※この作品はR-18です。

異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~   作:室谷 竜司

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Prologue. 使命を果たしたので元の世界に帰りたい
俺は現代日本から異世界に召喚された勇者です。中身はただの2次オタですけど……


「ふむ、まさか本当に人間族と魔族が和解できる日が来ようとはな。ここ数千年ほど魔族の長として様々な経験をしてきたつもりだったが、ここまで驚かされたのは何時ぶりだろうな」

 

「私も、驚きを隠せんよ。まったく、あやつは一体何者なのだ」

 

「ハハハ、彼奴は勇者だろう。それも、お前たちが召喚したというな」

 

「そうなのだがな。流石に、ここまでのことを成し遂げるとは私も思っとらんかったものでな。もはや、神を疑うぞ、私は」

 

「違いないな」

 

 そう言ってガハハと笑い合う者がいた。片方は白髭を蓄え少々肉付きの良い腹を抱えた齢60ほどの男。もう片方は、黒く輝く角を左右の側頭部から一本ずつ生やした細身で長身のイケメンだ。

 

 この世界には人間族と魔族とが混在している。かつては互いに手を取り合い共存していたようだが、長い年月の中で互いの異なる特徴を疎ましく思い始め、やがて対立してしまったとのことだ。誰しも、自分とは明らかに異なる存在に対して、少なからず悪感情を向けてしまうものらしい。それは、どんな時代・どんな世界だろうと変わらないもののようだ。

 

 そして、とうとう人間族と魔族との戦争が始まろうとしてしまっていた。互いの滅ぼし合いは、時に世界の均衡をも崩してしまう。神はそれを許さなかった。

 

 そうして、神の手によって別の世界から救世主が呼び出されることとなった。もちろん、強制的に、である。

 

 

 

 その救世主って言うのが俺のことだ。丁度、人間族側の勇者召喚の儀式に被せるようにして、現代日本から強制的に異世界に送還されてしまった。

 

 勇者として異世界に降り立つ直前、俺は神域という場所で神と対面した。

 

「おいっ、何故俺なんだ!?」

 

「異世界召喚とか、えっと……オタク文化と言うべきですね。こういったことにある程度詳しい方を選定させていただきました。そして、それだけでなく、基本能力値の高い方、という制約付きで」

 

「俺、そんなにスペック高くねぇぞ? オタクなのは認めるけどさ……」

 

 そこで神といろいろ問答をしたのは、今でもよく覚えている。

 

 俺こと霜崎(しもさき) (りょう)は、元々現代日本でサブカルチャーを人知れず嗜んでいた。まぁ、オタクだったわけだ。

 

 このオタク趣味に目覚めたのは俺がまだ小二の頃だった。これは、多分……というか絶対に父親の影響だと思う。

 

 俺は元々他人とかかわるのが嫌いだった。だから、いつも一人だった。一人でいることが一つの幸せだった。

 

 だが、父親はそんな俺の様子を見て寂しがっていると勘違いしたらしい。んで、気晴らしに何故かアキバまで連れていかれた。今思えば、俺の気晴らしを口実に自分がアキバに行きたかっただけなんじゃないかとも思ったりしているんだけどさ。

 

 しかし、当時の俺はちょろいもんで、様々なサブカルグッズに目を引かれていた。どうやら俺も、父親の血を色濃く受け継いでいたらしい。

 ものの数十分で、俺はオタク文化に屈服してしまった。

 

 それから俺は、自分で調べたり父親からの紹介を受けたりして数多のラノベ・漫画・アニメ・ゲームに手を伸ばした。もちろん、様々なジャンルを満遍なくだ。父親も、小学生にしてオタク文化にどっぷり浸かってしまった俺に何故か喜びの感情を覚えたらしく、小遣いも弾んだ。

 

 ただ、こうしてオタク文化に興味を持つということが回りの人間からは良く思われないことなのだと本能で理解していたみたいで、俺はこの趣味を他人と共有することはなかった。もっとも、趣味の共有以前に友人など一人もいなかったのだが。

 

 さらに、二次元のキャラクター、特に女性のキャラクターに心を奪われ、二次元の物語こそが正義だと思い込むようになり、自分の実生活に何の価値も見出すことができなくなっていった。そう、所詮リアルなんていうのは俺がオタクライフを満喫するための舞台でしかないのだ。

 

 俺が小学校を卒業する頃には、俺の考えは既に凝り固まってしまっていた。結局、小学校の六年間で友人は愚か、他人との会話すらろくになかった。

 

 俺はオタクライフに全力を注いでいたのだ。

 

「いえいえ、ご謙遜なさらなくても良いじゃないですか。その類稀なる集中力と記憶力、普通の人間じゃ真似できませんよ」

 

「そうか? 趣味に没頭するのは当たり前だし、今まで読んだラノベや漫画、見てきたアニメ、プレイしてきたゲームの攻略法を忘れるなんてオタクとして有り得ねぇだろ」

 

 異世界召喚の際、神からそんなことを言われたな。

 俺は何を当たり前のことを的な感じで否定したけどさ。

 

「確かに、趣味に対する力が大きいのは誰しも同じことだと思います。しかしながら、貴方はそれを趣味以外でも発揮していらしたじゃないですか。他にもありますよ。例えば、頭の回転……とかでしょうか?」

 

「あれは、推理が絡んでくる作品とかも好きだったからな」

 

 自分が作品の中の主人公たちと一緒になって謎を解いたりするのはとても楽しかった。そのおかげで、頭の回転は速くなったと思う。だが、これについても俺と同じ趣味を持つ人なら誰だって同じことだと思う。少なくとも、当時はそう考えていた。

 

「それに、身体能力も高いじゃないですか」

 

「そうか? 人並みだと思うが……」

 

「普通の人では、アニメに出てくるスーパーヒーローの真似なんてできませんよ。貴方は、道端で空中連続縦回転をする人を見かけたことがありますか?」

 

「……」

 

「普通の小学生が、アニメのネタで使われた一流大学の試験問題を解くことができますか? しかも、文系・理系どちらもです」

 

「……」

 

 その時、何となく察したよ。俺がこれまでオタク文化をエンジョイする中で身に着けた能力は、常人では辿り着けない域のものだったのだとな。まさか、その事実を小学校卒業式後の春休みに無理矢理異世界に召喚される直前に神から教えられるなんて思ってもいなかったけどさ。

 

「と、とにかく分かった……。で、でもさ、俺まだ小学校を卒業したばかりなんだぞ? こんなガキよりも、もっと大人の方が良いんじゃないの?」

 

「いえ、貴方は既に大人顔負けの感性をお持ちのようですからね。それに、貴方は容姿も整っているので、きっと、異世界で女の子たちに好かれること間違いなしですね。良かったじゃないですか、ハーレムですよ? しかも、合法的に」

 

 この時、俺の心は揺らいでいた。あの神様、多分俺の特に好きなジャンルとかも全部お見通しだったんだろうなぁ。

 

 お察しの通り、俺は当時ハーレム物とかにはまっていた。それも、異世界の獣耳少女がたくさん出てくるようなやつにな。

 

「まぁ、こちらも無理矢理貴方を召喚してしまったことには罪悪感を感じています。なので、異世界でもなるべく貴方が自由に動けるよう、私の思いつく限りの能力を授けます。あと、貴方が異世界にいる間の現代世界のつじつま合わせもこちらで行っておきます。これでも、やはり納得していただけないでしょうか……?」

 

「い、いや……、ちょっと家族が心配だっただけで、そこら辺のフォローをしてくれるって言うならまぁ別に良いんだけど……」

 

「家族にはお優しいんですね」

 

「まぁ、そりゃあね」

 

 俺には父親しかいない。母親は俺が物心つく前に亡くなった。だから、母親の顔すら知らない。だけど、それでも俺をこの世に産んでくれたたった一人の母親だ。顔は知らなくとも、その存在を頭から放したことはない。

 

 それに、父親もこれまで俺のことを育ててくれたんだ。大切じゃないはずがないだろう。そんな父親を心配させずに済むなら、俺は異世界召喚でも何でもやってやろうと思った。だから、俺は承諾した。

 

「では、ご武運を」

 

「ああ、行ってくる」

 

 そうして俺は、神様から多くの特殊能力を授かって、念願の異世界へと足を踏み入れた。チートがん積み召喚勇者なんてのは、最近のラノベじゃありきたりな内容だけど、実際に自分がその立場になるって考えると気分は高揚した。

 

 少なくとも、当時の俺はそう考えていた。

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