※この作品はR-18です。

異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~   作:室谷 竜司

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ユリシア、家族との再会。狐姉妹は仲が良い

「(それで、次の質問なんだけどさ、どうしてユリシアみたいな人間形態じゃないの? それにさっき、もう元に戻れないかも……みたいな感じの反応をしていたよね)」

 

 メルシアちゃんがこの場にいることを一応仮という形ではあるが異世界転生と判断した俺は、次なる質問を投げかけることにした。

 

「(……分からないの。ここで目覚めた時からずっとこの姿なの。自分でもいろいろと試してみたけど、元の姿に戻れそうにない……)」

 

 するとメルシアちゃんは、心当たりがないと首を横に振ってみせた。

 

「(何か呪いで縛られてるとか?)」

 

「(あたし、呪いをどうにかする魔法は持ってないから分からない……。でも確かに、何か窮屈な感じはするかも……)」

 

「(窮屈な感じ……。試してみる価値はあるかもしれないね……)」

 

 そう言うとユリシアは一つ大きく頷き、再度メルシアちゃんに歩み寄る。そして、メルシアちゃんのすぐ傍でしゃがみ込んだ。

 

「(あっ……)」

 

 するとメルシアちゃんから、何とも気まずそうな声が漏れ出る。まぁ、声とは言っても実際に口から発しているわけではないのだけど。これ、念話だし。

 

「(メルシア、どうしたの?)」

 

 ユリシアはそんなメルシアちゃんの反応に対して不思議そうに首をかしげていた。実際、俺もよく分からないから、ユリシア同様首を横に傾けているのだが。

 

「(え、えっと……、その……)」

 

 だが、当のメルシアちゃんは困惑した様子で、目……ではなく銀色の尻尾をゆらゆらと左右に泳がせ、口ごもってしまっている。

 

 なお、その視線は真っすぐユリシアのとある一点へと注がれていた。俺はそれを見て何となくだけど察してしまった。

 

「(あー、そういうことね……)」

 

 ユリシアがしゃがんだことによって、メルシアちゃんの目線の高さには丁度ユリシアのスカートの中が丸見えになってしまっている。

 

 そして今、ユリシアは下着を身につけていない。つまり、メルシアちゃんの眼前には実姉の剥き出しのアソコがさらされてしまっている、ということだ。そりゃ、あんな反応にもなるわな。

 

「(お、お姉ちゃんって……、露出狂……だったの……?)」

 

「(ふえっ!? い、いきなりどうしたの!?)」

 

「(だ、だってお姉ちゃん、パンツ履いてない……よね)」

 

「(えっ、どうして分か……って、いやあああああっ!!!)」

 

 ユリシアは最初こそ言葉の意味が理解できないと言うように困惑顔を浮かべていたが、メルシアちゃんのストレートな指摘を受けたことでようやく察しがつき、それと同時にメルシアちゃんからの遠慮がちな視線にも気づいたようだった。

 

 ユリシアは普段は滅多に上げることのない悲鳴を上げ、それまでメルシアちゃんに見せつけるかのように開いていた両脚を慌ててぎゅっと閉じて膝を抱え込んだ。身体はぷるぷると小刻みに震え、耳は力なくへたりと垂れ下がってしまっている。

 

「(み、見えてたならもっと早く言ってよぉ……)」

 

「(あ、あたしの所為にされても……。お姉ちゃんが無自覚すぎたのが悪いんじゃない。というかそもそも、パンツ履いてないって、お姉ちゃん正気!?)」

 

「(ち、違うのっ! これはその……、履き忘れただけで……)」

 

「(じゃあ、なんで濡れてたの……?)」

 

「(ひゃんっ……、そ、そんなこと言わないでよぉ……)」

 

 はじめは真っ赤になった頬をぷくっと膨らませてメルシアちゃんに抗議の視線を向けていたユリシアだったが、メルシアちゃんに正論を叩きつけられるなり恥ずかしそうに身を縮こまらせながら涙目でいやいやと首を振っていた。

 

 何というか、どちらが姉でどちらが妹なのか分からないな……。今なら、メルシアちゃんがユリシアよりも優秀と言われてもすぐさま納得できそうだ。

 

「(やっぱりお姉ちゃんは露出狂……?)」

 

「(ち、違……)」

 

「(強ち間違いじゃないかも……)」

 

「(リョ、リョウ!?)」

 

 思わず口出しをしてしまった。するとユリシアは裏切られたという表情で俺のことを見てきた。いやうん、すまないと思っている。

 

 けどなぁ、最近のユリシアは常に何処かしらを露出しているような気がするんだよなぁ。だから、メルシアちゃんの指摘を否定できないのも事実なわけで……。

 

「(お姉ちゃんが変態さんになっちゃった……)」

 

「(へ、変態……。うぅ……、妹に変態って思われたぁ……)」

 

 でも、よく考えたらユリシアがここまでの変態になってしまった原因の一端って俺にあるような?

 

 よ、よし、黙っておこう。そして、心の中でメルシアちゃんに深く頭を下げておこう。ごめんよ、愛しの姉をこんな変態に変貌させてしまって……。

 

「(まぁ、それでお姉ちゃんたちが幸せなら別に良いけどね。それで、ちょっと話逸れちゃったけど、呪いについて調べるんだったよね?)」

 

「(あっ、そ、そうだった! んもぅ、メルシアが変なこと言い出すから……)」

 

「(ご、ごめんって……。どうしても気になっちゃったの)」

 

「はぁ……。まぁ、わたしもわたしで警戒心なさすぎだったし、お相子ってことで。さっきのは忘れてくれると嬉しい……です)」

 

「(う、うん。分かった……)」

 

「(で、呪いだったね。ちょっと待ってね、今調べるから。サーチライト……)」

 

 そう言うとユリシアは瞳を閉じ右手を掲げた。すると次の瞬間、ユリシアの右掌には拳大の白い光の玉が現れる。今ユリシアが使ったのは光属性の魔法である。

 

「(すごい! お姉ちゃん、光属性の魔法が使えるんだ!)」

 

「(ふふん。わたし、全魔法扱えるんだよ)」

 

「(えっ、そうなの!? すごいすごい! 流石はお姉ちゃん! ……露出狂の変態さんだけど……)」

 

「(お願いだからそれは忘れてよぉ!! 呪い、解いてあげないよ?)」

 

「(ご、ごめんなさい! 謝るから許して!)」

 

 狐姉妹のそんなほほえましいやり取りを、俺は静かに眺めていた。

 

 ちなみに補足説明だが、今ユリシアが扱っている光属性魔法は、単純な"光"としての役割だけでなく、対象にかけられた呪いを探り当てたり解呪することができる属性魔法である。反対に闇属性の魔法は、対象に呪いをかけることができる。

 

 もちろん、魔法にも幾つかのレベルがあるので、光属性の魔法さえ使えればどんな呪いも解呪できるとか、闇属性の魔法が使えるから誰にでも呪いをかけられるというわけではない。

 

 だが、俺とユリシアの場合、扱える全ての魔法が最大レベルにまで到達している。そのうえ、ステータスも非常に高い。だから、よほどの呪いでなければ見つけ出すくらい造作もないし、解呪だって容易にできるはずだ。

 

「(そ、それはさておき、確かにこれは何かしらの呪いをかけられてるね……。それも、結構複雑なやつ……。わたしの魔法で解けるかなぁ……)」

 

「(そんなに面倒なのか? ユリシアでも解呪できないって相当だぞ)」

 

「(うーん、なんていうのかなぁ……。呪いは呪いなんだけど、どうも闇属性って感じの雰囲気じゃないんだよねぇ……。だから、光の魔法でどうにかできるか怪しいかなぁ、って感じ……)」

 

「(闇属性っぽくない呪い……? なんだそれ……?)」

 

 闇属性魔法以外にも対象に呪いをかける方法があるとでもいうのか? 向こうの世界に呪いのアイテムなるものは存在していたが、あれも結局闇属性魔法の付与がなされているから、大きな括りで言えば一種の闇属性魔法と言えるだろう。そもそも、メルシアちゃんに何かしらのアイテムが取り付けられているわけでもないし、その線は有り得ないな。

 

「(メルシア、さっき窮屈な感じって言ってたよね?)」

 

「(う、うん。箱みたいなのに押し込まれてる感じ……。でも、意識しないと気にならないくらいだし、大して苦しくはないかな)」

 

「(箱……、あっ……)」

 

 メルシアちゃんの言葉を聞いてユリシアは一瞬だけ思案顔を浮かべたが、何か見つけたのかはっと目を見開き、突然メルシアちゃんの身体を弄り始めた。

 

「(んやぁ……、急にどうしたの!? お姉ちゃん!?)」

 

「(ご、ごめんね。でも、何か分かった気がするの。メルシアの言ってた感覚、強ち間違いじゃないかもなの)」

 

「(それって、箱に押し込められてるってやつ?)」

 

「(そう。メルシアは今、呪いで縛られてるんじゃなくて何か見えない箱みたいなものに閉じ込められてるんじゃないかって思って。サーチライトも、メルシアの身体表面に何かが纏わりついてるような反応を示してるし)」

 

「(そ、そうなの!? ひゅんっ……、で、でも、どうしてあたしの身体を撫で回すの……? 何か関係があるの……かな……、んひゃんっ……)」

 

 くすぐったそうに身を捩りながら、メルシアちゃんは未だに身体を弄る手を止めようとしないユリシアを問い詰める。

 

「(もしかしたら身体の何処かに解呪のポイントがあるかもと思って)」

 

「(な、ないと思う……よ……、んあぁ……。だ、だってあたし……、これまで何度も自分の身体調べたし……、んうぅ……)」

 

「(でも、一人じゃ調べられる範囲にも限界があるでしょ?)」

 

「(そ、そうだけど……、んひゃあ……♡ そ、そこはダメぇ……♡)」

 

 徐々に声に艶めか視差が混じってきた。姉妹だけあって、メルシアちゃんの喘ぎ声はユリシアによく似ていた。相手はユリシアではないのに、少しだけ変な気分になってしまいそうになる。いや、耐えろ、耐えるんだ、俺……! これはユリシアではない。確かに似てはいるが、ユリシアとメルシアちゃんは別の存在だ。

 

 そう自分に暗示をかけると、すぐに気持ちが落ち着いた。そうだ、俺はユリシアにしか興奮しないのだ。誰彼構わず欲情するような節操無しではないのだ。

 

「(お、お姉ちゃん……、ああ……♡ ぅあぁ……♡)」

 

「んあんっ……♡ あぁっんっ……♡」

 

 たとえ、耳と脳内を同時攻めされても、俺は何も思わない。もちろん、股間のブツも一切反応を示さない。俺の意思は固いのだ。決してユリシアを裏切ったりはしない。

 

「(うーん、ダメだなぁ……。特に反応ないや)」

 

「(はぁ……はぁ……、お姉ちゃん……、テクニシャンすぎ……)」

 

「(ふえ? どうかしたの? あっ、もしかしてくすぐったかった? ごめんね)」

 

「(い、良いけど……、ちょっと生殺し……かも……)」

 

 メルシアちゃんはテクニシャンな姉狐に両手で弄ばれて発情してしまっていた。なお、ユリシアは無自覚のご様子。ユリシア、マジ恐ろしい子……。

 

「(はぁ……はぁ……はぁ……)」

 

「だ、大丈夫? 息、荒くない?)」

 

「(はぁ……はぁ……ふぅ……、お、お姉ちゃんがあたしの身体えっちな手つきで撫でまわすから……)」

 

「(んえっ!? わ、わたし、そんなつもりないんだけど!?)」

 

「(ダ、ダメ……、ちょっと我慢……できないかも……♡)」

 

 そう言うとメルシアちゃんは自らユリシアに擦り寄り、前足をユリシアの膝の上に乗せて自らの顔をユリシアの顔へと近づける。片や純粋な獣形態、肩や獣人形態の狐姉妹の絡み合い……、マニアックすぎない?

 

「(な、何を……)」

 

「(はんっ……♡ れろっ……♡)」

 

「(っ!? メ、メルシアっ!? んあっ……♡ んんっ……♡)」

 

 そうしてメルシアちゃんは自身の鼻をユリシアの鼻に押し当て、それから舌を伸ばしてユリシアの唇をぺろりと舐め始めた。

 

 端から見れば野生の狐と少女とのじゃれ合いだ。だが、テレパシーによって二人の声を聞いてしまうと、どうしても純粋な気持ちでは見ていられない。何とも微妙な気分だ。

 

「「「えっ!?」」」

 

 俺たち三人は同時に驚きの声を漏らした。それもそのはずである。何故なら、突然メルシアちゃんの身体が白く発光し始めたのだから。

 

「メ、メルシア!?」

 

「きゃああああ!? な、何が起きて……」

 

 ユリシアもメルシアちゃんも突然の事態に激しく動揺してしまい、お互い言葉が通じないことも忘れ叫び出してしまう。

 

 そうしている間にもメルシアちゃんから発せられる白い光はどんどん膨れ上がり、ついには光が弾けてこの空間全体を包み込んでしまう。あまりの眩しさに俺は顔を両手で覆い隠した。

 

「メ、メルシアぁぁっ!!!」

 

「お姉ちゃんっ!!!」

 

 そんな二人の叫び声の後、ボンと何かが弾ける音がした。それが気になった俺は指の隙間から目の前の景色を覗き見る。すると、丁度辺り一面を包み込んでいた白い閃光が徐々に薄らいでいくところだった。

 

「「「えっ!?」」」

 

 そして光が完全に晴れた時、再び三人の驚愕した声が重なった。何故かって? 先ほどまでユリシアに擦り寄っていたはずの銀狐の姿がなかったからだ。

 

 いや、正確にはちゃんと存在している。銀色の毛並みを持つ存在は、確かに目の前にいる……のだが、銀色の面積が明らかに少なくなっていたのだ。その代わり、肌色面積が増えていた。

 

 そう、先ほどまで獣の姿だったはずのメルシアちゃんは、ユリシアとお揃いの狐耳と狐尻尾を生やした少女の姿へと変貌していたのである。

 

 ユリシアと同じくらい……いや、ユリシアより少し小さな身体は布切れ一つすら纏っていない生まれたままの姿。そんな状態の銀髪狐耳少女がぺたんとその場に尻もちをつき、状況を飲み込めず固まったまま自分の裸身を見下ろしている。

 

 そのすぐ傍では、同じく展開についていけていないユリシアが、鏡写しのように少女の真向かいに尻もちをついたまま、目の前の存在をぽかんと見つめていた。

 

 やがて裸身の少女はゆっくりと視線を持ち上げ、自分の向かいにへたり込むユリシアの瞳を見つめ返した。二人の碧の瞳が交差する。その間、俺も驚きで声が出せずにいた。

 

「メ……ルシア……?」

 

「ユリシア……お姉ちゃん……」

 

 徐々に目の前の状況に頭が追いつき始めたのか、二人はまるで確認するかのようにお互いの名前をぽつりと呟いた。

 

 その声がお互いの耳に届いた瞬間、二人は大きく瞳を見開いて両者ともに腕を伸ばし、そしてその小さな手を絡め合った。

 

「メルシア!? メルシアなのね!?」

 

「う、うん、あたし、メルシアだよ……! 言葉……、ちゃんと通じてる! ユリシアお姉ちゃんと言葉交わせてる!」

 

「うんっ、ちゃんと聞こえるよ、メルシア! 良かった……、メルシアが元の姿に戻ってくれたよぉ……、うあああああああああん!!!」

 

「お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ!! うえええええええええん!!!」

 

 二人は感極まったようにひしと抱き合い、大きな声を上げて泣き始めた。メルシアちゃんが元の姿に戻ったこと、今まで通じなかったお互いの言葉がちゃんと通じたこと、その喜びが涙となって二人の頬を絶え間なく濡らしていく。

 

 俺はそんな二人の姿を呆然と眺めていたのだが、突如として頬に温かい何かが広がる感覚を覚えた。それが気になって自らの頬に手を当てると、そこは濡れていた。

 

 どうやら俺も、二人が泣き合う姿を受けて涙を流してしまっていたらしい。それを自覚すると、途端に流れる涙の量が増える。

 

 二人の、本当の意味での再会を見届けながら、俺はただ静かに涙を流し鼻をすすっていたのだった。

 

    *

 

「はぁ、ホントに良かったぁ。改めて久しぶり、メルシア」

 

「うん、久しぶり、ユリシアお姉ちゃん!」

 

 落ち着きを取り戻したユリシアとメルシアちゃんは、涙ですっかり真っ赤になってしまった目を幸せそうに細めて微笑みあっていた。きっと今の俺もあの二人と同じような表情になっていることだろう。

 

 だが、そこで俺は重大……かどうかは分からないけど、少なくともメルシアちゃんにとっては割と重大であろう問題を思い出した。

 

 だから、二人には悪いと思いつつも、慌てて横から声をかける。なるべく視線は二人……というか、メルシアちゃんに向けないように。

 

「えっと、二人とも……、ちょっと良いかな?」

 

「んえ? どうかしたの? リョウ」

 

「勇者様……じゃなくて、お兄ちゃん?」

 

 お兄ちゃん……。良い響きだ。って、そうじゃないだろう。今はそんなことよりももっと気にすべきことがあるのだ。

 

「横から割り込んじゃってごめんな。その……メルシアちゃん……、まずは恰好……どうにかした方が良いと思うんだ……」

 

「恰好……? ……って、んひゃあああああっ!? そ、そうだった、あたし裸だったんだぁ!! い、いやあっ、恥ずかしいよぉっ!!」

 

「え、えっと……、ど、どうしよう、着るものなんて何もない……よね」

 

「ひ、ひとまず、これでも羽織っときな、ほいっ」

 

 俺は自身の着ていたジャケットを脱ぐと、それをユリシアにノールックパスした。声が聞こえているのだから、たとえ目を逸らしていたとしても外すことなんてない。

 

「よっと。うん、ありがとね、リョウ。ほら、リョウがこれ貸してくれたから、ひとまず羽織っておきな」

 

「う、うん、ありがとう、お姉ちゃん。それから、お兄ちゃん」

 

「大丈夫、気にするな」

 

 それから、俺の耳に衣擦れの音が届く。その音が止むのを待ってから、俺は逸らしていた目線を二人に戻した。

 

「うん、ちゃんと隠れてる。やっぱ、リョウの服は大きいねぇ」

 

「裾なんて、あたしの膝まで届いちゃってるね。お兄ちゃん、改めてありがとうね。えっと、お兄ちゃんは寒くない……かな?」

 

「ああ、大丈夫。にしても、やっぱり二人は姉妹なんだな。顔立ちとかそっくりだ。目の色も同じだし」

 

 俺は改めて二人の姿を見比べる。その幼い顔立ちはよく似ており、毛髪の色が一緒だったら区別がつかないんじゃないかというほどだ。……あー、いや、多少は違うかも。メルシアちゃんの方がユリシアよりほんの少しだけ垂れ目気味かもしれない。

 

 でも、よく観察しないと分からないくらいのごく僅かな違いだ。二人が血の繋がった姉妹であることは紛れもない真実だろう。いや、別に最初から疑ってなどいないけどね。

 

「あっ、わたしに似てるからって、メルシアに浮気しちゃダメなんだからね?」

 

「しません。俺はユリシア一筋だから」

 

「えへへー♡ 知ってる♡」

 

「お姉ちゃん、ホントにお兄ちゃんのこと大好きなんだね。なんか羨ましい」

 

 ほんの少し嫉妬を孕んだ羨望の眼差しでユリシアを見つめるメルシアちゃん。メルシアちゃんも、恋愛に憧れる年頃だろうしな。姉が目の前で幸せそうにしていれば、余計に羨ましく感じてしまうのだろう。

 

「メルシアにもきっといつか素敵な人が現れるよ」

 

「そうだと良いな。できれば、お兄ちゃんみたいな人が良いかなぁ。というか、お兄ちゃんが良いなぁ」

 

「リョ、リョウは渡さないからね!? いくらメルシアでも、それだけは絶対に許さないからね!?」

 

「あはは、冗談だよ。お姉ちゃんをからかいたくなっただけ」

 

「なっ、お、お姉ちゃんをからかうとは生意気なっ! このっ、このぉっ!」

 

「い、いひゃいっ、いひゃいよぉっ!!」

 

 妹であるメルシアちゃんにからかわれたことに可愛らしく頬を膨らましたユリシアは、意趣返しというようにメルシアちゃんの両頬を摘み左右にぐにっと引っ張った。メルシアちゃんは痛みで涙目になりながら、じたばたと藻掻いていた。

 

  と、その時、俺たちの耳に誰かの足音が聞こえてきた。俺もユリシアもメルシアちゃんも、その足音を聞いて肩をびくりと跳ねさせる。

 

 そうして、恐る恐る足音の下方へと顔を向ける。

 

「あら? 貴方たちは?」

 

「「「っ!?」」」

 

 巫女服を着た黒髪の女性がそこに立っていた。だ、誰なんだ、この人は……!? も、もしかして、この神社の関係者……なのか? 巫女服を着ているわけだし、有り得なくはないかもしれない。

 

 俺は真実を確かめるべく、口を開いた。だが、俺が言葉を発するよりも早く、メルシアちゃんの声がこの神社内に響き渡った。

 

「あっ、いつもお世話してくれたお姉さん!」

 

「「えっ!?」」

 

 ということは、この人がこれまでメルシアちゃんに食料を与えてくれていた人……なのか!?

 

 俺とユリシアが驚きの表情を浮かべている前で、巫女服の女性もまた驚愕に彩られた表情でメルシアちゃんの姿を真っすぐ見つめていた。

 

「あ、貴方があの狐ちゃん……なの!? で、でも確かに、耳と尻尾はあの狐ちゃんと同じ色ね……。って、耳と尻尾が生えてる!?」

 

「えっ、耳と尻尾が見えてる!? も、もしかしてユリシアのも!?」

 

「そ、そんなことってあるの!?」

 

 という感じに、俺・ユリシア・巫女服の女性がそれぞれ狼狽している中で、唯一メルシアちゃんだけは不思議そうに首をかしげ俺たちを見回していた。

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