異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
しばらく二人で抱き合いながら乱れた息を整えていたのだが、呼吸が正常に戻るや否や密着したユリシアのお腹からきゅるると可愛らしい音が聞こえてきた。俺がユリシアの顔を覗き込むと、ユリシアは恥ずかしそうに顔を赤らめ俺から視線を逸らしていた。
心無し頭頂部の狐耳も力なく垂れているように見えた。うん、この反応だけでも今の腹の音はユリシアから発せられたものだということがよく分かる。まぁ、空腹感を覚えるのも仕方ないだろう。まだ朝食も済ませていないのだし。
それに何より、昨晩からぶっ続けで何度も絶頂しているのだから、身体がエネルギーを欲しているのは当然のことだろう。腹の虫こそ鳴っていないが、俺も今途轍もない空腹感に襲われているところだ。
「流石に腹減ったよな。そろそろ着替えて下行こうか」
「う、うん……、そうだね……」
ユリシアの同意を得た俺は、ベッドから起き上がるために一度ユリシアの身体から腕を放した。それに合わせてユリシアも俺の身体に回していた腕を解いてくれるかと思ったのだが……、ユリシアの腕に籠った力は一向に緩まる気配を見せない。というか、少しずつ強くなっていっているような気さえする。
「ユ、ユリシア? その……、放してくれないと着替えできないよ?」
「んうんん……」
俺が挿声をかけても、ユリシアはいやいやと首を横に振りながら俺の胸に顔を押しつけてくるばかりだ。かなり頑なな態度だったので、無理矢理引きはがすのは少し躊躇われた。ひょっとして、腹の虫が鳴ったのを俺に聞かれたのが相当恥ずかしかったのかな?
そう考えた俺は、優しく諭すようにユリシアの頭を撫でる。なんか俺、事あるごとにユリシアの頭を撫でているような気がする。手に触れるふわふわの狐耳やさらさらしたユリシアの金髪がとても心地良いので俺としては何時まででも撫でていたいのだが、ユリシアが内心嫌がっていたらどうしよう……。
と思ったのだが、俺が頭を撫でるとユリシアの狐耳がぴょこぴょこ跳ねだしたので、俺の心配事が杞憂であることはすぐに理解できた。うん、良かった良かった。
「ユリシア、恥ずかしいのか? 大丈夫、あんなの空腹時の生理現象なんだから」
「わ、分かってる。わたしももう気にしてないから」
「えっ? じゃあどうしてそんなに嫌がってるのさ。イチャイチャなら何時でもしてやるぞ? だから、とりあえず下降りて父さんの作ってくれた飯一緒に食べようぜ? きっと父さんも腹空かして待ってるよ。待たせるのは申し訳ない」
「それも分かってる……。でも……、リョウがちゅーしてくれるまで放さない」
そんなユリシアの言葉を聞いた俺は、思わず吐血しかけた。何だ、今の破壊力……。この狐娘、俺のこと萌え殺すつもりじゃなかろうな? 流石に嫌だぞ、恋人になって早々死ぬのは。
「キ、キスしてほしかったの?」
「うん。まだ起きてからちゅーしてない。だから、したい。リョウとおはようのちゅー、したい」
おねだりがいちいち可愛いなぁ。それに、おはようのキスとかまさしく恋人っぽいよな。ちょっとテンション上がる。きっとユリシアも期待していたんだろうな。
そう考えると、本当に申し訳ないことをしてしまったな。きっとユリシアは、何より最初にキスを求めていたのだろうが、俺はそれよりも先にお仕置きという体でユリシアと肌を重ねてしまった。
流石に性欲のままに突っ走りすぎたな。何処かで、ユリシアだからなんだかんだ喜んでくれる、と高をくくってしまっていたのかもしれない。ちょっとこれは反省しないとな。
「ごめん、まず最初にするべきだったよな。なのに俺、自分の性欲をコントロールできなかった」
「い、良いの。わたしも、朝からリョウとエッチできて嬉しかったから♡ それに、順番なんて関係ないよ。リョウとキスできれば、それだけで幸せだから♡」
「お、おう、それなら良かった。俺も嬉しいよ」
ストレートなユリシアの好意にドキドキしながらも、俺は一度解いた腕を再びユリシアの身体に巻きつけた。
「ユリシア、顔上げて」
「うん♡」
俺の言葉に応じ、ユリシアが顔を俺の胸から放しこちらを見上げてくる。俺はそんなユリシアの上気した頬に片手を添え、ゆっくりと自分の顔を近づけていく。大きな碧の瞳に吸い込まれるような錯覚を覚えながら。
「んんっ……♡」
そうして互いの唇が柔らかく触れた。昨日も何度か味わった甘い感覚に、俺の胸の奥がじんわりと温かくなる。性行為のような激しい愛情の確かめ合いももちろん好きだけど、こうして優しく触れ合って二人の愛を確認するのはロマンティックで素敵だ。
俺って思ったよりも思考が乙女チックなのかもしれない。少女漫画みたいな恋愛には憧れていたし。
心の中でそんな自分に苦笑しつつ、俺は唇に全神経を集中させてユリシアの小さな唇をじっくり味わっていた。……この表現だとかなり変態臭いな……。
「んんんっ……♡ ちゅっ……♡ えへへ……♡ 改めておはよう、リョウ♡」
「ああ、おはよう、ユリシア」
やがて互いに唇を放し、視線を合わせてちょっと遅めの朝の挨拶を交わし合った。こんなやりとりもくすぐったくはあるけど悪くない。むしろ最高だ。
ユリシアも満足気な笑みを浮かべながら、先ほどまで俺の唇と触れ合わせていた自らの口唇に手を当てていた。そんなユリシアの全身からは幸せオーラがこれでもかというほどに漏れ出しており、そんなユリシアが愛おしくて俺の頬も自然と緩んでいた。
「ねぇ、リョウ♡ ディープキスもしようよ♡」
「いや、それはダメ。止まらなくなるから」
「むぅ、分かった。我慢する」
そう言うとユリシアはようやく俺の身体に巻きつけていた両腕の力を緩めた。そして、少し名残惜しそうな表情をしながらもベッドから降りた。
「うわぁ、汗とか涙とかえっちなお汁でぐちょぐちょだぁ……。ベッドもすごいことになってるし……。あ、リョウも一緒に綺麗にしてあげるね、クリーン……」
「おっ、ありがとうな、ユリシア」
「えへへ、どういたしまして♪」
ユリシアは自分の身体やベッドシーツに浄化魔法をかけ終わると、そのまま俺の身体も清めてくれた。
それからユリシアは、ベッドの上や床に散らばっていた自分のパジャマを集め、それを一つずつ畳み始める。こちらに頭を向けてしゃがみ込み、床に広げたピンク色のパジャマのズボンを綺麗に折り畳む。
現在、ユリシアは全裸である。そんな状態のユリシアがこちらを向いてしゃがみ込み下を向けば、当然その大きな二つの膨らみが重力に引っ張られてぷるんと舌に垂れてしまっている様子が俺の視界に飛び込んでくる。
さらに、両脚を少し開いているので、股の付け根にある女性器までもが丸見えだった。少し半開きになった秘裂の奥はまだ少し膣分泌液で潤っているようだった。
何というか、無防備極まりない。俺以外の男の前じゃ油断した姿など見せないだろうからその辺は心配していないのだけど、昨日一緒に風呂に入った後からユリシアが俺に対して恥じらいや躊躇いをあまり見せなくなってしまった。流石に放尿を見られたのは堪えたみたいだけど、結局その後ケロッとしてたしな。
何処となく開き直っている感じがした。今なら多分、俺の目の前でも平然とオナニーし始めるんじゃないだろうか。純粋なユリシアはもういないようだった。少し寂しくはあるけど、俺に全てをさらけ出してくれるのはとても嬉しいと思えてしまうから何とも複雑な気持ちだ。
「よし、これで良いかな。ボタンつきのお洋服っておしゃれだけど、ちょっと面倒くさいね。特に、こうやって畳む時とか」
「まぁ、そうかもな。俺は基本的にハンガーにかけるようにしてるよ」
「へぇ、そうなんだ。確かに、その方が楽だよね。……っと、パンツは何処にやったっけなぁ……?」
「ユリシアの後ろに落ちてるよ」
「んえ? あ、ホントだ。ありがとう、リョウ。んしょっと」
ユリシアがくるりと身体の向きを変え、床の上にぽつんと放置されていた白パンツを拾い上げる。それから、さっとその場から立ち上がり片脚ずつその白パンツに脚を通していく。もちろん、こちらには小さくて丸い尻が突き出された状態である。
そういえば、昨日も全く同じ光景を見たよなぁ。昨日の俺は我慢できなかったけど、今日の俺は違う。目の前のユリシアの姿に欲情はしてしまうが、むやみに襲ったりはしない。理性によるブレーキはちゃんとかかっているのである。
ユリシアがこちらに背を向けている間に俺も床に放り投げたままだった下着とズボンを身に着けた。息子が元気を取り戻していることがユリシアに露見したら、最悪の場合朝飯前にもう一発しようという話になりかねないのでな。
ユリシアはパンツを履き終えると、そのまま箪笥に近づき、中からピンク色のキャミソールを取り出してそれを身に着けた。それから、くるっとこちらに振り向き、自分の恰好を俺に見せびらかしてきた。
「どうかな? 似合ってるかな?」
「似合ってはいると思うけど、そんな姿誰にも見せたりしないだろ? 服の下に着るものなんだし」
「リョウには見せるよ? ねぇねぇ、えっちく見えるかな?」
「ま、まぁ、見える……かな」
正直、滅茶苦茶興奮した。いかにもロリの下着姿って感じの恰好だけど、ユリシアみたいな胸の大きな女の子がその姿になると途端にエロくなる。ブラとパンツの組み合わせより好きかもしれない。いや、ユリシアならどんな恰好でも好きなのだが。
「そっかぁ、良かった♡ ちゃんとえっちに見えてるんだね♡」
「うん。でも、一応ブラもしておけよ? 父さんもいるんだし」
「あ、そうだったね。えっと……、このパンツとセットのブラジャーは……これかな? うん、これっぽいね」
そう言ってユリシアは箪笥からパンツと同色……つまり純白のブラジャーを引っ張り出すと、一度キャミソールを脱いで上半身をさらけ出し剥き出しの乳房にその白ブラを重ねる。つけ方とか分かるのかなぁと思ってみていたのだが、その辺は心配要らなかったみたいだ。
ブラのホックがかちりとはまる音が室内に響く。これでユリシアは今、上下同色のブラとパンツを身に着けただけの状態になった。それぞれ中央部に赤いリボンがあしらわれており、とてもキュートな印象を与えてきていた。
それから再度キャミソールを着直して、箪笥に向き直り中身を吟味し始めた。だが、さほど時間はかからず、ユリシアはぱぱっと今日着る服を決めたようだった。そして、さっと袖を通してから箪笥の戸を閉めた。
上はグレーのパーカーに、下は黒の膝丈スカート。やや地味な色合いかもしれないが、それが逆にユリシアの金髪を引き立たせていてとても似合っているように感じた。
「おお、良いね。すごく似合ってる」
「えへへ、ありがと♪ ユリシア、リョウの世界スタイル、なんてね」
「あはは、良い感じにこっちの世界に溶け込んでるよ」
「良かった♪ それじゃあリョウ、下行こっか」
「だな。腹も減ったし」
そんなわけで俺たち二人は、階下にあるリビングへと移動したのだった。
さてと、父親にはどう説明したもんかなぁ。俺たち付き合い始めたから、の一言だけで良いのかな? 正直、そういう報告ってちょっと気恥ずかしいんだよなぁ。
俺は心の中でそんなことを考えていた。
*
「おっ、二人とも起きてきたようだな。おはようさん」
リビングに入ると、いつも通りの調子で父親が朝の挨拶をキッチンから投げかけてくる。調理する手は止めず。
「おう、おはよう、父さん」
「お、おはよう、リョウのお父さん」
「ちょっと待っててな、二人とも。もう少しで朝飯出来上がるから」
「分かった。いつもありがとな」
「何、これくらい気にすんな。俺の趣味みたいなもんだし」
「そうだったな」
そんな会話を父親と交わしながら、俺はテーブルに近づいた。するとそこには、既に幾つかの料理が並べられていた。
「漬物に玉子焼きにホウレン草の胡麻和え……。なるほど、今日は和食か」
「どれも美味しそうだねぇ」
「はいよー、野菜炒めと鯵の開き、いっちょ上がり」
「相変わらず、随分と豪華だなぁ。朝から張りきりすぎだろ。これ、テキトーに持ってっとくぞ」
「あっ、わたしも手伝う」
俺とユリシアは分担して三人分の皿や箸などをテーブルに運んでいく。せめてこれくらいはしないとな。
「おう、助かるぜ。朝飯は一日の活力源だからな。しっかり食わねぇと」
「こんな美味い飯ばっか食ってたら、舌が肥えちまいそうだ」
「まっ、父さんの飯は世界一だからな」
「いやうん、マジでその通りだと思う」
父親はおふざけのつもりで言っているんだろうが、俺から言わせればそれは冗談でも何でもないように思えてしまうのだ。
向こうの世界に行っていたのでしばらく食べることの叶わなかった父親の飯だが、三年前よりさらに料理の腕を上げているように感じられた。この人は、一体何処まで登りつめるのだろうか?
「世界一のシェフも夢じゃないんじゃないのか?」
「どうだろうなぁ。まぁでも、そういうのは別にどうでも良いな。美味いって言ってくれるだけで嬉しいもんさ、料理人ってのは」
父親は、とある一流ホテルのオーナー代理人兼シェフである。本来のオーナーは有名財閥のトップであり、そんな人と父親は学生時代の友人らしかった。
父親はその頃から料理を極めていたらしく、その才能を買われ23歳にしてそのホテルのシェフとなったようだ。母親とはそこで出会ったのだとか……。
本当、すごい父親を持ったものだ。二次元大好きという点を除けば、父親は相当良い男なのだろう。料理ができて、当然財産もそれなりにあるわけだからな。言ってしまえば優良物件だと思う。父親に対してこういうことを言ってしまうのは少し悪い気もするけど。
「んっし。味噌汁もできたぞ。朝から豪華に鳥団子汁だ」
「本当に豪華だな。じゃあ俺は米の用意を……」
「ユリちゃんは座ってて良いからな」
「で、でも……」
「気にすんなって。どうせ三人分なんて大した量じゃないさ」
「そ、そういうことなら……」
というわけで、俺と父親の二人で朝飯の用意を済ませていく。ユリシアは少し申し訳なさそうにしながらも、素直に席について俺たちのことを待っていた。
そして、程なくして俺と父親も席に着いた。
「よーし、それじゃあ早速食べよう。いっただっきまーす」
「いただきます」
「い、いただきまーす」
各々手を合わせ、目の前に並べられた父親お手製の朝飯に手をつけ始める。高級旅館もびっくりなレベルの朝飯だよな、これ。
俺は玉子焼きを口に運びながらそんなことを考える。……って、この玉子焼き、ニンニク風味だ。凝ってるなぁ。
「どうだ? 美味いか?」
「うん、とっても美味しい」
「ああ、滅茶苦茶美味いよ。ってか、漬物とかいつの間に用意してたんだ?」
「昨日の晩だな。カレーと並行して作ってた」
「そうだったのか。どおりで良い感じに味が染みてるわけか」
「そういうこった。いやぁ、美味いって言ってくれるのはやっぱ嬉しいなぁ」
嬉しそうに笑みを溢す父親の姿に、俺もつられて顔が綻ぶ。
「ところで、二人はもう恋人なんだろ?」
と思ったら、父親は唐突にそんなことを言い出した。俺もユリシアも、そんな父親の言葉に動きを止めてしまった。
「その反応、どうやら当たりみたいだな」
「な、何故バレたし……」
「雰囲気が違ったからな。昨日、風呂場でユリちゃんに告られたんだろ?」
「ちょっ……」
「な、何故バレたし!?」
あまりの衝撃に、俺は同じセリフを二度も吐いてしまった。ユリシアはユリシアで、言葉を失い俺の隣で固まってしまっていた。
「分かるさ。なんせ、ユリちゃんにそう仕向けたの、父さんだし」
「な、何ぃ!?」
「そ、それ言っちゃうの!?」
「ありゃ、ダメだったか?」
「ダ、ダメってことはないけど……」
ユリシアの反応的に、父親の言っていることは嘘偽りない真実なのだろう。俺は頭を抱えたくなった。
一体父親は何をしたかったのだろう……。
「昨日、お前が風呂に入ってからな、父さんとユリちゃんで賭け事をしたんだよ。ユリちゃんが風呂場に突撃して涼に拒否られなかったらユリちゃんの負け。涼に締め出されたら俺の負け」
「それでね……、リョウのお父さんが負けたらわたしの欲しいものを一つ買ってもらえる約束だったの」
「そ、そうだったのか……。んで、ユリシアが負けたら?」
「言わなくても分かるんじゃないか?」
「つまり、俺に告白する……ってことか」
「そういうこった」
まさか、俺の知らないところでそんな賭けを行っていたとは……。ユリシアと恋人になれたわけだから本来は感謝すべきなんだろうけど、何とも複雑な気分だ。
「はぁ、ユリシアがいきなり素っ裸で風呂場に突入してきたのはそういうことだったのね……。まぁ、この通り無事に恋人になれたんで、一応礼は言っとく」
「ん? 素っ裸?」
「え、うん。そうだけど……」
「ユ、ユリちゃん、水着とか着なかったのかい?」
「え、お風呂って服着ないんでしょ?」
「あー、そっかぁ。そういう認識だったのね。まっ、ユリちゃんがそれで良いなら、俺はこれ以上何も言わないさ。んなわけで二人とも、おめでとさん」
父親の素直な祝福を受け俺は途端に恥ずかしくなってしまい、父親から視線を外すようにして目の前の料理に集中した。
「あ、ありがとう、お父さん。おかげでリョウと恋人になれた」
「おうよ。おっと、そうだった。父さんな、今日から一週間くらい家を空けることになるんだ。その間、二人で留守番を頼む」
「ホテル詰めか?」
「そうだ。二人の入学式も行けそうにない。悪いな」
「それは構わないよ。仕事を優先してくれ」
「ありがとさん。二人だからって、お互いハッスルしすぎるなよ?」
「「げほっ……げほっ……」」
無神経な父親の言葉に、俺とユリシアは二人して咽てしまった。食事中にそういうデリケートな話題は止めていただきたいものだ。
まぁきっと、父親がいようがいなかろうがハッスルしてしまうんだろうなぁ。俺とユリシアだし。
なんて、食事中にあるまじきことを考えながら、三人での朝食はにぎやかに過ぎていった。ユリシアの告白の裏話は衝撃的だったけど、こうして三人で食卓を囲むことができるのは単純に嬉しかったし、とても楽しかった。
そうして朝食を済ませしばらくして、父親が出勤の準備を済ませて家を出ようとしていた。俺とユリシアは玄関に並んでそんな父親を見送る。
「んじゃ、行ってくるよ。父さんがいない間は任せたぞ、涼」
「ああ、分かった。父さんも、無理はすんなよ」
「ははっ、そうだな。肝に命じとくよ。っと、そうそう。ユリちゃん、昨日の賭けは俺の勝ちだったわけだけど、俺のお願いを一つだけ聞いてくれないか?」
「えっ? お、お願い?」
「悪いね、昨日言い忘れちゃった」
「そ、それは良いんだけど……、何かな?」
こくんと首をかしげて父親の次の言葉を待つユリシア。頼む、無茶なお願いとかは止めてくれよ?
「あー、なんだ……、その……涼のこと、これからもよろしく頼む」
「え、そ、それだけ?」
「それだけだ。これでも大事な一人息子だ。どうか、見捨てないでやってくれ」
そう言うと父親はユリシアに対して頭を下げた。俺はそんな父親の姿に絶句してしまっていた。
そんな俺とは対照的に、ユリシアは落ち着いた様子で一言、
「わたしがリョウを見捨てるわけない。だからお父さん、安心して」
優しくそう口にしていた。
「ありがとな、ユリちゃん。そんじゃ、今度こそ行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
「い、言ってらっしゃい」
俺とユリシアは、元気よく家の扉から飛び出していく父親の背中を、扉が閉まるまでずっと見つめていた。
「リョウのお父さん、すごく優しい人だね」
「ったく……、良い性格してやがるよ……」
「リョウ、泣いてる。ホント、涙脆くなったよね」
「ご、ごめん……、これは流石にくるものがあったからさ……」
「良いよ。何なら、わたしの胸貸そうか?」
「……そういうことなら、お言葉に甘えさせてもらうよ」
それから少しの間、俺はユリシアの胸の中で静かに涙を流し続けていた。なかなか情けない姿だとは思うが、あれは流石に我慢できるわけもなかった。なんせ、三年ぶりに感じた家族愛だったのだから。
ユリシアの言う通り、俺はこの三年でかなり涙脆くなってしまったようだな。だが、そんな自分を嫌だとは思わない。これも全部、ユリシアが与えてくれたものなのだから。
俺、やっと元の世界に戻ってこれたんだな。やっと家族と再会できたんだな。それらの感情が涙となってボロボロと止めどなく溢れ出ていた。
俺はこれからユリシアと平和な生活を送る。そして、父親にちゃんと恩返しをしよう。この世でたった一人の父親に。俺は一人、そう誓うのだった。
その日は一日中、ユリシアと二人でまったりラノベやアニメ観賞にふけっていた。とても平和で、とても心地良かった。
その後? まぁ、ハッスルしたよ。