無悪襲撃から約1ヶ月経過し嵐の前の静けさか・・・あれ以降無悪が目撃される事はなかった。
「魔物の目撃情報がないやて?」
【ロキ・ファミリア】の本拠地『黄昏の館』の主神ロキの部屋に集まったロキ、フィン、リヴェリア、ガレスの四人はこの1ヶ月でオラリオ外で集めた情報を整理する。
「ああ、無悪の情報を集める最中に入ってきた情報だ。ゴブリンの一匹すら見かけなくなったらしい」
「無悪は英雄扱い、一部の地域では神として崇められている場所もある、か」
「で、黒竜を討たれたという情報は本当なんじゃな?」
「ラウル達に行かせて確認させた。黒竜の遺骸を発見。下界の各地に落としたいくつかの鱗と同じ力の波動を放っているらしい」
約千年前『古代』ダンジョンより地上に進出した力ある古の怪物。人類の悲願である『三大冒険者依頼』と言われている『陸の王者(ベヒーモス)』『海の覇者(リヴァイアサン)』『隻眼の竜』が『ゼウス(男神)』と『ヘラ(女神)』が率いる最強の冒険者達、そして神敵である【天災】無悪の手により達成された事を意味していた。
「もっと範囲を広げて情報を集めるか?」
「いや、これ以上は必要ないし意味がない」
「・・・・フィン、策があるのか?」
「逆に聞くけどリヴェリア、『アレ』に勝てる方法があるのかい?あるならぜひ聞きたいね。けどますますわからなくなった・・・何故無悪はオラリオに戻って来た?」
「何故ってそりゃオラリオにはわんさか神が集まっとるからじゃろ?」
「なら何故女神フレイヤは天界に送還されてない?話によればオッタルやアレンの他者のために自分の身を犠牲にしてでも他者を守る高潔さに感動してその場を引いたという報告があるけど・・・・わからない、親指が疼く、何かを見落としている?」
ゴゴゴゴッ!!!
突如発生した大地震にロキは椅子から転げ落ちる。
「イタタタタタッ、何やねん急、に・・・・」
ロキは起き上がり窓の外を見た瞬間凍り付いた。外には天空に突き刺さる『黒い光の柱』が出現していた。それは『神の力(アルカナム)』に『匹敵するレベル』の莫大なエネルギーを感じた。
「まさか、まさかまさかまさかまさか!!!無悪!!!あれは無悪や!!!アイツの次の標的は!!!『天界』や!!!」
「馬鹿な!人間が天界に、そんな事できるはずがない!!!」
「間違いない!無悪や!けどアイツ天界で何をヤらかす気や!!!」
「例え天界に行けたとして、そこにいる神々がいるのだろう?零能ではない制限がない神々を相手にできるとは、」
「ハハハハ、リヴェリア、空を見てみ。もう笑うしかないで!!!」
リヴェリアだけではないフィンやガレスもオラリオ上空を見上げその光景に絶句する。
次々に光の柱が『降りてくる』。数本から十数本、数はどんどん増えていく。それは神々が無悪から逃げる為に地上に降りて来ている事を意味していた。
つまり今の無悪は神の力を全解放できる神々より強いということ。
「どういう事だ?無悪の目的は神々を地上から一掃する事じゃなかったのか?これじゃあ本末転倒だ。まさかブラフ?いや、」
フィンは次々に起きる事象に思考の迷路に迷い込む。
『無悪の目的は地上から神々を一掃する事ではなかったのか?下界と天界の間に壁で隔てると言っていた。いや、幻想を消し去る・・・どうやって?いや、幻想?消し去る?・・・まさか、無悪にとって幻想とは神々や魔物だけではない?『僕達』も含まれているのか?無悪にとって人類すらも幻想だとでも!!!いや、無悪は『人間が好き』だと十五年前も言っていた。奴が闇派閥と組んでいた時、散々戦闘中に散々聞かされていた・・・』
その頃、無悪は天界を蹂躙し神々を殺しながらとある場所を目指していた。
無悪は地上にいる『死の神』から聞き出していた。天に還る子供達の魂を『管理』して、漂白して、再び生まれ変わらせる仕事をする神の話。
「神々よ、とても人を創造した者とは思えんぞ?人は例え絶望的な力の差があろうと大切な者達を守る為に強大な敵に立ち向かっていくのに対して貴様等ときたら、力が通じないとわかるやいなや地上に逃げるか!!!悠久の時を生きながらそんなに我が身が大事か!!!もういい、貴様等はやはり後回しだ。本来の目的を果たそうか。まずは『魂の管理権限』を手に入れるよう」
無悪の天界蹂躙は更に続いていく・・・無悪の目的の為に、愛する人類の為に。
再び場面は迷宮都市オラリオへ。
「今度は何やねん!」
窓の外で間違いなく異変が起きていた。倒壊したはずの摩天楼施設バベルが『直立』したのだ。そこに【怒蛇】ティオネがロキの部屋にノックもなしにドアを破壊しかねない勢いで駆け込んできた。普段の彼女ならあり得ない事だ。
「団長!大変です!ギルドに襲撃者が!【ガネーシャ・ファミリア】が応戦するも全く歯が立たないと!敵の狙いは神ウラノスだと言っているそうです!救援を求めに来たガネーシャ・ファミリアの団員は息を引き取りました」
「つまりアレは襲撃者の仕業か、無悪だけでいっぱいなんだけど。大体予想できるけど、相手の人数は?」
「一人です。名は『キーラ』と名乗ったそうです。長い銀髪に赤い軍服を着た見た目華奢な女の子らしいのですが恐ろしいほどの怪力の持ち主だそうです。Lv.7以上の強さだと」
「ッ!ロキ、すまないが君に護衛を付かせる余裕はない。リヴェリア!ガレス!僕達も出るぞ!ティオネ、アイズ達は!」
「アイズやベート達は既に向かいました!」