出来損ないの転生魔術師〜三千年の時を越えて俺に会いに来たエルフがいるって本当ですか!?〜 作:☆あきつしま☆
そんな感じで綺麗に話がまとまったところで俺は立ち上がり、体をさっぱりしたいということでお風呂場に行こうとしたのだが……ケイティに呼び止められる。
「ご主人様、どこへ行こうと言うのですか?」
「……え? お風呂だけど……」
「私のお願いを聞いていないのに? それに、次は無いと言いましたよね?」
まさか……お風呂にケイティを置いて一人で入るのもだめになったの? この前までは許してくれていたじゃん! 束縛がすごいことになってますよ!
しかし、ここで変なことを言うとまたケイティが怒りを爆発させてしまうかもしれない。
そういうわけで、俺はお風呂場に行くのを一旦止めて……ケイティのお願いを聞くことにした。
「で、お願いってなんだ?」
「……いえ、今は特にありません。この『ご主人様が私の言うことを何でも聞く券』の有効期限は指定されていませんし。これは大事に大事にとっておいて、いざという時に使おうと思います」
……ふむ。まあ、ケイティがそれで良いなら俺からは特に言うことはない。
「そうか。じゃあ俺はお風呂に入ってくるから。ケイティのことだから、俺が眠っている間、水で濡らしたタオルとかで体を拭いてくれていたんだろうが……やっぱり一回綺麗にしたいからな」
時計を見ると今は朝の七時だった。なんだか今から風呂に入るのは変な感じがするが……朝シャンというのも悪くないだろう。というか、めちゃくちゃ健康的な時間に起きたんだな。
そう思いながらも彼女に軽く手を振って俺は風呂場に――
「ご主人様。二度目は無いと言いましたよね?」
ケイティが後ろ襟を掴んでくる。
……なるほど。さっきのはなにかの間違いではなかったわけだな。お風呂に一人で入るのも『ケイティを置いていった』と判断されるわけね。なるほどなるほど。これは不味いですな。ケイティには至急思いとどまってもらわないと。
「……ケイティ。いくらなんでもこれは――」
「口答え……するおつもりで……?」
ドスの聞いた声、というかケイティから発せられたとはとても思えない声が後ろから聞こえてくる。
……おや、この家に第三者が侵入しているようですよ? オルソックさん、警備はちゃんとしてもらわないと困りますよ……あははは。
「…………いやー、口答えと言いますか……意見具申と言いますか……」
「却下します」
「……でもですね? この前もお伝えしたと思うのですが、自分は若いとはいえ男ですし、思春期ですし、性欲もありますし、なにか間違いが起こる――」
「――私の考えに変わりはありません。あまりしつこいと……」
ケイティの圧が恐ろしすぎて後ろを振り返ることが出来ず、かつ敬語になって話していた俺だったが……『あまりしつこいと……』の後にピトっと背中に何か固いものが押し付けられて背筋が凍る。
……な、なんだ……ケイティは何を背中に押し付けてきて……ま、まさか刃物――
「あまりしつこいと、私のこの人差し指で麻酔弾を撃っちゃいますからね!」
ケイティが可愛らしい声で『バキュン!』と言う。
……な、なんだ……指だったのか……
ほっと胸をなでおろしながら『おいおい、冗談は程々にな』と言って後ろを振り返ると……ケイティがものすごく暗い笑みを浮かべながら異次元収納空間に銃らしきものを仕舞っているところが見えた。
…………どう見ても、拳銃だったんだが……下手に追求するとまじで撃たれそう……。いや、まさか『ご主人様』を撃ったりはしないと――
「……見ましたか?」
ケイティが、暗い笑みを浮かべたままそんなことを聞いてくる。
あわ……あわわわ……ケイティが……ケイティがおかしくなった! 前までこんな表情で、こんなトーンの低い声で俺に話しかけてこなかったのに! お、俺が悪いのか!? 俺が死んだからこんな事になったのか!?
お、おおおお落ち着け俺。これはあれだ。アニメの知識でいくなら今のケイティはおそらくヤンデレになっているんだ。大丈夫、ヤンデレは刺激しなければ殺しに来たりはしないから。大丈夫、大丈夫なんだ。
俺は必死に動揺を抑えて『み、みみみみみふぇましぇん』と噛みまくりながら首を激しく横にふる。
そんな俺を見て、ケイティはすっといつもの顔に戻り『では、ご主人様のご要望通りお風呂に行きましょうか!』と言いながら俺の手を引き……大浴場へと歩みを進め始めた。
……て、手を握られても……体の震えが止まらねぇ……