インフィニット・オーケストラ ~咲き乱れる百合の花~ 作:とんこつラーメン
だって、これからの話は『ネタバレ』を切っ掛けにして発生するんですもん。
私の妄想大爆発ですが、どうぞお付き合いください。
そういや、何気に私、初めて『最新刊の内容』に触れるかも……。
空も暗くなり、IS学園の寮に明かりが灯る。
学園でたった二人の男子がいる部屋も電気をつけて明るくなっていて、二人で色々な事を話していた。
「へぇ~…厚志も料理が得意なのか~」
「まぁね。でも、僕の場合はお菓子づくりの延長で料理が出来るようになったって言った方が正しいかな?」
「お菓子作りか……。やってみたいとは思ってるんだけど、あれってかなり難しいんだろ? 分量を正確に測らないといけないって前に本で見たぞ」
「そうでもないよ。慣れてしまえば簡単さ。一夏にもきっと出来るよ」
「厚志がそう言うなら、今度試しにチャレンジしてみるかな……」
ベッドに座りながら話す二人だが、内容が男子高校生がするようなものではない。
今頃、セシリア辺りがくしゃみをしているかもしれない。
「ん?」
ここで、厚志のスマホにメールが届く。
誰かと思って開いて見ると、それは百華からだった。
その内容を見てから、厚志は少しだけ目を閉じる。
「どうしたんだ?」
「ううん。なんでもない」
スマホをポケットに戻してから、徐に厚志が立ちあがる。
「ごめん。ちょっと呼び出しをくらっちゃった」
「誰から?」
「百華から。荷物の整理を手伝ってほしいんだって」
「俺も一緒に行こうか?」
「僕一人で大丈夫だよ。それじゃ、行ってくるね」
ニコっと笑ってから、厚志は部屋を出て行った。
最初はそれを大人しく見ていた一夏だったが、少しして何を思ったのか、厚志の後を追うようにして部屋から出た。
「今までずっと俺は厚志に助けられっぱなしだ。少しでもあいつに何かをしてやりたい。お節介かもしれないけど、何もしないよりはマシ…だよな?」
色々と自分に言い訳をしているが、要は厚志の事を手伝いたいのだ。
「え~っと…厚志はどこに行って……」
辺りをキョロキョロと見渡すと、廊下の端に厚志の背中が見えたので、少し距離を離してから追いかける事に。
「ふぅ~ん…工藤さんの部屋ってこっちにあるのか。一応、覚えておくか」
何でかバレないようにしながら物陰に隠れて追跡していく。
幼い頃によくしたかくれんぼを思い出して、地味に興奮していった。
「あれ? あれって……」
厚志の背中を追いかけ続けると、彼はとある部屋の前で立ち止まる。
そこには既に、百華とマドカ、真紀の三人が待っていた。
「工藤さんに…同じ苗字のマドカって子…だよな? もう一人の子は確か…田辺さん…だったっけ? なんでこんな場所にいるんだ?」
厚志の話とは全く違う。
彼が自分に嘘をついた?
いや、厚志とて人間なのだ。嘘ぐらい普通につくだろう。
「そもそも、あの部屋って誰の部屋なんだ?」
四人が何かを話した後、百華が部屋をノックすると、扉が開いて中にいる人間と話してから室内へと入っていった。
扉が閉じ、一夏も後を追うようにして扉の前に立つ。
それが、自分の運命の分岐点になるとも知らず。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「ゴメン。お待たせ」
「別に大丈夫よ。彼とは上手くいってる?」
「うん。普通に接する分にはいい感じだよ。……可哀想にね。普通に生まれて、普通に育っていれば、きっと沢山の友達に囲まれた人生だったろうに」
「IFの事を言っても仕方がないわ。重要なのは『今』なんだから」
「百華の言う通りだ。私達には、あの人に会い、『真実』を伝える義務がある」
「同時に、『理由』を聞く権利も…ですね」
【寮長室】と書かれた部屋の前で小声で話す四人。
顔を合わせてから頷くと、百華が代表をしてドアをノックする。
「……誰だ?」
「私です。工藤です」
「工藤…? 少し待ってくれ」
数秒後、扉が開くと、中から出てきたのはタンクトップにジャージ姿の千冬。
完全にプライベートモードに入っていたようで、普段の彼女からは考えられないようなラフな姿となっている。
「こんな時間になんだ…? って、もう一人の方の工藤に速水、田辺もいるのか。揃いも揃って一体どうした?」
「実は、織斑先生にどうしても聞きたいことがありまして」
「授業の事か? 悪いが、それなら明日にでも……」
「いえ。そんな事じゃありません。ここではなんですし、少し失礼しますね?」
「ま…待て!」
千冬の静止も聞かず四人が中に入ると、そこは散らかりまくった部屋になっていた。
流石の四人も、無表情で黙り込んでしまった。
「「「「………………」」」」
「だから待てと言ったのに……!」
後悔先に立たず。
恨むなら、普段からちゃんと部屋の掃除をしてない自分の事を恨んでほしい。
「ま…まぁ…いいでしょう。寧ろ、こっちの方がいいかもしれない」
「なに?」
急に雰囲気が変わった百華に気圧されて、千冬が一歩だけ後ろに下がる。
下を向いて俯いていたが、急に顔を上げてから静かに一言。
「ねぇ……織斑先生…?」
「な…なんだ……?」
「どうして……」
「どうして、あの時…私達を見捨てたの?」
「見捨てた……? お前は一体何を言って……」
「まだ分からないんですか? それとも、こう言った方が分り易いかしら? ……
「…………え?」
一瞬、頭の中が真っ白になる。
目の前の少女は自分の事を何と言った? 姉さん? 誰が? 自分が?
「どうやら、この人はまだ何も分かっていないようだぞ?」
「みたいね。仕方がないわ。マドカ。真紀。お願い」
「了解だ」
「分かりました」
マドカが後頭部で纏めていた髪を、真紀がおさげに纏めていた髪を解きつつ眼鏡を外す。
ヘアゴムから解放された髪が重力に逆らえず、そのまま自然な形へと戻った。
その二人の本来の髪型を見て、千冬は思わずその場に尻餅を付いてしまう。
「私と……
現れたのは、千冬を少しだけ幼くしたような顔の少女が二人。
片方の髪は黒く、もう片方の髪は蒼かった。
「更に、コレも見れば私達が何なのかハッキリと理解出来るでしょう」
百華がいきなりガシッと自分の髪を掴んだと思うと、ペリペリペリ…という何かが外れていく音と一緒に、その下から蒼くて短い髪が現れる。
その姿を見て、今度こそ千冬は頭がおかしくなりそうになった。
「あ…ああぁ……! お前は…まさか……!」
「そう…貴女の想像通り」
金髪のウィッグを掴んだまま、一歩だけ近づく。
ただ、それだけの事がとても恐ろしく感じて、千冬は反射的に後ろに下がった。
「私の本当の名前はモモカ……」
「織斑
その名前を聞いた途端、千冬の顔から急に汗が噴き出る。
だが、其処に追い打ちをかけるように、今度はマドカが自己紹介をした。
「そして、私の本当の名前は『織斑
「私は…『織斑
「ハァ……ハァ……ハァ……!」
余りの衝撃に、若干の過呼吸気味になるが、そんな事なんてお構いなしに話を続ける。
「く…工藤……お…お前…のその顔…は……一夏と…同じ……なんで……」
「なんで? それは貴女が一番よく分かっているんじゃなくて?」
「ち…違う…そんなわけない…だって…だって……アレはもう……」
「現実から逃げないで。ちゃんと私達を見て」
混乱の余り、顔を激しく左右に振る千冬を両手で押さえつけ、無理矢理に自分の方へを向かせる。
「私達は、あの忌まわしくも悍ましい禁忌の計画…『織斑計画』で生まれた人工実験体……つまり、私達は貴女の妹であり、弟でもあるのよ…織斑千冬」
「織斑…計画……!」
思い出したくもない漆黒の過去。
それが、形を持って真正面から姿を現した。
「速水……お前もまさか……!」
「そうだよ。千冬姉さん。僕もまた、織斑計画から生み出された実験体の一人だ。最も、僕たちの場合は他の皆とは違って、固有名詞すら与えられなかったけど」
あっけらかんと言い放つ厚志だったが、名前すらなかった過去を持つことがどれだけ壮絶なことなのか、誰にも分らないだろう。
「当時…まだ私達は培養液が満ちたシリンダーの中で育てられていた無力な赤ん坊だった。でも、私達は普通じゃない」
顔を思い切り近づけてから、大きく目を見開いてから千冬の目を見る。
「あの頃から既に私達には『自我』が存在していた。だから、あの時の事は一部始終見ていたし、今でも鮮明に思い出せる。そう……」
ドンッ!
千冬の事を押し倒して逃げられないようにし、その耳元で囁いた。
「シリンダーの一つを破壊し、私達の弟を……一夏を奪って大勢の兄弟姉妹を見捨てた瞬間をね」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
咄嗟に百華の体を突き飛ばし、その場で子供のようにうずくまる千冬。
体全体は震え、涙を流しながらギュっと目を瞑っていた。
「私は…逃げたかった……自由になりたかった! 耐えられなかったんだ! あの苦しいだけの実験の日々に! あの地獄に!!」
「そうね。それは分かるわ。とてもね。でも…それは私達も同じだった!!」
「!!!」
そっと立ち上がった百華は、手に持っていたウィッグを頭に着け直してから、氷のような目で千冬の事を見下ろした。
「これ、凄いでしょ? 束さんが私の為だけに作ってくれた特製のウィッグでね。着けたままでも頭が洗えるし、引っ張れば痛いと感じることが出来る上、並大抵の事じゃ絶対に外れない代物なの。任意で外したい時は、私が頭の中でそう念じればいいだけらしいわ」
自慢げに説明をしているが、当の千冬は全く聞いていない。
それを見て溜息を吐き、徐に近くにあった椅子に座る。
「あなた…もしかして、自分がいなくなったから、あの計画は無くなった…なんて馬鹿げたことを考えてたわけじゃないわよね?」
「ち…違うのか……?」
「当たり前じゃない!! あのマッドサイエンティストの集団が、たかが『試作品』が逃亡した程度で計画を中止させるわけがないでしょ!!」
「し…試作品…だと…?」
「そうよ、織斑千冬。最初期に製造された貴女は、決して計画の最高傑作なんかじゃない。後々に製造する予定である私達の『戦闘能力』の指針にする為の『プロトタイプ』に過ぎなかったのよ」
「そんな…バカな……」
もう何も分からない。
呆けた頭のまま、千冬は『妹だったかもしれない少女』の話を聞いていく。
「この部屋がいい証拠ね。研究員たちが貴女に施したのは戦闘に関する事だけ。そもそも、織斑計画の本来の目的は『究極の兵士を創る』事じゃなくて、『究極の人間を生み出す事』なのよ? 家事も出来ない、自分の部屋すら碌に片付けられない。そんな人間が究極? バカも休み休み言って」
「で…では…お前達は……」
「貴女を生み出した時の研究データと元に、私達にはデフォルトで織斑千冬と同等の戦闘能力が与えられてるわ。勿論、他にも様々な能力が付与されてるけど。その最たるものが『家事などの能力』ね」
「究極を目指すならば、全てを万能に出来なくては意味が無い…らしいです」
「実際、あの織斑一夏だって家事とかは得意でしょ? つまりはそういう事よ」
顔を伏せ、千冬の目からハイライトが消えていく。
だが、百華達からは全く見えないので、そんな事はお構いなしにまだまだ話す。
「一応言っておくけど、私達が話したこと、これから話す事にはちゃんとした物的証拠があるの。そっちが勝手に私達の妄想だとか嘘だとは思うのは自由だけど、それは単純に現実逃避しているだけだって認識して頂戴ね」
「分かっている……」
もう反論する元気もないのか。
精神的に疲弊しまくっている千冬は、力なく項垂れてベッドに座る。
「どうせなら、織斑一夏の事についても話してやったらどうだ?」
「そうね。どうせ、何も知らないで彼を一方的に連れだしたんでしょうから」
「どういう事だ…? お前達は一夏の何を知っているというんだ……」
「何もかも…よ。それこそ、彼が『無自覚のまま犯してしまった大罪』についてもね」
「無自覚の罪…だと…?」
「その前に、話さなくちゃいけないことがあるわ」
百華が立ちあがり、千冬の隣に座る。
ベッドのスプリングが少し動くが、二人には全く問題は無い。
「さっき、織斑一夏が私の弟と言った事は覚えてる?」
「あ…あぁ……」
「どうして私が彼と同じ顔を持っているのか。どうして『弟』と言ったのか。今から教えてあげるわ」
自分の指を絡ませながら、百華はまるで自分に語りかけるように話し出す。
「私は…私達はね……『
「五つ子……兄弟? 待て…待ってくれ。お前は女の筈だ。それなのに『兄弟』とは……まさか……!」
「そうよ。私は……」
「『織斑計画』の人体実験の末、奴らによって無理矢理に『性転換』…つまり、男から女にされてしまったの」
まだまだ全然話したりないんじゃぞい。
けれど、キリがいいので続きは次回。
今度は一夏の『無自覚の罪』に関する話です。