出来損ないの転生魔術師〜三千年の時を越えて俺に会いに来たエルフがいるって本当ですか!?〜 作:☆あきつしま☆
「――おい! いきなり何をするんだ! 俺はそれが無いと魔術が起動できないんだぞ!」
「ご主人様。それがそもそもの間違いなのです。あなたは生まれ変わったとは言え、『魔力の型』は三千年前に生きていた天才魔術師アイゼア様と全く同じもの。これについては後で説明しますが……少し魔術を使ってみますね」
そう言ってケイティが俺の手袋を付けて、全く同じ魔術を起動する。
「《フラッシュ》!」
すると……俺みたいにギリギリ成功したというような感じになった。
……あれ? ケイティって魔術が得意そうな感じがしたんだが……もしかして、俺と同類なのか?
なんてことを思っていたら、手袋と魔導書を律儀にも俺のカバンにしまった後、『光よ、我が道を照らし導け!』と、長い詠唱を唱えて……再度ケイティが魔術を起動した。
瞬間。太陽の光がさんさんと降り注いでいる明るいグラウンドが、ケイティの起動した魔術の光で真っ白に埋め尽くされ……俺は何も見えなくなった。
「どうですか……って、あ! す、すみません! この魔術を直接見たらしばらくの間目がおかしくなって何も見えなくなるんでした! ご主人様、大丈夫ですか!? ああ! 周りの皆さんにも影響が……!」
俺の顔をパンパンと叩いてきて心配してくる。
……いや、その顔を叩く動作は意味が分からないんだが……
しばらく何も見えない状態でじっとしていたら、徐々に視界が回復してきて……ようやくケイティの心配そうな顔が見えてきた。
「……よ、よかった……光が戻ってきた……。はぁ……全く、次からは気をつけろよ? で、さっきのは一体何だったんだ? 詠唱の長さからして、大昔に流行っていたとされる魔術なんだろうが……」
教科書に書いてあったことを思い出しながら、ケイティに聞く。
彼女は『すみませんでした!』と謝りながらも安堵したような顔をし、詳しい説明をしてきてくれた。
「ご主人様の仰るとおりです。先程、私が起動したものは三千年前に元ご主人様が開発した魔術で、現代魔術の基礎にもなっているものです! すごいですよね! ……コホン、興奮しすぎました。話を戻しますね。先程見て頂いたように、手袋をして魔導書通りの魔術を唱えたときと、手袋無しで三千年前の魔術を唱えた時。それぞれで魔術の威力が全然違ったと思います」
「確かに全然違ったな」
俺は先程の魔術を思い出しながら首肯する。
「ですが、先程の二つの魔術は本質的には同じ魔術なのです。『フラッシュ』は、私が唱えた魔術を現代版にアレンジしたもので、違いと言えば、詠唱の長さくらいなのです。皆さんも手加減しなければあれくらいの威力は出せると思います」
ケイティが見解を述べてくる。
なる……ほど……。まあ、三千年の知識を持っている彼女が言うのだから、そうなのだろう。
そこは分かったが……
「なんでケイティは手袋をして魔導書通りの詠唱をした時は、魔術をろくに使えなかったんだ?」
これが疑問だった。彼女は魔術を使えないわけではない。むしろ、あそこまでの威力がある魔術を使えたのだ。しかし、あのときは全く使えなかった。『なんでだ?』となるのは普通だろう。
それについてもケイティが解説をしてくれる。
「その質問は、先程言った『魔力の型』というのが関わってくるのですが……、まずは魔術の歴史をサラリと述べますね。今から五百年ほど前でしょうか。このような手袋をつけて、元ご主人様が開発した魔術を少し短縮して詠唱する、いわゆる高速詠唱が流行りだしました。ちなみに、当時は今のものよりも詠唱は少し長かったです。それで、私もいつか会えるご主人様を驚かそうと高速詠唱の技術を会得するために、五十年ほど頑張ったのですが……結果は駄目でした。私ではこの詠唱が出来なかったのです。手袋が邪魔なのかと思い、手袋無しでも試してみましたが、やっぱり駄目でした」
ケイティは残念そうな顔をする。
……五十年頑張ったって……根気ありすぎだろ。怖えよ。しかも会えるかどうかも分からない主人の生まれ変わりを驚かせるためとか……何処まで一途で健気なんだよ……
俺のケイティへの好感度が上がる中、彼女は話を続ける。
「それで、なぜ私だけ高速詠唱が出来ないのか考えていたのですが……ふと、ある仮説を思いついたのです。それが『魔力の型』というものです。これは昔から知られていたことですが、魔術師が使う魔力には型というものがあり、それは千差万別、唯一無二のもの。分かりやすく例えるなら、血液型みたいなものでしょうか。厳密に言えば違うのですが」
ケイティは近くに落ちていた小石を拾い、それを使って地面に絵や文字を書いて分かりやすく説明してくれる。
……血液型のキャラクターがめちゃくちゃ可愛い……
「動物は時と共に進化していくものであり、人間もその例外ではありません。つまり、三千年の時を経て、魔力の型も進化して変わっていったのでは? というわけです。元ご主人様の魔術は、三千年前の人々の魔力の型に合わせて作られていました。しかし、時が過ぎるにつれて魔力の型が進化して変化し、人々はその魔術を使えなくなっていきました。そこで、新しい魔術が開発されて……時が経つとまた使えなくなって……また新しい魔術が開発されて、使えなくなって……というような感じで何度も何度もそれが繰り返されて、現代のような魔術になったのではないかと、そう考えたのです。もちろん、かなり穴のある考察だとは思いますが、ご主人様と私が現代の魔術を使えない理由も一応説明できると思います」
ふむふむ。
なんというか、ものすごく難しい話だったが……
「要点だけまとめると、俺達はどうあがいても現代の魔術は使えなくて、三千年前の魔術を使うしか無いと、そういうことか?」
「……ものすごくざっくりですが、その通りです。三千年の時を経て進化した今の人々の『魔力の型』に合うように作られたのが現代魔術ですので、私達三千年前の型をもつ人では使えません。分かりやすく例えるのであれば……そうですね……鍵と鍵穴を思い浮かべてください」
「……うん、思い浮かべたぞ」
「ありがとうございます。それで、最近の鍵穴と鍵ってかなり複雑な構造をしていますよね。それが現代魔術と現代人の魔力の型だと思ってください。一方、昔の鍵穴と鍵はかなり簡素でしたよね? それが三千年前の魔術と魔力の型です」
……なかなか分かるのか分からないのか微妙な例えをしてくるなぁ……
でも、なんとなくケイティの言いたいことは分かった。
「まあ、あれだよな。鍵穴と鍵はそれぞれ二つで一つになっていて、どちらかが違ってくると上手く噛み合わなくなると、そういうことだな?」
「そういうことです。ただ、今の例えのように、昔の魔術が劣っていて今の魔術が優秀だ、とかそういう話ではないです。確かに殆どの面では現代魔術が勝っていますが、一部は元ご主人様の魔術の方が優れているところもありますから! 結論としては、ご主人様が魔術を使えなかったのは魔力の型が現代魔術に合っていないのが原因で、三千年前の魔術であれば使えるはずです! なので……今からはそちらの魔術を勉強していきましょう!」
ケイティがエイエイオー! としてくる。
俺も、今まで魔術が使えなかった理由が分かって気分が上がっていたので、一緒になってエイエイオーをやっても良かったのだが……止めておいた。
高校生にもなってそれは恥ずかしいもんな。え? ケイティはどうなのかって? 可愛いからいいんだよ。