出来損ないの転生魔術師〜三千年の時を越えて俺に会いに来たエルフがいるって本当ですか!?〜 作:☆あきつしま☆
「……こ、これは……詠唱省略……!?」
体が動かなくなっただけで他は自由に動かせるらしいケイティが驚愕する。
詠唱省略。これは別名無詠唱とも呼ばれる最先端の魔術で、いちいち詠唱しなくても魔術が起動するというよく分からないがすごいやつだ。
この国でもトップクラスにすごい人たちが就く『宮廷魔術師』という職業があるのだが、その人達の中でも一握りの人しかこの詠唱省略はできないとされている。まあ、とにかくすごい人が使うすごい魔術なのだ。頭が悪い説明で申し訳ないが。
しかし……なんでそんなにすごい人が俺の名前を知っていて、ケイティから隔離しようとするんだ? 俺、そんなすごい価値のある人間じゃないぞ。
動きが止まって完全に無力化されたケイティを横目に、小柄な女性は俺のところまで来て……ひょいっと俺の体を抱きかかえた。
「アイゼア君。もう大丈夫。怪我は私が治すから」
「ちょっと! 私の質問に答えてください! あとご主人様を連れて行くなんて……許しませんよ!」
「……あなたの言う通りさっきのは無詠唱魔術。以上。あと、あなたの許しを請う必要はない。ほら、アイゼア君。別れの言葉を」
「ぐぎぃいいいいいいいい!」
ケイティが発狂する。
いや、まじでこのケイティおかしいし怖すぎ。昔の俺は、このヤンデレケイティをどうやって制御していたんだ? まさかそのまま尻にひかれていたんじゃないだろうな? だとしたらヤツもヤツでおかしいわ。てか、三千年前だとこれが普通なのかな? そうなのかな?
あと、ナチュラルにこの訳の分からん女性に連れて行かれようとしているが大丈夫なのか? 悪人っぽい感じではないし、彼女からは懐かしい感じがするから何も起こらないとは思うが。てか、顔が見えたら分かるんだが……フードを顔半分のところまで被っているから全く見えないんだよなぁ。あとから顔見せてもらおう。
色々な不安を抱えながらも俺は別れの言葉、ではないがケイティに声をかけることにした。
「ケイティ。また戻ってくるから。な? ちょっとお互い? 頭を冷やす必要がありそうだし、俺もちょっと体を休ませないと――」
「――許さない! 許さないですよ! ご主人様! 戻ってきたら――八つ裂きです!」
「だ、大丈夫なのか? このまま俺がケイティと離れたら街で殺人とか起こさないよな?」
「大丈夫。すでにこの家には私とアイゼア君以外出入りできない結界を張ってある。これは絶対に壊せない。だから彼女というモンスターはこの家という名の檻からは出られない」
「な、なんですって!? 私がモンスターですって!? あなたいい加減にしてくださいよ! 私はエルフです! ご主人様のエルフです!」
「あなたはそのご主人様を殺そうとしていた。やっぱり貴方はおかしい」
「い、いわせておけば……! 私は――」
「――もうややこしくなるから二人共何も言うな! ケイティ。俺はちゃんと戻ってくるから! ほとぼりがさめたら戻ってくるから! だからおとなしくしておくんだぞ? 分かったか?」
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない」
怨念が混じったような言葉を聞きながらも、俺はこの小柄な女性に抱きかかえられてケイティとお別れをして――
「ここが私とアイゼア君のお家。遠慮せずに過ごして」
ケイティ宅の隣にあったこれまたどでかい屋敷へと案内された。
……おや?