異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
しばらくして落ち着きを取り戻した俺とユリシアと巫女服のお姉さんの三人は、現在の状況生理を始めることにした。
「え、えっと、もしかしてあなたはメルシアちゃん……えっと、銀髪の子の狐耳とか狐尻尾が見えてるんですか?」
「み、見えるわね。ついでに言うと、そっちの金髪の子にも生えているわよね?」
「えっ、わ、わたしのも見えてるんだ……」
メルシアちゃんだけでなくユリシアの耳と尻尾まで見えているのか。一体、この人は何者なんだ? それに、どうしてこんな古ぼけた神社にいるのかも気になる。
だが、それは向こうも同じだろう。こちらの世界の常識じゃ、普通人間に獣耳とか獣尻尾なんて生えていないのだから、ユリシアやメルシアちゃんの存在は不思議でならないだろう。現に、巫女服のお姉さんの視線はユリシアとメルシアちゃんの人ならざる部位に釘付けである。
そんな中、俺たちの動揺を他所に、メルシアちゃんが無邪気に巫女服のお姉さんに近づいていく。
「お姉さん、あたしの声聞こえる?」
「え、ええ、聞こえるわよ。貴方、本当にあの狐ちゃんなのね」
「うん、そうだよ。これまでは言葉が通じなかったけど、お姉さんにはずっと感謝してたの。いつもあたしの面倒を見てくれてありがとう」
そう言うとメルシアちゃんは、そのままの勢いで巫女服のお姉さんにぎゅっと抱きついた。お姉さんはおろおろと慌てながらも、抱きついてきたメルシアちゃんをそっと受け止める。
次第にこの状況に頭が追いつき始めたのか、お姉さんは頬を緩ませ労わるように優しくメルシアちゃんの頭を撫でていた。
「いろいろと信じられないことばかりだけど、貴方とこうしてお話しできるようになったのは嬉しいわ」
「あたしも嬉しいよ。やっとお姉さんとお話しできた。あっ、そうだった。それでね、後ろにいるのがあたしのお姉ちゃんとその恋人さんなの」
そう言ってメルシアちゃんは一度お姉さんから身体を放し、こちらに振り返って俺たちの紹介をしてくれた。
すると、それまで呆けた表情を浮かべていたユリシアがはっと我に返り、慌ててお姉さんに向けて頭を下げた。
「あ、あのっ、妹がお世話になったみたいで、本当にありがとうございましたっ!」
「い、いえ、気にしなくて良いのよ。私がしたくてしてただけだもの。だからお願い、頭を上げて頂戴」
「は、はい」
お姉さんに言われるまま頭を上げるユリシア。メルシアちゃんとの精神年齢の差が分からなくなることもあるが、それでもユリシアはちゃんとメルシアちゃんの姉なんだと、俺は今のユリシアの姿を見て再認識していた。
「それでその……、いろいろと気になることがあるのだけど、聞いても良いかしら? まだちょっと混乱しちゃってるの、私」
「リョ、リョウ、大丈夫……だよね?」
「ああ、多分大丈夫だと思う。えっと、すみません。ここからは俺も話に混ざらせていただきますね」
ユリシアたちの耳や尻尾が見えているということは、きっとこのお姉さんは只者ではないのだろう。ならばここは正直に説明しておくべきだと俺は判断した。お姉さんを混乱させたまま放置というのも失礼だし。
「それで、まずは何からお話ししましょうか」
「ふ、二人の生やしている耳や尻尾……、これについて聞いても良いですか?」
「まぁそうですよね。これが一番気になりますよね」
俺は軽く咳ばらいをしてから再び口を開く。
「彼女たちはこの世界の人間ではありません。この世界の人間が獣耳や獣尻尾を生やしているなんて、コスプレでもない限り有り得ないでしょう」
「そ、そうね……。でも、この世界の人間ではない……? その言い方だと、他にも世界が存在している……とでもいうの……!?」
お姉さんが恐る恐るといった感じに俺へとそう聞き返してくる。そりゃ、普通は誰だって自分の知らない別世界が存在している、なんて言われたら怖くもなるだろう。お姉さんの反応は何一つとして間違っていない。
第三者が見れば、俺はただの頭のおかしい奴だろう。きっと俺がただの傍観者だったとしたら変質者を疑っているに違いない。
「ええ、ありますよ、異世界。創作物のような摩訶不思議な話ですけどね。ですが、この二人を見れば、それも強ち間違いではないと思えませんか?」
だが、残念ながら俺は頭がぶっ壊れているわけでも変質者というわけでもない。いたって真面目なのだ。なんせ、俺はこの身で実際に体験したのだから。
さらには証拠というように、この世界にはいるはずのない獣耳と獣尻尾を生やした人間がこの場にいるのだ。"異世界がある"という俺の言葉の信憑性を多少なりとも高めてくれているはずだ。
「何とも荒唐無稽な話だけど……、この子たちを見てしまうと全否定はできないのよねぇ……」
「信じられない気持ちは分かりますよ。俺だって、恐らく
「えっ!? も、もしかして貴方も……」
「あっ、俺はこの世界の生まれですよ。普通でないのは確かですけどね。ほら」
俺はそう言うと掌の上に魔法を展開した。選んだのは火属性魔法だ。こういう時の定番だろ? 火の魔法って。
俺の掌の上では小さな青い炎がゆらゆらと揺らめいている。あまり大きすぎると何かの弾みでこの神社内に火が広がってしまうかもしれないからな。
「わあ、青い炎だ! 綺麗だね!」
「おお、すごい! お兄ちゃん、流石だね!」
俺のすぐ傍では、狐姉妹が感嘆の声を上げ無邪気にはしゃいでいる。こういうところは二人ともまだまだ子供っぽいよな。
そんな二人を他所に、俺はお姉さんへと視線を戻す。するとお姉さんは、俺の手の上で静かに燃える青色の炎を唖然とした様子で見つめていた。
「ど、どうして火が……」
「信じられないかもしれませんが、これは魔法です。今、俺は魔法によってこの青い炎を出現させているんです」
「魔法……。ど、どうしてそんなものが……」
「俺、つい先日まで異世界で旅をしていたんです。それも、三年ほど。この魔法は、その時に習得したものです」
「な、なるほど。だから普通じゃない、と?」
「そういうことです。自分でもおかしなことを言っている自覚はあります。でも、これは紛れもない真実なんです」
俺はお姉さんの顔を真っすぐ見つめる。すると、それまで驚愕の表情を浮かべ佇んでいたお姉さんは、一度瞳を閉じたかと思うとすぐさまその瞳を開き、先ほどとは違う引き締まった表情を作り俺を見つめ返してきた。
「貴方が嘘を吐いているようには見えません。それに、魔法まで見せられてしまったら信じるしかないわ」
「信じていただけて良かったです。そんなわけで、この二人は異世界人ということになります。いろんな事情があって、二人ともこっちの世界にいるんです」
二人がこちらの世界にいる理由については一応ぼかしておく。特にメルシアちゃんの事情はそう易々と話すわけにはいかないだろう。それに、俺たちも詳しいことについては分かっていないわけだし。
「なるほどね。だからその子は狐なのに何か変な言葉を話していたということだったのね。本当、世界には不思議なことがたくさんあるものなのね」
うん、二人の事情について問い詰められはしなかったな。恐らく、俺の雰囲気を見てお姉さんも察してくれたのだろう。非常にありがたい。
にしても、結局、獣状態のメルシアちゃんがどんな言語を使っていたかははっきりしなかったな。いやまぁ、向こうの世界の言語を使っていたんだろうなという何となくの予測はつくのだが。
そしてユリシアは、こちらの世界に来たことにより言語等の常識が日本人のそれに書き換わってしまい、異世界の言語が理解できなくなってしまっていたため、メルシアちゃんと意思疎通が取れなかった、ということだろうか?
……いや、ちょっと待てよ? なら何故、今は言葉が通じるようになった? ユリシアとお姉さんそれぞれの話から察するに、何を話していたかまでは分からなくとも、少なくとも人の言葉であることは理解できていたみたいだし、俺がただ動物の鳴き声を能力で翻訳していたというわけではないはずだ。
メルシアちゃんにかけられていた呪いが解けるあの瞬間に、きっと何かが起きたのだろう。うーむ、今の俺では知る術がないな……。
「リョウ? 難しい顔してどうしたの?」
「ん? ああ、ちょっとな。どうして獣の姿の時のメルシアちゃんの言葉は通じなかったのに、今のメルシアちゃんの言葉は通じてるんだろうと思ってな」
「そ、そういえばそうね。今ははっきりと日本語だと理解できるわ。けど、昨日までは全然理解できなかったのよね。というかそもそも、どうして姿が変わったのかしら? さっきの光と関係あったりする?」
ふむ、やはりあの光も見えていたんだな。まぁ、あんだけ眩しけりゃ普通は認識できるわな。
でも、ユリシアとメルシアちゃんの耳や尻尾を視認できているこの人だから見えたというだけで、もしかしたらこの二人の特殊部位が認識できない人にはあの光も認識できなかったりするのかもしれない。
……この推測は、今はどうでも良いか。
「あっ、そうでしたね。ええ、あの光はメルシアちゃんが発したものなんです。光が晴れたら、何故かメルシアちゃんが人型に戻っていたんですよね」
「戻っていた……ということはつまり、その姿が本来の姿で、獣の姿は仮の姿……ということなのかしら?」
「う、ううん。そうじゃないの。本来、わたしたちは獣の姿には変身できないの。だから、メルシアがあんな姿になってたのがどうしてなのか、わたしには分からなくて……」
「メルシアちゃんは何か分かったりする?」
「あたしも、どうしてあんな姿にさせられていたかは分からない……。でも、さっき元の姿に戻った時にね、分かったこともあったの」
「そうなのか!?」
俺は思わず驚きの声を上げてしまう。いきなりの大声に、メルシアちゃんは一瞬びくりと肩を跳ねさせてしまった。
「おっと、ごめんな、驚かせちゃって。それで、分かったことって?」
「ここが日本っていう別世界の国で、みんなが今使っている言語がえっと……日本語?っていう言語だってことが分かったの。あたしもこの姿に戻ってからは日本語で話してるみたい」
「ええ、ちゃんと日本語よ」
なるほど。ということは、人間形態に戻る瞬間にメルシアちゃんの中の常識が異世界人のものから日本人のものに切り替わった、ということなのだろう。それならば、ユリシアやお姉さんが獣形態のメルシアちゃんの言葉を理解できなかったのも頷けはする。
「あたし的にはまだ実感ないんだけどね。みんながイセアルス語を話してるような感じ。そういえば、お姉ちゃんはどうなの? お姉ちゃんも日本語使ってるんでしょ?」
イセアルス語とは、まぁお察しの通り向こうの世界で人間族並びに人間族派閥の獣人たちの公用語とされていた言語のことである。ユリシアたち狐系獣人族もこれに当てはまるわけだ。
「わたし? うん、使ってるらしいね。でも、わたしも未だに実感はないよ。でもまぁ、みんなに伝わってるなら別に良いかなって」
「それもそっか。深く考えると切りがないかもね」
「それで、メルシアちゃん。他には何か分かったの?」
「あっ、ううん。これ以上は何も……。ごめんなさい」
「いやいや、メルシアちゃんが謝る必要はないんだよ。でも、そっか。となるとお手上げかな。まぁ、もしかしたらいずれまた何か分かるかもしれないしな」
力になれなかったことが悔しいのか、メルシアちゃんはしょんぼりと肩を落としてしまう。俺はそんなメルシアちゃんをなだめつつ、これ以上の考察は難しいと判断し、ひとまず保留にすることにした。
「えっと、他には何か質問ありますか?」
「そうねぇ……。今は特にないかしらね」
「そうですか。では、今度はこちらから幾つか質問してもよろしいですか?」
「ええ、構わないわよ。答えられることなら何でも答えてあげるわ」
俺はありがとうございますと一言礼を言ってから、何について聞くかを頭の中で整理し、それから再度口を開いた。
「えっと、まずは、どうしてこの神社に?」
まずはここから聞くべきだろうか。メルシアちゃんが言うには、このお姉さんはほぼ毎日のようにメルシアちゃんのお世話をしてくれていたらしいし、恐らくこの神社の関係者か何かで間違いないのだろう。
「あー、そのことね。うーん、私もあんまりよく覚えていないのよねぇ。気づいたらここにいた……って感じかしら」
「気づいたらここに……?」
「ええ、そうなのよ。それまでの記憶は思い出せないのよ」
それって、記憶喪失か何かだったりするのだろうか? だとすると、この神社の関係者かどうかも分からないかもな……。でも、何故巫女服を着てるのだろうか?
「ち、ちなみにお名前は?」
「それも分からないの。でも、気がついたらここにいたのだし、きっと私はこの神社と何かしら関わりがあるんじゃないかって思って、一応この神社の名前である"
なるほど。つまりこの神社の名前は梅坂神社ということか。
「それでね、下の名前は"めぐる"と名乗ることにしてるの」
「めぐる……ですか?」
「ええ。あのボロボロの鳥居あったでしょ? あそこにね、"めぐる"っていう名前が刻まれてたのよ。だから、それを借りることにしたのよ」
「へぇ、そうだったんですね。気づきませんでした」
鳥居なんて態々じっくり観察するようなものでもないからな。
「ってことは、貴方は梅坂めぐるさん……というお名前でよろしいですか?」
「仮だけど、そういうことになるわね」
「じゃあ、梅坂さんとお呼びすれば良いですか?」
「めぐるで良いわよ。まぁ、好きなように呼んでくれて構わないけど」
「分かりました。ではめぐるさん、次の質問なのですが、この神社で目覚めてからどれくらい経ちます?」
俺は巫女服のお姉さん改めめぐるさんに次の質問を投げかける。
「うーん、きっちり数えていたわけじゃないから正確な数字は分からないけど、だいたい15年くらいかしらね」
「えっ、15年!? そんな長い間ここに!? そ、外には出なかったんですか? あと、生活とかはどうしてるんですか?」
「生活はね、お賽銭があるから大丈夫なの。まぁ、勝手にもらうのは気が引けるんだけどね。けど、私以外に人もいなさそうだし良いかなって」
「お賽銭、そんな頻繁に?」
「うーん、2週間に一回はもらえるわね。誰が入れてくれてるのかは分からないけど、正直ありがたい限りだわ。あっ、そういえば昨日も入っていたわね。確か2000円くらいだったかしらね」
……それは俺とユリシアの分だろうな。確かに昨日、俺とユリシアで1000円ずつ賽銭箱に放り投げたし。まぁ、態々進言する必要もないだろうし、ここは黙っておこう。
にしても、こんなおんぼろ神社に俺たち以外にも足を運ぶ人がいるとは意外だ。というか、俺たちなんて昨日初めてこの神社の存在を知ったわけだし。
「な、なるほど、生活はどうにかなっているんですね。ということは、買い物などで外に出る機会もあるということですか」
「あるわよ。でも、外出は買い物くらい」
「それ以外はずっとここってことですか?」
「そうなるわね。あまり外に出る気にはなれないのよ。自分でもよく分からないのだけどね、なんか私、この神社に愛着がわいちゃってるというか執着してるというか、そんな気持ちが心の中にあってね」
「愛着……、執着……。うーん、よく分からないですね」
一瞬、霊的な存在か何かなのかという考えが脳裏を過る。だが、めぐるさんの姿ははっきりと認識できる。決して何処か透けているようにも見えないしな。だから、その考えはすぐに除外した。
やはり、記憶喪失と考えるのが妥当なのかなぁ。なんかそういうわけでもなさそうなのだが。うーむ、考えても答えが出てこない。
「めぐるさんは、この神社から離れるつもりはないということですか?」
「そうね。私はここにいたいわ」
「寂しく……ないの?」
「もちろん、寂しい気持ちもあるわよ。特に、メルシアちゃんがここに来てくれるまではずっと一人だったんだもの」
「そ、そういえば、メルシアちゃんって何時頃ここに?」
「うーん、確か三年くらい前だったかしらね」
「三年前ですか。ということはつまり、12年ほど一人だったんですね」
メルシアちゃんがこの世界にやってきたのが三年前か……。これについても気になるが、今は後回しにしよう。
「そういうことになるわね」
「それでも、離れたくないんですか?」
「うん、離れたいとは思わないわ」
俺のそんな問いかけに、めぐるさんは何の迷いもなく頷いてみせた。だから俺は、それ以上何も言えなかった。
この人が望んでいることなのだから、こちらが口出ししてはならない。
「あ、あの……、メルシアなんですが……」
少し申し訳なさそうな声色で、ユリシアがそう言葉を漏らす。
「分かっているわ。貴方たちは家族なのでしょう? それなら、一緒にいるべきだわ。私のことは気にしなくて良いから」
「お、お姉さん……、あたし……」
ほんの少し寂しそうに微笑んだめぐるさんの姿を見て、メルシアちゃんは瞳を潤ませながらぽつりとそう呟く。
「ふふっ、そんな泣きそうな顔しないの。また何時でも会えるでしょう? 私なら何時でもここにいるのだから。暇な時に顔出して頂戴な」
「う、うんっ! そうするっ!」
「そ、そうですね。俺たちもまた来ます」
俺の言葉にユリシアも賛同するように頷いてくれる。
「そう、ありがとうね、3人とも。っと、そういえば、貴方たちの名前を聞いていなかったわね」
「あっ、そういえばそうでしたね。わたしはユリシア・フォクサローゼリス。メルシアの一つ上の姉です」
「本当、二人はそっくりね。とっても可愛いわ」
「ははっ、そうですね。んで、俺は霜崎涼って言います」
「メルシアちゃんにユリシアちゃん、それから涼君ね。……ん? 霜崎……? 何処かで聞いたような……? それに貴方の顔、見覚えがあるような……?」
何事かをブツブツと呟きながら、めぐるさんは俺の顔をまじまじと見つめてくる。一体どうしたのだろうか?
「うーん、気のせいかしらね。ごめんなさい、ジロジロ見ちゃって。とにかくよろしくね、3人とも」
「うん、よろしく、めぐるお姉さん」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「うん。さてと、そろそろ辺りも暗くなってきたわね。貴方たちはもうお家に帰った方が良いんじゃないかしら?」
めぐるさんは一度満足そうに頷くと、視線を空に向けながら俺たちにそんなことを言ってくる。確かに、いつの間にか陽が落ちかけているな。流石にそろそろお暇しないとだろう。
「そうですね。では、今日はこの辺で失礼させていただくことにします。あの、いろいろとありがとうございました、めぐるさん」
「お礼なんて良いのよ。こちらも、お話しできて嬉しかったわ。また是非遊びに着て頂戴ね。何時でも待ってるわ」
「ええ、そうさせていただきます。では」
そうして俺はユリシアとメルシアちゃんを引き連れて神社を後に……する前に、
「メルシアちゃんの服、どうしようか……。流石にこのままじゃまずいよね」
「あっ、それなんだけどね、融合能力試してみたいの」
「あー、あの能力か」
「というわけでメルシア、ちょっとこれ脱がすね」
「えっ、きゃああっ!?」
そうしてユリシアの手によりメルシアちゃんは再び全裸にさせられてしまう。ユリシアと比較すると明らかに凹凸の少ない幼気な姿態が俺たちの目の前にさらされた。
きっとメルシアちゃんのような体型が狐系獣人族の子供の標準体型なのだろう。ユリシアが異様な成長を見せただけで。
ほんの少しぽっこりしたお腹。その上にはほぼ平坦な胸。その中央の突起もユリシアのものに比べるとかなり小さい。また、下半身にも肉はあまりついておらず、まさしく幼児体型という言葉がしっくりくる。
「お、お兄ちゃん、は、恥ずかしいからあんまり見ないで……」
「おっと、すまん」
ついジロジロと見てしまった。俺は慌ててメルシアちゃんに頭を下げ、それからくるりと身体を反転させてメルシアちゃんの幼き姿態を視界から外す。
「リョウはメルシアじゃ興奮しないから良いもんね」
「ええっ、そ、それはそれでちょっとショック……」
「そうでしょ? リョウ?」
「いや、言いづらいわ……!」
「あらあら、仲が良いわねぇ」
そんな俺たちのやり取りをめぐるさんに温かい目で見守られながら、ユリシアはメルシアちゃんと魂の融合を果たした。ふむ、思ったよりすんなりできるものなんだなぁ。しかも、魂だけが融合して肉体はそのまま残るわけでもなく、ちゃんとメルシアちゃんの肉体ごとユリシアの中に取り込まれた。
「不思議な現象ねぇ」
「全くもってその通りですね」
「うーん、特に変わったことはない……かな。メルシアは大丈夫? ……そう、問題はないんだね。なら良かった」
メルシアちゃんを取り込んだユリシアの身体には特に変化が見られなかった。てっきり二人の特徴が半分ずつ容姿に表れるものかと思っていたので驚きだった。
なお、ユリシアは自分の中にいるメルシアちゃんと話をしているだけで、決して独り言を呟いているわけではない。その辺り、ご理解いただきたい。
「……。ん? えっと、ちょっと待ってね。……これで良いのかな?」
「(あー、あー。みんな聞こえるかな?)」
すると突然、メルシアちゃんの声が脳内に響いてきた。感覚的にはテレパシーを使った時と同じような感じだ。
「メ、メルシアちゃんの声が直接脳に!? こんなこともできるのね、すごいわ」
「これ、返事はどうすれば良いのかな?」
「(あっ、みんなの声は聞こえてるからそのままで大丈夫だよ)」
「あっ、そうなのか」
「(それでね、めぐるお姉さん、今までホントにありがとう! 絶対また遊びに来るからね!)」
「ええ、楽しみにしてるわね」
「(うんっ!)」
「ではめぐるさん、今度こそ俺たちはこれで」
というわけで、俺たちはようやく神社を後にするのだった。たった数時間のことだったが、非常に濃厚な時間だったように思う。まぁ、それもそのはずだよな。
俺とユリシアは手を繋ぎながら駅を目指すのだった。あっ、ユリシアはちゃんとCDの入った袋を持っているぞ。また忘れるなんていう落ちはない。
「(お兄ちゃんの手、温かいね)」
「えっ……。あっ、そっか。感覚共有……。で、でも、リョウはわたしのものだからねっ! メルシアにはあげないからねっ!」
道中のユリシアとメルシアちゃんのそんなやり取りが印象的だった……というの俺の感想はどうでも良いな。