異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
久しぶりの我が家の景色。相棒の尻尾もゆらゆら揺れてます
「おわっと!?」
「きゃうっ!!」
光が晴れると、俺の視界には懐かしい本棚が映る。見回せば、小型テレビや机なんかも目に入る。
どうやら、俺は本当に元の世界に戻ってくることができたみたいだった。
「リョ、リョウ……、その……」
俺はその声がした方……つまり下へと視線を向ける。するとそこには、ユリシアの顔があった。
「って、ご、ごめんっ!!」
今更になって自分の体勢に気づき、俺は慌てて飛び退いた。まさか、戻ってきて早々こんなハプニングに見舞われるとは……。
というか、俺がユリシアを押し倒す形で転移するなんて誰が思おうか。しかも、運が良いのか悪いのか、ベッドの上にな。
「だ、大丈夫っ!! そ、その……ちょっとドキドキしただけだから……」
「そ、そうか。あの神さま、仕掛けたんじゃなかろうな……。いや、そんなことはないか。まぁ、とにかくすまんかった。今後は気を付けるよ」
「え、あ、うん。そ、その……、いきなりじゃなければ……」
そんな風にもじもじしているユリシアに視線を向ける。俯いていて表情はよく見えないし、言葉も小さくて聞き取りづらいが、やはり怒らせてしまっただろうか?
なんて考えていると、ゆさゆさと揺れる狐尻尾が眼に入った。しかし、服装はこちらの世界の洋服にいつの間にか変わっている。それは俺も同じだった。久々のメイドインジャパンの洋服の感触を確かめながらも、俺の眼はユリシアの揺れる尻尾を追ってしまっていた。
何というか、この世界には似つかわしくない。向こうじゃおかしくなかったけど、こちらに戻ってくると急にこちらの世界の常識に切り替わってしまうものらしい。
「あれ、そういえば耳とか尻尾ってどうすんだろうな?」
「へ? あ、あー、どうなんだろうね。その辺りのつじつま合わせは神様がやってくれたみたいだけど、これはどういう扱いになるんだろう? ……というか、なんか話逸らされた……。まぁ、そういうところがリョウらしいけど……。なんだかなぁ」
考えられることとしたら、この世界の理が書き換わっていて、獣耳を生やした人が当たり前になっているのか、もしくはユリシアの耳と尻尾は周りには認識されなくなっているか。
だが後者の場合、俺が今ユリシアの耳や尻尾を視認できているのはどうしてだろうか? うーむ、ちょっと分かりかねるなぁ。
などといろいろ考察しつつも、ユリシアの耳と尻尾が消えずに残ってくれていたことに安堵している俺も居た。
「というかそもそも、この世界でのユリシアの立ち位置ってどうなってるんだろうな? それと、言語とか」
「う、うーん、分からない」
異世界では、俺は言語理解のスキルがあったおかげでユリシアやその他の異世界人とも会話を交わすことはできていた。もっとも、ユリシア以外で話す相手なんてほとんどいなかったんだけどさ。まぁ、ユリシアさえいればそれで良いとすら思っていたし。
もちろん、こっちの世界に戻ってきてもそれは同じだ。父親とユリシアとサブカルさえあればそれで良い。
ってか、父親はちゃんといるんだよな? あと、こっちの世界では今日が何月なのかも知りたい。と思って、デジタル時計を探すために俺は部屋中を見渡す。昔から愛用していたその時計は、時刻だけでなく日付なども一緒に確認できる優れ物なのだ。
「おーい、涼。入るぞー」
時計を見つける前に、俺の部屋の扉が叩かれた。そして、扉の向こうから懐かしい声が聞こえた。良かった、父親はちゃんといたみたいだ。
「ど、どうぞ」
俺はユリシアの扱いに戸惑いつつも、そのまま父親を部屋に招くことにした。もしかしたら、いろいろと現状の確認もできるかもしれないしな。
「おお、ユリちゃんもいたんだな」
「ユ、ユリちゃん? え、えっと、ユリシアのことだよな?」
「そうだけど、急にどうしたんだ?」
「い、いや、ユリシアって、どんな経緯で俺の家に来たんだっけ?」
「は? 記憶力の良いお前が変なことを聞くなぁ。なんだ、寝ぼけてんのか? ほら、お前と同じ高校に通うことになったから、うちにホームステイすることになったんだろ? お前とは中学の時に一度会ったことがあったから、ユリちゃんはうちを希望したって」
「あ、ああ、そうだったな。ごめん、寝ぼけてた」
「ははは、そうか」
なるほど、大体察した。ユリシアは、この世界では留学生という認識のようだ。そして、以前に俺と面識があったから、うちがユリシアを預かることになったってことだ。
ん? 俺とユリシアが同じ高校? 確かユリシアの年って俺の一つ下じゃなかったか? そして、俺は今15歳だ。つい先日ステータスを確認したから間違いない。
今日が何月何日かは分からないが、父親の口ぶり的に俺は無事進学先を決定した中学三年の終わり頃……、もしくは高校一年になったばかりと考えるのが妥当だろう。
俺の誕生日は5月なので、未だ15歳の俺が高校二年に進級しているはずがない。つまり、この時期にユリシアが俺と同じ高校に通う予定、または通っているということは有り得ない。それこそ、ユリシアが飛び級でもしていない限り。
俺は再びぐるりと室内を見回してデジタル置時計を探す。っと、何故か本棚の上にそいつの存在を見つけた。前は机の上に置いていたんだが、どうやら移動させていたみたいだ。
俺は時計を覗き込む。するとそこには、16:11という時刻表示の隣に"4月2日"と小さく表示されていた。年は……、俺が向こうの世界に旅立ってから3年後か。俺の年齢と合致するな。というか、何という偶然か、俺が召喚されてからぴったり三年が経っていた。
うーん、日付を確認すれば何かわかるかと思ったが、今の時期が高校入学を控えた春だということ以外何も分からなかったな。となると、やはりユリシアが飛び級したという線が一番しっくりくるかな。それか、神様の計らいで俺たちが同い年になったのか、だな。
まぁ、その辺は追い追い分かるだろう。今は父親との話に集中しよう。そうして俺は目の前に立つ父親に意識を戻す。
「え、えっと、リョウのお父さん?」
「ありゃ? もしかしてユリちゃんも寝ぼけてるな? そうだぞ、俺が涼の父親だぞ?」
「う、うん。ごめんなさい、ちゃんと覚えてる」
「良かった良かった」
「んでさ父さん、ユリシアの獣耳、どう思うよ?」
次に俺は、こちらに戻ってきてからずっと気になっていたことを確かめるべく、父親にダメもとで聞いてみることにした。もしこの耳やら尻尾が父親に認識されていなかったとしても、上手く切り抜ける口実は持ち合わせているからな。
「獣耳? 何言ってんだ? ユリちゃんにそんなものはないだろ?」
ふむ、どうやらユリシアの耳と尻尾は認識されないみたいだ。いや、この場合、俺以外には認識されないと言った方が良いだろうな。
「あ、あれ? って、本当だわ。お、おい、さっきまで付けてた耳、何処やっちまったんだよ?」
演技混じりではあるが、俺はユリシアにそう問いかけた。と同時に、俺はテレパシーを作動させてユリシアの脳に直接話しかける。
「(ごめん、話を合わせて!!)」
「(う、うん。分かった)」
そう言うとユリシアは、こくんと首を傾げた。
「あ、あれ? ど、何処にやったんだっけ?」
「ははは、二人とも寝ぼけ過ぎじゃないのかぁ?」
よし、上手く誤魔化すことができたみたいだな。俺たちが寝ぼけているという体で、さらにコスプレという要素を付け足して話を誤魔化せば、うちの父親ならちょろまかすことなど容易いのでな。
「あ、あはは。まぁ、お披露目はまた後でだな」
「う、うん」
「んで父さん、何か用事?」
「あー、そうそう。お前の好きな声優さんのライブチケットが二枚当たったから、今度ユリちゃんと一緒に行って来いよ」
そう言って父親は、俺に二枚のチケットを手渡して部屋を後にした。
そのチケットには、三年前俺が好きだった声優さんの名前があった。おお、すげぇ、滅茶苦茶嬉しいんだが!!
って、違う違う。今はそんなことより現状確認だ。俺は気持ちを切り替えてユリシアに向き直った。
「どうやらユリシアは今、俺と同居している留学生みたいだ」
「リュウガクセイ?」
「っと、そうだよな。そりゃ分かるはずないか。知識共有……」
「あっ、ふむふむ、なるほど。何となく理解した」
俺は知識共有の能力を使って、ユリシアにこの世界のある程度の常識やら何やらを共有した。
「そんでもって、俺とユリシアはどうやらこの春から高校に入学するみたいだ。本来俺とユリシアは違う学年のはずなんだけど、何かしらの理由で同級生ってことになっているらしい」
「へぇ、そうなんだ、なんか嬉しいかも! リョウと一緒に学校生活!! あはっ、すごく楽しみ!!」
「そ、そうだな、はは」
満面の笑みではしゃぐユリシアの姿に、俺もつられて笑みを浮かべた。
って、またもや脱線しかけたな。
「んで、ユリシアの耳と尻尾だけど、俺以外の人間には認識されないようだな。俺は認識できるし、こうやって触れることもできるみたいだけど」
そう言って俺はユリシアの狐耳を優しく撫でる。
「あ……、んん……。気持ち良い……」
「っとまぁ、こんな感じにな。あと、言語に関してはユリシアが今使っているのは日本語のようだな」
「日本語……、なるほど、今わたしたちがいるのは日本って国なんだね。ふーん、地球っていう名前の世界……というか星?」
「そうそう。ユリシアは……何処からの留学生なんだろうな?」
「あ……、なんか情報が流れ込んでくる……、うぅっ……」
「お、俺もだ……、い、痛いなこれ……」
俺たちは二人揃って頭を押さえ、急に走った頭への激痛に悶絶する。こんな痛み、感じたのは久しぶりだぞ……。
そうして数秒の後、俺たちはその頭痛から解放される。次の瞬間、脳内には様々な情報がぐるぐると駆け巡っていた。
これはまさか……、俺が異世界に旅立っていた間の記憶か? とりあえず、一つずつ確認してみる外ないな。ユリシアが俺と同級生になっている理由も知ることができるかもだしな。