異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
それから俺たち二人は人目も気にせずイチャイチャしながら電気街を歩いて回る。気になった店に入っては、売られている商品を二人並んでいろいろ見て回り、気に入った商品があれば購入する。
とは言っても、金銭には限界もあるのでなるべく出費は抑えるようにしていたが。高校生になるわけだし、そろそろバイトでも始めようかなぁ。
「あっ、これ、この間見たやつだよね?」
「そうだな。ってか、くらててのグッズ多いな」
ユリシアが指で指し示したのは、"暗闇の中で手を伸ばして"という作品のグッズだった。略称は"くらてて"。
この作品は昨年のこの時期に放送されたラノベ原作のアニメだ。つまり、俺が向こうの世界に行っている間に放送されていたわけだ。
原作は元々読んでいたのだが、まさかアニメ化されているとは思っていなかったので結構驚いた。というか、リアルタイムで見たかったのが本音だ。
幸い有料のアニメ視聴アプリが俺のスマホにインストールされていたので、帰ってきて早々ユリシアと二人でくらててを一気見した。2クール物だったけど、余裕で一日で見終わった。原作が完全再現されていて非常に面白かった。
「どうしようかなぁ、買っちゃおうかなぁ」
「ユリシアは好きなキャラとかいるの?」
「うーん、どのキャラも可愛かったけど、これといって好きなキャラはいないかなぁ。やっぱり、お話がすごく良かったよね」
「そうだな。ネット上でもストーリーの評価高いしな、くらてては」
しばらくユリシアは悩んでいたようだったが、結局キーホルダーなどのグッズは買わずオープニングやエンディング、キャラクターソングなどが収録されたCDアルバムだけ購入していた。
どうやらユリシアは、アニメソングが特にお気に入りらしい。この数日だけでもかなりの金額をアニソンに費やしていたし。今度、カラオケにでも連れてってやろうかな。ユリシアの歌声も聞いてみたいしな。
そうこうしているうちに時間は既に12時を回っていた。なので俺たちはショップを後にして近場にあったカフェで昼食をとることにした。すぐ隣にメイド喫茶を見つけたが、お互い興味もなかったのでいたって普通のカフェを選んだ。
というか、ほんの少しチラ見しただけなのにユリシアがあからさまに不機嫌になってしまったので、きっと俺がメイド喫茶に興味があったとしても入らせてはくれなかっただろう。ユリシアも相当独占欲が強いらしい。そんなことでもいちいち頬を緩ませてしまう俺はきっと重症なのだろう。
「これからどうする? ライブは15時からだったよね?」
「ああ。移動時間も考えると、アキバにいられるのはあと1時間半ってところかな。何処か行きたい場所とかある?」
昼食のサンドイッチを頬張りながら、俺とユリシアは午後の予定について話し合う。もう少しちゃんと予定を立てるべきかとも思ったが、自由にぶらつきたいというユリシアの意見にのっとり、アキバ内での予定はほとんど決めていなかった。
「うーん、ゲームセンターには行ってみたいかも」
「なるほど、ゲーセンね。他には?」
「そうだなぁ……」
事前に用意しておいたアキバのガイドブックに目を通しながら、ユリシアがうんうんと唸る。だが、その表情はとても楽しそうだ。
「さっき見つけたんだけど、このカフェのすぐ近くにコスプレ衣装を置いてある店があったんだよ。もしユリシアが良ければ、この後行ってみない?」
「コスプレ衣装? わあ、ちょっと気になるかも! 行きたい♪」
「よし、そんじゃ決まりだな。多分、その店行ってゲーセン行ったらいい時間になるんじゃないかな」
「そうだね。そうと決まれば、はむっ……、早くおひるごはん食べてすぐに出発しよっ♪ あむっ……もぐっ……」
ユリシアがサンドイッチを頬張るペースを上げた。狐尻尾がぶんぶん揺れていることからも、かなり楽しみにしていることがよく分かる。
「こらこら、ユリシア。楽しみなのは分かるけど、流石にちょっとはしたないぞ? もう少し落ち着いて食べような?」
「んくっ……。え、えへへ、ごめんなさぁい」
「分かればよろしい。にしても、たまたま見つけた店だったが、ここのサンドイッチ結構美味いな。しかも安いから正直ありがたいや」
「確かに美味しいけど、リョウとかリョウのお父さんの料理には敵わないかな」
「父さんはともかく、俺の料理はそこまででもないだろ」
事あるごとにユリシアは俺の手料理を絶賛してくる。嬉しくはあるのだが、父親の作るものに比べるとやはりどうしても見劣りしてしまうように思うんだよな。というか、勝てなくて当然だと思ってるし。
「えー、そんなことないよ? わたしもう、リョウに胃袋まで掴まれちゃってるもんね♪」
「そう言ってくれるのは嬉しい限りだけどな。……っと、ごちそうさま」
「わたしもごちそうさまでした。それじゃあリョウ、そろそろ行こ♪」
「そうだな」
俺たちはささっと会計を済ませてカフェを後にした。そしてすぐさまコスプレ衣装の専門店を訪れる。
店内に入ると、色とりどりの衣装が綺麗に陳列していた。豪華な装飾が施されたドレスや少し露出度多めな魔法少女のコスプレ衣装など、種類も様々のようだった。
でも、基本的に女物ばかりだな。男物もないことはないが、女物に比べると明らかに数が少ない。ここら辺は需要の問題か。
「すごいね、可愛い服がいっぱいだよ!」
「サイズも結構幅広く取り揃えてるのな。って、あれ? 向こうに階段が……。あー……、そういうことか。この上は18禁コーナーなのね」
「ってことは、わたしたちはダメってこと?」
「そうなるな、残念ながら」
俺たちはまだ15歳だ。だから18禁コーナーには足を踏み入れることができない。年齢の壁は厚いのだ。くそっ、気になるぜ……。
俺たちは時折会談にちらちらと視線を向けつつも、何とか我慢して一階の衣装コーナーを見て回る。ユリシアに似合う服を考えていたら、いつの間にか上階の存在は気にならなくなっていた。ユリシアの存在は偉大だ。
「あっ、メイド服だ」
「ユリシアには似合わないと思うなぁ。だってユリシア、家事とかほとんどできないじゃん」
ここ数日で分かったことだが、ユリシアは家事全般が壊滅的なまでに苦手だ。最初は、これまで経験がなかったからできないだけだろうと思っていたのだが、何度やらせても慣れる気配を見せないのだ。特に料理は酷いものだったよ、はは……。
「むぅ、リョウ酷いよぉ……。あれでもわたし、真面目だったんだよ?」
「それは分かってるけど……」
「い、良いもんっ。これから頑張るんだもんっ」
一人やる気を見せるユリシアの様子に心の中で苦笑しつつ、俺はテキトーに相槌を打っておく。
「うん頑張れよー」
「棒読みやめてよぉ! 絶対家事上手になってやるんだからぁ!」
「……ポンコツメイド……、それはそれで悪くないのか……?」
「ね、ねぇ……、そろそろ泣いても良いかな……?」
おっと、流石にからかいすぎたようだ。ユリシア、ガチで涙目になってしまっている。ユリシアの反応が面白くて、ついやりすぎてしまった。
「あはは、悪い悪い。謝るから泣かないでくれ」
そう言って頭を撫でる。ユリシアはちょろいので、これだけでもすぐに機嫌を戻してくれる。彼女の扱いが酷い? いやいや、そんなことはない。
「もぅ……、いつもいつもそればっかりだよぉ……。わたし、そんなちょろくないもん……。頭なでなでされただけで……えへへへへ……♡」
ほらな? ちょろいだろ? うちの彼女。こんな調子だから、毎度毎度ついついからかってしまうのだ。ユリシアも俺にからかわれることを内心喜んでいるっぽいし。流石にやりすぎは注意だけどな。そうでなければ、このマゾ狐は喜んで受け入れる。
っと、かなり脱線してしまったな。気を取り直し、俺は辺りを見回し、何かユリシアに似合う良い服がないか探す。
すると、俺の目にとある衣装が飛び込んできた。よく見かけるド定番のコスプレ衣装、巫女服だ。俺はようやくその存在に気がついた。
「おっ、ユリシア、ユリシア、巫女服だぞ。これなんてどうだ?」
「あ、ホントだ。わたしに似合うのかなぁ、これ」
そう言うとユリシアはそのうちの一着を手に取り、自分の身体に合わせて俺に感想を求めてきた。
上は白で下は黒というシンプルなデザインだが、ところどころ桃色のラインが入っており、良い感じにアクセントを加えていた。
そして何より、驚くほどユリシアによく似合うのだ。身体の前に当てているだけでもそれがよく伝わってきた。きっとユリシアがこの巫女服を着れば、最強のユリシアが誕生することだろう。もっとも、どんなユリシアも可愛いのだが。
「滅茶苦茶似合ってる。すげぇ可愛い」
「えっ、ホント? 可愛い?」
「ああ、本当本当。嘘なんて吐かない」
「え、えへへ、そうなんだ♪ じゃあ、これ買っちゃおうかなぁ♪」
「是非、よろしくお願いします」
俺はいたって真面目な顔でユリシアに頭を下げる。そうまでしてしまうほど、俺はユリシア×巫女服を気に入ってしまっていた。
「い、いやいや、頭なんて下げなくて良いってば……。でも、これいくらくらいするんだろ? えっと……、値段は何処に書いてあるのかな……?」
「あ、これじゃないか? って、15000円か……。コスプレ衣装ってこれが普通なのかな? 買うのなんて初めてだから分からないや」
「でも、生地とかしっかりしてるよ、これ。この完成度で15000円なら、充分安いんじゃないかな?」
「なるほど」
ユリシアは手に持った巫女服に手を滑らせながら俺にそう教えてくれた。俺は軽く頷くと、一呼吸おいてから再び口を開いた。
「ユリシア、この服俺にプレゼントさせてくれないか?」
「プレゼント?」
「そうそう。初デートの記念にさ」
「記念……。い、良いの?」
「もちろんだ。こっちから提案したんだし」
「リョウからのプレゼント……、すごく嬉しい♡」
プレゼントの内容がコスプレ衣装というのがちょっと微妙なところだが、それでもユリシアが喜んでくれているようで安心した。
というわけで、ユリシアは一度試着をしてサイズや着心地を確かめ、特に問題もなかったようなので俺はすぐに会計を済ませた。
なお、ユリシアはついでと言いながらメイド服も購入していた。紺色のワンピースに白のフリル付きエプロンという、こちらもシンプルなデザインのものだった。ユリシア曰く、これを着て家事スキルを磨くんだ、とのことらしい。
そんなユリシアがほほえましくて、俺はついにやけ顔になってしまったのだった。店員さんが生暖かい視線を向けてきていたが、特に気にはならなかった。
そうして無事購入できた二着のコスプレ衣装を手に、俺とユリシアは店を出た。時間を見ると既に13時を回ってしまっていたので、俺たちは少し急ぎ足で次なる目的地、ゲームセンターを目指した。あと30分くらいしか時間に余裕がないので、ゲーセンにはあまり長居できないな。
そんなこんなでゲームセンターに到着した俺たちは、すぐに中に入っていく。入り口の自動ドアが開いた瞬間聞こえてくる大音量のゲーム音が何とも懐かしいものに感じた。昔は父親とよく来ていたな。
俺はユリシアの手を引いて中をいろいろと見て回る。プライズゲームやリズムゲーム、レースゲーム、格闘ゲーム等々、そのどれもがユリシアの目を釘づけにしていた。
中でもファンシーなぬいぐるみが所狭しと敷き詰められたUFOキャッチャーに興味を惹かれたらしく、すぐさまチャレンジしていた。
「えへへー、ゲットしちゃった♪」
そして、見事に一発でぬいぐるみをゲットしていた。ユリシアは家事の才能はないけどプライズゲームの才能には満ち溢れているようだった。
「リョウ、なんか変なこと考えてる?」
「いや、別に」
「そう? それなら良いんだけど」
危うく俺の考えていることがバレそうになった。表情には出していないつもりだったのにな。ユリシアって、鈍いのか鋭いのか分からないよな。
「小っちゃくて可愛いね、これ♪」
「お、おう、そうだな」
先ほどユリシアがゲットした景品は、小さな狸のぬいぐるみだった。それを狐少女のユリシアが両掌で弄んでいる様子がシュールに見えてしまい、俺は微妙な反応になってしまった。
「ん? どうかしたの?」
「い、いやいや、何でもないよ。気にしないで」
「むぅ、なんか怪しいなぁ」
「そ、そんなことないだろ」
「まぁ良いけど。って、あれって何かな? 試着室……じゃないよね?」
俺に疑いの視線を向けていたユリシアだったが、何か気になるものを見つけたのか、その方向に指を向けていた。
「ん? ああ、あれはプリクラ……じゃないかな?」
「プリクラ?」
「写真撮影ができる機械かな、簡単に言ってしまえば」
「へぇ、そんなのがあったんだね、面白そう♪ 記憶とか共有知識にもなかったから分からなかったよ」
ユリシアはプリクラに興味がおありのご様子。ならばと、俺はユリシアに一つ提案をしてみた。
「じゃあ、二人で撮ってみる?」
「うん、良いね♪ 取ろう撮ろう♪」
ユリシアの賛成も得られたので、俺たちは二人してカーテンをくぐり狭い個室の中に入った。ゲーセンには、一人もしくは父親としか訪れたことがないので、プリクラなんて初めてだった。
「あっ、そうだ。せっかくだし、さっき買った服着ても良いよね?」
小銭を投入し、俺が機械の操作をしていると、背後からそんなユリシアの声と衣擦れの音が聞こえてきた。俺が慌てて振り返ると、案の定ユリシアは服を脱ごうとしていた。
「待て待て、ここで着替えるのか!?」
「うん。ここならリョウ以外には見られないでしょ?」
「まぁ、そうだけどさ……」
俺は嘆息しながら一応外の様子を確認する。覗かれていたら嫌だからな。だが、幸い近くに人はいないようだった。
「良かった。誰もいないな……って、脱ぐの早っ!?」
カーテンから離れ後ろを振り返ると、ユリシアは既に下着だけの姿になっていた。こんなところでも相変わらずユリシアは躊躇いがなかった。
そうしてガサゴソと袋に手を突っ込み、その中からメイド服を引っ張り出した。前屈み状態のユリシアの胸の谷間は気にしちゃ負けだと思う、うん。
「はい、準備オッケー♪」
ユリシアは瞬時にメイド服に着替え、そして俺の手を取って写真撮影を促してきた。もはや乾いた笑師か出てこなかった。
俺は再度機械に手を伸ばし、写真撮影の準備を済ませる。それからユリシアと二人並んで画面の前に陣取る。画面に映る光景は実にシュールだった。そりゃそうだろう。だって、片方メイド服着てるんだから。
ってか、思ったより似合ってるな、メイド服。先ほど店で試着した時には見せてくれなかったから、今初めて見た。もう少し落ち着いたタイミングで見たかったなぁなんて思ったり。
「それ、似合ってるね」
「ホント? ありがと♪」
そんな短いやり取りをしながら、俺たちは目の前の画面を見つめる。やがてシステムボイスがカウントダウンを始め、ぱしゃりという音とともに写真が撮影された。
「おお、ばっちり撮れてるね!」
画面に映し出された俺たちの2ショットに、ユリシアは頬を綻ばせて感激していた。俺はそんなユリシアを横目に、淡々と機械を弄る。
「あ、もう一回撮影できるみたいだな。どうする?」
「もちろん撮る! ちょっと待っててね」
すぽんとメイド服を一気に脱ぎ去り再び上下水色の下着姿になったユリシアは、メイド服をやや雑に畳んで袋にしまい込む。それから、袋の中身を覗き込みながら思案顔を浮かべていた。
ずっとそのままの恰好でいられると目に毒なのだが……。というか、下手にジロジロ見たらユリシアの発情スイッチがオンになってしまうので、そういう意味でも早く服を着てほしかった。
「ど、どうしたの? ユリシア」
「えっとね、巫女服着るか元の服にするか迷ってるの」
「それなら、今日着てきた服にしようよ。コスプレ衣装も魅力的だけど、今日はデートなんだしさ。せっかくならデート服で写真撮ろうよ。それに、巫女服のお披露目はもっと別のタイミングが良いんじゃないのか?」
「うん、それもそうだね。分かった。じゃあこっち着るね」
そう言うとユリシアは、元々デートのために着てきていた服を着直し、そして俺の隣に立った。画面に映る俺たち二人の姿はとても自然だった。コスプレも良いが、デートならやっぱりこうでないとな。
俺が隣に立つユリシアの肩を抱くと同タイミングで、"3・2・1"というやけにハイテンションな機械音によるカウントダウンの後、狭い個室内に再びシャッター音が響いた。
それからすぐ、目の前の画面に今の写真が映し出される。そこには、照れくさそうにはにかみながら彼女の肩に腕を回してピースサインを作る俺と、彼氏に肩を抱かれて恥ずかしそうに頬を赤らめながらもにっこりと微笑むユリシアの姿がばっちり収まっていた。
そんな写真の中の自分たちの姿にお互い気恥ずかしさを覚えてしまった。でもそれ以上に、お互いに幸せそうに寄り添ってくれる最愛の人の存在を感じ、俺たちは紅潮した顔を隠すこともせずお互い顔を見合わせて笑い合った。
「え、えへへ♡ 大好きだよ、リョウ♡」
「ははっ。俺も大好きだ、ユリシア」
見ているだけで自然と幸せな気持ちで心が満たされてしまうほど、目の前の画面に映る写真は最高の2ショットに思えていた。落書きなんてもっての外だったので、落書き機能はスキップした。
それから俺たちは、プリントアウトされた写真を各々財布にしまい、荷物一式を手に持ってゲームセンターを出る。時刻は13時半過ぎ。ライブ会場に向かうには丁度良い時間だろう。
というわけで俺たちはゆっくりと駅に向かい、改札を抜けて目的の電車に乗り込んだ。ここからライブ会場のある駅まではだいたい30分くらいかかる。俺たちは車内でアキバの感想を語り合いながら目的地に到着するのをゆっくり待っていた。
しばらく電車に揺られること30分、俺たちは目的の駅に到着し、その足でライブ会場まで急いだ。まぁ、余裕を持って行動していたので何ら急ぐ必要はないのだが。
「よし、到着だな。っと、もう結構並んでるなぁ」
俺たちがライブ会場に到着すると、既にかなり多くの人が会場入り口前に列をなしていた。そんな様子に苦笑を浮かべつつ、俺はユリシアを伴って列の最後尾に向かった。
「あっ、こんにちはー!」
俺たちが列に加わると、俺たちの一つ前に並んでいた人が突然声をかけてきた。かなり小柄だ。中学生か?
「こんにちは」
とりあえず、俺は無難な返事をしておくことにした。別に俺はコミュ障なわけではないので、こうして挨拶をされれば返事くらいは返せる。もちろん、相手に興味はないので素っ気ないものではあるが。それに……
「っ……」
俺の隣にいるユリシアが一瞬にして不機嫌オーラを全開にしていたから、それ以上の言葉をかけるのは躊躇われた。
ユリシアさん、俺以外にはマジで容赦ねぇ。隣で毛を逆立たせ敵意を剥き出しにしている最愛の狐少女に、俺は乾いた笑みを溢すことしかできなかった。