※この作品はR-18です。

異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~   作:室谷 竜司

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神様がポンコツだなんて知りたくなかった……。でも、やることはやってくれる辺りやっぱ頼れるんだよなぁ

「めぐるさん……? その方は何か特殊な方なのですか?」

 

 俺がポツリと呟いたその名前に反応し、神様が俺にそう尋ねてくる。俺は小さく一つ頷いた。

 

「特殊だとは思う。この世界の人間って、ユリシアの狐耳とか狐尻尾を視認できないはずだろ? けど、その人はユリシアの耳や尻尾が見えてたんだよ」

 

「なるほど。涼さん以外の人にはユリシアさんの耳と尻尾は見えないようつじつま合わせは施したはずですからね。その上でユリシアさんの耳と尻尾が見えているということは、その方は確かに普通ではないようですね」

 

 俺の説明を受け、神様はうんうんと頷く。めぐるさんには記憶がなく、彼女は自分自身のことが分からない。そして当然、俺たちも彼女のことは何一つ分からない。だが、俺たちのようなこの世の理から外れた存在なのではないか、という予感が俺の中にあった。だからこうして神様にめぐるさんの存在について話してみたのだが、神様のその反応からするに俺の予想は強ち間違いではないのかもしれない。

 

「何か他に、その方が他とは異なっていると感じる点などはありますか?」

 

「他とは異なる点か……。思いつくこととしたら、記憶がないってことかな」

 

「記憶がない?」

 

「あと……気になることというと、どうしてあんな無人の神社にいるのかってことかな?」

 

 俺とユリシアは神様に、めぐるさんが10年前より過去の記憶を持っていないこと、それから無人の神社に一人で住んでいることなどを話した。

 

 神様は俺たちの話を静かに聞き入っていた。神様がこの世界のことについて分かることがあるかどうかは俺には分からないが、何か分かることがあればという期待は少なからずあった。

 

 そして、俺が一通り話を終えると、神様は少しの間思案顔を浮かべていたが、不意に口を開いた。

 

「単なる記憶喪失とも考えられますが、やはりユリシアさんの人ならざる部分が見えるというのは不可解ですね。可能性として挙げられるのは、巫女としての何らかの能力……といいますか特性があるのか……。はたまた、その方が霊的な存在なのか……、というところでしょうかね」

 

 巫女としての特性……。物語なんかでよくある話だと、代々巫女の血を受け継ぐ者は、何らかの霊的な存在を認識することができたり、予言能力を持っている、なんてことが多いが、現実の話でそれは有りえるのだろうか……? いや、異世界なんていうものが存在しているのだし、もしかしたら有り得るのかもしれないのか……。

 

 一方、めぐるさんが霊的な存在という神様の推測についてだが、こっちはこっちで少し引っかかるものがある。霊的な存在と聞くと、普通は実態を持たない存在を想像すると思う。

 

 しかし、めぐるさんには実態があるのだ。弁当箱を手渡しした時にはちゃんとめぐるさんの手に触れることができたし、メルシアちゃんに関してはめぐるさんに度々抱きついたりもしていた。

 

 霊的な存在でも実態を持つものだって存在すると言われてしまえばそれまでなんだけどな。それに、無意識的に肉体に取り付いてしまっている、なんていう可能性だって有り得ない話ではない。

 

 まぁ、どの可能性にしても非科学的であることに変わりはないが。

 

「なるほどね。有り得ない話ではなさそうだけど……」

 

「ええ。ですが、能力持ちの巫女にしても霊的な存在にしても、普通は一人だけしか存在しないなんてことはないと思うんですよね。そして、そういった存在ではゲートを開く鍵になり得ないというのも、これまでの経験で証明されています」

 

「あー、それもそうか。霊なんて探せば幾らでもいそうだしな。存在していればの話だけど」

 

「ですから、その方が開門の鍵になっている可能性は極めて低いかと」

 

 神様はそう結論付ける。メルシアちゃんの転生とめぐるさんに何か関係性がありそうだと思ったけど、俺の予想はどうやらはずれだったみたいだな。

 

 そして、めぐるさんの存在についても曖昧なままだ。やはり、そう簡単にめぐるさんに関する謎が解けるなんていう都合の良い展開はないのかな。地道に探っていく外ないか。

 

「うーん、分からないままというのも気持ち悪いですね。これに関しては、私の方でいろいろ調べてみます。この世界を管轄する別の神にでも聞いてみますかね」

 

「えっ、この世界にも担当神っているのか!?」

 

 神様がさらっと口にした言葉に、俺はついつい反応してしまう。

 

「ええ、もちろんいますよ。あっ、ここでいう神というのは、宗教的な話ではありませんよ。キリストもイスラムもユダヤも、担当神には一切関係ありません」

 

「な、なるほど……。んで、神同士で連絡を取るなんてことはできるのか?」

 

「できます。少し面倒ではありますけど。人間の時間にして大体1年はかかりますからね」

 

「そ、そうなのか」

 

 神同士で連絡するだけで1年もかかるのか。確かに、何かしらの面倒な手順を踏む必要があるのかもしれないな。詳しいことについて聞くつもりはないが。

 

「とにかく、私の方から問い合わせてみることにします。1年後くらいにまた私を呼び出していただければ、恐らく分かったことをお伝えできるかと」

 

「ああ、分かった。よろしく頼むよ」

 

「では、この話についてはここまでですね。それでは、他に何かご質問などありますか? あと30分くらいなら時間に余裕もありますし」

 

 メルシアちゃんやめぐるさん関連の話はひとまずここで区切りをつけた。そして神様は、別の話題を促してくる。だが、何やら聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がするのだが……?

 

「え、えっと、あと30分ってどういうことだ?」

 

「あっ、す、すみません。また説明し忘れですね。実はこれ、時間制限があるんです。1時間程度ですかね」

 

「そ、そうだったのか……」

 

 この神様、思ったより忘れっぽいのか?

 

「え、えっと、質問……というか、一つお願いなんだけど……」

 

 ユリシアが片手を挙げる。神様に対してお願い事とは一体なんだろう? 俺にも心当たりはない。

 

「何でしょうか?」

 

「その、メルシアのことなんだけどね……」

 

「んえ? あたし?」

 

 メルシアちゃんに関する要件……?って、もしかして……

 

「あの、できればで良いんだけど……、メルシアもわたしみたいにこの世界の人間にすることってできる? 今、メルシアには個人情報がないの」

 

 なるほど、ユリシアの提案というのはそのことだったのか。確かに、神様に頼むのが一番手っ取り早い方法ではあるわな。

 

「メルシアにも、できれば不自由のない生活を送ってほしいの。だから、お願いできないかなって思って」

 

「メルシアさんをこの世界の概念に組み込むことは可能です。かなり大きな力を使うことになるので、少々手間ではありますが……」

 

「俺からも頼みたい。もし、対価が必要なら払う」

 

 俺は神様に頭を下げる。俺としても、メルシアちゃんにはこの世界で伸び伸びと生きてほしい。その障害となり得る個人情報の件はどうにかしてあげたいのだ。

 

「い、いえ、対価なんて……。その、構いませんよ? 本来は何度も何度も世界の常識を塗り替えることはあまり良いことではないのですが、ユリシアさんは涼さんと一緒に私の管轄する世界を救ってくださった方ですからね。ユリシアさんへのお礼、ということでどうでしょうか?」

 

「い、良いの!?」

 

「ええ、もちろんです。むしろ、ユリシアさんには何もできていませんでしたからね。そのことが少し心残りではあったんですよね」

 

「そ、それならお願い! お願いします!」

 

「分かりました。それでは……」

 

 ユリシアのお願いに笑顔で頷いた神様は一度目を閉じる。そして、ゆっくりと右手を頭上に掲げた。

 

 その瞬間、大地が震動するような感覚を覚えた。恐らく、今この世界に神の力が加えられたことによって起こった現象なのだろう。これ、俺たち以外にも感じられたりするのだろうか? となると、少し問題のような……

 

「ふぅ、完了です」

 

 少しして、神様がそう言いながら掲げていた右手を下ろす。いつの間にか大地の震動も静まっていた。

 

「な、なあ、今の地震みたいなやつってさ、俺たち以外の存在にも認識されたりしないのか?」

 

 気になったので聞いてみることにした。

 

「いえ、大丈夫ですよ。今の揺れが認識できるのは貴方方だけです。ご安心ください。それより、ステータスを確認してみてください」

 

「あ、あの、あたし、ステータス見れないの……」

 

「そうなんですね。では、ちょっと失礼して……」

 

 そう言うと神様はメルシアちゃんの頭に触れる。振れた掌から淡い光が発され、メルシアちゃんの身体を徐々に包み込んでいく。

 

「はい。これで見れるかと」

 

「あっ、ホントだ……」

 

「ついでに、メルシアさんの脳内にもこの世界での記憶を流し込ませていただきました。頭は痛くないですか?」

 

「う、うん。平気」

 

「それなら良かったです。一応、確認してみてください」

 

 神様にそう促されたメルシアちゃんは、瞳を閉じ頭に手を置きながらうんうんと唸り始めた。そんなメルシアちゃんの様子を、俺たちはじっと見守る。

 

「あたし、14歳になってる……。種族も人間になってるし……」

 

 時折、そんなメルシアちゃんの呟きが聞こえてくる。ふむ、年齢はちゃんとユリシアに合わせて1歳上がっているようだな。それに、種族もこちらの世界に合わせて狐系獣人族から人間に変わっているようだ。

 

「他には……、元々病弱だったってことになってるみたい。勉強は専属の家庭教師に教わってたと……」

 

「こちらの世界でも、ユリシアさんの妹にあたる存在は既に一度亡くなってしまったということになっていたので、上手く組み込むにはメルシアさんを病弱だったということにするのが一番かと思いまして」

 

 メルシアちゃんの言葉に、神様が補足説明を加える。すると、気になることがあったのか、ユリシアが手を挙げて神様に質問する。

 

「今は完治したってことになってるの?」

 

「そうなります。やや強引ではありますが、常識改変というのは総じて無理矢理な設定が多いですからね。その辺は許していただけると嬉しいです」

 

「だ、大丈夫。メルシアをこの世界に組み込んでくれただけでも感謝してる。文句なんて何もない」

 

「それなら良かったです」

 

 ユリシアが改めて神様に感謝の言葉を述べ、そして頭を下げる。神様は安堵の息を吐くと、朗らかな笑みを浮かべてユリシアからの感謝の言葉を素直に受け取っていた。

 

「うーん、あとは追い追い確認しようかな。情報量が多くて大変」

 

「そうですね。もう少し落ち着いて確認した方が良いかもしれませんね。すみません、急かしてしまいましたよね」

 

「へ、平気。その、ありがとう、神様」

 

「フフッ、どういたしまして。では、他に何か気になることなどはありますか? まだ時間はあるので、答えられることでしたら答えます」

 

 一呼吸置くと、神様は改めて俺たちに質問を促す。気になることか……。せっかくだし、あの件について聞いてみるのも良いかもしれない。

 

「一つ良いか? 前々から気になっていたんだけど、ユリシアって狐族らしからぬ成長をしてると思うんだよ」

 

「そうですね。おっしゃる通り、ユリシアさんは一般の狐族とは成長の度合いが異なります」

 

「それって、もしかして勇者の加護と関係ある?」

 

 俺が気になっていたのはこのことだ。ユリシアは普通の狐系獣人族とは明らかに異なる成長をしている。これが勇者の加護と何か関係があるのではと予測し、昨日俺たちなりにその仮説を立ててみた。その答え合わせがしたかった。

 

「ええ、その通りです。涼さんの深層意識がユリシアさんの身体に反映したのだと思いますよ。無意識的な願望が加護の対象者に影響を及ぼしますからね」

 

「あっ、やっぱりそうだったんだ。あたしの仮説が正しかったね」

 

「そうだな。すごいな、メルシアちゃん」

 

「え、えへへ」

 

 どうやら、昨日メルシアちゃんが建てた仮説が正しかったようだ。俺は素直にメルシアちゃんに称賛の言葉を送る。すると、メルシアちゃんはくすぐったそうにはにかむ。

 

「ちなみに、精神的な面にも影響があったりしますよ」

 

「そうなのか? 例えば……?」

 

 精神面にも影響するとはどういうことだろうか? 性格が勇者の加護で左右されるとかそういうことなのだろうか? その辺りが気になったので、俺はそんな質問をしてみることにした。

 

「そうですね……。例えば、涼さんが心の中で無意識的に思い描いていたユリシアさんの像が落ち着いた大人な女性なら、それがユリシアさんの精神面に反映されます」

 

「つまり、ユリシアが大人っぽくなる、と?」

 

「そういうことになります。ただし、これは涼さんの深層意識に影響されるものですからね。上辺だけの創造ではどうにもなりません」

 

 なるほど。つまり、俺の心からの願望でないと、勇者の加護として反映されないということだな。だが、心からの願望というのがいまいちよく分からない。

 

 そんな俺の疑問を知ってか知らずか、神様が補足説明を加えてくれる。

 

「涼さんが夢にまで見るくらい強い願望でないと、対象者には反映されませんね」

 

 あー、そういうことか。夢に出てくるくらいの強い思いでなければならないってことか。それ、加護対象に心から興味を示していないと意味がないよな。

 

「恐らく、涼さんの夢の中に出てくるユリシアさんのイメージは天真爛漫なロリ巨乳だったんでしょうね。それがユリシアさんの身体の成長度合いに反映されているわけですね」

 

「うぐっ……、そう言われると恥ずかしいな……」

 

 改めて向こうの世界で見てきたユリシアに関する夢を思い出し、俺は顔が熱くなるのを感じた。基本的にユリシアが出てくる夢はエロい内容ばかりだったからなぁ……。そんな俺のエロい願望が今のユリシアに反映されてしまったのだと考えると、何という加工……罪悪感が……。

 

 って、ちょっと待てよ? 精神的な面も反映されるんだったよな……? そんでもって、俺の夢の中でのユリシアの性格ってどうなっていただろうか……?

 

「あ、あぁ……、そうか……、そういうことだったのか……」

 

 俺はそんな声を漏らしてしまう。ようやく合点がいった。何故ユリシアが淫乱狐に成り果ててしまったのか……。それはつまり、俺が夢の中で思い描いていたユリシアがひたすらエッチな性格だったからだ……。

 

 ということは、ユリシアを淫乱女狐に変貌させてしまった最大の原因は俺だった、ということだ。いや、というかこれって全面的に俺の所為じゃねぇか……?

 

「どうかなさいましたか?」

 

「い、いや、何でもない……。ちょっとばかし罪悪感を覚えただけだ……。ごめんよ、ユリシア……」

 

「い、良いよ、気にしないで。この身体がリョウのドストライクってことだよね? そんなの、嬉しいに決まってるじゃん♡」

 

「お、おう……、そうか……」

 

 性格の話は……、一旦黙っておくことにしよう。神様とかメルシアちゃんがいる前でエロ方面の話はしづらい。

 

「今のお姉ちゃんがドストライクなの? お兄ちゃん、やっぱりえっちなんだぁ」

 

「ぐぬぬ……。何も言えない……」

 

 メルシアちゃんには苦言を呈されてしまった。今日だけでメルシアちゃんに何度えっちだと言われたんだろう……? 当然否定なんてできないんだけどな。

 

「あれ? ってことは、あたしに加護かけても意味ない感じ? お兄ちゃんが無意識的にあたしのこと考えてない限り」

 

「そう……なるな……」

 

「そ、そんなぁ……。おっぱい欲しかったのにぃ……」

 

 メルシアちゃんがその場に崩れ落ちてしまう。元々望み薄だということは理解していたはずだが、それでもショックを受けてしまったようだ。

 

「お、お兄ちゃん……その……、これから毎日あたしのことだけ考えてほしいなぁ……なんて」

 

「メルシア? そんな戯言をほざくのは止しなさい?」

 

「うにゅっ……、ご、ごめんなさい……」

 

 ユリシアからの笑顔のプレッシャーに呆気なく敗北してしまったメルシアちゃんは、その場に三角座りをしてしまう。どんよりとしたオーラがこちらにも伝わってくる。やはり、胸って大切なんだなぁ、女の子にとって。

 

 いやまぁ、男にとっても重要なポイントではあるんだけどさ。ユリシアが巨乳になることを無意識下で求めてしまっていたわけだし。

 

「メルシアさん、諦めてはなりませんよ。まだ希望はありますから」

 

「そんな慰め要らないよ……。だって、狐族のあたしは20歳までぺったんのままなんだもん……」

 

「いえ、そのことなんですが、狐族の特性はユリシアさんやメルシアさんにはもう影響しませんよ。だって、こちらの世界での貴女方は狐族ではなく人間ですから」

 

「あっ、そっか。言われてみればそうだよな。人間に書き換わってるんだから、狐族の常識はもう当てはまらないよな」

 

 神様にそう指摘されてようやく気づくことができた。今はユリシアもメルシアちゃんも狐族ではなく人間の常識に当てはまっている。何故もっと早くに気づくことができなかったのだろうか……。

 

「ユリシアさんもメルシアさんも、人間と同じように成長しますよ。ユリシアさんに関しては涼さんの加護が多少影響してはきますけどね」

 

「ホ、ホント!? あ、あたし、すぐに成長するの!?」

 

「ええ、恐らく。もちろん、親の遺伝は関わってきますけどね」

 

「や、やったぁ! あたしにも希望あるんだぁ!」

 

 メルシアちゃんの期待するような視線を真っすぐ見据え、神様は力強く頷いてみせた。すると、先ほどまでの落胆はすっかり吹き飛んだのか、メルシアちゃんが満面の笑みで喜んでいた。これで遺伝的にあまり成長しない身体だったらと考えると、あまりにもいたたまれないな……。

 

「ちなみに、20歳まで子供作れないっていう特性も……」

 

「ありません。直に子作り可能な身体になるかと」

 

「そうなんだ。なら、予定より早くリョウの子供が産めるのかな♡」

 

 ユリシアはユリシアで嬉しそうにそんなことを呟いている。ユリシアと俺の子供を産むというのは魅力的だが、流石に俺たちが学生であるうちは避妊しないとな。

 

「ユリシア、学生妊娠は流石にまずいから、もしユリシアの身体が子作り可能になったとしても、しばらくは避妊するからな?」

 

「くっ……、分かった……。残念……」

 

「ごめんな。俺としても残念ではあるけど、立場ってものがあるからさ」

 

「ううん、気にしないで。でも、そうなるとこれからリョウとのセックスはどうすれば良いのかな?」

 

 ユリシアがド直球な言葉を漏らす。コイツ、神様とかメルシアちゃんがいる前でよくも堂々とセックスなんて言葉が吐けるな……。

 

「ユ、ユリシア!? そういうことはあまり言わない方が……」

 

「どうして? もうメルシアには隠しても無駄でしょ? それに、神様にだって薄々気づかれてるんだろうし」

 

「ええ、まぁ。あの、もし良ければ、避妊魔法教えましょうか? 恐らくユリシアさんが悩んでいるのは膣内射精ができるかどうか、ということですよね?」

 

 なんだろう……、普通にありがたい提案なのだけど、こちらとしては何とも複雑な気分だ……。神様に俺たちの情事が完全に露見してしまっていることに、俺は何とも言えない気持ちになってしまっていた。

 

「うん、そう。でも、避妊魔法なんてものがあるの?」

 

「ありますよ。まぁ、獣人族にはあまり馴染みがないかもしれませんが。10種類の魔法とも少し分類が異なりますからね」

 

「そうなんだ。えっと、その避妊魔法を使えば、何時でも中出しできる?」

 

 ユリシアももはや遠慮がない。妹であるメルシアちゃんの目の前で堂々とセックスの話ができるユリシアはやはり異常だ。メルシアちゃんもかなりドン引きしている様子だ。

 

「そういうことになります。どうします?」

 

「なら覚えたい。教えてくれるの?」

 

「はい、良いですよ。それでは、手をこちらに……」

 

 俺はそんなユリシアと神様とのやり取りを呆然としながら眺めていた。ユリシアの大胆さに度肝を抜かれてしまっていた。

 

「はい、これで完了です。使い方はステータスを見れば分かると思いますので、あとは自分で調べてみてくださいね」

 

「うん、分かった。ありがとう、神様」

 

「いえいえ。さてと、他には何か……って、涼さん、大丈夫ですか? 口、開いたままですよ?」

 

 神様に言われて俺ははっと我に返る。

 

「す、すまん。いろいろと驚かされてしまってな……」

 

「あはっ、ごめんね。つい気になったから喋りすぎちゃった」

 

 てへっと舌を出して照れ笑いを浮かべるユリシア。俺はそんなユリシアを咎める気にはなれなかった。まぁ、結果的に得をしたことに変わりはないし、これくらいは気にしちゃ負けなのかな……。そう割り切ることにしよう。

 

「そろそろ時間もなくなってきましたね。他にご質問がないようでしたら、私はそろそろお暇させていただきますが……」

 

「あー、それじゃあ最後に聞いて良いか?」

 

「何でしょう?」

 

「これ、片付けることってできる……よな?」

 

 俺は床に散らばった武器防具を指差しながら、神様にそんなことを聞く。これらのアイテムの収納方法だけはどうしても聞いておかないといけないと思ったのでな。最後に質問させてもらうことにした。

 

「あー、それですね。えっと、キーホルダーをしまいたい道具に近づければ収納できます。ちなみに、取り出す際は取り出したい道具を思い浮かべながら魔力を翳してください。そうすれば欲しいものだけが取り出せます」

 

「なるほど……。おっ、本当だな」

 

 俺は神様に言われた通りキーホルダーを近くに転がっていた剣に近づける。すると剣が反応して、光の玉となってキーホルダーの中に消えていった。アイテムボックス、滅茶苦茶便利だな。

 

「なるほど、理解した。ありがとうな」

 

「いえいえ、元々説明し忘れていた私が悪いので。他には何かありますか?」

 

「うーん、今のところは特に。二人はどう?」

 

 俺はユリシアとメルシアちゃんに目配せし、そう問いかける。

 

「わたしからは特に」

 

「あたしも大丈夫」

 

「そうですか。では、1年後くらいにまた呼んでください。恐らく、メルシアさん転生関連のお話ができると思いますので」

 

「そうだな。その時はよろしく頼むよ」

 

「ええ。それでは、今日はこの辺で……」

 

「あっ、ちょっと待って! 最後に神様の名前聞いても良い?」

 

 ユリシアが神様を呼び止める。

 

「名前……? ああ、そういえば名乗っていませんでしたよね。私としたことが、うっかりしてました。私は第7番目の世界、ヴィオレイウスを統べる神、アメイズです。今更ですが、どうぞよろしく」

 

 そう言って神様……改めアメイズ様は最後に俺たちに微笑みかけ、そして白い光に包まれてその場から消失した。自己紹介まで忘れていたとはな……。ポンコツ……なのかな? ははは、いやいやまさかそんな……。

 

「ふぅ、いろいろと分かってスッキリしたね」

 

「そうだね。それに、これでようやくメルシアもこっちの世界の住人になれたわけだしね。あー、良かった良かった」

 

「ありがとうね、お姉ちゃん。それと、お兄ちゃんも」

 

 メルシアちゃんがユリシアと俺に対してお礼の言葉を告げてくる。常識改変は全てアメイズ様がやってくれたことだから、俺たちは特に何もしていないんだけどね。

 

「いやいや、わたしは何も」

 

「俺だって何もしてないさ」

 

「ううん。二人があたしを見つけてくれたから、こうしてここにいられるんだよ。だから、やっぱりありがとうなんだよ」

 

 メルシアちゃんがにっこりと微笑む。そんな眩しい笑顔に、俺の心は自然と癒されていく。あー、妹って良いなぁ。……シスコンじゃないです、ハイ。

 

「そういうことなら、お礼は受け取っておくよ。さてと、それじゃあさっさと物片付けて風呂にでも入ろう」

 

「一緒に?」

 

「別々だ。ユリシアはメルシアちゃんと入ってやれ」

 

「はーい。それじゃあメルシア、一度わたしの部屋に戻ろう」

 

「うん、お姉ちゃん」

 

 そう言って狐姉妹は俺の部屋から出ていく。仲睦まじ気な二人の後ろ姿を見送りながら、俺はほっと安堵の息を吐く。

 

 まさか、こんなところで神様と再会するとは思っていなかったが、とにかくこれでメルシアちゃんにも明確な個人情報ができた。父親への説明もどうにかなりそうで安心した。

 

 それに何より、こちらの世界で二人がようやく正真正銘の家族として再び繋がったことが、とても嬉しく思えた。

 

「良かったな、ユリシア、メルシアちゃん」

 

 俺はそんなことを呟きながら、部屋に散らかった武器防具を片付けていくのだった。少しだけ涙がこぼれたのは二人には内緒だ。

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