だがそれでも2話に分けたりは面倒いからしないっっ!
ちょっとアニメの平塚先生の貰って?が作者の心臓を貰い受けて行ったので失踪します。
どうも貴一です。神様転生者やってます。
黒髪ロングクール系お姉さんが好きですが、活発系ボイーッシュツルペタスパッツボクっ娘も可愛いと思います。
はっぴばーすでーとぅーゆー♪
はっぴばーすでーとぅーゆー♪
はっぴばーすでー
Dear ゆーいにゃーん♪
はっぴばーすでーとぅーゆー!
パン! パン! パパパン!
はいとゆー訳でゆいにゃん誕生日おめでたー!
「わぁー!ありがとうみんなー!超うれしー!」
ふふふ!今日この日の為にひたすら力を蓄えてきた……!見るがいいゆいにゃん!これが俺のっ!俺たちのっ!全力全開!スターライトォォ……ブレイカー!!
つ ローストチキン つ 巨大イチゴのホールケーキ
つ タコとコウイカのカルパッチョ つローストビーフ
つラム肉のロースト りんごソースがけ
つ 山盛りフライドチキン&フライドポテト
つ 巨大オムレツ つ 巨大マルゲリータピザ
つ多人数用娼婦風スパゲティー
つ巨大ブッシュ・ド・ノエル
つ 寸胴鍋いっぱいのビーフシチュー
つ コーンスープ&オニオンスープ
つ 特盛チンジャオロース つ 特製味噌おでん
つ 水水肉バーベキュー つ おばあちゃんの味、昆布のおにぎり
つトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼ
つ メロウコーラ
「わぁぁぁ!!何これすごいすごい!こんなたくさんのご馳走初めて見た!全然統一性無いメニューだけどすっごい!」
ふ、そうだろうそうだろう!これがチーターの本気ですよっ!(。・ω´・。)ドヤッ
これぞ日本人のお・も・て・な・し!心ゆくまで味わうがよいぞゆいにゃん!
「うんうん!ありがとねサカキン!本当に嬉しいよ!あたし自分の誕生日こんなに盛大に祝って貰ったの初めて!それはそうとサカキン、一つ質問いいかな?」
ふっ、何だねゆいにゃん?何でも聞くがいいぞ!なんだって君は今日は誕生日!つまり主役!お誕生日席になんの呵責なく座ることが許される日!あ、もちろんプレゼントも用意してあるよ?
「何でお昼休みなの?」
「えっ?」
「何でこんなにたくさんのご馳走用意して、部室たっくさん飾り付けして、ゆきのんどころか隼人くんや優美子、彩ちゃんにサキサキ、平塚先生まで呼んで……それでっ!何で昼休みなの!?足んないじゃん!どう考えても時間足んないじゃん!何でお昼休みなんかにこんな盛大なパーティ開いちゃうのっ!?あとディアの所だけやたら発音良いのキモイ!」(_ >д<)_バンッ
「そ、そこに気付くとは、やはり天才かゆいにゃん……!」
「殴るね?答えは聞いてない!」
ちょっ、ま、な、何をするだァー!!
この後無茶苦茶殴られた!
◻️◻️
今日は6月18日、我らがゆいにゃんの誕生日である。
今日この日のために夜なべして作ったパーティグッズによって奉仕部の物質はあたかもお誕生日会の様に飾り立てられ、使用されてなかった黒板には大きく「ゆいにゃんお誕生日おめでとう!」の文字が。
いつもは教室の3分の1程しかない畳も今は完全に敷き詰められ、いつも部活で愛用されているちゃぶ台は片付けられて、代わりに高級そうな木の長テーブルがふたつ並べて置かれている。
その上には乗り切らない程の豪華なご馳走の数々。どれもこれもが今出来たばかりのように湯気を放ち、芳しい香気を放っている。
そんな中、ついに楽しい楽しいお誕生日パーティが始まろうとしていた──!
「サカキン、正座」
「ふ、まぁ待てゆいにゃん。これには山より高く、海より深い訳があってだな?」
「正座」
「アッハイ」
……始まろうとしていたッ!
「榊君、流石に無理があるわ」
てへぺろ(´>∀<`)ゝ
ゴスッ 痛っ!殴ることは無いだろ殴ることは!
「うっさいバカ!何でこんな事したの!?ちゃんと答えて!ゆきのんも!」
「え、えぇとその、これには訳があるのよ、由比ヶ浜さん……」
「そんな事より早く食べないとどうにもなんないんじゃない、これ」
「咲希は黙ってて!てかよく考えたら何でみんなも普通にサカキンのバカに付き合ってるの!?」
「や、あーしら昼休みになった途端にモサキチに拉致られただけだし」
「あたしも」
「拉致られたというか気が付いたらここにいたというか……正直俺にもよく分からないんだが?」
「あははは、ほら……貴一だし。考えたら負けかなって思って?」
「私は由比ヶ浜の誕生日パーティやるから昼休みに顔出してくれと榊に頼まれただけだ」
「……サカキン?」
ふ、仕方ない、せぇつめいしよう!(オーキド風)
「真面目にやって」
あ、ごめんなさい。とはいえ深い深い理由があるので、話は長くなると思われる。食べ終わんないと思うから食べながら聞いて。
「いや無理だから。これ1時間どころか1日かけてもこの人数じゃ無理だから。ケーキだけでも食べきれないよ。だってホールケーキあれ4段あるもん。最早ウエディングケーキだもん。ロールケーキに至っては彩ちゃんのお腹より太いじゃん。とゆーかケーキ2種類ってなに!?ひとつでも食べきれないのに何で2つも用意ししちゃったの!?」
「ふっ……愛だよ」(`・ω・´)キリッ
「真面目にやれって言ったよね?」
真面目に言ってるんだが……アッハイ、ごめんなさい。
「それとどう考えてもこの時間じゃ食べきれないからロールケーキと……フライドチキンとポテトのお皿以外片付けて。それでも食べきれないけど!」
ええ?折角作ったのにー!「早く!」はいはい分かりましたよー。ええと、料理の周りの空間ごと固めて、空間座標固定……よっと。
パチンッ
「うわっ、榊が指鳴らしたら料理が消えた!?」
「ははは、相変わらず訳が分からないな……!」
「流石貴一!何度見ても種が分からない!凄いよ!」
ふ、これぞイリュージョンっ!(`・ω・´)キリッ
ゴンッ痛──っっ!!?
「話が進まないでしょ!」
へいへい。じゃあとりあえず残った料理食べながら聞いて。ブッシュ・ド・ノエルはもう切り込み入れたから、テキトーに取ってくれ。食器類は今手元にある以外に後ろの台に代わりのたくさんあるので、落としたりとかして交換したかったらご随意に。
それぞれがケーキと料理を取った辺りで、みんなに飲み物を用意しつつ、事の経緯を説明してみる。
まず話は5日前に遡る!俺とセツのんはこまっちゃんというコミュ力高い系JCの力を借りてゆいにゃんの誕生日プレゼントを用意したっ!
次に3日前!せっかくだからパリピの仲間であるゆいにゃんの為にパリピっぽくサプライズパーティーにしようと計画!俺とセツのんで手分けしてこの部室の飾りを作りはじめた!
事件発覚!昨日!俺とセツのんの両方がゆいにゃんの予定を聞くのを忘れてたっ!どちらかが聞いてるとどちらも思っていたのだ!どうしよ、パリピなら普通に誕生日パーティしてそうだよね!これはまずい……そうだ、昼休みにやろう(名案)!!
本日!今に至る!! 以上!ご清聴ありがうございました!
「短っ!?そして杜撰だー!?」
「さ、流石貴一、意味不明な行動力だねっ!」(震え声)
「な、なぁ、雪ノ下。……あいつ、いつもこんなんなの?」
「まだマシな方よ」キッパリ
「うまっ!うはー、相変わらずモサキチの料理やべーなー。あ、隼人、そのソース取って?」
「優美子、随分手馴れてるなぁ……ははは」
ふ、よせやい照れるぜ(*σ´Д`*)
「誰も褒めてないよ!」
「というかだな、榊。お前これだけの料理、どうやって用意したんだ?」
それはですね平塚先生!朝一時から11時45分までずっと料理してました!勿論一から全部手作りなので愛情たっぷりです!
「朝1時からついさっきまで!?そんな理由で午前中の授業全部居なかったの!?」
何言ってんのゆいにゃん。ゆいにゃんの誕生日のが授業より大事に決まってんだろ馬鹿なの?
「うぇっ?!そ、そうなの……?そ、そっか、そーなんだ……えへへ」
「いや、あたしが言うのもなんだけど、それで誤魔化されちゃ駄目じゃない?」
ふっ、相変わらずゆいにゃんは真面目な顔で言っとけばだいたい何とかなるな!流石巨乳に栄養を全部取られた女!サキサキは後でタッパー用意するから家に持って帰るがいいよ!(口止め)
「えぇと、ところで……雪ノ下さんが居て何故こんなにも無茶苦茶なやり方に?」
「ハッ!?た、確かに!そーだよゆきのん!何でゆきのんが居てサカキンのバカをここまで見過ごすの!?」
「あ、いえ……その、私、今まで誰かに誕生日を祝われた事も、誰かの誕生日を祝った事も無かったのよ。だから……誕生日パーティでしかもサプライズと言われても、その、よく分からなくて。ただ、私も由比ヶ浜さんの誕生日をお祝いしたかったから……ごめんなさい、次はよく調べてからやるわね」
思わず皆が口を噤んだ。何気なく語られたセツのんのぼっちストーリーに皆も言葉を失ったご様子。相変わらずセツのんは結構辛い幼少期を過ごしてるなぁもぐもぐ。え、なにユーミン。フライドチキンとポテトとケーキだけじゃ飽きる?そーねー、他にもチキンやポテト用のソースとかはあるけど、やっぱ別の料理が必要よね。何が食べたい?
「ゆきのん……!ごめん!あたしがバカだった……!ゆきのんそんなにあたしの事想ってくれてたなんて!怒ってごめんね、ゆきのんに祝ってもらえてあたしすっごい嬉しい!大好きだよゆきのん!」
「きゃっ、ちょ……由比ヶ浜さん、苦しいのだけれど……」
「んー、あーし的に今はエビチリの気分かなー?」
「いや優美子、この状況で良く普通に食べられるなっていうかそこでさっきのメニューに無いヤツ頼むのか!?」
「はいエビチリ。ジャン風なので車海老800匹分くらいのエビ味噌使ってるぜよぜよー」
「そして出てくるのか!?」
「……前と後ろの温度差がエグい」
「えっと、ほら…貴一だからさ。川崎さんもそのうち慣れるよ、きっと」
ふ、紆余曲折あったが何だかんだ皆も楽しんでるし、サプライズパーティは大大成功ですねっ!俺とセツのんの頑張りは報われた!いやー、良かった良かった!これにてハッピーエンハッ!?殺気!?
( っ'-')╮ =͟͟͞͞ ブォン
=͟͟͞͞( ˙-˙ )サ
危ないなー。何するんだいゆいにゃん?折角いい感じで締めようと思ったのに。というか人が多勢いる所ではあまり物を投げてはいけませんよ?
「うっさいバカ!ちゃんと話聞いたらだいたいサカキンが悪いじゃん!ゆきのんは初めてなのにこんなに頑張ってくれたんだよ?何でこんなに無茶苦茶なやり方するの!サカキンなら普通にやり方分かってるでしょ!?」
……何故にそんなにも怒るのか。ちゃんと少ない時間でも楽しめるように頑張ったつもりなのだが。数々の参考文献(マンガ)からそれっぽいやり方にを忠実に再現したと自負があるぞ。料理はこう、ノリで大きくした事は認めるけど。そんなに嫌だった?なら謝るけど……
「え、違っ…!そうじゃなくて、もっとちゃんとって言うか、もっと普通に「由比ヶ浜、その辺にしてやれ」平塚先生……?」
「たぶんだが由比ヶ浜は勘違いしてると私は思うぞ?」
「え……何が、ですか?」
「考えても見ろ。雪ノ下よりも一見社交性があるようにも思えるが……その男もやはりぼっちだぞ?」
「え?それは分かって……あれ?」
何を失礼な、私はぼっちじゃありません。ぼっちとは人の和の中に入ることを望むも、人の和に馴染めず、孤立する者の事を指します。私のように人の和の中とかどうでも良くて、けどやろうと思えば人の和に交じれなくもないっ!……そんな私はそうっ!スーパーエリートぼっち!そんじょそこらのぼっちと一緒にしてもらっちゃあ困りますなぁ!
「榊、お前誰かの誕生日パーティに参加したことは?」
「ははは、やだなぁ平塚先生、あるわけないじゃないですか。スーパーエリートですよ俺」
「と、まぁこういう訳だ。分かったか由比ヶ浜?」
「あ……ご、ごめんサカキン、あたしそんなつもりじゃ!」
何が?まぁ良いから早く食べよーぜ。昼休み終わっちゃうよ?ちょっと調子に乗って作り過ぎたからどうせ全部は食べきれないと思うけど、出来たら色々味見してくれると嬉しいね!
「……うん、分かった。全部食べる」
それは無理だろ。何故なら作ってる俺自身も無理だと思いつつ作ったからな!え?なにサキサキ。それなら何でこんな中途半端な人数なのかって?ふ、それはね……この学校に俺の知り合いこれ以上居ないからだよ!
「榊…あたしが言えた義理じゃないけど、あんた、それもどうなの?」
今のところ特に不自由してないから別に良いかと思ってるぜよ!大丈夫大丈夫、次からはもうちょっと量減らすし。あんま種類も無くていいみたいだし。
「あ、や…その、それは……」
「てかさー」
うん?
「あーしら別にユイの誕生日パーティとかする予定、特に無いんだけど?」
「え"ッッ」
「……そうなの?由比ヶ浜さん」
「えっと、その……うん。だから、どうせなら今日3人で遊びに行ったりしたかったって言うか……こんな駆け足みたいなのじゃなくてゆっくり一緒に居たかった……」
思わずセツのんと目を合わせる。お互いにアイコンタクトで会話し、1つの結論に辿り着いた。ふむ……
「やっぱ誕パ初心者はいきなりサプライズとかやっちゃダメだな。張り切りすぎた」
「そうね……まずは普通の誕生日パーティにするべきだったわ。少し、浅慮が過ぎたわね」
まさかパリピが誕パやんないとは思わなかったね!HAHAHA!え、何故最初から予定を確認しなかったのか?や、だってサプライズじゃん。本人に聞いたらバレちゃうかもじゃん。いや、ゆいにゃんがアホだから気付かない可能性は確かにあったけどさ。
「いや、そこはまずあーしらに確認するのが普通じゃね?」
「ははは、パリピの親玉に連絡取るとかパリピが伝染るじゃん馬鹿なの?」
「モサキチ、後で校舎裏な?」
ああっ!?ひ、平塚先生聞きましたか!今の脅迫ですよね!助けてください平塚先生、俺悪のパリピに虐められちゃう!オラ、ジャンプして見ろよとか古いタイプのカツアゲとかされちゃう!
「すまん、今ケーキ食べてるから」
見捨てられたっ!?き、教師がそれでいいのか!弱い方を見捨てて強い方に味方するとかそれでも人間社会なのか!そんなのは理性のない動物と変わらないんじゃないのか!
「知らないのか榊。人間社会というのは弱きを助ける振りして、少しずつ強者が弱きから搾り取る巧妙に隠された弱肉強食社会なんだぞ?理性が足された事で、やり方がよりいやらしく、より狡猾になっただけで基本的には人間社会と動物社会は変わらん」
そ、そんな馬鹿な!嘘だ、信じないぞ!俺たち若者から希望を奪おうとする大人の策略だ!本当だと言うのなら、証拠を、ソースをだせ!
「ブラック企業と社蓄の関係がちょうどそんな感じだぞ。ソースは私だ」
説得力の塊過ぎて困る。なんて事だ、納得出来てしまった。サキサキどうしよう、教師を目指す若者達のお先真っ暗だよ!
「え、榊って教師になるつもりだったの?」
「いや全然。俺ヤンキーじゃないし」
「おい待て止めろ榊。教師が全員元ヤンみたいな言い方するな」
え、だって体育の厚木先生とか美術の竹中先生とか、俺たちの時代は男子はだいたいバイク乗って走り回ってたんだぜー!みたいなくそ寒い昔はワルだったアピールしてくるじゃないですか。男性教師の俺昔はワルで○○だったんだぜ自慢、シリーズ化できるほど持ってるのあれなんなんですかね?
俺昔は不良だったけど今真面目に働いてるんだぜ偉いだろ的な遠回しな自慢なんだろうか。どう考えてもずっと真面目にやってきた人達の方が偉いと思うし、若い頃それで迷惑掛けた人達一人一人にちゃんと謝罪と贖罪してから偉ぶって欲しいんですけど。
「榊の癖に正論過ぎる……ッ!確かに教師の飲み会でもわざわざ昔の剃りこみ入れてた時代の自分の写真持ってきて自慢する先生居るんだよなぁ。こちらとしては、だから今では生え際そんなに後退してるんですかとしか言いようがないんだよな、あれ」
「あたしもこないだ生徒指導の厚木に呼び出された時そんな話されたな……何か親と上手くいってないって勘違いされてて、先生に相談して見ろ?とか言われたんだけどあたし別に両親と仲悪くないから普通に鬱陶しかった」
榊の癖にって酷くない?俺はだいたい正論と極論しか言ってないぞ。つまり話す言葉の半分は正論と言っても過言ではない。とはいえ厚木先生も優しくしたつもりでウザがられて可哀想。サキサキがヤンキーなのは事実なのに……!
「あたしはヤンキーじゃないっ!確かに髪は染めてるけど……てかそれを言ったら榊だって金髪じゃん!」
ははは、俺はどこぞのヤンキーギャルと違ってこれ地毛ですぅ!ショートヘアじゃないのに綾波レイみたいな色のサキサキやお蝶夫人みたいな見た目のくせにヤンキーなユーミンと一緒にしないでくださーい!
「あーしはヤンキーじゃねーし、これは縦ロールじゃなくてゆるふわウェーブだっつったろモサキチー。川崎さんみたいに遅刻もしないし、一緒にすんな」
「は?あたしもあんたみたいな尻軽女と一緒にされたくないんですけど?」
「は?」
「は?」
ご覧下さいこの2人のメンチの斬り合い。無駄に相手に顔を近付けて睨み合うあたり本当にヤンキーですよね。なんでそんなに顔を近付ける必要があんの?ヤンキーの生態ってほんと不思議。
てかこの中で真面目な生徒が俺とセツのんしかいないとかやべーな総武校。平塚先生、ここ本当に進学校なんですか?
「ちょっと待ってサカキン、そのグループ分けは嘘でしょ!?」
「ちょっと貴一、僕も不良扱いなの?!」
えっ。だって地毛なのこの場に3人しかいないじゃん。教師の平塚先生除いたら俺とセツのんだけ。よってゆいにゃんも戸塚もキラキラもみんなヤンキー。はいQED。つかふと思ったんだけど、1番髪色にうるさいの運動部はずなのに髪染めてるって実はキラキラと戸塚が1番のワル説あるよね。
キラキラは学年のパリピとヤンキー全部のトップみたいなとこ元からあったけど、実は戸塚って身長小さくて見た目儚げだけど喧嘩するとくっそ強いとか、そういうヤンキー漫画みたいな設定隠し持ってない?
「ある訳無いよ!?」
「というか、さも当然のように俺もヤンキー扱いされてるのか……?」
無いのか……残念だ。全然強そうじゃない見た目しといて実は喧嘩超強いとか結構胸熱展開なんだけど。キラキラは自覚が足りないと思います。
「そう言われてもなぁ……僕ももう少し男らしい身体だったら貴一みたいに波動球打てるのに」
あー。スネイクも白鯨も使えるようになったのに、波動球打ちたい欲求はまだ変わってないんだ。うーん、流石に骨格がねぇ。このまま順当に鍛えていっても5年くらいは掛かりそうかなー?
「え?……5年あれば波動球打てるようになるの!?あの時の貴一みたいに!?ホントっ!!?」
うぇっ?!あー、まぁ俺と同じ威力かは分からんけど、それくらいやってればたぶん。見た感じ、今も俺が教えた呼吸法練習してるんでしょ?それとあの時のメニューを続けていけば、俺と同じメニューを楽にこなせる様になる頃には打てるようになってる、とは思う。
「全集中の呼吸?うん!毎日欠かさずやってる!……そっか、あと5年頑張れば、僕にも……ッ!」
お、おお?何か戸塚のやる気が漲ってる気がするな。そんなに波動球打ちたいの?そっかー……ま、まぁ頑張れ。使った俺が言うのもなんだが、この世界のテニス、前世と同じで割と普通なんだけど……テニス漫画ならぬバトル漫画と呼ばれたテニプリ世界の技である波動球とか持ち込んで、戸塚の将来の対戦相手は大丈夫だろうか……?気にしたら負けかな、うん。
「そいやさーモサキチー?あんたあーしとの約束どーなってんの?」
……?身に覚えが御座いませんが?ゴスッ!痛!そうやってすぐ暴力振るうー!だからヤンキーなんだよユーミン……は……?
あれ、その基準で行くと俺の周りの女性で暴力振るわない奴居ないな。あれれ?そうするとやっぱりキラキラと戸塚だけがヤンキーじゃない……?これもう分かんねぇな。
「知らんわバカキチ。てかあーしらがヤンキーならアンタはヤクザだろっつの。あと、とぼけてんじゃねーよ、埋め合わせだよ埋め合わせ!いつまで待たせんだっつーの!」
「……!」
「……!」
「……!」
「………ギリッ」
えぇー?それ俺が行く必要……はぁ、仕方ないな、今日が金曜日だから、明日明後日……は無理だった。来週の土日は?
「は?何で今週駄目なん?つーかアンタ先週も同じ事言ってたじゃん!」
や、俺もこれで忙しいのよ?え、今日?無理無理。だって君らゆいにゃんの誕生日パーティやんないんでしょ?なら俺らで普通に放課後やるし。だよなセツのん。
「当然でしょう。予定があると思っていたからこんな時間にやっただけで、そうでないなら、ちゃんとお祝いしたいもの……その、友達、なのだから」
「……!サカキン、ゆきのん…!うん!やろやろ!料理もたくさんあるしね!えへへ、やった、楽しみー!」
「それはあーしも行くけど、なら何時にすんの?」
ええ?うーん、じゃあ来週の平日じゃ駄目か?つーかキラキラ、元はお前の埋め合わせだぞ俺。むしろお前が空いてないの?
「いや……悪いけど部活の試合近いから、俺の代わりに優美子の相手してくれると助かる」
「隼人はいーの。あーしはアンタに言ってんだよモサキチ。じゃあ来週の火曜日な。次はドタキャンすんなよ?」
ふぅん?……ま、それでいいならいーけども。
チラ、とユーミンを見る。彼女はケーキを少しずつ摘みながら、片手で髪の毛をくるくるしている。見慣れた光景だ。
反対にキラキラを見る。こちらは戸塚と何事か話している。相変わらず物理的にキラキラしたのが周囲を舞っている気がするが、何でこいつずっと笑ってんだろ。デフォルト笑顔なの?顔の筋肉引き攣らないのそれ?
「というか榊君。平然と部活をサボる気なのはどういう事なのかしら?」
「そうだよサカキン!」
や。こないだゆいにゃんもやってたし。今回はちゃんと前持って今話したし。ま、一日くらい許せ。何なら二人も一緒に行「ギュー」…かないよねッ!いでで、耳を引っ張るなユーミン!分かったってば!
「……ッ!榊、そう言えば大志があんたに「ご馳走様」……っ!」
おや、平塚先生はもうおしまいですか?まだまだお代わりありますけど。
「ははは、無茶を言うな。流石に私もこれ以上は食べられないよ。……さて、そろそろ昼休みも終わりだから私は戻るが、お前達も授業には遅れないようにな」
平塚先生がそう言うと、皆が頷いた。締めるところは締めるあたり、こういう時の平塚先生は教師だなぁと感じる。
「それと雪ノ下と由比ヶ浜。お前たちは今日の放課後この続きをやるみたいだから、今日は部活を休みにするのは構わない。この部室に友達呼んで誕生日パーティをするのも、まあ、学校だから本来はあまり良くないがそれぐらいは許可しよう。だが、あまり遅くまで残ったり、大声で騒ぐなよ?あと、私はすまないが放課後は仕事があるので参加出来ない」
「ええ、それは大丈夫ですが……?」
「えと、はい、了解です……?」
や、あの平塚先生、ナチュラルに俺を外されると困るんですが。俺も勿論参加するんですよ?
「ふっ……榊、お前は遅刻だ。拒否は認めん」
「えぇっ!?」
「あの、平塚先生…?」
なん、だと……?や、待って下さい平塚先生!俺が居ないと料理がですね!というか何故ですか?理由を教えてください。
「ああ、それなら1度部活に顔出すことは許可しよう。だがその後は直ぐに生徒指導室に出頭だ。理由は……心当たり、あるだろう?」
「皆目検討も着きませんねっ!」(`・ω・´)キリッ
「授業をサボってるからに決まっているだろうが馬鹿者っ!」
ゴスっ!痛っった!ぼ、暴力反対!教師が体罰は良くないと思います!
「黙れ。私は生活指導だからな、お前がちょくちょく授業をサボってるのは知っていたが……今日は午前中丸サボりだと?いくら由比ヶ浜の誕生日の為でもやり過ぎだ愚か者。全く、限度を考えたまえ!……なので、放課後はまず部室によって、誕生日パーティの準備だけしたら即生徒指導室に出頭だ!拒否は許さん!……2人も、それで文句ないな?」
「あははは、それはまぁ、サカキンの自業自得…ですね。分かりました。サカキン、先始めてるね?」
「……えぇ、それは榊君に原因がありますから、仕方がありません。ただ、出来るだけ早く解放していただけたら助かります」
「それはそこの馬鹿者次第だな。まぁ良い、では、私はもう行く。それと由比ヶ浜」
「へ?は、はい!」
「誕生日おめでとう。今日はゆっくり楽しむといい」
「……!はいっ、ありがとうございます!」
そんな感じで平塚先生は白衣を翻して去っていった。相変わらず去り際がどちゃクソカッコイイ人である。何で毎回あんなニヒルに決められるんだろうか。ちょっとコツを教えて欲しい。
「はぁー、平塚先生ホントかっこいー!」
「分かる!それに最近凄い綺麗になったよね!」
「……そうね。人は変われば変わるものだわ」
いや、それよか俺を見捨てた事についてなんかないの?とても酷い裏切りにあった気分なんですけど?
「あら。真面目に授業に出ない不良生徒が何か言ってるわ。日々の生活が人格を形成すると言うし、このままだと榊君はヤクザまっしぐらね?……容姿も向いてるし、意外と天職かもしれないわね」
「あっ!確かに!よく考えたらサカキンこの中で一番授業サボってるじゃん!超不良じゃん!それでよく人の事ヤンキーとか言えたね、サカキンのバカ!ヤクザ顔!」
おっとお前達、それ以上親からもらった俺の顔を馬鹿にするなら俺にも戦う準備があるぞ?具体的には今度から昼飯の量を変えずにカロリー量を超増やす。
「……榊君、貴方、最低最悪の鬼畜生ね?」
「そ、それは卑怯だよ反則だよ!サカキンのバカっ……このっ……悪魔めっ!」
悪魔でもいいよ……悪魔らしいやり方でお話を聞いてもらうからっ!てかそれが嫌なら食わなきゃいーんだよ食わなきゃ!……あれ、寧ろ逆に作らない方が効果高いか?
「ごめんなさい榊君。私が悪かったわ」
「サカキンごめん。悪ノリし過ぎた」
「2人ともそれで掌返しちゃうんだ!?……っていうか、ヤクザ?」
「いや待て、そもそも2人は毎日榊の手料理食べてたのか!?」
いやサキサキよ何を言うか。普通に毎日ではないよ。土日は当然作ってない。あと祝日も。
「それ、つまり学校ある日はほぼ毎日食べてるって事じゃん……!」
そうとも言うな。なに?サキサキも食べたいの?まぁ川崎少年にも姉ちゃんをよろしくって言われてるから、食べたければお昼に部室に来てくれれば構わんぞよ?……それならそろそろ昼の献立真面目にバランス考えるか。セツのんとゆいにゃんには禁断の味食べさせまくったけど、流石に他の人にやるのあんまり良くないよね。
「良いの?」
「駄目よ」
いや何でセツのんが答えるんだし。え、部長だから?……別に良いじゃん昼飯くらい。どうせ作るの俺だけなんだから。まぁ、無理に来いとは言わんから、食べたくなったら顔出しにおいで。ただ、あんまり友達とかは連れてこないで……サキサキもぼっちだからそれはないか、無神経だったなごめんごめん!
「うっさいな、もう……じゃあ、昼休みには顔を出すから」
「あいよ」
「……ッ!サカキン……」
「……はぁ、仕方ないわね」
よし、じゃあ決まりだなっと。じゃあケーキ以外は食べ終わった見たいだし片付け「キーンコーンカーンコーン」るかなって予鈴か。んじゃあまぁ片付けは俺やっとくから皆は戻りなー?
そう言って使用した食器類全てカゴに入れて、食器洗いセットと共に部室を出た。俺がやっておく、と言ったのに後ろでテーブル拭いたり座布団片付けたりしてくれてるセツのんとゆいにゃんは言っても止めないので素直に甘えておく。
残りの皆はやる事も無いし、普通にご馳走様と言って教室へ戻って行った。サキサキは少し手伝いたそうだったが、別にやってもらうこともないので帰しておいた。
ぽす
っとぉ?足に軽い衝撃があったので見るとローキック体勢のユーミンが居た。どうやら真っ先に帰ったのかと思ったら、トイレに行っていただけらしい。地味にちゃんとハンカチで手を拭いてるのがユーミンらしい。
「モサキチ、あんたが誰と何してようがあーしは別に良いけど、約束は守れよー?」
「……ユーミンには敵いませんなァ。ま、それでいいなら俺も構いませんとも」
「そ。なら良い。……あと、たまに海老名連れて行くかも」
「誰だよそれ。ま、1人くらいなら構わんけども。……別に来たければ毎日来ても良いんだぞ?」
「ばーか。モサキチのメシに慣れたら普通のメシ、食えなくなるじゃん」
さよけ。ま、その辺の自己管理がちゃんと出来るあたり、やはりユーミンは良い女よの。
そう言うと彼女は鼻を小さく鳴らして、何も言わずに戻って行った。こちらも特にそれ以上は何も言わずに、黙々と食器を洗う。あまり時間もないのでサッと終わらせた。残ったブッシュ・ド・ノエルは中途半端になってるところから少し大きめに切り落として、手の着いてない部分を空間倉庫へ放り込んだ。2人も他の片付けを終わらせた様なので、揃って部室を出る。鍵はこのままセツのんが持ってることにしたらしい。
3人で並んで歩く。予鈴がなった後だから流石に出歩いている生徒は殆ど居ない。トイレに行ってるものぐらいだろう。
「……由比ヶ浜、さっきは済まなかった。最初からちゃんと話をしとくべきだったな。……放課後、仕切り直しさせてくれ」
「…!や、やー!あたしも勝手に勘違いして、勝手に決め付けて……その、ごめん。サカキンも、あたしの為に一生懸命やってくれてたのに……本当に、ごめん」
謝るなよ。俺が紛らわしいことをしたせいだし、どうあれ由比ヶ浜の要望無視した形になったのは俺のせいだしね。ま、放課後はちゃんとやるから、気を取り直して楽しんでくれたら嬉しい……まぁ俺は遅刻決定なんだが。
「サカキン……うん。待ってるから、なるべく早く来てね?」
「努力する……平塚先生にそれが通じるかは分からんけどな」
「開幕土下座でもして早々に許しを乞うのよ。何としてでも早く終わらせてきなさい。……待ってるわ」
ははは、先始めてて構わんからな。それじゃセツのん、放課後な。
「えぇ。由比ヶ浜さんも、放課後、また」
「うん!また後でね、ゆきのん!」
そう言って俺たちはにこやかに別れた。ちょっと失敗したが、幸いやり直すチャンスはもらえたので、放課後は何とか楽しませたいところだけど……やれやれ、考えることが多過ぎるな。
……はぁ、平塚先生の話、早く終わると良いけど。……無理だよなァ。
◻️◻️
放課後。
コンコン。
「失礼します。平塚先生、来ましたよー?」
昼休みに平塚先生に言われた通り、まずは部室に寄って昼に食べれなかった分の料理とその他を並べて、セツのんとゆいにゃん、そしてユーミンの3人ともう1回乾杯だけして、1人出てきた。
戸塚とキラキラは部活で、サキサキは今日はコンビニバイトの面接との事だった。一応戸塚とキラキラは部活が終われば顔を出すかも、とは言っていたが……2人とも試合が近いらしく、最近は遅くまで練習があるらしい。誕生日パーティが終わる前に顔出せれば御の字、だそうだ。
正直に言えば昼休みの時でさえセツのんとユーミンはほぼ会話してなかったし、俺が抜ければ現状凄い気まずい空気が出来上がると俺でも思うが、どちらもゆいにゃんの誕生日をお祝いしたくて集まってるわけで、流石に多少は気を使うだろうと判断した。
あとはまぁ、セツのんもユーミンも、どちらも口が悪いところはあるし、正直反りが合わない2人だと言うのは分かるが、それでも根はどっちも善良なのだ。これを機に、気に食わない相手とも多少は歩み寄る、という事が出来れば良いなぁと言う思惑もある。
間に挟まれたゆいにゃんは大変だろうけど、それはそれでゆいにゃん自身ももう少しユーミンやセツのんに言いたい事を言えるようになった方が良いと思うので、頑張ってもらうことにしたのだ。
だが心配っちゃあ心配なので、できる限りお説教は短めにしたい。なので何とか話を早めに終わらせようと思ったのだが、たぶん難しいというのは分かっていた。たぶんというか絶対授業サボったことだけじゃないしね、怒られるの。
とはいえ、まずは平塚先生に会わないと話にならないのだが……指定された生徒指導室の扉をノックしてみても反応がない。念の為ドアノブを回してみる。
すると、ガチャ、という音がして普通に扉が開いた。他の先生方が使っているとかだと気まずいので、そろそろーと静かに開いてみると、部屋の中の電気は消えていて、カーテンも閉まっていて薄暗い。どう見ても不在の様だった。
いや、それにしては鍵は開いてるんだよな。あれ、ひょっとして一旦来てどっか行ったのだろうか。これは俺中で待っているべきなのか、それとも職員室に呼びに行くべきなんだろうか。や、職員室に平塚先生を呼びに行くの、積極的に怒られたいみたいでちょっとやだなー。
そうやって生徒指導室の扉に手をかけたまま、廊下と生徒指導室のちょうど境目を足だけ入ったり戻ったりしていると、背後から声が掛けられた。
「榊、早く中に入れ」
お?なんだ平塚先生、どっか行ってt「ガッ」んで……およ?
音のした方を見ると平塚先生の手が、俺が手を掛けていた生徒指導室の扉を大きく広げていた。その拍子に、軽く掛けていただけだった俺の手が外れ、空を切る。
ふと見ると平塚先生の顔を見ると、不思議な顔をしていた。目は潤んでいるのに、眉毛は下がりも上がりもしていない。歯を食いしばるような音が僅かに聞こえた。なのに唇は真一文字に結ばれ、怒っても無ければ悲しんでいるようにも見えない。完全な無表情だった。
何の言葉もなく見つめ合う俺と平塚先生。瞳は真っ直ぐに俺の瞳を貫いているが、何故だか気圧される。まるで、そう、努めて無表情を装っているような。
(というか俺、この顔前に見たような……?)
あっ、と閃いた瞬間には平塚先生に思い切り突き飛ばされていた。
僅かにたたらを踏む。倒れはしなかったが身体は僅かに動いて、俺の体は完全に生徒指導室の中へと入っていた。見ると当然の様に平塚先生も足を動かしていて、俺の後を追うように同じく生徒指導室へ。
ガチャ、と平塚先生が後ろ手に鍵を閉めるのが見えた。これはまずい、この状況は非常に見覚えがある。具体的には2週間くらい前に!
「ひ、平塚先生!落ち着いて下さい!ここまだ学kんぐっ!」
「貴一……!んぅっ」
せめて少しでも止められないかな、と思ったがやはり止まらなかった。問答無用とばかりに迫ってきた平塚先生は、俺の頭を抱きしめるようにその両腕で俺の頭を固定すると、そのまま唇を奪ってきた。
押し付けるように唇同士を2度、向きを僅かに変えて貪られると、すぐさまこちらの口内へ平塚先生の舌が侵入してきた。
彼女の舌はそれはもう情熱的に動き回り、こちらの動きなぞ知ったことかと言わんばかりだった。あまりにも激しい舌使いで呼吸が少し苦しい。直ぐに口周りががヨダレまみれになる。
どうやらちょっとやそっとでは止まる気もなさそうなので、何とかスタンドだけを使ってこの部屋の空間を固定し、音漏れと他者の侵入を防ぐ。カーテンが閉じられてて助かった、これでこの部屋の状況は外に伝わらないだろう。最低限は手を回せたので後は平塚先生が、少しでも早く満足するように、彼女の舌の動きに合わせる事にした。
「……ハァッ、んっ……じゅる……きいちぃ……!」
約5分。
生徒指導室の壁に掛かる時計で、たっぷり5分。体感時間的にはその3倍くらい。休むことなく何度も口付けを交わし、何度も互いの舌を絡ませ、幾度となく唾液を混じえた。
やがてお互いの唾液が混ざったモノが、止めどなく滴るほどに溜まった頃、平塚先生は俺の顔を両手で優しく挟んだ。閉じた口をこじ開けてこちらの口内へ侵入した舌が、先導するように溜まった唾液を流し込んでくる。
少しの間を置いて、溜まった唾液の全てが俺の口の中へ流し込み終わったのだろう。平塚先生は舌を引き抜き、口を大きく開いてこちらの唇を噛むように、上下から無理やり閉じるように押さえ込んできた。
お互いに閉じていた瞼が開かれ、お互いの鼻もまともに見えないほどの至近距離で視線が交わる。情欲と嫉妬に濡れた瞳が、彼女の要求を正確に伝えてきた。
ごくり、とわざと大きく喉を鳴らして唾液を飲み込む。
俺が唾液を飲み込む音が聞こえたのか、それとも単に察知したのかは分からないが、情欲と嫉妬だらけだった彼女の瞳に歓喜の光が宿ったのが見えた。
同時に、押さえ込まれていた唇がゆっくりと解放され、名残りを惜しむようにべろり、と、大きく彼女の舌が俺の唇を舐め上げた。
「んん…ぷはぁ……、はぁー」
ようやく解放され、思わず大きく息を吐く。口と口どころか、口周りの至る所から俺と彼女の間に無数の唾液の橋を掛けた。噎せ返るような濃い匂い。その中に、清涼な香りが含まれていたことにようやく気付いた。ブレスケア用品の匂いだった。どうやら最初からこうするつもりだったのだろう。
何となくそうだろうなと思っていたから、そこまで取り乱す様なことは無かったが、ここが学校であることを忘れそうだった。結構ヤバい。
平塚先生と目を合わせる。蠱惑的で淫靡な笑み。唾液に塗れた口周りを拭おうともせず、ぬらぬらと艶やかに光る口を歪めて嬉しそうに俺を見る彼女。だが何度でも言おう、ここはまだ学校である。何時ものハグ程度ならワンチャン誤魔化しが効くが、キス、それもディープな方とか絶対に無理だ。
流石にやり過ぎだと思い、平塚先生、と抗議の為に口を開いた。
それと同時に己の失敗を悟った。
淫靡だが歓喜に塗れた笑みを浮かべていた彼女の顔が、一瞬で不機嫌な色に染まった。未だ俺の顔を挟んでいた両手で無理やり首に付けられていたネックウォーマーが上にずらされた。しかし途端にクリアになった視界。
どうやらネックウォーマー全部外さずに髪の毛を全て取り払う為に僅かに残されたようだった。なにを、と疑問を口にする間もなく再び唇を奪われる。
再び差し込まれた彼女の舌が、激しく口内で暴れ回りながら、彼女は俺のネクタイを引いて僅かに俺の頭を下げると、下から斜め上に押し上げるように更に顔を密着させ、その舌はより深く俺の口内を荒さんと暴れ回った。
そちらに気を取られていると、いつの間にかモゾモゾと彼女の手が垂れ下がった俺のネクタイを解き、ワイシャツのボタンを1つずつ外し始めていた。
「んんん──!ぶはっ、ちょ、平塚先生!?あと一日です「うるさい」んぅ!?」
無理矢理塞がれた口、強引に解きほぐされてゆくワイシャツ。やがて全部のボタンが外れると、彼女は強引に上着ごとワイシャツを開け広げた。
開放され、空気に触れた肌が冷える感覚。多分傍から見たら俺の首筋から鳩尾付近までを埋め尽くす、夥しい数のキスマークが存分に見えた事だろう。そして唐突に口が解放された、と思ったらいきなり肩口に激痛が走った。この2週間でほぼ毎日体験していたとはいえ、未だに慣れない痛み。
「〜ッッ!!」
その痛みを気合と根性で抑えるが、いつもより更に強烈な痛みが、いつもよりずっと強く噛みつかれている事実を否応なく知らしめる。やがて少しだけ収まった痛みの代わりにじゅるじゅると啜る音が耳に聞こえ始めた。やはり今回も血が出ているのだろう。
またしても俺の肩に歯型が増えたな、と思いつつ、絶え間なく俺の血を啜る彼女の頭を撫でる。無論、彼女好みの波紋を流しながらだ。
またしても数分の時間を掛けて、彼女はようやく俺の血を啜り終えると、唾液と血で染まった口周りをべろべろと舐め回して拭き取った。そこでようやく人心地着いたのか、こちらを咎めるような目で小さく呟いた。
「今は2人きりだぞ……ばか」
「いや、2人きりだが学校ですよ平塚先生!?」
そんな可愛い顔しても危険行為には変わらない。あれだけ外では、特に学校では気を付けましょうって言ったじゃないですか!
「……やだ。名前で呼べ」
駄目ですってば。つーか落ち着いてくださいよ本当に。明日ですよ約束の日は。ここまで来てこの2週間を台無しにする気ですが?
「うるさい、そんな事分かってる……でもやだ。今は貴一に名前で呼ばれたい……!」
「……はぁ。もう、特別ですよ、静さん」
途端に胸元に軽い衝撃、同時に背中に日本の腕が回され、次の瞬間には強く抱きしめられた。見るとぐりぐりと静さんが俺の胸に顔を擦り付けていた。少しだけ猫のようだ、と思った。
しかし、そんな和やかな感情は一瞬で吹き飛んだ。胸元から響く微かな嗚咽。そして唾液とは違う、微かな暖かみを持った液体が開いた胸を濡らす感触を捉えた。……静さん?
「ふっぅぅぅうぅううう……!ぎい"ぢの、ばか!ひっく、うう…私がっ、目の前にっ居るのにぃぃ、で、デートの、やくぞぐ!じやがっでぇぇー!……ヒッグ、ばがぁ!う"わ"ぎも"のお"お"お"っっ!!」
あー……うん、やっぱりそれよね。分かってた!
だって明らかにユーミンが埋め合わせの約束の話をし出した瞬間に不機嫌になったもんね。うん。俺も良かれと思って集めたメンバーだったけどあの瞬間は本気で失敗したなと思ったし。つまり二重の意味であの時間のあの誕パは失敗していたのだ。
「ヒッグ、うぅぅぅ……あ"れだげ浮気はや"だっで、だめ"っでいっだのにぃぃぃぃぃ……っ!だだでざえきいちがほがのおんなのだんじょうび、祝うのどがっ、やなのに"っ!め"のっ、め"の"まえでぇぇぇ……!ばがっ……ぎい"ぢの"ばがぁぁぁぁ!」
「………あー……ごめんなさい、静さん。うん、俺が全面的に悪いです。でも誓って俺が本気で好きなのは静さんだけなので、それだけは信じて欲しいです」
正直に言えば、ユーミンがどんな考えで俺を誘ったのか何となく分かってるし、嘘偽りなく俺が好きなのは静さんだけなので、放課後デートの様に静さんは思っているだろうが、俺にとってはただの遊び以外の何物でもない。
だが、静さんからしてはそうは見えないのは普段の彼女を見ているから十分に理解できるし、そう見えると分かっていて断り切れなかったのはどう考えても俺が悪い。
もちろん俺にも幾らか言い分はある。あるけど、それは目の前で啜り泣く彼女を思えば、口に出そうとはとても思えなかった。それに、いつもなら軽く嫉妬しても家でしかここまでの事はしない。何だかんだ我慢してくれる。逆に精神的にギリギリだった2週間前なら、俺は今襲われていただろう。
そんな彼女が今回だけ、家まで我慢することも出来ず、されど2週間前の様に襲い掛かって最後までしなかったのは、やはりギリギリまで耐えようとしてくれたから、なのだろう。
なので俺に出来ることは、ただただ謝ることだけだ。
いつものように、左手を背中に、右手を頭に。静さんの望むままに頭を撫でて波紋を流し、同じように背中を擦りながら、優しく抱きしめる。
「うぅぅぅ、うぅ~〜っ!きいぢのばがっ、ぢゅる、わ"だし以がぃのお"んなに、色目、づがうな"ぁ……ッ!」
「や、それは流石に誤解ですよ。確かに俺色んな人と割と簡単にハグとかしますしされますが、色目とか使ったことはないです。そういうの静さんだけです」
いつの間にか、開いた胸元にねっとりとした感触。俺の胸を静さんの舌が這いながら、時たま思い出したように皮膚を吸われる。多分また更に彼女の跡が広がるのだろうが、彼女は泣きながらこうして俺に跡を残す方が回復が早い。極たまに噛み切られる事もあるので多少俺の体に痛みは残るが、どうせすぐ治せるのでそんなもんで済むなら大したことはない。
そうやって静さんが落ち着くまで、ひたすら謝りひたすら撫で、ひたすら抱きしめること早1時間。少し前に嗚咽は止まり、首筋を噛み切られることも無くなった。
今は俺の胸に顔を擦り付けながら時折啄むように首筋やら胸元やらに吸い付いている。いつの間にか「うぅ~〜!」と機嫌悪そうだった唸り声が「うぅ〜〜♪」と少し上機嫌になってきたので、恐らくもう少しだろう。
……そこから更に10分ちょっと待つと、遂にその時が来た。俺の胸の中から全く動かなかった静さんが自分から離れたのだ。そしてこちらを少し見上げるように覗き込んだと思うと、唐突に目を閉じて唇を突き出してきた。
「………んっ!」
キスしろ、という事らしい。先程まで子供のように啜り泣いていたのに、機嫌が治ってもまだ子供っぽい。学校での普段の姿があれだけ大人っぽいのに、俺の前だと何故だかこんな姿ばかり見せてくれる。それが何故だかおかしくて、けれどどうしようもなく嬉しく感じる。口が自然につり上がって行くのを自覚した。
「……んっ!!」
いつまでも反応が無いのに苛立ったのか、いや、ちょっと不安になったみたいだな。……本当に、可愛い人だ。
「貴一…?んぅっ!?」
わざとギリギリまで焦らして、唐突に唇を重ねた。舌は入れない。これ以上は手を出したくなってしまうから。
約束の日は明日だ。だから、今日のお仕置きは明日に後引くように、寝る直前と決めている。今にも愛が溢れてしまいそうだが、この2週間の我慢を思えば、ここで堪えることなど造作もない。
「ンンッ……んぅ、ぷはぁ…貴一……♡」
「……静さん」
「……うん。分かってる」
では、お互い戻りましょうか。平塚先生も流石にもう仕事に戻らないとまずいでしょう?俺の方も携帯サイレントにしてましたが……はは、やっぱりエグい事になってるな。
「……ま、1時間以上もここに居たからな。仕方ない、面倒だが仕事に戻るよ。……今日は、あまり…遅くなるなよ?」
「ご心配なく。……俺だって、明日を待ち焦がれているんですから」
「ならいい。……では、後でな」
「えぇ…また、後で」
その言葉を最後に、平塚先生は白衣を翻して生徒指導室を出ていった。たぶん散々泣いた上に俺の胸に顔を擦り付けまくったのでメイクがぐっちゃぐちゃな事は全然気付いてないと思う。冷静に見えて全然そんな事無いのだ。何故わかるか?俺も同じだからだよ。
だがそれがまた可愛い。なので崩れたメイクの時間は巻き戻して置いた。ああ言ったしっかりしてるようでそうでも無い姿を知ってるのはなるべく少ない方がいい。出来ることなら、俺だけなのが1番だ。流石にそれは難しいと分かっているけれども。
……いかんな。気が逸っている。
やはり俺自身も冷静になどなれそうもない。嘘偽りなく、俺は平塚先生を欲している。自分で言うのもなんだが、この想いは平塚先生が俺に向けてくれる想いよりずっと重いと思う。それぐらい俺は独占欲が強い自覚がある。だから…
本当に、明日が待ち遠しい。
気が昂って、どうしようもない程に。
ああ、静さん。貴女の全ては俺のモノです。
……他の誰にも、触れさせるものか。
◻️◻️
おぃっすー
遅れてすまんすま……ん?
「ふっ…ふぅー、おそ、っいわよ!榊君!」
「お……せっーよ、モサきっぷ!?チ……!」
「え、えぅ、苦し……、サカ、きんだずげ…うぐっ」
えぇ……?なにこれ意味不明。どういうことなの?
平塚先生を見送った後、いそいそと部室に来てみた。正直にぶっちゃけてユーミンとセツのんは喧嘩してそうだなと思っていたので、扉の前に立っても罵声やら何やらが聞こえないし、あいつら本当に先にパーティやってんのかな……?と思っていたんだけども。
何か部室開けてみたら3人が畳の上でくたばってる。しかも3人漏れなくスカートのホック外してチャックまで降りてて、パンツが普通に丸見え。更にワイシャツの下の方のボタンが外され、ぽっこり膨らんだ腹が丸出しだった。
そしてテーブルの上にはだいぶ無くなった料理の数々……うわマジか、カルパッチョとローストビーフ、オムレツが無くなってる。どれも3人で食える量じゃ無かった筈だが。他にも結構減ってるし。え、用意した俺が言うのもなんだけどこれ本当に3人で食べたの?ヤバくない?
「お前ら何してんの?それともこれがパリピの誕パなの?」
「そんなワケっ、ねー、だろ……アホ!」
「くだらない事でっ……ウッ、しゃ、しゃべらせないで……!」
「いい"がらはやぐだずげて、ざがきん…!」
いやどんだけ死にかけてんのお前ら。食ってくれるのは嬉しいけど無理してまで食べろとか言ってないんだけど。誕生日パーティなんだから楽しく食べて楽しく過ごして欲しいんですけど。腹丸出しってだけでもちょっと女子としてどうなの?って感じなのに、なんでスカートまで下ろしてんだよ。
多分ベルト緩める感覚なんだろうけど、せめて俺が来る前までに直しておくとか出来なかったの?何お前ら女子高生のくせにもう恥じらい捨ててんの?ないわー……
「ガチトーン"でない"わ"ーっでいわない"で!」
「も、もうなんでも良いから、早く、何とかしてもらえるかしら……!」
「……あーしは、いい。何すんのか、知らないけど……へーきだし」
ふーん?つんつん。よっ!←腹を軽く押してみた。
「ひぁっ?何す…うっぷ!てめっ何して、ウッ、モサキチぃ!!」
はん?強がってんじゃねーよアホ、腹パッンパンじゃねーか。なにこれ風船?いつからユーミンの腹は風船になったんだよ、まったく……お前ら2人もだぞ?ま、誕生日パーティだし浮かれてんのは仕方ないけどよ。ま、それはさておき。
ピローン♪
「激写」
「「「!?」」」
か・ら・のー??
ピローン♪
「動画撮影開始」
「ちょ、サカキンっ!?ウッ」
「榊君、貴方ね!?うぐっ」
「モサキチ、あんた後で覚えてろよ……!ウプツ」
タイトルは「肥ゆる少女達~子供じゃないの脂肪なの!~」って所かな。あ、心配しなくていいよユーミン、ちゃんと覚えてるから。毎日この姿をこの写真と動画で見て爆笑しながら覚えておいてあげる。嬉しいよね?どうしたのもっと喜んで良いんだよ?覚えていて欲しいんだもんね?あ、なんならSNSにも上げよっか!流石にパンツとかはモザイクかけなきゃだけど皆にもよく知って貰えるよ!やったね3人とも?
おお?なぜ睨むの3人とも。俺は善意で言ってるんだよ?おっと、無理に立ち上がっちゃ危ねーよ、気持ち悪いんだろ?まだ動画撮影中だからひょっとしたら3人がマーライオンのモノマネしてる姿激写しちゃうかもしれないじゃん。流石にそれは女の子っていうか人としてどうかと……あれ、ひょっとしてそういうの見せたいタイプだった?ごめんねー気付かなくってさぁ!俺としてはそういう性癖ないからマジ勘弁なんだけど3人がそういう特殊な趣味持ってるなら仕方ない、動画撮影とネットにアップくらいは手伝うよ!あ、でも流石にマーライオンのモノマネしたら近寄らないでね!
「ぅぐぐぐ…ッ!モサキチの分際でっ……ウプ!」
「ゆ、優美子!何してるのっ!?はやく、早く謝って!サカキンに早く謝って!そうしないと身動き出来ない今じゃサカキン止められないんだよ!?私達まで巻き添えになっちゃうよ!?けぷっ」
「……諦めなさい、由比ヶ浜さん。普段の万全な状態でも止められないのよ?身動き出来ない今じゃ、まな板の上の鯉にも程があるわ。どうせこの後あられもない姿を散々撮られて、それをネタにこれから一生榊君に笑われながら生きていくのよ……!どうせまたねぇどんな気持ち?って聞くんでしょう?早くやりなさいよ!一思いに早くやりなさいよ!このっ……鬼!悪魔!榊君っ!」
ふーははは、そこまで言うのならやってやろう!喰らえ我が秘奥義!何か女の子が酷いことになる光線!どどんぱー!
「それパクり……きゃあ!」
「しかもこの光はどちらかというと太陽拳…ひゃん!」
「何の話してんだあんたら!…きゃん!」
3人が可愛い悲鳴を上げたその直後に光は収まり、そこには3人の更にあられもない姿が……!
「うぅ、これでもうあたしサカキンの……あれ?」
「こうなったら責任をとらせ……あら?」
「なんで隼人より先にモサキチに……あん?」
無かった!ふーははは、期待した大きいお友達の諸君残念だったな!俺が3人のサービスシーン用意すると思った?残念!流石にそんなことまでサービスしないよ!m9(^Д^)プギャー
な──んちゃった☆本当はお腹すっきりらくらく!飲みすぎ食べ過ぎの二日酔いや胸焼けにも効果絶大キャベジン真っ青の何かふわっとしたビームでした!これでもう3人ともお腹すっきりどころか着衣の乱れも治っておまけに口元の汚れもキレイキレイしといたよ!もちろん写真も動画も嘘です!どう?安心した?
まぁ正確にはケータイのフラッシュを空間弄ってより強い光にして、その隙に波紋法とスタンドで3人の消化を一気に進めただけだが。ちなみに携帯の写真撮った時の音とかは単純にその音を録音しといて流しただけである。
「「「………」」」
あれ、どした?いつもなら拳が飛んでくる頃なのに。あれ、ひょっとして俺が本気でそんなことすると思ったの?や、いくら俺でも下着姿の女子高生の写真撮ってネットにアップとかしないんですけど。というか俺個人的に下着姿とか別に興味無いしなんならさっきの姿エロくないって言うかただ下品っていうか汚いっていうか残念っていうか……ぶっちゃけうわぁって感じだったから好きな人がいるなら見せない方がいいよ!
「もう遅いよバカ!サカキンのアホ!というか女の子の恥ずかしい姿見といてその反応ってどういうことなの!?」
「(なぜ私は少しガッカリしてるのかしら…?)そ、そうよ榊君、今のは悪ふざけにしても行き過ぎよ!……あと、今回は撫でたりしないのかしら?」
「……モサキチ、あーしのパンツは安くねーぞ……?」
や、ぶっちゃけ女の下着とか見慣れてるし。つーか恥ずかしい姿ってゆいにゃん、もう少し色気のあるパンツ履いてから言って。純白とか言われても女子の下着で白とか漫画やアニメで定番すぎて反応に困る。せめて黒とか赤とか……ごめん、ゆいにゃんには無理を言ったな。
セツのんは撫でて欲しかったの?うーん、まぁこないだ頑張ったみたいだし良いか。それに一緒にゆいにゃんの誕生日パーティの準備頑張ってくれたし、オプションで髪の毛のブラッシングもつけてあげよう。ただし完全なサラサラストレートにするからよろしくね!
は?何逆に聞きたいんだけど高い金出せればユーミンのパンツ買えんの?それなんて援交?流石ビッチクィーン、そんなバイトしてるんだヤバっ!ガチビッチじゃん!ちなみに幾ら払えば最後までしてくれるの?
「違っ、今日はもうちょっと何かあるかとってそれもちがぁーう!っていうかサカキンむちゃくちゃ見てるじゃん!ガン見じゃん!興味無いとか言っといてしっかり見てるじゃんバカ!アホ!キモイ!セクハ……あれ、今見慣れてるって言った?」
「私は猫ではないのだけれど……ま、まぁしてくれると言うのならお願いしようかしら?」
「誰がそんなバイトするかアホ!あーしはビッチじゃねーって何度言わせる気?だいたい金であーしを買おうなんて甘いんだよ。最低でも1000万は……待った。ごめん、あーしが悪かった。謝る。だからさも当然の様に取り出したそのアタッシュケースは仕舞えし。バカ止めろ見せんな!札束ぎっしり詰まった中身見せんな!ちげーよ金の延べ棒なら良いって話でもねーよ!?」
ちっ、なんだ買えないのか。2億くらいまでなら出しても良かったのに。
まぁそれは置いといて実際何があったの?セツのんとゆいにゃんはまぁ最近の食の良さ的にやってもおかしくないけど、ユーミンはあんな食ったりしないじゃんいつも。ああほらセツのんはこっちおいでな。わちきの梳りテクを見せちゃる!
「止めろよ?いくら金積まれたって絶対にやんねーからもう止めろよ?いーか、絶対だかんな!?ちょ、バカ!だからやめろっってんだろ!?ちょっと本気でぐらつきそうになっからマジで止めろバカキチ!」
「あら、そうは言っても榊君は男の子なのだし、流石に毎日やってる私達には……あっ、きもちいぃ……?いえ、これはそんなレベルじゃ……ふみゅ」
「あたしもゆきのんも大食いじゃないから!っていうか話を逸らすなー!って優美子に2億ってどういう…ゆきのん!?今結構聴き逃しちゃいけない事言われたよ!?何でサカキンの膝枕で気持ちよさそうにってあーもー!ツッコミどころが多過ぎて何から言えばいいのか分からないよー!」
……笑えば、いいと思うよ?(`・ω・´)キリッ
「そのネタやる気ならせめて髪の色の近い咲希がいる時にして」
アッハイ、すんません。くっ、ネタ元まで理解された上でのツッコミだから反論出来ねぇ……っ!こやつ、いつの間にエヴァまでっ!?やるなゆいにゃん!!
「サカキンから借りた名作シリーズ、ようやく1つ見終わったけど正直最初のは最終回とかその辺意味分かんなかった。劇場版の方がまだちょっと理解出来たよ……って違うから!止めて!そんな話がしたいんじゃないから!」
ん?そうなの?なーんだ、せっかくゆいにゃんの誕生日パーティだから大画面テレビで名作映画とか鑑賞会もやろうかと思ってたのに。劇場版なのにテレビ版と大して変わらない生徒会役員共とかオススメだよ!まぁいいや、とりあえず俺もちゃんと合流できたことだしはいカンパーイ!改めてゆいにゃん誕生日おめでとー!
「へ?あっ!ありがとー!カンパーイ!おーいしー!ってあれ?何気なく手渡されて飲んだけどこんなのあった?桃味の飲み物なんて置いてなかったような……?」
ふ、こんなこともあろうかと用意しておきました!まだ暑い季節始まったばかりなので、桃のフローズンスムージーだよ!ゆいにゃんが何気桃とか好きみたいだったから作ってみた!甘すぎずくどすぎず、さりとて桃の美味しさを際立たせる俺の自信作だよ!喜んでくれたようで何よりでごんす!
「わっ、これも手作りなんだ!?サカキン本当に料理上手だよねー。しかもサカキンのおかげでお腹もスッキリしてるからまた食べられるし!ハッ!待って?おなかいっぱいなの治して貰えるってことはサカキンと一緒に居れば永遠に食べ続けてられる?」
できるし別に構わないが、無茶苦茶太るぞ。俺別に腹の中のもの無くした訳じゃないし。あくまで消化を進めてるだけ。しかも消化効率滅茶苦茶良くして吸収させてるから、普段より栄養もカロリーも大きく吸収してる。ちゃんと後で運動しないと肌が綺麗になる代わりに脂肪でぷよぷよになるから気をつけてね!
「え"っっっ……?それ、まじ?」
「嘘つく理由無いだろ」
とか言ったら3人揃って固まった。俺の膝の上で髪の毛サラサラに梳られてたセツのんがこちらを見上げるように蒼白な顔をしている。金の魔力に負けそうで少し離れた所にいたユーミンは完全な真顔になっていて、ゆいにゃんに至っては蒼白な顔のまま酸欠の鯉のように口をパクパクしている。というか、俺のイリュージョン誰ももう気にしてないのすごくない?出来て当然みたいな反応なんですけど。地道な活動が完全に身を結んだね!
にしても固まったまま戻らんなみんな。うーん、少し衝撃的事実過ぎたか?仕方ない、フォローしとくか。
まぁ少しくらいデブるくらい気にするなよ!女の子は少しくらいぽっちゃりしてた方が人気あるって言うだろ?それにほら、いざとなったら榊式3日間集中ダイエットでだいたい何とかn「サカキン、その話詳しく」えっ?や、本当に太「榊君、具体的な効果はどのくらいかしら」ふぇっ!や、やー個人差あると思うけど俺が3日で3キロ落としたくらい?「はぁ?そんなんで体調とか大丈夫なん?」うぇぇ?そ、そりゃもちろん俺の特殊なサポートがだねっていうか待って!思ったより食い付きがエグい!やっぱり今のナシで!
「は?今更何言ってんのサカキン。というか本当に3日で3キロも落ちるの?」
「そうよ榊君、今更無かったことになんか出来ないわよ?というか誰のせいでこんな事になったと思ってるの?責任取りなさい」
「おいモサキチ、特殊なサポートって具体的にはなんだし」
えっ、いやまぁ本当に3日でやるなら3日間学校行けないけど出来なくはないかな?たぶん。本来は2週間くらいかけてゆっくりやるというか、一日の食事全て俺の管理下において全身ケアしながら……っていうか、これ俺が悪いの?俺が責任取るような話なの!?
「当たり前じゃん。3日か……週末と一日サボり、かな?」
「当然でしょう。いえ、由比ヶ浜さん。もうすぐ夏休みよ。無理に学校を休まなくても2週間の完全な状態で受けるべきではなくて?」
「それ以外に何があんだよバカキチ。あー、もうバイトのシフト出した後だわ。ちっ、めんどくせー。で、場所は?」
「サカキンかゆきのんの家で良くない?3人が泊まること考えたら、そこが1番広いと思う」
「そうね。それなら元凶の家でやって、寝る時だけ家を使えばいいわ」
「あんがと。あとできるだけ早く始めたいんだけど?予定もあるし」
「そうだね!あたしも家族と旅行行くし、水着着ること考えたら……!」
待って待って待って!?ちょっと俺を完全に置いてきぼりで話進めるの止めてくれる!?つーかウチは無理だってば、ちょっ、ねぇ聞いてる?ねぇ聞いてる!?くっそ、全然聞く耳持ってない!
まさかたかが3日で3キロ程度のダイエットに食いつくとは!あ、いや普通ならありえないんだっけ?いやそれよかどうしよう、このままだとウチに3人が来る!何でそうなってるのか横で聞いてて今もよく分かんないどとにかくヤバい!うちにはもう平塚先生がいるって言うか普通に荷物とかも置いてある。バレたらヤバいっていうか女3人も俺の家に来ることがもうだいぶヤバい!!
というかいつの間にかセツのんとユーミンが仲良くなってるのはどういうことなの!?くそ、俺がいない約1時間の間に何があったというのだ!いや、今はそれどころではない、俺自身明日からは平塚先生と普通に毎日イチャラブする予定なのだ。邪魔される訳には行くか!よし、おい待てお前ら、少しは俺の話を聞きなさい!
「サカキン、今大事な話してるから後でね」
「榊君、決まったら呼ぶから隅っこで待ってて」
「モサキチ、今あんた関係ないからすっこんでろ」
アッウン(´・ω・`)
だ、駄目だ話を聞く気がない!ど、どうしてこうなった……!なにか、なにか手は無いか?あ、そうだ、あれがあった!よし、待て3人とも、そこまでだ!
「は?今あんた呼んでねーから」
「呼ぶまでいい子で待ってなさい」
「サカキン、ハウス!」
辛辣ぅ!お前らこれ俺じゃなかったら帰ってるからな!?というかお前らこれが誕生日パーティだってこと忘れてんだろ!?おら、プレゼント渡したいから一旦止めろって!セツのん、お前もまだだろ!?ユーミンは……そういや誕生日パーティとかしないのにパリピってプレゼントとか用意するの?
「……貴方が来るまでプレゼントを渡すのは待っていたのだもの、渡してないに決まっているでしょう。はぁ、仕方ないわね。確かに由比ヶ浜さんの誕生日だもの、プレゼントの方が優先だわ」
「あーしはもう朝に渡したから。てかパーティしなくたってプレゼントくらい普通に渡すっつーの」
「プレゼント……!そ、そうだね!メインイベント忘れてた!やだなーもう、ごめんねサカキン!」
よし!話が誕生日パーティに戻った!では早速俺からプレゼントを渡すぜ!ふふふ、見るがいいゆいにゃん!これが女子中学生の力を借りて選んだプレゼントだぜ!じゃじゃん!
「さぁこの大きい箱と小さい箱のお好きな方をお選び下さい!」
「選択制なのかよ」
「舌切り雀の葛籠じゃないのよ榊君?」
えぇい外野うるさい!せっかくだからプレゼントにも遊びを取り入れてみてるんだよ!大丈夫、どっちを選んでもちゃんと両方ゆいにゃんに良さげなものを頑張って選んだよ!さぁゆいにゃん、どちらがいいかね?直感で選んでも大丈夫だよ!
「じゃあ両方ちょうだい!」
「なん……だと……?」
「や、だってサカキンの事だから本当にどっちも私の事を考えて買ってくれたものでしょ?それならどっちも欲しい!……かなって。駄目?」
まさかゆいにゃんに予想の斜め上の答えをもらうとは思わなかった。何か悔しいけど、まぁ元からどっち選んでも両方渡すつもりだったからいいや!はいどうぞだぜ!
「私からもその、これを……気に入ってくれると良いのだけれど。
「わぁー!ありがとうサカキン、ゆきのん!大丈夫、何だって2人からもらえたものならすっごい大事にするから!もちろん優美子からもらったのも!」
「おー、めっちゃ大事にしろし。つーかモサキチが女子にプレゼントって何か違和感あんね、ウケる」
ちょっとユーミン黙っててもらえる?俺だって今まで女子にプレゼントくらいした事あるに……あれ、ここ最近女子に食べ物与えた記憶しかない……?プレゼントではなく餌付けだった?
「あたし達サカキンに餌付けされてたの!?……どうしよう、否定出来ないよゆきのん!?」
「あら、私は違うわよ?あくまで榊君の料理を食べてあげてただけだもの。餌付けなんてされてないわ」
「なんだ、セツのんには無理して用意しなくて良かったのか。じゃあ今度からはゆいにゃんとサキサキの分だけでいいんだな!」
「待ちなさい!それは卑怯よ!」
「いや完全に胃袋掴まれてんじゃん」
ふーはははは!まぁ俺氏チーターですからね(`-ω-´)✧
スーパーコック俺氏に落とせぬ胃袋などないのだ!ふーははは!
「あはは……ま、まぁあたしもゆきのんの事言えないしなぁ……。ね、それよりプレゼントここで開けて見てもいい!?」
ん?俺は構わんぞよ。セツのんは?良いってさ!というかセツのんは一緒に買ったからプレゼント何か分かってるけど、ユーミンは何をあげたの?え、そのゆいにゃんのバッグに付いてる小さい熊みたいな奴がそうなの?ほー、何か普通に可愛いものあげるんだな。何かそっちの方が意外!
「うっせ、モサキチがケーキとか作れることに比べたら意外でもなんでもねーよバカ」
「サカキンは優美子を一体なんだと思ってるの……?あ、答えなくていいよ、ろくな答えじゃないのはもうわかったから。えっと、ゆきのんの選んでくれたのは……?あっ!エプロンだ!可愛いー!ありがとゆきのん!大事にするからね!」
「喜んでくれたなら嬉しいわ……でも、エプロンなのだから大事にするよりもしっかり使ってくれればそれで良いのよ?」
「もちろん使うよ!あたしもっと料理の勉強頑張っちゃう!でもそれはそれとして大事にするのー!」
「きゃっ!……もう、急に抱きつかないでといつも言ってるでしょうに……」
何か急速に俺空気なったけどまぁいいか。いつの間にかセツのんもゆいにゃんに抱きつかれて戸惑う事も無くなってるし、よく分からんけどユーミンも何処と無く嬉しそうな顔でそれを見てて、前みたいにユーミンとセツのんが無駄に喧嘩する所も今日はまだ見ていない。ゆいにゃんも2人に大してだいぶ堅さと言うかおどおどした所が無くなってきた。うむ、いいねぇ。
「……おい、何ちょっと孫を見るじーちゃんみたいな目でうちら見てんだバカキチ」
おっと、そんな目をしてたか。どうにも精神年齢が上だからか、同級生なのに娘を見てる気分になってしまうな。つーかユーミンもよく気付いたなホント。相変わらず見てないようで見てる子ねぇ。そーいや、今はゆいにゃんとセツのんが仲良いのには嫉妬しないの?
何かそんな理由で話し掛けられたのが随分昔のことに感じる。そんなことを考えながら、ゆいにゃんとセツのんがじゃれてるのを少し離れてユーミンと2人で見ながらちょっと聞いてみる。
ユーミンはゆいにゃんに目を向けて、ふん、と少しだけ鼻を鳴らすと、柔らかい笑みを浮かべた。
「別に……ユイが笑ってんならそれでいーんじゃね?」
「ふふ、そうかい」
相変わらず良い女である。ま、でも先のやり方はどうかと思うがね。気付いてるとは思うが、俺じゃキラキラの当て馬にゃなれんぞ?
「……分かってる。昼ので……よく、分かったから」
だから言ったろうに。つーか試行錯誤は良いがね、せめて事前に相談せぇよ。いきなり
「うっさい。……上手くいかないのは、何となく分かってたし。それでも、なんかしたかっただけ……駄目だったけど」
「ふーん。ま、気持ちは分からんでもない。上手くいくかどうか、なんて考えながら動けるなら苦労しないしな。それが片想いっつーもんだし」
「おっさんみてーな言い方してんじゃねーよ。てかモサキチの偶に出るおっさんぽさなんなん?」
はは、実は俺前世から数えてもう40歳とかそれくらいなんだよね。だからユーミンとか娘みたいなもんだから。半分くらい保護者の気分だから。何ならユーミン、パパって呼んでも良いのよ?
「バーカ、あーしにゃ普通に父親いるっつの。つーかモサキチが40だったら偶にしかおっさんじゃないって逆にヤバくね?」
何を言うか、男はいつまで経っても少年の心を持ってるもんですぅ。だから大人になっても少年ジャンプとか普通に買えるし、コンビニで立ち読みだけして出てくるとか平気で出来るんですぅ。……ま、ガキっぽいのは否定しないがね。
「はっ、なんだそれ?……あーしはモサキチの事パパなんてぜってー呼んでやんねーから。そんな適当な理由付けで、あーしが簡単に甘え出すと思うなよバーカ」
「カラカラ、それが分かるあたり、流石よのぅ。……じゃあ、近所のお兄さん枠ってのはどうかね?」
「だから、何で歳上役ばかりだし!……ふつーに、
なんだ、そっちの方が好みかね?よく分からんなぁ年頃の女子高生の感性ってヤツは。まぁ、いいや。ほらおいで。
「バーカ。今日はいんねーよそんなの。誰の誕生日だと思ってんだっつの……そういうのは火曜日で、今はその、頭撫でろし……」
はいはい、かしこまりました。
そう言っておずおずと差し出してきたユーミンの頭を撫でる。良く知らんがユーミンはこう見えて結構撫でられるのが好きらしい。前にちょっと遊んだ時にも昔は父親に頭撫でられるのが好きだったとか言ってたし、キラキラに頭撫でられたさそうにしてるの結構見るし、本当に頭撫でられるのが好きみたいだな。ヤンキーみたいな見た目なのに、相変わらず妙な所で可愛い奴である。
「あー……ホント何でモサキチに撫でられんのこんなに安心すんだろ……?」
「愛が篭ってるからな」(`・ω・´)キリッ
「うっせ」
言葉だけでじゃれ合いながら、彼女の頭を撫で続ける。
やはり嬉しそうだ。しかし………ぶっちゃけ2人して座った状態で撫でるのやりにくい。途中で面倒になって撫でながら彼女の頭を軽く引き寄せた。
意外なことに特に抵抗なくそのまま膝の上に倒れてきたので、これ幸いとそのまま膝枕をしつつ、撫でやすくなった彼女の頭を撫でる。
ははは、まぁ普段結構気を張ってるんだし、安心できるならいいことだべ。ただでさえ無駄にカッコつけて……えっと、なに?2人ともなんでそんなにこっち見てんの?なんかあった?
ほのぼのユーミンの頭を撫でるのに夢中になっていたら、気が付いたらセツのんとゆいにゃんがじゃれ合い止めてこっちガン見してたでござる。つーか真顔で怖い。なに?俺なんかした?
「……榊君、随分と三浦さんと仲良いのね?」
「それに、今の笑い方……だべとか、そんな喋り方普段しないのに……!」
あ?あー……ほら、方言とか恥ずかしいから普段はあまり出さないようにしてるんだけどね?偶に出ちゃうよね。てか、ユーミンとはだいたいこんなもんだよ。これでも友達だからねー。
「へぇー?モサキチ、あんた2人の前ではその変な笑い方しねーの?じゃ、いつもはあのスカした余所行きの笑い方なん?へぇ──?」
「アホ、カッコつけてると言いなさい。男の子は女の子の前ではカッコつけたいもんなんだよ。ユーミンはほら、気を使わなくていい所あるからね。ぶっちゃけ扱い雑だけど仕方ないね?」
「は?あんた相変わらずあーし舐めすぎじゃね?あーし程の可愛い女そうそういねーぞ?これだけ密着できるの、そこらの男子なら泣いて喜ぶからな?」
自分でそれ言っちゃうのかー……つーかユーミンが美人なのは認めるけど、密着しただけで俺を感激させるなら見た目にお淑やかさが致命的に足んねーよ。髪の毛染めてストレートパーマ掛けてから出直してくれる?ゴンっ!痛?!ってめ、膝枕してくれてるヤツを殴る奴があるか!
「あー?枕が口答えしてんじゃねーよタコ!」
「枕かタコかはっきりしろよくるくるヤンキー」
「はぁ?」
「はぁ?」
一瞬の睨み合いの後、無言で胸ぐら掴み合う俺達。やんのかコラ?
「いや、仲良過ぎでしょ何なの?てゆうかあたし達より仲良くない?!部活仲間のあたし達より距離近くない!?あたしサカキンの本当の笑い方とか今初めて知ったんだけど!どういうことなの!?」
「……相変わらず手が早い上に節操が無いのね、タラシギ君。いえ、タラシ君」
えっ、その反応はおかしくない?胸ぐら掴みあってる人間にその反応はおかしくない?特にセツのんはおかしくない?どう見てもこれで俺が手を出したようには見えなくない?つーかユーミン口説くくらいならゆいにゃん口説くわ。何言ってんの?
「えっ!?そ、そーなの?……えへへ、そう、なんだ……!」
「そりゃだってゆいにゃんの方がユーミンより口説きやすそうだし。馬鹿だから」
「そんな理由!?ちょっ、なんでそういうこと言うの!?一瞬喜んだあたしが馬鹿みたいじゃん!って馬鹿って言われてたんだったー!?い、いや!あたし馬鹿じゃないし!これでもちゃんと勉強して普通にこの学校入ってきてるんだからね!?」
「いや、あの……こんな事言うのは酷なのだけれど、由比ヶ浜さん、貴女は馬鹿よ?」
「ゆきのん?!」
「ごめーんユイー、それはあーしも擁護できねーわー」
「優美子まで!?……もー!皆してあたしを馬鹿扱いするー!いーかげんに泣くよ!?」
ははは、すまんすまん。ゆいにゃん弄ると可愛いからついね?所で俺のプレゼント開けた?出来れば感想が欲しいんだけど。
「可愛い?!……えへへ。あ、そーだそーだ!サカキンのプレゼントまだ開けてなかった!今開けるね!まずはこっちの小さい方から……わぁ、シュシュだ!これ可愛いー!ありがとサカキン!」
……いや、満面の笑みで喜んでくれてるのは非常に嬉しいし、わざわざ女子中学生に頭下げて協力してもらったかいがあるってもんなんだが……いくら何でもちょろ過ぎないゆいにゃん?え、これ大丈夫なの?なんか駄目な男とか変なナンパとかに引っかかりそうで凄い不安になるんだけど。ねぇそこんとこどうなの2人とも。
「……」
「……」
おい待て2人とも、目を逸らすなよ。なんか言えよ2人とも!おい、お前らゆいにゃんの友達だろ!?おいってば!
「…?どしたの3人とも変な顔して?それより、大きい方も開けるね!ふふふ、こっちは何かな何かなー?」
「……そう言えば榊君、いつの間にプレゼントをもう1つなんて用意したの?私と買い物に行った時、貴方から相談されたのシュシュだけだったと思うのだけれど?」
あ?あー、実は何となく一目見てゆいにゃんに似合いそーだなとビビっと来たので、思わず買っちゃったんだよね。買ってからこまっちゃんとセツのんに相談するの忘れてた事に気付いたのさ。
「呆れた、貴方から選んだプレゼントを品定めしてくれって言ったんじゃない……それで、何買ったの?」
ん?それは「わ、何か高そうな箱が……なんだろこれ、って簪?」まぁそういう事ですね。
「へぇ、モサキチの癖に雅なもん選ぶじゃん。モサモサしてるのに」
「わぁ……綺麗……!これ、付いてるのなんかの花?」
「その花の形はミモザね。よく聞くのはアカシアって別名の方だけれど……そうね、蜂蜜の印象の方が強い人の方が多いんじゃないかしら?」
流石セツのん、よく知ってるねー?俺気に入ってから商品説明で初めて花の名前知ったよ。言う通り蜂蜜の方でしか知らんかったわ。ただ何となく花の見た目がゆいにゃんみたいで良いなーと思ったんだよね。何かゆいにゃんが浴衣とか来たら似合いそうなイメージ浮かんだ。
「あたしみたい……?よく分かんないけど嬉しい!ありがとねサカキン!あ、そーだ!それならさ、夏休みにある夏祭り皆で行かない?毎年浴衣着るんだ、あたし!」
俺はええで。特に予定も無いし。せっかくだからゆいにゃんが浴衣着てその簪刺してるところ見てみたいし。ゆーて夏休みじゃまだ結構先だからどうなるか分からんけど。
そう言うと途端にウキウキでやったー!と叫んで飛び跳ね出したゆいにゃん。やだ、ちびっ子みたいな反応で可愛い。こんなに喜んでくれるとプレゼントした甲斐があったな、うん。
とか嬉しくなってたら脇腹に衝撃。見るとセツのんとユーミンがら両サイドから俺の脇腹を肘でつついてくる。え、耳を貸せ?なんぞ?
「あれ最近人気のブランドのヤツじゃん。結構いい値段したんじゃね?」ヒソヒソ
野暮なこと聞くんじゃねぇよ。ゆいにゃんに似合いそうだと思ったから買った。それだけだよ。
「時に榊君、貴方はミモザの花言葉を知っててあれをプレゼントしたのかしら?」ヒソヒソ
花言葉?俺花言葉なんて漫画で出てきた奴しか知らねーよ。具体的にはバラとスターチスとアヤメしか知らん。
「ふーん?剛毅なことすんなー、モサキチ」
「そう、知らないのなら良いわ……ある意味可哀想ではあるけど」
何の話だし。
まぁいいや。さて、プレゼントも渡した所で、そろそろ違うことでもしようか?てか誕生日パーティってケーキと料理とかプレゼントした後何すんのか知らないんだけど。ユーミン、何すんの?
「んー?あーしらもヒトん家で誕パとか最近やんねーしなー。外だったらカラオケ行ったりボウリング行ったりすっけど」
「あっ!カラオケ!カラオケ良い!あたしまだサカキンとカラオケ行ったことないし!皆でカラオケしよ!!」
「えぇ、俺音痴だからカラオケ嫌なんですけど……」
「あら、良いじゃない。貴方の明確な弱点とか面白そうだわ。是非やりましょう、由比ヶ浜さん。榊君、機材とか無いの?」
「あー、モサキチ歌は本気でド下手だしねー。つか、外に行くって選択肢無いの?」
まぁ俺も外行った方が良いとは思うなァ。平塚先生に大きな声出すなって言われたし。……音聞こえないようにとかもできるには出来るが。何より俺の持つ電化製品はだいたい廃棄された物を直したものばかりだから、カラオケ機材とか古いヤツばっかやで。データの更新とかもしてないし。ほら、こんなんやで。
「それでもあるにはあんのか……ホント意味わかんねーなそれ」
「ふっ、イリュージョンの鬼才ですから」(`・ω・´)キリッ
「いいからもう仕舞いなさい」
「というかタッチパネルも曲番リストも無ければ歌えないじゃん馬鹿なの?」
ぐっ、確かにその通りだ……!よく考えたら機材一式買えるくらいの金は余裕であるんだし買ってもいいんだよな。俺が使う事ないから買う意味も無いだけで。じゃあなんで持ってるのかって?ノリですね!
「でも、移動するとなると料理どうしよう?まだ沢山残ってるし……」
あ、それは大丈夫。どうせ余ったらタッパーに詰めてサキサキとこまっちゃんにお裾分けする予定だったし。あいつら遅くまで両親帰って来ないから自分で料理してるんで、調理済みあげると喜ぶし。あと川崎少年は食べ盛りだから多少の残飯処理を押し付けても平気だし。ちょっと待ってねタッパーに詰めちゃうから。あ、ユーミン手伝って!
「はー?しゃーねーなー」
「……何で2人の生活事情を知ってるのか、とか、もう既に何度か料理のお裾分けしたのか、とか、もう面倒だから突っ込まないわよ」
「いや突っ込もうよゆきのん!!何でサカキンが咲希や小町ちゃんの家の両親の帰りが遅いとか知ってんの!?ちょっとサカキン、どういうことっ!?」
「え、何度か2人の家に行ったことあるから知ってるだけだよ?」
「それがもうおかしいでしょ!?何さも当然の事のような顔して言ってんの?あたしやゆきのんの部屋にだって遊びに来たことないのに何で2人の家には行ってんの!?」
や、セツのんの部屋とか俺の家とほぼ間取り変わらないじゃん同じマンションだし。でもセツのんの部屋にはサキサキのバイト先の帰りに1回行ったよ。酔ったゆいにゃん背負って。長居はしなかったけど。
「またあたしだけ仲間外れだ!?う、うぅぅっ!な、何かあたしだけいつもいつも仲間外れになってる気がする……ッ!」
そうか?別に俺ん家にも誰も来たことないし(平塚先生を除いて)、そんなもんじゃね?アイツらの家に行ったのは色々な偶然が重なった結果だしな。だいたい俺はこまっちゃんの家庭教師みたいなもんだからたまにはLINE通話じゃなくてちゃんと顔見て勉強教えなきゃならんのだよ。……よし、タッパー詰め終わり。ユーミン、そっちは?
「そ、そーかなー?それなら仕方な……え、家庭教師??あたし達との勉強会は断るのに!?」
「あっ!……伝え忘れてたわ。それなのだけど、由比ヶ浜さん、今度……」
「こんなもんっしょー?イチゴのホールケーキはどーすんのこれ?デカすぎて入んねーんだけど」
「どうにもならん。ちょうど皆で食べた分が4分の1くらいだし、丸ごと持ってく。よっと」パチン
「お、消えた。つかさー、それが出来んなら全部それでいーんじゃね?」
や、ケーキ1個くらいならともかく、食べかけの料理が次々と現れたら何か嫌じゃん?まぁまだ手をつけてない料理もまだまだあるんだけどさ。だからって訳じゃないけどね。まぁほら、ケーキだけは形崩れてると残念な感じになるから仕方ないよね。
「……あんた、これだけ料理用意しといて更に引き出しがあんの?いや、あるとは思ったけどさー。ちなみに、あーしが頼んだエビチリの他に幾つ用意したん?」
「……あと20種類かそこらはまだ手付かずですね!」
「モサキチ、あんた絶対バカだろ?……どんだけ食わせるつもりだったんだし」
や、ほら。ゆいにゃんが好きな料理は何となく把握してるけどさ、完璧ではないしね。何が食べたいって言われても大丈夫なようにしといたのだよ!……ちょっとやり過ぎたのは否定しないが。ほら、よく分からんけど誕生日って自分の好きな食べ物がお腹いっぱい食べられる日じゃん?少なくとも家ではそうだったからな。だから、我が家風ではあるけど、それに習ってみたのだよ。
「ふーん?だってさーユイ。やっぱ愛されてんねー?」
「……そっか、本当にあたしの為にこんなに……馬鹿だなぁ、あたし。ねっ?サカキン、それならあたしも料理貰って帰っていい?せっかくあたしの為に用意してくれたんなら全部食べてみたい!」
うぇ?や、それは構わんが凄い量だよ?作り終わった後に冷静になって出す物厳選したくらいには無茶苦茶あるよ?一種類ずつタッパーに小分けにしても3日分くらいにはなっちゃうよ?
「それでもいーよ!お父さんとお母さんとも一緒に食べるし!てゆーか、最近サカキンの料理食べるためにお母さんのお弁当断ってるから、お母さん、サカキンの料理に興味あるみたいなんだよね!そういう意味でも是非お願いしますっ!」
「それなら少し私も貰ってもいいかしら。自分で料理する手間が省けるのなら助かるわ」
うーん、まぁそう言うならいいよ。ただちょっと量多いから、今日はゆいにゃん帰り送ってくわ。家の前で渡すね?でもお母さんに失礼だから普通にお母さんにお弁当頼むべきだと思うな俺は。
「うんっ!ありがとサカキン!」
「ガン無視だよこの子」
「榊君、私のも家までお願いね?」
「言うと思いました。りょーかい」
「話終わったー?そろそろ行こーよ。駅前のカラオケ、あんまゆっくりしてると混むよ?」
えぇ、そんなことまで把握してるとか流石ヤンキー夜遊び慣れてんなぁ。おっと、蹴るなよ。夜遊び慣れてんのは事実だろこの金髪ヤンキーめが。ほら、2人も早く行こうぜ?
そう言うとセツのんが鍵を置いてくると職員室に向かって行ったので、俺達は先に3人で昇降口まで向かう。ユーミンが凄い高速の指遣いでキラキラと戸塚にメール送ってくれた。カラオケに向かうと連絡してくれたようだ。正直2人のこと完全に忘れてたので助かる。
流石、気が利くなー、と思ってたら右腕に軽い衝撃。見るとゆいにゃんが満面の笑みで腕に抱きついていた。その頭には俺のプレゼントしたシュシュが使用されていた。いつ付けたのだろう?
「んふふー!ね、サカキン……どお?」
「おお、よく似合ってるな。悩んだかいがあった」
「えへへ、ありがと!……簪も、絶対付けるからね?」
そりゃぁ期待して待っているよ。所でゆいにゃん、1ついいかね?
「えへへ、なにサカキン?」
「当たってるんですけど」
そう言うとキョトン顔をするゆいにゃん。いや、無自覚とかマジかこいつ。ちょっと無防備にも程があると思うんですけど。いくら慣れている俺でも平塚先生並のゆいにゃんサイズはちょっと意識しちゃうので出来ればやめて欲しい。いや右腕はそれを辞めるなんてとんでもない!って狂喜してるけどね?セツのんとは威力が違い過ぎるわマジで。これが発育の暴力か……ッ!
「へっ?……あっ!や、……えっと、その」
少ししてようやく俺がなんのことを言ってるか理解したらしい。一瞬で顔が真っ赤になった。しかし、いつものゆいにゃんならばっと離れてセクハラ!とか言ってくる筈なのだが、何故だか顔を真っ赤にしながら俺の腕から離れない。なんだ?と思ったら、泳いでいた視線が俺の視線と重なって、変わらず顔を真っ赤にしたまま、羞恥心を隠し切れない声で、彼女は言った。
「えっと、……あ、当ててるん、だよ……?」
あの時、右腕が彼女に拘束されて無かったら、たぶん即抱きしめてたと思います。俺としたことが、ネタである事に気付けなかった……ッ!
それぐらい可愛かった事をここに記しておく。
◻️◻️
あたしが彼と出会ったのは高一の時だった。
あの頃はまだ髪も染めてない頃で、周りのみんなも入学してから2ヶ月程度しか経って無かったからか、そこまで派手な見た目はしてなかった。だから、あたしもまだその頃は中学の頃と変わらない、地味な見た目をしていたのだ。
けれど、その時のあたしはまだ周りのみんなに合わせるのに必死だった。今でこそ少しは言いたい事が言えるようになってきたと思うけれど、その時は下手したら自分の意見など言ってはいけないとさえ思っていた。言ってしまえば周りから弾かれると、そうしたらこの学校にあたしの居場所はないのだと、心の何処かでずっと怯えながら生きていた。
理由は色々ある。例えばこの市立総武高校は進学校だから、元の中学の友達がほとんど居ない、ということも理由のひとつだ。その中で、一緒に遊びに出かけた事がある、という条件を加えると途端にゼロになってしまう。それくらいには総武高は敷居が高い学校だった。
ゆきのんみたいに、本当に頭の良い子を知ってからだと、あたし程度の学力じゃ下にまだたくさんの人が居ようとどんぐりの背比べだろうけど、これでも元の中学じゃかなり成績は良かったのだ。だからこそ入試でこの高校に受かったのだし。……まぁ、この学校に入ってみたらビリで無いだけで真ん中にも居られない程度の学力しかないと知って、勉強面で僅かに持っていた自信なんかとうの昔に吹き飛んでしまったが。
逆に言えば、勉強で周りに着いて行けない、という事もあの頃のあたしの焦りのひとつだったのかもしれない。元々運動神経が良い方では無かったから、勉強でも良いところが無くなって、余計に友達との時間を重要視する事が増えた……気がする。
ゆきのんに言わせればただの現実逃避ね、とのことだったが、実際事実であるとあたしも思う。勉強もダメで、運動もダメ。部活もやってないあたしは、友達の中にしか居場所が無い、と、あの頃のあたしはそう思っていた……のだと思う。そこまで深く考えたことなどないから断言は出来ないけど。深く考えることが怖かったのもきっとある。それすらも逃避だったと言われれば、きっとそうなんだろう。
今でこそ彼やその他の人にはクラスのトップカーストの一人、なんて言われるけれど、あたしにはその呼び名がどうにもしっくり来なかった。実際、たまたま同じクラスで仲良くなった優美子が、たまたま学年一の影響力のある女の子だっただけで、クラスが別だったら、もしくは違う子と仲良くなっていたら、あたしはそんな風に呼ばれる事は無かったと思う。
だからあたしはあの頃、優美子やその周りの人に合わせるのに必死だった。人の輪の中から爪弾きにされたくなかった。仲間外れが怖かった。
中学の頃は夜遊びなんかしたこと無かったし、お化粧やオシャレだってそこまで気にした事なんて無かった。でも高校に入って仲良くなった彼女達は、もう何年も前からやっていたのかという程にそう言ったことに詳しくて、あたしも必死になって勉強した。そこまで興味なかった、普段自分が買っているのとは違うタイプのファッション雑誌も買うようになった。
それから誰かと遊びに出掛けることも増えた。中学の頃はほとんど無かったナンパも、優美子や周りのみんなが目立つからか、高校に入ってからはかなり増えたと思う。少し前に小町ちゃん達と出会った時にいた様な、いきなり人の胸に触れてくるようなタチの悪いのは流石にあの時が初めてだったが、そこまででなければそれなりに色んな人に絡まれた。
今でこそある程度はあしらえるようになったが、一時期は優美子や周りの子が居ない時の待ち合わせで人が多い所は、時間ギリギリに着くように、それでいて遅刻しないようにかなり気を使ったものだった。
彼と出会ったのはちょうどその時だった。
あの時の事はよく覚えている。たまたまいつもは部活で忙しい葉山くん達も週末が空いて、皆で出掛けることになったのだ。そしていつも通り待ち合わせの場所にギリギリに着くと、何故かそこにはあたし達のグループの一人、海老名姫菜しかいなかった。
姫菜に言われてメールを見れば、人身事故で優美子や他のみんなが乗っている電車が遅れているという。あたしはたまたまその影響のない電車に乗っていたからそれに巻き込まれずに着いたのだろう。
もしこれであたし一人だけだったら即座に近くのカフェか女子トイレに篭って居たと思うが、姫菜が居たから大丈夫だと思い、その場で待つことを受け入れた。
けれど、あたしは気付かなかった。
一見大人しい見た目の姫菜は可愛くて、でも、なんというか、かなり個性的で芯が強い……というか、見た目にそぐわぬ我の強さ、というか。とにかくマイペースな所があるので、あたしと違ってナンパとかにも強い。嫌なことは結構ハッキリと言えちゃう子なのだ。だからこそあたしは姫菜がいた事で安心した訳だが。
でもそれは、あくまで姫菜と付き合いのあるあたしだから知ってる事で、あの時ナンパしてきた男達からしたら、あたしも姫菜も押せばイケそうな地味な女の子でしか無かった。あたしはその事に全く気付かなかった。
そして、気付く前にもうあの男達に絡まれていた。
見たところではたぶん大学生くらいの人達で、如何にもナンパとかし慣れてそうな、軽い感じの4人の男達だった。彼等の一人があたし達に声を掛けて来たかと思ったら、あっという間に4人はあたし達2人を囲むように立っていて、待ち合わせ場所で壁を背にして居たからか、物理的な逃げ場が塞がれてしまったのが失敗だった。
男達はしつこくて、あたし達が何度待ち合わせだと言っても取り合わず、仕切りに自分達と一緒に来た方が楽しい、だとか、高校生じゃ知らないような楽しい遊び場を知っている、だとか、とにかくそんなことを言ってあたしと姫菜を連れて行こうとした。
もちろんあたし達も抵抗した。あたしは例によって結構尻込みしていたが、姫菜がかなり頑張ってくれたのだ。でも、最初は「他の女の子も一緒に」などと言っていた男達も、葉山くん達も居ると分かった途端にかなり強引になった。
最初はしつこいだけだったが、途中からあたしも姫菜も、男達に手を取られて「そんな奴より俺達の方がいいから行こうぜ!」などと半ば無理矢理連れてかれそうになったのだ。
あたしはその時には完全に怖くて何も言えなくなっていて、嫌!とかやめて!とか小さい声で抵抗するのが精一杯だった。隣では姫菜も同じ様に抵抗してたけど、やはり彼女も怖かったのだと思う。普段の彼女からは想像も出来ないほど真剣に、それでいて心底嫌そうな表情をしていたのは忘れられない。
その時には流石に周りの人達からも結構注目を集めていたのだが、たまたまそういう人達ばかりだったのか、面白そうにケータイで撮影する人は居ても、誰も警察を呼んでくれはしなかったし、助けに入ってくれる人も居なかった。
頼みの綱で、縋るように優美子や葉山くんに電話したけれど、電車の中に居たからか気付かなかったらしく、その時は繋がらなかった。そしてあたしが誰かに電話して繋がらなかった事に気を良くした男達の1人が、満面の笑みであたしのケータイ事手を掴んで、いやらしい声でこう言った。
「ほら、電話も繋がらないってことは、きっと俺らと一緒に遊べって神様も言ってるんだよ。大丈夫!……とっても気持ち良くしてあげるから、さ」
その言葉を聞いた瞬間、あたしの背中をゾゾゾッ!っとそれまで生きていて感じたことの無い、強烈な怖気が迸ったのをよく覚えている。男の開いた口の中で、にちゃりと唾液が数本糸を引いて、それがどうしようも無いほど気持ち悪くて、今すぐ大声で叫び出しそうだった。けれど恐怖に震えたあたしの喉からはそれまでよりもずっと小さな、本当に微かな呻き声しか出なかった。正直、もう駄目だ、とは思わなかった。そんな事考えられないくらい頭が真っ白になっていた。
やがて、隣で青い顔した姫菜と一緒に、引きずられるように外へと連れ出されそうになった、その時だった。
彼が現れたのは。
初めは何が起きたのか分からなかった。急に男達が止まった、と思ったら、それまでとは別な声が聞こえたのだ。
「痛てーな。前見て歩けよ」
不思議な声だった。迷惑そうな言葉なのに一切感情が篭ってなくて、何処か冷たい雰囲気があった。それなのに、何故かあたしは酷く安心したのを覚えている。
男達に囲まれて居たから、最初はその姿が見えなくて、見えた時には驚いた。印象は薄いが、クラスメイトだったからだ。
あの時の彼とは今のように話したことも無くて、知り合ってから知った事だが、彼もこちらから話しかけなければ誰とも話さない人だったから、その時のあたしにとって、彼は非常に印象の薄い人だった。苗字の榊、を覚えていたのが奇跡だったと今でも思う。それぐらい、その当時の彼は無口だったのだ。
……いや、それはきっと、今でも変わってないのだろう。彼があたし達みたいに部活を通して関わった人間以外と話しているところを見たことが無い。もちろんある程度の受け答えはするが、それだって「このプリント後ろに回して」「ああ」とかそんな程度だ。そう思うと、彼と普通に話せる今が、とても、とてもかけがえのないものに思えて仕方がない。
少し話がズレたが、とにかくその時に初めてあたしは彼の事をちゃんと知ったのだ。
あの時の彼は、今より少しだけ髪の毛が短くて、今よりもほんの少しだけモサモサしてなかった。変わらず目元は全然見えなかったけど、付き合いが無ければひたすら大人しい人にしか見えなかったのは確かだ。今は全然そんなこと無いと知ってるけれど、あの時は本当にそう思っていた。
そんな彼に邪魔された男達は意外に思うよりも先に頭に来たらしい。最初から喧嘩腰で彼に食ってかかった。その声にあたしも姫菜も怯えてて、突然現れた彼が助けに来てくれた、とはまだ気付いて居なかった。
「ああ"?何だてめぇ。てめぇの方が邪魔なんだよボケ」
「見てわかんねーのか?俺たちゃこれからお楽しみなんだよ。分かったらどっか行きな糞モブ野郎!」
そんなことを男達は言って居たと思う。軽薄そうな見た目とは言え、それなりに筋肉質な男達4人に対して、大人しそうな彼はたった一人。なのに、彼はこれっぽっちも怯むことなく言ってのけた。
「はァ?どう見ても嫌がってる女の子を無理矢理攫おうとしてる犯罪現場にしか見えねーけど?頭大丈夫かお前ら。見た感じ大学生だけどこんな白昼堂々犯罪とは恐れ入る。俺より年上の癖にこんな監視カメラだらけの場所で顔も隠さず犯行に及ぶとは頭に脳味噌入って……るわけないか。すまんすまん、小学生でも少し考えたら分かることにも分かんないんだもんな。酷い事言ってごめんな?」
今でも一言一句覚えている。それぐらい衝撃的だった。あの時は彼の煽り癖が誰にでも向けられるとは知らなかったから、まさか将来これが自分にも向けられるとは思ってなかったけれど、その時は男達の言うように、言い方は悪いがモブキャラみたいな彼の口からそんな言葉が出てきた事に驚き過ぎて、それまであたしの身体を縛ってた恐怖とかが一瞬で何処かへ吹っ飛んでしまった。隣の姫菜なんか小さいけど確かに吹き出してしまっていたくらいだ。
けど、その言葉に反応して気が楽になったあたし達とは裏腹に、男達の反応は劇的で、激昴だった。
それまで掴んでいたあたしと姫菜を離すと、男達は直ぐに彼を囲んだ。その怒気は向けられてないあたしにも伝わるほどで、あたしと姫菜は思わず肩を竦めて身を寄せ合い、2人して少し後退ってしまった。
なのにその中心にいる彼はまるで怯えず、それどころか微塵も気にせず呑気に欠伸しながら、男達に気付かれないように下の方に向けた手でしっしっ、とあたし達に逃げる様に指示してくれていた。
それに気付いたあたし達は、震える身体を必死に鞭打つように、ゆっくり、ゆっくりと男達に気付かれない様に離れて、何とか気付かれない様に建物の中に入れた途端に、一目散にその場から離れた。
今にして思うと、とても薄情な行為だったと思う。今だからこそ彼が色々な意味で規格外だと知っているが、あの時はそんな事など全然知らなかった。だからあの時のあたし達は、助けてくれた彼を置いて逃げた、という事に他ならない。
でもその時はそんな事全然考えられなくて、姫菜と2人して女子トイレの狭い1つの個室に篭って、お互い無言で息を潜めてた。男達がここまで追い掛けて来るのでは無いかと不安だったのだ。
何分待っただろうか。あの時は緊張で何時間も待った気になっていたが、実際にはトイレに逃げ込んで二十分かそこらくらいだと思う。その時になってようやく電車から降りた優美子や葉山くんが、あたしが何度も電話を掛けた事に気付いて電話を掛けて来てくれて、何度も声に詰まりながら必死に電話に向かって説明した。
……それから少しして、優美子が女子トイレの中にあたし達を迎えに来てくれた。その時になってようやく助かったと安堵したあたし達は、優美子に手を引かれる様にして女子トイレの外に出た。
女子トイレの外では心配そうな顔をした葉山くん達が周りを見張ってくれていて、あたしと姫菜は遅れた事をびっくりするくらい真剣に謝られたあと、無事で良かったと、口々に慰められた。
情けない話だが、この時になってようやく彼の存在を思い出したあたし達は、あの場に彼を置いてきてしまった事を慌てて皆に相談した。まぁ、残念ながら彼の事をちゃんも覚えて居る人はほとんど居なくて、一緒に助けられた姫菜でさえ同じクラスだと言うことに気付いていなかったので、少し彼の事を半信半疑であったが、何とか皆であの場所まで一緒に行ってもらえる事になった。
しかし、いざあの場所に着いてみると、そこに居たのは何故か4人で盆踊りをしてる男達と、その奇妙な男達に注目している多数のギャラリーだけで、彼の姿は何処にも無かった。肝心の男達も、葉山くんが声を掛けてあたし達を見た途端に真っ青になって、地面に頭を叩きつけるように勢いよく土下座をしたと思うと、すいませんでした!と大きな声で謝って、その後はこちらを振り返ることも無く、周りの人を押し退けて一目散に走り去っていった。まるで、何かとても恐ろしいものから逃げる様だった。
後に残されたあたし達は狐につままれたみたいに不思議な気持ちのまま、取り合えず危機が去った事だけを知り、何処か釈然としない気持ちを抱えたまま、気持ちを切り替えようという葉山くんの言葉に頷いて、皆で無理矢理楽しもうと遊びに行った。
あたしもだいぶ空元気だったけど、あの時はあたしも恐怖がぶり返さないように無理に楽しもうと必死だったから、彼の事はあんまり考えないようにしていた。何となく無事だろう、そう思っていたし、それ以上は男達の事も思い出してしまうので考えたくなかったのもある。
けれど結局、心の何処かで彼が無事かどうか、やはり不安だったのだろう。翌々日の月曜日、教室で何事も無かったかのように佇む彼の姿を見た時、一気に肩の力が抜けたのだから。
あたしと姫菜は、2人揃ってあの時のお礼を言おうと彼に声を掛けた。あたしは現金な事だと自分でも思うが、助けてくれた彼に勝手にかなり親近感が湧いていた。きっと彼もあたし達のことをクラスメイトだと知っていたから助けてくれたのだと思ったのだ。
……けど、それは間違いだった。
あたし達に声を掛けられた彼の反応は非常に薄くて、何処か不思議そうだった。そのことを訝しげに思いながらも、2人揃ってお礼を言って、ようやくその事を思い出したらしい彼の反応は、全くもって予想外なものだった。
「ああ、そんなこともあったな」
その声は酷く平坦で、ともすればあの時男達に声を掛けたのと同じものだったかもしれない。そこにまるで感情が感じられず、あたしはやはりあの時逃げてしまった事を気にしてるのではないかと思って、慌てて謝った。しかし、彼はそんな事気にしても居ないどころか、気付いても居なかった。あろう事か、返ってきた言葉は「そうなの?」の一言のみ。
そのあまりにもどうでも良さげな態度にあたしも姫菜も何も言えなくなってしまって、2人してそのまま席に戻ったのはとても苦い記憶だ。
しかし、その時には彼が気になりだしていたあたしと違って、姫菜の方はそうでもなかったのか、「一応お礼は言ったし、本人が気にしてないならそれでいっか!」と、そのままいつもの日常へと戻っていった。こういう事であんまり引き摺らないのもまた、彼女の強さなんだなーと思う。あたしにはたぶん真似出来ない。
結局あたしだけはせめて彼と普通に会話くらいできるようになりたくて、それからも何度か彼と接点を持とうと話しかけたが、やはり彼の態度に一向に変化は無かった。全く興味がない、と言うよりは、今は他にやりたいことがある、と言う様子なのがせめてもの救いだった。彼は最近、いつもパソコンで何かをやっていて、それに夢中なのかこっちを向いてもくれないのだ。たぶんよっぽど楽しいのだろう。
ちなみに、あたしもそれができるようになったら彼との会話が増えるだろうか、と後ろからこっそり覗いてみたが、どうやらリアルタイムで上がったり下がったりするグラフ?をずっと見てるだけだった。何が楽しいのかさっぱり分からない。1日目で断念した。
そんな風に、彼に話しかけてろくに会話も出来ずに離れていく日々。相変わらず彼はあたしを見ない。それでもいつかはきっと、と信じてやっていたけれど、だんだんそれが辛くなってきた。
小さい頃読んでいた少女漫画のような出会い。なのに、あたしが思わず期待したようなラブロマンスは一向に始まらず、ヒーローと思わしき彼はまるでちゃんとしたセリフを持たない村人Aのよう。現実はやはり漫画のようにはいかないと言うことなのだろうか。そんな事を考えては途方に暮れる日々。
……彼と普通に話せるようになった今だから分かることだが、彼は意外と他者に甘い。少なくとも、興味無さそうな顔をしていても、泣いてる子供にそれとなく近付いていくくらいには。けれど、それと同じくらい一定ライン以下の関係しかない人間には関心が無い。日々同じクラスで授業を一緒に受けているクラスメイトの顔と名前を、全然覚えないくらいには。
だからあの時、あたし達を助けてくれたのには本当に何も特別な感情は無かったのだろう。ただ、たまたまあの時あの場所に彼が居て、たまたま危ない目に遭っていたあたし達が目に入ったから助けてくれただけ。つまり、あの時のあたしは運が良かっただけなのだ。
仕方の無いことなのかもしれない。白馬の王子様じゃないけど、ヒロインの危ない時に突然現れて颯爽と助け出してくれるカッコイイヒーローを求めるのは、女の子の側だから、という事もある。男の子である彼にヒーローのつもりが無ければ、ヒロインになりたかった女の子の気持ちなんて知ったことではない。ある意味では当然のことだ。
……でも、あの時のあたしにはそれが何より辛かった。
結局、あたしは諦めようって思った。それまで続けていた彼と接点を持つ為の様々なこと、そういうのを全部止めた。やるだけ苦しくなるだけだと分かってしまったから。
……けれど、やっぱり簡単に綺麗さっぱり諦める、とは行かなくて。あんなことがあったあとも平然と自分の趣味に没頭できる姫菜みたいにすぐに違うことに目を向けられなかったあたしは、ずっとチラチラと目で彼を追ってしまっていたけれど、それでも以前と比べたらほぼ接点を無くしたと言っていいだろう。
そんな関係がそのまま続いて、1年が過ぎ。少しずつ彼への想いが薄れて行きそうだった時だった。変化があったのは。
2年になって、少し。前とほぼ変わらないクラスの面々の中には彼も居て、相変わらずあたしはチラチラと彼の姿を目で追いながら、無理だと思いながらも諦め切れなかった。
だって、優美子達に合わせる為に、という理由もあってこんなに明るい髪色にしたが、正直自分でもちょっと明るすぎかなと思っていたこの頭だが、この色にした途端、彼の方が声をかけてくれることはないまでも、たまにあたしの事を見てくれるようになったのだ。本当に、本当にチラッと見るだけだが、以前に比べたらずっと良くなったと思う。
この事があったからこそ、彼にピンクはビッチの色、なんて酷いことを言われても、何だかんだ元の黒髪に戻そうという気が起きないのかもしれない。と言うよりは、元の黒髪に戻した途端に彼に気付いて貰えなくなりそうなのが怖いだけかもだけど。
とはいえ、髪の毛の色が変わって起きた変化なんて彼が時々あたしに視線を向けてくれるようになっただけのことだ。会話どころか、朝の挨拶が出来るようになった訳でもない。
だからこそ驚いた。あの日、珍しく友達が皆用事があって、1人で帰ろうとしていたあの時。ちょうど校門を出ようとしたあの瞬間に、彼の方から声を掛けられた時は。
それも人気のない所まで連れていかれて、内緒にして欲しい話がある、なんて言われた時はそれはそらはもう舞い上がってた。何とか普通に受け答えは出来ていたと思うけれど、内心はとても大騒ぎだったし、心臓の音がうるさ過ぎて、内側から鼓膜が破れるんじゃないかとさえ思った。消え掛けていた想いが、一気に燃え上がってしまった。
……けれど、現実は無情で無常だった。彼の口から放たれた言葉は期待していたものとは程遠く、あたしへの愛の告白どころか、何故
「すみません、不躾な質問なんですが、貴女の知り合いに……表現が難しいんですが、なんというかこう、腐った魚のような目をした男は居ませんか?」
正直、舞い上がっていた気持ちが一気に冷えた。よしんば告白でなくとも、それに準ずる何かだと期待していただけにショックもとても大きかった。どう聞いたってナンパですらなかった。まるで初対面の人に向けるような話し方、彼の中に髪を染める前のあたしは存在さえしていないと、気付いてしまった。
けど、余程真剣に探しているのか、彼は、悩むようにその男の特徴を色々上げたが、あたしには全く身に覚えなんて無くて……でも、何処か彼が縋るような声をしている事に気付いて、必死になって記憶を漁ってみた。しかし、どんなに考えてもそんな男は知らないし、犬だって大好きだけどあたしの家で飼ってはいない。知らないものを知ってる、なんて答えられるはずもなく、素直に知らないと、そう答えた。
……それを告げた時のことを、今でも思い出す。私が知らないと、犬など飼っていないと告げた途端に、彼は打ちひしがれるように呆然と、「そんな馬鹿な」と、呟いた。
相変わらず髪の毛が邪魔で表情など全くわからなかったのに、とてつもなく彼が落ち込んでいるのだけは、何故か手に取るように分かった。
あまりにも弱々しいその彼の姿に、あたしは何か言ってはいけないことを言ってしまったのでは無いかと、途端に心配になって慌てて彼に声を掛けたが、彼は力なく大丈夫と言うだけで、その後、結局そのまま去ってしまった。
何が何だか分からなかったが、変化はそれだけでは終わらなかった。翌日から彼は急に休み時間になるとあちこち動き回るようになった。今まで休み時間も授業の時も、まるで周りの事など見もせず本を読んでいるか、どこからか取り出したノートパソコンをカタカタやっているだけだったのに、そんな姿が嘘のように彼が教室にいる時間が減った。
1度気になって彼を追い掛けた事があったが、彼は頻りに色々な教室を歩いたと思うと中を見渡して、そしてため息をついたと思うとまた次へ行くのを繰り返した。
誰かを探しているのだと、直ぐに分かった。
けど、その成果が出ることは無かったらしく、いつも休み時間が終わると、肩を落として戻ってくる。それは日に日に顕著になって行って、やがて2週間が過ぎた頃には彼は落ち込んだまま、何処にも行くことはなくなっていた。
もちろん彼の顔はなんの感情も映さない。周りの人で彼の変化に気付いた人なんてきっとあたし以外に居ないだろう。でも、ずっと彼を見ていたあたしには、確かに彼が何かに怯えるように、とても苦しんでいるのがすぐに分かった。良くわかってしまった。
分かってしまったらもう、放っておく事など出来なかった。
それから、彼を何とか元気付けたくて、彼との接点を絶っていた事も忘れてあたしは何か出来ないかと悩んでいた。元々集中出来てなかった授業は一層頭に入ってこなかったし、悩み過ぎてふとした時に気付かず唸ってしまって、周りから変な目で見られる事も何度もあった。
それから色々考えて、考えて、考えて、それでも何をすればいいのか分からなくてどうにもならなくなってしまって、結局なんの捻りも工夫も無く、手作りのお菓子をあげようと決めた。
我ながら安直だなと思う。しかし、とにかく何でも良いから、一刻も早く彼に何かしてあげたかったのだ。もしかしたら、という下心があったのも確かだけれど、今この瞬間、彼に何かをしてあげられる人は、あたしをおいて他に居ないと、そう思ったのも確かだ。
だが、そこで困ったことがまた出てきた。あたしは不器用で、料理なんてほとんどやったことも無ければ、たぶん簡単なお菓子であるクッキーでさえ作り方を知らなかった事だ。
本やネットで作り方を調べてみたが、各所に挟まれる「適量」とか「少々」とかの分量がさも当然のように出てきて理解できなかったので、誰か協力者が必要だと痛感した。
だから結局、またしてもあたしはうんうん唸ってばかりだった。しかし、そんな時にたまたまあたしの様子に気付いてくれた平塚先生が、奉仕部を紹介してくれた。正直、この時の平塚先生のおかげで今のあたしがあると言っても過言ではない。
それくらいそこからの変化は凄かった。いきなり流れが変わったと言えば良いのだろうか、とんとん拍子に話が進んだ。それもあたしが願っていた方向に。
あたしは平塚先生に紹介された奉仕部に彼が居たことに心底びっくりしたが、結果的にゆきのんと友達になれたし、彼とも普通に会話出来るようになった。同じクラスであることさえ気付かれてなかったのは衝撃だったが、今こうして仲良く話せてる上に連絡先も交換して、ほぼ毎日彼の手料理も食べている。
おまけにゆきのんのおかげで苦手だった料理も多少出来るようになってきたし、彼に手作りクッキーも何だかんだ渡せたし、勉強だってゆきのん達と勉強会をやってるおかげで少しずつ成績が伸びてきている。正直今のあたしは学校生活がとても楽しい!半分押し掛けたというか無理やりなところがあったけれど、奉仕部に入部出来て良かったと心底思う。
惜しむらくは、いざ手作りクッキーを手渡すとき、急に恥ずかしくなって手伝ってくれたお礼、などという言い訳をしてしまったことだろうか。あれが無ければもう少し彼と仲良くなれていた気がする。今更、ではあるが。
何故そんなことを今更言うかといえば、実は奉仕部に入ってから知った事だが、彼は身内というか仲間というか、親しい人と判断した人にはどうにもとても甘い。それまであたしが見てきた彼のぼっちっぷりが嘘のように、その優しさと人柄に引かれた人間が、あたしの他にも彼の傍に増えてきたのだ。
しかも厄介な事に、彼は、彼自身が親しい人だけでなく、彼と親しい人の親しい友人にまで優しい。本人曰く友人の大事な友人ならある程度気を遣う、との事だが、彼の「ある程度」は規模がおかしい。おかげでいつの間にか優美子や咲希まで彼と仲がいい。あたしのここまでの苦労は本当になんだったのだろうかと言いたくなる。
ただでさえあたしよりゆきのんの方が先に同じ部活をしていた上に、住んでるところも同じマンションで帰り道まで全く一緒なせいか、何処と無く二人の距離が近いのだ。おまけに入部してから聞かされた奉仕部の奉仕対決とかいう勝った方が負けた方に何でも命令できるというすんごいやらしーヤツ!あれが特にダメ!本当によくないと思う!
話に聞くとサカキンも勝ったらゆきのんにやらしー命令だすって宣言したらしいし、ゆきのん自身も最初の頃はともかく最近はちょっと怪しい。慌てて平塚先生に頼んであたしも参加させてもらったけれど、評価方法が平塚先生の独断というのがまずい。誰が勝てるのか予想が付かないというか、そもそもの話、なんだかとても胡散臭い。
というのも、平塚先生とサカキンは普通の人なら気付かないくらい分かりにくいけど、びっくりするくらい仲がいい。本人達も隠してる節があるので直接問い詰めたことはないが、伊達に1年近くサカキンを目で追い続けてないので、あたしには分かる。
あれは正直あたしやゆきのんよりも平塚先生の方がサカキンに近い気がする。家も隣とか言ってたし、たぶんサカキンの手料理とかも食べ慣れてる。じゃなきゃ初見でサカキンの手料理食べて無反応とかありえない。
更には平塚先生と言えばタバコのイメージがあったのに最近ではタバコの匂いさえしない。おまけに最近めちゃくちゃ綺麗になった。髪の毛とか元々綺麗な長髪だったけど、昔は少し手抜きがあって変なハネとかダメージがあったのに、今はもうどうしたの?生まれ変わった?ってくらい濡れ羽色の艶があって僅かなダメージも見当たらないサラサラヘアーだし、肌とかもよく見ればカサついてたりしてた少し前と比べて今はプルプルの艶々だ。辞書とかに現代大和撫子の見本として載りそうな勢い。性格はともかく。
それまで平塚先生といえばカッコよくて綺麗だけど何処か残念な美人で、いい歳なのに結婚できないちょっと可哀想な先生だった。それが今や男の先生達どころか、うちのクラスの男子でさえ毎日噂してるくらいの、下手したら芸能人にだってなれそうなとんでもない美人になっている。たぶん2ヶ月前と今とで劇的ビフォーアフターで特番組めるくらい違いがある。いちいち動画とか残してないからハッキリとは言えないけど!
そしてそういう、普通じゃありえないことの影にはだいたい彼が、サカキンがいる!あの冴えない見た目の奥に隠された、鋭く射貫く様な眼光で、よくよく見てないと見逃してしまいそうなくらいに、さも当然のように平然かつあっさりと意味不明なことを仕出かす彼ならば、平塚先生の激変もさもありなん、と納得出来てしまう。
最も、彼と関わりがなければ誰にも彼の仕業と気付くことなど出来ないだろうけれど。普段は野暮ったいのに、髪の毛上げたらヤクザ顔とか卑怯にも程があると思う。……正直あたし的にはいつもの飄々とした雰囲気とは正反対の感じがしてあれはあれで結構良いというか、野獣っぽい彼と並んで歩くのは凄いドキドキして色んな妄想が捗ったというか──控えめに言って最高だと思うけど!はっ!?いけない、思わず思考が逸れた。
あれから約2ヶ月。短い時間だけど中身は濃かった。あたしは色々あって、色々な彼を知ることが出来たし、ほんの2ヶ月前には想像も出来なかった程、彼との距離も近くなったと思う。おかげで以前よりずっと毎日が充実しているが、あの頃よりずっと油断ができない日々が続いている気もする。なかなか気が休まらない!
……けれど、その事がとても嬉しい。
あの頃、彼はあたしの事などまるで興味も無かった。彼にとってあたしは、何ひとつ特別な存在じゃ無かった。
彼はたまたまあたしを助けてくれただけ。特別でも何でもない、彼にとってただの赤の他人だったあの頃のあたし。正しく運が良かっただけ。彼と出会えただけ。それだけだった。
それが今はどうだろう。朝の挨拶さえまともに返ってこなかったあの頃と比べて、朝の挨拶はおろか、毎日学校で彼の手料理を食べながら何時間もおしゃべりするし、たまに夜にメールのやりとりとかしちゃって、おやすみとか言い合える様にもなった。
彼は大人しい人だけどいざと言う時は助けてくれる人、なんて漠然としたイメージしかなかったのに、実は結構おしゃべりだし、オタクっぽいところもあるし、ちょっとエッチなこととか平気で言うしデリカシー無いしたまにキモいけど、実は着痩せするのか身体はかなりがっしりしてて筋肉質だし、運動能力とか頭おかしいレベルで高いし、子供みたいなことしたかと思えば妙に大人っぽく見えるところも有るし、何でか女の子の扱いが上手かったり、撫でられたりするとやたら気持ちいい。そんなことまで今は彼の事を知っている。
たぶん彼は未だにあたしが助けられた日のことなど思い出して無いというか、もはや完全に覚えてすらいないと思うけれど、それでも少し前に小町ちゃんと出会った時、あの時みたいに不良に絡まれたあたしを、これまたあの時みたいに……ううん、あの頃よりもずっとずっとカッコよく助けてくれた。
ま、まぁちょっと気がついたら彼の腕の中だったし、その後の流れも意味不明でちょっと気持ち悪かったけど、何となくあたしの為に彼があの不良達を土下座させてくれたことは分かったのできっと何も問題はないのだ。……ちょっとだけ腰が抜けた振りとかしてもう一回お姫様抱っこされたかった気もするけど。
とにかく、それくらい色々あって、本当に色々な彼を知れて、今のあたしはあの頃よりももっともっと彼が好きだ。そんな彼とこれだけの仲になれた上、頑張ればもっともっと仲良くなれそうなのだ。それに比べれば、ちょっと恋のライバルが多そうな事くらい、どうということはない!
いやそれはちょっと嘘。少し気が重いというかやっぱりやりにくいところはある。あるけれど、たとえ誰が相手でも……それこそゆきのんや優美子、平塚先生が相手だって負けたくないって、あの頃よりも深く彼を知った今ならそう言える。きっと2ヶ月前のあたしなら、事実はどうあれこの3人と、となったら噂の段階で逃げていたと思うけど、今は違う。もう、助けてくれたヒーローに憧れるヒロインのあたし、なんて幻想もどうでもいい。
そういう嫌な思いややりにくい感じ、過去の憧れとかしがらみ全てをを押し退けてでも、彼の一番になりたい。それくらい、あたしは彼が好きだ。この2ヶ月で、はっきりそう思えるようになった。
もちろん、今のまま皆仲良くしたまま彼の一番になれるならそれでも良いが……いざと言う時、誰とどんな関係になっても、あたしは負けない。そう決めのだ。
………とはいえ、今現在誰ともそういう戦いにはなってないし、何だかんだ彼とちゃんと話せるようになってからまだ2ヶ月とちょっと。恋に時間は関係ないけれど、別に急いで仲を縮めたい訳でもない。だから、今しばらくはこのままでも良いだろう。というか、あんまり急に距離を縮めるとこっちの心臓がもたない。
以前お姫様抱っこされた時はあまりの事に胸がドキドキし過ぎて爆発しちゃうかと思った。そのおかげでとっさの演技とかも出来なくて2度目のお姫様抱っこのおねだりとかも出来なかったのだ。急な接近はそれはそれでリスクがある。
具体的には彼の素顔を見た、あのホテルにドレス着て潜入した日とか。思わず雰囲気に飲まれて無理矢理彼のお酒を口にして、間接キス、までは良かったのだがその喜びと、自分でも予想外なくらいお酒に弱かったせいでその後簡単に酔い潰れてしまい、そこから先の記憶が全くないのだ。
ゆきのんの家で目覚めた時に受けた説明によると、酔ったあたしはかなりサカキンに密着してたし彼もその事に喜んでいる節があったそうだが、全く覚えていない。大人っぽい普段とは違う彼の魅力にドキドキし過ぎて、おまけにそんな彼があたしやゆきのんより咲希ばかり褒めるからちょっと嫉妬したのもあって変な舞い上がり方をしてしまった。結果何も覚えてないとか、悔し過ぎる。
思わず悔し過ぎてゆきのんの家から自宅に帰った後、クリーニングして返すと預かってきた借り物のドレスに残る彼の匂いと、以前彩ちゃんの依頼で彼にストレッチしてもらった時の肌触りとか、初めて見た彼の底知れない感じの素顔とか、色々な記憶やら何やらを材料に利き腕が筋肉痛になるまで一晩中ゲフンゲフン!ダメだコレ思い出したらここが学校だって事忘れそう!気を付けないと!
せっかく今日はあたしの誕生日でしかも彼とゆきのんが頑張って用意してくれた誕生日パーティなのだ。もう少し集中しなきゃバチが当たる。ただでさえ今日は勘違いで(彼が紛らわしい所も多々あると思うけど!)お昼の時に彼に怒ってしまった。
彼からして見れば、慣れない誕生日パーティをわざわざあたしに合わせた趣向を、必死になって考えて、色々な準備をして、普段のあたしコミュニティやその関係での予定まで気を使って開いてくれたのに、あたしは一方的な勘違いで雑にされたと文句を言い、あろう事か彼に手を上げてさえいる。基本的に部活外の人間関係に消極的な彼が、あたしの為に数少ない知り合い全員呼んでまで開いてくれた誕生日パーティだったのにも関わらず、である。
平塚先生に言われるまで彼にこういったことの経験が無いと気付かなかったのは、正直真剣に死んでしまいたくなるくらいあたしが馬鹿だったと思う。彼があたしを祝う為にしてくれた事なのに、それを疑うなんて本当にどうかしている。彼の優しさは、あたしが一番分かっている筈なのに。
あれだけの事があって尚、放課後にこうしてもう一度誕生日パーティをやり直してくれてるのは単純に彼が優しいからだ。彼が授業をサボってまであたしの為に用意してくれた料理を食べ切れないから片付けろ、なんて我が身の事ながら本当によくも言ってくれたものだ。
過去に戻れるなら彼にそんなことを言う前にあたしがあたしを殴ってやりたいと心から後悔している。これで彼に嫌われていたらと思うと正直今からでも泣きそうなくらい怖い。
あたしの為に授業をサボってしまった彼は、今はその罰を受けに平塚先生に呼び出されているので、彼はこの2度目の乾杯の後、すぐに部室から出ていってしまった。平塚先生が早く解放してくれることを祈るが、元々彼はちょいちょい授業をサボるし、ゆきのんに聞くところによると、テストとか気分で点数を決めているらしく、成績が全然安定しないらしい。たぶん長くなると思う。というか、テストの点数を気分で決めるってなんだろう。採点する側みたいなことを平気でやってるあたり彼はやはり頭がおかしい。
彼の後ろ姿を見送ると、いつもの部活の時間に、いつもより割増で広くなった畳の床に、いつもの小さいちゃぶ台ではなく高級そうな作りの木の長テーブル。テーブルの上にはお昼の時と同じくらい色々な料理……よく見るとお昼の時より料理の種類が増えている上に何故かまだ熱々で湯気が出ている。
最近では毎日見てるせいで当たり前になって来たが、やはり彼の手品もだいぶおかしい。褒めるとつけ上がり過ぎて更に意味不明な事をし出すのでゆきのんと相談して褒めない事にしているが、彼が奇術師として世に出たら凄いことになるのは間違いないというのは、その分野に全く興味のないあたしにですら分かることだ。
そういった様々なものを全部使って、彼はあたしの為にこの誕生日パーティを開いてくれたのだ。しかも2度目。今度こそあたしはしっかり楽しみたい。
……のだが。目の前には先程皆で乾杯したとは思えないほど静かになった空間と、そこで務めて無表情を装ってそうなゆきのんと、そんなゆきのんに一切触れずにあたしに話しかけながらサカキンの手料理を食べてる優美子の姿が。
どっちもあたしにとっては大事な友達だが、流石にこれはちょっと難しいかもしれない。元々優美子は結構プライドが高いし、言わないけれどかなり努力して学年屈指の美貌とスタイルを維持している。なのでほとんどすっぴんに近いくらい雑な化粧しかしてなくても同等なくらい綺麗でスタイルが良くておまけに頭も良くて運動神経もいいゆきのんを昔から目の敵にしてる所があった。
これはあたしも知ったのは最近だが、優美子が好きな隼人くんが、ゆきのんと昔から関係があるらしく、たまにゆきのんのことを気にかけたりするところもたぶん気に食わないところなんだと思う。
ゆきのんはゆきのんで、優美子やあたしみたいに誰かと群れるみたいにグループを作ってるような人間は苦手な上に、本人が真面目だから不良っぽい雰囲気で、普段から何かと騒いでるようなノリの人は好きじゃないらしい。あたしでさえ最初は正直あなたの事が苦手だと正面切って言われたことがある。
つまり端的に言って2人はとても相性が悪い。性格的にもどちらかと言うとカッとなりやすい優美子と、ひたすら冷徹に相手を正論でボコボコにするゆきのんとでは、サカキン風に言ってほのおタイプとこおりタイプで真逆の性質だ。喧嘩になっても何らおかしくない。
というか、こう言ってはなんだが、優美子がこの二回目の誕生日パーティに参加してくれたのは普通にびっくりした。優美子は誕生日プレゼントとかはきっちり用意してくれるが、誕生日パーティとかの煩わしい事はあまりやりたがらない。去年だってせいぜいカラオケに一緒に行ったくらいだったし、今年もそう言うのはする気がなかったようだ。
お昼はサカキンに謎の手段で拉致されたらしいから仕方ないにしても、姫菜や隼人くんが居ないのに参加してくれるとは思わなかった。ただでさえ普段から部活のこととかあまり聞いてこないくらいなのに。
割と本気で気になったし、ゆきのんがあたしに話しかけてる時は優美子が、優美子があたしに話しかけてる時はゆきのんが無言のこの空間は絶妙に居心地が悪いので思い切って聞いてみる事にした。
「あー?何でって、ユイの誕生日パーティだからに決まってんじゃん?」
「や、それは素直に嬉しいけど、今までこういうのしたがらなかったし……ぶっちゃけ、優美子ってゆきのんの事嫌いっぽかったから、さ」
「それをよく私の前で普通に聞けるわね、由比ヶ浜さん……いえ、別に構わないのだけれど」
「それはあーしも思うっつか、ユイ、最近ホントに遠慮なくなり過ぎじゃねー?」
うぇっ!そ、そんな馬鹿な、って確かに!自分でも今思ったけど確かに少し前のあたしなら絶対聞けないやつだコレ!むしろ何で言えたんだろう今のあたし!?ひょっとしてサカキンの悪い影響であたしの女子力が低くなってるのでは!?
とりあえず心の中でサカキンのせいにして、慌てて謝る。気を悪くさせたらごめんと頭を下げる。どんな理由があったにせよ、あたしの為に開いてくれた誕生日パーティをあたし自身で台無しにしたら後悔してもしきれない。
そう思ったが、2人とも快く許してくれたというか、全然気にしてなかった。意外と言ったら失礼かもだが、優美子も別にいーよ、と気にした様子もなく、やたらと柔らかくて美味しいローストビーフを口に運ぶ。あ、また美味!って言った。
気持ちはよく分かる。あれあたしもさっき食べたけどビックリするくらい美味しかった。お肉なのに口の中に入れた瞬間溶けて、気がついたら飲み込んでいた。なんの抵抗もなく飲めるお肉とか意味が分からない。流石サカキン、本当に恐ろしい事をする。いくらでも食べられるじゃないかこんなの。だが困ったことに他のやつも同じくらいいくらでも食べられる味である。つまり自制心が無いと乙女の名が死ぬ。やはりサカキンは悪魔だ。食べなければいいと分かっていても我慢できない料理をしれっと用意してくるあたりが特に。
そんなことを考えていたら、今度はゆきのんが口を開いた。あたしにではなく、優美子に向かって。
「……別に、由比ヶ浜さんでは無いけれど、確かに少し意外だったわ。私も三浦さんが来るとは思わなかったもの。……どういう風の吹き回しかしら?」
「べつにー?今日は暇だったし。誕生日パーティなんて自分で開くのも、誰かにあーしのを開かれんのもあんま好きじゃーけど、だからって他の誰かがやる事まで否定したりしないっつーか。やりたければやればいんじゃねー?とは思ってる。だからモサキチがユイの誕パやるって言うなら他に予定無ければ参加くらいするっしょ。ユイの誕生日祝いたくないわけじゃねーし?」
ピリッとする空気。2人ともちょっと喧嘩腰な口調なのが不安だけれど、普通に優美子もあたしの誕生日を祝う為に参加してくれたらしい。正直かなり嬉しい。……ひょっとして去年もあたしが変に空気を読もうとして言い出せなかっただけで、言えば一緒に祝ってくれたのだろうか。そうだとしたら、あたしにも優美子を誤解してるところがまだまだたくさんある、という事で、つくづくあたしって馬鹿だなぁと落ち込む。
「モサキチ、ね……。この際だから一つ言っておくけれど、貴方の恋愛事情に、ウチの部員を断りなく巻き込まないでくれるかしら。お昼のあれ、正直どうかと思うわよ?」
一人で落ち込んでたらゆきのんがいきなり吹っ掛けた。唐突過ぎてフォロー入れるタイミングを逃してしまった。ちょ、ゆきのん!?声を掛けるもゆきのんはこっちを見る事すらせず、じっと優美子の目を見ている。ヤバい、優美子が変なこと言ったら即喧嘩になりそう!
「はぁ?あたしが何しようと雪ノ下さんになんもかんけーねーと思いますけど?モサキチに言われんならともかく、雪ノ下さんになんか言われる筋合いねーわ」
「関係無くはないわ。言ったでしょう、ウチの部員だと。断りもなく勝手に利用されると困るのよ。せめて事前に依頼を出してもらえるかしら?それなら私たち全員で、貴方に協力してあげてもいいわ」
「ウチの部員って、部活仲間ってだけでモサキチの権利とか主張されても困るんですけどー?つーかあんたこそただの独占欲じゃん。雪ノ下さんこそそっちの恋愛事情にあーしを巻き込もうとすんの止めてくれる?迷惑なんだけど?」
「……誰が誰に恋愛感情を抱いていると言いたいのかしら?勝手に決めつけるのは止めてもらえる?正直に言って不快だわ。そういうのはあなた達だけでやってちょうだい」
「ふーん?そういうこと言うんだ?じゃあ依頼だすわ。ちょっとデートするからしばらくモサキチ貸してよ?良いっしょ?別に恋愛感情無いなら、ただの依頼じゃん?」
「お断りよ。奉仕部は依頼人の相談事を解決する手段は教えても、直接解決することは無いわ。それに、貴方は異性に人気なのが自慢なのでしょう?別に彼に拘らなくても声を掛ければいくらでも集まるのではなくて?最も、本当に人気があるのなら、それこそ、葉山くんに直接言えば彼も断らないと思うけれど?」
「……はぁ?なにそれ、喧嘩売ってんの?」
「あら、面白い事を言うのね?いい事を教えてあげるわ三浦さん……喧嘩って、同レベルの人間でないと起こらないのよ?私と貴女で起こる訳が無いじゃない」
なった!もう喧嘩だこれ!というか始まったら流れが早すぎて口全然挟めなかったどうしよう!あーもう、早く来てよサカキン!あたしじゃ二人の仲を取り持つなんて無理だよー!……って、ああ!?そういえば部室出ていく時こっち見て意味ありげにニヤって笑ったのひょっとしてこういうの事を予測してたのかな?!あ、ヤバい凄い簡単にそのイメージ出来た。たぶんそうだっていうか絶対そうだ!
きっとサカキンの事だから二人の間に挟まれてあたしが苦労することまで織り込み済みで、下手したらこれを機にもう少し仲良くなったら良いよ!とか考えていそう!まずい、だとしたら平塚先生に早く解放されたとしてもわざと遅れてくるくらいのことを彼は平気でする!ぐっ、だとしたら結局あたしが何とかしないと、後どのくらいこの居心地の悪い空間にいる羽目になるか分からない!!
ぐ、ぐぐぐっ!腐っても今日の誕生日の主役であるあたしにそんなことをさせるあたりやっぱりサカキンは悪魔だ!あの鬼畜!まだ確定じゃないけどたぶん間違いないし間違ってたとしてもきっとサカキンのせいで間違ってない!だけど今はとりあえず……!
「ちょっと優美子、サカキンとのデートってどういうこと?どんな目的があるの?」
まずは一番納得いかない所の説明が先だよ!!
「いや今そこかよユイ。……あんた、最近遠慮なくなったなーとは思ってたけど、もしかして単に欲望我慢しなくなっただけなん?」
「というか、由比ヶ浜さんがうんうん唸っていた間にその話はもう終わったのだけれど……?」
えぇっ!?ウソ?あたしそんなに長い間唸ってた!?全然聞いてなかった!ごめん話聞いてなかった!あと優美子は欲望とか何か言い方やらしーからやめて!
「いや欲望って言葉がやらしーって……逆にその発想がエロいじゃん。ユイ、あんたそんなに欲求不満なんかー?」
「由比ヶ浜さん……えぇと、その……若いうちはある程度仕方ない事だとは思うけれど、うら若き乙女が人前でそういうのを漏らすのはどうかと思うわよ?」
止めてッッ!あたしが変態みたいな言い方しないで!違うから!あたしは変態でもなければゆきのんみたいにエッチなゲーム持ってたりもしないから!ちょっとサカキンに影響されただけだから!!
「ちょっ、由比ヶ浜さん!?あれは姉のだと説明したでしょう!?」
「へぇー?ふ──ん?そーなんだー?そういやモサキチが雪ノ下さんのことむっつりって言ってたけど、ほんとだったんだー?へぇ──ー?」
「ッッ!!そ、そんな訳ないでしょう!あの男のでまかせよそんなもの!だいたい、それを言い出したら三浦さんにだけはそういう事を言われる筋合いは無いわ!」
「は?あーしは尻軽じゃねーんですけど?つーかバカキチといいあんたといい、人の見た目でビッチ扱いすんなし。そーゆーの、迷惑なんだけど?」
「そうだよ!人を見た目で判断するの良くないよ!あたしの髪の毛ピンクだからって別に淫乱じゃないし!サカキン居ないから言うけどあたしまだ処女だし!優美子は違うらしいけど!」
「っておいユイー!何さらっとあーしだけビッチ扱いしてんだおめー!?てか誰から聞いたそんなデマ!!」
デマじゃないよ!人に聞いた話によると最近の隼人くんと優美子の仲があまり良くないのは初体験の日に上手くいかなかったからだっていう有力情報があるんだからね!
「それをデマっつーんだよアホっ!てか隼人とそんなに上手くいってたらこんなに苦労して………海〜老〜名〜〜ッッ!!」
あれっ、何で情報元が姫菜って分かったんだろう?えっ、常習犯?デマの原因大体あいつのせい!?そ、そうなの!?
「あいつ時たま妄想を事実として話すことあっからな……チッ」
「貴女も結構苦労してるのね、意外だわ。……何でそう言うのってこちらの事を何も知らない癖に事実として広がるのかしら?」
「さぁ?おもしれーんじゃね?海老名はともかく、他の連中はあーしが実際何をしてきたかなんて興味もねーんだろ、たぶん。死ねばいいのに」
「同感ね。誰かを自分の都合のいいように貶してる時間があったら、少しでも自分を高める努力をすべきよ……そんなことも出来ないあの無能ども、だから好きな人に振り向いてもらえないって何故気付けないのかしら?」
「それなー。人の顔にメイクが上手いからだ、実際はブスだとかくだらねーこと言う前に自分でメイクの練習してからほざけっつーの。地顔がブスでメイクも下手で性格もブスならそら誰だってアンタなんか好きになるわけねーだろって話だわ、ほんと」
………あれ、あたしが信じていた有力情報が姫菜のデマだってことにショックを受けてる間にいつの間にか2人が打ち解けてる?嘘、何で!?ちょ、待ってあたしを無視して二人だけで仲良くならないで!あたしもちゃんと会話に入れてよ!?
「でもさー、雪ノ下さんの普段の態度もどーかなってあーしは思うわー。わざと喧嘩売ってるようにしか見えないし、ぶっちゃけ自分から誤解広めてね?」
「そんなことはないわ。私は自分の思ったことを正直に言ってるだけよ。それで相手が勝手に被害妄想して、こちらを逆恨みしてくるのよ?貴女だったらそんな輩、いちいち相手にしてられるのかしら?」
「あー……うん。それはあーしも相手にしねーっつーか眼中に無いから無視するわー。それは分かるかも」
「そうでしょう?そんなこといちいち気にしてたらこちらの身が持たないし、それこそ相手の思う壷よ。冗談ではないわ。由比ヶ浜さんみたいに周りに流されることを美徳とする気はないの」
「ユイは確かに流されやす過ぎだけど、それはそれでユイのいーとこじゃん。それに、最近は前ほど気にしぃでもねーし。別に良くねー?」
「初対面でこの年でまだヴァージンであることは恥ずかしいことだ、それが分からないなんて女子力が足りない、などと言われたのだけれど」
「うわっ、なにそれビッチじゃん。引くわー……!」
「っって!?何いつの間にかあたしの悪口2人で言ってるの!?ゆきのんも、あたし別に周りに流されること美徳としてないし、そんな出会ったばかりの頃なんて昔の事をほじくり返すのやめてよ!?」
気がついたらゆきのんと優美子があたしの目の前であたしの悪口言ってた!2人ともいちいち陰口とか言わない性格だから目の前で言ってくれるのは良いけどそれはそれで傷付くんだよ!?てか優美子はガチめにドン引きしないで!周りからしたらそのビッチの親玉優美子だからね!?
「昔って、まだ2ヶ月と少ししか経ってないのだけれど」
「あーしは別にビッチでも親玉でもねーしなー。むしろユイ自覚ないの?アンタ結構発言ビッチになってんよ?」
やめて、お願いだから気付かせないで!!誰にだって認めたくないことはあるんだよ!それを言ったら優美子だって………!ごめん、やっぱ何でもない。
……ね、もうやめよこーゆーの。
「あ?そこまで言いかけて止めんなし。文句あったら言えばいーじゃん。あーしら友達なんだから」
「そうよ、由比ヶ浜さん。良い機会だし言いたいこと全部言った方が良いと思うわよ?」
「ううん。こういうの言い出したらキリがないし、過去に遡っての悪口とか好きじゃないから。優美子がそういうの言っても聞いてくれるって分かってれば十分。……それに、せっかくサカキンとゆきのんがあたしの為に用意してくれた誕生日パーティだもん。普段の不満ぶちまけるより、3人でもっと楽しくやりたいかなって」
そうだ。愚痴とか悪口なんて別に今じゃなくても言える。そんなものはあたしが言えるかどうかなのだから。だけど、こうしてあたしの誕生日を楽しく過ごす、というのは文字通り誕生日にしか出来ない。今までそんなに自分の誕生日を重要視したことはあまり無かったけれど、今日は違うのだ。だから……
「だから、とりあえず今日は止めよ!それに、せっかくサカキンがこれだけ美味しいもの用意してくれたんだし、喧嘩する前にまず食べよっ!ほら、この水水肉バーベキューとか絶対美味しいヤツ……って水水肉バーベキュー!?ワンピースの奴じゃん!なんであるの!?」
「……今頃気付いたのかしら?恐ろしい事にそれ、本当に柔らかくて美味しいわよ。何をどうやったら水水肉を再現出来たのかは分からないけれど……」
「よく見たらメロウコーラとかあるし!何この注意書き!「普通のコーラより炭酸と糖度が数百倍なのでこちらの炭酸水で希釈して飲んで下さい」……?えぇ、もう普通のコーラで良くない??」
「いやさも当然のように話してっけどなんの話だかさっぱり分かんねーんだけど?何かすごい料理なのこれ?いや、やたらうめーとは思うけど」
「ええっ、優美子ワンピース知らないの!?名作だよ!?ほら、そこに全巻置いてあるから読まないと!あ、トリコはちょっとトンデモだから無理して読まないでも良いと思う。ね、ゆきのん?」
「そうね、世紀末リーダー伝といいリングといい、あの作者の設定は無駄に壮大にし過ぎだし、半端なギャグが子供向けすぎて初心者で三浦さんくらいの年齢には合わないと思うわ。私のオススメは夏目友人帳なのだけれど、こちらのゴールデンカムイも歴史考察が中々に詳しくて面白いと思うわ」
「えぇー?夏目友人帳はあたしも好きだけどゴールデンカムイはちょっとグロいからあんま好きじゃないなー。というか、優美子あんまり漫画読むイメージ無いし、何も考えずに笑えるヤツとか良いんじゃない?テンテンくんとかは?」
「ちょっ、待てし!2人だけで盛り上がられてもあーしまだ読むとか言ってねーし!?つか漫画とか興味ないんだけど?」
あははは、大丈夫大丈夫。あたし達も2ヶ月くらい前は同じこと言ってたから!よく分からない英語の小説ばっか読んでたゆきのんでさえ漫画の魅力からは逃れられなかったんだし、優美子も読み始めたら一瞬だよ!さっ、まずは試そう?大丈夫大丈夫、苦手意識なんてほんと最初だけだから!
「おい待て近寄んな、ちょっ、ユイ!?聞いてんの!?近寄んなってば!今のアンタ目がこえーんだよ、ガチの時の海老名みてーじゃん!?」
「ヤダなー優美子、姫菜と一緒にしないでよ。あたし達の読んでる漫画は健全なものばかりだから!」
そう、健全じゃない描写ばかりのToLOVEるとかアイズとかそういうのは全部サカキンから没収してあたしとゆきのんが部室から回収しちゃったからここにその手の類は置いてないし!残りの奴はちょっとはエッチな描写あるけど少女漫画のそれと比べたらおままごとみたいなものだし大丈夫!だから優美子、さぁ!
「いや、さぁ!じゃねぇし!あ、コラやめろって近寄ってくんなっていうか顔がこえーつってんだろ!?………あぁー、もうっ!落ち着けっつーの!」
「んひゃあっ!?ちょっ!や……!待っ、優美子、止め、て……胸揉まないで……!ごめ、謝るからっ!」
「うっさい!人の話聞かねーヤツの言うことなんか聞いてやんねーし!ほれほれ、相変わらず巨乳のくせに感度良すぎなんだっつーの!」
んきゃぁぁあ!ごめん、ごめんってば!悪ノリしたあたしが悪かったからもうやめてー!あたし胸弱いんだってばー!あ、ゆきのん!見てないで助けてよー!ひゃんっ!ち、乳首は本気でダメだってば!?
「諦めなさい由比ヶ浜さん。自業自得よ」
「そーそー自業自得ー!にしても本当にすくすく育ってんなーユイ、あーしよりデカいとか生意気だし」
ひゃぁぁぁ!こ、このぉー!人の胸を遠慮せずに揉むとか女の子同士でもセクハラなんだからね!はぁんっ!だ、だから乳首は本当にダメって……もう怒った!そっちがその気ならこっちだって!えーい!
「うひゃぁっ!ちょっ、ユイ!?あーしの胸に触っていいとか言ってないんですけど!?んっ……!ゆ、ユ〜イ〜?」
「きゃぁ!ちょっと、由比ヶ浜さん!?なぜ私まで…ひゃんっ、や、止めなさい!」
ふっふっふっ!どう?優美子、これであたしの気持ちが理解できた!?ゆきのんは見てるだけでも同罪なんですー!ほら、イジメで傍観してる人達も加害者って言うし!さぁ、2人とも今すぐ止めないと2人の乳首もどうなるか分かんないよ!それでもいいの!?……ってあれ?2人の目が据わって……?あ、ゆきのんまで!?駄目、2人がかりとかズルいよ!ふぁぁぁん!こ、このー!
「んっ、やられっぱなしで終わるあたしじゃないよ!って、はぁぁぁん♡」
「いい加減にしろこのバカユイ!アンタ、モサキチが伝染って、ふあっ、や、やめろ抓ん……んぁっ♡」
「止めて欲しかったらまず私を巻き込むのを止めなさい!って、ちょ、服の中にまで手を入れないで!やめっ………ぁんっ♡」
うう……ちょ、ちょっと感じちゃった……!なんて事するの2人とも!やりすぎ……だ、よ……??
「………うっせ、ばか」
「………も、もう。やめましょう?」
うわ、可愛い……!何これ、2人とも普段強気なのに頬真っ赤にして目はウルウルしてるし、いつもならあたしの事睨んでるの?ってぐらい視線逸らしたりしないのに、目をめっちゃ逸らしたりチラ見したりしてる!やだ、何かすっごく可愛い!
へたり混んだ2人の方に身を乗り出す。思わず、と言った様子で胸を抑えて2人が身を竦ませた。あたしはそんな2人に構わず、近かったゆきのんの白くて細くて綺麗な脚に指をつーっと走らせてみた。
「ふぁっ……ん…♡、ゆ、由比ヶ浜さん、何、を……?」
「ゆ、ユイ……?アンタ、何して……」
ゾクリ。
背筋に何か不思議なものが走った。2人の少し怯えたような表情。普段のカッコイイ2人からは見られないような弱々しく、それでいて可愛らしい姿。
ゾクゾクッ。
先程よりも強く背筋を駆けた何か。何処と無くソワソワするような感触のそれは、なんだか全然不快じゃない。いや、むしろ……気持ちいい?
……
今の2人を見てたら自然とそんな願望が湧いてきた。……どうしよう、あたし、サカキンが普段の2人を揶揄うのが好きな気持ち、理解出来ちゃったかも。これは駄目だ、どうにも抗い難い願望だ。
我慢できずに更に少しにじり寄る。2人とも今度はハッキリとビクッ!とした。可愛い。も、もうちょっと2人の可愛いところ、見た「キーンコーンカーンコ──ン」ふぇあっっ!?うわびっくりした!あ、下校のチャイムか。
そ、そっかもうそんな時間か。それにしてもびっくりした。驚き過ぎて何か色々吹き飛んだ!って、あ、あたし今何かすごい変な感じになってなかった!?何か今凄い2人を虐めたい気分になってたんだけど!?いや2人を虐めたい気持ちってなに!?サカキンじゃあるまいし!
「………っ!」
「………ッ!」
「………!」
思わず3人で顔を見合わせる。そして同時に逸らしてしまった。き、気まずい……!というか、何かもの凄い恥ずかしい!ど、どうしよう!恥ずかし過ぎて何喋っていいか分かんない!
「………ね、ねぇ、2人とも?出来れば今の事、無かったことにしないかしら?」
「そ、そーしよっ!な、何か凄い変な気分になりそうだったもんね!わ、忘れよ忘れよ!」
「アホっ、変な気分とかゆーなし!……こ、この話はナシで!」
「そ、そーだね!あはは……サカキン、遅いね?ひ、平塚先生にまだ怒られてるのかなー?」
「そ、そうね。きっとまだ怒られているに違いないわ。榊君だもの……、全く仕方ない人ね?」
「や、やー、モサキチってどーしようも無いとこあっかんな!でも良かったんじゃねー?早く来てたらさっきの見られてたか……も……?」
バッ
3人同時に入口のドアを見る。示し合わせたように同時に立ち上がって、恐る恐る扉を開けて部室の外の様子を見る。……どうやら廊下には誰も居ないようだ。部室は2階にあるから大丈夫だとは思うが、念の為に窓の外も確認しようと、3人とも潜むようにカーテンの下から潜り込んで外の様子を伺う。
「……見られて、ないよね?」
「恐らくは……ただ」
「……他の奴は大丈夫でも、モサキチだけは目の前にいきなり現れてもおかしくねーかんな……!」
そうだ。多分大丈夫だとは思うが、彼なら突然カメラ片手に部室に現れてもおかしくは無い。そしたらあたし達のさっきのを見られててもおかしく……!?
「〜〜ッ!や、ヤメヤメ!ごはん!ごはん食べよ!せっかくサカキンが作ってくれたヤツ、まだまだ残ってるし!一通り食べたけどどれも絶品だし!」
「そ、そうね!残すのは勿体ないものね!とは言っても、到底この人数で食べ切れるものでは無いけれど!」
「き、気にしたら負けだし!あのバカがユイやウチらが楽しめるように作ったモンなんだからできる限り食べるべきだし!……せっかくだし、誰が1番食べれるか競走しねー?勝った奴は負けたヤツに好きな罰ゲームできるとか、どうよ。やる気でんじゃね?」
「あ、そ、それ面白そう!どうせ食べるなら楽しんで食べたいもんね!ふふふ、罰ゲーム何にしよっかなー?」
「あら?もう勝った時の事を考えてるの?随分余裕ね……まぁ、勝つのは私なのだけれど」
「はぁ?雪ノ下さん、そのちっこい体で大食いなんて出来んの?どう考えても最下位だと思うけど。謝んなら今のうちだよ?」
ふふふ、それは余計な心配というやつだよ優美子。あたしとゆきのんはここ最近ずっとサカキンの手料理を食べ続けてるんだよ?おかわりの我慢なんて、できると思う?……おかげで最近は毎日運動する羽目になってるんだよ、あたし達。
「ふふ、そういう事よ……!自慢じゃないけれど、今の私達は運動部の男子生徒並に食べるわ。つまり三浦さん、貴方は自分の心配をするべきだと思うわ」
「うっわ、本当に自慢になんねー……!それでなんで2人ともドヤ顔なんだし。……まぁいーや。要は勝てば良いわけっしょ?元県選抜の本気、見せてやんよ……!」
し、しまった!よく考えたら優美子は元々女テニで運動部!しかも県選抜行くくらいにはガチ目にやってたはず!おまけに隼人くん達男子の目がないから、食べる量とか誤魔化す必要もないっ!?ど、どうしようゆきのん!?
「怯える必要は無いわ。要は条件が同じになっただけよ……勝てば問題ないわ。それより、罰ゲームの内容は?」
「あー、どうすっかなー。勝負の内容的に筋トレとか運動系はあれだし、痛い系や後に残る系も無しっしょ。でもどうせなら地味に嫌なヤツがやる気でんじゃねー?」
「地味に嫌なヤツ……あ、すっぴんは?明日はもう週末だから、来週学校に来る時、すっぴんで1日過ごす……とか?」
「いや、それ地味じゃなくて普通にめちゃくちゃ嫌なヤツだろ、ユイ」
「あら、私は別に構わないけれど……?」
うん、ごめん優美子。今のはテキトー過ぎた。しかもこれほぼ毎日簡単なメイクしかしないゆきのん相手じゃ罰ゲームになんないし。でもこれといって思い付かないなー。適当で良くない?
「駄目よ。それだと緊張感がないわ。負けていい勝負なんて無いのよ由比ヶ浜さん?」
「いやガチ過ぎじゃね?……まぁ言ってることも一理あるか」
いつの間にか多すぎる料理を減らす為の大食い勝負じゃなくて、勝負そのものが目的になってる!?ゆ、ゆきのんの負けず嫌いが変な方向に出ちゃったのかな?
ふと見ると何かヒントを得ようとしてるのか、本棚の方を見ているゆきのん。確かに漫画とかには罰ゲームとかあるけど、罰ゲームで有名な遊戯王の奴は無理だと思うし、後は他の漫画に罰ゲームなんてあったっけ?って、ゆきのんの目線が……あれ、あれは……?
「何か良いアイデアは無いかしら……罰ゲームのあるものは、遊戯王は無理として、後は………?めだか、ボックス……ッ!さ、流石にこれは駄目ねっ」
「は?急になんなん?その漫画の罰ゲームで良さそうなのあったとか?」
「い、いや違うよ!ダメな奴だよ!本当にダメな奴!絶対駄目!」
「いや知らんけど。どんなん?」
「……裸エプロンよ。正確には「裸エプロンで学校生活を送る」ね。倫理的にも後に残らないものとしても無理ね」
よ、良かった……!流石にゆきのんも負けず嫌いだと言っても良識は残ってるよね!当たり前だけど!「それで良くね?」ちょっと優美子、正気?!
「や、学校生活とかはねーわ。流石にそれは恥ずいとか通り越して捕まるし。そーじゃなくて、負けたヤツがこの場で一回裸エプロンになる、で良いんじゃね?今ならモサキチも居ねーし、女同士なら恥ずいだけじゃん。決着着く前にモサキチが来たら罰ゲームだけ持ち越せば」
「確かにそうだけれど……流石に無理よ。もし罰ゲームの最中に榊君や他の男子が来たらどうするつもりなの?一応今日は部活中止の貼り紙を入口に貼っているから、時間的に来るとしても榊君だけだとは思うけれど」
「その時はまぁ、運が無かった、みたいな?まっ、どーせあーしは負ける気ないから正直罰ゲームなんてどうでも良いんだけどさ。雪ノ下さんとか負けるのが怖かったら負けても大丈夫な奴にしたらいいんじゃね?」
そう言ってニヤリと笑う優美子。その顔には大きな自信が伺える……けど!それは流石に無理って言うか良くないよ!ていうかそんな挑発するみたいな言い方やめて!ゆきのんがその気になったらどうs「安い挑発ね……良いわ。確かに負けなければ良いだけだもの」いやぁぁぁぁ!ゆきのん!?落ち着いてゆきのん!?良く考えて!?裸エプロンだよ!裸なんだよ!?僅かでもサカキンに見られる可能性があるんだよ!?そんなの絶対無理だよ!!
「……落ち着きなさい由比ヶ浜さん。負けなければ、いいのよ。むしろ負けた三浦さんがどんな顔をするか、興味が出てきたわ」
「ゆきのん!?それフラグだよ!?ちょっ、優美子!流石に無茶だってば!?」
「じゃあユイは審判でいーよ。モサキチがユイの為に作った料理だけど……まー、モサキチなら肝心のユイが1番食べられなくても文句言わないっしょ」
「そ、それは……!」
思わず昼の事を思いだす。食べ切れないからと一度料理を片付けさせたとき、彼は軽い口調だったものの、残念そうだった。その時は気にせずにいたけど、平塚先生に言われて勘違いしていたと気付いた今ならよく分かる。むしろ普段声にさえあまり感情の出ない彼が、僅かでも残念な口調だった、という事はつまり、あの時実は、本当に残念だと思っていたのだ。
当たり前だ。10時間以上掛けて全て1人で、良かれと思って用意した料理を、要らない、何て言われたら誰だって傷付く。あたしならショックで立ち直れない。しかもその理由が勘違いだったとしたら遣る瀬ない、どころの話ではない。
たぶん軽い口調だったのでさえ、あたしの為に咄嗟に取り繕ってくれたのだ。その後謝った時の言葉を考えても多分間違いない。言った本人であるあたしが傷つかないように、自分はショックなんて受けてないと、笑って誤魔化してくれたのだ。
……そう、つまりこの料理は本来、全てあたしが食べるべきものだ。流石にそれは無理だと分かっているが、 それでも1番食べなかったのがあたし、ということになるのは嫌だ。それでは彼の想いをあたしはもう一度踏み躙ることになる。初めは無意識だったとしても、いや、だからこそ2度目は無い。2度も好きな人の優しさを踏み躙るなんて、恋する乙女として失格だ。論外だ!
覚悟を決めた。何があっても負けない覚悟を。この勝負で勝つのはあたしだ。優美子でもゆきのんでもない、このあたしが、絶対に勝たなくてはいけないんだ!
「……いいよ。やろうか、優美子。言っとくけど、勝つのはあたしだからね?サカキンの手料理を1番食べるのは、あたしなんだから」
「……ふーん?ま、やってみな。どーせ勝つのはあーしに決まってっし」
「(いつの間にか由比ヶ浜さんが勝負の主旨を間違えている気がするけれど)なんでも構わないわ。始めましょう……敗者は貴方達2人のどちらかなのだから……」
3人が同時に箸を取った。取り皿を持ち、料理の前に並ぶ。そして……
「……」
「……」
「……いざ」
「「「いただきますっ!」」」
今ここに、負けられない乙女の戦いが始まった!
待っててサカキン、あたしが、ちゃんと勝って証明するから!それで今度はちゃんとお礼言うね?美味しかったよって、あたしの為にありがとうって!それで、それで──ー!
……その後のことは正直、よく覚えていない。
とにかく無我夢中で食べ続けた。幸いにしてサカキンの料理は本当に美味しくて、食べ飽きるということは無かったし、2人も負けたく無かったのか、とにかく止まることなく3人で食べ続けた。
いつの間にお腹周りが苦しくなって、スカートのホックを外して緩めた。それでもダメでチャックを下ろして完全に締め付けを無くし、上に着ているものの微かな肌触りや締め付けさえも強い圧迫感に思えてボタンを外して捲りあげた。それでも苦しくてもう食べられないと思っても食べ続けた。
何故なら2人の手が止まらなかったから。あたしは何があってもこの勝負にだけは負けられない思い、震える手を無理やり動かして、彼の手料理に吐き気を覚えてしまう脳を叱咤してでも料理を飲み込んだ。その結果は……!
3人とも食べ過ぎて動けなくなってサカキンに情けないお腹とか下着とか見られました。しかも良く考えたらそれぞれが食べる量とか気にせず無理やり食べてたので、誰がどのくらい食べたのか分からず勝敗がつかないっていうかそもそも勝負になってなかった。
つまりあたし達は自らサカキンにパンツ見せただけ、みたいな?しかも肝心のサカキンは乙女のパンツ見たくらいでは動揺もしないらしい。逆に白とかありきたり、なんてダメ出しされてしまった。
……正直、その後サカキンからプレゼント貰えなければ内心二度と立ち上がれなかったよ!
◻️◻️
ピンポーン
その音が鳴った直後に、はーい、と何処か気だるげな声が聞こえた。時間的に勉強でもしていたのだろう。少し申し訳なく思うが、事前にちゃんとメールで連絡したので許して欲しい。
すっかり遅くなってしまった。たぶんもう彼女達も夕飯は食べてしまっただろう。もう少し早く来たかったのだが、思ったよりカラオケが長引いた。
肝心のゆいにゃんが家でも家族にお祝いされる、という事で7時くらいにはお開きになったが、そこから近くだからとそのまま別れたユーミンはともかく、タッパー詰めした料理のお土産が大量にあるゆいにゃんとセツのんは家まで送っていく必要があったので、さらに時間が掛かるのは仕方ない事だろう。(なお、結局部活が長引いたらしく、キラキラや戸塚から連絡が返ってきたのはカラオケの終了間際だったので2人も合流することは無かった)
予想外だったのは大量のタッパーに詰めた料理を渡す為に、ゆいにゃん家のマンション、その玄関まで3人で行った際、やたら若々しいゆいにゃんママ(若々しすぎて素でゆいにゃんの姉と勘違いした)に捕まってしまった事だろうか。
普段ゆいにゃんが家族に俺たちの何を話してるのか知らないが、俺とセツのんを見たゆいにゃんママはテンション爆上がりで、タッパー渡して帰るつもりだった俺たち2人は、恥ずかしいから止めて!と叫ぶゆいにゃんをガン無視で家に上がって行って!とメッチャぐいぐい来るゆいにゃんママに半ば無理矢理押し込まれるようにしてゆいにゃんの家に上がっていくことになった。
そして女の子らしい部屋をしたゆいにゃんのマイルームに通されて、娘が絶賛する俺の料理が気になってた!とか、娘が最近やたら楽しそうでありがとう!とか、あなたのおかげで料理の手伝いとか全然しなかった娘が積極的にするようになった!とか、凄い手品が使えるんだって?見せて!とか、もう今日は泊まって行ったら?とか、それはそれはもうハイテンションで話し掛けられまくった。
恥ずかしがったゆいにゃんは何言っても止まらないゆいにゃんママに途中からしがみつきっ放しだった。なので俺とセツのんは家に着いてからゆいにゃんと一切会話することなく、ゆいにゃんママとだけ話していた。
途中強請られたので料理の詰まったタッパーを渡すついでにイリュージョン!とかやったら更にテンションが上がってしまい、俺の作ったケーキや料理を食べて店売りのより美味しい!褒めてくれたりしながら俺のイリュージョンの種を見つけ出す!とキャーキャー言いながら大騒ぎしてた。
そこまでは良かった。
だが、チートを誤魔化す為とはいえ、イリュージョンイリュージョンと普段使いし過ぎてセツのんもゆいにゃんもほぼ無反応なのでゆいにゃんママの反応に気を良くした俺は少し調子に乗ってしまい、慣れて興味のないゆいにゃんとセツのんの冷たい視線を無視して、ゆいにゃんママの為に普段のイリュージョン擬きに加えて真っ当な手品っぽい事も披露してしまった。
その中に、制服の胸ポケットから電子レンジを出す、というものがあったのだが、それが良くなかった。
別に電子レンジを出す必要は無かった。単に持ち込んだ大量の料理的に、ゆいにゃんの家にある電子レンジじゃ足りなかろうと業務用の電子レンジがあってもいいかなー、とかそんな軽い気持ちで出した。
それが何故か凄い琴線に触れたのか、それともそれまでのイリュージョンで感極まって居たのか、とうとう我慢できなくなったゆいにゃんママは俺に飛び付いて来て、俺の服に何か仕掛けがあるのでは!?と俺の服の中をまさぐったりしまくった。
これにはゆいにゃんママの止まらぬ勢いに固まってたゆいにゃんも再起動して俺から何とか母親を引き剥がそうとしてくれたのだが、そこで悲劇が一気に重なった。同じくゆいにゃんママを止めようとしてくれたセツのんがうっかり足を縺れさせた。
その結果、倒れかけたセツのんがゆいにゃんを巻き込んでこちらに倒れ込んで来た。そしてそれは当然、俺に半ば抱き着くようにしてたゆいにゃんママも巻き込む形になるわけで。
うっかり油断してた俺は、3人が怪我しないように咄嗟に柔らかく弾力を持つ程度に空気を固めた空間クッションを挟む事と、俺の身体に波紋を流して柔らかくしてもう一つのクッションになるのが精一杯だった。
そして一拍の間を置いて倒れ込む俺たち。もちろん俺が居て、3人に怪我などさせる気は無いが、3人が俺の上に重なって倒れてしまう、という事態そのものはは避けられなかった。
その直後に開けられるゆいにゃんの部屋の扉。ちょうど先程帰宅したらしいゆいにゃん父が部屋の前を通り過ぎようとしてたのは俺も気付いていたが、同じく夫の帰宅に気付いたゆいにゃんママがまずは着替えてから来る、と言うので気にしてなかった。たぶんゆいにゃん父は3人が倒れた時の音に驚いて心配してくれただけだと思う。
しかし娘の扉を開けた瞬間にゆいにゃん父の目に飛び込んできた最初の光景は、見知らぬ男の上に重なる己の妻と娘を含めた3人の女性の姿だった。
……いやね、ツッコミどころはたくさんあるんだけどね?3人とも服着てるし、どう見ても下敷きになってるのが俺で、俺が3人を組み敷いているようには見えないだろうとか、そもそもゆいにゃんとセツのんは百歩譲って誤解されても仕方ないと思うけど、ゆいにゃんママは有り得ないだろっていうか自分の妻信じろよとか言いたいことは沢山ある。
だがたぶん仕事帰りでお疲れだったゆいにゃん父には冷静になって考える、ということが出来なかったのだろう。つまり
一瞬で大騒ぎになったよ!しかもテンパったゆいにゃんママがまだ俺もセツのんもOK出てないのに今日泊まってく予定の子達!とか説明したからそれはそれはもう酷いこと大惨事だよね!
最終的に緊急家族会議を開くから、と何か口を挟む前に追い出された俺とセツのんは、顔を見合わせて大人しく帰る決断をした。結局ゆいにゃんの家に滞在したのは僅か40分程だったが、目的だった料理や、ついでに業務用電子レンジも置いてこれたのであれ以上いる意味が無かったのも間違いないことだ。セツのんはともかく俺は泊まる気全く無かったし。
そんなこんなでそのままセツのんと2人で並んで帰って、一度マンションの10階まで上がってセツのんの部屋まで行き、一人暮らしのセツのんの家に、ゆいにゃん家に置いてきたよりも少なめに小分けにした料理を置いて、さて俺も家に帰るか!とセツのんにおやすみ、と言ってセツのんの部屋を出ようとした。
そこでセツのんが思い出したように言った。
「そう言えば小町さんや川崎さんにもお裾分けすると言っていたけど、そっちは良いの?」
……正直に言おう。完全に忘れていた。
ぶっちゃけ俺の空間倉庫は時間の流れを止めてあるので、中に閉まっておく分にはなんの問題も無いのだが、何分イメージ的に手料理、特にケーキとかは日持ちしないし、数日経ってから渡されても食べる気にはなれないだろう。むしろ嫌がらせにしかならない。
なので何故か一緒に着いてきてくれようとしたセツのんを押し止めて、俺一人慌てて部屋に戻らずマンションを出た。いや、今一度でも部屋に戻ったら絶対に外に出る気にはならないからね、仕方ないね。
しかし流石に夜も遅いので、事前にこまっちゃんと川崎少年に連絡し、レスポンスが早かったこまっちゃんの方に先に向かった。もちろん徒歩どころか車さえ使う気になれなかったので使ってない。チート使って空間を跳んだ。要はワープだ。
こまっちゃんの家は流石に夜9時を超えて居たので両親も帰宅済みだったので、大量の料理とケーキを玄関先でこまっちゃんに押し付けた後は話もそこそこに切り上げてきた。こまっちゃんにはこんな時間に貰うだけ貰ってそのまま帰すのは〜、などと引き止められたが、こんな時間になったのはこちらの責任だし、むしろこんな時間に女子中学生の家に恋人でもない男子高校生が上がれるわけ無いので、受験生であるこまっちゃんの勉強が捗るように、俺特製アイスピーチティーの入った水筒を押し付けて振り切った。
ちょうどその直後に川崎少年からの連絡があったので、見送ってくれたこまっちゃんから俺の姿が見えない所まで離れた直後に、人目の無いことを確認して再びワープ、今度は川崎家に向かった。
そしてたった今インターホンを押した訳だが……聞こえてきた声は微かに記憶に残る川崎両親のものではなかったし、声の高さ的に川崎少年のものでも無かったのでたぶんサキサキのものだ。
見ると駐車場に車がない。おいおい、夜9時を過ぎたのにまだ仕事なのか川崎家の両親は。どんなブラックで働いてるんだろう。確かに子供の数は少し多いけど、これだけ共働きで働いてるのにサキサキの学費が足りないとかマジか?
うーん、サキサキに1000万渡すよりもうちょいホワイトで高給な仕事両親に教える方が先だったかな?や、俺にそう言った会社を調べることは出来ても入社を確約するコネは無いので結局できることは無いか。
とか何とか考えてると、玄関の扉の向こうで軽くドタドタという足音と、待ちなさい、と誰かを呼び止めるサキサキっぽい声が微かに聞こえた。
その直後、ガチャリと僅かに開く玄関。しかしそこには誰の姿も無い……ので、視線を下に下げてみると、そこにはサキサキと同じ髪色をした幼い女の子が、恐る恐る、と言った表情でこちらを見上げて居た。おや、時間的に寝てるかも、と思ったんだが。
「や、こんばんはけーちん。2日ぶりかね?」
とりあえずそう声を掛けると、途端に目をキラキラと輝かせた目の前の少女、サキサキこと川崎沙希の妹の川崎京華が扉を押し退け飛び付いて来た。今度はちびっ子だし、地味にもう何度もやられてるので予想していたのもあり、普通に抱き留める。
「きーちゃん!やっときた!ひさしぶり!だっこ!」
「いやもうしてるがな」
ついでに言うなら以前来たのは一昨日なので久しぶりでも無いが、この歳のちびっ子にその辺ツッコミ入れても仕方がないので大人しく抱き上げて、彼女が好きな波紋付き頭ポンポンをしてやる。これもここ最近、お裾分けしに川崎家に来る度に強請られてるのでだいぶ手慣れてきた。
そうこうしてると呆れたと共に再度玄関が開かれる。そこには困った顔をしたちょっと困った姿のサキサキと、苦笑いの川崎少年の姿が。や、こんばんわ2人とも。遅くにすまんね。
「こんばんわっす榊先輩!毎度妹がすんません!こら京華、離れろって」
「学校ぶり、榊。いや、またお裾分け持ってきてくれたんだろ?むしろいつも悪いね。ほら、けーちゃん、榊に迷惑だからこっちおいで!」
「やー!いまはきーちゃんのきぶん!」
ははは、いいよ2人とも。ちびっ子に抱き着かれるのはそれなりに慣れてるしな。この時間にまだけーちんが寝てないのには多少驚いたが、むしろ御両親がまだ帰ってないことの方に驚きを隠せない。なんかあったんか。いつもはこの位には家にいるだろ?
そう聞きながら、離れる気がないちびっ子を抱っこしたまま家の中に入れてもらう。川崎家は両親とも付き合いがあるので、こまっちゃんの家と違って家に上がるのも珍しくなく、最近では何度かお裾分けする内にこの末っ子たる川崎京華、俺命名けーちんに抱き着かれて短時間とはいえお邪魔させてもらうことも増えたので、慣れたものだ。最も、ここだけはお裾分けの中に巨大ホールケーキ(4段)がタッパーに高さ的な理由で物理的に入らなかったので直接出す必要がある、という切実な問題もある訳だが。
「ううん。両親は会社の飲み会だってさ。何でもやっと大きな仕事が片付いたとかで、そのお祝いとか言ってたよ。これからしばらくは両親も早く帰れるようになるらしい。まっ、どうせまた直ぐにいつも通りだろうけどね」
家の中を川崎少年に先導されながらリビングへと向かっている途中、早くも抱っこに飽きたけーちんが俺の体をよじ登って勝手に肩車へと移行したので、落ちないように支えつつ、頭の上で楽しそうに鼻歌を歌っているちびっ子がぶつからないように大きく頭を下げてリビングに入った。さて。
「3人とも、夕飯は済んでしまったよな?」
「流石にね。というか、けーちゃんも本当ならもう寝てる時間だったんだけど……」
あれ、もしかして俺がインターホン押したから起きちゃったのか?だとしたらすまん。
「いや、違いますよ。俺が先輩からのメール見てたらそれを覗かれまして、今から先輩が来るって分かった途端に目が覚めちゃったみたいで、先輩に会うまで寝たくないって駄々こねてたんですよ」
なんと。それじゃあどっちにしても俺のせいみたいなもんか。悪かったな。こらけーちん、夜は寝なきゃダメだろー?
「や!きーちゃんとあそぶの!」
「こらけーちゃん!今日はもう遅いからどっちにしたって榊は遊んでいけないって何度も言ったでしょ!いい加減離れなさい!」
「やー!」
ははは、まァ仕方ないねちびっ子だもの。サキサキも無理矢理剥がそうとしなくていいよ。ていうかけーちんが俺の髪の毛に掴まってるからそれやられると痛い。
「あっ!ご、ごめん。大丈夫か榊」
「大丈夫大丈夫。それよかここは俺に任せろ。……なぁけーちん、ケーキ食べたくないか?でっかいヤツだぞ?」
「ケーキ!?でっかいヤツ!?たべる!!」
「そっか。でも行儀悪い子にはあげられないんだよなぁ。今すぐ降りて手を良く洗ってから、お行儀よく椅子に座れる子じゃないとなぁ……?」
そう言うとけーちんはババっと俺の肩の上から飛び降りると、ドタドタとダッシュで洗面所まで走っていった。はっはっはっ!相変わらず現金なちびっ子だのう。ちょろちょろのチョロですわ!……ん?どったんサキサキ、変な顔して。俺の顔になんかついてる?
「ひゃっ、い、いや何でもない!……あ、相変わらず手慣れてんなと思っただけ」
「確かに榊先輩、うちの妹の扱い上手っすよね。でも一人っ子って言ってませんでした?」
一人っ子だよ。だがうちの実家は田舎でね。歳の離れた近所の家のちびっ子の面倒とかよく見てたんだよね。だから慣れてんのさ。……それよか川崎少年、今回はゆいにゃんの誕生日だったから料理の量がいつもより多いんだが、頼めるか?具体的にはこれぐらいなのだが。
パチンッ
「うおっ、今回はホントに随分多いっすね!?つーか先輩のイリュージョン、どうやってこの量隠してんすか?意味わかんないんですけど!」
「ふっ、イリュージョンだからな!」(`・ω・´)キリッ
「いや答えになってないから。……でもま、あんたの料理は美味いし、何よりけーちゃんが苦手な野菜でもあんたの料理なら普通に食べるし、助かるよ。大志、さっき冷蔵庫の中整理しといたからしまってくれる?あとこの間貰ったもののタッパーも袋に纏めておいたから、終わったらそれも持ってきて」
「分かった!じゃあ先輩、いつもありがとうございます!貰いますね!」
うぃうぃ、どういたしまして。こちらこそ喜んでくれるなら嬉しいよ……ところでサキサキ、ケーキの事なんだが。
「ん?ああ……あれはどうしようか。昼のヤツでしょ?流石にうちの冷蔵庫にあの大きさのものは入んないよ?たった今貰ったタッパーの分もあるし」
うむ。そう言うと思って、腰ぐらいの高さの小さめの冷蔵庫も用意してみた。ホテルとかの部屋に置いてある冷蔵庫を2回りぐらい大きくしたようなやつ。それの中の棚をとっぱらったので、ケーキを入れる用に使って貰えればと思うんだが、コンセントを何処か借りれないか?邪魔なら食べ終わったあと回収するし、使いたければそのまま置いといて貰っても構わない。
「は?冷蔵庫ってあんた、それは流石に「パチン」……ああ、うん。じゃあとりあえずそこの角に置いてもらえる?」
「あいよー」
そう言って言われた場所まで小さな冷蔵庫を運び、コンセントをさす。ケーキを取り出すが、そろそろ手洗いまで終わらせたけーちんが戻ってくる頃なので、あえてしまわず、テーブルの上に置いた。最も、流石にこの時間にこれ全部食べれる訳もないので大部分は直ぐにしまうことになるが……。
すると案の定、またしてもドタドタと走ってきたけーちんがリビングの扉を勢いよく開いて戻ってきた。そしてケーキを見て嬉しそうに叫ぶ。
「デッッ………かーいっ!すっごいデカいケーキきたー!」
大喜びである。まぁ実際俺たちで4分の1近く減らしたところでまだまだ量があるというか普通に川崎家が全員で3食毎回デザートにこのケーキを食べても2日分くらいの量があるので、物凄いでかいのは事実だ。たぶんこの後無駄に厚くした1段目がどう頑張っても1切れ25センチあるので、夜中にあんまりたくさんケーキを食べさせたくないサキサキがスーパー苦労してけーちんにケーキを切り分ける事だろう。
何となくこの後のサキサキの苦労を想像しつつ、その原因たる俺は責任を追及されないうちに逃げる事にした。都合のいい事にたった今人数分の皿とフォークを持ってきた川崎少年が、以前のタッパーが入ったビニール袋を持ってやってきたことだしな。
もう一度指を鳴らして、川崎少年の手にあったタッパーをビニール袋ごと空間倉庫に放り込み、もう遅いからお暇する、とサキサキに伝える。
「 えっ、ケーキ食べてかないのか?」
「すまん、先程散々食べて正直今日はもうケーキを食べる気にならんのだ。持ってきた料理もケーキも量が多いから、食べきれなさそうだったらすまんが捨ててくれ」
「や、それは大丈夫っす!我が家にかかればこれくらい何とかなるっす!特に最近は姉ちゃんが先輩の料理だといつも以上に「ゴン」ぐはぁ!」
「余計なことは言わんでいい……。そんなに時間ないのか?明日休みだし、もう少しくらい……親も、そろそろ帰ってくると思うし」
「すまんね、明日は用事があるんだ。気持ちだけありがたく貰っておくよ」
そう言ってリビングを出ようとすると、言われた通りお行儀よく椅子に座って、フォーク片手にルンルンだったけーちんが俺が帰ろうとしてる事に気付いてしまったらしい。勢い良くこっちを振り向くと、一転して泣きそうな顔でこちらを見る。
「えっ……きーちゃん、かえっちゃうの?……やだ」
みるみるうちに眦に涙を溜めていくけーちん。まいった、ケーキで誤魔化せるかと思ったのだが、そう上手くは行かないらしい。それでも言いつけを守って椅子の上から降りてこないのがすっごいかわいいけれど、さてさて、どう説得しようか。
んー、すまんなぁけーちん。俺も出来ることならもう少し一緒に居たいんだが、今日はもう遅いし、また今度遊びに来るよ。それまで良い子で待っててくれ。
「やだ!きーちゃんのおひざにすわっていっしょにケーキたべたい!かえっちゃやだー!」
うわ可愛いなこいつ。サキサキがブラコンの上に更にシスコンなのもよく分かる。俺も妹が欲しかったからけーちんはすっごい甘やかしたいのだが、なんなら既にめちゃくちゃ甘やかし過ぎて姉のサキサキに甘やかし過ぎと怒られてさえいるのだが、今日ばかりは無理だ。なので許して欲しい。
「やだー!やーだー!」
そんなこんなで何とか説得を試みたが、全然聞いてくれないどころかとうとうガチ泣きしてしまったので慌てて川崎少年に任せて撤退することに。いや、今日はガチで残れないので俺の説得を聞いてくれない以上どうしようもないのだ。また今度来た時に機嫌を取ろう。
「ははは、びっくりするぐらい先輩に懐いたっすよね、京華。何なら今日泊まって行くのはどうっすか?たぶん一緒に寝てあげたらこいつも喜びますよ!」
ぴくっ
ぴくっ
「明日用事があるっつーの。俺も用がなければちびっ子のおねだり断ったりしねーわ。ま、またすぐ来るよ」
まぁ実際けーちんのお願いを聞くのはやぶさかではないし、平塚先生のことが無ければ川崎家が許す限り幾らでも一緒に居てやるのだが、それでも流石に泊まっていけ、は無理がある。いや、泊まっていくだけなら川崎少年の部屋に泊めてもらえば済むのだが、けーちんはどうやら俺と一緒に寝たいらしい。さっきからいつの間にか泣き止んで聞き耳を立ててる。耳をぴくぴく動かしてるので多分間違いない。もちろんちびっ子の言うことなので性的な話と勘違いした変態紳士諸君は猛省して、どうぞ。
何が問題かというと、川崎家の家の大きさの都合もあって、まだ幼いけーちんはサキサキと一緒に寝ているらしい。つまりけーちんの部屋はサキサキの部屋なのだが、じゃあ俺けーちんと一緒に寝るのに何処で寝んの?って話になる。なおけーちんは寝相悪いから川崎少年と一緒に寝るのは嫌らしい。そして川崎父はいびきがうるさいので嫌なんだとか。
最近は色々あってサキサキや川崎少年よりも、川崎父との方がLINEしてるので、以前それで落ち込んだ川崎父からLINE爆撃が来て鬱陶しかったのでよく覚えている。サキサキとけーちんが一緒に寝てる理由には、川崎父と川崎母が同じ部屋で寝てるから、という理由もあるのだ。一番好きな川崎母と寝ることよりも、川崎父のいびきが嫌だ!と言い切るけーちんは中々の曲者だと思う。
なのでけーちんと一緒に寝るとなると結構な確率でサキサキの部屋で寝る可能性があるのだが……仮にサキサキが川崎少年と一緒に寝るとしても自分の私物のある部屋に俺が泊まる、というのも落ち着かないだろう。誓って何かしたりしないが、それを信じてくれたとしても、じゃあ安心できるか、というのは別の話だ。
というわけで残れても泊まっていくのは無理なのだ。だからサキサキも何も考えずに泊まっていけば?とか言うんじゃありません馬鹿なの?川崎少年も意味深な顔でサムズアップすんな折るぞその親指。あとけーちんは泣き止んでるの知ってるから思い出したようにひっく!って口で言わなくていいぞ。
「ふぁっ!?あ、あたしそんなつもりは……!違くてっ!」
「ぶー!きーちゃんのいけずー!」
「先輩、俺は、先輩なら良いと思ってますよ……!」
いや知らんがな。つーかけーちんはどこでそういう言葉覚えたの?きーちゃんに教えてみ?え、昼ドラ?うっそだろお前……!
まぁいいや、俺そろそろ本気で帰らんと行かんのでもう行くわ。またな、3人とも。
そう言ってリビングを出る。直ぐに川崎少年とさっきまで泣いてたはずのけーちんがばいばーいと言う声が聞こえたので、やはりけーちんは曲者である。サキサキだけ見送る為に玄関まで着いてきてくれた。
玄関で靴を履いて、もう一度サキサキに別れの挨拶をする。んじゃなサキサキ。おやすみー
「ああ、ありがとね。……その、おやすみ」
き彼女のそんな言葉を聞きながらドアノブに手を掛け、扉を開ける。そのまま足を踏み出し──ーああ、そうだサキサキ。
「うん?なに?」
「言おうか悩んだんだが、一応言っとく。家だからラフな格好なのは仕方ないかもしれないが、俺がいる時はもう少し気を使ってくれると嬉しい。……その、少々目のやり場に困る」
具体的にはブラくらいつけろ。馬鹿なの?
「は?何言っ……て……??……〜〜ッッ!?み、見んなバカッ!!」
「アホ!どちゃクソ理性総動員して視線逸らしてるわ感謝しろこのバカヤンキー!」
いやね、この子出てきた時からそうだったんですけど、ともすれば半ケツになるんじゃないの?って言うぐらい丈の短い、陸上部が試合の時とかに履いてそうな短パンと、なんかちょっと色褪せた感じの水色っぽい袖なしのシャツ一枚、という出で立ちだったのだ。
ここ最近何度か来てるから分かるが、確かにいつもこれくらいの軽装だし、サキサキ自身パンツくらいは見られてもあんまり頓着しないサバサバした女の子だと言うのは知っているが……それでもブラしてないのは今日が初めてではなかろうか。
おまけにけーちんが冷房に弱いとかで川崎家は個人の部屋で以外エアコンを基本的に使ってない。そして今日は6月の真夏日、とかニュースでやっちゃうくらいには暑い日だ。具体的には何もしてなくともじんわり汗かくくらい。つまりぶっちゃけ今のサキサキはあちこち透けまくりである。
いつもならそれでもシャツが軽く張り付く程度で、せいぜい分かってもブラの模様までだ。ブラの模様なんぞ見えても俺は気にしないし、先程も言った通りサキサキも下着なら見られてもあんま気にしない。だがそれはあくまで下着なら、の話である。まぁ要するに何が言いたいかと言うと……。
「さっきから普通に乳首透けてんだよ早く気付けよ。つーかブラしろよこの痴女ヤンキー。何のために事前に連絡してると思ってんの?」
「う、うっさいバカ!スケベ!この変態っ!あ、あたしは痴女でもヤンキーでもないっ!というか、見ない振りしてたなら言わずにそのまま帰れば良いだろっ!?」
「は?それなら次から何も言わずともちゃんとした服装で出てきたんだろうな?今の今まで、俺に指摘されるまで全く気付いてなかったみたいだけどちゃんと気付いて反省して次から気を付けて来たんだろうな?」
「そ、それは……う、うっさい!とにかく見るなバカ!」
だからさっきから必死に視線逸らしてるって言ってんだろこの痴女ンキー。俺今性欲溢れる男子高校生とは思えないほど必死に視線をお前の顔に固定してるんですけど?お前ホントこれ俺じゃなかったら今頃ガン見された挙句脳内再生余裕ですごちそうさまでした!とか言われるレベルだからね?全く……もう少し異性の目を意識しなさい。普段からパンツぐらい見られてもいーや、なんて考えてるから危機意識が足らんのだ。
「うぐっ……うっさいな、変なあだ名作んな。……そ、それに、今んとこ家にあんた以外の男、入れる予定無いし。家以外でここまでラフなカッコ、しないって言うか……!」
はー?そういう問題じゃないですぅ。男の前で気安くそんなカッコすんなって言ってるんですぅ。だいたい今は俺以外来なくても将来的には分からんだろ。というか今俺が来てる時点で将来とか以前にもうアウトなんだがな!だって逆に聞くけどお前俺になら見られてもいいのか?見ていいならガン見したるけど。今からでも穴が空くくらい見詰めるけど?ほら早く手をどかせよ見てやるから。
「良い訳ないだろ馬鹿っ!!あっ、止めろ見るな!見るなってば!……うぅ、分かった!!分かったよ!次から気を付けるから、とにかくもう今日は帰れよ!明日用あるんだろ!?」
ならば良し。んじゃあ帰るね。ホント次からは気を付けるのよ痴女ンキー!次同じことしたら今度は無言で突くからなー?何処とは言わんけどー!
「突ッ…!?二度と来るなバカ榊──っ!!」
ふーははは!それは確約できんな!ふーははは!
夜中だと言うのにデカい声で叫ぶサキサキの方を見ずに!手だけひらひらと見えるように振りながら、彼女に背を向けて歩く。きっとたぶんもうちょっとしたら夜中にデカい声出したことに気付いて、更に顔を真っ赤にするサキサキが拝めたのだろうが、今日は本当にもう時間がない。大人しく諦めることにする。
なんせもう夜中の10時である。平塚先生にあまり遅くなるな、と言われたのにも関わらずこの時間になってしまった。たぶん首を長くして待っていることだろう。俺としても途中から色々な場面でちょっと上の空だったし仕方ないね!
ああ、いかんな。
楽しみ過ぎあんまり考えないようにしてたのに、一人になったら止まらなくなって来た。明日がこんなに楽しみなの今世初かも。今、猛烈に静さんの顔が見たくなって来た。
我慢出来そうに無いので、サキサキから見えない位置に入った瞬間、ろくに周囲の確認をすることなく、さっさとワープしてしまう俺だったとさ!
◻️◻️
「……ったく、本当にあいつは……もう!」
既に彼の姿はとうに見えなくなっていたが、未だに熱を帯びた身体と顔で、大事な弟妹の前に戻るのは気が引けたのもあって、あたしはまだ玄関を開けたまま彼の去っていった夜道を見ていた。
本当に、不思議な男だと思う。
あの日、突然現れたあいつに、あたしは救われた。救われた理由もいまいち理解できないままに、気が付いたらあたしは救われていた。
本来ならばとても険しい道の先に……半ば諦めていたはずの道の先に、今のあたしは立っている。いや、正確に言うならば、いつの間にか連れて行って貰っていたのだ。あの優しい男に。
「……また、聞き忘れちゃったな……」
ずっと気になっている事がある。それは、あの時あいつは本当は何の目的があってあたしを助けてくれたのか、ということと……あの時のカクテルにはどんな意味なあったのかということだ。
それさえ分かれば、あたしはもうなんの気負いも無く……っ!?
「……気負いがなければ、なんだっての!」
バカバカしい。何を考えているんだあたしは。確かにあいつは恩人だ。だけどそれは好きになる、ということとイコールにはならない。というかまだちゃんと話すようになって2週間も経ってない。一度命を救われた女が、助けてくれた男に恋に落ちるのは、妹が好きな日曜日とかにやってる子供向けアニメの中だけの話だ。
現実にそんな事は有り得ない。というか実際の女はそんなにチョロくない。だから当然あたしもそんなにチョロくない。確かに最近ちょっとあいつが気になってる自覚はあるが、それは単にあの時助けてくれた事と、あたしの分どころか弟の、大志の分までの学費を工面してくれた事、その2つの大恩があるからだ。
惚れた腫れた、何て理由じゃ当然ない。ある訳ないのだ。だいたいあの男を好きになるのは無理がある。今日の誕生日パーティで分かった事だが、あたしが思っているほど大人でも無いし、よく分からない手品をドヤ顔で使うし、思い付きで行動したりもする。正直言ってほとんどそこらの男子みたいなガキだ。同い年だけど、この年頃の女子は同い年の男子なんてだいたいガキだと思ってるから、詰まるところあいつはその辺の男子と大差ないって事だ。
そりゃ確かに高校生であたしに大金ほぼ無条件でポンと貸せるくらい稼いでるのはすごいと思うし、何で髪を切らないのかは知らないけど、かなりの強面ではあるけど容姿だって整ってる。なのにやたらと付き合いやすくて、傍に居ると謎の安心感があってあいつといると居心地がいい。ウチの弟妹が揃ってあいつに懐くのもその辺がきっと関係している。おまけに子供の扱いは超得意で、一人っ子とは思えないほどウチの妹を上手くあやしてくれる。というかあやし方が上手すぎて父親よりあいつの方がずっと妹が懐いている。きっと見た目以外は将来良い父親になるだろう。
更に妙に気遣いが出来る男で、いつも両親の帰りが遅いウチの家に、料理なんかを結構な頻度で差し入れてくれる。いつもはあたしが作っているが、バイトをしてる関係上、それも結構な手間なので正直かなり助かっている。悔しい事にあたしが作るよりも圧倒的に美味しいし。お陰であの男の差し入れがある日の夕飯は家族で争奪戦が起きるしご飯の炊く量も増える。雪ノ下や由比ヶ浜が太る!って泣きそうな顔をするのもよく分かるというものだ。
そういえば、あいつに借りたお金は将来、必ず返すと約束したが……期限や利子が無い、なんてあたしに甘過ぎる条件で本当に良かったのだろうか。今でも少し考えてしまう。幾らお金があるから、他に条件があるからと言って、その条件自体もあたしにとってとても都合の良いものばかりなのに。
……まぁ、確かにあいつの言う通り、じゃあすぐ返せと言われても流石に金額が金額なのでそれは難しいし、出来るだけ就職に有利な大学へ進むつもりだけれど、大学を卒業すればいきなり大金が稼げるようになる、なんてことも無いだろう。そうなると下手に返済期限を決められると、期限までに金を工面できない可能性はある。
そうした時にやはりお咎めなしにして!と言えばあいつは快く応じるだろうが、それをしてもらえば、今度は返済期限を設定した意味が無くなってしまう訳で……結局、あいつの厚意に甘えるしかない、のがあたしの現状で、それが何とも言えない居心地の悪さを感じてしまう。ただ甘えるだけ、ただ縋るだけ、なんて弱い女になりたくないのだ、あたしは。
せめて、せめてもう少し厳しい条件というか、もっと働かせるなりなんなりしてくれた方があたしとしても気が楽だ。こんなことなら、身体を要求される方がまだ納得出来たように思う。いや、もちろん納得出来るだけで身体を要求されるとか嫌に決まっているが。
それに、今ならともかく出会ったあの時に身体を対価に要求されてたら流石に断っていた筈だ。あの頃はまだ、ただのヤクザ顔の同級生でしか無かったのだし。今は……
「って、何考えてんだろあたし……。まるで、今なら良い、みたい……なぁ!?そ、そそんなわけないしっ!な、何考えてんだろホント!?」
まずい、また疲れてるんだろうか。あの時みたいな無茶は最近はもうやってない筈なのに!いや、疲れてないのだとしたら気の迷いかなんかだそうに違いない!だってあいつのことなんか別にそんな風に見てないし見る気も無いしそんな関係じゃないってかデリカシーが全くないあんな変態好きになるとか有り得な──ー………よく考えたらあいつ、あたしの胸を思いっきり見たくせに全然平然としてなかったか?
ふと、腕で隠したままだった自らの胸を見下ろす。玄関の弱い明かりでも普通に分かるくらいには汗でシャツが張り付いているし、薄い色のシャツのせいで、他人に1度も見せたことの無かった乳首の位置がハッキリ透けて見えた。
──ー見られた。榊に、あたしの……!
先程は咄嗟のことだったし、あいつからの視線をもほぼ感じなかったから、当然恥ずかしかったのには違いないけれど、そこまででも無かった。
だが、見られたのがよりにもよってあいつだ、ともう一度改めて認識した途端に、羞恥心が噴火したように一気に吹き出してきた。途端に頭に熱が上ってくる。耳まで顔が真っ赤に染まったことを自覚する。やばい、今になって羞恥心で死にそう!あたしは本当に何やってるんだ馬鹿じゃないの?こんな、こんなみっともないカッコを、あいつに、榊に……!
考えれば考えるほど頭に熱が上り、身体が羞恥心で悶えそうになる。だが、何故だかその大きな羞恥心に混じって、別の感覚が混じった。身を焼くような熱を伴った羞恥とは別に、背筋を甘く、淡く駆ける、ぞわり、とした痺れにも似た何か。
「ンっ……!」
それが背筋をゆっくりと走り去ったあと、何故だか体の奥からも熱が湧き出る。湧き出た熱は胸を焦がす様に、心臓で増幅されて全身を巡り、そしてお腹の奥……子宮の辺りで、じんわりと甘く留まってしまった。
アツい、と思った。
ああ、あいつの事を考えるといつもこうだ。何故か胸が苦しくなって、焼けるように身体中が熱くなって、そしてお腹の中が唸るように捻れるように、収縮するような感覚が続く。そして次の瞬間には……
「ッ!……また……!」
自分の股の辺りが不自然に湿ったような嫌な感触がする。ふと見れば先程まで透けていただけだったそこはピンと張り詰め、大きく存在を主張していた。触るどころか、僅かに身動ぎした時の衣擦れだけで甘い声が漏れそうになる。こうなってしまったら下手に触ることも出来ない。僅かでも弄ってしまえば、止まらなくなることをあたしはよく知っていた。何度も経験済みだからだ。
どうして、こんな……!あいつの事は、恩人として以上の感情なんか無い、その、筈なのに……!なんで毎回毎回、少し話しただけでこんな事になるんだ。これじゃあまるで、あたしが変態みたいじゃないか!冗談じゃない、あたしは変態なんかじゃない!
変態というのは、あいつみたいに平然と女に向かってセクハラするような奴のことを言うんだ!だから、これはただの生理現象だ!そ、そうに違いない!あたしがあんな面と向かって同級生に(乳首を)指で突く、なん………て?
そこまで考えて、あの時の事を思い出す。気が付いたら抱き抱えられていた、あの日のことを。あの時はそう、絶対に死んだと思ったら気付いたらあいつの、榊の腕の中だった。咄嗟のことで助けられた瞬間のこととかは全然覚えてはいないが、あの腕の中の感触は覚えている。
そう、抱き抱えられて初めて気付いたが、あの男は髪の毛を上げなければとても大人しい見た目なのだが、意外と体の方はかなりがっちりしていて、指なんかも結構ゴツゴツしてるのだ。そんなあの男の指で、乳首を突つかれるなんて………!
ビクッ、と全身を痺れが走り抜けた。声が漏れるのはたぶん抑えられた、と思う。というかこれはダメだこれ以上考えるのを止めなければ!これ以上考えると取り返しのつかない事になる気がする!!
慌てて頭を振って色々な思考の全てを払い落とす。考えているだけでこれなのだ。これ以上この事について深く知ろうとしたら、これまでのようにこれがただの恩人に対してのものか、それとも恋なのか、なんて答えが出る前に、またしても寝てる妹に気付かれないように声を押し殺す羽目になる。それでまた寝不足になるのはいい加減避けたい。
もう戻ろう、と敢えて声に出して家の中に入る。ふと、胸の辺りから甘い痺れのような快感を感じる。目線を下に向けてみれば、思考を振り払ってなお、ピンと自己主張するふたつの突起が目に入った。今の僅かな動きでさえ反応したらしい。
まるで、期待するようだ、と思い。そんな訳あるか!とまたも内心否定する。何度も繰り返した思考。だけど、今は……それに少しだけ言葉が増えた。
「ふん……見たなら見たで、もう少し、慌てたり喜んだり、しろっての……バカ」
………これだけは、誤魔化しようのない本心だった。そこに込められた意味については、もう一度思考を止めておく。
……今はまだ、このままでいいのだ。何故なら、もう少しだけ、あいつの事を考えてばかりの時間が、続いてもいい……そう思うから。
なおこの時の事、影から覗いてて後でからかってきた弟は姉式スープレックスの刑に処した。慈悲は無い。
続く。
登場人物紹介!
・榊貴一
ヤンデレを愛する包容力ある系男子、と思わせた神様系転生者。
おや?オリ主の様子が……?
もはや完全にチートを堂々と使っても手品だから、オリ主だからで周りが勝手に納得してくれるようになった。オリ主の完全勝利と言っても過言ではない。
オリ主のデザートは108式まである。
・雪ノ下雪乃
原作よりよく食べよく動いてるので何気なくスタミナが付いて来ている。
人前でも平然とオリ主に甘え出すようになってきた。
現在オリ主はウチの部員である、という所有権を主張している。
主張している理由そのものついては黙秘してるらしい。
オリ主に何らかの存在が居ることは知っているが、それをどう利用するか考えているらしいぞ!
何気なくオリ主が女と触れる時間は短くなるようにまずは妨害を挟むぞ!
胸は小さいが感度は良いぞ!
最近はオリ主に弄られすぎて少しMっ気が…?
最後にもう少しだけ一緒に居たくてオリ主の忘れ物を指摘したらついて行かせて貰えずに置いてかれてしまった可哀想な子。敗因は素直じゃ無かったこと。
・由比ヶ浜結衣
オリ主とやっぱり過去になんかあった子。
オリ主に話を聞いて貰えなかった理由は自己紹介をしなかったのと髪の毛を染めてなかったから、とは本人は知らない。
恋する乙女アイの力でオリ主の事はだいたい見抜く。だが惜しいところで勘違いしがち。そしてブッシュ・ド・ノエルを平然とロールケーキと言い放つ程度には料理が苦手だぞ!
雪ノ下と一緒に最近はよく食べよく動くのでスタイルに変化が……具体的には胸が変化した。なお雪ノ下は太りはしなかったぞ!
自分の誕生日だし今日はみんなで盛大に遊ぶぞー!きっとオリ主辺りがケーキとか出してくれるに違いない!と、内心ウキウキで居たら、オリ主達がパリピは誕生日パーティを必ずするもの、と誤解してるとは思わず、昼休みの1時間だけなの?ひょっとしてオリ主の手抜きか!?と疑って掛かってしまった。本人はオリ主達の誠意を疑った事を後悔しているが、三浦優美子が言ったように周りの人間に確認するのを怠ったオリ主がだいたい全部悪い。
この後めちゃくちゃ家族会議をした後、テンプレな思春期の娘と父親の喧嘩を繰り広げ、父親をノックアウトした。
巨乳だが感度が良いらしい?最近夜のハッスル率は高め
無自覚にSっ気が出てきた
・平塚静
基本的には人前ではオリ主とは生徒と教師、の関係がバレないような努力をしている。
だが所詮ちゃんと見てる人にはバレる程度の、レベル。それでもオリ主の言い付けは結構しっかり守る方である。
オリ主の徹底した食事管理と日々の性的調教、更に何気ない波紋マッサージによりほぼ全身改造みたいな勢いで身体の健康を取り戻しつつ、ついでに肉体年齢を10歳ほどマイナスさせられたのだが、本人はオリ主のお陰で最近肌ツヤがいいなー?くらいにしか思ってないぞ!
運命の日を翌日に控えながら、目の前でオリ主が女と2人で遊ぶ約束した事でブチ切れた。例えオリ主の方が嫌そうな雰囲気だと理解していても、例え周りの人間が自分たちの関係を知らないからだとしても、オリ主と自分以外の女が触れ合ったりするのは我慢できない。
なお本人がことある事にオリ主の血をちゅるちゅるしてるのは、吸血鬼だったりその血族だったりする訳ではない。
平塚静はオリ主にバブみを感じている!
そして母乳とは本来血液から作られている!
なので血液を飲むと鎮静作用があるという話があってだね?
自分のものを誰かに盗られたり奪われたり、もしくは勝手に離れていったりする事にトラウマがたくさんあるので、オリ主には毎日マーキングをしてるし、描写がないだけで実は学校でも結構な頻度でオリ主とLINEをしてる。2時間以上返信や既読がないと爆撃を始めてしまうので注意が必要だぞ!
・三浦優美子
オリ主達の学校において女子トップカースト。
オリ主の素顔を見た事がある、というのはかなりのレア体験で、現在の総武校でオリ主の素顔を知っているのは、奉仕部の顧問を含めた3人と、川崎沙希の合計4人しか居ない、と思われていたのだが、平然と自分も知ってるぞ!とぶっ込んできた剛の者。
オリ主とは気の置けない関係なので、なんの説明も無しに自分のプランにオリ主を巻き込んだりする。だが、それをしてもオリ主は怒らないと知っているからこそであり、信頼の裏返しでもある。
一応オリ主が誰の想い人か理解してるので、本人の前で抱きつく様な真似はしない。しかし頭を撫でてもらうだけでもあんま変わらない、ということは考えてない。
何気なくちゃんと相手を見ている子なので、オリ主が誰と何をしてるのか何となく知っている。だが、誰にも言う気は無いらしい。
雪ノ下と違って努力でスタイルを維持しているので、オリ主の手料理に嵌らない様に気を付けている。
由比ヶ浜が異常なだけでかなりの巨乳。感度〇
まだまだノーマル
・川崎沙希
チョロくない女の子。
美人で身長も高く、スタイルもいい。おまけに長髪。これで青髪でなければオリ主を落としてた可能性もあった。
何気にオリ主と家族ぐるみで付き合いがあるが、まさか自分の父親が自分よりオリ主と仲がいいとは思ってない。
家では劇的にラフな格好をするタイプ。
何故かオリ主と会話するだけで体温上昇し、何かお腹の奥がキュンキュンし始めてしまうらしいがチョロくないので気の所為である。
なので当然心の中でオリ主の悪い所をたくさん上げられるし、その後その悪い所全てフォローした上で良いところたくさん見つけちゃうけどもちろんチョロくないので全部気の所為である。
考え過ぎると妹の寝てる横で声を押し殺してハッスルする羽目になるので頑張って我慢してる。
オリ主のお裾分けは育ち盛りの弟を差し置いて1番食べる。それはもうよく食べる。なのでお昼にはオリ主とのランチが出来て内心かなりウキウキ。しかし他の奉仕部の面々はその事にイラつき気味。
一部分が服に擦れただけでかなり感じるらしい。感度極大。
・川崎京華
かわさいけいか、と読む。通称けーちゃんもしくはけーちん。
妹系ちびっ子の代表的存在。
オリ主には甘え上手。
オリ主は妹が欲しかったのでそれはそれはもう甘やかしている。
この作品における1番の癒し枠
・川崎大志
最近は様々な憂いが無くなったので色々ご機嫌。
実は川崎家にオリ主からのお裾分けが始まったのは、彼が比企谷小町より聞き出したオリ主の料理の話を聞いて、メールで頼んだことから始まった。
しかし姉が自分より食べるので最近は仲良く取り合いをしている。なお白兵戦は姉の方が強い模様。
姉の気持ちを何となく理解し、オリ主が曲解すると理解した上でそれとなく姉との距離が縮まれば、と密かにオリ主に話を通したりする曲者。
軍師タイプ。
・キラキラ
キラキラしてる。
オリ主のイリュージョンへの反応は一際良い。
三浦優美子の狙いに気付いた上で無視している。
どちゃクソイケメン
・戸塚彩加
これから5年の月日を掛けてとうとう波動球を習得し、更にそこから2年を掛けて波動球を完全にマスター。そこからプロのテニスプレイヤーとして本格的に活動を始める。
周りの人間は遅咲きすぎる、と笑ったが、その剛球を誰も止められないまま世界を制してしまった彼を見ると皆が口を噤んだ。
7年の歳月が経ったあとでも殆ど容姿に変化は無く、世界大会出場当初の呼び名は「奇跡の妖精」だったが、波動球が知れ渡った後につけられた呼び名は「イカれた小さな大砲(リトルクレイジーキャノン)」。
あまりに強過ぎて誰も勝負にならないので国際的にテニスでの波動球使用が禁止されそうになったが、もさついた何か、と呼ばれる謎の悪夢によってそんな動きは無かったことになり、35歳で利き腕を負傷するまでは世界1位を保持し続けた日本テニス会に名を残した伝説的テニスプレイヤー……に、なると思われる。
・榊式ダイエット
恐ろしいことにオリ主の手にかかると驚く程効果的に体重が落ちる。その効果は最大で1日1kg。つまりひと月で30kg落ちる。
ただしその効果を最大限発揮するには、オリ主と一定期間離れることなく過ごす必要がある。
それさえ乗り越えられるなら、受けるコースにもよるが脂肪を落とす基本的なダイエット効果だけでなく、肉体年齢の大幅な若返りや体の健康状態の完全な改善、おまけに身体機能の強化効果まで可能であり、世の中の美容に目がないスーパーセレブ達に攫われそうなほど劇的な効果がある。
後にこれの施術を巡って女たちの血を血で洗う血みどろの戦いが勃発したとかしないとか。
・由比ヶ浜家の人々
この後めちゃくちゃ家族会議したあと、父親は心に大きなダメージを受けた。母親はあらあら、と超上機嫌になった。
その後オリ主の料理を食べてだいたい全部どうでも良くなって仲直りした。母親の方は更にオリ主に興味が湧いてしまったらしい。毎日娘にオリ主を連れてこい、と告げる日々だとか何とか。なお、娘の方は何となく嫌な予感を感じて全力で拒否してるらしい。