異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
少しの間、俺とユリシアはベッドの上で抱き合いながら乱れた呼吸を整えていたが、しばらくしてはっと我に返った俺は本棚の上の電子時計に目をやった。
すると、電子時計の画面に表示されていた時刻は既に6時半を過ぎていた。どうやら俺たちは、随分と朝の営みに没頭してしまっていたようだった。
「ユリシア、流石にそろそろ着替えないと時間なくなっちまう」
「ふえ? って、ホントだ。もうこんな時間……」
俺の言葉に、ユリシアも慌てて時刻を確認し、そうして俺たちは同時にベッドに横たえたままだった身体を起き上がらせる。その間も、俺とユリシアは身体を密着させていた。
「んん……、名残惜しいなぁ……」
ユリシアがポツリとそんな一言を漏らす。その気持ちは俺も同じだった。だからこそ、俺たちは未だにお互いの身体を放せないでいたのだし。
けど、セックスを理由に遅刻、もしくは欠席……なんてのはまずい。というかそもそも、二人一緒に学校を休むことになったら確実に父親にからかわれる。
だから、今はこの名残惜しいという感情を何とか押しとどめて登校の準備をしなければならない。
「ユリシア、んっ……」
「んえ? んんっ……♡ んぅ……♡」
俺は未だに俺に身体を摺り寄せるユリシアの名前を囁き、そして彼女の顔を上に向けさせ、その唇を自分の唇で塞ぐ。ユリシアは一瞬だけ驚いたような声を漏らしたが、すぐに俺の唇を受け入れ、自分からも唇を押しつけてきた。
「んっ……♡ ちゅっ……♡」
「今は、これで我慢してくれ、ユリシア」
「……うん、分かった♡ 帰ってきたら、またいっぱいイチャイチャしようね♡」
「もちろんだ」
「えへへ、うん♡ ありがとう、リョウ♡」
唇を放した俺たちは最後にそう言葉を交わし、そしてお互いの身体に巻きつけたままだった腕をゆっくり解く。名残惜しいという気持ちは未だに心の中に残っているが、放課後に待ち受けるユリシアとのイチャイチャを今は待ち望むことにしよう。うん、それだけで今日も1日頑張れる気がする。
「さてと、それじゃあお互い制服に着替えないとな」
「そうだね。あっ、でもその前に……、クリーン……っと、これで良し。身体綺麗にしないとだったよね」
「っと、そうだったな。ありがとう、ユリシア」
「気にしないで。んしょっと」
そう言うとユリシアはベッドから降りて床に散らばった自分の寝間着をささっとまとめる。こちらに突き出される白くて可愛らしいユリシアの丸尻になるべく視線を向けないよう意識しながら、俺はベッドの上に無造作に脱ぎ散らかされた自分の下着を手に取り身につける。
それから俺もベッドから降り、クローゼットから朱鷺舟の制服を取り出し、急いで袖を通していく。
「あれ? わたし、パンツ何処やったっけ……」
ふと、背後でユリシアがそんなことを呟いた。なんか、パンツが見つからないことが多いような……? などと考えつつも、俺は背後を振り返りユリシアのパンツの在処を探す。
「あっ、ベッド脇に落ちてるぞ」
背後を振り向いたことで、窓から差し込む朝の陽光に照らされたユリシアの裸体画目に入ってしまうが、何とか興奮を押しとどめてユリシアにそう伝える。というか、一瞬で見つかったぞ、ユリシアのパンツ……。
「あっ、ホントだ。えへへ、ありがとう、リョウ♪」
「それは良いんだけど……、気づかなかったの?」
気になったので聞いてみることにした。俺の脳裏に、ユリシアの視力が悪化したのかも……などという考えが過ったのだ。もしかしたら、こちらの世界に来たことで、ユリシアの身体に何かしらの悪影響が出てしまっているのかもしれない。そんな心配に苛まれてしまった。
「え、えっと……」
「もしかして、目が悪くなった……とかだったりするのか……?」
「ち、違うよ。悪くなってない」
「本当か? 誤魔化してたりしないか?」
「大丈夫だって。この間の視力検査でも正常だったし」
「そ、それなら良いんだけど……」
ユリシアの言動からは、嘘を吐いている時の違和感は伝わってこなかった。だから、ユリシアの言葉は真実なのだろう。俺はユリシアを信じることにした。
しかし、そうなるとどうしてあんな分かりやすいところに落ちている自分のパンツに気づけなかったのだろうか? やはり、そこが少し引っかかる。
「そ、そうじゃなくてね……、その……」
そんな感じに一人頭を悩ませていると、ユリシアが少し恥ずかしそうにもじもじと身体を揺らしながら再び口を開いた。
「わ、わざと……なの……」
「え?」
わざと? この場合、パンツを見つけられないのがわざと、ということだよな? えっ、どういうことだ?
「そ、そのね……、少しでもリョウにわたしを見ていてほしかったから……、わざと見つけられないフリをしてリョウをこっちに振り向かせようとしただけ……なんだよ……」
「えっと、つまり……俺に裸を見られたくてやった、ってこと?」
「……はい」
俺の言葉にこくりと一つ頷くユリシア。先ほどのユリシアの言葉は、普通なら"わたしのことを見ていてほしい"と、言葉通りに解釈するだろうが、相手はユリシアだ。それも、顔を赤らめ恥ずかしそうに身体をもじもじさせている。そりゃ、"裸を見てほしい"としか解釈できないだろう。だってユリシアだし。
そして、ユリシアはそれを肯定してしまった。言葉通りならとても可愛らしいセリフだったのになぁ……。時々残念な子になっちまうんだよなぁ……。そうなった原因は俺なのだけど……。
「……ユリシア……」
「……うん」
「……お前、相変わらずエッチだな」
俺は半眼になりながらユリシアにそう一言言い放つ。決して怒っているわけではない。そういう一面もユリシアの魅力の一つだということは分かっているつもりだし、そういうところも好きだからな。
「ひぅ……、えっちでごめんなさい……」
「いや、謝らなくて良いよ。そう言うユリシアも大好きだから」
「リョウ……♡ ね、ねぇ……、リョウのおちんちん、またおっきくなってるよ……♡ だ、だからさ……、も、もう一回だけ……」
「しません」
「ですよねぇ……」
俺はユリシアの誘いをばっさり断る。確かに俺も、ユリシアの裸を見たことで興奮が抑えきれなくなってしまっていたが、それでも今はユリシアの誘惑に乗っかるわけにはいかない。そんなことをしていたら、本当に学校に遅刻してしまう。
「というか、やっぱりそういう誘惑だったの奈……」
「そ、そうです……」
「さっき、放課後になるまで我慢って約束しただろ?」
「うぅ……、そうなんだけどね……」
「だから、今はお預け」
「……はい」
「分かったらさっさと着替えちゃいな」
そう言ってから俺は制服のズボンを履き終え着替えを完了させた。ユリシアは何処か不服そうではあったが、それでも俺の言葉に従い未だに床に放り出されたままのパンツを手に取りそれを着用した。
それからユリシアも、朱鷺舟の制服をささっと身につけた。制服は、昨晩寝る前に俺の部屋に持ってきていた。
メルシアちゃん用の個室があてがわれてから、俺とユリシアはまた一緒に寝るようになったのだ。だから最近は、朝エッチ後すぐに制服に着替えられるよう、ユリシアは就寝前に自分の制服を俺の部屋に持ち込むようになっていた。
「お待たせ。着替え終わったよ」
「それじゃ、そろそろ下行こうか」
「うん。あっ、そ、その前に……♡」
そう言ってユリシアはとてとてと俺のもとに近寄ってくる。そうして俺の傍までやってきたユリシアは、不意に背伸びをし、
「んん……♡ んちゅっ……♡ え、えへへ……♡」
と、俺の唇に自らの唇を軽く押し当ててきた。そうしてすぐに顔を放したユリシアは、恥ずかしそうに小さくはにかんだ。
「ったく、お前って奴は……」
そう言いながら俺はユリシアの頭を軽く撫でる。そんな俺の表情は、恐らく相当ゆるゆるに緩んでしまっていただろう。本当、こういうところは可愛すぎるんだよ、ユリシアは。いつかマジで萌え殺されそうで怖い。
「リョウ、顔がにやけてるよ♪」
「お前が可愛すぎるのがいけないんだ」
「も、もぅ……♡ そんなこと言われたらわたしも……♡ ふへへ……♡」
「っと、いけないいけない。このままだとマジで遅刻しかねんな……」
「あっ、そ、そうだね。それじゃあ、早く下降りよっか」
というわけで俺たちは、ピンク色になりかけた空気を断ち切り部屋を後にした。あのまま流れに乗せられていたら、恐らく2回戦目に突入してしまっていたことだろう。危なかった。
*
それから俺たちは1階に降り、各々身だしなみのチェックやお手洗い等済ませてからリビングに赴く。
リビングに入ると、そこには既にメルシアちゃんの姿があった。父親が用意した朝食を黙々と食べている。
「おはよう、メルシアちゃん」
「あっ、おはよう、お兄ちゃん」
「おっ、起きてきたか。おはようさん、涼」
「ああ、おはよう、父さん」
メルシアちゃんと挨拶を交わし、キッチンにいる父親とも挨拶をしてから、俺もダイニングテーブルの席に着く。
「お姉ちゃんは?」
「今は多分洗面所にいると思う」
「そうなんだ。で、今日も朝からイチャイチャしてたんでしょ?」
席に着いた俺に、メルシアちゃんが話しかけてくる。俺たちが毎朝部屋でイチャコラしていることはメルシアちゃんも知っているので、こういう質問をされるのもいつも通りのことだ。
恥ずかしいという感覚はない。もはや開き直ってしまっているのだ。だから俺は、メルシアちゃんの質問に素直に答える。
「まあね。学校じゃクラス違うから、なかなか一緒にいられないんだよね。だから毎朝成分補給してるんだよ」
「それ、毎朝聞いてる。ホント、二人は仲良いね。羨ましい」
メルシアちゃんが少し呆れ気味にそう言う。けど、こういう時メルシアちゃんは言葉の最後には必ず"羨ましい"と付ける。それだけ恋愛に対して憧れの感情も持っているということだろう。
最近は、ユリシアからちょくちょく恋愛漫画を借りたりしているらしい。その影響か、憧れの感情は日に日に強くなっていっているようだ。
「メルシアちゃんにも、きっと良い出会いがあるよ」
「あるのかなぁ……。あたし、お兄ちゃんたちみたいに学校にも通ってないし……」
「あー、そっか。学校かぁ」
「もしかしてメルちゃん、学校通いたい?」
すると、それまで黙って俺たちの話を聞いていた父親が口を挟む。今まで考えてこなかったが、メルシアちゃんもいい加減新しい環境だったり刺激が欲しいのかもしれないな。父親もそのことを察したのだろう。
「うーん、まぁ……ちょっとは……」
「そっか。それなら、通う?」
メルシアちゃんの返答を聞いた父親は、そんな軽い調子でそう言った。
「い、良いの!?」
あまりにあっさりした返事に、メルシアちゃんも思わず目を丸くして驚きの声を上げてしまう。まぁ、そう言う反応になるよな。
「ん? 良いぞぉ」
「え、えぇ……!? で、でもその……、学費とか……」
「そんなの気にしなくて良いって」
またも軽く頷く父親。まぁ、父親の収入を考えれば、メルシアちゃんを学校に通わせてあげるくらいの余裕はあるだろうし、大した問題ではないのだろう。
というかそもそも、メルシアちゃんの学費を自ら負担しようと考えている辺り、この人も相当お人好しなんだなぁと再認識させられる。普通は他所の子供に対してそんなことは考えないだろう。
いや、逆に何も考えていないっていう可能性もあるのか……。お人好しというより、ただの馬鹿なのかもしれない。……っていうのは、流石に言いすぎだな。
「メルちゃんもユリちゃんも、今はうちの子みたいなもんだからな。お父さんに任せなさい」
そう言ってどんと胸を叩く父親。なるほど、父親からすればユリシアもメルシアちゃんも今は自分の娘みたいな存在なのか。考え無しとか言ってすまなかった……。ったく、やはり父さんは俺の自慢の父親だよ。
「だから、メルちゃんは何も遠慮することはないんだ」
「あ、ありがとう、パパ……。な、なら、あたし学校行きたい」
父親の一言で表情をぱぁっと明るくさせたメルシアちゃんは、素直に自分の気持ちを父親に伝えた。
「おう、分かった」
父親はそんなメルシアちゃんの望みに力強く頷いてみせた。
「あっ、で、でもね、もう少しだけ待ってもらっても良いかな?」
「ん? それは構わないが、何かあるのか?」
直後にメルシアちゃんが待ったをかけてきたことに、俺と父親はどうしたのかと首をかしげてしまう。
「そのね、できれば友達の通っているとこに行きたいの」
「友達? あー、最近どっかの公園で知り合ったっていう?」
「うん。その人の通っている学校知らないから、それだけ聞いてくる。だから、ちょっとだけ待ってほしいの」
「そういうことか、分かった」
まぁ、誰も知り合いがいないっていうのは流石に不安だよな。こちらの世界にまだ順応しきれていないメルシアちゃんなら尚更だろう。
それに、こちらとしてもメルシアちゃんを知らない人ばかりのところに通わせるより、誰かしら友達がいるところに通わせた方が安心できる。恐らく、父親も同じことを考えているのだろう。
「その……、ワガママ言っちゃってごめんなさい……」
「いやいや、ワガママなんて思ってないさ。まぁ、その子が何処に通ってるか分かったら教えてくれ。すぐに手続き済ませるからな」
「う、うん、ありがとう」
丁度その時、リビングの扉がガチャリと開いた。どうやらユリシアも、ようやく身支度を整え終わったようだ。
「おっ、おはようさん、ユリちゃん」
「あっ、おはよう、お父さん」
「お姉ちゃん、おはよう」
「うん、おはよう、メルシア」
父親とメルシアちゃんとそれぞれ挨拶を交わしたユリシアは、すぐさま俺たちのいるダイニングテーブルまでやってきた。そうして、当然のように俺の隣の席に腰を下ろす。まぁ、これもいつものことだ。俺の隣はユリシアの定位置である。
「何の話してたの?」
そして、席に着いたユリシアが俺たちにそんな質問を飛ばしてくる。話し声自体はリビングの外にいたユリシアにも聞こえていたのだろう。だが、内容までは聞き取れなかったから、こうして俺たちに話の内容を尋ねてきているわけだ。
「メルシアちゃんが学校に通うって話だよ」
「メルシアが学校に? メルシア、学校行きたいの?」
「う、うん、まぁね」
「そうだったのね。でも、流石にメルシアの学費までは……」
ユリシアは少し不安気に顔を歪める。現在のユリシアの手持ちでは、メルシアちゃんを学校に通わせてあげるには不十分だろうからな。
「それについては父さんが出すってさ」
そんなユリシアに、俺は父親が学費を負担する旨を話す。
「えっ、で、でも……」
「なぁに、気にするなって」
ユリシアが遠慮気味に声を上げるが、そんなユリシアの言葉は父親によってすぐにかき消されてしまった。
「さっきメルちゃんにも言ったけど、少なくともここにいる間は、二人のことも大事な家族だと思ってるからさ。そういう遠慮は無しだよ、ユリちゃん」
「というわけだ。だから、ユリシアが気にすることはないよ」
「二人とも……、ありがとう」
少し涙ぐみながら、ユリシアが律儀に頭を下げてきた。俺はそんなユリシアの頭をそっと撫でてやる。
「ほら、そんなことより、お前たちも早く朝飯食べな。じゃないと、学校遅刻するぞ。親として、お前たちが学校に遅刻するのは見逃せないぞ」
ちょっとしんみりしかけた空気を元に戻すようにして、父親が話を切り替える。その声は何処となく照れくさそうだった。
「っとと、そうだな。早く食わないと、父さんの飯が冷めちまうしな」
「俺の飯は、冷めても美味いけどな」
「そうなんだけどな。んじゃ、いただきます。ほら、ユリシアも早く食べようぜ」
「あっ、う、うん。それじゃあ、いただきます」
俺に促され、ユリシアも目の前の朝食に手をつけ始める。俺はそんなユリシアの様子、それから、その向かいに座るメルシアちゃんの様子を横目でチラリと確認する。
すると、二人の狐姉妹の耳はそれぞれぴょこぴょこと動いていた。そして、何処となく二人とも嬉しそうに表情を綻ばせていた。父さん、グッジョブ。俺も少し頬を緩ませながら食事を再開した。
「さてと、俺も食べるかなぁ」
そう言いながら父親がようやくキッチンから出てきた。俺とユリシア、メルシアちゃん用のお弁当を作り終わったのだろう。最近はたまにではあるが父親にお弁当を作ってもらっているのだ。
これは決して、俺たちからお願いしたわけではない。父親が自発的に行っていることだ。流石は無類の料理好きだ。
俺たちとしても、お弁当を作ってもらえるのは非常にありがたいしな。しかも、父親のお弁当はクオリティが高い。本当、この人の料理スキルはどうなっているんだ……。いつかは追いつける日が来るのだろうか? ……いや、無理だろうな……。
「弁当、作ってくれていたんだろ? ありがとう」
「気にすんなって。そんじゃ、いっただっきまーす」
俺の言葉に苦笑してみせた父親は、そう言って元気よく手を合わせて食事に手をつけ始めた。もうそれなりの年だというのに、この人からは未だに若さを感じる……。
「んん、今日も美味い!」
「パパもお兄ちゃんも、すごくお料理上手だよね」
「俺はまだまだだよ。あと父さん、その表情止めろ」
俺はメルシアちゃんの言葉に一言返事をしてから、正面の席に座る父親を半眼で睨む。正直、今の父親の表情はかなり気持ち悪い。まぁ、大方予想はつくんだけど……。というか、だからこそ気持ち悪いというか何というか……。
「いやぁ、仕方ないだろう。パパなんて呼ばれるの、メルちゃんが初めてなんだからさぁ。良い響きだよなぁ」
「いや、それがキモいんだって……」
「んだよ、失礼な奴だなぁ。だいたい、お前だって"お兄ちゃん"って呼ばれた時、表情緩んでるくせによぉ」
「は、はぁ!? ゆ、緩んでねぇし」
風評被害だ。俺はそんな気持ち悪い反応なんてしちゃいない。確かに、"お兄ちゃん"という言葉の響きは嫌いじゃないが、呼ばれたで父親のように表情を弛緩させたりなどしない。
「嘘吐け。ようし、ユリちゃん、任せた」
「えっ、あっ、う、うん。えっと、お、お兄ちゃん」
「ぐはっ……」
思わず、俺はその場に崩れ落ちる。うん、ユリシアのその一言は流石に破壊力が……。は、反則だ……。
「なんか、このやり取りも毎朝見てるような……」
俺たちの様子に、メルシアちゃんが呆れ気味にポツリとそう呟いた。結局のところこれは、ただただ家族団欒を楽しんでいただけなのである。それが分かっているから、俺も、父親も、ユリシアも、メルシアちゃんでさえも、なんだかんだ楽し気に笑みを浮かべているわけである。これが霜崎家の朝の光景なのだ。
*
そうして穏やかな朝食の時間は過ぎていき、食事を済ませた俺たちは学園に行く準備を整えた。
「父さん、弁当ありがとうな」
「ありがとう、お父さん」
「ははっ、さっきも聞いたぞ」
俺とユリシアの感謝の言葉を、父親はそう言って受け流す。これが照れによる反応であることは、俺もユリシアも、そしてメルシアちゃんもよく分かっている。
「素直じゃねぇなぁ」
「こういうところもリョウそっくり。お父さん譲りなんだね」
「そ、そんなことないだろ……」
俺とユリシアは小声でそんなやり取りをする。俺、割と素直だと思うんだけどなぁ。特にユリシアに対しては。まぁ良いか。
「それじゃあ、学校行ってくる」
「行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」
「二人とも、行ってらっしゃい」
というわけで俺とユリシアは、父親とメルシアちゃんに見送られて家を後にしたのだった。