behind the mask 上
忌まわしい週末の次の日。スノードロップの元に二通の手紙が届いた。
一通はいつものようにドアの下に差し込まれた貴族からの手紙。もっとも奇妙なことに今日の指令はなかった。無かったどころか、金曜日までの禁欲を命じており、何か底知れぬ恐ろしさを感じさせるものだった。
そしてもう一通は愛しい団長からのものだった。
「部屋で読んで。あなたがニコニコ顔なのは私も嬉しくなるけれど、まぁそういうのは自分の部屋で、ね?」
苦笑を抑えきれない様子のアネモネは臨時の執務室としている自身の自室でスノードロップに団長からの手紙を手渡しながら、 そう言うのだった。そう言わなければこの場で凄い勢いで手紙を開封してしまいそうだったからである。
「あ、はい!わかりました!」
快活な笑みを浮かべ、今すぐ部屋を出たそうにうずうずするスノードロップ。
「手紙の内容は言わないでいいから。と言うか細々とした報告や指示は私宛の手紙にあるみたいだし」
アネモネは苦笑まじりでそう言いながら一通の手紙をひらひらと見せるのだった。
「わかりましたアネモネさん!じゃあ部屋に帰ってじっくりと読ませてもらいますね!」
満面の笑みを浮かべてスノードロップは飛び上がらんばかりの勢いでアネモネの自室を出ていくのだった。何事にも躾の良い彼女には珍しくドアを閉めることさえ忘れている。そんな彼女をアネモネは呆れたように見つめ、苦笑いしながらドアを閉めるのだった。
「みんなの前で読んでも問題ない内容なんだけどな…最後以外は、ね…」
自室で団長から届いた手紙を何度も何度も読み返しながらスノードロップは思う。団長からの手紙はそう長いものではなかった。大雑把にまとめてしまえば元気でやっていること、なかなかに皆覚えが早く予定より前倒し出来そうな事、そしてナズナさんがお肉をあまり食べさせてくれない事、その程度だった。そして訓練プログラムの最終段階として討伐作戦に急遽参加すること決まった事が記されていた。
「愛するスノードロップ。君の顔をまた見える日が待ち遠しくて仕方ない」
団長からの手紙はそう結ばれていた。確かそこだけはいくら団長とスノードロップが相思相愛の仲だというのが半ば公認的とは言え、皆の前では音読し難い部分ではあった。
「ああ、団長さん!団長さん!団長さん!」
最初にその結びを読んだスノードロップは余りの嬉しさに手紙を胸に深く抱き、嬉し涙を流してしまうほどであった。少なくとも今の彼女は団長さえ帰ってくればなんとかなる。そう考えていた。
忌まわしい週末の体験、そして肉悦に開花しつつある自分の身体。それらによって広がりつつあった心の隙間を団長の短いながらも気持ちが籠った言葉が満たしつつあった。少なくとも今のスノードロップは幸せだった。団長を想って思わず自慰を仕掛けたがさすがに思い留まった。禁欲を命じられているのである。何かしらの手段で監視されている以上、命令に背く事は出来なかった。
火曜水曜と貴族からの手紙はなかった。そして木曜日に差し込まれていた貴族の手紙。それは明日の晩9時に迎えをよこす。それだけが短く記されていた。前回の様に下着を着けるなだの、尻穴に淫具を挿入しろとかの命令は全くなかった。
(今週末さえ乗り切れば団長さんが帰ってくる!)
そう思いつつスノードロップは緊張の面持ちで貴族からの手紙に目を通す。アネモネに届けられた手紙には週末を討伐作戦に参加して軍上層部の査閲を受け、水曜日には帰着する予定とあるからだった。
(あんな辛くて悲しい思いをするのもきっと今週末が最後。うん、絶対にそう!)
脳裏にあの週末の情景がありありと浮かぶ。どれを取ってももう二度と体験したくない峻烈な出来事であった。だからこそスノードロップの心の中に怯えがある。貴族がどれだけの策を弄してくるか、それが分からなかった。そして何より彼女の身体には忌まわしい淫紋があった。
しかし、今は考えてもどうにもならなかった。ベッドに横たわり布団をかけ、団長からの手紙を胸に抱きしめてスノードロップは瞳を閉じる。団長が帰って来る日、それだけを逆境の中の希望として強く抱いていた。
今にも雷雨になりそうなほどに雲が低く垂れ込めた金曜夜の約束の時間。宿営地の衛門から少し離れた場所に闇に溶け込む様に黒塗りの馬車が停まっていた。言うまでもなく貴族の迎えの馬車だった。
スノードロップの姿を認めると無言で御者が馬車から降り、恭しく一礼をした後、ドアを開いて顎をしゃくった。
怯えと緊張と共に馬車に乗り込むスノードロップ。前回と同じ様に座席には目隠しと手枷。その二つを手際よくスノードロップに施した後、御者は馬車を発進させた。
ほぼ前回と同じような流れで、あの忌まわしい場所に案内されるスノードロップ。当たり前ではあるが何も変わってはいなかった。
鉄格子の向こう、おぞましいショーを見せられた覗き穴のスイッチ、そして自身とブローディアが乱れたあのベッド。それを見るたびに否応なく峻烈な記憶と甘い記憶が蘇る。
(とにかく、こんなところにはもう二度と来たくない!)
否応なく蘇ってくる性の記憶に苛まされながらスノードロップはそう強く思う。
(だから団長さん、私を守ってくださいね…どんなに酷い目にあっても私が私でいられるように!)
貴族が待っているかと思いきや誰も待っていない一人のこの場所で、スノードロップは気持ちを新たにするのだった。
もっとも、貴族がこの場にいないということは得体の知れない恐ろしさがあった。何か策を弄しているのではないかとスノードロップは疑うより他なかった。単純に忙しくてこちらには構っていられないだけ。そのようなご都合主義はありえないと彼女は結論付けている。
ただ貴族がいないのは単純にありがたい話ではあった。今の所、時間の経過はスノードロップにとって有利に働くはずであるからだった。
(ずっと帰ってこなくていいのに!)
もちろんそれが甘い考えであることもスノードロップは重々承知していた。
異変に気がついたのはそれから間もなくのことだった。壁の向こう、あの広間の方から何やら騒がしい物音が微かに聞こえてきたからである。
覗くか覗くまいか。スノードロップは逡巡した。何らかの罠の可能性があるからだった。下手に覗き込んでしまえば、またおぞましい何かを見せ付けられる可能性があるからだった(スイッチが作動することは確認していた)。
(音だけなら…大丈夫のはず…)
迷った末にスイッチを作動させるスノードロップ。もちろん今回は覗き込まない。
覗き穴を通して聞こえてくる音は意外なもの、悲鳴、怒号、そして衣擦れの音や鎧の立てる金属音。いずれもあの広間には似つかわしい音である。
耳をそばだててなんとか物音から状況を読み取ろうとするスノードロップ。総合的に判断するとどうやら広間に完全武装した衛兵が乱入したらしかった。
さすがにこれ以上情報を引き出すことは耳からの情報では無理だった。罠の可能性を内心では排除しきれなかったものの、好奇心が勝ったスノードロップは覗き込んでみることにした。
(まさか?信じられない!)
覗き込んだ広間で見た光景は俄かには信じがたいものだった。完全武装した衛兵が高級そうな衣服に身に纏った集団を舞台の上に整列させていた。その扱い方は完全に野盗に対するそれと同じだった。抵抗出来ないよう、両手を頭の上で組ませて、足を大きく広げさせている。
(どういう…事なんだろう?)
自分が見た光景が信じられないスノードロップは思う。見る限りでは何かの余興であると思えなかった。
(もしかしたら助かる…のかも!)
淡い希望が胸に芽生える。あまりにも便覧した風紀に官憲の手が入った。そうとも受け取れるからだった。整列させられた集団からは怨嗟や怒号の声が上がるが衛兵達は気にしていない。
あまりにも迫真過ぎて演技とは思えなかった。その集団の中にあの司会の男もいることが声からわかった。衛兵に罵詈雑言の悪態をついている。
そうであれば、貴族がこの場にいないことも説明はつく。恐らくは取り締まりの情報を入手していち早く逃げ出したか、あるいは今取り調べを受けている集団を犠牲にして保身を図った可能性もあった。
さすがに勲章の由来にもなっている名家を風紀紊乱で罰することは国家の沽券にも関わるのであるから、罰を問わない代わりに蟄居させて有耶無耶にする。その線も十分に考えられた。
これ以上の情報は得られない。そう判断したスノードロップは覗き穴から顔を出す。今回は何もなくスムーズに顔が抜ける。つまりは罠ではなかったのである。
(良かった本当に良かった…)
壁に体を預けて床に座り込みながら、泣き笑いの表情を浮かべたスノードロップ。もちろん嬉し涙だった。罪もない女性達を弄んだ鬼畜な獣たちは獄に繋がれ、そして鬼畜たちの宴を主導していた貴族もまた(公的には罰せられないものの)、自身の犯した罪を悔やみながら後の人生を惨めに過ごすことになる。そう思えたからだ。
あとは自身がここから救い出されること、そして忌まわしい淫紋さえ解呪されれば全ては元通りなのである。肉体はもう清いとはお世辞にも言えないが、一番大切な物は守り通す事が出来た。それで充分だった。
嬉し涙を浮かべて身を掻き抱いているスノードロップの耳に鉄のドアが開く音が聞こえる。その音がスノードロップには天使の福音のように聞こえ、心躍らせて助けに来る人物が顔を見せるのを待ちわびる。
「スノードロップさん!良かった!」
「アネモネ…さん!!どうしてここに?」
ドアを開いて入ってきたのはなんとアネモネだった。誰かが助けに来たことは嬉しかったのだが、まさかアネモネが来ると思わなかったスノードロップは目を白黒させる。そもそも花騎士は国内の治安維持に携わることは稀だからである。偶然とは思えなかった。
「どうして?って…説明は後回しでいいかな?とにかくここから出ましょう」
アネモネはどこか急いた様子で手を差し出しスノードロップを促す。スノードロップは僅かに頷き返し手を取って立ち上がった。アネモネの言うとおりで、とにかく今はここから出るのが先決だった。
水を打ったように静まり返った館内をスノードロップの手を引いて歩きながらアネモネは早口に説明した。以前から害虫の仕業とは思えない少女の行方不明事件が多発し館の持ち主である貴族がその首謀者として官憲に目をつけられていたこと、ただ残念ながら当の貴族は摘発の直前に逃げ去ってしまい身柄を拘束できていない事、を説明した。
「では、どうしてアネモネさんがここにいるんです?取り締まりは衛兵の仕事であって花騎士の仕事ではないはずです」
アネモネに問いかけるスロードロップ。安堵の気持ちも大きいが、どうしても疑問の方が先にたった。
「先週そして今週とあなたが宿営地を出てから、すぐにあの貴族の馬車が出て行った。先週だけなら何かの偶然だと片付けたでしょうけど、今週も馬車が出た。あなたとあの貴族に何かの接点があるとは思えないから、もしかしたら、と思った。そこで今日は馬車の後をつけて、そこで強制捜査の準備中だった衛兵さん達と出会って私も中に入れてもらうことにした。そしたら案の定というわけ」
ため息を一つ押し出してアネモネは早口にそう述べた。ここでスノードロップに何があったかは薄々感づいているようではあったが、あえてそれは口にしていない。
「私一人の判断でここへ来たから団の皆には何も言ってない。私も何があったかは聞きたくない。だから話さなくてもいい」
アネモネはそう言って口を閉ざしてしまう。スノードロップにはその優しさがありがたかった。手を握って先導しているアネモネの手をぎゅっと握る。
そうこうしているうちに二人はエントランスまで辿り着く。ランプの油が切れかけているのか薄暗い。どうやら外は雷雨であるらしく時折走る稲光りが壁の豪勢なステンドグラスを通してエントランスを照らしだし、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
館の正面玄関、饐えた淫獄と外の世界を隔てる木製の大きなドアの前。そこでアネモネは足を止めた。くるりと振り返り、手を離して少し距離をとりスノードロップを見据える。ステンドグラス越しの稲光りにアネモネの面差しが浮かび上がる。その表情はどこか冷たく、何かの決意を秘めたようでもあった。
「アネモネ…さん?」
立ち止まりこちらの方を振り返って冷たい表情を浮かべたアネモネにスノードロップは戸惑いの表情を浮かべ声をおずおずとかける。
「この………!」
アネモネが口を開いた瞬間、一層大きな稲光りが走り、近くに落雷したのか大きな衝撃と音が走り抜けた。灯りが一斉に消えて辺りが闇に包まれる。そして次の瞬間。
「ぐっ…ふぅっ!」
突如として腹部に入った衝撃にスノードロップは呻き声をあげた。灯りが消えた瞬間、アネモネがスノードロップの腹部に強烈な一撃を与えたのだった。
(アネモネさん…いったいどうして?)
あまりな急な出来事にスノードロップは理解が追いつかない。そしてそのまま意識が闇に包まれていった。
「お母さん、お父さん……私…とっても良い人に出会えたの…だから心配しないで…」
そこまで言って夢から覚め、スノードロップはゆっくりと意識を取り戻す。寝起きの未だ霞む視界に映るのは見慣れたレンガの壁、豪勢なソファー。少し視線を動かせばあの鉄格子の部屋。言うまでもなくあの幽閉された部屋だった。
「どうなってるの…私…助かったんじゃなかったの!?それに動けない!」
戸惑いの声を上げ身をよじらせるスノードロップ。両手は手枷で吊り上げられ、緩やかな角度で開かれた足首に足枷。そのどちらもが鎖で壁と天井に繋がれており、部屋の中央で万歳のような姿勢で彼女は戒められている。身を捩らせる度に鎖がジャラジャラと耳障りの悪い音を立てる。
(アネモネさんの助けが来てくれて…エントランスまで来て…そこで…アネモネさんに…)
スノードロップは考えを巡らせるが、いくら考えを巡らせたところで納得のいく答えが出ない。分かっていることはただ一つ。彼女は助かってなどおらず、未だ囚われの身であるということ。そして……どうやらアネモネが一連の事象に一枚噛んでいるらしいこと、だった。
不意にドアが開き、フード姿の人物が入ってくる。スノードロップには忘れもしない、あの温泉旅館で彼女に淫紋を刻み付けたあのフードの人物である。
「ようやくお目覚め?」
スノードロップの側まで近寄りながら人物はそう声をかける。もちろんその声音はあの時と同じ男とも女ともつかない奇妙な声音だった。
「いや!いやぁ!!これ以上近づかないで!」
瞳から涙を滲ませて身を捩らせてその人物から離れようとするスノードロップ。もちろん縛られているのでその努力は徒労でしかない。
「動くと怪我をするよ?」
スノードロップの傍まで近づいたフード姿の人物はスノードロップに囁きかける。
「い、一体何を…やめてください!」
怪訝な表情と声音のスノードロップ。フード姿の人物は何も答えず、懐から短剣を取り出した。そしてスノードロップの喉元に突きつける。刃先にはありありと殺意が感じられる。
(ごめんなさい団長さん…私…ここで終わりみたい…)
死を覚悟するスノードロップ。喉元に突きつけられた短剣に白い喉元をぐっと近づける。
しかし、短剣がそれ以上喉元に近づくことはなかった。手が伸びてきて衣服の襟元を広げる。そこへ短剣が突き立てられ、小さな切れ目が入れられ次の動きで一気に股下まで衣服が切り裂かれる。
「ひいっ!いやぁっ!」
悲鳴を上げるスノードロップ。衣服がほぼ真っ二つの状態で切り裂かれたことにより、白い肌と淡い緑色の下着があらわになる。
「……にはふさわしい眺めだね」
フード姿の人物はぼそりとそう言うと一度スノードロップの傍から離れ壁から鞭を取り外した。それは腕ほどの長さの棒状の物。馬に乗るために使う鞭である。そしてスノードロップからよく見えるように鋭く鞭を一閃すると空気を切り裂く鋭い音が響き渡る。
「いや…そんな事止めてください…」
恐怖に歯の根を震わせながら哀願するスノードロップ。もちろんフード姿の人物はスノードロップに耳を貸しそうな様子はない。スノードロップの正面で鞭を構えて身構える。
「ああぅっ!い、いたぁいっ!」
鞭が振り下ろされ、スノードロップの乳房にヒットする。いくら衣服の残骸とは下着に包まれているとはいえ、かなりの痛みが乳房に走る。
「あうっ!ああっ!あああうっ!痛いのいやぁっ!」
フード姿の人物は二撃三撃とスノードロップの乳房に鞭を振るう。鞭が振り下ろされる度にスノードロップは痛みに悶え苦しんだ。僅か数回の鞭の打擲でスノードロップの乳房は痛々しく赤く腫れ上がった。
「この程度の痛み、私の心の痛みに比べれば!」
赤く腫れ上がったスノードロップの乳房を見てフード姿の人物は打擲を止めた。荒い吐息を吐いている。
「心の痛み?あなたは一体……まさか?」
乳房の痛みに耐えながら質問を投げかけるスノードロップ。薄々ながら目の前の人物の正体が分かってきたような気がした。だが口に出すのは憚られた。
「ようやく察しがついたようね?」
フード姿の人物が重々しく口を開いた。そしてフードの縁に手をかけ、フードを跳ね除けると紫色の髪が現れる。女性だった。
「あ、アネモネさん!!!」
スノードロップは悲痛な声を上げる。フードの下から現れたその姿。それは紛れも無くアネモネだった。先ほどとはうってかわって殺意と呼んで差し支えない鋭く刺すような視線をスノードロップに向けている。
「どうして?どうしてなんですか!アネモネさん!」
アネモネに悲痛な声をあげるスノードロップ。花騎士としても人間としても尊敬の対象であったアネモネ。だが目の前にいるのは殺意と憤怒の視線を自らに向けた夜叉さながらの姿であった。とても同一人物とは思えない。
「あなたにしては鈍いわね!」
「ああっ!」
今度は脇腹に軽く鞭を振るいながら、アネモネは嘲ったような声を上げた。
「単純にあなたが邪魔なだけ!あなたがいなければ!あなたさえいなければ!」
「私がいなければって…そんな……!」
「そう!あなたがいなければ団長は私のもの!だからスノードロップ、あなたには私と団長の前から永久に消えてもらう」
熱に浮かされたような声を上げながら何度も鞭を振るうアネモネ。その度にスノードロップは身をよじらせて痛みに悶える。みるみるうちに衣服はズタボロに引き裂かれブラジャーが弾け飛んだ。そして露わになった乳房、そしてその頂点にアネモネの容赦ない鞭が飛び、白い乳房に痛々しいミミズ腫れを幾筋も生じさせた。
「嘘です!あなたはアネモネさんじゃありません!アネモネさんのふりをした誰かです!私の知ってるアネモネさんはそんな人ではありません!」
アネモネの豹変、そしてあまりにも衝撃的な心情の吐露。その全てがスノードロップには俄かに信じ難い事であった。よく似た他人、あるいは魔法で化けた誰か。もしくは誰かに操られている。そう信じたがっていた。
「まだ…信じられないんだ?本当に底抜けのお人好しなんだね!では種明かしをしましょうか?あの温泉旅館を決めたのは誰だと思う?」
「………………………………………」
「そう全部私。私があなたに媚薬を盛りオナニーを誘発させて疲弊させた。疲弊したあなたを待機任務と称して温泉旅館に誘きだしあの晩淫紋を施した。貴族を手引きしたのももちろん私。そして騎士団の宿営地で毎日あなたの部屋に手紙を差し入れたのも私。あなたはあの手紙の文章が貴族が書いたのだと思い込んでいたのでしょうけど、実は感想も命令も私が書いた物。あなたがもう少し注意深ければ手紙の筆跡が私の物だって分かったかもしれないね。それにいつの夜だったかな、一度あなたが深夜に淫具を入れて彷徨っていた時私と会ったよね。もちろん偶然じゃない。その後お外で全裸になってお尻にディルドーを咥え込んで喘ぎ悶えるあなたの姿はただの変態の淫売にしか見えなかった。団長がその様を見たらどう思うでしょうね?多分、軽蔑の眼差しを向けると思う。ああ、もちろん宿営地のあなたの部屋に監視の仕組みを仕掛けたのも、淫紋のスイッチの入り切りも当然私」
それだけの言葉を一息に紡ぐとアネモネは言葉を切った。そしてスノードロップの股間に手を伸ばし、下着越しに乱暴に陰部を弄る。そこには微かな湿り気があった。指に愛液が感じられる。
「ふふ、鞭で痛く叩かれてもオマンコ濡らすんだね!そんなのはド変態のマゾだけ。スノードロップ、あなたは淫紋があってもなくても淫乱かつマゾなんだよ。人の物を横取りする泥棒猫には相応しい気質ね!」
そう吐き捨てるアネモネ。そしてパンツに手をかけ一息に引きちぎって床にゴミのように投げ捨て、ズタボロの真っ二つの衣服に下着なしという凄惨な見かけにしてしまう。
「いやぁっーー!」
下着を引き裂かれて悲鳴を上げるスノードロップ。もはや彼女にはそれしか出来ないからだった。頭の中では先程のアネモネの言葉がぐるぐるリフレインしている。全てに納得のいく説明がなされたとは言え、脳が理解を拒んでいた。
ただ理解できた事はアネモネとあの貴族がグルであること。そして淫紋はアネモネの手によってでも作動するということ。つまりは貴族だけではなくアネモネにも生殺与奪を握られているということだった。
「ただ一つだけ、私がそうする為には団長も邪魔だった。だからあの人にお願いして団長を騎士団から引き剥がした」
背後に回りスノードロップの衣服の残骸を背中まで捲り上げて手枷を繋ぐ鎖に結わえ、露わになった白い尻肉を軽く手のひらでびしゃびしゃと叩きながらアネモネは独白を続ける。そして鞭を尻肉に押し当てた。叩かずに尻肉を何度も何度もなぞり上げる。
「ではどうして?どうしてこんなことをするんですか!私が消えるだけなら、どこかの討伐任務の時に無茶な命令を下せばいいはずです!チャンスはいくらでもあったはずです!」
尻肉に押し当てられた冷たい鞭の感触にスノードロップは歯の根を震わせながら問いかける。
「そんな自分に疑いが降りかかるような事ができるとでも思う?私は団のみんなに無理はしないと言ったのよ?それに私には団長とナズナさんがいる時にあなたを消す方法がどうしても思いつかなかった。だからあの人に頼った。あの人があなたに異常な視線を送っていたことにいつぞやの城内で行われた宴会で気がついたから、あの人と取り引きをしてあなたと団長を一時的に物理的にさいた。その間にあの人はあなたを雌犬奴隷として手に入れ、私はあなたを失った団長を手に入れる。誰も損はしない。あぁ、あなたにとっては損ね。団長と結ばれることもないのだものね!」
そう言ってアネモネはスノードロップの尻肉に鞭を振るう。白いお尻に無残な赤い筋が刻まれる。
「いっ!痛いっ!やめて!お願い!アネモネさん!」
突如として与えられたお尻への打擲にスノードロップは悲鳴を上げて身を捩らせる。
「花騎士としてのあなたの力量には尊敬している。あなたは害虫との戦いの中でいつでも心強い味方だった。あなたと団長が相思相愛にならなければ私だってこんなことをするつもりはない!でもあなたは私から団長を奪った!だから消えてもらう!一瞬で終わる戦死じゃなく、女性として生まれてきたことを後悔したくなる消え方をしてもらう!それでいいよね!あなたは元々淫乱だもの!あなたに相応しいのは団長のお嫁さんじゃない!人々の敬意を受ける花騎士でもない!あなたが一番相応しいのは誰にでも股を開いてオマンコにオチンポのおねだりをする淫乱な雌犬なのよ!」
アネモネは叫ぶように言うと、何度も何度もスノードロップの尻肉と背中に鞭を振るう。見る見る間にスノードロップの背中やお尻に鞭の跡の赤い筋が幾筋も浮かぶ。
「はあ…はあ…」
荒い息を吐き鞭打ちを止めるアネモネ。肩を大きく波打たせながら散々鞭で打ち据えたスノードロップを見つめる。スノードロップはもはや悲鳴を上げることすら出来ず痛みに全身を震わせている。
それはあまりにも凄惨な姿だった。だがしかし、ここまで虐げられてなお、スノードロップは楚々として凛とした佇まいを失ってはいなかった。むしろ虐げられることでより一層輝いてみえた。被虐美、あるいは悲壮美とでも呼べるものがスノードロップを輝かせていた。
もちろんその輝きはスノードロップへの嫉妬に狂い、悪魔と手を組んで夜叉へと堕ちたアネモネにとって眩しすぎるものだった。
(もっと…もっと泥棒猫には肉欲に堕ちて貰わないとね!もっと辱めて自分の本質が淫乱な淫売であることを自覚させないと!)
アネモネの瞳にまた暗い情念が灯される。なぜか体にゾクゾクとした衝撃が走る。貴族がそうであるように、アネモネもまたスノードロップの雰囲気が醸し出す被虐の魔性に取り込まれつつあるのかもしれなかった。
もちろんアネモネはそれを自覚していない。ただただ嫉妬に悶え狂いスノードロップを辱めることしか考えていない。
アネモネはスノードロップに手をかざした。淡い光と共にスノードロップに刻み込まれた淫紋が作動する。
「あぁ…もう…いやぁ…」
淫紋の作動にスノードロップが短く呻き声を上げる。ジクジクとした鞭打ちの痛みに淫紋のもたらす肉悦が加えられたのである。
体を芯から炙られるような肉の疼き、そして痛みがスノードロップの心と身体を掻き毟るように刺激する。
(ああ…だめ!痛みが…痛いのに体が疼いちゃう!)
身悶えするスノードロップ。アネモネはその機を逃さず再び鞭打ちを再開する。今度は全身くまなく打ち据えるつもりだった。手始めとして尻肉に力強く鞭を飛ばす。
「あっ!あっ!ああっ!」
鞭打ちの痛みに唇の端から涎を飛ばして悶えるスノードロップ。しかしその悶えの中に甘く湿った吐息が混ざりはじめる。淫紋がもたらす肉の疼きと鞭打ちの痛みが入り混じって肉悦に昇華しつつあるのだった。
(ああ、鞭で打たれてるのに!痛いのに!感じちゃう!体がゾクゾクしちゃう!)
自分の身体の変化に戸惑うスノードロップ。事実、ミミズ腫れが浮かび上がった乳房の頂点は硬くしこり、陰部の肉芽が切なげに疼く。そして膣口が戦慄きながら透明な露を滲ませつつあった。
「やはり淫乱は違うね!淫紋があるとはいえ鞭で打たれているのにおっぱいしこらせて、オマンコをマン汁でベットリと濡らして!」
スノードロップの身体と反応の変化に気が付いたアネモネは嘲りの声を飛ばす。確かに術者の魔力に依るところが大きいが淫紋は催淫機能がある。しかしその効果は対象の元々の資質にも大きく左右されるのである。つまり対象が先天的に淫乱であるばあるほど激しく作用するのだった。
実のところ、淫紋がここまで大きくスノードロップに作用するとはアネモネには想定外だった。催淫作用よりは術者(アネモネと貴族)に刃向かえないようにする安全装置としての側面が強かったのである。
「違います!これは淫紋のせいです!アネモネさん!お願いだからやめて!これ以上酷いことをしないで!」
鞭打ちの痛みと淫紋のもたらす快楽。その二つが相混ざり、面差しを快楽に蕩かせながらスノードロップは否定する。もちろん淫紋の効果が自身の本質に左右される事など想像の埒外だった。
これだけ酷い仕打ちを受けながらもなお、スノードロップは心のどこかでアネモネを信じている。いまだアネモネをさん付けしていた。縋るような視線を向ける。
もっとも、スノードロップはその自身の態度こそがアネモネの嗜虐心を刺激していることに気がついていない。縋るような眼差しがより一層アネモネの心を冷たく無慈悲にしていくのだった。淫紋の効果とスノードロップが纏う被虐の魔性が合い合わさって、被虐と加虐が織り成す肉悦の底なし沼が二人を飲み込みつつあった。
「まだそんな視線をするんだ。私を信じてるんだ。無駄よ。あなたがどれ程泣き喚き許しを乞うても私の心には何も刺さらない!慈悲なんてない!もちろん、今あなたの目の前にいる私は正真正銘の私。私が自らの意思であなたを責め嬲っている。誰かに操られてなんかいない」
アネモネは無慈悲にそう言うと冷たい視線のまま、スノードロップの全身に鞭を打つ。
「ああっ!ああぅっ!んあぁっ!」
痛みに身を捩り続けるスノードロップ。押し出す吐息がどんどん甘く湿っていく。もはや痛みの悲鳴というよりは悦楽の喘ぎ声に近くなっていた。太ももにはべったりと愛液の筋が垂れている。
「全くどうしようもないドスケベな雌犬ね!太ももがマン汁でベトベトじゃない!そんなあなたに相応しいイキ方をさせてあげるわ!」
軽蔑しきった眼差しでスノードロップを見つめアネモネは前に回る。そして鞭の先端をスノードロップの陰部に押し当てた。
「いや…まさか…やめてください!アネモネさん!そんなところを鞭で打たれたら!」
押し当てられた鞭とアネモネの視線で次にどこを鞭打とうとするか察したスノードロップは怯えた声を上げる。
「ダメよ覚悟しなさい」
アネモネは冷たく告げると鞭を大きく振りかぶる。そしてスノードロップの股間めがけて鋭く振り下ろした。
「あヒィっ!くぅっううんっ!」
振り下ろされた鞭がクリトリスと陰唇を鋭く捉える。嬲られ続け昂らされ続けたスノードロップの女体にはそれはあまりにも大きな刺激だった。その一撃でスノードロップは絶頂へと追いやられる。そして足元で立ち昇る湯気。あまりにも強いアクメに気絶すると同時に失禁してしまったのだった。
「あはは!いいざまね!イクと同時におもらしなんて!本当にあなたはどうしようもないメス犬だね!」
室内にアネモネの哄笑が響く。哄笑をどこか遠くで聞きながらスノードロップは闇へと意識を落としていった。団長と同じ位に信頼していた心強い戦友のアネモネに魔淫の罠に陥れられた悲しさに一筋の涙が頬を伝う。