異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
そしてわたしたちは一つの扉の前までやってきた。
「ここがトイレだよ。えっと、使い方は分かるかな……」
「あ、うん。それは平気だと思う。リョウの知識共有のおかげで、何となくではあるけど理解できてるつもりだから」
「そっか。それなら良かった」
というわけでわたしは、目の前の扉を開きトイレへと入った。ご飯食べる前に、さっきの処理を先にしておかないとだからね。
それに、一度一人で落ち着く必要もあったし。
ホント、リョウの世界っていろんなものがあるんだなぁ。このトイレって言うのもすごく便利。
「ユリシア、リビングはトイレの向かいの扉から入れるから。俺は先に行ってるよ。そんじゃ、待ってるよ」
「うん、ありがとう、リョウ」
わたしはそれだけ言うと、スカートをたくし上げ履いていたパンツを勢いよくずり下ろす。下の様子は胸が視界を遮ってしまっているため見ることはできないけど、ぬちゃっという水音ともわっとした変な臭いの熱気が広がったことで、何となくどんな状態なのか察することができた。
多分、これは相当酷いんじゃないかな。恐らく、今までにないくらい。
わたしはトイレの便座……?に腰かけ、それから先ほどまで履いていたパンツに自分の手をあてがう。
「うわぁ、濡れすぎだよぉ……。こんなに濡れてるの、多分今日が初めてだよね……。うぅ、よりにもよってリョウの目の前で発情しちゃったよぉ……。バ、バレていないと良いんだけど……」
多分、さっきの様子から察するに、リョウはわたしの状態には気づいていなかったと思う。様子がおかしいとは思ったみたいだけど、体調不良を心配してきたもんね。こんな時でもリョウの優しさを感じ、わたしの顔はへにゃりと緩んでしまう。
で、でももし……、気づいていないフリとかだったらどうしよう……。も、もうリョウと顔を合わせることできなくなっちゃうよぉ……。い、いやここは、さっきのリョウの反応を信じよう。きっとバレてないよ、うん。
すると、途端に緊張の糸が切れて気持ちが緩んでしまった。そして、個室で一人になれたという安心感が二重でわたしに押し寄せてきた。すると、下腹部の緊張も同時に緩んでしまったらしく、貯まっていたものが一気に流れ出てきた。
勢いよく流れ出てくる薄黄色透明の液体が、便器の中に貯まっている水を絶え間なく叩き、じょぼじょぼと音を立てる。
元の世界じゃ、茂みに隠れて済ませることしかなかったので、なんかこうして自分のおしっこが着水音を響かせることを少しばかり恥ずかしいと感じてしまう。こんなに音響かせて大丈夫なのかな? き、聞こえていたりしないかな? 嫌、それはかなり恥ずかしいよぉ……。
やがて、膀胱に貯まっていたおしっこを全て外に出し終わり、わたしはトイレットペーパーなる紙を使って股の付け根部分を念入りに拭いた。あと、ついでにぐちょぐちょに濡れてしまっていたパンツもできる限り拭いた。もちろん、その程度で湿り気は消えないんだけど。
にしても、こんなに触り心地の良い紙が存在するなんて。正直、拭いているだけなのに、すごく気持ち良いと感じてしまった。あっ、別にえっちな意味じゃないんだからね? わたしはそんな変態じゃないもん!
そして、レバーをひねって水を流し、わたしはトイレを後にした。さっきから、いろいろと驚かされてばっかりだなぁ。
「えっと、トイレの正面のドアってこれだよね?」
わたしはゆっくりとその扉を開く。
すると、とても良い匂いがわたしの鼻孔をくすぐった。な、なんだろう、これ? わたしの元いた世界じゃ嗅いだことのない匂いだよ。
わたしは、その匂いにつられるように部屋の中へと入っていく。
「おっ、ユリちゃんも来たな。今日はカレーだぞぉ」
「カレー、久々……じゃなくて、丁度食べたかったんだよなぁ。流石父さん、分かってるじゃん」
「ははは、だろ?」
カ、カレー……。あっ、カレーってこれのことか! へぇ、カレールーっていうのを白いお米の上にかけて食べるのが日本流の、いわゆるカレーライスっていう食べ物なんだね。リョウの知識共有があったおかげですぐに理解することができたよ。
まだ、こういう食文化とか住環境とかには慣れないなぁ。もうちょっとだけ時間がかかりそうだなぁ。けど、多分数日もあれば大分順応できると思う。物覚えに関しては自信があるんだ。それこそ、ここだけはリョウにも負けないって思えるくらいにね。それ以外は、リョウには絶対勝てないだろうなぁ。
「ほら、ユリシアも座りなよ」
「あ、うん。分かった」
「よーし、それじゃあいただきまーす」
「俺も。いただきます」
「えっと、い、いただきます」
リョウとリョウのお父さんと三人で一緒に手を合わせ、リョウのお父さんが用意してくれたカレーライスに手を付け始める。
以前リョウが言っていた通り、リョウの世界……というか日本では食事の前に「いただきます」って言うのが普通のことらしい。初めてリョウと一緒にご飯を食べた時は何やってるのかなってびっくりしちゃったけど、リョウと時を共にしていく中でわたしもすっかりこの儀式……? 習慣……?に慣れてしまっていた。
それでも、実際にリョウの世界に来てリョウ以外がこの儀式的な言葉を当然のように唱えているのを見てつい気後れしてしまった。あと、元の世界ではリョウとわたしだけの特別な習慣みたいな感じに思っていたけど、実際はそうではないんだと改めてわかってちょっとショックを受けてしまっていた。ただの独り善がりな妄想のはずなんだけどね。二人だけの特別な何かって、なんかこうすっごく嬉しいものじゃん?
ま、まぁ、わたしとリョウが向こうの世界で作った思い出はこんなもんじゃ尽きないし、全然良いんだけどね。わたしたち二人だけの思い出なんて幾らでもあるもんね。わ、わたしが一番、リョウとの思い出を持ってるんだもん。あ、もちろんリョウの家族以外での話だよ?
なんて、よく分からない意地を張りながらも、わたしも二人に倣ってスプーンを手に取り器に盛りつけられたカレーライスを人掬いして口に運ぶ。
「あっ、美味しい!!」
「おっ、そりゃ良かったよ。今日のは何時に増して自信作なんだよ」
「ああ、マジで美味い! ヤバい、ちょっと泣けてくる……」
「おいおい、大げさだなぁ。泣くほど美味いのか? まぁ、作った本人としては嬉しい限りだけどさ」
「い、いや、すまん。俺にもよく分からないんだけどさ」
「リョウ……、良かったね」
「ああ、そうだな」
初めて口にするカレーライスという料理はすごく暖かくて美味しかった。わたしは思わず声を上げてしまう。
すると、リョウのお父さんは嬉しそうな表情を浮かべていた。すごいなぁ、こんなに美味しい料理を作れるだなんて。
それに、温かいご飯なんてちょっと久しぶりだなぁ。向こうの世界じゃ落ち着いて美味しいご飯を食べる時間なんてあんまりなかったもんね。まぁ、それはそれでリョウとの大事な思い出なんだけど。
そして、隣を見るとリョウがカレーライスを勢いよく口に運びながら涙を流していた。そうだよね、リョウにとっては久しぶりの我が家のご飯なんだもんね。懐かしさのあまり涙が出ちゃったんだよね。わたしはそんなリョウの姿を愛おしく思ってしまい、そっと声をかけた。
以前のリョウはどんな時でもほとんど弱音を吐かなかった。そして、何時でもわたしのことを護ってくれた。それはすごく嬉しいことだった。
でも、わたしはリョウに護られるだけじゃなくお互い助け合える関係になりたかった。わたしも、リョウのことを護ってあげたかった。
そのことをリョウに伝えると、リョウはその時初めてわたしに弱いところを見せてくれた。本当の意味での信頼関係が生まれたんだ。
それまでわたしはリョウのことを大好きな男の人という感情とは別に頼れるお兄ちゃんだと思っていた。けど、リョウがわたしに弱音を吐露してくれた時、憧れとは違う愛おしいという感情がわたしの中に広がった。そう、今わたしが感じているのと同じ感情だ。
それと同時に、リョウがわたしに全てを委ねてくれたんだと分かって、言いようのない嬉しさがこみ上げてきた。そしてその日から、わたしのリョウに対する感情が爆発した。まぁ、つまりはさっきみたいなことを考え始めたってこと……。
うっ、どうしよう……。リョウの泣き顔を見て昔のことを思い出して、さっきの身体の疼きが再燃しちゃう……。い、今は食事中だから、ホントにダメ……。リョウだけじゃなくて、リョウのお父さんまでいるんだから……我慢しないと……。
わたしは、この身体の疼きから意識を切り離すために、目の前のカレーライスをかき込むように平らげていった。
「おお、ユリちゃん、良い食べっぷりだねぇ」
「う、うん。すごく美味しいから」
「そうかいそうかい。でも、慌てて食べると喉詰まらすかもしれないから、気を付けるんだぞ。それと、涼は何時まで泣いてるつもりだ?」
「い、いや、本当ごめん。けど、勘違いしないでほしいんだけど、これは父さんの飯が美味いからであって、決して不味いとかそういうわけじゃないから」
「ま、それは分かってるさ。なんせ、父さんは家事には自信あるからな。その辺は心配してねぇって。むしろ、お前がそんなに涙脆かったかと不安になってるところだ」
「わ、悪かったな。そういう日もあるんだよ」
「そうか。それなら良いんだ。ほら、冷めないうちに食え食え」
リョウ、すごく嬉しそう。やっぱり、リョウにとっての一番大事な場所はここなんだね。そんなところに連れてきてもらえるなんて、わたしはきっと幸せ者なんだね。一時は同族みんなを奪われて全てに絶望していたけど、神様はわたしを見放してはいなかった。いや、きっとこれは天国でわたしのことを見守ってくれている同族のみんなからの贈り物なのかもね。
わたし、ちゃんと乗り越えたよ。そして、ちゃんと幸せを掴むことができたんだよ。なんて、みんなには届かないかもしれないけど、わたしは心の中でみんなにそう伝える。
でも……、わたしは欲張りな子みたい。これだけの幸せを手に入れたのに、これ以上を求めちゃってるんだから。
もし叶うなら……、リョウと結ばれたいな……。って、さっきからそればっかりだね、わたし。うぅ……、忘れようとしてたのにぃ……。
なんて感じで、わたしは自分の身体の火照りと戦いながら、リョウのお父さんお手製のカレーライスを完食した。
途中、ついつい美味しすぎておかわりもしちゃった。だ、大丈夫だもん。栄養は全部胸に行くから、太るなんて有り得ないもん。……へ、平気……だよね……? デブとか思われてないよね……? そんな理由で嫌われるのは絶対に嫌だからね……!?