※この作品はR-18です。

異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~   作:室谷 竜司

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姉妹逆転? メルシアちゃんに諫められるネガティブユリシア

 神社から帰宅後、時間は既に19時に迫りつつあったので、俺は三人分の夕食を用意することにした。なお、その間にユリシアとメルシアちゃんは入浴を済ませていた。

 

 そして、彼女たちが風呂から上がったタイミングで丁度夕食が完成したので、俺たち三人は食卓を囲み夕食に手をつけ始めた。

 

「うぅ、服ぶかぶか……。特にお胸の部分がゆるゆる……」

 

 目の前の食事に手をつけながら、メルシアちゃんは恨みがまし気な視線をユリシアに向けていた。その顔はほんのり赤みがかっており、時折こちらを気にするようにチラチラと視線を投げてくる。まぁ、無理もないよな。

 

 見ると、確かにメルシアちゃんが今身につけている服・・・・・・特に胸の部分が明らかにスカスカだった。

 

 襟元も少し伸びてしまっているのか、メルシアちゃんの首周りから胸元にかけて肌色が大分露出してしまっていた。というか、メルシアちゃんが身動ぎする度に、子供サイズのぷっくりとした薄桃色のアレが顔を覗かせてしまっているので、俺も下手にメルシアちゃんに視線を向けられない。

 

「し、仕方ないでしょ、それしかなかったんだから。裸よりマシでしょ?」

 

 そう言うユリシアの服の胸元は、その奥に隠れる二つの膨らみによって引っ張られている。正直、苦しそうだ。

 

 というか、これを見せられるとユリシアの胸が規格外レベルで大きいということを改めて実感させられてしまう。

 

 身長差はほとんどないはずなのに、胸だけ対照的な姉妹。そんな二人が隣り合い睨み合っている姿を見ながら、俺は何とも言えない気持ちになってしまっていた。

 

「そうだけど……、お姉ちゃんのおっぱい、大きすぎ。もしかして、お兄ちゃんが何かしたの?」

 

 と思ったら、急にメルシアちゃんが俺に話を振ってきた。ほんの少し期待するような瞳を俺に向けてくる。何故?

 

「俺!? た、多分何もしてないはずだけど……。あー、でも、もしかしたら勇者の加護ってやつがユリシアに影響を及ぼしたかも……とは考えてたりするかな」

 

「勇者の加護?」

 

 何それ?と首をかしげるメルシアちゃんに、俺は勇者の加護についての簡単な説明をしてやる。

 

「ふーん、そんなものがあるんだ。勇者ってやっぱりすごいね」

 

 粗方説明し終えると、メルシアちゃんはこくこくと首を何度も縦に振りながらそんな感想を漏らす。

 

 勇者の加護を与えられた対象は、勇者の任意のタイミングで能力値を数倍に引き上げられる。では、元々常人離れしたユリシアの能力値に勇者補正をかけたらどうなるか?

 

 結果はいたって簡単だ。勇者補正により、たちまち二人目の勇者の誕生である。この"力を授ける力"とはつまり、使う相手によっては化け物を生み出しかねないヤバい能力なのである。

 

「でも、どうしてそれがお姉ちゃんのおっぱいに関係してくるの?」

 

 だが、本来勇者の加護はステータスにしか作用しないはずだ。だから、メルシアちゃんがそのような疑問を持つのも当然のことだろう。

 

 俺にも明確な根拠というものはない。なんせ、俺が考えているのは見方を変えればただの屁理屈に変わりないのだから。

 

「いやほら、身体つきも言ってしまえばステータスみたいなものかなって。身長も体重も、それからスリーサイズも、全部数値化されてるんだしある意味ステータスじゃね?的な……。だから、根拠も何もないんだよね、実際」

 

「でも、その場合おっぱいだけじゃなくて、もっと他のところにも補正かかるんじゃないかなぁ? 補正のかかり方が局所的すぎるように思う」

 

「あー、確かにそうかもしれない。となると、この線は違うのかな」

 

 メルシアちゃんに指摘されるまで気づかなかったが、言われてみれば確かにおかしい気がする。加護による能力補正は基本的にどの能力値にも均等にかけられる。勇者が意図的に割り振りでもしない限り。

 

 だが俺は、ユリシアに対して選択的補正はかけていなかった。だから、もしユリシアの身体つきに対して加護が影響を及ぼしていたとしても、それは胸だけでなく身体全体にかかるはずなのである。

 

 こんな矛盾点に気がつけないとは、俺もまだまだだな。それに比べ、メルシアちゃんはかなり鋭い。ユリシア以上に優秀と言われているだけはある。

 

「可能性があるとしたら、お兄ちゃんの無意識的な願望がお姉ちゃんの身体つきに反映してる……とかかなぁ。でもまぁ、加護による成長は望み薄かなぁ」

 

「ねぇ、メルシア? その言い方だと、あわよくば自分もおっぱい大きくしてもらおう……とか考えているように聞こえるのだけど……、気のせいだよね?」

 

「……き、気のせいだよ?」

 

「どうして疑問形なのかな?」

 

「……ごめんなさい……、考えてました」

 

 ユリシアに問い詰められ、メルシアちゃんはあっさりと白状した。頭は良いのかもしれないが、抜けているところもあるんだな。

 

 というか、さっき俺に対して期待するような眼差しを向けてきていたのはそういう意図があったからなのか。

 

「あたしもおっぱい大きくしたいよぉ! お姉ちゃんだけずるいのぉ!」

 

 あっ、幼児退行し始めた。やっぱり、姉が持っているものを欲しがってしまうのが妹というものなのだろうか? だが、おっぱいが欲しいとはなかなか無理難題なワガママだな。思わず笑みを浮かべ和んでしまう俺。

 

「望み薄かもしれないけど、試してみる?」

 

 そして、そんな可愛らしいワガママを言うメルシアちゃんに、俺はそう言葉をかけていた。無理難題だけど、それでも協力してあげたいと思ってしまった。

 

「えっ、良いの!?」

 

「良いよ。別に俺にとっちゃ負担でも何でもないしね」

 

「で、でもリョウ……、態々メルシアのワガママに突き合わせちゃうのは申し訳ないよ……」

 

「気にすんなって。姉に対して対抗心を燃やしちゃうのが妹ってものだと思うから。でもメルシアちゃん、できるかどうかは分からないからな?」

 

「うん、それは分かってる。その……、ありがとう、お兄ちゃん」

 

 恥ずかしそうに、でもそれ以上に嬉しそうに、メルシアちゃんは俺に対して微笑みを向けてお礼の言葉を言ってくれる。

 

 その隣では、ユリシアが頬を膨らませて拗ねていた。うーむ、ユリシアは一体何が気に入らないのだろうか?

 

「どうしたんだよ、ユリシア?」

 

「むぅ、これでもし二人の推測が当たってて、メルシアのおっぱいが大きくなったら、リョウわたしからメルシアに……」

 

「乗り換えません。俺は何があってもユリシア一筋です。というか、この前信用しろって言ったよな? もう忘れたのか?」

 

「わ、忘れたわけじゃないよ……。でも、メルシアの方がわたしよりずっと優秀だし、わたしの唯一のアピールポイントまで取られちゃったら……」

 

 なるほど。言わば妹に対する劣等感みたいなものか。きっと、これまでユリシアは妹であるメルシアちゃんと比較され続けてきたのだろう。時々こうしてネガティブになるのも、つまりはそういうことだったんだな。

 

「お姉ちゃん、バカなの?」

 

 すると突然、メルシアちゃんの口からそんな罵倒が飛び出した。その場等を向けられたユリシア本人は、一瞬だけ何を言われたのか理解できず固まってしまったが、すぐに顔色を変えてメルシアちゃんを睨みつけた。

 

「い、いきなり何よっ!」

 

「だってそうでしょ? お姉ちゃん、何も分かってないんだもん」

 

「な、何がよ……」

 

「だってお兄ちゃん、すごく辛そうな顔してるもん」

 

「えっ……」

 

 メルシアちゃんにそう指摘され、ユリシアは俺の顔を覗き込んでくる。俺が辛そうな顔をしている……? そんな自覚はなかったのだが……。

 

「っ……!?」

 

 だが、俺の顔を見たユリシアは絶句してしまっていた。この反応、俺はどうやらメルシアちゃんの指摘通りの表情を浮かべているようだ。別に辛いなんてこと……ないよな……。いや……、何か引っかかる……。

 

「ほらね。お姉ちゃんが自信を持てずにうじうじしてる所為で、お兄ちゃんを苦しめてるの。どうしてお兄ちゃんのことを信じてあげられないの? そんなことじゃ、お姉ちゃんいつかお兄ちゃんに愛想尽かされちゃうかもね」

 

「……嫌……、そんなの嫌……」

 

「お姉ちゃんはいつもそう。いつもあたしと自分を比べて勝手に落ち込んで勝手にネガティブになる。誰もお姉ちゃんのことを劣ってるなんて思ってもいないのに」

 

 メルシアちゃんは真剣な瞳を真っすぐユリシアに向け、これまで溜め込んできたものを吐き出すかのように静かに、それでいて力強い口調でユリシアに言葉をぶつけていた。

 

「でも……、わたしが劣ってるのは事実だし……」

 

「だから、そんなこと誰が言ったの? もし、それを誰かに言われたなら、あたしがその言葉を訂正してあげる。そして、そんなこと言った奴に報復する。だからほら、教えてよ。誰がそんなふざけたこと言ってたの?」

 

「だ、誰にも……言われてない……。わたしがそう思ってただけ……」

 

「ふざけないでっ!」

 

 バシンという乾いた音が部屋中に響き渡った。俺もユリシアも、一瞬何が起こったのか分からず呆然としてしまう。

 

 だが、少ししてユリシアが自らの手で頬を抑え苦悶の表情を浮かべたことで、何となく状況を理解することができた。ユリシアは今、メルシアちゃんに頬を叩かれたのだ。

 

 どうして?という表情を浮かべてメルシアちゃんに視線を投げるユリシアに対し、メルシアちゃんはなおもまくし立てる。

 

「言ったでしょ? 報復するって。お姉ちゃんのこと悪く言うなら、たとえお姉ちゃん自身だったとしてもあたしは許さない」

 

「メル……シア……」

 

「お姉ちゃんは誰にも劣ってなんかいない。もちろん、あたしにもね。そんなお姉ちゃんを侮辱するなら、あたしは何度だってお姉ちゃんを殴る。お姉ちゃんが自分のことを悪く言わなくなるまで」

 

「……」

 

 メルシアちゃんから言葉をぶつけられ、ユリシアは俯いてしまう。その肩は震えており、瞳からはぽたぽたと雫が流れ落ちていた。

 

「あたしが優秀だったのはもう過去の話。お姉ちゃんは勇者様の相棒として一緒に世界を救えるくらい強くなったんでしょ? なら、もっと自信を持たなきゃダメ。お兄ちゃんの為にもね」

 

「うん……、ごめんなさい……。ごめんなさい……、リョウ……。ありがとう……、メルシア……」

 

 ユリシアは俺に謝罪の言葉を、そしてメルシアちゃんに感謝の言葉を継げながら、ボロボロと涙を溢れさせていた。

 

 久しぶりにメルシアちゃんと再会したことで、ユリシアの中の劣等感が再び顔を出してしまったのだろう。だから先ほどのようなネガティブな発言を繰り返してしまったんだと思う。

 

 きっとこれまで、自分の隣で周囲から持て囃されるメルシアちゃんの姿を見て、自分は劣った存在なのだと思い込んでしまっていたのだろう。それをメルシアちゃんはずっと心苦しく思っていた。

 

 そして今、その感情が爆発しユリシアに本音でぶつかった。決してユリシアは劣った存在なんかではないのだと強く訴えかけた。

 

 ユリシアにとって家族からのその言葉は、何よりの救いだったのだと思う。そうして今、心中で抱えていたもやもやした気持ちが取り払われ、感極まったように涙を流しているのだろう。やはり、家族には勝てないよ、俺なんかじゃ。

 

「ホント、困ったお姉ちゃんだよ。まだそんなくだらないコンプレックス抱えてたなんてね。勇者様と出会って強くなったと思ってたのに、心はまだまだ昔のままなんだもんね」

 

 溜息混じりにメルシアちゃんがそう言う。妹なのに、本当にしっかりした子だよ、この子は。

 

「不甲斐ないお姉ちゃんでごめんね……」

 

 一方、ユリシアは恥ずかしそうに肩をすくめていた。

 

「良いよ、別に。これでお姉ちゃんのコンプレックスを取り除けたなら。まぁ、これでまだくだらない戯言を言うようだったら、今度こそ容赦しないけどね」

 

「ううん、もう言わない。大丈夫だから、これ以上は勘弁してね」

 

「ふふっ、良かったよ。あたしも、お姉ちゃんを殴るのは辛いから」

 

 先ほどユリシアの頬に打ちつけた自分の右手を摩りながら、メルシアちゃんは冗談めかしたような口調でそう言ってみせた。

 

「ごめんね、辛いことさせちゃって。それとリョウ、何度もリョウの気持ちを疑うようなこと言っちゃってごめんなさい。わたし、これまで勝手にメルシアに劣等感を抱いてたの。けど、もう大丈夫だから」

 

「えー? ユリシアの大丈夫は信用ならないからなぁ」

 

「なっ……、ご、ごめんってば! つ、次こそはきっと大丈夫だからぁ!」

 

「ははっ、冗談冗談。ちょっと仕返ししてやりたくなっただけだから」

 

「もぅ、リョウってば……。まぁ、全面的にわたしが悪いわけだし、何も言えないんだけど。ホント、迷惑ばっかりかけちゃってごめんね」

 

「良いさ。お前からの迷惑なら何時でも被ってやる」

 

 多少は苦しいという感情もあったが、ユリシアはこうして最後には元の笑顔に戻ってくれる。だから、これくらいの苦痛なんて大したことない。

 

「あーあ、ホントに羨ましい限りだよ。あたしにも素敵な出会いがあると良いなぁ。お兄ちゃんみたいな……っていうのはちょっと高望みしすぎかな」

 

「この世にリョウレベルの男なんていないよ」

 

「俺を過大評価するのは止めてくれ。恥ずかしいわ」

 

 そうして、にぎやかな食卓が戻ってきた。恐らく、ユリシアが完全に自分に自信を持てるようになるまではもう少し時間がかかるだろう。だから俺は、ずっと見守っていてあげよう。

 

「っと、そうだ。話は変わるんだけどさ、さっきめぐるさんが言ってたけど、メルシアちゃんがあの神社で目覚めてから三年が経つって本当?」

 

「うーん、多分そのくらいだとは思うけど、正確には分からない」

 

「あれ? ステータスで自分の歳とか確認できるよね?」

 

「あたし、ステータスの見方分からないの」

 

 そう言われて思い出した。そういえばユリシアも、最初は自分のステータスを見る方法が分かっていなかったな。

 

「あー、そっか。それじゃあ確認のしようがないか」

 

「 まぁでも、めぐるさんが三年前にメルシアちゃんと出会ったと言っていたのだし、きっと正しいのだろう。だが、三年前というのはちょっと引っかかる。

 

「でも、急にどうしてそのことを?」

 

「いやな、俺が勇者として向こうの世界に召喚されたのも三年前のことだったんだ。もしかしたら、何か関係があるのかなと思ってさ」

 

「うーん、流石に考えすぎじゃない? メルシアが目覚めたのが三年前ってだけで、もっと前から神社にはいたのかもしれないし」

 

「それもそっか。というか、例の連中に襲われたのって何時の話?」

 

「えっと、確かリョウと出会う一年くらい前だったかな」

 

「ふむ。確かにそれなら、もっと前にメルシアちゃんが転生していてもおかしくはないか。ごめんな、変なこと言い出して」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

 三年前という数字に過敏になりすぎていたのかもしれない。流石に俺が異世界に召喚されたこととは関係ないわな。

 

 それはそうと、気になることはまだまだある。メルシアちゃんが使う言語は日本語に切り替わったようだけど、果たしてユリシアのようにこの世界の概念としてはめ込まれたのか? 例えばユリシアには明確な過去の記憶が流れ込んできていたが、メルシアちゃんには果たしてそれがあるのだろうか?

 

 この世界でもユリシアの妹という扱いになっているのか、メルシアちゃんはユリシアの一歳下というが年齢はユリシアに合わせて一つ引き上がっているのか、狐耳や狐尻尾は周囲の人間から見えなくなっているのかなどなど、確認すべきことは多い。

 

 これを確認するにはステータスを見るのが一番手っ取り早い。ある程度の情報ならステータスでも確認できるはずだ。

 

 しかし、メルシアちゃんは自分でステータスを確認する術を持っていない。ならば、ここは一つ俺が確認しよう。

 

「なあ、メルシアちゃん。まだまだいろいろと確認したいことがあるんだけど、ステータスを見せてもらっても良いかな?」

 

「ステータス? えっと、さっきも言ったけど、あたしステータスの確認方法分からないんだけど……」

 

「それは平気。俺、ステータス透視できるから」

 

「そ、そうなんだ。勇者って万能だね」

 

「ははっ、そうかもな。んじゃ、失礼して……」

 

 そういうわけで俺はステータス透視の能力を発動させてメルシアちゃんのステータスを確認させてもらう。食事中にするべきではないのだろうが、まぁその辺は気にするなということで。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 メルシア・フォクサローゼリス  年齢:13歳  性別:女

 種族:狐系獣人(人間派閥)  LV.5  職業:無し

 パートナー:無し

    基本ステータス

 体力:1429/1429

 MP:2674/2674

 物攻:1409

 物防:1429

 魔攻:1989

 魔防:1979

 敏捷:2059

  火・風・土属性魔法習得中、隠蔽能力、変化能力、分身能力

  装備:無し

 

    ※ATTENTION

 異世界転生者。今居る世界の常識から逸脱した存在。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 年齢や種族が書き換わっていないこととか、LV.5の割にステータスが異様に高い気がすることとか、いろいろと気になる点は多いが、それよりも何よりも最後の注意書きにツッコまずにはいられなかった。

 

「転生者って書いてあったんかい! 最初からステータス見て置けば良かったわぁ」

 

「わっ、び、びっくりしたぁ……。どうしたの、リョウ?」

 

「おっと、すまんすまん。まさかステータスにちゃんと転生者って書かれているとは思わなくてさ。ついつい叫んじまった」

 

「えっ、そうなの!? それなら、もっと早くに確認しておけば良かったね」

 

「ああ、本当だよ。さっきは混乱してて気が回らなかった」

 

 最初からステータスを覗いておけば、もう少し混乱せずに状況整理ができたのかもしれないと考えると少し悔やまれるが、結局後の祭りだ。

 

 いやむしろ、ある意味では収穫とも言えるだろうか? メルシアちゃんが転生者であることが確認できたのなら、ステータスを見れば謎に包まれためぐるさんの存在についても何か分かるかもしれない。

 

 今度、試させてもらうことにしよう。きっとあの人なら快く許してくれそうだしな。なんか、そういう雰囲気を纏っている感じがしたし。

 

「他には何か分かった?」

 

「そうだなぁ。ユリシアとは違って年齢に変化はなかった。あと、種族名にも特に変化なしかな」

 

「えっ、お姉ちゃんって歳変わったの!?」

 

 俺の言葉にメルシアちゃんが驚く。

 

「あー、うん。そういえばメルシアには話してなかったね。実はね、わたし一つだけ歳が上がったの。だから、メルシアとは二歳差ってことになるかな」

 

「ど、どうして?」

 

「元々リョウとは年が一つ違ったの。けど、神様の計らいで同い年にしてくれたみたい。あとね、種族も狐系獣人族から人間に変わったんだよ、わたし」

 

「ふえぇ、そうだったんだぁ」

 

「だからね、わたしの尻尾とか耳は決まった人にしか見えなくなってるんだよ。こっちの世界で生きやすいように」

 

「ど、どういうこと? 尻尾があるとダメなの?」

 

 あー、そうか。その反応、メルシアちゃんにはこの世界の常識は備わっていないということか。となると、こうするのが一番早いかな。説明の割愛にもなるし。

 

「知識共有……」

 

「ふえっ!? な、何これ……!?」

 

「知識共有っていう俺の能力だよ。今メルシアちゃんにはこの世界での常識を共有したから、後で確認してみてよ」

 

「わ、分かった。ありがとう、お兄ちゃん」

 

 いきなり脳内に大量の情報が流れ込んできたことに目を白黒させながらも、メルシアちゃんは律儀に感謝の言葉をくれる。良い子や。

 

「にしても、世界から逸脱した存在……ねぇ。これってつまり、耳とか尻尾が誰にでも見えるってことなのかね?」

 

「この世界の概念に当てはまっていないってことなんだろうね。メルシアは、わたしみたいに神様につじつま合わせをしてもらったわけじゃないでしょ?」

 

「うーん、少なくともそんな記憶はない……かな」

 

「なら、この世界でも獣人として扱われるんじゃないかな? 現に、ステータスに変化がなかったわけだしね」

 

「さらに言うなら、この世界にはメルシアちゃんに関する情報の一切がないと考えるべきだろうな。うーん、個人情報がないのはちょっとばかし問題がありそうだなぁ」

 

「いろいろと考えなきゃいけないことが多そうだね。けど、流石に今日は疲れたよ。これ以上難しいことは考えたくないかな」

 

「同感だ。また明日以降考えれば良いか。メルシアちゃんはそれでも大丈夫か?」

 

「う、うん。あたしもいろいろ整理したい」

 

 というわけで、一旦情報整理は後回しにして、俺たちは特になんて事のない雑談を交わしながら食事を再開した。

 

    *

 

 それからすこしして、俺たちは夕食を平らげた。ユリシアもメルシアちゃんも美味しかったと言ってくれたので、作った本人としては嬉しい限りだった。いやまぁ、個人的には味に満足いっていないのだけど。

 

 そうして俺は食器の片づけを行う。ユリシアとメルシアちゃんが手伝いを申し出てくれたが、丁重に断らせてもらった。

 

 メルシアちゃんは疲れているだろうし、流石に仕事をさせてしまうのは申し訳なく感じた。ユリシアは……、皿を割りかねないから洗い物はさせられない。というか、既に一度やらかしてるし。前科持ちをキッチンに入れるのは躊躇われた。

 

 そのことにユリシアは不満気な表情を浮かべていたが、皿を割ってお前が怪我でもしたらどうするのかと言って聞かせたら頬を綻ばせて大人しくなった。フッ、ちょろいな。

 

 その後俺は一人で風呂に入った。最近はずっとユリシアと入っていたもんだから、ほんの少しだけ寂しさを覚えてしまった。

 

 風呂に入る前、ユリシアがまるで当然でしょ?とでもいうように俺の後をついてきていたけど、ユリシアは既に風呂を済ませていた。それに、メルシアちゃんを一人にするのは可哀そうにも思ってしまった。

 

 そうユリシアを説得すると、ユリシアは食い下がることはせず、しょぼんと肩を落としながらメルシアちゃんを連れて自室に戻っていったのだった。

 

 寂しくはあるが、今はメルシアちゃんを第一に考えてあげるべきだろう。何、どうせ後でユリシアとは致すことになるだろうしな。そう考えれば、一時の寂しさなど苦でもないさ。

 

「……そういえば、何か忘れてるような……?」

 

 湯船に浸かりながら、俺は不意にぽつりとそう呟く。そう、今日何処かでユリシアと何か約束事をしたような気がするんだよな……。だが、大して重要でもないような気もする……。なんだったかなぁ……?

 

 ちょっと気になったので、俺は今日一日の記憶を思い返すことにした。朝から順に、である。

 

 まずは朝だ。うーん、朝か……。起きてからすぐユリシアと軽く交わってから制服に着替えて、それから朝飯を食って……、欲求不満のまま家を出たんだよな。そうだ、その後に何かがあったんだ。登校中に何かが……

 

「あっ、そうか!」

 

 俺は何とか記憶を思い起こすことに成功した。俺はすぐさま風呂から上がり、身支度を整えてからユリシアの部屋へと駆けこんだ。

 

「ユリシア、ちょっと良いか?」

 

「んえ? どうしたの? そんなに急いで」

 

「やるべきことがあったのを思い出したんだ」

 

「や、やるべきこと? まぁ、とにかく分かったよ。じゃあメルシア、あれだったら先寝ててね」

 

「うん、分かった。おやすみなさい、二人とも」

 

「ああ、おやすみ、メルシアちゃん。ユリシア借りちゃって悪いな」

 

 それだけ言い残し、俺はユリシアを引き連れて自室に戻る。ユリシアは不思議そうな表情を浮かべていたが、素直に俺についてきてくれていた。もしかして、ユリシアは覚えていないのかな? あんだけ楽しみにしていたのに。

 

 そうして俺はユリシアを自室に招き入れ、扉をしっかり閉める。それから俺はユリシアに向き直り、そして本題を告げた。

 

「ユリシア、今からお仕置きだ」

 

「お、お仕置き……? あっ……!」

 

 俺のその言葉で、ユリシアもようやく今朝のことを思い出したらしい。頬を紅潮させながら、期待するような瞳を俺に向けてきていた。そんなユリシアに、俺は一泊置いてからお仕置きの内容を告げるのだった。

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