出来損ないの転生魔術師〜三千年の時を越えて俺に会いに来たエルフがいるって本当ですか!?〜 作:☆あきつしま☆
「ご主人様、あの後どうなったか知っていますか? グラウンドはご主人様が起動した魔術によって半壊。生徒は当面グラウンド使用禁止になりました。それと、ご主人様がこの騒ぎを起こした犯人ということで、責任をとって弁償の上退学。なんと学院を去ることになりました。ちなみに私が弁償代を払ったので金銭面は安心してください。それと私も退学届を出しました。で、一番ひどかったのがご主人様、あなたです! あんな威力の魔術を起動したのですから、自分で障壁や何かを展開していると思えば……まさかの無防備! 生身で魔術とタイマンを張っていたではありませんか! しまいには肺が熱になられて機能停止。無事死亡という流れですよ! 目の前でご主人様が息を引き取るところを見た私の気持ちが分かりますか!? ご主人様を蘇生してからあなたが目覚めたこの時まで四日間。一睡もできずに、しかもご飯もろくに喉を通りませんでしたよ! おかげで私は死にかけです! 睡眠の魔術を使っても、ご主人様の死ぬ瞬間が脳裏をよぎって眠れませんし、ご飯を食べようとしても、ご主人様の死に際の声が聞こえてきて吐いてしまいました! どう責任とってくれるんですか!? ご主人様が考えなしに魔術を使わなければ、こんなことにはならなかったんですよ!? 何を考えてあの魔術を使って突っ立っていたんですか! 信じられません! でも、無事蘇生できて良かったです! おかえりなさいませ! ただ、次も死んだからって蘇生するとは限りませんからね! 私が愛想を尽かせてそのまま放って置くかもしれませんよ! そんなことは絶対にありえませんけどね! 何が何でも蘇生しますけどね! それで私に何か言うことはないのですか!? さっきからずっと黙ってますけど! ちゃんと話を聞いてくれてありがとうございます!」
現在、俺はケイティとの共同部屋の床の上で正座をさせられて、彼女からお説教をされている。
なにか変な夢を見たような気がすると思いながら目を開けて起き上がったときは、ケイティは大泣きして抱きつきながら喜んでいたのだが……時間が経つにつれてお説教が混じってきて……いつのまにか今みたいに説教十割になった。いやー、足がしびれて痛いです。というか、怒るのか感謝するのかどっちかにしろよ。いや、彼女らしいといえば彼女らしいが……どっちを拾ってあげたらいいのか分からなくなるだろ?
「……まずは、ごめん。あー、ず、ずずずずっと一緒だって約束したのに……先に逝って? しまって……」
「本当ですよ。まさか私を置いて死後の世界に逝くとは思いませんでした。予想外です」
プンプン! と怒ったような顔を見せる。
……可愛いが……怒っているんだもんなぁ……。
「あと……心配をかけてごめん」
「そうですよ! 私がどれだけ心配したと思っているんですか! 蘇生魔術なんて知識にあっただけで今回初めて使ったんですからね! 成功する保障なんて無かったんですよ!?」
……そうだったのか……。なら、本当に相当な心配をかけてしまったらしい。
「……それと……ありがとう。俺が死んでいる間に色々してくれていたようで……」
「そうですよ! もっと私に感謝してください! ご主人様の蘇生に加えてグラウンドの弁償代の支払い、退学をなんとか阻止するための交渉。これは失敗してしまいましたが……。それと意識が戻らない間のお世話などなど、本当に大変だったのですからね! でも、意識が戻ってよかったです! 蘇生したのに魂が何処かへ行っていると気づいたときは心臓が止まるかと思いましたが……なんとか体に戻すことが出来ました」
……え? 俺、魂どっかに行ってたの? 怖すぎなんですけど!
しかし、ケイティは本当に何者なんだ? 死んだ人を蘇らせて、しかも魂も元の場所へと戻すことが出来る。只者じゃないぞ……。でも、今はそれを聞くのはよそう。話がずれるし、もっと言うべきことがあるだろうし。
俺は咳払いを一つして……ケイティに対する誠意として、俺がもてる最強の手札を切ることにした。
「色々迷惑もかけたし心配も掛けた。トラウマで睡眠も食事も取れない。そんなケイティへの謝罪とお礼を兼ねて……お前の頼みを一つ、聞こう。一つだけだぞ? いや、それだけだと足りないかもしれないが……いかんせん俺は学生……では無くなったんだっけ? まあ、若い男だ。出来ることには限りがあるし……何個もお願いされたら、全てをこなすのが難しくなるだろうし……。だから、一つだ。でも、その一つに全身全霊をかけよう。どうだ?」
自分としては良い提案だと思ったのだが……ケイティは不満そうな顔だ。
……おかしい、何が気に食わないと言うんだ? 結構美味しい案だと思うんだが……
頭を捻っていると、ケイティが
「『なんでも』一つ、お願いを聞いてください」
と言ってきた。
……ほう、『なんでも』とな?
なるほど……俺が露骨に回避していたところを付け加えてきたな。
いや、だってさ。『なんでも』は危険すぎるでしょ。下手したら『なんかウザいのでもう一回死んでください』とか言われるかもしれないんだぞ? いや、ケイティはそんなことを言うとは思わないけどさ。
しばらく悩む。悩むが……ケイティから発せられる圧が有無を言わさないものになってきていたので……仕方なく俺が折れることにした。
「……分かった。ケイティのお願いを『なんでも』一つ聞く。だからこれで……今回のことは許してくれないか? 今度からは気をつけるからさ。な?」
「分かりました。でも、次は無いですからね? 次死んだら……お説教二時間に加えて『ご主人様が私の言うことを何でも聞く券』を十枚もらいます。いいですね?」
「……わ、分かった……」
次は無いと言いながらも、本当に起こってしまったら許してあげる、というような感じだったが……まあ、深くは突っ込まないでおこう。というか、また死ぬのは勘弁願いたいし。