出来損ないの転生魔術師〜三千年の時を越えて俺に会いに来たエルフがいるって本当ですか!?〜 作:☆あきつしま☆
次の日。今日はいつもよりも早めにケイティに起こされて、彼女の手料理を朝食として食べた後、頑張って早起きして作ったらしい彼女お手製の弁当を持って……家を出た。
学校へ行くと……すでに教室にいたクラスメイトは一瞬ケイティを見たが……すぐに視線を逸らしてすぐに友達との会話を再開する。
どうやら昨日の自己紹介と質問タイムの一件で、ケイティはクラスメイトに距離を置かれて実質ぼっちになってしまったらしい。まあ、ここの人たちは話しかけてこないだけで何かいたずらをしてくるわけじゃないから問題ないと言えばない。それに、ぼっちになったとは言え、このクラスの先輩ぼっちである俺がいるからな。実質二人グループが誕生したとも言えるだろう。
そんなことを思いながら俺達は席へと座り……しばらくして今日の授業が始まった。
ケイティと一緒に勉強しているとあっという間に時は流れて、一時間目と二時間目が終わり……俺の嫌いな科目が行われる三時間目が迫ってくる。
次はどんな授業だって? ……魔術訓練だよ、魔術訓練。
魔術訓練とは、その名の通り魔術の訓練をする授業のことで、学校にあるグラウンドに行って魔術を行使し腕を磨くのだ。みんなは楽しい授業だと言っているが……魔術の使えない俺は、いつもいつも苦痛でしか無い授業だった。
それもそうだろう。出来ないことを延々とやらされるのだ。嫌いな科目をずっと強制的にやらされる気持ちが分かる人なら俺の気持ちも理解できるはずだ。
そういうわけで、いつもは『体操服を忘れました』とか『腹痛で動けません』とか言って見学かサボりをするのだが……今日はケイティに『私が一から教えますから! 頑張りましょう!』と言われたので、久しぶりに授業に参加する流れになった。
「よし! 今日は珍しくアイゼア君も授業に参加して、全員が揃っての授業となるな! 先生は嬉しいぞ! それに、新しく転校してきたというケイティ君も仲間に加わってくれて……やる気がキタキタキタァアア!」
授業が始まるなり先生が興奮をし始める。もとい、目に炎が灯ったような感じになる。
この熱血教師? はブライアン先生。ぼっちの俺にも熱血に接してきてくれる。突然興奮して大声を出したり、暑苦しすぎたりするが……まあ、嫌いではない先生だ。
しばらくブライアン先生は謎の興奮をしていたが、生徒からの冷たい目線を浴びて落ち着きを取り戻し、いよいよ魔術訓練が開始された。
「今日のテーマは……特に無し! 各々好きな魔術を行使して、それを磨いて磨いて磨き上げるんだ! 爆発系統でも氷系統でもなんでもいいぞ! ただし! 他の人を怪我させないように気を付けるんだ! 分からないことがあったらなんでも聞きに来ていいからな! では……始め!」
先生の号令とともに、グランドに生徒が散らばっていく。
大抵は二人から五人くらいのグループで魔術訓練を行う。今日もそんな感じで仲良しの人同士がグループを作り、俺の元から去っていった。いつもなら、この後はグラウンドの端っこに行って一人でパンツに忍ばせたゲーム機で遊ぶのだが……今日は違う。そう、ケイティがいるのだ。
というわけで、俺は隣にいた彼女を連れて、適当な場所へと移動することにした。
で、ちょうど誰もいない空白地帯を見つけたので、そこでポジションを取り、早速俺達も魔術訓練を始める。
「ではまず最初に、今のご主人様の実力を見せて下さい。それを見て、何が出来ていないのか、何をすればいいのかを私が考えて……ご主人様に合った方法で教えていこうと思います」
(すっげぇ先生っぽい。これはもうケイティ先生だな。)
そんなことを思いながら、このクラスでただ一人だけカバンを持ってきていた俺は、中から分厚い魔術書と、左右合わせて二枚の白い手袋を取り出す。
「ご主人様、それは……?」
ケイティが不思議そうな顔をして俺が取り出したものを見てくる。
もしかして……これを知らないのか……?
「この分厚い本は魔導書と言って、魔術の唱え方とその効果が載っている辞書みたいなものだ。で、この手袋は、魔術がド下手くそな人でも、ある程度の魔術なら使えるようにしてくれる便利アイテムだ。魔術がめちゃくちゃ出来る人が使ったらもっと凄いことになる手袋でもあるらしい。あと、周りを見て分かるように他の奴らも手袋は付けているが、魔導書は持っていない。頭に全て叩き込んでいるらしいからな。まあ、俺はそんな能もやる気もないからこの本を持ち歩いているというわけだ」
「あ、いえ、そういう意図で言ったわけではないのですが……」
自分で言っていて悲しくなるようなことを言いながらも魔導書と手袋についての説明をしたのに、彼女はそれらついて知っていたらしい。これはあれですな。ただ恥を晒しただけですな。
色々恥ずかしくなった俺は、気を紛らわすためにも魔導書の索引からお手頃な魔術を探して……該当箇所までページをめくる。
今回は、初級中の初級。魔術に初めて触れる子供が使うような魔術を使おう。
「もうやって良いか?」
「はい、お願いします」
ケイティが許可を出してくれたので……俺は胸の前で手袋をした左の手のひらを上に向けて……魔術を起動する。
「《フラッシュ》!」
すると、手のひらの中で一瞬だけ見えるか見えないかという程度の光が弾けて……すぐに消えた。
「俺が使えるのはこれくらいの超簡単な魔術だけだ。それ以外はうんともすんともいわない。起動すらしない」
俺は今の実力を口頭でも伝える。
ケイティはさぞかし落胆するのだろうと思っていたのだが……
「なるほど。今の魔術は、私が知っている近年のものよりも更に進化したのですね。ここまで詠唱を短縮して魔術を起動できるとは……人類の魔術開発スピードには感服します。ですがご主人様、こうなることは予想していたのです。どうか気を落とさないでください」
魔術には感嘆の声を、俺には励ましの声を送ってくる。
流石は三千年前から生きているエルフ。神視点の感想を述べてくる。てか、ケイティの見た目が若々しすぎていまいち三千年前から生きているということがしっくり来ないんだよなぁ……ただ、エルフはめちゃくちゃ年を取るのが遅くて長生きらしいから、おかしくはないんだけど。
しかし……『こうなることは予想していた』って……意外とズバって言ってくるよね、ケイティ。まあ、その後にちゃんとフォローしてきていたけどさ。もうちょっと俺の実力を高めに見積もってくれても良かったのよ? いや、期待されたらされただけ気まずい雰囲気になるだけだと思うけれど。
若干凹んでいると……いきなりケイティが俺の付けていた手袋と魔導書を取り上げてきた。