放課後の黄昏時、カラスがカーカーと鳴いているのが聞こえた。
葵で出会った日から三日が経過し、俺は今、図書館にいた。
最初こそ、テスト勉強頑張るぞ! と息込んでいたのだが、一時間ほど勉強したら飽きてきていつの間にか、図書館に置いてあったラノベを読み耽っていた。
うちの高校の図書館では、ラノベが置いているのである。
気分がてらに少しだけ読むつもりだったのだが、思いの外、面白くて長時間読んでしまった。
おかげで勉強の進捗はほとんどなかった。どうしよう。
まぁ、とりあえずは次の巻を読んでから考えることにしよう。
本棚に向かい、次の巻を探した。お目当のライトノベルは日本小説のコーナーにカテゴライズされており、結構、上の段に置いてある。
「うーん、うーん......」
俺の丁度後ろでは背伸びをし、本を取ろうとしている女子生徒がいた。
その女子生徒は栗色の髪をポニーテールで束ね、メガネを掛けていた。真面目そうな感じの生徒で可愛らしい小動物のような印象を受けた。
すると次の瞬間、バタバタバタという何かが崩れ落ちる音がした。
「きゃぁ!」
女性の悲鳴も聞こえ、振り返すと、本取ろうとした女子生徒が尻餅をついており、周りには何冊かの方が散らばっていた。
おそらく、本を取ろうとしたら、近くに置いてあった本も一緒に崩れ落ちてしまったのだろう。
「あ、あの......大丈夫ですか?」
俺は心配になり、その女子生徒に声をかけた。
「はい、大丈夫です。すみません」
そういうと、女子生徒は立ち上がり散らばった本を持ち、元の位置に戻すべく、再び苦しそうに背伸びをした。届きそうで届いてない。その様子を見ていて、何だか可愛らしく思えた。
「ちょっと貸してください」
俺は戻そうとしている本を取り、女子生徒の代わりに本を元の位置に戻した。
「あ、ありがとうございます」
女子生徒がやや面食らった様子でお礼をしてきた。
「気にしなくていいですよ。残りも俺が戻しておきます」
「す、すみません......」
女子生徒はぺこりとお辞儀した。他の本も戻してあげた。
俺は背が無駄に高い。身長は百八十くらいである。
小柄なこの女子生徒よりも俺の方が楽に本を戻すことができる。
全部戻し終えたあと、後ろの棚に置いてあるラノベを取った。
「それじゃ、失礼しますね」
そう言い、先ほど座っていた椅子へと向かうことにした。
「ほ、本当......ありがとうございました!」
その後、当然のごとく勉強などすることなくラノベを読むことになった。
「やべぇ、すっかり遅くなっちゃったな......」
窓の外を見ると、すでに暗くなっていた。壁に飾っている時計は夜の七時前を指している。
「さてと、帰るか」
俺は読んだラノベを元に戻すため、本棚に向かった。
ラノベを元に戻すと、反対側の本棚の下で何か長方形で小型の物体が落ちているのに気が付いた。
手に拾うと、それがスマホであることが分かった。
「もしかしてさっきの子のものか?」
スマホを手に持ち、辺りを見渡した。しかし、さっき出会った女子生徒らしき人影は見当たらなかった。
すでに帰ってしまったのだろう。しょうがない。明日来ることにかけて明日にでも渡すか。いや担任の先生にでも渡せばいいか。
俺はそのスマホを持って、帰宅することにした。
食事と入浴を冷まし、冷蔵庫にある紙パックのオレンジジュースを取って、部屋に移動した。
腰に手をあて、ごくごくごくとジュースを喉に流し込んだ。
「あーうめぇ......」
机の椅子に座った。風呂上がりに飲むジュースはどうしてこんなに美味しいのだろうか。
ふと図書館で拾ったスマホに目が言った。悪いとは思いつつ、興味本位で電源をつけてみた。
すると、七時四十分ころから八時半ころの間に着信が十件以上来ているのが通知画面から確認できた。
丁度その頃、スマホを部屋に置き、食事や入浴をしていたため、全然気がつかなかった。
というか、めっちゃ着信が来ていて怖い。
そう思った瞬間、突然メルヘンチックな音楽が鳴り響いた。可愛らしいメロディであるのだが、さっきの通知画面を見たせいでかなり怖くなった。
着信ありのシーンが想起されてしまった。
恐る恐る俺は電話に出た。
「......もしもし?」
俺は尋ねると、
「あなたは誰ですか?」
図書館で出会った女子生徒の声がした。
「えーと、今日図書館で会った......佐藤慎也って言います」
「佐藤慎也......」
その女子生徒はポツリと俺の名前を呟いた。
「ほら本棚が崩れた時に会ったあの時の」
「ああ。あの時の方でしたか」
思い出したのか声色が明るくなった。
「そうそう。帰る前、スマホ落ちているのに気づいたから明日、先生にでも渡そうと思って家に持って来たんです。勝手になことしてすみませんでした」
「そうでしたか。こちらこそ常々、すみません。私、秋口美穂(あきぐちみほ)って言います。四季の秋に、口舌の口、美しいの美に稲穂の穂って書きます」
秋口という女子生徒はご丁寧にも読み方まで教えてくれた。
「そ、そうなんですか。秋口さんは僕と同じ二年生ですか?」
「はい、私も二年生です」
二年生と聞いて、少し安心した。他学年ならスマホを返しに教室に行きづらいが、同じ学年なら返しに行きやすい。
「そうでしたか。それじゃ明日教室に返しに行きますね。何組ですか?」
すると、どういうわけか秋口は黙りこくってしまった。
十秒ほど沈黙が続き、気まずくなった俺は口を開いた。
「あの......秋口さん?」
「あ! すみません! えっと......クラスは三組なんですけど、その......昼休み、図書館で返しに来てもらっていいですか?」
「え......はい。いいですけど......」
朝返せばいいのでは? と思ったが本人がそうしたいというなら、拒否する理由はない。
「昼休みに図書館ですね。了解しました」
「あの、佐藤さん。スマホの中は確認してないですか?」
突然の質問に俺は戸惑った。
「ええ、はい......」
「よかった......あの、決してスマホの中を覗かないで欲しいんです! お願いします!」
電話越しからでも分かるほど大声で頼んで来たので、思わず驚いた。
「わ、分かりました......」
「ありがとうございます! それじゃ、明日よろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそ。それじゃ、失礼しますね」
俺は電話を切った。
スマホを手に持ち、バタンとベッドに横たわった。
スマホの中を覗かないで欲しいか。
気持ちは分からないでもない。誰だって知られたくないことに一つや二つはあるだろう。
しかし、もしかしてこのスマホは......
俺はスマホの電源を入れて見た。スライドすると、ロック画面が出ることなくログインすることができた。
「ええ!?」
驚愕した。まさか、スマホにロックをかけていないとは。無用心にも程があるだろう。
なるほど。だからこそあれほど強く中を覗かないで欲しいと言ったのか。
電源を切るかな。
そう思ったが、つい間が差してしまい、見てみることにした。
LINEの履歴や他のアプリも見てみたが、特にこれといって変わったものはない。
何がそんなに見られてまずいのだろうか。
まだ見てない写真・ビデオのアイコンを触った。
フォルダは丁寧に振り分けられており、カラオケ会、クラス会などという項目がある。中を見ると、楽しそうな秋口の様子が写った写真がビデオが見つかった。しっかりと人付き合いしているようである。
その中で秘密という謎の項目があった。タップすると、信じられない写真やビデオが表示された。
「これは......」
写真をタップすると、美穂が全裸姿で股に本を挟んでいるシーンや、胸に本を押し付けている写真。本をいやらしい表情で舐めているシーンが表示された。
制服姿からは想像できなかったが、かなりの大きさの果実である。とても柔らかそうだ。肌白いその綺麗な裸体は十分すぎるほど俺のおかずになるものだった。
ビデオを再生してみると、
「あん! あん! イっちゃう! 本でイっちゃう!」
本の角に秘部を押し当て、オナニーしている様子が再生された。本でオナニーする人なんてこの世にいたのか。それにしても耳がトロけるほどエロい声だった。
俺はその後も秘密フォルダにある写真、動画を飽きることなく鑑賞し続けた。