出来損ないの転生魔術師〜三千年の時を越えて俺に会いに来たエルフがいるって本当ですか!?〜 作:☆あきつしま☆
二人はテーブルに料理を置いた後、俺とは対面の椅子に座って……俺をマジマジと見つめてくる。
「…………」
「…………」
「…………」
……あ、自己紹介は無しですか。これは俺から聞かないと何も話が進まない感じですね。なるほど。
「……あー、サラ。お前の隣に座っている人は誰だ?」
「本人に直接聞いて」
「なるほど」
「…………」
犬耳の女性はニコニコ? と俺を見てくるだけだ。ちらりと見えるしっぽはフリフリと左右に揺れている。
「えっと……その、あなたの名前を聞いても?」
「人に聞く前に、ちょっとはその足りない頭で考えてみてはどうかしら? 昔の記憶が無いからって甘えないでちょうだい」
ニコニコ? 顔でそんなことを言ってくる。
なるほど。今の話し方で分かったぞ。彼女のニコニコ顔はSM系の女王様がするような嗜虐的な笑みだったんだ。つまり、彼女はS系の人だということだな。
まあ、言葉とは裏腹にしっぽは嬉しそうに今も左右に揺れているんだけど。
あと、どうやら彼女は俺のことについて詳しく知っているらしい。
仕方ない。言われたとおり一度は自分で考えてみるか。
犬耳で脳内検索。
……該当はアニメとエロ動画のみ。
しっぽで脳内検索。
……該当はアニメとエロ動画のみ。
巨乳お姉さんで脳内検索。
……該当はアニメとエロ動画のみ。ケイティが微妙にヒット。
結論が出た。
「……ふむ。もしかしてアニコスのエロ動画に出ていた女優さんですか?」
「……アイゼア君。あなたとんだバカね。あと真顔でよくそういうことを言えるわね。少しは恥じらいを知ったらどうかしら? どうせ毎日毎日そういう動画を見て楽しんでいたんでしょ?」
「…………い、いや……そんな頻度では――」
「あ、言い忘れていたわね。私は神様なの。だからあなたの日常行動は全て把握しているわ。で、もう一度聞くけど、いつもいつもそういう動画を見ていたのよね?」
謎の圧がかかってくる。
……いや、なんで俺こんな羞恥プレイさせられてんだ……?
てかこの人が神様? おいおい、頭がおかしいぞこの人。神様って存在が確認されていない、よく分からない存在じゃないのか?
仮にそれが事実だとして、なんで神様が一庶民でしかない俺を監視してんだよ。おかしくないか?
これはあれだ。何かの罠だ。誘導尋問だ。従ってはいけない。
「俺がそんな動画を見てるわけないですよ。これは学校の友だちが俺に話していた内容を思い出して言っただけですし」
「……なるほどね。やっぱりあなたとんだバカね。昔のアイゼア君は私が神様だということを一瞬で見抜いて、それから何もかもゲロってくれたのに。……まあ、いいわ。神様である私に嘘をついたということで、アイゼア君には天罰を与えます。そうね……今から十分間豚になって貰うわね。……はいドン」
謎の女性が嗜虐的な笑みを浮かべながら俺に人差し指を向けてきたと思えば……ポンッ! という音とともに俺の体が煙に包まれて……
「ブヒッ! ……ブヒィ!?」
俺はものの見事な豚になっていた。比喩ではない。マジモンの豚である。
「ブヒィ! ブヒヒヒッ!」
「あらあら。アイゼア君(豚)が何やら慌てているようね。ふふ……うふふふふ……アイゼア君をおもちゃにするこのお遊び。なんて気持ちがいいのかしら。やっぱり私のペットにはアイゼア君、あなたがふさわしいわね。サラもそう思うでしょう?」
「……それは分からない。でも、豚になったアイゼア君、可愛い。撫でても良い?」
「ええ、良いわよ。所有権は渡さないけど触らせてあげる」
「ありがとう、ノノ様」
サラが口角をミリ単位で上げながら俺の頭や体を撫でてくる。
今!? このタイミングで笑うの!? ちょっとおかしくない!?
てか、俺、この『ノノ』とかいう人のペットにされそうなんですけど!?
「ブヒヒヒ! ブブブヒヒ!」
「何を言っているのかさっぱりね。さっぱりだから勝手にしゃべるわね。あなたを豚にしたのは、私の『神様の力』よ。魔術でも見た目だけであれば豚にすることは出来るでしょうけど、今の貴方は豚そのもの。見た目を変えたのではなく、細胞そのものから豚にしたの」
「……アイゼア君。ノノ様の言っていることは全て事実。ノノ様は犬神様。この国を裏から守っている正真正銘の神様。ノノ様に逆らうと天罰が下る。今のアイゼア君みたいに」
ノノという女性は豚になった俺のケツを叩きながら、サラは優しく体と頭をナデナデしながら説明してくれる。
……天才のサラがそう言うのであれば……そうなんだろう。ああ、分かったさ、信じるさ。この楽しいおもちゃを見つけたときのような表情をしている女性が神様だってことをな。
だから……まじで豚から人間に戻してくれよな!
◇
十分後。
ノノという神様は俺を豚から人間に戻してくれた。言ったことは守ってくれる人らしい。
ふぅ、良かったよかった。
で、元に戻してもらったことだし、気になっていたことを質問してみるか。
「あの、質問しても――」
「駄目よ。まず私のさっきの質問に答えなさい」
彼女が俺の話を遮る。
……さっきの質問って……毎日エッチな動画を見ているってやつか?
俺は『言わなくていいだろ』という目線を送る。神様は『言いなさい』という目線を返してくる。
『いや、知らないほうが良いって』という目線を向けると、『言わないと豚にするけど?』と口で言ってきた。
……いや、これを聞いて神様にメリットある? てか、知ってんだろ? ただ……また豚にされるのは勘弁願いたい。
仕方ない。白状するか……。
「……毎日見てました」
「何を?」
「……エッチな動画です」
「一日何回くらいの頻度で?」
「…………三回です」
「そう。じゃあ、貴方の質問を聞いてあげるわね。どうぞ」
「…………」
くそっ! なんでこんなに恥ずかしいことを言わなきゃならねえんだよ! てかスルーすんなよ! なにかコメント言えよ!
神様は別に興味ない、みたいな顔をするし、サラは絶対零度の目で俺を見てくるし……まじでここから逃げ出したいんですけど!
しかしながら、今の俺には帰る家がない。ケイティのところに行こうものなら殺されかねん。結局はここにいるしかないのだ。
俺は色々と諦めた目をしながら、神様に聞きたかったことを聞くことにした。
「……神様は――」
「ちょっと待って。私のことを神様と呼ばないでくれるかしら。アイゼア君には違う呼び方をしてほしいのだけど」
神様はしっぽのフリフリを止め、若干不満げな顔を俺に向けてくる。
ふむ。違う呼び方とな? うーん、神様以外となると……
「ノノ様ですか?」
「違う。あと敬語も止めてくれるかしら。アイゼア君が私に敬語を使うのは違和感でしかないから」
「……あ、はい」
注文が多い神様だな。まあ、別にいいんですけどね。
しかし、ノノ様でも駄目かぁ。うーん……
「犬神様?」
「違う」
「お犬様?」
「違う」
「ワンちゃん?」
「はっ倒すわよ?」
「……ペチ?」
「は?」
俺が名前を挙げるたびに神様の機嫌がどんどん悪くなってきているですけど、もうそろそろ正解を当てないと豚にされる感じですかね?
しかし、こうなればもう残すはあれくらいしか残っていないが……うーん、言ったら速攻豚にされそうなんだよなぁ……。
ただ、どうせこのまま行くと豚にされそうだし、ダメ元で言ってみるか。
俺は恐る恐る名前を呼んでみる。
「……ノノ?」
すると神様の犬耳がぴくん! として……止まっていたしっぽが勢いよく左右に揺れ始めた。
……ほう、なるほど。これが正解か。
「…………ま、まあ特別にアイゼア君にはその呼び方を許してあげるわ。昔の貴方も私のことをそう呼んでいたのだし。普通なら不敬罪で速攻天罰レベルだけど、仕方ないから許してあげるわ。寛大な私に感謝することね」
口ではそう言っているが、しっぽの揺れ方が尋常じゃないぞ、ノノ。もうちょっと抑える努力をしたらどうなんだ? いや、これはこれで分かりやすいし可愛いから良いんだけど。