異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
「んはああああああああああッッ♡♡♡ リョウぅぅ……しょんにゃにおまんこぺろぺろしゃれたらぁ……、気持ち良しゅぎて……♡ ひきゅあああああああああああああッッ♡♡♡」
学食でのランチタイムを終えて陸下さんや寺田君、薊美さんたちと一度別れた俺とユリシアは、昨日同様屋上を訪れ、すぐさま身体を重ねた。
一応、念のためお互いに隠蔽能力を施しておいた。何時誰が来ても対応できるようにしておく必要はあるだろう。ついでに時間停止も施したが、10分しか持たないらしいのであまり意味はないようにも思えた。まぁ、念には念を、というやつだよ。
「んじゅるるるるる……♡ じゅぽ……♡ んちゅっ……♡ んんぅあああああああああッッ♡♡♡ フェ、フェラに集中できにゃいよぉぉ……♡ んむぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ♡♡♡」
「い、いや……、ちゃんとできてる……んおあああ……、できてるよ……、んれろっ……、ちゅぱっ……、んぐぅぅぅぅ……」
現在俺たちはベンチの上で身体を反対向きに重ねあい、お互いの性器を舐め合っている。いわゆるシックスナインというやつだ。仰向けに寝転がった俺の上にユリシアが乗っかっている状態なので、俺の身体にはあまり自由がない。けど、ユリシアの確かな重みを感じられるのでちょっと嬉しくもあった。
地味にシックスナインは未経験だったのだが、どちらか片方の一方的な行為でなく一緒に気持ち良くなれるこの体位は控え目に言って最高だと思う。正直、かなり気に入った。今後も積極的にしていきたいと思えるくらいに。
まぁ、一つ問題点があるとすれば、ユリシアが快感に翻弄されて思うように俺の一物を舐められない、ということだろうか。だが、俺の上でよがり声を上げて身体をぴくぴくと痙攣させるユリシアが非常にエロ可愛くて、俺はそんなユリシアの姿を見ているだけで満たされた気持ちになってしまっていた。俺に与えられる刺激の多少など、ユリシアの可愛さの前ではほんの些細な問題なのである。
俺は眼前に突き出されたユリシアの白くて可愛らしい小振りなお尻を両手でしっかり掴み、その少し下にある開きかけの陰裂に舌を割り込ませ、その中身を念入りに嘗め回す。ピンク色の肉襞を舌先で愛撫する度に、ユリシアはぶるぶると身体を震わせオーガズムを迎える。
野外でこんなことをしているという背徳感と魔力を使った愛撫が、ユリシアの気分をいつも以上に高ぶらせているのだろう。昨晩や今朝の行為にも引けを取らないくらい、今のユリシアも繰り返し絶頂を迎えている。
既にユリシアの陰裂からはおよそ普通の人間では有り得ない量の淫蜜が湧き出し、俺の顔面をべとべとに汚している。もちろん、そんなの俺にとっては興奮をさらに掻き立てる増強剤でしかないのだが。
「んじゅるるるる……、んんっ……、ユリシアのエッチな蜜……、相変わらず美味いな……、幾らでも舐めていられるよ……、んちゅるるるる……、じゅぷぷっ……」
「ひうううううううううううううッッ♡♡♡ 嫌ぁぁぁ……♡ しょんにゃにじゅるじゅる音立てちゃ嫌ぁぁ……♡ リョウのえっちぃぃぃ……♡♡ふにゅううううううううううううんッッ♡♡♡」
「ははっ、また溢れてきた……。ユリシアだってエッチじゃないか……、んぷっ……、じゅずず……、ちゅぱっ……。おまんこ、こんなにとろとろにさせて……、エッチで可愛い……、はむっ……、ちゅぷぷ……」
「うにゃあああああああああッッ♡♡♡ ダメぇぇぇぇ……♡♡ おまんこがぁぁ……♡ おまんこが蕩けちゃうよぉぉぉ……♡♡ んんうううううううううううッッ♡♡♡ リョ、リョウの……おちんちん……にゃめにゃめしにゃいといけにゃいのにぃぃぃ……♡ はむんっ……♡ じゅぽっ……♡ ちゅぷっ……♡ んむぅぅぅぅぅぅぅッッ♡♡♡」
身を震わせながらも頑張って俺の一物を口に咥えて刺激を与えようとしてくる。そんなユリシアがとても愛おしく、それだけで俺の射精感はどんどん高められていく。たった少しの刺激のはずなのに、俺の一物はパンパンに膨らみ射精準備を着実に整えていく。
「んむああああ……♡ リョウのおひんひん……、またおっひふにゃったよ……♡ もうひゅふ出ひょうにゃの……? んちゅぷっ……♡ ちゅぷっ……♡ れろんっ……♡ れるんっ……♡ んむうううううああああああッッ♡♡♡」
「んちゅるんっ……、じゅぞっ……。んくおおおお……、ユ、ユリシア……、俺……そろそろ……、んぐうううう……、んむぅぅぅぅ……」
「んうううううううう……♡♡ い、良いよ……♡ 出ひて……♡ 出ひて良いよ……♡ んじゅぷぷぷっ……♡ んむんん……♡ わたひのおくひのにゃかに……いっはい出ひて……♡♡ んひうううううううううううッッ♡♡♡」
鼻孔を駆け抜ける強い雌臭や鼓膜を震わせるユリシアの愛らしくも淫靡な嬌声、そして一物に加えられるねっとりとした甘い刺激に、俺の頭の中は次第に白く塗りつぶされていく。
もはや何も考えられなくなり、俺は自分の眼前に突き付けられた雌の象徴たる花園に無我夢中でむしゃぶりつく。赤ん坊が母乳を求めるように充血し硬く尖った剥き出しのクリトリスに必死で吸いつくと、口内に甘味を帯びた何かが流れ込んでくる錯覚を覚える。実際は何も出ていないはずなのに。
その甘さは熱となって全身……主に股間に広がり、ユリシアの口奉仕も合わさって射精寸前というところまで追いやられてしまう。
俺は早く欲望の全てを放出してしまいたくて、自ら腰を揺り動かしてユリシアの口内粘膜に一物の敏感部を擦りつける。
「んんんぅっ……、んむぅぅぅ……。あぁぁ……、くる……、もうすぐそこまで……きてる……、んぅおおぉああああああ……、出る……、出るよ……、ユリシアぁぁぁ……、んああああああああああッッ!!!」
「んむううううううううううッッ♡♡♡ んんんんんんんんッッ♡♡♡」
俺は襲い来る衝動に任せてユリシアの口腔内に自らの欲望をぶちまける。ドクドクと脈動を続け、ドプドプとまるでポンプから水が噴き出すかのような勢いで飛び出した精液がユリシアの喉を叩く。
その衝撃でユリシアも二度の絶頂を迎え、俺の顔面を小水と淫蜜の2種類のシロップでコーティングしていく。俺は振りかけられた合成シロップを口から身体に取り込んでいく。すると、冷めかけていた身体の熱が再び呼び起こされる感覚を覚えた。
ユリシアはユリシアで、俺の一物から吐き出されたドロドロの精液をこくっ、こくっと喉を鳴らしながらゆっくり飲み下していた。お尻よりも高い位置にあるふさふさの狐尾が忙しなく揺れ動く様子から、ユリシアが俺の精液を喜んで飲んでいることが伺えた。俺はそれが嬉しくて、思わず目の前にあるユリシアの柔尻に抱きつき頬ずりしてしまう。
「んんっ……、ユリシアのお尻……柔らかい……。ちょっと汗ばんでるけど、それでもすべすべしてる……。気持ち良い」
「んんぅっ……♡ んくっ……♡ んくっ……♡ ぷはぁ……♡ ひぅんっ……♡ リョ、リョウ……、しょれくしゅぐったい……♡ んひぁんっ……♡」
口内に貯まった精液を全て飲み干したユリシアは、色っぽい声を漏らしながらくすぐったそうに身を捩る。その反応も可愛い。
「んっ……、ちゅっ……、れろっ……」
「ひにゃんっ……♡♡ リョウ……、またぺろぺろしゅりゅの……? んひぃんっ……♡」
「ユリシアはどうしてほしい?」
「んむぅ……、しょ、しょういうこと聞かにゃいでよぉ……、うひゃあんっ……♡♡ わ、わたし……、ペロペロよりもリョウのおちんちんが欲しいにゃ……♡ うあああんっ……♡♡」
俺の問いかけにユリシアは一瞬だけ拗ねたような声を漏らしたが、すぐに熱のこもった声でそんなおねだりをしてくる。なんだかんだ素直に答えちゃうユリシアがちょっと可笑しくて、俺はクスリと笑みを溢してしまう。
ああ、ダメだ。目の前の存在があまりに愛おしすぎる。俺のユリシアに対する甘い愛情が溢れて止まらない。改めて、俺はユリシアのことがどうしようもなく好きなのだと実感させられる。
「良いよ。それじゃあ、次は一つに繋がって一緒に気持ち良くなろうか、ユリシア。んちゅっ……、れるっ……」
俺はそう言うと最後にユリシアの柔らかな尻肉を片手で揉みながら淫蜜を纏ってテカテカと艶めかしく輝く陰口と口づけを交わした。
「ひにゃああっ……♡ うにゃああああああッッ♡♡♡」
すると、ユリシアはまたも身体をぶるりと震わせて果ててしまった。まさかこれだけでイくとは思っていなかったので、俺は少しだけ驚いてしまう。
「あっ、これだけでイッちゃった?」
「うぅぅ……♡ しょれダメぇ……♡ 気持ち良いからぁ……♡」
「なら、もっとする?」
ふりふりとお尻を揺らしながら抗議の声を上げるユリシアに、俺の中の悪戯心が少し顔を覗かせ、俺はユリシアに意地悪な問いかけをしてしまう。ついでにすべすべとしたお尻の感触を確かめるように、軽く一撫でもしておく。
「んひゃうんっ……♡♡ むぅ、いじわりゅ言わにゃいでよぉ……♡ 早くしにゃいとしぇっくしゅの時間にゃくにゃっちゃうでしょ……?」
「ははっ、それもそっか。流石にもう10分経ってるだろうし、時間停止の効力はとっくに切れてるはずだからね」
俺はそう言いながらも、念のためステータスウィンドウを覗き、時間停止が作動しているか否かを確認する。
「あれ……、まだ続いてる……? って、なんか10分から20分に延長されてるんだけど……、これどういうことだ?」
何故か、時間操作能力の詳細欄には"現在作動中"という表示があった。しかも、どういうわけか最大作動時間が10分から20分に延びていたのだ。俺は疑問に思いつつ、詳細説明を探して確認してみる。
「使用する度に10分ずつ延長……。こんな説明、昨日見た時はなかったような……? まぁ良いか。とにかく、使えば使うほど作動時間が長くなるってことだな。んなら、今後も積極的に使っていくべきだな」
「んはぁ……♡ んふぅ……♡ んひぃ……♡」
「って、どうした? ユリシア」
俺がステータスウィンドウを閉じてユリシアに意識を向けると、ユリシアは身体をゆらゆらと動かしながら荒い息を吐いていた。ちょっと待たせすぎたのかな?
「んうぅ……♡ リョウが喋る度にリョウの息がおまんこに当たってぇ……♡ くしゅぐったいのぉ……♡ んひゅぅ……♡ んはぅぅ……♡」
「えっ、あっ、ごめんごめん」
「ひあうんっ……♡♡ しょれもくしゅぐったいよぉぉ……♡」
「そ、そんなこと言われても……。それじゃあ俺、喋れないんだけど……」
「いにゃあんっ……♡♡ しょ、しょうだよね……♡」
そう言うとユリシアはずるずると俺の身体の上を滑るように移動し、そして俺の股間の上に跨った。ユリシアの可愛らしいお尻が顔から遠ざかる時、少しだけ寂しいと思ってしまった。
俺はそれを追いかけるように身を起こし、俺の腰に跨ったユリシアを背中から抱きしめる。俺たちの身体に挟まった狐尾がふさふさしていて何とも心地が良い。
「それじゃユリシア、このまましよっか」
「うん……♡ エッチしよっ……♡ 一緒に気持ち良くにゃろ……♡」
そうして俺たちは背面座位の状態で一つに繋がったのだった。時間の許す限り互いを求めあい何度も何度も快楽の頂点に登りつめる俺たち二人は、いつも通り絶好調だった。
*
「んんぅ……♪ リョウ……♡ えへへ……♡」
行為が終わり事後処理も済ませた後、ユリシアは俺に身体をべったりと寄せて目いっぱい甘えてきていた。
少し余裕をもって行為を終わらせたので、昼休み終了までまだあと少し時間が残っていた。だから俺も、時間ギリギリまで甘えん坊ユリシアとのイチャイチャを満喫していた。
だが、少しだけ今日のユリシアの様子に違和感を覚えてもいた。この違和感は昼食を友人たちと食べている時から感じていたものなのだが……。
「なあ、ユリシア。今日のお前、なんかいつもより甘えん坊じゃない?」
昼食時もユリシアは人目をはばからずべたべたと俺にくっついてきていた。まぁ、俺としては嬉しいので何の文句もないのだが。けど、普段のユリシアなら、人前ではもう少し控え目に甘えてくると思う。
最初は薊美さんへのアピールのために大げさに甘えてきているのかとも思ったが、薊美さんと別れてからもユリシアの態度は変わらなかった。だから、何かあったのではと心配になってしまう。
などと考えていると、それまで沈黙していたユリシアがようやく口を開いた。俺を見上げるユリシアの表情は何処か寂し気に感じられた。
「……分かっちゃうよね……」
「やっぱり、何かあった?」
「まぁ……、あった……かな……」
ユリシアのその言葉は何とも歯切れが悪かった。その様子から、あまり言いたくないことなのだと何となく理解した俺は、それ以上何も聞かなかった。
「そっか。ごめんな、変なこと聞いて」
「ううん、大丈夫。それと、ごめんね……、リョウ」
「どうして謝るんだよ。ユリシアが謝ることなんて何もないだろ?」
「それでも……、謝らせてほしい……。ごめんなさい……」
「そうか……」
俺は一言だけ呟くと、黙ってユリシアの身体を抱きしめた。その華奢な身体は少し震えていた。
ユリシアが何故俺に対して罪悪の念を覚えているのかは分からないけど、少なくともユリシアは俺を本気で傷つけるようなことはしないという確信はあった。
「……ありがとう、リョウ」
「どういたしまして。まだ時間あるから、落ち着くまでこうしてな」
そうしてしばらく俺はユリシアを抱きしめたままユリシアが落ち着くのを待っていた。ユリシアの謝罪の意味が分かるのは何時だろうか……? そんなことを考えながら……。
*
それからしばらくして予鈴の音が聞こえたので、俺たちは屋上を後にしてそれぞれの教室に戻っていった。そしてすぐに5限が始まった。
5限は簡単な実力テストが行われた。中学で学習した内容の中でも特に重要なポイントがまとめられており、解いているこちらとしては非常に良い試験問題のように思えた。一つ不満点を挙げるとすれば、問題の難易度が低くあまり手ごたえを感じられなかったことだろうか。
制限時間は50分だったが、俺は20分ほどで回答を終えてしまった。きっと他の人たちも同じように簡単だと感じていることだろうと思っていたのだが……
「はい、そこまで。解答用紙を回収します」
という先生の号令と同時に、周囲から幾つもの溜息が聞こえてきた。一部からは"難しかったぁ"などという声も聞こえてきた。
あれ? そんなに難しい問題だった? もしかして、俺だけ配布された問題用紙が別だったのでは?などと不安に感じてしまう。
「ね、ねぇ、寺田君……」
「ん? どうしたの? 霜崎君」
「ちょっと問題用紙見せてくれないかな?」
「えっ、それは構わないけど、霜崎君も同じもの持ってるよね?」
「そ、そうなんだけど……、ちょっとね」
「分かった。はい、これ」
俺は隣の席の寺田君から問題用紙を拝借する。だが、寺田君から受け取った問題用紙には俺のものと寸分変わらない内容が記載されていた。
「うーん、同じ問題だ……」
「えっ、そ、そりゃそうでしょ……」
「し、試験どうだった?」
「ボク? うーん、流石に難しかったかな。朱鷺舟のレベルの高さを改めて思い知らされたよ」
そう言ってはははと苦笑する寺田君。お、同じ問題を解いていたんだよな……? なのに、抱いた感想は俺と真逆……。
「霜崎君は?」
「え、えっと……、正直……簡単すぎた……かな」
「おお、流石だね。この問題を簡単って言えるなんて羨ましい限りだよ」
「あ、あはは、そう……なのかな。あ、これ、ありがとう」
……もしかして俺、マジでできる子? アメイズ様の過大評価も、強ち間違いじゃなかったりするのか……?
などと一人で考え込んでいると、不意に鞄の中にしまっていたスマホのバイブ音が俺の耳に届いた。
「ん? 連絡か……。ユリシアからかな?」
そう呟きながら俺は鞄からスマホを取り出し、今届いたばかりの通知を確認する。俺はユリシアからのメッセージが届いたのかと予想していたのだが、画面に表示されていたのはユリシアではなかった。
「……陸下さん?」
メッセージ履歴画面の一番上に表示されていたのは陸下さんの名前だった。流石に昨日のようなことにはならないだろうと思いつつも、少しだけ心配になってしまう。俺は恐る恐る陸下さんとの個人チャットを開き、届いたメッセージの詳細を確認する。
SAYA:この後、屋上に来てください。
届いていたのはたったその一言だけだった。屋上に呼び出し……? 何かあったのだろうか? もしかして、昼休みユリシアの様子がおかしかったのと何か関係があったりするのだろうか?
とにかく、行ってみないことには分からないよな。そう考え、俺はささっと了解の一言を変身し、スマホをズボンのポケットにしまい込む。
「あれ? 何か用事?」
そして静かに席から立ち上がると、隣から寺田君にそう声をかけられた。俺は小さく首を縦に振る。
「まぁ、ちょっとね……。呼び出しがあったんだ」
「そっか。行ってらっしゃい」
「うん、それじゃあまた明日」
それだけ言って、俺はそそくさと教室を後にした。向かうは屋上。昨日のような事態になっていないことを願うばかりだ。
*
俺は階段を上がり、すぐに屋上へ続く扉の前までやってきた。何があるか分からないので、一応屋上の様子を扉越しに確認する。だが、特に誰かの声が聞こえてくることはなかった。
俺はゆっくりと屋上の扉を開き、警戒しながら屋上へと脚を踏み入れた。だが、屋上に人の姿はほとんどなかった。
いたのは一人だけ……
「涼君、来てくれたんだね」
扉に背を向けて佇んでいた陸下さんが俺の存在に気づき、くるりとこちらに振り向いてにこりと微笑んだ。
「うん、来たよ。昨日も同じような感じで呼び出されたから、少し警戒しちゃったよ。でも、どうやら俺の思い過ごしだったみたいだね、良かった」
「ごめんね、勘違いさせちゃって。今日は単純に私から涼君に話したいことがあっただけなんだ」
「そっか。話したいことっていうのは?」
「うーん、早速本題に入っても良いんだけど、その前にいろいろとお話ししない?」
「ああ、構わないよ」
俺は軽く頷いてから屋上に備え付けられたベンチに近づき、そして腰かけた。それから陸下さんを隣に招く。
「ありがと。涼君はさっきのテストどうだった?」
俺の隣に腰かけた陸下さんは、先ほどの実力テストの話題を振ってきた。俺は寺田君とのやり取りを思い出し、少し苦笑しながら言葉を返す。
「あー、さっきのか。うーん、あんまり難しくなかった……かな」
「あはは、流石だね、涼君は。私はあんまり解けなかったよ」
陸下さんはそう言うと小さく溜息を吐く。
「そうなんだ。まぁでも、人には得意・不得意があるからね」
「そうかもね。でも、不得意をできない言い訳にするのはいけないことだと思う。だから、もっと頑張らなきゃね」
「おう、頑張れ。何か困ったことがあったら言ってくれ。多少なら力になれると思うからさ」
「うん、ありがとう。優しいね、涼君は」
「俺は優しくなんてないよ」
陸下さんの言葉に対して、俺は自嘲気味にそう返す。他者とのコミュニケーションスキルもない俺が誰かに優しくできているだなんて到底思えない。
「そんなことない。昨日だって、私たちを助けてくれたじゃん。ま、まぁ、本命はユリシアちゃんで、私はそのおまけだったかもしれないけど」
「あれは俺自身奴のことが許せなかっただけだよ。それと、陸下さんだって俺の大切な友人だ。ユリシアのおまけだなんて思ってないよ」
「友達……、そうだよね」
何やら意味あり気にそう呟く陸下さん。そういえば、昨日理事長室から出た後も同じような反応を見せていたっけ。それも、友人という言葉に反応していたような……? も、もしや……、友人と思っていたのは俺だけだったり……? それはちょっとばかし傷つくなぁ……。
「ねぇ、涼君。ユリシアちゃんのこと、好き?」
一人で勝手に落胆していると、陸下さんは唐突にそんなことを聞いてきた。どういう意図でそんな質問をしたのか分かりかねるが、一応聞かれたので答えておく。
「うん、好きだよ」
「そっか、あはは。急にこんなこと聞いちゃってごめんね」
「いや、構わないよ。でも、どうしてそんなことを?」
「それは……、えっとね……」
俺が質問すると、陸下さんは口ごもってしまう。何か言いづらいことでもあるのだろうか? まぁ、急かす必要もないだろう。というか、無理に答えさせるのも悪いな。
「いや、答えたくないなら良いよ」
「う、ううん、そういうわけじゃないんだよ。ただちょっと、心の準備が必要なだけでね……」
すーはーと繰り返し深呼吸をする陸下さん。何というか……、この緊張ぶりはまるで思い人に告白しようとする女の子みたいだなと思ってしまう。まぁ、そんなはずはないんだろうけど。だって、陸下さんはユリシアと俺が付き合っていることを知り合った当初から知っていたわけだし。
なんて考えていると、不意に深呼吸が止んだ。どうやら、陸下さんの心の準備が整ったようだ。
「霜崎涼君……。私はあなたのことが好きです……」
「……え?」
唐突に告げられたその言葉に、俺は固まってしまった。俺の聞き間違いでなければ、今陸下さんは俺のことが好きだと言ったよな……?
いや、でも陸下さんは俺とユリシアが既に恋人関係にあることを最初から知っていたはずだ。それを知っていた上で俺のことを好きになった……のか?
俺が一人呆然としているのを他所に、陸下さんは話を続ける。
「涼君にはユリシアちゃんがいるってことは分かってる。それでもね……、好きになっちゃったんだよ……。これ、私の初恋なんだ……。初恋が親友の彼氏だなんて、残酷だよね……」
「陸下さん……」
「最初はこの気持ちごと心の奥に押しとどめて涼君には隠したままにしておこうと思ってた。でもね……、それじゃ未練が残っちゃうと思ってね……。ユリシアちゃんにお願いして告白の機会を作ってもらったんだよ」
陸下さんの様子は本気そのもので、嘘や冗談には到底思えなかった。ということは、陸下さんは本当に俺のことが好き……なのか……。しかも、これが初恋……。
それと、ユリシアの様子がおかしかったのも恐らくこのことが関係していたのだろう。告白をさせることで大切な友人を傷つけてしまうかもしれない……。結末が分かりきっているからこそ、それをただ黙って見届けることしかできないのが辛かったのだろう。
俺も心苦しくはある。だけど、そんな理由で答えをはぐらかすなんていう馬鹿な真似はしたくない。それに、きっと陸下さんも曖昧な返事は望んでいないはずだ。
だから俺は、意を決して陸下さんに向き直る。そして、震えるダークブラウンの瞳を覗き込み、俺は彼女の気持ちに対する返事を紡いだ。
「陸下さん」
「うん……。返事、聞かせてほしいな」
「さっきも言った通り、俺はユリシアのことが好きだ。この気持ちはきっと揺るがない。だから、陸下さんの気持ちには答えられない」
「うん、分かった」
俺の返事に、陸下さんは優しく微笑んでみせた。彼女のダークブラウンの瞳は潤んでおり、今にも決壊してしまいそうだった。しかし、それでも彼女は真っすぐに俺の瞳を覗き込んでいた。
「ごめんね、こんな話しちゃって。迷惑だったよね」
「いや、迷惑なんかじゃないよ。陸下さんの気持ちは正直すごく嬉しかった」
「そっか。あ、あのさ、最後に一つだけ……、良いかな?」
「ん? 何かな?」
そう俺が尋ねるとほぼ同時に、陸下さんが俺に身体を寄せてきた。ユリシアとはまた違った温かくて柔らかな感触が俺の腕に伝わってくる。それから遅れて女の子特有の甘い香りが鼻腔をくすぐる。
俺は陸下さんの突然の行動に再度硬直してしまう。だが、その間も陸下さんの動きが止まることはなく……
「んっ……♡」
「っ……!?」
次の瞬間には、俺の唇に陸下さんの柔らかな唇が重ねられていた。突然のキスに、俺の脳まで一時停止してしまった。
「んんっ……♡ ちゅっ……♡ あ、あはは……、ごめんね、涼君。でも、ファーストキスは初恋の相手にもらってほしかったんだ」
「えっ……、あっ……」
「私からのお話は終わり。時間奪っちゃってごめんね。それじゃ、また明日」
陸下さんは震え声で俺に別れの言葉を継げると、勢いよくベンチから立ち上がり俺に背を向けて屋上の出入り口まで駆けていってしまった。去り際、キラリと光る小さな粒がはらりと舞い散るのが見えた。
そして、俺は一人屋上に取り残されてしまった。
俺はしばらく事態が呑み込めていなかったが、やがて脳が再び活動を始め、それでようやく俺が陸下さんにキスされたのだと認識した。
「陸下……さん……」
俺は未だに彼女の柔らかな感覚が残る唇に自分の手を当てた。普通なら、ユリシア以外の女の子からのキスなんて不快なものでしかないと思うはずだけど……
「……嫌じゃ……なかったな」
誰もいなくなった屋上で、俺は一人そんなことを呟いたのだった。