インフィニット・オーケストラ ~咲き乱れる百合の花~ 作:とんこつラーメン
ま、自分のペースでボチボチと頑張りましょうかね。
因みに、呼符三枚でカーマ&柳生のおじさまを連続ゲットするという神引きをしました。
あれには本気で驚いた……。
神引き自体は今回が初めてじゃないんですけど。
次の日になり、百華達は学生寮にある食堂へと向かっていた。
途中の廊下でいつものメンバー(一年生だけ)が勢揃いし、そのまま集団で食堂へと歩いていくことに。
「で、昨日の首尾はどうだったわけ?」
「上々…と言いたいところだけどね……」
「どうも姉さんは煮え切らない態度でな……」
「色々と話はしたし、それで後悔や謝罪の言葉は聞けた……けど……」
「けど? なによ?」
「なんだか、軽い言葉のように感じたんです」
百華達四人から昨夜の話を聞いていく内に、箒と鈴の表情が段々と険しくなっていく。
「それってつまり、言葉だけ謝っておけばいいんじゃね? 的な感じだったって事?」
「本人がどう思っていたかは不明だけど、少なくとも私達はそう感じたわね」
「嘆かわしい……自分の罪すら真面に認められないのか……」
ラウラが首を振りながら溜息を吐く。
以前に指導を受けた身として、本気で呆れているようだ。
「ところでさ厚志。一夏の奴はどんな感じだった?」
「どんなって……彼がどうかしたの?」
「実はだな……」
ここで、一夏が昨夜、百華達の話を密かに立ち聞きしていた事を教える。
すると、四人は大きく目を見開いて驚いていた。
「まさか…彼が僕の事を尾行していただなんて……ゴメン。これは完全に僕のミスだ……」
「気にしなくてもいいわ、厚志。どうせ、いつかは話すつもりだったんだし。それが少し早くなっただけよ」
「そうだね……」
若干の落ち込みを見せていた厚志だったが、百華の励ますですぐに立ち直る。
この切り替えの早さが彼の強みの一つだ。
「けど、それを聞いて納得がいったよ」
「何がですの?」
「一夏ね……なんだか変な感じだったんだ。僕に遠慮をしているように見えているけど、それを必死に隠そうとしているって言うか……」
「「あのバカ……」」
昨夜、あれ程『厚志の事を意識するな』と言ったのに。
一夏に腹芸を期待した方がバカだった。
「まぁ…あいつの事はこっちに任せておいて。ちょっと『考えてること』があるから……」
「なんか、あんまし良い予感はしないけど……大丈夫なのよね?」
「任せておいてくれ。命に関わるような事じゃない」
「その発言が逆に心配になるんじゃ……」
シャルロットの静かなツッコミ。
「そのついでに、千冬さんについても少ししたいことがあるのよね」
「姉さんにも? 何をする気?」
「ちょっとね。詳細は後で話すけど……私達もあの人に対しては百華達ほどではないにしろ恨みはあるし、それは決して私達だけじゃない」
「あの人のしたことが巡り巡って、結果として家族を狂わせられた人間がいる。私達は『彼』にも『機会』を与えてやりたいと思っている」
「……そういう事ね。それに関しては私も常々から思ってたし、異論はないわ。けど、一体どうする気?」
「それを今考えてるのよね~……」
「スコールさんや楯無さんに相談すれば、色々と便宜が図れるとは思うんだが……」
「それが一番妥当な線よね」
箒と鈴も、彼女たちなりに色々と企んでいることがある様子。
普通ならばここで止めたりするのだろうが、ここに入る面々は全員が彼女達の受けた仕打ちを知っているから、それを止める事は出来ないし、しようとも思っていない。
「そういえば、織斑先生にも『アレ』を見せたの?」
「勿論。かなりの荒療治だとは思うけど、あの人にだけは何があっても必ず見せると決めてたから」
「昨夜、去り際に装着させてきたから、一晩かけて寝る事も出来ずに『地獄』を味わった筈だ」
「いい気味ね」
「全くだな」
一言で切り捨てる箒と鈴。
もう完全に『織斑憎し』状態になっている。
「朝食を食べたら、私とマドカで様子を見に行くつもりよ。まず間違いなく、姉さんは今日、休みだと思うから」
「でしょうね。『アレ』を見た後でも精神を正常に保っていられる者がいたら、それはもう人間ではないナニかでしょうね」
束の助手をしているクロエも、間接的にではあるがほんの僅かだけ『映像』を見ている。
尤も、彼女の場合は十数秒見ただけで発狂寸前となり、すぐに気を失ってしまったが。
「後で山田先生にも話しておかないと。私達はまず間違いなく遅刻確定でしょうから」
「そうだな。では、まずは職員室に行くことになるのか……」
入学二日目にして、早くもバタバタな百華とマドカだった。
「さ~て。今日は何を食べようかしらね」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
寮長室前。
少なくとも、ドア越しには何も聞こえない。
「気でも失ってるのかしら?」
「確か、鍵は閉めていかなかったよな?」
「その筈よ」
「ならば、直接入ってから確かめよう」
「そうね」
静かに部屋の扉を開いてから中に入ると、昨晩と殆ど変わりがない部屋がそこにはあった。
違いがあるとすれば、昨晩は部屋からアンモニア臭なんて漂っていなかったことだ。
「あらら」
「ほぅ……」
部屋の中央には、椅子に両手足を拘束された状態で口から涎を垂らして脱力している千冬がいた。
流石に髪が真っ白になっているなんてことはないが、その身からは昨晩のような雰囲気は微塵も感じない。
まるで人形のように微動だにせず、本当に死んでしまっているかのようだ。
「脈は……あるようね」
自身のISのセンサーを使って千冬の脈拍や呼吸を確認すると、まだ息はある様子。
今ならば暴れたりもしないだろうと判断し、マドカに目配せをして頷いた後、両手足を縛っている鎖に触れてから、ISの拡張領域へと収納した。
「「……え?」」
自分の体が自由になった途端、千冬の体は重力に従うように椅子から転げ落ち、そのまま床に倒れ込む形に。
その際に例のVRゴーグルも外れたが、それはマドカがギリギリのところでキャッチした。
「「ん?」」
全く何も話していないと思われた千冬だったが、よく見たら彼女の口が少しだけ動いて何かを只管に喋っていた。
二人が顔を近づけて耳を澄ませると、辛うじてその声を聞きとることが出来た。
「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
虚空を見つめながら、延々と『ごめんなさい』だけを言い続ける千冬。
それはまるで、壊れた機械のようだった。
「あ?」
「なんだ?」
「この人のズボン見て」
「ズボンだと? ……あ」
少し見づらいが、千冬のズボンの股間部の色が変わって濡れているのが確認できた。
そして、この部屋から漂うアンモニア臭。
もう答えは一つしかなかった。
「いい歳した大人が……」
「私達には、そんな自由すら無かったのにな」
大きく溜息を吐きながら、目の前で醜態を晒し続ける姉を見る二人。
本当は様子を見るだけのつもりだったが、流石に事情が変わった。
このまま放置でもしておいて、変に死なれても困るし、蛆でも湧いたら目も当てられない。
「……どうする?」
「そうね……取り敢えず……」
いきなり千冬の胸倉を掴んだと思ったら、大きく右手を振り被ってからの……。
バ チ ン!!
「こうするわ」
「うわぁ~……」
全力ビンタ。
その一撃でようやく千冬の目に焦点が合い始めるが、目の前にいるのが百華だと分かった途端、精神の均衡が完全に崩れた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!」
大粒の涙を流しながら、両手で頭を抱えながら床に蹲って絶叫し、全身を震わせながら再び失禁した。
「殺してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!! 私を殺してぇぇぇぇぇっ!!!」
「殺せ…ですって…?」
「私は……私はなんてことを……! 私があんな事をしなければ何かが変わっていたかもしれないのに……私なんかがこの世に生まれたから……私が…私が…私が……」
狂ったかのように自己否定をする千冬だったが、そんな彼女の言葉に一切耳を貸さず、百華はもう一回、千冬の胸倉を掴んでから目を合わせた。
「ふざけんじゃないわよ。死にたいですって? そんな事でアンタの罪が全部なかったことになると本気で思ってんの?」
「百華…お願い……私を殺して……こんな私に生きてる価値なんて……」
「そうね。諸悪の根源は『織斑計画』で、ある意味じゃアンタも立派な犠牲者の一人。けどね、それは決して家族を見殺しにしていい理由にはならないし、そんなアンタになんか生きてる価値なんて無いのかもしれない。でもね、だからこそ、アンタはこれから先も生きなきゃいけない。生きて生きて生き抜いて、アンタが老衰で死ぬその瞬間まで償いの人生を送るの。それがアンタの生存理由。安易に死んで楽になろうだなんて、私もマドカも厚志も真紀も、あそこで無残に死んでいった皆も、絶対に許さない」
厳しい言葉を発しているが、百華の目にも涙が浮かんでいた。
それが何を思っての涙なのか。それは彼女自身にも分らない。
「けど……私……何をどう償えばいいのかなんて…分からない……。私の犯した罪が大きすぎて……」
「……確かにそうね。けど、償う前に一番最初にしなくちゃいけないことがあるでしょ?」
「なに……?」
「『織斑』を捨てる事」
「『織斑』を…捨てる……?」
「そう。私達には、未だに『織斑』を名乗っている神経が理解出来ない。あれは私達にとって最も忌まわしい名前。故に、私達が真っ先にしたことは『織斑』を捨て去ってから別の名前を名乗るようにした」
「別の…名前……」
「私とマドカは亡国機業の支援者の一人である日本人の名字を貰って『工藤』と名乗るようになり、名前すらなかった厚志は、死んだ研究員の名前をそのまま奪った。真紀は彼女が養子に入った家庭の名字を頂いたらしいわ」
「今のお前のように、何からすればいいのか全く分からなかった私達に出来た精一杯の事だ。正直、お前達が『織斑』を名乗っていると知った時、私達は真っ先にお前達姉弟が未だに『織斑計画』と繋がっていると疑ってしまったほどだ」
「そんなわけないじゃない!! あんなの……あんなこと……人間の所業じゃない……悪魔……あいつ等は悪魔よ……」
普段の口調が消えて、弱々しい話し方になる程に疲弊してしまっている千冬。
もしも、百華達がここに来なければ、今頃は自殺でもしていたかもしれない。
それ程までに、彼女の精神は限界まで消耗していた。
「姉さんもまずは『織斑』を捨てて。捨てた上で、私達と一緒に来て」
「一緒に行けば……償える…?」
「多分ね。でも、これから先、誰に何をされても何も文句も弱音も吐けないわよ。姉さんはそれだけの事をした。それだけの罪を背負っているのだから」
「うん……うん……」
涙を鼻水を流しながら、千冬はゆっくりと頷いた。
それを見て、ようやく胸倉を離してから、彼女の体をそっと抱きしめた。
「これからは『工藤』って名乗って。『工藤千冬』になって」
「なる……工藤千冬になる……もう…織斑はイヤ……」
「それでいいわ……」
抱きしめながら頭を撫でると、今度は別の意味で涙腺が崩壊し、千冬の方からも百華の事を抱きしめた。
「ごめんなさぁぁぁぁぁぁいっ!! わだじ……わだじ……うわぁあああぁああぁあぁあぁぁぁぁんっ!!!」
「はいはい。気持ちは分かるけど、そろそろ泣き止みなさいな。大人でしょ?」
「ああああぁぁああぁああぁあぁああぁああぁあああぁぁあぁあぁんっ!!!」
ショックの余り、幼児退行でもしてしまったかのように百華を抱きしめて泣き喚く。
これが嘗て、数多くの女性達から『ブリュンヒルデ』と呼ばれていた『世界最強』だとは、誰が想像するだろうか。
今の千冬は、自分の犯した罪に押し潰されそうになりながらも、妹達によって辛うじて精神を保ちつ続けているか弱い女だった。
「どうやら、入学二日目にして早くも欠席をする羽目になりそうね」
「だな。そう思って、ついさっき私から山田先生の携帯に今日は休む旨のメールを送っておいた。ちゃんとした理由も添えてな」
「流石はマドカね。頼りになるぅ~」
「フッ……」
百華に褒められてニヒルな笑みを浮かべているマドカだが、その心の中は全くニヒルじゃなかった。
(百華に褒められたぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡ めっちゃ嬉しいぃぃぃぃぃぃっ♡ あ~…これだけでどんぶり飯三杯は余裕でいける自信があるわ……)
口数が少ない人間ほど、心の中がどんな風になっているのか分らないものだ。
マドカは、その典型的な例だろう。
「それじゃあまずは……」
千冬の体をお姫様抱っこで持ち上げてから、そのまま室内に存在している『ある場所』へと歩き出す。
「お風呂に入りましょ。このままじゃ臭いし、衛生的にも悪いわ。マドカも手伝って」
「了解だ。ふふふ……♡」
「ふぇ……? 百華…? マドカ…?」
ここから先、千冬へのアンチ超激減!
完全に無くなるとは言ってない。
千冬がアンチで無くなるのは、あるシーンの後から。
次回、魅惑の3姉妹丼。