異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
買い物を終えて家に戻ってきた俺たちは、そのまま何故か俺の部屋に直行することになった。というのも、ユリシアとメルシアちゃんの二人が俺の持っているキーホルダーの中身が気になると言ってきたのだ。
中身……というか、二人が気になっているのは所持金だろとツッコみたくなってしまったが、なんだかんだ俺も気になってしまっていたので特に何も言わなかった。まぁ、仕方ないよな。あれだけの大金を見せつけられたら、誰だって期待してしまうものだろう。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん、早く早く!」
「メ、メルシア、ちょっとはしゃぎ過ぎじゃない?」
隠蔽を解いて露わになった狐尻尾をぶんぶんと揺らしながら期待するような瞳で俺を急かしてくるメルシアちゃんをユリシアが優しく窘める。冷静な態度を装っているが、狐耳と狐尻尾は正直なようで、メルシアちゃん同様にそわそわしているのが丸分かりだった。
そんな狐姉妹のほほえましい様子を横目に、俺は自室のデスクの上に放置されたままのキーホルダーに手を伸ばす。そんな俺の手が少し震えていたのは、きっと狐姉妹には気づかれていないだろう。
「あっ、お兄ちゃん! あたしがやりたい!」
不意にメルシアちゃんがピンと片腕を挙げそう申し出てくる。はいはーいと元気よく自己主張するメルシアちゃんの姿は年齢以上に幼く見えた。ほっこりしてしまう。
「ん? メルシアちゃんがやる? 良いよ」
俺はそう言ってメルシアちゃんにキーホルダーを手渡す。ちなみに、俺のキーホルダーは何本もの鎖が複雑に絡み合ったような感じのデザインである。向こうの世界での俺の得意武器が鎖だったからだろう。勇者の得意武器が鎖というのもなかなか珍しいかもしれないが、攻撃だけでなく拘束などにも役立つ便利武器だったから愛用していたのである。
とまぁ、今はそんなことどうでも良いか。
「えっと、魔力を注ぎ込めば良いんだったよね」
メルシアちゃんは確認するようにそう呟くと、俺から受け取ったキーホルダーを左手で持ち、その上に魔力を纏わせた自分の右手をそっと重ねる。
だが、メルシアちゃんがキーホルダーに魔力を注ぎ込んでも、先ほどのユリシアの時のような反応は何時まで経っても起こらなかった。
「あ、あれ……? おかしいなぁ……、やり方間違ってるのかなぁ……?」
「ううん、合ってると思うけど。もしかして、魔力量が足りないとか?」
「え、もっと魔力注ぎ込んだ方が良い?」
「分からない。ちょっとやってみて」
ユリシアに催促されるままメルシアちゃんは先ほど以上の量の魔力を右手に纏わせ、その手をキーホルダーに添える。しかし、キーホルダーは一切の反応を示さなかった。
「ええっ、で、できないの?」
「メ、メルシア、わたしにそれ貸して。今のわたしならメルシアよりも魔力量多いはずだし、もしかしたらできるかも」
「う、うん、分かった。はい」
メルシアちゃんからキーホルダーを受け取ったユリシアは、即座に手に魔力を纏わせてそのまま両手でキーホルダーを包み込む。確かに、メルシアちゃんの時よりもさらに多量の魔力がキーホルダーに流れ込んでいくのが分かる。
しかしながら、それでもキーホルダーは反応しない。室内電灯を反射して光っているだけだった。
「な、なんで!? さっきはできたのに」
「お、お姉ちゃんでもダメなの……」
「リョ、リョウならどうにかなるかも」
そう言ってすがるように俺に目線を送ってくる狐姉妹。そんな二人に対して、俺は自分の考えを口にする。
「多分、魔力量は関係ないんじゃないかな」
「えっ、どういうこと?」
俺のその言葉に、ユリシアが首をかしげて俺に疑問の視線を投げかけてくる。その隣では同じようにメルシアちゃんも首を横に傾けていた。姉妹で反応が似すぎていて、俺は思わず笑ってしまいそうになるのを堪え、二人の疑問に答えるように話を続ける。
「予想だけど、元々の所持者の魔力にしか反応しないんじゃないかなって思うんだ。だってユリシア、さっき自分のキーホルダーに魔力流す時、そこまでたくさん纏わせていなかっただろ?」
「う、うん、そうだね。ちょこっとだけだった」
「だから、魔力量でどうこうなるって話じゃないと思うんだ。元々そのキーホルダーは俺の魔力じゃないとロックが外れないんじゃないかな」
「そ、そっか、なるほどね。なぁんだ、あたしじゃ無理なのかぁ、残念だなぁ」
そう言いながら唇を少しだけ尖らせるメルシアちゃん。そんなメルシアちゃんをユリシアがなだめながら、俺にキーホルダーを返却してくれる。
「はい、それじゃあリョウ、よろしく」
「はいはい。んじゃ……」
ユリシアからキーホルダーを受け取った俺は、先ほどユリシアやメルシアちゃんがやっていたように手に魔力を籠めてキーホルダーに触れる。籠める魔力は微量だ。俺の推測が正しければ、きっとこの程度の量でも問題なく反応を示すはずだ。
「おおっ! 光った!」
すると、すぐに反応が現れキーホルダーが眩い光を放つ。それを見たメルシアちゃんがはしゃぎ声を上げる。
「うん、やっぱり予想通りだな」
俺はそうポツリと呟き、光が晴れるのを静かに待った。そして数秒の後、キーホルダーから発されていた光は消え、自室の床の上には幾つかの道具が散乱していた。なお、キーホルダーは消滅するわけではないようで、光が晴れた後も俺の手の中に存在していた。
「やったぁ! 出たぁ!」
「思ったより武器防具の数少ないね。リョウ、そんなに軽装だったっけ?」
「俺、最低限の防具しかつけてなかったからな」
装備をガッチガチに固めてしまうと逆に動きづらくなってしまい、せっかくの素早さが活かせなくなってしまう。俺はそれを嫌っていつも軽装だった。
「まぁ、わたしも似たようなものだったんだけどね」
「あっ、お金あったよ!」
「メ、メルシア、目がすっごくキラキラしてるんだけど……。流石のわたしでもちょっと引く……」
俺たちの会話には興味を示さず真っ先に金袋に飛びつくメルシアちゃん。そんな妹狐の様子にドン引きする姉狐のユリシア。
だが、メルシアちゃんはそんなことはお構いなしというように金袋を開き、その中に入っていた大量の硬貨や紙幣を床にばらまいた。
「わぁ、すごい! お姉ちゃんのよりもいっぱい!」
メルシアちゃんはばらまかれた金銭を前にしてうっとりとした表情を浮かべている。幼くして金の魅力にあっさり敗北してしまった妹狐だった。
「リョウが向こうの世界で頑張った証だね」
「努力の結果かは分からないけどね。勇者ってだけでもてはやされてたし。でもまぁ、無駄金にならなくて良かったよ」
そんな言葉を交わしながら、俺とユリシアもはしゃぐメルシアちゃんのすぐ傍まで近寄り、床に無造作に散らばった金銭を覗き込む。
あまり金に執着しているつもりはなかったのだが、自由になった今改めてこの大金の山を見るといろいろと欲が出てきてしまう。向こうの世界じゃそんな余裕はなかったからな。生きることに必死だったし。
「えっと、これが100円でこれが500円……。そして、これが1000円、こっちが5000円、それとこの一番大きい紙が10000円だね」
メルシアちゃんが日本通貨の種類を一つ一つ確かめながら合計金額を計算し始める。言葉が違うだけで、数字や加減法などの計算方式に変わりはないからな。こちらの世界の概念に馴染んでいないメルシアちゃんでも、何ら問題なく計算はできる。
「うん、計算できたよ」
「えっ、早っ」
そして、数分とかからずにメルシアちゃんは合計金額の計算を済ませてしまった。ユリシアから優秀だとは聞いていたが、まさかここまでだったとはな。
「メルシア、集中するとこれくらいの計算なら数秒でできちゃうんだよ」
「ほへぇ、大したもんだ。それで、いくらだった?」
メルシアちゃんの力量に感心しつつ、俺はメルシアちゃんに合計金額を尋ねる。なんだかんだ俺もユリシアもそこが一番気になっているからな。
「えっとねぇ、304万1700円だったよ! お姉ちゃんの倍以上あるよ!」
「ふえぇ、300万越え……、大金持ちじゃん」
「世間的に見れば大金持ちってほどじゃないけど、学生が所持する金銭としては充分すぎるくらい大金だわな」
俺もユリシアもついつい歓声を上げてしまう。それほどまでに俺が向こうの世界で稼いだ金銭は学生の身である俺たちには常識はずれだったのだ。
「この武器とか防具を売れば、もっともっとお金持ちになれるよね?」
メルシアちゃんは感情を高ぶらせたままそんなことを言ってくる。俺もユリシアもメルシアちゃんの言葉に頷きかけ、そしてその言葉の違和感に気づく。
「んえ? どうしたの? 二人とも」
「あー、えっとな、この世界……というか、日本だとこれ多分売れない」
「向こうの世界みたいに武器が手元にあるのが当たり前の世界じゃないからね、ここは。売れないのは残念だけど」
「えー、そんなぁ。まぁでも、それだけ平和なんだね、この世界は」
一瞬肩を落としたメルシアちゃんだったが、向こうの世界のように常に危険が纏わりついてくるような世界じゃないと理解したらしく、ほっと胸を撫で下ろしていた。
「でも、これどうしよっか……。このキーホルダーにまたしまえるのかな?」
「どうなんだろうな。正直、しまえないと邪魔なんだけど……」
困ったような表情で床に散らばる武器防具を指差すユリシアに、俺も苦笑を浮かべながら言葉を返す。これを父親に見られるのはちょいとまずいからキーホルダーに戻したいのだけど、それができるか分からない。それにもしキーホルダーの中に戻す方法があったとしても、残念ながら俺にはその方法も分かるはずがない。どうしたもんかなぁ。
「ん? なんだこれ……?」
その時、俺は武器防具に混じって床の上に転がっていたものに視線が止まった。そのよく分からない物体に手を伸ばし、俺はそいつを拾い上げる。
「人形……? ってか、これ神様じゃね?」
拾い上げたそれは掌大の大きさの人形だった。しかも、何故かモチーフになっているのが例の神様だった。
俺、こんなもの持っていた記憶なんてないのだけど……。もしかして、神様からの贈り物か何かか?
「あ、ホントだ、あの神様そっくりだね」
「神様って、お兄ちゃんをあっちの世界に召喚したっていう?」
「そうそう」
「綺麗だね。やっぱり神様だからなのかな?」
俺の掌の上の神様人形に視線を落としながら、メルシアちゃんがポツリとそんな感想を溢す。まぁ確かに綺麗なのかもしれないが、ユリシアに比べるとどうしても見劣りしてしまうんだよなぁ。いやまぁ、これが贔屓だというのは分かっているが。
「これ、どうするの? お守りにでもする?」
「何かしらご利益はありそうだしな。それでも良いかもしれない」
そう言いながら俺はその神様人形をぎゅっと掴んだ。その瞬間、神様人形が先ほどのキーホルダーみたく光を放ち始めた。
「は?」
「え?」
「ふえ?」
俺もユリシアもメルシアちゃんも、目の前で起きている現象に理解が追いつかず、それぞれ素っ頓狂な声を漏らしてしまった。
俺、別に手に魔力を纏わせていたわけじゃないよな? いや、そもそも魔力に反応して光る人形とか意味わからないのだけど……。
「な、何が起こるの……?」
ユリシアがそう呟いたのとほぼ同時に、神様人形から放たれていた白い光が一気に膨張し、室内全体を包み込んでしまった。
「んひゃっ……、ま、眩しい……」
「うぅ、目が痛いよぉ……」
いきなりのことだったので、俺たち三人はそれぞれ自分の両眼を押さえてうめき声を上げてしまう。
急激な光は目に悪い。これで目が悪くなったりしたらどうしてくれるんだ……。などと心の中で文句を垂れながら、室内を包み込む白い光が晴れるのを待っていた。
「どうやら、人形の存在に気づいたようですね、涼さん」
すると突然、俺の耳にそんな声が届いた。聞き覚えのある声だ。俺は何が起こったのか確認したくて、慌てて目を覆っていた右手を退け、ゆっくりと目を見開く。
どうやら既に光は晴れていたようで、俺の視界には武器防具で少し散らかった自室が映る。だが、一つだけ先ほどまでとは異なる点があった。
「えっ……、あ、あなたは……」
「う、嘘……でしょ……!?」
俺とユリシアは同時に言葉を失ってしまう。だって、仕方ないだろう? 俺たちの目の前に、例の神様が佇んでいたのだから。
「数日ぶり……ですかね? 涼さん、それからユリシアさん」
「ど、どうしてここに!? も、もしかしてこの人形と何か関係が!?」
未だ混乱する頭を何とか回転させ、俺は目の前の存在に疑問の言葉を口にする。すると、神様はこくりと一つ頷き、俺たちに説明してくれた。
「ええ、その通りです。その人形は、もしもの時の連絡ツールです。お二人に何かお困り事があった際に私がサポートを行えるよう、涼さんのキーホルダー型アイテムボックスの中に忍ばせていたんです」
「れ、連絡ツール!? き、聞いてないんだが……」
「えっと、それに関しては本当にすみません。この世界のつじつま合わせに気を取られてしまっていて、お二人にこれらの説明をするのを忘れてしまっていました」
そう言ってぺこりと頭を下げてくる目の前の神様。こんな便利アイテムが存在していたなら、もっと早くに知りたかった。だが、神様だって万能ではないのだし、こういった伝え忘れだってあるものだろう。文句を言うのは止めておこう。
「そ、そうなのか。あと、もう一つ気になったんだけど、キーホルダー型アイテムボックスってこれのこと……なんだよな?」
俺は手に持ったままだった例のキーホルダーを掲げながら神様にそう問う。
「ええ、そうです。お二人をこちらの世界に転移させる際、装備やお金といった持ち物一式をそのアイテムボックスに収納させていただきました。これに関しても説明し忘れてしまっていましたよね」
「最初はただのキーホルダーかと思ってた」
「というか、よくこのアイテムボックスのシステムに気づきましたね。涼さんが見つけたんですか?」
神様が感心したような表情でそう問いかけてくる。俺はそんな神様の質問に首を横に振って答える。
「いいや、俺じゃない。ユリシアが見つけたんだ。キーホルダーの存在を怪しんで、叩いたり踏んだりといろいろ試行錯誤した末に」
「魔力を流し込んだ、と?」
「う、うん。たまたま発見したの」
「それはそれは。発見していただけて良かったです」
神様がほっと一息吐く。いろいろと説明し忘れがあったことに、神様も内心心配してしまっていたのだろう。
「ちなみに、どうして人形を握ったら神様が現れたんだ? 俺、特に魔力は流してないんだけど」
「こちらの連絡ツールは、物理的な力を加えると発動します。ですから、涼さんが握った瞬間に発行し出したんです」
「なるほどね。この機能は何時でも発動できるのか?」
「3回という制約付きです。できることなら何時でも発動できるようにしたかったのですが、何分こちらの世界へのアクセスが難しく、3回が限界でした。むしろ、接続回数を3回まで増やせたことに私は驚いているんですよ」
「そっか、3回ね。了解した」
俺はひとまず頷く。まだいろいろと質問したいことは有るが、神様も一度に何個も質問をぶつけられても困るだろうし、俺自身一度落ち着いた方が良いだろうと思ったからだ。
「ところで、私から一つお伺いしても?」
「ん? どうかしたのか?」
「えっと、そちらの方って、もしかしてユリシアさんのご家族……だったりします? とても似ていますし、何よりその耳と尻尾……」
神様はメルシアちゃんに視線を向けながらそんな質問を投げかけてくる。そんな質問をしてくるということは、メルシアちゃんをこちらの世界へ転生させたのはこの神様ではないということか?
てっきり俺はこの神様が関わっているものだとばかり思っていたので、神様のその反応に驚いてしまった。
「え、えっと、この子はわたしの妹」
「メ、メルシア・フォクサローゼリスです」
「で、でも、貴女は亡くなったはずでは……?」
少し申し訳なさそうな声色でメルシアちゃんにそう尋ねる神様。メルシアちゃんはそんな神様の言葉に一つ頷いてみせる。
「う、うん、確かにあたしは一度死んだ。そしたらね、こっちの世界に転生……?してたの」
「て、転生……!? そ、そんなことが……」
神様がじっとメルシアちゃんを見つめながら少しの間黙り込む。恐らくメルシアちゃんのステータスを確認しているのだろう。
「ほ、本当ですね……。転生者という扱いになっています」
ステータスを確認し終えた神様が再び口を開く。
「俺たちにも、メルシアちゃんがこっちの世界に転生した理由が分からないんだよ。もしかしたら神様なら何か分かるかと思ったんだけど……」
「すみません、ちょっとわたしにも分からないです。メルシアさん、肉体は向こうの世界のままですよね? 恐らく」
「う、うん、変わってない」
神様の問いかけに首を縦に振るメルシアちゃん。
「ということは、魂だけが次元の狭間を彷徨ってこの世界に辿り着き別の肉体に宿った、というわけではないみたいですね。うーん、私一人では判断できませんね……。見たところ、消滅の危険性はないようなので、その辺りは心配の必要は要らないようですが」
そっか、最悪の場合、メルシアちゃんが何らかの要因でこの世界からも消滅してしまう、なんてことがあったかもしれないのか。その可能性について考えていなかったが、まぁ心配する必要はないみたいだな。
「ちなみに、何時頃からこちらの世界に?」
「一応、三年前らしい」
「三年前……。もしかして、この世界にアクセスできるようになった要因はメルシアさんの存在……?」
「えっ、そ、それってどういう……」
三年前と聞いてそんなことを呟く神様に、俺は疑問の声を上げる。
「三年前のとある時期に、突然この世界……と言いますか日本へのアクセスが可能になるという現象が起きたんです。それまでは幾ら試してもアクセス不可だったはずなのに、急にアクセスできるようになったんですよ」
「それで俺を召喚した、と?」
「ええ、そうなりますね。それでですね、異分子というのは世界のゲートを開く鍵になるんです」
「異分子……、この世ならざる存在ってことか?」
「はい。そして、メルシアさんは三年前にこちらの世界に転生した。つまり、メルシアさんがこの世界と私の管理する世界との連絡通路を開く鍵になったんじゃないかと考えているんです」
「な、なるほど。俺を向こうの世界に召喚できたのは、メルシアちゃんがこっちの世界に転生してきたおかげってことなのか」
「推測ではありますが……。開門の条件はこれだけではありませんからね。メルシアさんの転生が涼さんの召喚よりも遅い時期に起こったのなら、この私の予測は外れているわけですし」
「それもそうか。あっ、もしかしてさ、こうして今俺たちと連絡できているのも、そういった開門の条件が関わっていたり?」
俺はふと気になったので、神様に聞いてみる。
「うーん、どうなんでしょうね? これに関しては不確定要素ばかりなので、何とも言えませんね」
「そっか」
俺はそう短く一言相槌を打ち、軽く頷いた。
「答えられないことが多くてすみません。涼さんとユリシアさんが開門の鍵になっているのは確実なのですが、もう一つの開門の鍵が分からないんですよね。貴方方二人だけなら、恐らく連絡回数は2回になるはずですし」
「え、それってもう一つはメルシアちゃんじゃないのか?」
「もし、涼さんを召喚する際の開門の鍵がメルシアさんでなかったなら涼さんのご指摘通りなのですが、開門の鍵がメルシアさんだった場合、筋が通らないんですよ。というのもですね、異分子が鍵として作用するのはたった一度きりなんです」
「ふむ、そうなのか……。とすると、もしかしたらこの世界にもう一つの異分子が存在するかもしれない、ということか?」
「その可能性は大いに有りえますね。心当たりとかあります?」
そんな神様の問いかけに、俺もユリシアも首を横に振る。残念ながら、俺たちにはこの世の常識を超えた存在なんて思い当たらない。
「そうですよね。変なこと聞いてしまってすみません」
「いや、大丈夫だ。……ん? 異分子……?」
……いや、待てよ……? 一人だけ可能性がありそうな存在がいるかもしれない……。もし、異分子という定義の一つに、この世ならざる存在を認識できる、というものがあったとしたら……? 俺はその人物の名前をポツリと呟く。
「めぐるさん……」
「「えっ……!?」」
俺のそんな呟きに、ユリシアとメルシアちゃんが同時に驚きの声を上げた。