インフィニット・オーケストラ ~咲き乱れる百合の花~ 作:とんこつラーメン
なんか、色々と話の構成を整理してたら、今回はエロ回が入りそうにありません。
だって! 序盤は本当に色々とブッコまなくちゃいけない話が多すぎるんだよぉ~!
けど…この苦行さえ乗り越えられたら、きっと私も読者の皆さんも望んでいる百合の花畑が待っている筈なんです!
あと、ついでのついでに一夏のアンチも。
そんな訳で、もう少しだけ御付き合い下さい。
そのお詫びと言ってはなんですが、次回のエロのカップリングだけここで発表します。
次回は『百華×山田先生』を予定しています。
劇中初めての山田先生の艶姿をお待ちください。
IS学園は他の学校と比べても非常に授業数が多く、其処らの学校と同じような予定では到底追いつかなくなってしまう。
そう言った事情もあり、IS学園だけは例外的に入学式の日から早くも授業が開始されるのだ。
一時間目の授業が終わり、生徒達は思い思いに休み時間を楽しんでいる。
まだ初日という事もあり、前の学校で仲が良かったグループなどが中心となっているが。
「皆は初めての授業はどんな感じだった?」
それは百華達も例外ではなく、他の女子達と同じようにモノクローム・アバター繋がりで集まっていた。
「山田先生の授業は非常に解り易かったですわ。既に学んでいる部分とはいえ、いい復習になりましたし」
「私もセシリアと同じだ。あの人が優秀なのは前から知ってはいたが、あそこまで見事な授業をされると、普通に見る目が変わるな」
「安心して授業に集中出来ましたね」
「さっすがはマヤマヤだよね~」
「本音? 今はいいけど、授業中とかは渾名で呼んじゃダメだからね?」
どうやら、そこまで苦労する事も無く終わることが出来た様子。
元々がISに関する知識は束から徹底的に叩き込まれているので、この学園での座学で学ぶ事は殆ど無いのだ。
彼女達がここで学ぶべき事は実戦での動き方。
既に幾多の戦場を闊歩し続けているとはいえ、それに慢心しては意味が無い。
ここは敢えて初心に帰り、皆で一緒に一から勉強し直すのだ。
「でも、『彼』の方はそうはいかなかったみたいだね」
「織斑一夏か……」
「最初から最後まで、ずっと悩んでたものね」
「頭を抱えていると思ったら、次の瞬間には上の空になってましたね」
「ダメダメだね~」
「恐らく、姉である織斑先生が彼をISに関わらせないようにしてきたのだと思いますが…それでも酷かったですわ。せめて、入学が決定した時点で最低限の予習とかしてくれば良いものを……」
セシリアが千冬の名を出した途端、百華達四人の顔が暗くなる。
それを見て失言したと思ったセシリアは、慌てて謝った。
「も…申し訳ありません……デリカシーに欠けてましたわ……」
「ううん。気にしないで。ありがと、セシリア」
「百華さん……」
気にしていないと本人は言うが、明らかに無理をしているのが分った。
「なんだかんだと言いつつも、一番気にしているのは私って事なのね……」
「無理もない。あの『地獄』の中で、お前が一番苦しんだのだから」
「百華さんがいなかったら、今頃私達は……」
「君がどうにかなりそうになったら、僕たちが全力で止めるよ。それぐらいの恩返しはさせて欲しいな?」
「マドカ…真紀…厚志……ありがとう……」
一人じゃない。孤独じゃない事が、こんなにも心強いとは。
今も『昔』も、自分は皆に助けられてばかりだと実感する百華だった。
「あれ? そう言えば織斑一夏くんの姿が見えないね…どこに行ったんだろう?」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
一時間目の授業が終わり、一夏は廊下を一人で歩いていた。
(あぁ~…完全に出遅れた~…。本当は休み時間が終わった直後に速水に話しかけようと思ってたのに、それよりも早く誰かと話し始めちゃうんだもんな~…。流石に、あそこに入っていく勇気は今の俺には無いわ~……)
話終わる機会を伺おうとも思ったが、なんだかそれも無粋な気がした一夏は、教室を出て少しでも気分を変えようと思っていた。
周囲から『鈍感』と呼ばれている彼も、女子ばかりの空間に居続ける事は難しかった。
「つーか、誰も知り合いがいないのは普通に痛いよな~…。例え女子でもいいから、知り合いがいてくれれば少しは気が楽なのに……」
今更そんな事を言っても始まらないのだが、それでも言わずにはいられない。
そんな心境だったせいか、そもそもの鈍感が無駄に機能してしまっているのかは知らないが、今の状況の明らかな違和感に全く気が付かないでいた。
学園にたった二人しかいない男子の片割れが堂々と廊下を歩いているのに、同じように廊下にいる女子達が誰一人として一夏に見向きもしない。
別に無視されているわけじゃない。見下されている訳でもない。
どこまでも反応が『普通』なのだ。まるで、一夏がいる事が当たり前であるかのように。
そんな一夏だったが、目の前を自分の方に歩いてきている二人組の女子の顔を見て大きく目を見開いた。
その二人組とは、彼の『幼馴染』である少女達だったから。
「あれはまさか……箒! 鈴!」
「「ん?」」
いきなり自分達を呼ぶ声に反応し、二人は顔を動かすが、その表情は何処までも不快感を示していた。
「よかった~! まさか、お前達もここに来てたなんて! マジで安心したぜ! 久し振りだな、二人とも!」
相手の表情なんでお構いなしで嬉しそうに話しかける一夏だったが、二人の一言でその表情は凍りつく事となる。
「……貴様は誰だ?」
「……へ?」
「私は、お前のような軽薄な男の知り合いなんぞ知らん。鈴の知り合いか?」
「まさか! こんなウザそうな男の知り合いなんて一人もいないわよ!」
「な…何言ってんだよ! 俺だよ! お前達と同じ小学校に通ってて、同じクラスだった織斑一夏だよ!」
二人の言葉が信じられず、必死に自分の事を話すが、どれだけ言っても二人は小首を傾げるばかり。
「同じ小学校で同じクラス?」
「こいつマジで何言ってるワケ? 普通に意味不明なんですケド」
「確かに、私と鈴は同じ小学校で同じクラスだったが、そこに貴様のような男は存在していない」
「勝手に人の過去を捏造しないでくれる? つーか、初対面の相手に対して馴れ馴れしくない? こっちの名前も知ってたし。え? なに? もしかしてストーカー? うわぁ~…引くわ~……」
「ふっ…鈴のように可愛らしい少女ならば、ストーカーの一人や二人、いても不思議じゃないがな。それだけ、鈴が女として素晴らしい証拠なのだから」
「んもう…箒ったら…こんな所で言わないでよ~! 恥ずかしいじゃない♡」
状況が全く読めないと思ったら、今度は急にイチャつきだす二人。
何が何だか分からなくなり、一夏は思わず手を伸ばす。
「なんなんだよ…! なんでそんな事を言うんだよ!」
「鈴に触るな!! 貴様如きが!!」
「うわぁっ!?」
しかし、伸ばした手は箒に掴まれ、そのまま投げられて廊下の床に叩きつけられることに。
背中を打った一夏はフラフラと立ち上がりながら箒を睨もうとしたが、逆に箒と鈴の憎悪に満ちた視線に気圧されてしまう。
「いって~…いきなり何をするん…だ…よ……」
「何を…だと? それはこちらのセリフだ。見ず知らずの女子の体に触れようとするなど、貴様は男として恥ずかしくないのか!!」
「マジでサイテーなんですけど。常識ってのを知らないの? 一体親にどんな教育を受けてきたのよ。普通に信じられないわ」
「……!」
一夏の触れて欲しくない部分をピンポイントで抉ってきた鈴。
言った本人は、知らない振りをしつつも内心では爆笑していた。
「別に女尊男卑なわけではないが、それでも最低限のマナーぐらいはあるだろうに」
「はぁ……もう行きましょ箒。こんな奴と一緒にいたら、箒もセクハラさせるわよ」
「その時は鈴が私の事を守ってくれるんだろう?」
「当たり前じゃない。あんなセクハラ野郎なんて、金的をぶちかまして一発KOよ」
落ち込んでいる一夏を無視して、二人は談笑しながら去っていった。
残されたのは、何が起きているのか全く分からない一夏のみ。
「なんでだよ……どうして二人とも…俺の事を忘れてるんだよ……。あんなにも一緒に遊んだじゃないか……それなのになんで……」
投げられたのが悔しくて、忘れられたのが悲しくて、一夏は声も出さずに泣いた。
周囲の女子達は空気を呼んで、いつの間にか一人もいなくなっていた。
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一方その頃。
千冬は職員会議で報告があった、校舎内に設けられた束の研究室まで来て束と対峙していた。
二人揃ってテーブルに座り、束の手元には自信が淹れたコーヒーがある。
「どういうことだ……」
「何が?」
「何で今までずっと音沙汰も無かったお前が、急にIS学園に来るんだ!?」
「あぁ~…その事ね?」
コーヒーを一口飲んで、静かな目で千冬を見据えて落ち着いた口調で話し出した。
「『償い』の為だよ」
「償い…だと…?」
「そう。ちーちゃん、私達は取り返しのつかない『罪』を犯している。それはどんな事をしても決して許されない事。けれどね、そんな救いようのない私の事を『あの子達』は許してくれたんだよ」
「あの子達? 誰の事を言っている?」
「それはすぐに分かるよ。それよりも……」
コーヒーカップを置いて、脚を組んでから千冬を見る。
千冬の知っている飄々とした道化染みた束からは全く想像が出来ない程に落ち着き、大人びた表情の彼女に戸惑いつつも話を続けた。
「ちーちゃんはいつまで、そうしているつもり?」
「……何のことだ」
「『真の恐怖とは、過去からやってくる』」
「過去……!」
その単語を聞いて、急に千冬の顔が引きつる。
それを見てから、束は静かに目を閉じた。
「人間の真の成長とは、未熟な過去に打ち勝つことだと私は思っている。ねぇ…ちーちゃん。今の君は胸を張って、自信を持って言えるのかな? 過去を乗り越えたと。過去に打ち勝ったと」
「私は……」
束の言葉の一つ一つが心に深く突き刺さる。
今まで見ようとしてこなかったものが、見ない振りをしてきたものを急に突き付けられたから。
「私だって人の事は言えない。許しては貰えたけど、それで全てが終わったなんて甘い考えはしてない。寧ろ、これからなんだよ。今までも、これからも、私は全身全霊を賭けて償い、この世界の為に努力し続ける」
「…………」
芝居じゃないと、嘘じゃないと一発で分かった。
原因は不明だが、束は変わった。最高にいい意味で。
束とは幼い頃からの付き合いだが、こんなにも使命感に燃えている彼女を見たのはこれが初めてだった。
「私は自分の犯した『罪』と正面から向き合った。今度はちーちゃんの番だ」
「私の…罪……」
「この世で最も罪深い事は『無知』である事だ。知ろうとしない事だ。まず最初にちーちゃんがしなくちゃいけない事は『過去を知る』ことだ」
「過去を…知る……」
そこでふと壁掛け時計を見ると、休み時間が終わる寸前になっていた。
「おや。もうこんな時間か。そろそろ教室に戻った方がいいんじゃないかな?」
「あ…あぁ……」
ゆっくりと席を立ち、静かな足取りで扉へを向かっていく千冬。
出る直前に振り返り、最後の質問をした。
「最後に一つだけ聞きたい」
「なに?」
「あの『速水厚志』とは何者だ? どうして男なのにISを動かせた? いや、それを言ったら一夏もだが……」
「あっくんといっくんがISを動かせた理由は明白だよ」
「それは一体……」
「そう焦らなくても、すぐに分かるよ。実に単純明快な答えだからね」
「そうか……」
体半分を廊下に出した千冬の背中に向かって、束は微笑を浮かべながら呟いた。
「ちーちゃん……
「…………」
そのまま無言で千冬は研究室を後にした。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
千冬が暗い表情をしながら廊下を歩いていると、少し先に見覚えのある銀髪が見えた。
もしかしてと思い、思わず声を掛けた。
「その銀色の髪は……ボーデヴィッヒか?」
「え?」
振り向いた顔を見ると予想通り、銀髪の髪の持ち主はラウラだった。
よく見たら、彼女は似たような顔の同じ銀髪の少女と一緒にいた。
「矢張りか……」
「お久し振りです、織斑教官。いえ、ここでは『織斑先生』でしたね。失礼。以後、気を付けます」
「あ…あぁ……」
なんて冷静で落ち着いた表情。
決して冷徹という訳ではなく、非常に落ち着いているかのような顔。
千冬の知っているラウラは、確かにこんな感じをしていたが、なんだかそれとは違うように見えた。
「ラウラ。この方がもしかして?」
「はい。そうです、姉さま」
もう一人の少女が千冬の顔を見て、なにやら納得したような表情を見せ、静かで丁寧なお辞儀をして挨拶をしてきた。
「初めまして。織斑千冬さん。私は『クロエ・クロニクル』と申します。現在は束さまの助手をしております」
「束の助手…だと…? それに『姉さま』とは……」
ここでタイミングの悪い事に、休み時間が終わる直前を知らせる予冷が鳴る。
「姉さま。もうすぐ授業が始まります。急ぎましょう」
「そうですね。では、失礼したします」
二人仲良くお辞儀をしてから、早歩きで教室へと急ぐ二人を見届けてから、一人残された千冬は静かに呟いた。
「私の知らない所で何が起きているんだ……」
それに答える者は誰もいなかった。
やっとアンチっぽいことが出来ました。
本格始動前に書きたかった事その1完了です。
一応言っておくと、一夏に対しての辛辣な感じは序盤だけで、それ以降は別方面でのアンチが展開していきます。
序盤は原作そのままに進んでいきますが、その後は……。