異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
「ひっ……!? わ、私、何か気に障ることしてしまいましたか!?」
ユリシアの刺々しい視線を受け、俺たちに挨拶をしてきた目の前の少女の顔色が蒼くなった。恐らく、ユリシアの子の視線を受けて平然としていられる奴なんてこの世界には存在しないだろう。俺はどうってことないけど。
「ユリシア、この人は何も悪いことしてないだろ?」
「むぅ……、リョウに話しかけた……。逆ナンパ……」
「ええっ!? わ、私、そんなつもりで話しかけたわけじゃないですよ!?」
「じゃあ、どういうつもり……? リョウは渡さないけど」
ユリシアの発言は嬉しくはあるのだが、俺たち以外にも人が集まっている中でそれを言われるのは非常に恥ずかしい。ユリシアの場合、俺に対する愛が深すぎていろいろ融通が利かなくなってしまっているようだ。
ユリシアよ。この人はただ俺たちに挨拶をしてきてくれただけなのに、それを早とちりしてナンパと決めつけるのは良くないぞ?
というわけで俺は、未だに目の前の少女を睨みつけているユリシアの頭を軽く叩く。言葉よりもこうした方がユリシアには効果があるのでな。俺はDV男ではない。
「はうっ……」
「こら、ユリシア。流石にその態度は失礼すぎるぞ」
「うぅ……、だってぇ……」
「あのなぁ。この人は俺たちに挨拶してくれただけだろ? それに、たとえナンパだったとしても俺がそう簡単に揺らぐと思うか? 俺を信用しろって言ったよな?」
「……はい、ごめんなさい……」
俺が叱ると、ユリシアは先ほどまでの不機嫌オーラを霧散させて、目の前の少女にぺこりと頭を下げた。俺はそれに満足し、ユリシアの頭をわしゃわしゃと撫でる。アフターケアも忘れてはならないのだ。
「い、いえ、大丈夫ですよ。ちょっとびっくりはしましたけど」
ユリシアの謝罪に対し、少女も柔らかい笑顔を浮かべて気にしなくて良いとばかりに首を横に振っていた。どうやら許してくれたようだった。そのことに、ユリシアはほっと息を吐いた。
「お二人って、やっぱりカップルさんですか?」
「ええ、まぁ」
「素敵ですねぇ! すごくお似合いだと思いますよ!」
「あ、ありがとうございます」
少女の屈託のない笑顔に、俺たちは気圧されてしまっていた。ここまでぐいぐい来られると流石に戸惑ってしまう。何を話せば良いのかも分からないので、とりあえず無難に頷いておくことしかできない。
「彼女さんはもしかして海外からこちらに?」
「えっと、はい。アメリカから日本に。日本のアニメ文化が好きで」
「そうなんですね! 日本語、とてもお上手ですね! それに、その金髪も白い肌もすっごく綺麗! まるでアニメに出てくるヒロインみたい!」
困惑顔のユリシアに対して、その少女はひたすら褒めちぎる。純粋な瞳で真っ直ぐに見つめられているからか、ユリシアは何処となく恥ずかしそうだ。
でも、ユリシアは確実に喜んでいる。少女には見えていないだろうが、先ほどから狐耳は可愛らしくぴょこぴょこ跳ねており、狐尻尾は忙しなく揺れ動いているのだ。ユリシアでも、こうして同性から素直に褒められると嬉しいものなんだな。
「彼氏さんもとてもかっこいい方ですし、ホントにお似合いです! あー、うらやましいなぁ。私もこんな……」
「リョウは渡さない……」
「うぇっ!? で、ですから私別に略奪とか考えてませんよ!?」
「でも、リョウのことカッコ良いって言った……」
「た、確かに言いましたけど……、人の彼氏さんを奪う趣味は私にはありませんからねっ!? お二人が幸せそうだったのがうらやましいと感じただけなんです。お願い、信じて」
「ユリシア……、お前また……」
「ち、違うの! 違うんだよ、リョウ! ちょっと勘違いしただけなのっ!」
俺は嘆息しつつ、ユリシアを半眼で睨む。するとユリシアは慌てて俺に弁明してくる。その目はちょっと涙ぐんでいた。
「わ、私もちょっと紛らわしかったかもですし、今回はお互い様……ということで」
「あなたがそれで良いなら良いんですが……」
「はうぅ……、すみません……。わたし、勘違いしてばっか……」
「それだけ彼氏さんのことが好きってことなんですよね? こんな可愛い彼女さんに愛されて、彼氏さんは幸せ者ですね!」
「あ、あはは、それはまぁ……、確かに」
第三者からそれを言われると途轍もなく恥ずかしいんだが……。俺は自分の後頭部をぽりぽりと掻きながら、満面の笑みでこちらに顔を向ける小柄な少女に短く言葉を返した。
「って、すみません。名前も名乗らずに。私、
「あれ、同い年……? 俺たちも明日から高校生なんですよ」
目の前の小柄な少女はまさかの同い年だった。でもまぁ、身長はユリシアと同じくらいだし、別に同い年でもおかしくはないのかな。
「えっ、そうなんですか? てっきり年上だとばかり……」
だが、少女は俺を見て目を丸くしていた。都市不相応とはよく言われるが、やはり彼女も同じことを思っていたのだろうか。
確かに、俺の身長は年の割に高い。今の時点で175センチを超えている。顔立ちも童顔というわけではないだろう。声も結構低いし。そう考えると、年上に間違われるのも頷けるかもしれない。
「まぁ、よく言われます。えっと、俺は霜崎涼って言います」
「わたしは、ユリシア・フォクサローゼリス」
「涼くんにユリシアちゃん……、うん、覚えた。よろしくね! あっ、同い年なんだし敬語じゃなくて良いよね?」
「は、はい、良いと思いますよ」
「二人もタメ口で良いからね?」
「そういうことなら……。よろしく、陸下さん」
「よろしく」
それから俺たち三人は、入場時間になるまでの間ラノベやアニメ、ゲームなどの話で盛り上がっていた。俺もユリシアも他人と関わるのは好きじゃないはずなのに、陸下さんとは自然に打ち解けることができていた。そのことに俺は内心驚いていた。
恐らく、二次元という共通の話題があったからだとは思うが、家族やユリシア以外の人とこうして楽しく談笑できているこの状況はとても新鮮だった。
ちなみにユリシアは、既に陸下さんとかなり仲良くなっているようだった。同じ趣味を持つ女同士、何か通じるものがあったのだろう。
「へぇ、さっきまでアキバに行ってたんだ。何買ったの?」
「CDとか洋服とか」
「洋服? アキバで?」
「えっと、コスプレ衣装を……ね」
「ほほう、コスプレかぁ。良いね!」
「リョウがプレゼントしてくれたの」
ユリシアが先ほどアキバに行ってきたことを陸下さんに話している。ユリシアが他の男に取られるのは嫌だが、こうして同性の友人と楽し気に会話を交わしている様子は見ていて何とも心が温まる。
「アツアツだねぇ。あっ、そうだ! 今度さ、良かったら一緒にアキバ行かない?」
「うん、良いよ」
「おっし! んじゃ、連絡先交換しとこうよ」
すると二人はスマホを取り出してメッセージアプリのコードを交換する。流れで俺も陸下さんとコードを交換することになった。
「リョウ、友達って良いものだね」
「まさか、ユリシアの口からそんな言葉が出るなんてな」
「サヤは良い子。他の人間とは何か違う」
「そっか、良かったな。今のユリシア、生き生きしてる」
陸下さんが手慣れた様子でスマホを捜査している最中、俺とユリシアは小声でそんなやり取りをしていた。あれだけ人を拒絶していたユリシアの口から"友達って良いものだね"なんて言葉が飛び出すとはな。
こちらの世界に来た当初、ユリシアは家族と俺以外はどうでも良いと言っていた。だが、ユリシアはきっと心の何処かで、今のままじゃダメだと思っていたのだろう。前に進みたいと考えていたのだろう。
だから今、ユリシアは少しずつ成長しているのだ。それを嬉しいと感じる反面、俺は自分自身を情けなく思ったりもしていた。
同族を殺され人生に絶望していたユリシアが、過去の因縁を断ち切りこうして一歩を踏み出そうとしているのに、俺は未だに人を拒絶しようとしている。自分の未熟さを痛感させられた。
俺もいい加減、過去のちっぽけな記憶にとらわれたままの自分から抜け出さないといけないのかもしれない。
「ん? 何の話?」
「サヤは良い子だねって話」
「そ、そう? 二人にそんなこと言われると、なんか照れるなぁ」
「あっ、いくらサヤが良い子でも、リョウはあげないからね?」
「分かってるって。取らないよ。というか、取れないよ」
目の前で仲睦まじ気に話をするユリシアと陸下さんの姿を眺めながら、俺は自分自身を叱咤していた。
時間はかかるかもしれない。そう簡単に俺の心は変わらないかもしれない。だが、それでも一歩を踏み出す努力をしよう。何ねんかけてでも良いから、俺もちゃんと変わろう。俺は一人、そう決意していた。
*
「あっ、列が動き出したね」
「ホントだ。入場時間になったみたい」
しばらく雑談を交わしていると、少しずつ列が動き始めた。列前方部を見ると、ライブ会場の扉が開かれ、数人のスタッフがテキパキと案内を始めていた。
「楽しみだなぁ、くるみんのライブ」
「そうだね。どんな歌歌ってくれるかな」
「くらてての主題歌は欠かせないよね」
「あの曲は最高だもんね」
列が前進するのに合わせて俺たち三人もゆっくりと歩を進める。その間もユリシアと陸下さんは今日のライブの話で盛り上がっていた。
俺は持ってきていたショルダーバッグから二枚のチケットを取り出した。そして、書かれている座席の番号を確認した。
「あっ、そういえば二人は何処の席なの?」
「えっと……、五列目の左端とその隣の席だな」
「えっ、ホント!? 偶然ってすごいね! 私、その隣、左から三つ目の席なの!」
「マジ? そりゃなかなかすごい偶然だな」
「嬉しいなぁ。二人と一緒にライブ見られるなんて」
無邪気な笑顔を浮かべる陸下さんの様子に、俺もユリシアも揃って頬を綻ばせる。仕草が何処となく幼く見えて、自然と和んでしまうのだ。
やがて俺たちはライブスタッフのいる入り口まで到達し、チケットを手渡して無事会場内に入場することができた。
ライブ開始まではまだ少し時間があったので、俺たちは先にグッズコーナーを回ることにした。サイン入りのTシャツやステッカー、デフォルメキャラのキーホルダーなど、グッズの種類も多岐にわたっていた。
そんな中ユリシアと陸下さんの目を引いていたのが、これまで歌った曲を詰め込んだベストアルバムだった。
今日のライブに一人で来ていることからも分かる通り、陸下さんもユリシア同様アニソンが大好きらしかった。
「ダウンロード版は全部持ってるけど買っちゃおう」
「おっ、分かってるねぇ。CDにはCDの良さがあるんだよね!」
「そうそう。だからこれは買わないと」
「私も買っちゃおっと」
俺の場合、ダウンロードコンテンツを購入したらそれで満足してしまうのだが、アニソンをこよなく愛する二人からするとCDとダウンロードコンテンツでは少し味が違うらしい。俺はそういうものなのかと一人頷きながら二人の後を追う。
そうして無事CDの購入を済ませた俺たち三人はグッズコーナーを離れ客席に移動した。ユリシアと陸下さんはかなり上機嫌だった。
「っと、ここだな」
ホール内に入ってすぐ、俺たちはチケットにかかれていた指定席を見つけ着席した。並び順は、左から俺、ユリシア、陸下さんである。二人を隣同士にすべきだと思い、俺は一番左端の席を選んだ。
端の席ではあるが、位置的には遠すぎるわけでもなくだからといって近すぎるというわけでもないといった感じで、悪い位置じゃないと思う。父親には感謝しないといけないな。
「二人は大丈夫? 見えづらくない?」
「それって、私の背が低いことをおちょくってる?」
「違うわい。単に気になっただけだよ」
「あはは、冗談だよ。全然問題ないよ。思ったより良い席だったね」
「うん。わたしも平気」
良かった。二人も特に不満はないようだ。まぁ、不満があったとしても俺にはどうもできないのだが。
ってか、身長が低いこと地味に気にしてたんだな、陸下さん。本人は冗談と言っていたが、今後はもう少し考えて発言しないといけないかもな。
ライブが始まるまでの間、俺たち三人はまたもアニメやゲームの話題で盛り上がっていた。お互い好きなジャンルが似通っていたということもあり、話題が尽きることはなかった。
陸下さんって見た目活発そうな感じなのに結構どっぷり二次元に浸かっているらしく、ギャルゲーやエロゲーにも手を出しているみたいだった。
ギャルゲーはともかくエロゲーって……。しかも、普通に男性向けのやつが好きな女子というのはなかなか珍しいのではなかろうか? というか、購入はどうしてるのだろう。俺と同様に、親のアカウントを使ってネット注文でもしているのだろうか?
なんて感じで談笑していると、ホール内の電灯が落とされた。そして、ステージ上の幕が上がる。どうやらいよいよライブが始まるみたいだ。
幕が上がりきると同時に演奏が始まる。軽快な前奏に合わせて、客席から手拍子が送られる。この一体感、とても心地良い。
そして十数秒の前奏の後、声優さんがハイテンションで歌い出した。っと、今更だが、この声優さんの名前は
今では、若手声優と言えばくるみんと言われるほど絶大な人気を誇っている。俺もデビュー当初からのファンの一人だ。ソロライブに来たのはこれが初めてだが。
「一曲目から神曲じゃん!」
「確かに。こりゃ盛り上がるな」
「……」
くるみんの歌声に耳を傾けながら、俺と陸下さんはそんな感想を漏らす。ユリシアは特に何も話さなかったが、きっと生演奏に感動しているのだろう。
そうしてあっという間に一曲目の演奏が終わってしまった。会場内は大きな拍手に包まれ、くるみんも嬉しそうに手を振っていた。
「みんなー、ありがとう!!」
満面の笑みで放たれた言葉に、客席からはたちまち歓声が上がる。俺も陸下さんも便乗して声を上げる。
「いやぁ、くるみんの声はやっぱ良いな」
「ホントホント! 聞いてるだけで癒されるよ。生だと尚更」
素晴らしい声に変わりはないのだが、俺的にはやはりユリシアの声が一番かなぁと思ってしまう。俺はユリシアの全てが好きだからな。
だが、この場でそれを言うのはあまりにも恥ずかしすぎて躊躇われたので、心の中に留めておくことにした。
「……」
そして、相変わらずユリシアは無言だった。ちょっと気になってユリシアの顔に視線を向けてみると、表情が少し堅いように見えた。もしかして、初めてのライブに緊張してしまっているのだろうか?
そんなことを考えながら引き続きくるみんの歌声を堪能していたのだが、不意に俺の右腕に何か柔らかいものが押し付けられた。何かと思って右を向けば、ユリシアが俺の右腕をぎゅっと抱きしめている姿が目に入った。
「ユリシア、どうかした?」
俺はユリシアの耳元に小声で囁きかける。演奏中なので大声は出せないからな。すると、次の瞬間には俺の唇にユリシアの唇が押し当てられていた。
「んんっ……♡」
ユリシアのくぐもった声以外に音はない。ただ触れ合わせるだけのキスだったが、俺は驚きで硬直してしまっていた。
「な、何を……!?」
「ねぇ、リョウ……。あの声優さんとわたし、どっちが好き?」
「えっ?」
予想外の質問に俺は思わず声を漏らす。まさかユリシアはライブが始まってから今の今までそんなことを気にしていたのか? まったく……、何処まで心配性何だか……。俺は一つ溜息を吐き、再びユリシアの耳元に口を近づける。
「ユリシアに決まってんだろ。何を今更心配してんだよ」
「そ、そっか、良かった、えへへ……♡ んんっ……♡ はぁ……♡ はぁ……♡」
突如ユリシアからそんな艶めかしい吐息が聞こえてきた。まさかコイツ……、こんなところで発情しているんじゃなかろうな? いや、有り得るな。さっきキスしてしまったわけだし。
「ユ、ユリシア……? 大丈夫か……?」
「ダ、ダメ……、我慢できない……♡ はぁ……♡ んはぁ……♡」
すると突然、ユリシアが俺の右手を掴んできた。俺はそんなユリシアの行動に嫌な予感を覚えたが、時既に遅し。
ユリシアはあろうことか俺の右手を自分の股の付け根に誘導しやがった。そうです、ユリシアはこんな場所でオナニーを始めやがったんです。あー、もう……。この発情エロ狐は……。
「んふぅ……♡ はぁ……♡」
俺の右手を上下に動かしながらユリシアはそんな熱っぽい吐息を漏らす。幸いなことに、ユリシアの右隣にいる陸下さんはライブに集中しており、隣のユリシアの様子には気づいていないようだった。
「お、おい、ユリシア、流石にここじゃまずいだろ……」
そう言って手を引こうとするが、ユリシアは相当強い力で俺の右手を掴んでいるらしく、なかなか外れなかった。おかげで俺の指先にはパンツ越しのユリシアの女性器の感触がこれでもかと伝わってくる。
ってか、既にパンツまでぐっしょりと濡れているんだが……。この発情エロ狐はいつもいつも恐ろしいな……。恐らく、こんな大人数の中でオナニーをするというスリルがユリシアの気分を高めているのだろう。
俺もバレてしまうんじゃないかという恐怖感はあるが、本気の拒絶はできなかった。既に股間の愚息もビンビンに勃起してしまっており、俺はもうくるみんのライブに集中できなくなってしまっていた。