魔王として生活していたら、ある日突然降って湧いた美人からあなたのことを討ちますと言われました 作:☆あきつしま☆
翌日。
俺は夕日が落ちるとともに起床した。
魔王の座を元のしっかりとした椅子へと戻し、近くで待機していたちび魔王に挨拶をする。
「おはよう。何か俺が寝ている時に起きたりしたか?」
「とくにありません! でも、まおうじょうのまえで、みーるさんがこのおしろへとしんにゅうをこころみています!」
……なるほど。
「いつからだ?」
「おいだされたあとからずっとです!」
根性はあるらしい。バカだが。
まあ、この魔王城は堅牢だからな。侵入なんて出来るもんか。昨日がおかしかったのだ。
俺はすぐにミールの事なんか忘れて、ちび魔王が用意してくれていた夕飯を食べた後、魔術の研究に没頭した。
次の日。
夕方に目が覚めると、ちび魔王がミールに関する情報を伝えてきた。
「きょうは、おしろのじょうへきにこぶしをぶつけて、なにやらふしんなうごきをしてました!」
「なるほど。放っておけ。この城の城壁はそんなことで壊れるほどやわじゃないからな」
また次の日。
「きょうは、いちにちじべたでねていただけでした!」
「そうか。まあどうでもいいが」
またまた次の日。
今日も俺はちび魔王からアイツに関する情報を聞かされるのかと思いつつ目を開けると……本人が俺の目の前に立っていた。
…………?
「おい、なんでお前がここにいるんだ?」
「拳で私の進路を阻む全てを破壊してここにやってきた」
ほら、と言いながらミールが指差したところに目線を向けると……壁に大穴が空いていた。よく見ると、城壁の向こうの景色も見える。
なるほど。一直線に壁をぶち壊して俺のところまで来たというわけか。
この前と同じく『リワインド』と唱えて破壊箇所を綺麗に修復する。
「……で、なんの用事だ? 次はないと言ったはずだが。お前は自殺志願者かなにかなのか?」
「武装ロックを解除して欲しい」
ああ、そう言えばこいつの武装を全てロックしたんだったな。あの魔術は、あらゆる武器や魔術が使えなくなるというもので、俺が開発した魔術の中でも五本の指に入るほど便利な魔術だと言ってもいいだろう。まあ、相手に触れる、ということをしないと起動しないんだが。
しかし、それを解除して欲しいと来たか。なるほど。
「拒否する」
「解除してくれないと困る。これでは、この世界のことを詳しく調査することができない。今の私は、歩くか殴るかくらいしかできない。効率的な移動手段である飛行ができない」
ミールはその場で歩いてみたりパンチを繰り出してみたりしてアピールしてくる。
……その動作いる?
「足があるなら歩いて調べてこい。別に、ここ周辺を調べるだけでも色々なことは分かるだろうが」
「あなたが近くの一般市民を洗脳して、自分の都合のいい人形にしている可能性がある」
……いや、こいつの俺のイメージひどすぎない? そこまで人でなしみたいな風に見えるか?
こことは異なる次元にある収納空間へと繋がっている上着の内ポケットから、手鏡を取りだして……自分の姿を見てみる。
目の下には濃いくまがあり、顔の血色も全体的に悪い。髪の毛もボサボサで、服はヨレヨレ。
人でなしと言うよりかは、ろくでもなさそうな見た目だが、確かに信用にならんやつには見える。
「お前が俺の事を信用していないのは分かった。でもな? それは俺だって同じことなんだぞ?」
「私は何も嘘を言っていない。事実しか言っていない。信用できないとか言われる筋合いはないはず」
……ここまで自分のことを過信できるのは、ある意味才能なのかも知れないな。
「例え嘘を言っていないのだとしても、自分のことを『討つ』とか言ってくるやつを信用できると思うか? お前の武装をロックしている魔術を解除したら自分を襲ってくるかもしれないと考えて、お前の要求を拒否するのは至極まっとうなことだと思うがな」
「……あなたを討つことは一旦保留にしている。あなたの言う通り、この世界のことを学んでからそれをするかどうか判断すると決めた。だから、あなたに危害を加えたりはしない」
なるほどなるほど。
「それって『今は』だろうが。その言い方だといつかは討ち果たしに来るって言っているようなもんだぞ?」
「その可能性はある。あなたの言っていることが全て嘘だと分かれば討つ。嘘じゃないなら討たない」
面倒くさいやつだ。素直に負けを認めたら解除してやるというのに。
「それならやっぱり魔術は解除しない。お前の要求は呑めない」
「…………どうしても?」
「駄目なものは駄目だ!」
「……分かった……」
ショボン、というような雰囲気を漂わせながら彼女はここから出ていこうとする。
ちび魔王たちが何かい言いたそうな顔をして俺を見てくる。
いや、これに関しては俺は悪くないだろ。どちらかというとイカれた野郎に付きまとわれている被害者だぞ?
『知らん』と呟いてミールの方を見てみると……彼女はトボトボと壁際まで歩いていって……パンチを繰り出し壁をーー
「ちょっと待った! お前、また壁を壊すつもりか? 修復するための魔力だってばかにならないんだぞ!?」
「このルートが外までの最短距離。それと、これはあなたへの一種の嫌がらせ。あと、これから毎日調査の報告をしにここに訪れる。そのたびに壁と城壁を壊してあなたに会いに行く」
さらっと恐ろしいことを言ってくる。
こいつ……冗談じゃないぞ……こんなこと毎日されてたら魔力が枯渇してしまう……!
「……どうしたらその壁壊しをやめてくれるんだ?」
「武装ロックの解除、と言いたいけど……それは無理だと分かった。だから、次点のあなたが私に衣食住を提供することで手を打つ。どう?」
……とんでもなくおこがましい提案だな。だが……魔王として死活問題になりかねない魔力枯渇よりはましか……
「……分かった。今日からこの魔王城に住んでいい。食事も服も与えてやる。だから壁とか壊すなよ? 分かったな?」
「分かった。これからよろしく……そういえば名前を知らない。あなたの名前は?」
討つ討つと言っておきながら俺の名前を知らないのかよ。
はぁ……とため息をついた後、名前を教えてやる。
「俺の名前はライリーだ」
「ライリー。……記憶した。これから宜しく、ライリー」
こうして半ば強制的に、ミールとの共同生活が始まった。