出来損ないの転生魔術師〜三千年の時を越えて俺に会いに来たエルフがいるって本当ですか!?〜 作:☆あきつしま☆
その後。約一時間遅れで授業が開始したが、特に授業を担当する先生は焦ることもなく、そして巻くこともなく普通に授業をして、普通にやるべきところまで終えられずに昼休みとなった。こういうところが如何にもやる気のない学校というか、ギーギル王国で最底辺の名を冠しているだけのことはあると思うね。
あと、ケイティはというと当然のことながら俺の隣の席に座ることになった。別に席まで近くである必要はないとは思うんだが、彼女は少しでも俺と密着していたかったらしい。なんとも可愛げのある女性である。
で、現在。お昼休みになった瞬間、クラスメイト、特に男子からの射て刺す視線をビンビンに感じたので、このままでは殺されると思い、教室ではなく俺のお気に入りの場所でご飯をケイティと一緒に食べているという状況だ。まあ、ご飯と言ってもカップ麺だが。
ズズズズッ……ズズズズッ……もぐもぐ……ゴクゴクゴクゴク……ぶはぁ!
食べざかりの男子高校生である俺は、いい感じにふやけた麺を一気にすすり……お汁までしっかりと飲んで、カップ麺をまたたく間に完食してしまう。
(……いつもいつも節約のためにカップ麺は一回の食事につき一つまでって決めていたんだが……やっぱりこれじゃあ腹が減るんだよな……というか、色々と栄養不足気味だし。)
そんなことを思いながらも、することが一瞬にして無くなってしまったので、隣でお上品にチュルチュルとカップ麺を食べているケイティをじーっと見ることにする。
チュルチュル……もぐもぐ……チュルチュル…………もぐ……もぐ……
「……あ、あの……私を見つめていただけるのは嬉しいのですが……流石に食事中の姿を見られるのは恥ずかしいと言いますか……」
「……あ、ごめん」
すぐに視線を反らす。
流石にガン見は宜しく無かったな。せめてチラ見にとどめておくべきだった。
でも…………ケイティってずっと見ていても飽きない感じがするよなぁ……。何ていうんだろう。芸術品を見ているみたいな? いや、美術館とかに行ってもすぐに飽きちゃうタイプの人なんだけど、ケイティはずっと見ていられると言うかなんというか……。顔もスタイルも良いし、全ての所作も綺麗だ。安いカップ麺を食べている姿ですら、見る人が見たら涙を流すかもしれない。
そんなことを空を見ながら考えていると……ケイティがカップ麺を食べ終わったようで、俺に声を掛けてきた。
「ご主人様、ご飯を食べ終わったので、もう我慢せずに私を見ていいですよ?」
「……いや、さっきはつい見てしまったと言うか……」
「まあ! 私を意識してつい見てしまったと! そういうことですか!?」
「断じて違う! 暇だったから隣に座っていたお前を見ていただけだ!」
なんというかしゃべればしゃべるほど墓穴を掘っている気がしてならないが……。というか、言い訳した時点で詰んでませんか?
ケイティがニヤニヤとしてくるので、俺は必殺『話題そらし』を繰り出す。
「そう言えばケイティ。お前、朝のホームルームではよくもやってくれたな。俺達の関係をポロポロと喋りやがって……」
「ああでも言わないと私に皆さんが群がってご主人様とべったり出来ないじゃないですか。私、こう見えて引く手数多なんですよ? ご主人様と再会するまでの三千年間、それはもう星の数よりも多い男性からナンパされたり告白されたりして大変だったんです。結婚指輪をしてそれですからね?」
「へぇー、ふーん、なるほどねー、それは良かったねー」
「もしかして、ご主人様……妬いてます? 私がモテるのを知って妬いてます?」
くっそ、こいつ俺の心を見透かし……いや、別に妬いてないですけどね? 別にケイティがモテようがどうでもいいですけどね? 俺には関係ないことですし?
劣勢に追い込まれた俺だったが『うるさいぞ!』と言って彼女からの追求を強引に回避する。
ケイティは、たまに俺のことをおちょくってくる時があるが、奴隷ならそんなことしちゃいけないんじゃないのか? いや、別に俺はケイティのことを本当に奴隷と思っているわけじゃないんだが……これを考えだしたら色々とおかしくなるから止めよう。
思考を切り替えて、なぜか面白そうにクスクスと笑っているケイティに話を振る。
「ン゛ン゛! で? お前がモテモテなことを俺に教えて何がしたいんだ? ただの自慢話だったらはっ倒すからな?」
「もう……やっぱり妬いているんじゃないですか……。ですが、これは私の自慢話ではありません。どちらかというと、ご主人様の自慢話になるんですよ?」
「……なんでお前がモテていることが俺の自慢話になるんだよ」
「私はご主人様の奴隷ですよ? それに加えて、今朝の質問タイムでも言ったとおり『ご主人様に恋して、ご主人様しか眼中にない』奴隷です。ということはですね、ご主人様はモテまくっている私を手中に収めているわけです。世間から見たら、ご主人様は羨望の眼差しで見られる存在なのですよ? これが自慢話にならないなんて……ありえません」
「…………」
俺は自分の顔が真っ赤になるのを感じながらも黙ることしか出来なくなった。
ところどころその発言はどうなの? というところもあったが……俺の目をしっかりと見ながら『ご主人様に恋して、ご主人様しか眼中にない』とか言われたら……そんなのどうでも良くなるっていうか……。
てか! よくそんなことを恥ずかしげもなく堂々と言えるもんだな! お前の心は鋼か何かで出来ているのか!?
結局その後、ずっとケイティにニヤニヤと黙りこくっているところを見られたが……授業開始五分前のチャイムがなってくれたおかげで、なんとか逃げることが出来た。ある意味これも青春なのかもしれない……。