三万までなら出すから花苗のパンティをくれと言った、この変態少女である清水葵は財布を取り出すと、本当に三万円をチラッと見せてきた。
「なぁ、昨日から誰かにつけられている気がしたんだけど、もしかして......君だったのか?」
「そうだよ。さすがは花苗のお兄さん。気づいてたんだ」
「なら、どうして昨日、話しかけて来なかったんだ?」
「途中までお兄さんをつけてたんだけど、油断して見失っちゃったんだ。結構、尾行って大変なんだよ?」
というか尾行すんな。そう言いたくなったがグッと堪えた。あくまで俺は彼女と冷静に話し合うつもりである。
「そ、そうか。それで、さっきの続きだが、その......花苗のパンティが欲しいっていうのはその......何に使うんだ?」
聞くのも恐ろしかったが、気になって質問してしまった。
すると葵はキョトンとした顔をし、首を傾げた。
「え? そりゃぁ、食べようと思って」
「ハァ!?」
俺は思わず大声を出した。狂っている。こいつは狂っている。
「ほら? パンツという単語には『パン』という単語が含まれているでしょ。つまり......パンティはパンの親戚ということだ! これを食べないわけがあるだろうか? いーや、ない!」
力説する葵に俺は恐怖心を抱き始めていた。
俺の様子を見て、葵は恥ずかしそうにコホンと咳払いした。
「というのは、お兄さん。半分冗談で」
「は、半分!?」
半分でも十分ヤベェだろ。
「私......花苗のことが好きなんです! 恋愛的な意味で。性的な意味で。エロ目的な意味で!」
おいおいおい、どんどん悪い意味になってるじゃねぇか。
「お前......よく、それを仮にも兄である俺の前で言えるな」
初対面の人間に対して、思わず『お前』呼ばわりしてしまった。
「ええ。お兄さんにちゃんと話さないと......花苗のパンティを譲ってもらえないと思ったから!」
葵は俺を真っ直ぐ見つめ、とても熱い思いを語ってくれた。
「うん。感動シーンっぽく言ってもダメだ。花苗の友達とは言え、妹の下着は勝手に渡せん」
俺は葵に対して、正論を述べた。
「そ、そんなぁ......お兄さんばっかりずるい! 好き放題、花苗の下着をクンカクンカスーハースーハーできるなんて! この世の中は不平等! 今すぐに通りすがりの世界の破壊者にでも生まれ変わりたい気分!」
そんなくだらん理由で世界が破壊されてたまるか。とっとと通りすぎろ。
「し、してねーし! そんなこと!」
嘘です。昨日しました。すみません。
「えー本当ぉ?」
葵は訝しんだ様子で俺のことを見つめた。
「ほ、本当だ! それより、何だってそんなに花苗のことが好きなんだ? その......女なのに。もしかして同性愛者ってやつか?」
「いや違うよ。私が女で好きなのは花苗だけ」
葵は即、自身に向けられた同性愛者説を否定した。
「なんで花苗のことを?」
「少し思い出話をいい?」
突然の提案に、俺は少し戸惑った。
「あ、ああ......」
すると、葵は感慨に耽ったかのような表情をしだした。
「今からおよそ一週間前のこと。私はここの家に遊びに来たの。お兄さんは私が家に遊びに来たのに気づいてた?」
「一週間前? うーん......」
先週か。そういえば誰か来てたような気がする。あまり覚えてないが。基本、部屋に引きこもってるし、気づかなくても不思議ではない。
「悪い。覚えてないわ」
すると、やや不満そうな顔をしながらも、葵は話を続けた。
「まぁ、いいや。遊びに行った日。花苗と一緒にゲームして遊んでたんだけど、花苗が『ちょっとシャワー浴びてくる』って言ったんだ。せっかくだし、私も一緒に浴びることにしたんだ」
「ほ、ほう......」
友達と言えど、一緒にシャワーを浴びるもんなのだろうか。よく分からないが、女子同士ならあるのか?
「それで一緒にお風呂でお互いの裸を見せ合った訳だけど......花苗の身体はヤバかった。すごいエロかった。えへへへへ......」
葵はニヤニヤと気持ちの悪い笑みをこぼした。どうやら、妄想の世界に行ってしまったようである。
「そ、そうか......」
「い、一緒に......身体を洗いあったり......ハァハァ......お互いにおっぱいを揉み合ったり......ぐへへへ......そうこうしているうちに私は目覚めた」
目覚めてしまったかぁ。これで見事な変態の誕生な訳か。
「あの日以来、私は花苗のことを好きになったの。押し倒したい......身体を舐め渡したい......一緒にえっちぃことをしたい......エトセトラ......そう考えるようになった」
「な、なるほど......」
やばい。聞いてて少し気分が悪くなってきた。
「お兄さん! この熱い思いを聞いたのだから、私に花苗のパンティをください! 出来れば二、三日洗ってないのを譲ってください!」
俺は息を大きく吸い込んだ。
「渡す訳ねぇだろ!!!」
俺は思いっきり葵にツッコミを入れた。
「そ、そんななぁ......」
葵はがくりとうなだれ、絶望に打ち砕かれたような表情をした。もし、葵がゲートならば、きっとファントムが生まれていただろう。
まぁ、俺はこいつの希望になる気はないが。
「当たり前だろ......」
「仕方ない。ところでお兄さんの部屋に小さな穴ってある?」
葵の言葉に俺はドクンと心臓の鼓動が高まった。顔が引きつっているのが自分でも分かる。
「その反応。気づいていてたかぁ」
葵は不気味な笑みを浮かべた。
「お、お前......」
「そう。あれは私が花苗がいない時を見計らって開けたもの。結構小さな穴なので、気づいていないのかもしれないと思ったけど、どうやら気づいていたみたいだね」
「......」
「お兄さん、穴の中覗いた? 花苗のプライベートなシーンを覗き見したんじゃない?」
「そんなこと......ないよ」
「そうかな? なーんか、嘘っぽいんだよね。実は今日はパンティが欲しいというのは建前で他にお願いしたいことがあるんだ。いや、パンティも勿論欲しいんだけど」
「な、何だよ?」
「これをどうぞ」
すると、葵は小さなペンのような物を出した。俺はそれを受け取るとじっくりと観察した。
「何だこれ?」
「カメラだよ」
驚くべき事実を葵は伝えた。カメラだと.....
「カメラ!? これで何をしろっていうんだ」
「決まってるでしょう? それで存分に花苗を撮影してほしいんだ。部屋での花苗の姿をね。これ、結構ハイテクで小さいのに広範囲で撮影できるんだ。撮ったデータを私にも見せてほしいんだよね」
「そんなこと......できるわけないだろう!」
盗撮なんて最低な行為である。覗き見ももちろん最低な行為だが。
ああそうか。もう手遅れか。
「そうかな? お兄さんなら絶対に撮影すると思うんだけどな。まぁ、とりあえず渡しておくから気が向いたら撮影してみてよ」
返そうと一瞬思ったのだが、心の中にいる悪魔が「これを使え」と誘惑してくるようで、返す気が無くなってしまった。
「ぜ、絶対に使わないからな......」
「そっかぁ。まぁいいや。それよりお兄さん。今、うちの人いる?」
「いや、今は両親が旅行に行ってるからいないけど......」
両親は今日の夜遅くに旅行から帰ってくる予定である。おそらくは九時過ぎに帰宅すると思われる。
「花苗の言う通りだ! それじゃ、お兄さんの部屋に行っていい?」
「はぁ? 何でだよ?」
「ちょっと、確かめたいことがあって。お願い!」
葵は手を合わせ、懇願してきた。さっき渡したカメラでちゃんと撮影できるか確かめるのだろうか。
だとしたら、ちゃんとチェックしてもらいたい。情けなくもそんな考えが浮かんでしまった。
「しょうがない。ちょっとだけだぞ......」
悩んだ挙句、俺は葵を自分の部屋に上げることにした。
そう言えば、女性を自分の家に上げるのは生まれて初めてである。
「おー、あるある。この穴!」
葵は懐かしそうに自身が開けた穴を優しく撫でた。
「それで、何を確認するんだ?」
「別に確認するものなんてないよ」
葵があっけらかんとした様子でそう答えた。
「はぁ?」
「あ? もしかして、さっきのカメラでちゃんとこの穴から花苗のこと撮影できるか確かめるって思ってた? やっぱり盗撮したいんだね。エッチだなぁ、お兄さんは」
「ち、違う! そんなことは......」
「それよりさ、今思いついたよ。確かめたいこと......」
「え? 何だよ、それ」
すると、制服を来ていた葵はスカートを捲り上げた。葵の細く綺麗な脚と髪の色とお揃いの可愛らしい水色のパンティが露わになった。
「な、何してんだ!」
「私さ......お兄さんとの身体の相性を確かめてみたいんだよね。だから......エッチしよう? お兄さん」
葵の言葉を聞いて、身体の奥底から自分の性欲が湧き上がってくるようだった。