異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
新入生歓迎会が終わり、わたしとサヤは一度1年C組の教室に戻ることにした。その道中、昨日から気になっていたことについてサヤに聞いてみることにした。
「ねぇ、サヤ。昨日から気になってたんだけどさ……」
「うん、何かな?」
「リョウのこと、好きでしょ?」
昨日の放課後、厳密にはあのクソ野郎共をわたしとリョウの二人で撃退した後くらいからサヤの様子がおかしいように感じていた。というか、リョウに対する雰囲気というか態度が少し変わっていたからほとんど確信に近かったんだけど。
それでも、一応確認しておく必要はあるだろうと思ったので、わたしはこうしてサヤに質問してみることにしたのである。言っておくけど、別にサヤに対して怒りの感情を覚えているわけじゃない。誰だってピンチのところを助けられれば、助けてくれた相手を自然と意識してしまうものだと思うから。
わたし? わたしはリョウ以外に心を突き動かされるなんてこと絶対に有り得ないから。もし、リョウにピンチのところをカッコ良く助けられたら……、ああ……最高♡ ますます好きになっちゃうよ♡ あ、どうしよう……、ちょっと濡れてきたかも……♡
っとと、今はその話は置いといて……、わたしは隣を歩くサヤの顔を覗き込む。このむずむずは後でリョウに解消してもらうことにしよう♪
「ひゃ、ひゃえっ!?」
わたしからの質問を受け、サヤは明らかに狼狽えていた。口から洩れた短い驚きの声は普段の数段高いし、顔は一目見て分かるくらい真っ赤だった。この反応だけで、わたしの推測は確信に変わった。
まぁ、仕方ないよね……。サヤだって女の子だし、リョウみたいな魅力的な男の子に危ないところを助けられれば気にもなっちゃうよね。というかむしろ、あれでリョウを好きにならない方がおかしいとわたしは思う。
「やっぱり、そうなんだね」
「なななななな何のことかなぁ? 私、よく分からにゃいなぁ」
サヤはバレバレの嘘を吐く。目は泳ぎ、声も震えている。これで隠し通せると思っているのなら、サヤの頭の中はなかなか残念だと思う。まぁ、サヤも本気で隠せるとは思っていないだろう。咄嗟に否定の言葉が出ちゃっただけで。
「声震えてるし、ちょっと噛んでるじゃん。別に隠すことないでしょ?」
わたしは溜息混じりにサヤにそう言った。
「うぅ……。ごめん……。ユリシアちゃんの言う通り……です」
すると、サヤは力なく肯定の言葉を吐いた。
「ほら、やっぱり。きっかけは昨日の?」
「はい……、そうです……。ユリシアちゃんがいるってことはもちろん理解してたんだけど……、感情を抑えきれなかったよ……。その……、ごめんなさい……」
サヤはそう言って弱々しくわたしに頭を下げてきた。そんなサヤの謝罪を受け、わたしは少し困惑してしまう。わたしとしては別に謝らなくても良いなんて思ったりもするけど、その一方でサヤの気持ちも分からなくはないから。
元々恋人のいる相手に対して恋心を抱いてしまったら、申し訳ないという気持ちが湧いてくるのは普通のことだと思う。まぁ、根がワガママな人だったら略奪とかも考えるだろうけど、サヤはそんな子じゃないからね。
「仕方ないと思うよ。あの時のリョウ、正直贔屓とか一切無しにカッコ良すぎたしね。あれは惚れちゃうよ」
わたしは苦笑しながらサヤにそう返す。どう返事をするのが正解なのかは分からないけど、無難な回答ではあるだろう。
「あ、あはは……、うん……。正直なところ、涼君のこと王子様見たいって思っちゃった……。ユリシアちゃんが涼君にベタ惚れな理由、分かっちゃった」
「王子様……か。ふふっ、そうかもね」
向こうの世界ではわたしも幾度となくリョウに助けられてきた。何時でもわたしを守ってくれるリョウは、確かに物語で出てくるような王子様そのものかもしれない。実際は勇者様なんだけどね。
「私ね、これが初恋なんだ」
「初恋……、そう……なんだ……」
不意にサヤが漏らしたその言葉に、わたしは少し申し訳ない気持ちになってしまう。リョウの隣には既にわたしという存在がいる。その所為で、サヤの初恋は敵わぬ恋として終わってしまう。
恋なんて全てがハッピーエンドなわけじゃない……。中には残酷な結末だってある……。それは分かっているつもりだ。だけど……、親友の初恋を素直に応援してあげられないどころか、親友を蹴落とす立場にわたしが立っているということに、わたしは罪悪感を覚えてしまっていた。
「ごめん……、サヤ……」
わたしの口から謝罪の言葉が漏れ出る。ここで謝るのは違うというのも分かっているが、それでも我慢できずに口からこぼれてしまった。
「どうしてユリシアちゃんが謝るの? ユリシアちゃんは何も悪くないよ」
「そう……かもね……。これに関しては誰も悪くないんだよね……」
「うん。恋愛なんてこんなものだと思う。だから、私は素直に身を引くことにするよ。ユリシアちゃんの……、親友の邪魔はしたくないから」
サヤは真っすぐにわたしを見据えてそういった。その言葉には迷いが感じられなかった。ホントは辛いはずだ。悲しいはずだ。それでもサヤは、わたしのために自分の初恋を諦めようとしている。サヤは強い子なのだと思い知らされた。
わたしはそんなサヤに何もしてあげられない。向こうの世界だったらハーレムなんていう選択肢もあったのかもしれないが、生憎とこの世界……日本にはハーレムという概念はないのだ。だから、リョウをわたしとサヤの二人で……なんてわけにもいかない。それに、そんなことはサヤも望まないだろう。
「サヤはそれで良いの……?」
「うん、平気だよ。初恋が叶わないのは悲しいけど、ユリシアちゃんに勝てる気もしてないしね。だから、私は諦める。この気持ちは……心の奥にしまっておくことにするよ」
「サヤは強いんだね」
「そんなことないよ。無理だって分かってるけど、心の何処かではまだもしかしたら可能性があるんじゃないかって考えちゃってるもん。完全には諦めきれていないんだよ、私。だから、一つお願いがあるの」
サヤは真面目な表情でわたしの顔を覗き込んでくる。わたしは無言で頷き、サヤの次の言葉を促した。
「私に、涼君に告白する機会をくれないかな?」
「告白……?」
「うん、告白。涼君に告白して玉砕すれば、きっと諦めきれるはずだから」
サヤのそのお願いに、わたしはしばし黙り込む。サヤなりにけじめをつけたいということなのだろう。
わたしはこのお願いを受け入れて良いのだろうか? サヤがリョウに告白すれば、恐らくサヤは傷つくことになる。幾らわたしのためとはいえ、サヤにそこまでさせて良いのだろうか?
それなら、告白せずに自分の気持ちを心の中に留めておいた方が良いのではないだろうか? 黙っていた方が幸せなことだってあるはずだ。
そんなわたしの内心を見透かすように、サヤはもう一度口を開いた。
「このまま自分の気持ちを押しとどめてたら、何時まで経っても涼君に固執しちゃうでしょ? 叶わないって分かってるのに相手を思い続けたままなんて残酷じゃん。それなら、いっそのことフラれた方がきっぱり諦められるし、次の恋に進めると思うんだ」
「そういうもの……なのかな……?」
「そういうものだよ、きっと。初恋だから分からないけどね」
そう言って力なく笑うサヤ。そんなサヤの姿を見て、わたしは改めて親友の初恋を応援できないことを悔しく思った。
「ごめんね……、サヤ……。初恋、応援してあげられなくて……」
「あはは、だからユリシアちゃんは悪くないんだってば」
「それでもだよ。親友の初恋を結果的に踏み躙っちゃうんだよ……。サヤが良くてもわたしの気持ちが……」
「うーん、ユリシアちゃんがそこまで言うなら……、もう二つだけお願い聞いてもらえないかな? もちろん、無理にとは……」
「何かな? 何でも言って!」
サヤの言葉にわたしは食い気味に反応する。サヤの恋を叶えさせることはできないけど、それ以外のことだったら何でも聞くつもりだった。もちろん、二つと言わずに幾らでもである。
「おおぅ、食い気味だね……。え、えっと……、最後にちょっとだけ美味しい思いをさせてほしいなぁ……なんて思ったりして……」
サヤは顔を赤らめ、両手の人差し指をちょんちょんと突き合わせながらそう言った。美味しい思い……とは、どういうことだろうか? ま、まさか……
「ね、ねぇ、それって……まさかリョウとその……セ、セックス……したいってこと……なのかな……?」
わたしのその言葉に、サヤはますます顔を赤くさせながらぶんぶんと首を横に振った。恥ずかしがっているようだったから、てっきりこういうお願いなのかなと思ったけど、どうやらわたしの思い違いだったみたいだ。
何でもするって言ったけど、流石にリョウが他の女の子とえっちなことするのを黙って見ていることはできない。自分の言葉に責任も持てないなんて、わたしは最低だな……。でも、わたしにだって譲れないことはある。だから許してほしい。
「ちちちちち違うよっ!? と、というか、ユリシアちゃんはその……、私と涼君がエ、エッチなことするの許してくれるのっ!?」
「え、えっと……、その……それは流石にちょっと……。何でもするって言ったのに、ごめんなさい……。せ、せめて3Pなら……」
「ちょっ、さ、3Pって……!!」
「ご、ごめんっ!! それでもやっぱ無理っ!!」
わたしも混ぜてリョウとサヤと3人でなら……とも考えたけど、それでもリョウが他の女の子と肌を重ねるのは許せなかった。その光景を想像するだけで嫉妬で気が狂いそうになってしまう。
「だ、だよね。び、びっくりしたぁ……。わ、私がお願いしたかったのはエ、エッチなことじゃないよ。ま、まぁ、涼君に初めてを捧げたいって思う気持ちもないことはないんだけど……」
「その……、ごめん……」
「良いよ、謝らなくて。んでね、一つ目のお願いっていうのはね、フラれた後ユリシアちゃんに慰めてほしいなぁって思って」
「慰める? えっ、まさかレズプレイっ!?」
わたしは再び狼狽してしまう。幸いわたしたちの歩くペースが遅かったから既に周囲に他の学生たちの姿はなかったけど、もし他の学生たちが回りにいたらきっとこの話を聞かれてしまっていただろう。
「レ、レズプレイって……。ユリシアちゃん、さっきからなんか思考がエッチじゃない? セ、セックス……とか、レズプレイとか……」
サヤがジト目でわたしを睨んでくる。確かに、さっきからわたしの思考がピンク色に染まりつつある。で、でも、いきなり慰めてほしいなんて言われたら、どうしてもそういう勘違いしちゃうでしょ? し、しちゃうよね……? し、しない?
「うっ……、ごめんなさい……」
あれ? なんかわたし、さっきから謝ってばかりじゃない?
「まぁ良いけど。それで、慰めてほしいっていうのはそういうエッチな意味じゃなくて、言葉通りの意味だよ。私、多分涼君にフラれたら泣いちゃうと思う。その時はユリシアちゃんの胸、貸してよね」
「あ、ああ、そういうことね。うぅ、勘違い……恥ずかしい……。と、とにかく、それくらいならお安い御用だよ」
「うん、ありがとう」
だが、わたしは少しだけ引っ掛かりを覚えていた。だって、わたしに慰めてもらうことで美味しい思いをできるとは思えないから。
「でも、それの何処にサヤが美味しい思いをできる要素があるの?」
あー、それは二つ目のお願い。いやまぁ、ユリシアちゃんの胸を借りるっていうのもある意味ご褒美なのかもしれないけど……」
「えっ、やっぱりレズ……」
「違うからっ!! え、えっと、もう一つのお願いっていうのはね……」
わたしはサヤからもう一つのお願いを聞いて少し困惑してしまった。だが、サヤのお願いを無下にするのは躊躇われたので、もう一つのお願いについても承諾することにした。そのお願いはきっと、サヤにとってすごく重要なことなのだというのはわたしも充分に理解できたしね。
そうしてわたしとサヤは女同士の約束?を交わしたのだった。親友の初恋が無残に散らされる様子を黙って見届けるのはわたしとしても辛かったけど、恋愛なんてこんなものなのだと無理矢理自分を納得させた。
そうしてわたしたちは一度この話を終え、速足で教室まで戻った。リョウたちを待たせるわけにはいかないからね。というか、もう既にかなり待たせちゃってるんだろうけど。リョウ、ごめんなさい。
*
わたしたちは一度1年C組の教室に戻り、ロッカーから財布を持ち出して隣の教室まで向かう。
そして、B組の教室内を覗き込んだ時、わたしの視界にリョウと知らない女学生が話をしている姿が映った。
「ワ、ワタクシと昼食ご一緒しませんか? で、できればふ、二人切りで」
「二人きりはちょっと……。先約があるので」
そんなやり取りが耳に届く。誰だろう、あの女……。リョウのクラスメイト……? というか、迫り方が強引……。リョウ、嫌がってるじゃん。
わたしは見知らぬ女学生に対して怒りの感情が芽生え始めていた。
「ユ、ユリシアちゃん、負のオーラが外に漏れてるよー? ちょ、ちょっとぞわぞわして怖いから止めてほしいなぁ……なんて」
「でも、あの女……リョウが嫌がってるのに全然諦めようとしない。ああいう強引な女が出てくるとは最初から予想してたけど、実際に目の当たりにすると不愉快極まりない」
「わ、私もあんな風に強引に迫ってたら、今頃ユリシアちゃんに嫌われてたんだろうなぁ……。あー、諦めといて良かったかも……」
「サ、サヤのことは何があっても嫌いにならない……と思う」
少しだけ曖昧な返事になってしまう。実際にサヤが今リョウに迫っている女のような行動に出ていたら、わたしはサヤにどういう感情を抱いていたのか予想がつかない。まぁでも、もしものことなんて考えても無駄だろう。このことについて考えるのは止めにしよう。
「あれ? 陸下さんとフォクサローゼリスさん? 来てたんだね」
わたしとサヤが静かに教室内を伺っていると、リョウのクラスメイトで友人の……えっと、確かテラダくん……?がわたしたちの姿に気づいて手を振ってきた。
彼の声でリョウもようやくわたしたちの姿に気づいたらしく、それまで困ったように苦笑していた表情を少し緩め、穏やかな微笑みを浮かべた。ふふん、これが彼女の力ってものだよ。思い知ったか!
「ユリシア。それに陸下さん。その……、ちょっとだけ待っててもらえる?」
「うん、それは良いんだけど……、その人は?」
サヤが小首をかしげてリョウに無理矢理迫る強引女へと視線を向ける。すると、強引女はこちらにくるりと向き直り、それからぺこりと綺麗なお辞儀をしてみせた。くっ、思わず綺麗と思ってしまった……。何という屈辱……。
「ワタクシ、1年A組所属の薊美月菜と申します。以後、お見知りおきを」
「あ、ああ、A組の人だったんだ。えっと、私は陸下紗夜って言います。こちらこそよろしくね、薊美さん」
サヤと強引女改めアザミは挨拶を交わし合う。所作一つ一つが綺麗……。これがお嬢様……。くっ、なんか負けた気分……。
「そして、アナタは確か……、ユリシア・フォクサローゼリスさん……でよろしかったですわね」
「そ、そうだけど……」
心無しわたしに対する態度だけ刺々しい。これ、完全に敵認定されてるやつだ……。わたしをリョウの隣から引きずり下ろすつもりだな……。そうはさせないんだからねっ!
「それでですね、ユリシアさん。アナタに折り入って相談があるのですが……」
「何?」
わたしは努めて淡泊にそう聞き返す。何となく彼女の次の言葉は予想できた。だからわたしは、絶対に譲らないという意思表示のために不機嫌オーラ全開で応じることにした。
だが、相手も怯んではくれないようだ。なかなか図太い精神の持ち主みたいね。まぁ、どんな奴であってもリョウは譲らないけど。
「これからワタクシと霜崎さんの
「元々リョウと約束していたのはこっちなんだけど……。そもそも、リョウが嫌がってるじゃん。そんなことも分からないの?」
「なっ、し、霜崎さんは嫌がってなどいませんわよね?」
わたしの言葉に驚きの声を上げると、リョウの方へと勢いよく振り返り、リョウにそう問い詰める。
「い、いや……、その……、困ってはいる……かも」
「そ、そんなっ、どうして……」
「さっきから言ってますけど元々先約がありますから二人きりというのはできないです……。もし、薊美さんが嫌じゃなければ、自分たちとご一緒に……というのはどうです?」
驚愕の表情を浮かべる彼女に対し、リョウはそんな提案を持ち掛ける。わたしとしてはこんな奴放っといて良いのではと思うが、基本的にわたしはリョウには逆らわない主義なので、リョウの提案を否定するつもりはない。
まぁ、リョウとわたしがどれだけラブラブカップルなのかをコイツに見せつける良い機会かもしれないしね。って、最近わたし、ますます腹黒になってるような……?
「こ、これは脈ありですわね……!」
などという呟きが聞こえたが、わたしは思わず勘違いするなよと言ってやりたくなった。解釈のし方があまりに都合よすぎて、聞いているこっちはイライラしてくる。リョウはわたしの彼氏なんだから、お前なんかに靡くわけないでしょうが……。
「い、良いのですか!? 二人きりでないのは残念ですが、霜崎さんとお昼をご一緒できるというだけでワタクシ幸せですわ!」
「あ、あはは……、どうも」
「話は片付いた? それなら早く学食行こう」
「っとと、そうだな。3人とも、待たせてごめん」
というわけでわたしたちは連れ立って学食に向かった。道中もアザミがリョウに絡みまくっていて、わたしとしては実に不愉快だった。
「ま、まぁまぁ、ユリシアちゃん落ち着いて」
「わたしは冷静……。うん、冷静……」
「それにしては放つオーラが……」
「目つきも……、大分怖いよ?」
サヤとテラダくんの二人に少し怯えられてしまった。二人とも、ホントにごめんなさい……。でも、アザミの態度がやけに癇に障るんです……。どうか許してほしいです……。
え? その後?ふっ、もちろん見せつけてやりましたよ。例えば、こんな風に……
「リョウ、あーん♡」
「い、いきなりだな……。まぁ良いけど。あーん。んん、美味いな、これ」
「そうなの? ねぇねぇ、わたしにも食べさせてよ、あーんって♡」
「はいはい。ほら、あーん」
「あーん♡ んんぅ、確かに美味しいけど、リョウの手料理の方が美味しいかな♡」
「えっ、そうか? ま、まぁ悪い気はしないけど」
「今度はリョウの手料理をあーんってしてほしいな♡」
「お、おう、分かったよ」
学食のランチを二人で食べさせ合い、アザミにわたしたちのラブラブ具合を存分に見せつける。リョウとご飯食べさせ合うシチュエーション、ちょっとやってみたかったんだよねぇ♪ すごく幸せ♡
「ボクたちは何を見せられているんだろう……」
「ま、まぁ、ユリシアちゃんの魂胆は何となく分かるけどね……。それでも、やっぱり羨ましいなぁ……」
「陸下さんってもしかして……」
「ひょ、ひょえっ!? にゃ、にゃんのことだかしゃっぱり分からにゃいなぁ。しょ、しょれより、今日のランチ、ちょっと砂糖多くにゃい?」
「うわぁ……、分かりやすいなぁ……、この子」
「にゃんか言った……?」
「い、いえ、何も……。ご飯……、甘いね……」
サヤとテラダくんは何やらこそこそと話をしながら学食のランチに手をつけていた。二人の話声までは聞き取る余裕がなかった。幸せすぎて。
「くっ、こんなのあんまりですわっ!!」
アザミは歯ぎしりしながらわたしたちの様子を羨望と嫉妬の入り混じった視線で見つめていた。ふふふ、計画通り!
そんな感じで今日のランチタイムはわたしが一人美味しい思いをするという形で幕を閉じたのだった。サヤには悪いことしちゃったかもだけど、アザミに現実を突きつけるためだから許してね。