出来損ないの転生魔術師〜三千年の時を越えて俺に会いに来たエルフがいるって本当ですか!?〜 作:☆あきつしま☆
『カンカンカン』という何かを工事するうるさい音で俺は目が覚める。
「……う……うぅ……なんかものすごく熱くて死にそうな感じの夢か何かを見ていたような気がする……」
ぼんやりとした頭で目を開け、体を起こし……周りを見る。しかし、俺の目に飛び込んできたのは、辺り一面真っ白な景色のみだった。……いや、訂正しよう。後ろを振り向いてみたら、大きな穴と、そこを鉄の板か何かで塞いでいる男が一人いた。だから、真っ白な景色のみというのは間違いだな、うん。
「って違うだろっ! おい、なんだここは!?」
一人ツッコミを盛大に入れる。
おかしい。おかしいぞ。
「俺はさっきまで何を……あっ。そういえば、ケイティと魔術訓練を受けていたはずだ。それで――」
「それで、君は自分で起動した魔術の餌食となって死亡したね」
俺の独り言に、さっきまで穴を塞いでいた男が言葉をかぶせてきた。彼はどうやら工事を終えたらしい。仕事が早いですな。
しかし……なんとも古臭い、というか時代錯誤な服を来ている奴だな……。でも、何故か俺と顔が瓜二つで……声も一緒じゃん。どうなってんだ? まあ、今はそんなことどうでもいいか。それよりも、彼は今何といったんだ?
「俺が死んだって?」
「そう、君は死んだのさ。でも君が悪いんだぞ? 魔術の威力をろくに考えようとせず、表面だけの記憶を頼りに魔力をあんなに使って魔術を起動したんだから。あの魔術でも僕が、いや一部記憶がある君が使うとなると殺傷能力は結構あるんだからね? だからケイティはかなり遠くに行って避難していたのに……。君の場合は、ああなって当然さ」
男はやれやれといった顔をする。
普通、こういうことを言われたら嘘だと疑ってかかると思うんだが……何故か彼の言っていることは本当だと思ってしまう。いや、おそらく本当なんだろう。だって……
「なあ……あんたって……俺が生まれ変わる前の『天才魔術師アイゼア』とか言われていたやつか?」
「おお! よく分かったね! そう、僕が『天才魔術師アイゼア』さ! まあ、もう過去の話だけどね。いやー、まさか君が言い当ててくるとは思っていなかったよ!」
嬉しそうな顔をしながら肩をバンバンと叩いてくる。
ケイティもそうだったが、三千年前の奴らってスキンシップをすぐにとってくるよな。
しばらくして。落ち着きを取り戻してくれた彼は俺に話を振ってきた。
「君が疑問に思っていることを答えてあげよう」
「詐欺師みたいなことを急に言い出すんだな」
「……今の僕は詐欺師よりも怖いぞ? だって、君の今までの記憶を全て見ているんだから。あと、心の中も覗いたりできるぞ? まあ、そんなに警戒しないでくれ。僕は君の味方さ」
うさんくせぇ、と思いながらも黙って彼の話を聞くことにした。
「まずここは何処か? という疑問にお答えしよう。ここはそうだな……君の頭の中に存在している異次元空間とでもしておこうか。厳密にはそんなものは無いんだけど、説明が面倒くさいからね」
……早速説明放棄とはいい度胸をしている。まあ、いざ説明しようとすると面倒くさくなるのは分かるけどな。
「次に、さっき僕が塞いでいた穴は何? という質問にお答えしよう。これは僕の記憶につながる穴さ。いつもは今みたいに塞がれているんだけど、君に掛けられた記憶の封印が解除されると穴が出現、というか破られて僕の記憶を覗くことが出来るようになる。といっても、今の君が覗けるのは表層部分のみだけどね。あー、あれだね。僕たちが今いる場所は、僕の記憶を司る場所と言っても良いかもしれないね」
……なるほど。いや、なるほどじゃないんだけど……なるほど。
というか、穴の塞ぎ方が鉄の板って……もうちょっと何かなかったのか? 封印ガバガバすぎだろ。まあ、良いんだけどさ。
「そして一番の疑問である、なぜ君がここにいるのか? という質問にお答えしよう。それは……僕にも分からない」
「……は?」
「いや、そんなに凄まれても困るよ。本当に分からないんだから。ただ……君が死んだのは本当だぞ? といっても、ケイティが大慌てで蘇生魔術を使ったから事なきを得ているけどね」
「……そ、そうか……」
なら大丈夫だな。安心安心!
「……え!? ケイティって死んだ人を蘇生できるのか!?」
「ワンテンポ遅いリアクションだね。まあ、その通りさ。ケイティは世にも珍しい蘇生魔術を使うことが出来る。といっても、その魔術には色々制約があってね。『死後一時間以内に死者と肌を重ねなさい』とか『魔力を所定量死者に注ぎ込みなさい』とか、『その死者のことを愛していないと蘇生ができない』とか。挙げたらきりがないんだけどね。まあその制約を乗り越えて君のことを蘇生したらしい。いやー、流石はケイティ。僕の、そして君の自慢の嫁だよ。アハハハハ!」
彼の笑い声が真っ白な空間にこだまする。
……いや、笑い事じゃねえよ。俺、生き返ったとはいえ死んだんだぞ? しかも『フラッシュ』の類似魔術で死んだんだぞ!? もう生きて帰ってこれないくらい恥ずかしいんですけど! あと、ケイティはまだ俺の……。もとい! ケイティは俺の嫁じゃないから!
「おいおい。生きて帰ってこれないとかそんなことを思うんじゃない。ケイティはきっと泣きじゃくりながら君のことを蘇生していたと思うぞ? 全く、彼女との約束を忘れたのかい? 『ずっと一緒にいる』って言ったんでしょ? なら、帰らないと。というか、あんなにあっさり、しかも目の前で死ぬとか……ケイティ、絶対にトラウマになっていると思うよ? 目覚めたら『約束を破ってまた死ぬなんて信じられません!』とか言いながらビンタを食らわせてくるかもね。まあ、アフターケアはちゃんとしてあげること。いいね? あと、君は僕の生まれ変わりなんだから、ケイティが僕の嫁だったら君の嫁でもあるわけだ。分かったかい?」
ポンポンと俺の背中を叩いてくる。
(……良いこと言っているんだけど……俺の心をリアルタイムで読まないでほしいんですよね。あと、圧がすごい。有無を言わせずケイティを自分の嫁だと認めろ、ってそう言ってきている気がする。怖いよこの人!)