速水奏、それが私の名前。
私は高校生で、アイドル。
アイドルは偶像。多くの人に見られる立場。
ファンは私を見る。でもファンが見る私は私のすべてじゃない。
ファンに見せない私もいる。
ファンによって抱く私のイメージが違ったりもする。
複数の私がいる。
じゃあ私は誰?
プロダクションで待ち時間を過ごしている時。
「えー、奏ちゃんに彼氏が?! どんな人、どんな人? 気になる! えっ、年下?! 意外―!」
驚きの声をあげたのは塩見周子。私と一緒に仕事をすることが多く、仲もいいアイドル。
彼女は最近私の様子が変だと見抜いて指摘してきたので、彼のことを話してみたくなった。
「何がそんなに意外なのかしら?」
「だって奏ちゃんは理想が高くて同年代の男の子じゃ満足できないだろうから、付き合うなら年上の男かなーってあたしは思ってたのよ」
「……そうね、私も以前はそんな風に思ってたわ」
同年代の男の子って子供っぽく見えるし、恋愛対象になるとは思わなかった。
恋をしたことはないけど、恋をするならきっと、教養と包容力があって、私を未知のドキドキする世界へ導いてくれるような、映画に出てくるような素敵な男性がいいと思っていた。
でも、そうはならなかった。
私が付き合うことになったのは、一つ年下の、優しいけど平凡な男の子。
「でも恋って予想通りにはいかないものじゃない?」
「ふーん、言うねえ奏ちゃん」
周子は半ば納得したような、納得していないような表情をしている。
周子のことは信頼しているけど、食えない女ではある。私より年上で人生経験も豊富だろうし。
「ねえ、あたしに彼氏紹介してよ! 奏ちゃんを惚れさせた男、興味あるわ~」
「そうね……」
周子が彼に会うことを想像してみると、周子は彼のことを弄り、からかうだろう。彼は年上の周子に強く出ることはできず、たじろぐだろう。それはちょっと面白くない。
「今はまだ周子に会わせたくはないわ」
「え~?! なんでそんな意地悪~。あたしたちの仲でしょ? 奏ちゃんはあたしのことが信用できないの?」
「周子のことをよく知っているから嫌なのよ。どうせ面白がって彼で遊ぼうとするんでしょ」
「えー、そんなことないってー。あたしは志希ちゃんとは違うよ?」
「あの子もタチが悪いけど、人の彼氏にそんなに興味を持たないだろうし。周子は下世話なことも楽しみそうだからこの場合は不適切なのよ」
「ひどい言い草だなー。シューコちゃん傷ついちゃうなー」
「嘘ね」
「えー、少しは本気だってー! じゃあさ、今すぐはダメでも、そのうち会わせてよ? 奏ちゃんの彼氏にふさわしいか友達として判定しないとだからさー」
「あなたに判定してもらう必要は微塵もないけれど、そうね……遠くないうちにはあなたに会わせられるといいわね」
最近私の人生は唐突に変わった。
ある日突然後輩の男の子の奴隷になった。
理不尽なものだと思う。
一人で立っていた私は、彼に生殺与奪を握られた。
彼がその気なら、私を本当に奴隷のように扱うこともできたはず。
私に命令し、従わせ、尽くさせ、利用するだけでもよかった。
でも彼はそうしなかった。
私に何一つ命令しようとはしなかった。私の望まないことをさせようとはしなかった。
驚いた。
自分で言うのもなんだけれど、私はそれなりに魅力的な容姿をしているはず。アイドルとしてそれなりに人気を得ているのだから。
高校生の男の子の溢れる性欲なら、私を犯そうとするのが自然なはず。
でも彼は私の身体を好きなようにできるのに、自分からは手を出そうとしない。
私に魅力を感じてないのかと思ったら、そうではなく、私のことを魅力的だと褒めてくれる。
つまり彼は自分の欲望を抑制できる驚くべき紳士なのだろう。
なかなか興味深い人だと思った。
彼のモノになって私は変わった。
彼のことを大好きになった。
彼と一緒にいると心臓がドキドキする。
顔が熱くなる。
思考が乱れて正常に働かなくなる。
彼がいない時でも、いつも彼のことを考えてしまう。
彼にどう思われるか気になる。
彼に愛されたいと思ってしまう。
――彼に会いたくなる。
自分中心の世界が彼中心に変わった。
ファンに見られる私だけじゃなく、彼に見られる新しい私が生まれた。
私は彼の恋人になった。
彼はこう言った。
「俺に好きなように命令してください。できる限り従いますから」
つまり、彼は私の奴隷みたいなもの。
だから、私は彼の言葉に甘えて、彼を好きなように使うことにした。
彼に連絡を取る。
「今度の土曜日、私とデートしてくれる?」
「は、はい、喜んで!」
土曜日の昼下がり、穏やかな陽気の下で、彼との待ち合わせ場所に向かう。
足取りが軽い。ウキウキしている自分に気がつく。
これから彼と会えると思うだけでドキドキしてしまう。
彼の顔を思い浮かべながら歩く。
彼も私と会うことを楽しみにしてくれるかな?
私の服装は大人っぽいって言われることが多いけど、彼の好みに合うかな?
ドキドキするだけじゃなくて、不安にもなってしまう。
なんて不安定。
恋をするってこんなにバカみたいなことなんだ。
「先輩!」
待ち合わせ場所に着くと、彼がすでにそこにいた。
指定の時間より少し早く着くようにしてきたのだけれど、彼はそれよりも早く来てくれたようだ。
ちょっとしたことだけど、嬉しさが腹の中から湧いてきてしまう。
彼の顔を見ると、ドキドキと安心が、矛盾する感情が同時に襲ってくる。
「おまたせ、じゃあ行きましょう」
彼の肩に自分の肩を触れさせる。
ひとつ年下とはいえ、私より大きくてたくましい男性の身体を感じる。
本当ならアイドルがデートしているところを見られるわけにはいかないから警戒しなきゃいけないけど、彼の能力によってファンに見つかることは心配しなくていいらしいから、安心して恋人としてイチャつくことができる。
彼と身体が触れて、心臓が速く打っている。
彼に気付かれちゃうかな?
私が彼を誘ったのは、映画館。
映画デートって、定番じゃない?
それに映画鑑賞は私の趣味でもある。
でも、今日見るのは恋愛映画。
有名な俳優が起用された、内容よりも宣伝に力を入れてそうな、あまり私のタイプじゃない映画。
それでも今日この映画を見ようと思ったのは、彼とのデートだから。
私の好みじゃなく、ありふれた恋人らしいデートをしてみたくなったから。
アイドルである特別な私じゃなくて、ありふれた恋する女の子になってみたくなったから。
映画館に着く。
建物の中に入って、パンフレットを売店で買って、ネットで購入してあるチケットで入場して、暗い空間に入り、指定された席に着く。
画面が光り、長い宣伝映像の後で、映画が始まる。
映画の内容は、正直なところ退屈だった。
少し事情のある美形の男女が出会って、接近して、トラブルで一度は離れそうになって、でも最後には問題が解決して恋人になってめでたしめでたし、なんて誰でも知っているような物語。
こういう映画を私は見下していた。
世間の人たちはなんでこういうつまらない恋愛映画を見るんだろう。もっと素晴らしく芸術的な映画はたくさんあるのに。
でも、今の私にはわかってしまった。
映画の中の男女の恋愛を自分と彼に置き換えて見ると、二人の心が近づくことに嬉しくなるし、二人の間が引き裂かれそうになると、どうせハッピーエンドになるだろうとわかっていても胸が締め付けられてしまう。
みんなこうやって恋愛映画を見ていたのね。
時々隣にいる彼のほうを見る。
彼はどんなことを考えて映画を見ているのかしら?
私と同じようにドキドキしているのかな?
主役たちの恋が成就して映画が終わり、スタッフロールの終わりまで確認してから席を立ち、彼と並んで映画館を出る。
映画の余韻を感じながら、喫茶店に入る。
アイスティーを注文し、彼と向かい合い、映画の感想を語り合う。
「なかなか良かったですね!」
「……ええ、そうね」
彼は満足気な表情をしている。
私も同意する。
家で一人であの映画を見ていたら、つまらない映画だと言うところだけど。
そしてアイスティーを飲みながらあの場面の演技が良かっただとかあの演出は過剰だったとかの話をする。
映画は一人で見ても楽しいけど、人と感想を話し合うのもすごく楽しいもの。
それも、恋人と一緒ならなおさら。
楽しいデートの時間を過ごして、それから、二人でまた彼の家に行った。
誰にも知られない空間で二人きりになったら、愛し合う男女が何をするかは当然知っている。
「ちゅ……んっ……ちゅる……♡」
彼の部屋で彼と濃密なキスを交わす。
顔が熱くなり、頭がボーっとしてくる。
彼に愛されることしか考えられないバカな女になってしまいそう。
「ぷはっ……」
唇を離すと息が荒くなってしまう。
「ねえ、私とセックスしたい?」
彼に顔を近づけて聞く。
「は、はい……」
彼が頷く。
胸がキュンと高鳴る。
嬉しい。
彼にセックスしたいと思ってもらえるのが。
彼に女として魅力的だと思われるのが。
他の男性に性的に見られることは複雑だけど、彼に性的に見られるのは嬉しい。
女は我儘なものだと思う。
服を脱いで、私の裸身を彼氏に晒す。
彼の眼が私の身体に注がれるのがわかって、身体が熱くなる。
私の身体。
自慢じゃないけど、スタイルはいいと認識している。周囲の人もファンも褒めてくれるし。
胸は最近育ちすぎてちょっと邪魔だと思うくらいだけど、彼は私の胸が大きいのを褒めてくれるから胸が大きくてよかったと思うようになった。
見られるのには恥ずかしさもある。
でも、私はそれなりに自分に自信があるし、好きな人に見てもらいたい。
私の美しさで彼を圧倒してやりたい。
「先輩……」
彼はつぶやいて私の身体に手を伸ばす。
「っあ……♡」
彼の手が私の胸に触れる。
彼は優しい手付きと力強い揉み方を使い分けて的確にこちらを気持ちよくしてくる。
流されて、彼に身も心も投げ出して、自分からは何もしないで彼に気持ちよくしてもらいたいという思いが湧いてくる。
彼に任せればきっと最高に気持ちいいセックスを提供してくれる。
快楽の天国を味わわせてもらえる。
でも、それは嫌。
彼のことを好きだけど、彼に主導権を一方的に握られたくない。
年上だし、私は彼に対して優位でありたい。
女としてのプライドもある。男にやられてばっかりなのは情けなくて我慢できない。
だから、イかされる前に私は彼に言う。
「私が上になるわね」
彼の硬くなっている立派なモノを手で掴み、股間の割れ目に誘導する。
そして腰を下ろして身体の中に彼のソレを収める。
「~~~~~~っ♡♡♡」
気持ちいい。
勢いよく奥までモノを入れさせると、ものすごい痺れるような快感が襲ってきて思わずかわいく叫んでしまいそうなところをなんとか我慢する。
自分からおちんちんを入れてセックスの主導権を握ろうとしているのに、彼のおちんちんに与えられる快感に流されるわけにはいかない。
落ち着いて、おちんちんが膣に入っている状態に慣れて、腰を上下させはじめる。
「気持ちよくしてあげるからね、私に任せて……んっ♡」
動くと彼のおちんちんが膣内で擦れて、すぐ気持ちよくなって崩れ落ちそうになってしまう。
こんなの、おちんちんが凄すぎてずるい。卑怯。
こんなに気持ちよくされたら女の子は男の子にされるがままになってしまう。
でも、私は負けない。
気持ちよさをなんとかこらえて、身体を上下させる。
「うっ、奏先輩、気持ちいいです……」
私だけじゃない。
セックスで彼も気持ちよくなっている。
普段は優しい顔やキリッとした顔をしている彼が、いつも見せないようなだらしない顔をしている。かわいい。
その顔を見ると、少し余裕が出てくる。
私があなたのこともっと気持ちよくしてあげるからね。
「あっ、あっ、ふっ、はっ、ひっ♡」
腰を激しく動かして、膣で彼のおちんちんをゴリゴリ擦って刺激してあげる。
ちょっと気を抜くと気持ちよすぎて耐えられなくなってしまいそうだけど、負けたくないって思いで意識を強く持って我慢して動き続ける。
「あっ、あっ、あっ、せんぱい、奏せんぱいっ!」
「いつでもイっていいのよ。私の中で楽になりなさい」
彼の肩に手をかけて彼と向かい合って彼の表情、匂い、身体の感触、いろんなものを感じて彼に満たされながら交わり続ける。
「せ、せんぱいっ! 出ますっ!」
「いいわ! 中に頂戴!」
ドクドクと彼のおちんちんが脈打ち、私の中で精液を吐き出す。
私の膣が蠢き、愛する男の精液を貪欲に飲み干していく。
「ひっ、あっ、うっ……♡」
精液の奔流に耐えきれず、私の全身がビクンビクンと震える。
頭に電流が走り、イってしまった。
「奏先輩、あそこが締まって、いい……!」
「わ、私も、あなたのおちんちんが気持ちいい……♡♡」
性行為が終わった後は、披露と快楽の余韻と愛情が混じった、他では味わえない幸せな時間。
映画でもよくあるじゃない?
だからセックスそのものよりもピロートークに憧れてたりもしたわ。
「先輩、すごくよかったです……」
「そう? ならよかったわ」
今日は無事に私手動で彼をイかせることができた。
勝った、と思う。
彼のことが好きだし別に負けて何か問題があるわけじゃないんだけど、彼に対して優位に立っていたい、彼に私のことを畏れてほしい、先輩らしく上でいたい。
そのためには、強い私でないといけない。
彼を圧倒できるほど誰よりも美しくなって、セックスももっと上手くならないと。
アイドルとして成長して、人間としても知的で品位のある存在になりたい。
そう考えると、彼のおかげできっと私は成長できる。
「奏先輩。好きです」
「私も、あなたのことが好きよ」
裸でベッドの上で絡み合って彼の暖かさを感じながら思う。
彼を好きになってよかった。
アイドルマスター
レベル12→15
スキル「身体強化」を習得しました。
効果:発動すると一時的に身体能力を向上させることができる。