異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
そうして、俺たちは一つずつ記憶を紐解いていった。
「お、おぅ、なるほどなぁ。ユリシアはアメリカからの留学生か。俺との出会いは……アキバなのかよ……」
「オタク……、へぇ、そんなものがあるんだね。アニメ……とか、ラノベ……とか、なんか面白そう!!」
おっ、なんかユリシアがオタク文化に興味を示しているぞ? これは、こちらの世界に引き込むチャンスじゃないのか!?
って、それは後でにしておこう。まだまだ流れ込んできた情報は底を尽きないからな。その確認が最優先だ。
「俺たちは……、
ってかあの神様、俺のことを買いかぶりすぎだろ……。俺のイメージ秀才って、どうなってんだよ。俺なんて、ちょっと普通から足をはみ出したオタクってだけなのにさ……。本当、なかなかに面倒くさい置き土産をしてくれたもんだよ。
そもそも、そんな秀才校にユリシアを通わせて平気なのか? こっちの常識には疎いのに……。まぁ、知識共有で補ってはいるんだけどさ。
なんて心配を抱えつつ、俺はユリシアに視線を戻す。
「ん? どうかしたの?」
「いやな、これから俺たちが通う高校、日本一と言っても過言じゃないくらいの秀才校なんだよ」
「へぇ、そんなに頭良いんだ。でも、なんかわたし、こっちに来る前に英才教育を受けていたってことになってるよ」
「あっ、本当だな。俺は……、地元の中学出身だけど、実力で何とかって感じか。マジで俺のことを秀才キャラと勘違いしてやがる……」
「でも、リョウって頭良いじゃん。いつもいろんなことを考えてるし。わたしじゃ思いつかないようなことを平然とやってのけるんだもん」
などと、ユリシアが俺のことを過大評価してくる。
なんだろう、滅茶苦茶嬉しい。けど、俺は咄嗟に否定してしまう。まぁ、半分は照れによるものだ。
「いやいや、そんなことはないだろ。多分、ユリシアが言っているのは、俺の頭の良さじゃなくてただの悪知恵じゃない?」
「えー、そうなのかなぁ? 違うと思うけど……。まぁ良いや。あっ、ちゃんとこれまで学んだことになってるお勉強の内容も頭の中にインプットされてるよ。ふむふむ、数学……英語……、うわぁ、それ以外にもいろいろとあるんだねぇ。なんか大変そうだなぁ。」
ユリシアは、自分の脳内に流れ込んできた情報を一つずつ口に出して反芻している。知らない場所での初めての生活に、ユリシアは積極的になってくれているようだった。
もし、ユリシアがここに来てしまったことを後悔していたらどうしたものかと思っていたけど、この様子なら俺が心配する必要はないのかな。
一生懸命、脳内を駆け巡る多くの情報を整理しているユリシアの横顔を、俺は静かに見つめながらそんなことを考えていた。
「んえ? リョウ、またわたしのことじっと見てる?」
「あっ、いや、その……すまん。なんか、ユリシアが俺の世界で前向きに頑張ろうとしてくれているのが嬉しくてさ」
「そ、そりゃ頑張るに決まってる。だ、だって、リョウと一緒だから」
破壊力抜群のその言葉に、俺は思わず身体を仰け反らせてしまう。ユリシアは無自覚なんだろうが、普通思い人からこんなことを言われては、こういう反応をしてしまうものだろう。
「ど、どうしたの、リョウ?」
「い、いや、なんでもない。さ、さてと、俺ももう少し情報整理をしないとなぁ」
咄嗟に誤魔化すようにして、俺も自分の脳内の様々な情報にもう一度意識を向ける。ユリシアは不思議そうな表情を浮かべつつも、俺同様に情報整理に没頭してくれたみたいだった。
これ以上詮索されたら、いずれ俺の気持ちがユリシアに気づかれてしまいかねないからな。この思いを伝えるにしても、今のタイミングじゃないだろうと俺は考えている。
にしても、情報量が本当に多い。だが、この世界では空白状態だったこの三年間の記憶はちゃんと整理しておかなければならない。今後の生活に順応していくためにな。
ユリシア同様、俺もこれまでの学習内容について確認してみたのだが、空白の三年間での学習内容はちゃんと俺の中にもインプットされているようだった。もっとも、この程度のことなら小学生の内にある程度覚えてしまってはいたけどさ。二次元作品に度々出てきたりしていたからな。覚えるのは当然のこと……って言うと、また神にいろいろと言われそうだな。今後、あの神様と会う機会なんてもう来ないだろうけどさ。
そして、俺は中学でも相変わらずボッチ、と。良かった、この辺りは小学生の時からそのまま受け継がれているみたいだな。性格の改竄とか成されていなくて助かった。
へぇ、ユリシアも元々の性格がそのまま反映されているのか。本当に信頼のおける人としか関わりを持たない。そして、日本のオタク文化が大好き。つまり、俺と同じでボッチ生活だった、というわけだ。
んでもさ、こんな俺たちが一体アキバでどうやって出会うと言うんだ……。意気投合するにも、こんな性格じゃ無理難題すぎやしないか? まぁ、その辺は別にどうでも良いのかな。
重要なのは、今俺とユリシアが固いきずなで結ばれている、ってことだろう。その事実さえあれば、過程なんてものは必要ないのかな。って、今何気に俺、滅茶苦茶恥ずかしいことを考えていたよな……。
あ、でも……、もしユリシアが高校で心変わりとかしたらどうしよう……。ユリシアが俺以外の男と楽しそうに会話する姿を思い浮かべると、非常に複雑な気持ちになる。というか、単純に嫌だ。
ユリシアは俺のもの、などと言うつもりはないが、それでも他の男にユリシアを取られたくない。俺、結構独占欲が強いみたいだな。まだユリシアとは付き合ってもいないはずなのに、一人で勝手に不安になってしまっている俺。なんか情けないなぁ。
いっそのこと、タイミングとか雰囲気に拘るの止めて、もうここで告白してしまおうかと考えていると、不意にユリシアが口を開いた。
「他の人との交友関係はない……。大事なのは家族とリョウ、それからリョウのお父さんだけ……。うん、今のわたしそのまんまだね。良かった」
「ユリシアはそれで良いの?」
「もちろん。わたしは大切な人と以外交流なんてするつもりない。高校に行ってもそれは変わらない、絶対。もしかして……、リョウは違うの?」
「いいや、違くないよ。俺も、ユリシアと父さん以外に心を開くつもりなんてない」
「うん! あ、それと、オタク文化……っていうのも大事にしたい! こっちの世界での、わたしとリョウとの繋がりみたいだから」
「お、おう。サブカルは楽しいぞ! いろいろと見せてやるよ!!」
「えへへ、うんっ!! 楽しみ!」
ユリシアの交友関係がないことを喜ぶのは人としてどうなのかという感情もあるが、それでも俺はユリシアを独り占めすることができるということに喜ばずにはいられなかった。まったく、俺も堕ちるところまで堕ちたな。
それから、雑談を挟みつつも俺とユリシアは着々と現状確認を済ませていった。実は、ユリシアも相当頭が良い。というか、呑み込みが早い。
俺と初めて出会った時、ユリシアは狐系獣人族にもかかわらず、十八番としている魔法を一つも覚えていなかった。いや、幼くして同族を全員殺されてしまったのだから、魔法について教えられていなくても仕方のないことだったのだと思う。
だから、ユリシアが戦いたいと言ってきた時に、俺は初めて彼女に魔法というものを教えた。もちろん、俺に魔導書などの持ち合わせなどなかったので、口頭で教え込むことしかできなかったのだが。
しかしユリシアは、言葉での説明だけにもかかわらず、一度聞いただけで魔法詠唱を完璧に覚え、一つ、また一つと使いこなせるようになっていった。しかも、覚えられる量に限度はなく、俺が教えれば幾らでも自分の力にしていっていた。
話によれば、狐系獣人族は、多くても五つか六つの属性魔法をマスターするのが限度らしいが、ユリシアは現存する十の属性魔法を全て暗記してしまった。
つまり、全魔法暗記者が世界に二人存在することとなったのだ。なお、分かるとは思うが、もう一人って言うのは俺だ。俺も最初はそこまで魔法は持ち合わせていなかった。だが、いろいろな人の詠唱やラナンやらを見て覚えていった。こう考えると、やはり俺の頭って常人レベルじゃないんだなぁ。
少し脱線したが、こういう経緯もあって、ユリシアはかなりの頭の持ち主であると俺の中で位置づけている。少なくとも、こっちの世界でユリシアの右に出る者はいないんじゃないかと思えるくらいには。俺? はは、どうだろうな。
だから、この膨大な情報量も、ユリシアは容易く処理してしまうのだ。これで今、ユリシアは完全にとは言えずともピースという一つの概念としてこの世界にはめ込まれ、徐々にこの世界の"当たり前"になりつつあることだろう。
そして俺も、当然ながら全てを理解し、この世界の一部分として再び溶け込むことができたと思う。
「よし、ユリシア。ちょっとだけ確認な? 元素記号を言えるだけ言ってみてくれ。もちろん、なるべく番号順にな」
「分かった。水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、塩素、アルゴン、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、クリプトン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム……」
「オーケーオーケー、充分だ。やっぱ、この程度じゃ簡単すぎたな」
「えー、まだ言い終わってないよー? ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム……」
「分かった、分かったから!! 尺の都合ってものがあるんだ、察してくれよ!!」
どうやらユリシアは、覚えたてほやほやの知識をこれでもかというほど披露したいみたいだった。そういう子供っぽいところも非常に可愛らしいのだが、これでは作者自身の知識自慢だとか文字数稼ぎだとかを疑われかねないので、この辺りで一旦止めておくべきだろう。
……けど、何となく途中で止めさせられてしまったことに対して不満気に頬を膨らませてこちらを睨んでくるユリシアに気おされ、俺はもう一問だけ問題を出すことにした。せっかくだし、二次元ネタでも出してやるか。
「じゃ、じゃあもう一問だけな。"月に代わってお仕置きよ"を英訳してみて。これなら尺も要らないだろうしな」
「えっとね……。In the name of the moon, I shall punish you.で合ってる?」
「ああ、正解だ。流石だな、ユリシア」
「えへへー、嬉しいなぁ」
ああ、滅茶苦茶可愛い、癒される。今すぐにでも抱きしめてやりたいくらいだ。しかし、今の俺にそんな勇気はないので、精々頭をなでてやるのが関の山だろう。
「あ……、え、えへへ。頭撫でられちゃった」
「ユリシアは本当にすごいな」
「リョウほどじゃないよ」
「いやいや、そんなことはないさ」
「なら、わたしとリョウは同等。どっちもすごい」
「ははっ、そうだな。その通りかもな。俺たち二人に敵なんてなかったもんな。俺たち二人、即ち最強だったよな」
「うん、そうだよ。一緒なら怖いものなんてない。わたしとリョウはずっと一緒。そして、ずっと最強」
こんなことを言われて顔が緩まない奴なんているのだろうか。いや、いないな。現に、今俺の表情は緩みに緩み切っている。もう、誰にも見せられないレベルでな。無論、ユリシアには見られているのだが。
もっとも、ユリシアは俺のこの顔の緩みがユリシアに対する恋心からのものだとは思ってもいないだろうけどな。
俺たち二人に敵無し、か。それはきっと、この世界でもそうなんだろう。知力だろうが身体能力だろうが、今の俺たちに適う奴なんていないだろう。なんせ、異世界から戻ってきたチートがん積みの最強タッグなんだからな。