今作もよろしくお付き合いください。
どうか皆様に楽しんで頂けますように。
刻まれた淫紋 上
最初にその娘の姿を見た時思った事は母に似ている、だった。もっとも私は母に会ったことはない。母は私を産み落とす時、文字通り命を賭けて私をこの世に産み落としてくれたのだ。だから私は小さなロケットに入っている肖像画でしか見たことがない。父に仕えていた老執事の話を聞くに随分と聡明な女性であったらしい。
父についても同じだった。父はこの国では誰もが知る大貴族の世継ぎとして生まれながら、貴族として安穏とした生活を送ることを好まず、花騎士を率いて戦う騎士団長となった。周囲の人々に話を聞くに団長として相当有能だったらしい。今でも父を慕う元花騎士は多いという話なのだ。
だがその有能さが仇となった。父は雲霞のような害虫の大軍と戦い、最後は避難する人々を守って率いる花騎士の半数とともに死んだ。だが父と亡くなった花騎士たちの奮闘のおかげで数多くの人々が害虫の被害から逃れることが出来た。まごう事なき英雄。それが私の父だ。
その後奮闘した父と花騎士達の功績を称え、図抜けた功績を挙げた花騎士と団長に授与されるために父の率いた騎士団の名前を冠した立派な勲章が作られた。当初はこの国の騎士団長と花騎士のみに授与されていたが、今日では所属する国家を問わず授与されており、授与された団長や花騎士は民衆を守り害虫と立派に戦った歴戦の勇士としてスプリングガーデン全土でかなりの敬意が寄せられる程だった。けして少なからぬ額の報奨金も付属する。
そして私がその娘と出会ったのもその勲章の授与式だった。女王の名において授与されるその勲章の授与式には残された血族として私が立ち会い手ずから勲章を授与することになっているのだ。
私は受勲に晴れがましい笑みを浮かべた娘の(つまり彼女は花騎士なのだ)楚々とした佇まい。そして凛とした雰囲気に心を奪われた。先に言ったように母に似た面影を持っているというのも大きかったかもしれない。
そして彼女と一緒に受賞した団長に嫉妬にも似た感情を覚えた。私には母の聡明さもそして父の勇敢さも遺伝しなかったからだ。私は父の功績と家柄に胡座をかき怠惰な日々を過ごす腐り切った大貴族に他ならないのである。
その日以来、私は娘の事ばかり思ってしまっていた。思えば思うほどその感情は歪み、いつしかどす黒い情念へと移り変わっていった。だが、その情念をどうやって充たせば良いのかは分からなかった。
私はどす黒い情念を途方も無く大きく膨らませながら悶々とした日々を送っていた。あれこれとあの娘に似た子を探し玩んではみたが、けして満たされる事はなかった。仕方のない事なのだと思うしかないと自らを慰めた。悪魔が実存すれば、とさえ思い込んでいた。もし悪魔が実存するのであれば、私は喜んで魂を売り渡すだろう。
悪魔に魂を売り渡すチャンスは思いの外早く訪れた。功績を挙げた者を慰労するために王宮で行われた宴席で、私はとある女性と知り合ったのである。あの娘も(ついでにあの団長も、だが)出席していた宴席であの娘に尋常ではない視線を送っていたのを見透かされたのかもしれない。
酔い覚ましと称して二人きりで連れ立って王宮のバルコニーに立つと彼女は私の内心とどす黒い欲望をはっきりと指摘した。あまりにも的確な指摘に私は何の反論も出来ずただ頷くことしかできなかった
そして彼女は私にとある取引を持ちかけた。彼女は言った。あの娘が邪魔だと。あの娘さえ居なければ私の想いが叶うのだと。
彼女は私に身を寄り添わせ、耳元で囁いた。貴方は私の言う通りに動いてくれるだけで良い。それだけで私は貴方にあの娘を好きなように好きなだけ弄ぶ機会を作ることができる。彼女はそう囁いた。
私に否応は無かった。こうして私は彼女と手を組んだ。彼女の要求は私の職権で容易に満たすことができるものだった。逆にそれだけでいいのかと訝ったほどであるが、彼女は暗い笑みを浮かべてこう言い放った。とにかくそれだけで充分なのだと。貴方は気にせずにもたらされるであろう楽しみのための準備に入るといい……
とにもかくにも準備は整えられた。既に私の職権において彼女の要求は充たされ、私の方の準備も万端に整った。後は全てが動き出すのを待つばかりなのである。
「一時的な派遣だから1ヶ月程度で戻ってこれると思うよ?だからあまり心配しないで欲しい。まぁそれまでは副団長のアネモネの言葉をよく聞いておくんだね」
早朝、騎士団宿舎の営門の前。旅姿の団長は心配そうな表情を浮かべるスノードロップの見送りに満面の笑みで笑いかけた。
「はい!いってらっしゃい団長さん!」
スノードロップもそう言って笑いかける。しかし直ぐに不安そうな表情を浮かべた。小声で話しかける。
「団長さんがいないと私、寂しくて仕方ないんですからね?」
そう言って団長の手をギュッと握って熱っぽい視線を団長に向けた。脇に立つナズナはその様を見て見ぬふりをしている。団長とスノードロップが相思相愛の仲であることはこの騎士団の中では知らぬ者のない事実だった。早く結ばれちゃえばいいのにね~とゴシップ好きの一部の花騎士たちが囁き合うほどであるから、実際に周囲も認めている仲であった。
「あのー団長様?そろそろ行かないと…」
団長補佐のナズナがおずおずと話しかける。団長とナズナはこれから地方へと向かうのだ。彼には戦力の低下した複数の騎士団の立て直しが命じられたのである。功績を挙げている騎士団長を最前線任務から一時的にせよ外すこと、これについては各部から異論が湧き上がったものの、戦力の向上が急務であると言う意見の方が勝った。王宮上層部が一枚噛んでいるという噂もあったが戦力の拡充と言う軍事的には真っ当な論拠があった為、すんなりと受け入れられたのだった。
「アネモネは…朝の掃除かな。こんな時も彼女らしいね」
この場にはいない代理指揮官のアネモネを気遣う言葉を団長は口にする。
「もう!アネモネさんは気を使ったんですからね!」
頬を可愛らしくぷくりと膨らませてスノードロップは言った。
「ああそうか、気を使わなくてもいいのにね」
団長は少しだけ頬を緩ませると、スノードロップの頬を両手で挟み込んだ。
「じゃあ行ってくるよ。お土産は何がいいかな?」
そう言って彼女の額に軽くキスをした。
「無事に帰って来てくれることが何よりのお土産ですよ!」
額へのキスに頬を赤く上気させながらスノードロップは呟いた。
「そっか、まあそうだな。じゃあ行ってくるよ」
そう言ってスノードロップの両手を握りしめ、別れの挨拶を済ませると快活な笑みを浮かべて団長はナズナと共に歩き始める。スノードロップはブンブンと大きく手を振って愛する団長を送り出したのだった。
「いってらっしゃい団長…」
早朝の訓練所を箒で掃き清めながらアネモネはそう呟いた。彼女も旅立つ団長を見送りたかったのだが、他の花騎士と同じようにスノードロップに気を遣ったのだ。
(まあ引き継ぎは済んでるし…それに今生のお別れというわけでもないし…団長とにかくタフだからナズナさんが食事のバランスだけ気をつけてくれたら何の心配もないかな)
彼女はそう独りごちながら訓練所を素早く掃き清めて行く。実際の所、団長不在の間代理指揮官に任命された彼女にはやるべき事が沢山あった。
(朝の掃除もこれからはしてあげられないかなぁ…私もそれどころでは無いでしょうし…)
アネモネは不満げに呟く。
(誰か代わりにしてくれると良いのだけど!)
即座に何人かの顔が思い浮かぶ。いずれも日常生活が怠惰な花騎士だった。代理指揮官の権限で朝の掃除を命令しても良いかも知れない。怠惰な生活態度を改める良い機会となるだろう。
(余り命令はしたくないけれど…緩ませるのもちょっとね…団長が居ないとすぐ気を抜いてしまうし…)
とも思っている。
「とにかく掃除を早く終わらせてしまわないと!」
アネモネは再び快活な調子で独りごちると手早く慣れた調子でゴミをちりとりに拾い上げると宿舎の中へと歩み去っていった。まだまだアネモネには成すべき事がたくさんあるのだった。
「やっぱり、団長さんがいないと寂しいなぁ…」
団長が旅立って行って数日後の夜。スノードロップは所在なげに宿舎の自室で長い夜に退屈を持て余していた。ベッドの上に腰を下ろし所在無げに足をブラブラとさせている。
団長不在の間は無理はしない、という代理指揮官のアネモネの方針もあってか、騎士団の活動はこのところ低調だった。もっとも、日常の活動である警戒パトロールはいつもと同じように行われていたし、街道上の警備や害虫の排除と言った通常のルーチンワークも何ら変わることがない。通常の騎士団ならそれだけでも重い任務だが、勲章を授与される程に鍛え上げられた精鋭騎士団だけあってルーチンワーク程度の行動なら低調と見なされるのである。
「団長さん何してるかな…寂しいな…会いたいな…」
ベッドに寝そべってスノードロップは天井を見つめる。だがどれほど思ってみたところで退屈が紛らわされる訳では無いし、早く寝ればいいものだがこんな時に限ってなぜか気が昂ぶって寝付けそうもない。
「団長さん…」
スノードロップはそう呟き、自分の体をギュッとかき抱く。こういう時に行うのはただ一つだった。害虫を打ち倒す為の花騎士ではあるが、害虫を相手取っていない時は年相応の少女なのである。
「団長さんがいけないんですからね…私を一人にするから…」
そう呟くと、スノードロップはゆっくりとスカートをたくし上げて行く。黒いストッキングに包まれた白い太ももと純白の下着があらわになる。そしてゆるゆると右手で太ももを撫でさする。くすぐったいような刺激が伝わり、体の中心部がキュンとする。
「いけないけど…眠れない…」
おずおずと右手を下着の上へと這わせて股間の中心部に中指をあてがいスリスリと上下に撫でさする。
「あ!やぁん!」
ストッキングと下着越しとはいえ陰部への刺激に体に電撃にも似た刺激が走り、思わず悦楽の声が上がる。さすがに誰かに聞かれてしまうといった事はないようだった。本当か嘘かは知らないが、花騎士の居室は随分と防音がなされているとのもっぱらの噂である。
なぜそうなのか、ということに関する事でまことしやかに囁かれている理由の一つに害虫との戦いで昂ぶった肉体を一人で慰める為にしっかりとした防音がなされている、という説がある。防音がしっかりとなされていれば、声をあげて自らを慰めても他人には聞こえないので恥ずかしくないという理由だった。
「…やだ…下着が濡れてきちゃった…」
中指で撫でさするうちにストッキング越しに下着と中指にわずかな湿り気が感じられる。少しずつ指の上下動のピッチが上がり始める。
「団長さんがいけないんです…団長さんがいないから…」
身体に悦楽が湧き上がり、スノードロップは瞳を甘く潤ませた。一度身体を起こし、ストッキングと股間の部分が少し濡れた下着を脱ぎ捨てると再びベッドに身を投げ、衣服を腰までたくし上げる。そして足をわずかに開き、今一度右手を股間へと這わせて行く。
「もう…こんなに…」
直接触れた自身の性器は既に蜜を潤沢に滲ませていた。おずおずと中指が膣口に触れると、更に激しい刺激が脳裏へと突き抜けた。
「一人エッチなんて滅多にしないのに…」
スノードロップは戸惑いの呟きを漏らしながら自身にも似て慎ましやかな大陰唇を指でなぞり続ける。なぞり続けると膣口が僅かに震えてかすかに開き、奥から透明な露がとろりとろりと滲み始め股間を伝ってシーツへと垂れ落ちる。
「ああ団長さん…」
スノードロップは瞳を閉じた。脳裏には愛しの団長さんが思い浮かぶ。
「団長さんの事を思うと…スノードロップはこんなエッチなことだってできるんです…」
スノードロップはとろりとろりと滲み続ける露を中指に絡め、膣口の上、興奮に可愛らしく顔を覗かせたクリトリスを中指で捏ねくりはじめた。
「やだ…いつもより感じちゃう…だめ…」
いつもより感じてしまう肉体にスノードロップは戸惑いを隠せなかったが、情欲を止めることが出来ない。一度中指をクリトリスから離し、思い切って衣服を脱ぎ捨てた。そしてもどかしくブラジャーも脱ぎ捨ててしまう。晒された乳房のピンク色の頂点は既に固くしこっていて、おずおずと左手の手のひらで頂点に優しく触れると、より高い悦楽の波が脳裏へと押し寄せた。
「ああん!」
身を捩らせ先程よりも大きな声を上げてしまうスノードロップ。
「ダメなのに…一人エッチが止められない…」
左手の指が乳首を摘み上げ、手のひらが乳房をこね回す。右手が再び股間へと伸びぷっくりとした敏感な肉芽を指で挟む。そしてそのまま膣口の周りをなぞる様に刺激する。
「ああ…すごくいい…いつもよりいっぱい感じちゃう!」
乳房や乳首、そして肉芽を刺激する指の動きに呼応するように膣口が蠢き、悦楽に慄き続ける膣からは興奮を示す雫が後から後から滲み出て、刺激を続ける右手の指をふやかしていく。いつのまにか周囲にはピチャピチャと言う恥ずかしい水音が立ち始め、体中に細かい汗が浮かぶ。
「ああ!だめ!もう…もう…私イッちゃう!イク~~!」
瞳を甘く潤ませ、スノードロップは体を仰け反らせ喘ぎ続ける。そして力強く肉芽と乳首を指ではさみ摘み上げた瞬間、膣口から雫をしぶかせて彼女は絶頂へと達したのだった。
「はぁはぁ…いっちゃった…団長さんのことを思ってエッチな事しちゃった…」
荒い吐息と共に抱く幾ばくかの罪悪感と心地よい疲労感がスノードロップを包み込む。
(明日はシーツと布団を洗濯しなくっちゃね…)
乱暴に布団を全裸の体にかけて枕に突っ伏すスノードロップ。やがて安らかな寝息が立ち始めた。
「うーん…団長さんがいないと私どんどんエッチな女の子になっちゃう…毎日一人エッチなんてしたことないのに…」
次の日の晩。ひとしきり自慰に耽り、せっかく洗濯したシーツを自らの滲ませた蜜でビチャビチャにしながらスノードロップは僅かな怯えを抱いていた。以前はこんなに自慰に耽ることはなかったのだ。確かに団長がいなくて寂しく思う心はあり、その寂しさゆえに自らの体の火照りを慰めているのだが、それにしても自分の身体が何らかの変調をきたしていることは明らかなように思われた。
回数だけではなく、行為の激しさもまたスノードロップを戸惑わせていた。本来ならば軽く股間をさすり、乳房と乳首に恐る恐る指を這わせるだけで達することが出来た。それだけで満足のはずだった。
だが今は違う。昨晩と同じ様に激しく自慰に耽ってしまっていた。膣口の周りや肉芽をなぞりながら掻き回し、乳首を力強く荒々しく指でなぞり立て蜜を大いにしぶかせながら絶頂に達した。
「お尻の穴でも気持ちよくなっちゃうなんて…」
そして今晩はこれまで不浄の場所としか認識していなかったお尻の穴にも指を這わせてしまったのである。恐る恐る触れたその場所は嫌悪感を抱いてしまいながらも、中々の悦楽を覚えてしまい、ちょっとしたクセになってしまうかと思われた程だった。
「もう止めないと…任務にも影響でちゃいそう…」
自身を戒めながら心地よい疲れと共に眠りに落ちるスノードロップ。しかし現実はまた次の日の晩も自慰に耽ってしまったのである。そしてその次の日も次の日の晩も、だった。今日の夜はふけるまい。きちんと寝よう、そうは思っていても寂しい心と肉体は刺激を求めて甘く切なく疼き、指での刺激が無いと寝付けないのだった。