※この作品はR-18です。

異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~   作:室谷 竜司

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わたしのベストフレンド。わたしのベストパートナー

 サヤがリョウに告白する様子を、わたしは屋上に続く扉の前で固唾を飲みながら見守っていた。見守る……っていうのはちょっと違うのかな。二人の声しか聞き取れないし。

 

 サヤはちゃんとリョウに思いを伝えられるだろうか……。リョウの返答を聞いてサヤが傷ついてしまわないだろうか……。サヤだけでなく、リョウにだって負担をかけてしまっているのではないか……。そんな心配事が胸中を駆け巡る。

 

 好きな相手に思いが届かないのは絶対に辛いことだと思う。だがそれと同時に、相手の思いに答えられないというのもきっと辛いことなのだろう。結果的にわたしは、サヤとリョウの二人を苦しめてしまったのではないか……。

 

 先ほどからそんなことばかり考えてしまっていた。昼休みもリョウに対する罪悪感に押しつぶされそうになっていた。何とかリョウに甘えることで誤魔化そうとしていたけど、リョウには気づかれていた。

 

「後でちゃんと謝らないと……。リョウにも……、そして、サヤにも……」

 

 わたしは両手をぎゅっと握りしめながら、一人そう呟いた。そして、再び屋上へと意識を向ける。まずは、サヤの告白が終わるのを待たないと。

 

 そうしてじっと扉の前で二人の様子を窺ってると、しばらくしてサヤがリョウに別れを告げる声が聞こえてきた。そして、遅れてパタパタという足音もわたしの耳に届く。どうやら、サヤの告白は終わったようだった。

 

 わたしは一歩後ろに下がり、サヤが扉を開けてわたしの前に現れるのを待った。ちゃんと約束通り、サヤを受け止めてあげないと。

 

 すると、すぐに扉が勢いよく開け放たれ、その奥から顔を涙で濡らしたサヤが姿を見せた。サヤはそのままの勢いでわたしの胸に飛び込んでくる。待ち構えていたわたしは、そんなサヤをしっかりと胸の内に抱き寄せた。サヤくらいの体格なら、どれだけ勢いよく飛びつかれても受け止めきれる自信はある。これでも勇者様のベストパートナーだし。って、今はそんなこと考えている場合じゃないよね。

 

 わたしは胸に顔を埋めたサヤの後頭部を片手で優しく撫でる。サヤの努力を労わるようにそっと……。

 

「うああああああんっ、ユリシアちゃああああんっ!!」

 

「サヤ、よく頑張ったね」

 

「うん……、うんっ……。私……、ちゃんと涼君に気持ち伝えられたよ……」

 

「辛かったよね……、苦しかったよね……。受け入れてもらえないのは……」

 

「辛いよ……、苦しいよぉ……。覚悟してたけど……、やっぱりフラれるのは悲しいよぉ……、んうううううううっ……」

 

 泣きながら、サヤは大声で自分の今の気持ちを素直に吐露してくれる。サヤのその言葉がわたしの心に大きく響く感覚を覚えた。

 

 そして、わたしの瞳からはらりと一筋の涙がこぼれた。分かっていたことだけど、わたしはサヤに悲しい思いをさせてしまった。わたしの腕の中で片を震わせ泣き続ける大切な親友の初恋を実らせてあげることができなかった。それがとても苦しくて、わたしもサヤにつられるように泣き始めてしまう。

 

「うん……、そうだよね……。ごめんね……、サヤに辛い思いさせちゃって……、うううう……」

 

「ユリシアちゃんは何も悪くないよ……。言い出したのは私だから……。どれだけ辛くても、どれだけ悲しくても、私はこの結果を受け止めるって最初から決めてたから……。むしろ、ちゃんとけじめをつけさせてくれてありがとうね……、ユリシアちゃん……」

 

「ううん、わたしは何もしてないよ……。わたしはこうやってサヤの悲しみを受け止めることしかできないから……」

 

 わたしはサヤの頭と背中をゆっくり撫で摩りながら、涙混じりに苦笑してみせた。わたしは、サヤにお礼を言われるようなことは何もできていないから。

 

「そんなことないよ。こうして告白する機会をくれたじゃん。ユリシアちゃんは、わたしが次の一歩を踏み出すきっかけをくれたんだよ……。だから、やっぱりありがとうなんだよ……」

 

「サヤ……」

 

「だから、ユリシアちゃんが謝ることなんて何もないんだよ。本当にありがとう、ユリシアちゃん」

 

「サヤ……、サヤぁ……、うええええええええんっ」

 

「ユリシアちゃんっ……、うわああああああんっ」

 

 わたしとサヤはお互いに強く強く抱きしめ合いながら、しばらくの間二人して大声で泣き続けていた。胸に抱いた悲しみを全て吐き出すように……。

 

 やがてわたしたちはお互いに落ち着きを取り戻していく。わたしは、ちゃんとサヤの気持ちを受け止めてあげられたのかな。

 

「あはは、こんなに泣いちゃうなんて、なんか恥ずかしいなぁ」

 

「悲しい時は泣いた方が良い。我慢は良くない」

 

「それもそうだね。ユリシアちゃん、胸貸してくれてありがとね」

 

「お礼なんて良い。むしろ、こんなので良かったの?」

 

 わたしの胸から顔を離したサヤの、赤く充血してしまっているブラウンの瞳を見つめ返しながら、わたしはサヤにそう問いかける。

 

 すると、サヤはにやりと顔を綻ばせて頷いた。

 

「うん、大満足♪ ユリシアちゃんのおっぱい、すごく柔らかくて気持ち良かったよ♪ ふふふ、ごちそうさまでした♪」

 

「それ……、ちょっと変態っぽい……」

 

「えへへ、ごめんごめん。でも、やっぱりおっぱい大きいってのは羨ましいなぁ。身長さなんてほとんどないのに、どうして胸の格差は激しいのかなぁ」

 

「ちょっ、サ、サヤ……!?」

 

 サヤはどさくさに紛れてわたしの左右のおっぱいをぐにぐにと揉んでくる。こうして同性の友人に自分の胸を弄ばれるのは何とも複雑な気分だ。相手がサヤだからか決して嫌だという感情は湧き出してこないのだけど、その代わりくすぐったさやもどかしさを覚えてしまい、何とも微妙な気持ちになってしまう。

 

「柔らかいけど、ちゃんと弾力もある……。なんかこう、ぽよんぽよんしてるよね……。おっぱいって不思議だなぁ」

 

「サ、サヤ……、く、くすぐったいよぉ……、んん……」

 

「涼君はユリシアちゃんのこの大きなおっぱいをいつも楽しんでるのかなぁ……」

 

「ちょっ、ちょっと!? へ、変なこと想像しないでよぉ!!」

 

 サヤのそんな爆弾発言に、わたしは急に顔が熱くなるのを感じた。確かに、リョウにはいつもわたしのおっぱいを触ってもらってるけどさ……。

 

「その反応、さては当たりだね?」

 

「うぅ……、し、知らないっ。と、というか、何時までわたしのおっぱい揉み続けてるのぉっ!?」

 

「おっと、あまりに揉み心地が良すぎてつい♪ ごめんね、ユリシアちゃん。それと、改めてごちそうさまでした!」

 

「はぁ……、はいはい。サヤが変態だってことはよく分かったよ」

 

 サヤの何処かおっさん臭いセリフに、わたしは深い溜息を溢しながらそう言葉を返す。まぁ、えっちなゲームが好きって言っているくらいだから、サヤがえっちで変態なのは分かりきったことなのかもしれない。

 

「まぁ、冗談はこれくらいにして……、ユリシアちゃんのおかげで大分落ち着いたよ。すっきりした」

 

「それなら良かった」

 

 わたしはほっと胸を撫で下ろす。完全……とまではいかないかもしれないけど、サヤの気持ちも少しは晴れたようだ。きっと、明日からはまた平常運転のサヤを見ることができるだろう。本当に良かった。

 

「そういえば、リョウとはちゃんとキスできたの?」

 

「あ、うん……、できたよ」

 

 わたしの問いかけに、サヤは顔を赤らめながらそう答えた。昼食前、わたしがサヤと交わした約束のうちの一つが、サヤのファーストキスをリョウに捧げる、という内容だったのだ。

 

 正直、リョウが他の子とキスをするなんて、普通なら許せる気がしない。でも、サヤなら……、わたしの大切な親友になら、それくらい許してしまっても構わないと思えた。まぁ、それでもちょっとだけ複雑な気持ちにはなってしまうけど。

 

「キスって、あんなに恥ずかしいものだったんだね……。さっきはそれどころじゃなかったけど……、改めて思い返して、私今すっごくドキドキしちゃってる……」

 

「サヤ、顔真っ赤だよ。可愛い」

 

「そ、そういうこと言わなくて良いってば……」

 

「ふふっ、さっきのお返し♪」

 

「ぐぬぬ……。と、とにかく、私のファーストキスはちゃんと涼君に捧げられたから、もう私に悔いはないよ」

 

「そっか、分かった」

 

 サヤの言葉にわたしは大きく頷いてみせた。彼女の瞳が、その言葉が真実であることを如実に物語っていた。だからわたしは、サヤのその言葉を信じることにした。

 

「というわけで、これからもよろしくね、親友!」

 

 にこやかな笑顔を浮かべながら、サヤは今一度私の身体に腕を巻き付けひしと抱きついてくる。わたしはそんなサヤに微笑み返す。

 

「うん、よろしく、親友」

 

「えへへ♪ んっ……♡」

 

「んっ……!? んんっ……!?」

 

 と思ったら、次の瞬間にはわたしの唇にサヤの唇が重ねられていた。一瞬何が起きたのか理解できず、わたしは固まってしまった。

 

「これで私、涼君とユリシアちゃんの二人とキスしちゃった♪」

 

「……んえ!? な、何をっ……!?」

 

「あはは、いきなりごめんね。驚かせちゃったよね」

 

 慌てふためくわたしを他所に、サヤはあっけらかんとそう言う。これではまるで、本当にレズプレイをしてしまったみたいで、何とも言えない気持ちになってしまうのだが、サヤは全くと言って良いほど気にしていないようだった。

 

「サヤってもしかして……、レズもOKなの……? さっき、嬉しそうな顔でわたしのおっぱい揉んできてたし……」

 

「へっ!? そ、そういうわけじゃないよ!?」

 

「じゃ、じゃあ今のは一体……」

 

「え、えっと、私とユリシアちゃんが親友だっていう証……みたいな?」

 

「も、もぅっ……、そういうの恥ずかしい……」

 

「あ、あはは、ごめんごめん。照れてるユリシアちゃん、可愛いよ♪」

 

「う、うるちゃいっ!!」

 

 わたしはぷいっとサヤから視線を逸らす。嬉しさやら恥ずかしさやらが心中で同居していた。

 

「さてと、それじゃあユリシアちゃん、私はそろそろ帰るよ」

 

「えっ、あっ、うん。わ、分かった」

 

「ユリシアちゃんにはまだやることがあるんでしょ?」

 

「えっ……!?」

 

 思わぬ指摘に、わたしはそんな驚きの声を漏らしてしまう。サヤには見透かされていたのかな……? なんか、ちょっと悔しいかも……。

 

「ユリシアちゃんの表情を見ていれば何となく分かるよ」

 

 そう言いながらサヤはチラリと屋上に続く扉へと視線を向ける。

 

「きっと大丈夫だよ。不安になることないよ」

 

「そう……なのかな。でも、そうかもね」

 

「うん。あっ、それと、これからも()()()()()よろしくねって、涼君にも伝えておいてほしいな。涼君、さっきのこと気にしてるだろうから」

 

「うん、分かった、伝えとく」

 

「ありがと! それじゃあ、また明日ね♪」

 

「うん、またね。こちらこそありがと、サヤ」

 

「いえいえ~♪」

 

 そう言って、サヤは軽い足取りで階段を降りていく。その後ろ姿には、先ほどまでの弱々しい様子は何処にもなかった。そんなサヤの背中を、わたしは静かに見つめていた。

 

「っとと、言い忘れてた」

 

 が、不意にサヤが階段の踊り場で立ち止まり、振り返ってわたしを見上げてきた。何事かと首をかしげるわたしに対し、サヤは一言

 

「二人とも、ちゃんと幸せにならないと許さないからね♪」

 

「……サヤ、そういうのずるい」

 

「ふふふ♪ んで、返事は?」

 

「幸せになるなんて、そんなの当たり前。それが恋人ってものでしょ?」

 

「そうだね。うん、良い返事♪」

 

 満足気にそう頷いたサヤは、今度こそ階段を駆け下りわたしの目の前から姿を消した。わたしは再び目尻からこぼれそうになる涙を片手で拭い、それから屋上の扉へと視線を戻した。

 

「さてと……、リョウにもちゃんとごめんなさいしなきゃね」

 

 一言そう呟いて気持ちを切り替え、わたしは屋上の扉に手をかけた。そして、ゆっくりと押し開いていく。

 

 わたしが屋上に足を踏み入れると、リョウは扉に背を向け空を見つめながら佇んでいた。その後ろ姿は疲れているようにも見えたけど、それ以上に何かをやり遂げた後の達成感や満足感をわたしは感じ取った。

 

「ん? ああ、ユリシアか。もう話は終わったのか?」

 

 リョウは屋上に顔を覗かせたわたしの存在に気づき、こちらに振り向きながら優し気な声でそう言った。

 

「やっぱり、さっきの聞こえてた……かな?」

 

「そりゃ、あんだけ大声出してりゃ気づくって。なるべく聞かないようにはしてたけどさ。陸下さんのために」

 

「そっか」

 

 わたしは、ゆっくりとリョウのもとへと歩み寄る。リョウはじっとわたしが近づくのを待ってくれていた。

 

 そして、わたしがリョウの傍までやってきた途端、わたしはリョウに力いっぱい抱きしめられていた。わたしは状況についていけず、ぽかんと口を半開きにさせたままボーっとリョウの表情を見つめていた。

 

「お疲れ様、ユリシア」

 

 そして次の瞬間、リョウはわたしの耳元でそう囁いた。何が何だか分からない……。わたしは戸惑いの視線をリョウに向けた。

 

「どう……いうこと……?」

 

「ユリシアが一番辛かったよな。結果は分かりきっているのに、陸下さんの告白を黙って見届けないといけなかったんだもんな」

 

「えっ……」

 

 リョウの言葉に、わたしは呆然としてしまう。一番辛かったのはわたし……? いやいや、そんなはずはない。サヤやリョウの方がよっぽど辛かったはず……。

 

「昼休み、ユリシアの様子がおかしかったのもこのことが関係してたんだろ? 辛かったよな。苦しかったよな。それでも、ユリシアはよく頑張った。ちゃんと陸下さんの背中を押すことができたんだ」

 

「ふ、ふえ……?」

 

「もうここに陸下さんはいないんだろ? なら、我慢するな。まだ泣き足りないんだよな。ユリシアの辛い気持ち、悲しい気持ち、全部俺が受け止めてやる。だから、もう抑える必要はないんだよ」

 

 リョウのその言葉はわたしの心の奥にじんわりと広がり、そしてわたしの感情を堰き止めていた何かが溶かされる感覚を覚えた。次の瞬間、わたしの瞳からは先ほど枯らしたはずの涙が再びボロボロとこぼれ出した。

 

「あっ……ああ……あああああああああっ……、うあああああああああっ」

 

 わたしはリョウの胸に顔を埋めたまま、大声を上げて泣き出してしまう。リョウがしっかりとわたしを胸に抱き寄せてくれていたのでわたしの泣き声は多少抑えられていたけど、もしかしたら耳が良い人には聞こえてしまっていたかもしれない。でも、今はそんなこと気にする余裕はわたしにはなかった。

 

「よく頑張ったな、ユリシア」

 

「うんっ……、わたし……ちゃんとサヤの背中……押せたんだよね……、うぅ……。わたし、サヤのこと悲しませただけじゃないんだよね……、ひっく……。苦しかった……、苦しかったけど……良かった……、うええええんっ……」

 

「お前はすごいよ。よくやったよ。誰もお前を咎めたりしないさ」

 

 そう優しく声をかけながら、先ほどわたしがサヤにしていたようにわたしの後頭部と背中をそっと撫でてくれるリョウ。そんな彼の優しさを受け、わたしの心の奥底からこれまで抑えていた感情が一気に込み上げてくる。わたしの瞳からは絶えず涙が流れ続ける。

 

 リョウに抱きしめられながら、わたしは何となく察した。サヤやリョウに対する罪悪感も確かに感じていたけど、本当は自分の中の苦しさや悲しみを誰かに受け止めてほしかったのだと。

 

 リョウはそんなわたしの内心まで全部全部お見通しだったってわけだ。ううん、リョウだけじゃない。もしかしたら、サヤにもそこまで気づかれていたのかもしれない。リョウもサヤも、どうしてそんなに優しいのだろう……。わたしの心の中に温かな気持ちが広がっていく。

 

 そうしてしばらく、わたしはリョウの胸の中で悲しみや嬉しさ、他にもいろいろな感情がごちゃ混ぜになった涙を心の底から溢れさせ続けた。

 

   *

 

「……落ち着いた?」

 

「うん、ありがと、リョウ」

 

「いいや、気にするな」

 

 しばらくしてようやくわたしの中の感情を全て吐き出し終え、わたしとリョウは改めて対面する。

 

「あのね、リョウ。わたし、リョウに謝らないといけないの」

 

 元々リョウには先ほどのことについて謝るつもりでいた。その前に不意打ち気味の優しさを向けられて思わず泣き出してしまったけど、そもそもの本題はこっちなのである。

 

「ん? どうして?」

 

「サヤのこと。涼にも苦しい思いさせちゃったよね」

 

「あー、そのことね。確かにちょっと心苦しくはあったけど、俺は別に気にしてないよ。むしろ、陸下さんの後押しを手伝えたのは嬉しかったかな。きっと陸下さんなら、俺よりもずっと良い男を見つけられるさ」

 

「うーん、どうかなぁ……。少なくとも、わたしの中ではリョウが一番最高の男だからなぁ」

 

「それはお前が俺の彼女だからだろうよ。まっ、そう言ってくれるのは単純に嬉しいんだけどな。そういうわけだ。ユリシアが気にすることは何もないよ」

 

 リョウはあっさりとそう言いきった。わたしはそんなリョウの様子にほっと安堵の息を漏らしてしまう。

 

「ははっ、心配しすぎだよ。ユリシアは何も悪いことしてないんだから」

 

「そうかもだけど……」

 

「まぁ、一つ懸念があるとすれば、今後陸下さんとこれまで通り付き合っていけるかってことくらいかな」

 

「あっ、それに関しては大丈夫だと思う。サヤからの伝言なんだけど、これからも友人としてよろしく、だってさ」

 

「そっか、それなら良かったよ。んなら、この話はもうおしまい」

 

 そう言ってポンポンとわたしの頭を優しく叩くリョウ。けど、わたしにはもう一つやるべきことがあったので、リョウの身体から腕を離すつもりはなかった。

 

「ユリシア、どうかしたのか?」

 

 リョウはわたしの様子を不思議に思い、首をかしげながらわたしのことを見下ろしていた。そんなリョウの無防備な唇に、わたしは素早く自らの唇を重ねた。

 

「んちゅっ……♡ んんぅっ……♡」

 

「んんっ……!?」

 

「んっ……♡ んあっ……♡ んむぅ……♡」

 

 何度も何度もリョウの唇をついばむようにしてわたしの唇を触れさせていく。リョウをわたし色に染めるように、時間をかけて唇を押しつける。

 

「んんんっ……♡ んはぁ……。これ、さっきの上書き」

 

「う、上書き……?」

 

「リョウの唇、サヤからわたしに上書きしたの」

 

「えっ、そ、そのこと知ってたの!?」

 

「うん、事前にサヤと約束してたから」

 

「そ、そうだったのか……。ま、まぁ良いけど。でも……、あれだな……。お前とキスすると、どうしてもそういう気分になっちまうな……」

 

「え、えへへ……♡ 実は……わたしも……♡」

 

 わたしとリョウは視線を重ねたままお互いに黙り込む。このまま行為に及んでも良いんだけど、何かしらの口実が欲しかった。きっとリョウも同じことを考えているのだろう。

 

 やがて、リョウが何かを思いついたように一度深く頷くと、わたしの耳元でそっと囁いた。

 

「頑張ったご褒美、ユリシアにあげるよ」

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