俺は王女であるアイリスの雄奴隷なのだ。
その思いを身に刻みながら差し出された脚に目を向ける。白く滑らかな肌が眩しい少女の柔肌。こうなる事を想定して一生懸命に浴室で洗ったのかと考えると少しだけ可笑しく感じた。
「――舐めて下さい」
二度も言わせるなと言わんばかりに彼女は目を細める。
ベッドサイドに腰を下ろし、絨毯に正座する俺の目の前に差し出される裸足。寝間着の裾から除く健康的な肌、微かに開かれた両足の奥に見える薄ピンク色の下着を、唯一の照明である小さな灯りが淫靡に照らす。
その光景に目を奪われる俺を見下ろす彼女は静かに妖艶な笑みを浮かべる。
奴隷である自分に対し、身に余る光景に喉が鳴る。
ゆっくりと丹念に清められたのであろう片脚を両手で包み込むと甲に口付けした。
「ん……」
石鹸と彼女特有の香りが混ざった脚に俺はキスをする。
手入れのされた脚の爪を撫で、指先の一つ一つを愛でるようにキスする。
唇で彼女の脚の皮膚を吸い。
舌先を出し、脚の指の間を舐めると足指がこそばゆいと動く。
「……」
汚いとは思わなかった。
寧ろ清められた脚を己の唾液が汚す事を思うと申し訳なさと興奮が勝った。
「……」
ほう、と満足気なアイリスの吐息が聞こえる。
王族というのだから、こうして上から見下ろし己に奉仕させるのが心地良いのだろう。そういう血も流れていそうだが、彼女の意外な一面は何かから学んだ知識を活かしているのではないか。
またエロ本から知識を蓄えて、一人で夜な夜な自慰に耽っていたのだろうか。
「そ、そんな事はしてません!」
彼女の脚を舐めながら、ふと床から上を見上げると絶景が映り込む。
普段の愛らしい表情は鳴りを潜め、王女というか女王のような高慢さと淫靡な熱を孕んだ瞳が俺を見下ろしていた。彼女は俺が奉仕している間、モジモジと内腿を擦り寄せていたが、そっと奉仕していた脚を取り上げる。
「カズマ様。……もう良いです」
「……アイリス」
「誰が口を利く事を許したの?」
「――――」
ジロリと睨む姿に閉口する。
それにしてもこの王女、ノリノリである。
本当に怒っているのかもしれないが、今ひとつ実感が湧かない。
卑しい性奴隷を見下ろすアイリスは小さく吐息しながら羽虫を見る目で小首を傾げる。
「――まあいいです。発言を許します」
「ありがたき幸せ。……アイリス様。どうか俺に対して様付けはご遠慮下さいませ。俺は貴方様の性奴隷なのですから。様付けなど必要ありません。どうか豚野郎と……」
「結構、余裕ですね」
とはいえ、奴隷の言葉にもある程度の納得が言ったのだろう。
王女が奴隷に対して様付けなどと冗談にも限度がある。
脚を持ち上げ枕のような重さのソレを俺の肩に預けると、王女はもう一方の脚も差し出す。
先ほどと異なり、何かを躊躇し戸惑い、羞恥を抱いている表情を下から見上げ続ける。そんな俺の視線を無視し内心で葛藤しているであろうアイリス。
やがて、ほんのりと頬を朱色に染めながら小さくも柔らかい唇を震わせた。
「……カズマ」
「……はい」
「カズマ。カズマ。……こっちも舐めて。舐めなさい」
「…………」
どこか決意を抱いた表情のアイリスから俺はそっと目を逸らす。
俺の名前を始めて味わったと言わんばかりに口内で咀嚼する彼女を余所に、俺は啄むようなキスで王女が満足するまで続ける。
くねらせる脚を両手で包み、許しを乞うように余すところなくキスをする。
やがて何かに満足したのかアイリスは軽く脚を外側へ向け、自らふくらはぎを見せる。
「――――」
陶器のような艶めかしさと柔らかさに俺は思わず息を飲んだ。
足首までの奉仕しか許されなかったというのに、いったいどういう心境なのか。
「続けて下さい」
許可が得た。
俺は足首よりも先、彼女のふくらはぎに触れ接吻を再開する。彼女の身体を爪先から浸食していくかのように乞食のようにアイリスの脚にキスをする。
ゆっくりと俺のキスを身体が感じられるようにジックリと唇で触れる。
「ん……」
唇で触れて、少し待ってから離す。それを繰り返す。
この思いが届くように、ときおり心地よさそうな声色を漏らす主に奉仕をする。
「……!」
「なんですか?」
ふと肩に乗っていた脚が降り、俺の股にそっと置かれる。
上から良く見えるのだろう。布地を膨らませ主張する雄肉を彼女の脚裏が踏む。
「続けて下さい」
「は、い」
これが主人にセクハラされるメイドの気持ちなのか。
片脚を舐めさせ、もう片方で雄の尊厳を弄ぶ。なんて王女なのだろうか。
いやらしい、はしたない、ムッツリスケベ。様々な言葉が脳裏を過るが、それらの言葉を飲み込んで俺は慎ましやかに彼女への奉仕を続ける。
スリスリと奉仕していた足指が俺の肉棒を布地越しに擦る。
踏みつぶしながら、雑な力加減で足指と脚裏で肉竿付近を虐めるアイリス。
「気持ちいいですか?」
「はい」
「変態」
「……」
「変態です。こんな事されて嬉しいなんてカズマ様、……カズマは変態ですね」
「……」
「こんな、こんな……大きくして。本当にどうしようもない人です」
アイリスの言葉攻めに脳を狂わせられながら、ちゅるりと舌先で脚の血管をなぞる。
静かに罵倒する彼女に確かな興奮を覚えながら、俺は静かに主への奉仕を続ける。
上へ上へ、徐々に上へ。
ふくらはぎにキスをして、膝の表と裏へ。
微かに脚を持ち上げると寝間着と腿の奥に隠された上品な下着が目に映る。
「……!」
流石に堂々と見られるのは恥ずかしいのか、そっと寝間着の裾で隠そうとするアイリス。年相応な反応に頬が緩むも笑われたと思ったのか軽く半眼で睨まれる。
そうして接吻する場所が膝から内側のみとなった頃、王女は上体をベッドに倒していく。
情熱的な奉仕に王女も悦びを覚えたのか、熱っぽく俺を見つめるアイリス。
寝台に身体を横たえて、今度は俺が王女を見下ろし、王女が俺を見上げる。奴隷に見下ろされた王女は気を悪くする事はなく、恥ずかしそうに顔を背けながら寝間着の裾を自ら捲る。
正面から堂々とピンク色の下着を露わにする主に俺は彼女の無言の要求を受け取る。
――即ち、もっと奉仕をして欲しいと。
「ぁ……っ」
既に反り立った剛直がズボン越しに主張しているのを見せながらも、中途半端に脚で遊ばれ滾る情欲に歯を食い縛り、無言でまろやかな白い太腿にキスを繰り返す。
肉と脂が乗った少女の柔肌に唇を押し付けて感触を肌でアイリスに教えた。
「……ん……っ」
ゆっくりと接吻の旅は終わりへと近づいていく。
内腿にキスをして、吸って、思い出したように舌先で舐めとって。多分これまでで一番熱中した奉仕だったろう。エリスよりも、アクアよりも、この世界の誰よりも尽くした奉仕。
舌だけで主に尽くす姿は、もう奴隷というよりも犬と呼んだ方が良い。
「ぁ!」
犬ならば当然、腿肉に甘噛みだってするだろう。
柔肉の感触を口一杯に感じながら、ゆっくりと口を開くと小さな歯型が残る。
無垢な少女を蹂躙したと、未踏の地を踏み躙った満足感に、今度は痕を舌で舐めとる。
「ふ、ぅ……!」
やがて俺の鼻腔が雌の情欲の香りを嗅ぎ取る。
目と鼻の先、寝間着の裾からチラチラと覗くショーツの存在に吸い寄せられるように、剥き出しの脚を撫でながらそっと寝間着の中へと顔を差し出した。
「……ん」
色濃くぬめる部分を鼻で突くと少女が声を堪える。
あまり声を出すと誰かに気づかれると思ったのだろう、小さな手で己の口を押える彼女は脚をくねらせながら俺の挙動にジッと目を向ける。
よほど期待していたのか、俺の吐息一つでビクッと下半身を強張らせる。
「んん……っ」
布地越しに肉芽を擦り刺激するとアイリスは身体をくねらせて感じ、小陰唇を舌で味わうように愛撫するとビクッと震えた腿が俺の頬を叩く。
奥から滲む蜜液を下着ごと啜ると俺の頭を掴んだ王女は気持ち良さそうに喘ぐ。
「ぁ、ぁ、ぁ……!」
浮かび上がる腰に手を差し込み、下着ごと尻肉を掴む。
むにゅりとした餅の質感と共にショーツを手で撫で回し膝上まで摺り下し恥部を晒す。
「ん。ぅぁ……!」
むわりと漂う雌肉の香りが鼻腔に広がる。
奥から滲み出る愛液が俺の顔を汚すのを気にせず、薄い恥毛に鼻を埋め、犬のように一心不乱に恥部を舐める俺の後頭部をアイリスは喘ぎながらも押し付けようとする。
クンニリングスがお好みなのか、寝間着の中に隠れた俺に無言で続けるように欲求する少女。
「ぁ、それ……っ、ぃぃ……!」
はあ、と熱い吐息を漏らし、シーツに皺を作り、枕を掴む。
乱れ悦ぶ王女が絶頂を迎えるように、俺は奴隷として犬として丹念に愛撫を続ける。
やがてじゅるっと音を立てて小陰唇と口に含んだ瞬間、確かに下腹部が痙攣するのが分かった。
「ぁ、~~ッ! くっ、ッ!」
ビクッと電流が奔ったように身体を小刻みに震わせ、ぺしと腿肉が俺の頬を叩く。
耳を塞がれ静寂となる中でアイリスの甘い悲鳴が遠くに聞こえた。腿の力が抜け音が聞こえるようになっても甘い衝撃に痺れ続けている彼女、その秘裂とのキスを止めて顔を上げる。
「はぁー……はー……」
寝間着の中は、アイリスの匂いと身体が広がっていた。
荒い吐息を漏らし収縮を繰り返す彼女の腹部、その先に見えるブラに包まれた白い乳房。
その絶景は、寝間着の中に顔を突っ込んだ俺だけが見る事が出来る物だ。このまま彼女を薄皮を捲るように裸体を晒して犯してしまいたい。
そんな俺の腕を引っ張り、ベッドに仰向けにしたアイリスは逆に衣服を脱がせる。
「私ばっかりズルいです」
ズルいも何も命じたのはアイリスではないのか。
そんな事を指摘する前に、あれよあれよと上着を脱がされ、ズボンも下ろされる。
ぶるん、と我慢出来ずに飛び出す怒張に白い目を向けるアイリス。軽蔑と期待を混ぜた表情に何とも言えないゾクゾクした気分になりながら肉竿を見せつける。
「ほーら、これがアイリスを女にした奴だよ~」
「へ、変な事を言わないで下さい」
俺をベッドに押し倒したアイリスは顔を赤らめながらも肉棒から視線を逸らせない。
衣服を剥ぎ取った発情した王女は俺の腰に乗ると膝立ちになる。丁度寝間着がカーテンの役目を果たし、亀頭と媚肉が愛液で滑りながら擦り合う。己の蜜液で滑るからか反り立った肉竿と雌肉が擦れ合う刺激は互いを小さく呻かせる。
素股と呼ばれる行為だが、秘裂でキスを繰り返すとにゅぷりと亀頭が入り奥歯を噛み締める。
結合部を見る事は出来ず唇を噛み締めるアイリスを見上げる。
ゆっくりと腰を下ろす彼女が俺の視線に気づくと、微笑を浮かべ一息に腰を下ろす。
「……ぁ、はっ!!」
「っ」
にじゅん、とぬめる媚肉が割り拓かれる感覚。
歯軋りする俺を見る余裕がないとばかりに俯く彼女は身を揺らし小さく悲鳴を上げる。
「く、ぁあっ!! ……ぁっ!!」
散々奉仕した媚肉は襞の一つ一つが肉竿や亀頭に絡みつく。
とろみ肉が締まり怒張を搾ろうとする中、彼女は自分のペースで腰を動かす。
前に、後ろに、右に、左に、快楽を追求する一人の少女がおもむろに腰を動かし、熱い吐息を漏らす。ぱちゅぱちゅと見えない結合部からは淫靡な水音が響く。
「ん、ん……んんっ、ぁ!」
普段の姿からは想像も出来ないアイリスの妖艶な動き。
背をしならせ、涙混じりの嗚咽を漏らしながらも腰の動きは止まらない。
切なげな顔で快楽に耽る彼女は、己が跨る奴隷に見せつけるように寝間着を脱ぐ。
上体を起こした俺に目線だけで訴える王女の為に、俺はピンクのブラの留め具を外し、ふるふると揺れるプリンにも似た乳房を揉む。
アクアよりも小振りだが形の良いアイリスの美乳。
未だに成長中の柔らかい乳肉を揉みながら、既に硬くなっていた肉粒を指で弾く。
「ん、……ふ……ぁ」
支えを求めるように俺の肩に手を置く王女は切羽詰まった声と共に激しく腰を揺する。
目を閉じ、切なげな表情を目の前にいる俺に見せながら程良い大きさの胸を揺らし嬌声を上げる。にちゅ、にちゅ、と水音を結合部から響かせながら髪を振り乱す。
自分で気持ち良い場所を見つけたのか、口端から涎を落とす彼女はソレに気付かずに尻肉を密着させ亀頭に擦り付ける。
喜悦が羞恥を上回り、結合部を熱い蜜で濡らしながら喘ぎ声を耳元で漏らす。
速度を緩め、時には激しく腰を振る。
目の前の王女の性玩具として、肉棒のみの存在として俺は彼女の動きに堪える。
脳が焼けそうになる程の快楽を我慢する俺は限界寸前まで彼女の為に行動する。
アイリスの腰のタイミングに合わせて怒張で彼女の弱点を擦り、大好きな陰核を弄り、揺れる乳の先端に甘く噛みつく。
効果はすぐに表れ、ぎゅううっと媚肉が痛いほどに怒張を締め付けた。
「ッ……! ッ、ぁ、ぁぃ……ッ!!」
余裕のない呼吸。
二人で一つの快楽を追求する為に、法悦の空に昇る為に腰を動かす。
ぱんぱん、と脛骨部と尻肉をぶつけ合い、彼女が腰を下ろし、俺が突き上げる。
「ぅぁぁ~~~~~ッッ!!!」
白濁のソースが吐き出される。
膣襞を隅々まで汚し、アイリスの奥の奥まで存分に注ぎ込む。ピンと背中を反らせるアイリスの背中を抱き締めながら俺は一滴残らず彼女の中に注ぎ込む感覚に酔い痴れる。
己を貫かせ子種を注がれる王女もまた、ぎゅっと目を閉じて絶頂の衝撃に浸る。
首を曲げ、彼女の慎ましくも柔らかい美乳が俺の胸板で潰れる。
コリコリとした肉粒が擦る彼女を抱きしめて、射精の余韻に痺れながらも駄目押しとばかりに亀頭を媚肉に擦り付ける。
王女が己のペースで肉棒を擦り付けていた場所を重点的に擦ると、ビクビクと身体が震える。
「は、ぁ……」
だらしなく口を開け、法悦に浸る表情は決して他の人には見せられない。
ぼんやりと虚空を見つめていたアイリスは、ゆっくりと視線を俺の顔へと移し微笑を浮かべる。
コツンと額を合わせて、唇を重ねるとアイリスは俺の胸板に顔を置く。
そうしてどちらともなく脱力するとベッドに転がり、目を閉じた。
+
腹部に圧し掛かる感触、そして首に掛かる手の感触。
それらが誰による物なのか、寝ていた訳ではない為にすぐに分かる。
ただ、何が起きているのか少しだけ意味が分からない。
「っ……」
――キリキリと首が締まっていく。
薄く目を開くと軽い重さの美少女が細く白い腕で俺の首を掴んでいた。
俺の身体に圧し掛かる女は成長途中の白い裸体を見せ、所々に情欲の痕を残していた。男の痕を、俺が残した情欲の痕を身体に残す金髪の少女は美しかった。
――キリキリ、キリキリと首が締まっていく。
「ぁ……く」
目の前には大きな瞳がある。
絶望と嫌悪と悲哀に満ちた青色の瞳が俺を空虚に映し出す。
「――――」
細い少女の手首に手を伸ばす。
見た目的には直ぐに振り解ける程度の柔らかい少女の腕、しかしステータスが存在する世界に外見ほど信用出来ない物は無い。現に俺の首を締め付ける彼女の腕は俺の何倍も力が上なのだから。
いつだって、アイリスは俺を殺す事が出来たのだから。
「――――」
空っぽだった。少女の瞳は空虚だった。
過去に思いを馳せるように、俺を見るようで、何も見ていない。
解れた金髪を垂らし、互いの匂いを擦りつけ合った空間で彼女は俺を見下ろす。
腕を振り解く事は出来ず、腰に圧し掛かられただけで逃れる事もスキルを使う事も出来ない。
何度目かの死が訪れようとしていた。
「…………」
どうして、と聞くつもりは無かった。
当たり前の結末であるのは目に見えていた事だった。
酸素の少ない脳で考えても、彼女に、アイリスに殺されるだけの理由はあった。因果応報とも呼ぶべき原因はアイリスの瞳が映し出していた。
――キリキリ、キリキリ、キリキリと首が締まって。
相手の告白を受け取ってコレだ。
優柔不断が招いた末路、女神二人に浮気した結果がコレなのだ。
最初からアイリスだけを見て、彼女だけを愛していれば――。
「――――」
自分が好きになった相手が他の人と関係を結ぶ。
それは嫌だ。気持ち悪い。苦しい。悲しい。
立場を逆にして想像しただけで嫌悪感が増す。空想だけでこんな気分に浸るならば、それを実際に知らされ、教えられた相手はいったいどんな気持ちだったのだろうか。
「――――」
もう抵抗するつもりもない。抵抗する力もない。
目の前の美少女の顔を見て、消える意識の一片まで彼女の姿を焼き付ける。
自分がどれだけ不貞行為を働いたのか。
空虚だった青空色の瞳を曇らせて、無言で頬に涙を伝わせる少女を見上げる。
アイリスは静かに泣いていた。
悲しみに眉をひそめ、ぐちゃぐちゃになった感情を瞳に貯めて、ポロポロと涙を溢す。
「――――」
首を締め付けられ殺される。窒息死の出来上がりだ。
ジワジワと締め付けられ息の出来ない死に方はこれまでで一番苦しいかもしれない。
何だかんだで殆ど苦しまない死に方だったのは、運が良かったからか。何でもないところで幸運は働いていたのだろう。それも今日までの事かもしれないが。
その場に流されて、何となく他の女に手を出した結果がコレならば仕方がない。
アイリスを苦しませ悲しませた事が死因だとするならば。
彼女を泣かせた浮気男。佐藤和真は、今ここで死ぬべきなのだ。
「―――ぁ」
少女の泣き顔を見ながら死ぬ。
それは最低の気分だったが、肉体はそんな感傷を余所に力を抜く。
既に諦めていたが反射的に抵抗していた肉体の動きも停止する。
暗くなりつつある視界、何も考えられなくなる意識の中、せめてアイリスの罪悪感が減るようにと小さく彼女に微笑む。手を差し伸べる事も涙を拭う力はもう無い。
――俺はアイリスを恨まない。
ここで殺されても、蘇った後も、決して恨まない。
そこまでされる程の事をしてしまったのだから、いつかは責任を取らなくてはならない。
「どうして……」
互いに遮る物は何もなく息が届くような距離で王女が小さく呟く。
その何故が何の意味かに脳を回す酸素も、返す言葉も、力も何もない。
そして首が――。