綾小路清隆の非日常 作:Dirac
綾小路清隆です。穏やかな春陽に祝福された私も今日から高校生。新しい生活に不安と期待で一杯です。
しかし運気は良くない模様。窓際後方の所謂主人公席になったのですが、隣人の社交性がマイナスに振り切れています。これでは友達ネットワークの発展性が見込めません。
陰キャには厳しい孤立席、それが主人公席。とはいえ、教室の真ん中でボッチになったら目も当てられない悲惨な状態となっていたでしょう。最悪は免れたということで納得するしかありません。
ところで、やけに饒舌な私に戸惑う読者もいるかもしれませんね。メタ? はて、なんのことやら。
こうして徒然なるままに綴っているのには重大な理由があるのです。
――実はさっきから勃起がおさまりません。
生まれてこの方特殊な環境で育ってきた自覚はあります。
常人が一生をかけてもたどり着けない境地に至ることができた。その点については恵まれた環境と言って差し支えないのですが、問題は生活の全てが監視されていたこと。これに尽きます。
どれだけ情報を制限したとしても、身体は年相応に成長していくわけでして。監視下ではおちおち処理もできません。
性的に抑圧された環境に嫌気が差したというのが、この学校に逃げ込んだ理由の実際のところです。
そんなこんなで漂着したこの学校ですが、これまた結構な特殊環境であることが伺えます。
……え? 監視カメラのことなんでどうでもいいんですよ。
それよりもっと気になることがあるでしょう?
そうです。女子がチンコに訴えてくるのです!
女子たちかわEEEEEEEEE!!!!
ホワイトルームの女子は素材は良くても飾り気がありませんし、私を崇拝してくるか憎悪してくるかの二極化でしたから、そういう視線では見ていませんでした。
つまりなんというか、未だかつてない膨張率でして……。ぶっちゃけ噴火寸前です。
……こんな経験は初めてで、どうしたら良いのかよくわかりません。今はとりあえず、バレないように机に張り付いています。
「次は、そこの君」
「え゛」
「自己紹介、お願いできるかな?」
詰んだ。ぼっちルートか変態ルートか、まるで脳内選択肢です。
他の人が立って自己紹介してる中で、この体勢でやるのは感じが悪すぎます。とはいえ立ち上がれば公然猥褻同然、人生が終わってしまう。これが、完全なデッドロック状態ですか。
「綾小路清隆です。今朝足を挫いてしまって、座りながらですみません。趣味は散歩です。よろしくお願いします」
「よろしく、綾小路くん。足の方は大丈夫そうかい?」
「ええ、しばらく安静にしてれば治りそうです。心配してくれてありがとうございます」
なんとか乗り切りましたね。入学早々残念な子だと思われたかもしれませんが、詰むよりマシです。
遊びの予定が各所で乱立しているようですが、私のスケジュールは空白です。移動に支障が出る私を誘わないのは、興味の欠落と多少の気遣いといったところでしょうか。持続的なハンディキャップではなく一過性のものですから、反差別的意識が働くこともありません。安静にと、その気遣いに涙が出ますよ。つらい。
ともあれ、新生活はマイナススタートを余儀なくされました。
荒ぶる息子の対策を早急に練らなければなりませんね。