」

 

 「ご、ごめんなさいっ!! 私っ!!」

 私は思わずまた涙を流して謝る。

 

 その私に彼……ディヴェリクスは言う。

 「おいおい、泣かれたって謝られたって何も問題は解決しねえよ。俺が今、あんたに頼みたいのは、あんたにあいつを支えてやって欲しいって事だ」

 「えっ!?」

 

 思わず聞き返す私にディヴェリクスは言った。

 「あんたも知っての通り、あいつの神器、【情念の炎】はレイナーレ、あんたへの想いをエネルギーに発動される。そしてその力はあいつのあんたへの想いが強まれば強まるほどどんどん強化されるんだ」

 

「わ、私への想いで発動されるだけじゃなくて、強化もされるというの!?」

「そうだ。だから頼む! あいつを支えて力づけてやってくれ! 戦闘のサポートは俺がする! だから、あんたはあんたのあいつへの想いであいつに力を与えるんだ。そして状況を見て、あいつに加勢してやってくれ!!」

 

 私が……この無様に負けた私がミコトを支えられる!! あの子の力になれる!!

 私の萎えていた心が一気に高揚する。

 

 そう……!! 私はこの場をミコトと共に切り抜けて、あの子と共に生きたい!! こ れからもずっとあの子と愛し合って支え合って生きていきたい!! そのためには私たちはこんな所で死ねないっ!!

 

 私の心に強い願望が沸き立ち、私はディヴェリクスに叫ぶ。

 「分かったわ!! 私、全力であの子をサポートするわ!! 私の愛で!!」

 

 その私にディヴェリクスは言った。

 「ああ!! 頼んだぜ!!」

 

 「ええ!!」

 私はうなずき、憎悪に身を焦がした、恐ろしい形相の一誠と向かい合う愛しいあの子を見つめる。

 

 ミコト……!!

 

(次回に続く)

 




今回の【完全版】第5話、後半部に以前のお話と大きな変更がありました。

まず、以前のお話にはなかった、眠らされて地下牢に入れられた尊が見た恐ろしい悪夢……もちろん、アニメ第5話の私にとってはあまりにも辛すぎたあの場面が元になっています。愛するレイナーレを失ってしまうという恐怖、それが尊をして圧倒的なパワーを持つ一誠に立ち向かう覚悟を与える、その緊迫感を出したいという事で加えました。

そして尊がカラワーナに頼んだ「駒王学園に忍び込んでスピーカーを持ってきて欲しい」というお願い。これも以前の話にはありませんでしたが、このスピーカーを使って一体何をするのか? 次回の第5話で明らかになります。

それから尊と一誠の対峙する場面。以前のお話では怒りに燃える一誠に対し、売り言葉に買い言葉で返していた尊でしたが、今回の【完全版】では、尊はレイナーレがしてしまった事に完全に非がある事をふまえて、怒りを爆発させる一誠に対してひたすら謝罪し、許しを乞うています。

レイナーレがしてしまった事に完全に非がある。だから一誠のぶつけてくる怒りの言葉に言い返しはしない。しかし、愛するレイナーレを殺させる訳にはいかない。だからやむなく一誠と戦う。おかしいと言われても、気が違っていると言われても、【盲愛】と言われても、それを尊は甘んじて受けた上で愛する彼女を守るために戦う……! それが尊の愛の在り方だという訳です。それは当然、一誠には受け入れられるものではなく、2人は戦闘に突入します。

次回の第5話も、もちろん大きな変更があります。尊と一誠の戦いが果たしてどんな形で決着がつくのか、そしてレイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、ドーナシークたちの運命は? どうぞご期待ください!


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