異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
「あっ、もうこんな時間だ。早く部活行かないと」
放課後、リョウを待ちがてらわたしはクラスの友人数人と談笑していたのだが、そのうちの一人が時計を見て慌てたような声を上げた。
どうやら、話しに夢中になりすぎて部活の開始時間が迫っていることを忘れてしまっていたようだ。
「それじゃ、また明日ね」
「部活頑張ってねー」
「行ってらっしゃい。また明日ー」
「またねー」
急いで教室を飛び出していく彼女の背中に、わたし含めた残りの友人たちは"またね"と手を振る。ちなみにだが、ここにサヤとクレハはいない。
「じゃあ、うちらも解散しよっか」
「そだねー」
一人欠けたことで、今日のところはお開きという流れになった。他の子たちも自分の席に戻り、帰宅の準備を始める。
わたしもみんなに倣って帰り支度を済ませる。ふと、教室の外をチラ見してみると、廊下にリョウの姿があった。解散のタイミングは、どうやら丁度良かったみたいだ。
「あっ、涼君もう来てたんだ」
わたしが廊下へ視線を向けてすぐ、サヤが廊下の奥から姿を現し、一人佇むリョウに声をかけていた。なお、サヤの隣にはクレハの姿もあった
サヤとクレハの二人は、今までお手洗いに行っていた。教室内にいなかったのはそう言う理由があったからである。
「ん? おっ、紗夜と雨宮さんか、お疲れ。今さっき最後の授業が終わったところだよ。大分授業時間延長されちゃってな」
「6限は物理だったんだっけ? あの先生、よく授業時間過ぎるもんね」
「そうなんだよなぁ、困ったものだよ。ところで、二人は何してたの?」
6限の授業が長引いたことを愚痴りつつ、リョウはサヤとクレハの二人にそんな質問を投げかける。リョウからすれば何となしに聞いてみただけなのだろうが、今の二人からすればリョウのその質問は軽いセクハラ発言である。
現に、サヤもクレハも顔を赤くさせてしまっている。こういう時、男の子って可哀そうだよね……。急に赤面する二人の様子に困惑の表情を浮かべるリョウを見ながら、わたしは苦笑を浮かべてしまう。
「フォクサローゼリスさん、また明日ね」
「あっ、うん。また明日」
そんな風に、教室の外の様子を見守っていると、友人の一人がわたしに手を振ってきた。だから、わたしも振り返す。
彼女は最後に笑顔を見せ、教室から去っていった。ホント、たった5日でわたしの高校生活がこんなにも変わるなんて、不思議なものだよ。
サヤ以外のクラスメイトの子たちとも、こんな風に笑顔でさよならの挨拶ができるようになったんだもんね。5日前のわたしが今の状況を見たら、きっとびっくりするんだろうなぁ。
クラスの人たちはわたしを笑顔で受け入れてくれている。その笑顔が嘘のものでないことは見ていれば分かる。それがとても嬉しかった。
だからこそ、わたしはみんなに迷惑をかけたくない。みんなを傷つけたくない。そういうこともあって、お昼ご飯を食べている時やリョウと新たな噂について話している時、わたしは一人ほっとしていた。現状、ほとんどの悪意はわたしに向いていたから。
このまま、悪意が他の人たちに向かないことを祈るのみだ。なんて考えながら、わたしは通学鞄を持って教室の外、リョウたちのところへと向かった。
「ほ、ほら……、あ、あれだよ……」
「あ、あれって……?」
「え、えっと……その……お、お手……」
「はい、そこまでね、3人とも」
リョウからの無自覚なセクハラに顔を真っ赤にさせながらも答えようとしていたクレハを、わたしは寸前で制止した。
「あ、ユリシア、お疲れさん」
「お疲れ様、リョウ。それと、余計な詮索は良くないんだよ」
「余計な詮索……? って、もしかして今の、……? お、俺、なんかまずいこと聞いちゃってた? ごめんよ、二人とも」
わたしの言葉に、リョウは先ほどの自分の対応があまりよろしくないものだったのだとすぐに察し、サヤとクレハに頭を下げていた。
こうしてやんわり注意すれば、リョウは自分の失態にすぐに気づく。だから、本物の鈍感主人公……ではないと思う。あの手のキャラって、ちょっとやそっとじゃ全然察してくれないからね。それよりかは幾分かマシだろう、リョウは。
そんなリョウからの謝罪を受け、サヤとクレハの二人はぶんぶんと首を横に振っていた。未だに顔は赤い。
「だ、大丈夫、大丈夫。別にまずいってほどじゃないから……。ただその……、恥ずかしかっただけで……」
「そ、そうそう。だから、そんな謝らないで」
多分、リョウの発言がセクハラであることは二人も気づいている。それでもこうして許してしまうのは、きっとリョウに惚れている故の甘さだろう。この二人は、リョウになら何をされても、恥ずかしがりはするだろうけどきっと断らない。クレハなんて、さっき答え言いかけていたし。
リョウって、ホントいろんな子にモテるよね……。わたし的には、罪悪感やら優越感やらが入り混じって何とも複雑な気持ちなんだけど……。
というか、なんだかんだでサヤもまだリョウへの恋心が忘れられていないんだよね。他の人を好きになるよりも、ずっとリョウに片想いしていたい……なんて考えている節がある。
それで良いのか……と、親友としては少々不安なんだけどね。でも、立場が立花だけに、わたしからは何も言えない。
っとと、話が脱線した。
「まっ、二人がそれで良いなら良いんだけどね。良かったね、リョウ。お咎め無しだってさ。でも、今後はもう少し考えて発言した方が良い」
「ああ、分かった。気を付ける」
「ん。じゃあこの話はおしまいね。ほら、二人も早く帰る準備してきて」
「あっ、うん。分かったよ」
「ちょっとだけ待っててね」
わたしがそう催促すると、サヤとクレハは慌てた様子で教室の中に消えていく。二人が準備を終えて教室から出てくるのを、わたしとリョウは大人しく待っていた。
それから少しして二人が戻ってきたので、わたしたち4人は学校を後にした。
*
「お昼にユリシアさんから薊美さんのIDもらったことだし、帰ったら早速薊美さんにメッセージ送ってみようかなぁ」
「良いと思うよ。ルナも喜んで返事寄こしてくれると思う」
学校から駅に向かうまでの道中、わたしたちは他愛もない会話に花を咲かせていた。クレハ、ここ最近ルナと全然話ができていないのをかなり気にしていたみたい。連絡手段を得て嬉しそうにしている彼女の様子を見て、ID教えて良かったと心底そう思うわたしだった。
ルナも、クレハからメッセージ受け取ったらきっと喜んでくれると思う。わたしたち仲良しグループのみんなとのコミュニケーションに飢えていたからね、あいつ。
「でも、やっぱり顔見たいよね」
ポツリと、サヤがそんな呟きを溢す。
「まぁ、そうね。ルナの姿がないと、なんかこう……調子狂うのよね」
「薊美さんいないと、ユリシアはただのボケキャラだもんな」
「リョウ、後で覚えとけよぉ……」
サヤに同意するように口にしたわたしの発言に、リョウがすかさず失礼な発言を重ねてきた。ルナ絡みになると、なんかリョウからの弄りが多くなるんだよね……。
とりあえず、わたしは失礼なことを言ってくるリョウの横っ腹を掌でぺしぺ氏叩いて彼を黙らせる。
けど、こんなことをすれば、大抵返ってくるのは……
「あはは、悪い悪い」
なんていう軽い謝罪と、彼の大きな手による優しい頭なでなでだ。こっちは真剣に怒っているというのに、リョウはいつもいつもこれで誤魔化そうとする。
誤魔化されていることは理解しているのに、どうしてもわたしの耳は嬉しい気持ちを表現するようにぴこぴこと跳ねてしまう。
「ご、誤魔化さないで……えへへへへへ……♡」
結局、今回もわたしはリョウの頭なでなでに屈してしまった。頬の緩みが抑えられず、ここが外だということも忘れてだらしない笑みを浮かべてしまう。
「ユリちゃん、相も変わらずちょろいなぁ……」
「お手本のような屈服を見たよ」
「まっ、ちょろいユリちゃんも可愛いんだけどね。ね? 涼君」
「間違いないね」
3人の笑い声が聞こえるが、今のわたしにはそんなの気にならない。リョウの気持ち良すぎる頭なでなでにひたすら浸るわたし。
「でも確かに、薊美さんがいないとなんか物足りないんだよな」
「そうだよね。はぁ……、月菜ちゃんは何時になったら落ち着くのかなぁ」
「そこらへん曖昧なのよね」
「わっ、急に復活した……」
わたしが放しに加わると、クレハが驚いた声を上げていた。わたし、切り替えの早さには自信があるのです。
それはさておき、ルナのことだ。次は何時時間を空けられるのか、それは彼女にも分からないらしい。近いうちにあるかもしれないし、まだ先かもしれない……。ルナからはそんな返答しか返ってこないのである。
「寂しいね、やっぱり……」
「うん……」
わたしたちにとってルナはそれほど大きな存在なのだと、今更再認識させられてしまう。またいつものように軽口を叩き合いたいな……。
「今晩、ビデオチャットでも繋げてみようかな」
せめて画面越しでも良いから顔が見たい……。スピーカー越しでも良いから声が聴きたい……。そう考えた時、ビデオチャットという方法が頭に思い浮かんだ。
「それ良いね。というか、その手段があったね、失念してた」
「あっ、私もしたい。ねぇねぇ、私たちのグループチャット作らない?」
「賛成! 後でみんなを招待しとくよ」
ふと思いついたことだったけど、サヤもクレハも結構ノリノリだった。みんなでビデオチャットか、楽しみ。
「涼君とか雅君も招待しとく?」
「いや、そういうのは女子だけの方が良いだろ。俺たちのことは気にしなくて良いさ」
「そういうことなら、分かったよ」
リョウたち男の子組も加わるか?とサヤに誘われるリョウだったけど、わたしたちに気を遣ってか遠慮していた。
「私たち4人でガールズトークかぁ……。面白そうだね」
「何人か、ガールズトーク向きじゃない人がいる気もするけどね……。特に私とか……、あはは……」
「サヤはそんなこと……ないとは言いきれないかも」
「わ、分かってはいたことだけど、他人に言われるとちょっとショック……!」
そんなサヤの一言に、わたしとクレハはくすくすと笑ってしまう。うん、やっぱりわたしたちの間に辛気臭い空気は似合わない。
いつでも楽しいで満ちている……。それでこそわたしたちなんだと、わたしはそう思った。
だからこそ、ルナのことはちゃんと笑顔で迎えてあげよう。ルナだって、楽しいが溢れるこの場所が好きなはずだから。
「もぅ、二人とも酷いよ。まぁ良いや。んで、グループ名はどうする?」
「そうだなぁ、うーん……。ユリシアさんは何か良い案ある?」
「グループ名かぁ……。イマドキガールズ+α……とか?」
「ちょっ、その+αって、もしかして私のこと!?」
完全にからかいのつもりで言ったことだったので、サヤからのツッコミにわたしはその通りだと首を縦に振った。
「酷いっ!! わ、私だってJKの端くれだよ!?」
「冗談だって。うーん、他には……赤ブラ四天王……とか?」
「赤ブラ四天王って……。何という烏滸がましいグループ名……」
「あはは。でも、私はそれ結構好きかも」
テキトーに考えたんだけど、案外気に入ってもらえたみたいだ。
「じゃあ、グループ通話の時はみんな赤ブラを着用……ってな感じのルールを設けてみたり?」
「そ、それは……恥ずかしいかも……」
「そ、そもそも、赤い下着なんて持ってないし……」
「サヤってば、リョウがいるのに大胆発現?」
「ひゃっ……!? も、もぅっ!! ユリちゃん、意地悪だよ!」
リョウにからかわれるのも好きだけど、こうして誰かをからかうっていうのもそれはそれで面白いかも。サヤの反応が可愛くて、わたしは思わずにんまりしてしまう。
「涼君の前で下着の話しちゃったよ……、恥ずかしい……。って、あれ? 涼君、どうかしたの?」
恥ずかしそうにリョウの方をチラ見したサヤだったが、当のリョウはというと、わたしたちとは別のところに意識が向いているようだった。そのことに疑問を覚えたサヤがリョウの様子を伺う。
「え? あ、いや、ごめんごめん。向こうに見覚えのある顔があったからつい……」
「見覚えのある顔?」
気になったわたしは、リョウの視線を追ってみる。すると、そこには確かにわたしたちの知っている顔があった。
「えっ、なんであいつがここに……」
わたしの視線の先にいたのは、現在停学中のはずの木戸田だった。思わず、わたしは驚きの声を上げてしまう。
あいつ、こんなところで何をしているのだろう……? しかも、その隣には朱鷺舟の制服を着た女子の姿もある。その女学生はこちらに背を向けている状態なので、顔までは確認することができない。
ただ、一つ分かることは、その女学生は例の取り巻き共のうちの誰かではない……ということだ。奴らは3年だったのに対し、彼女は1年生だ。
何故分かるのかというと、それはスカートの色だ。朱鷺舟学院の女学生のスカートの色は学年別に分かれている。1年が青、2年が赤、3年が緑という配色だ。
そして、木戸田の隣を歩く女学生のスカートの色は青だ。そういうこともあって、彼女が1年生であることはすぐに理解できたわけである。
「あ、あれって……、木戸田先輩……だよね……」
「木戸田先輩って、今は停学処分期間じゃなかったっけ?」
「そのはず……。し、しかも、1年の女の子と一緒だなんて……。も、もしかして、またあの朱鷺みたいに彼女のことも……」
サヤが震え声でそう言った。確かに、その可能性はある。わたしも先ほどからそのことを考えていた。
奴ならやりかねない……。一応、わたしは何時でも走り出せるよう構えておくことにした。被害者を増やすわけにはいかない。
「……あの後ろ姿、何処かで……」
「リョウ、わたしなら何時でもいけるよ」
「いや、その必要はなさそうだ。さっきからちらほら会話が聞こえてきていたんだが、お互い同意の上での関係っぽいんだよ」
「そうなの? そ、そういうことなら、止めに入る必要は……って、待って待って。停学中の奴がここにいる時点でアウトでしょ! 別の意味で止めるべきじゃ……」
「証拠写真なら撮っておいたよ」
言いながら、クレハがこちらにスマホの画面を見せてきた。そこには、木戸田と1年女子が並んで歩く様子がばっちり映っていた。
「助かるよ、雨宮さん。あんましアイツと関わり合いになりたくなかったんだよね、実は……」
「それは……確かに」
リョウがポツリと溢したその言葉に、サヤが苦笑いを浮かべながら頷いていた。まぁでも、確かに奴に直接話しかけに行くのは嫌かもしれない。それなら、証拠を学校に提出した方が賢明な判断と言えるだろう。
「クレハ、ナイス!」
「あ、あはは、照れるなぁ」
「んじゃ、向こうに見つかる前にさっさと退散しよう」
リョウの号令に従い、わたしたちは急いで駅構内へと逃げ込むのだった。結局、奴の隣にいた女学生が一体誰なのかは最後まで分からないままだった。
「あいつも懲りないよね……」
「そうだな。どんだけ女に飢えてるんだか……」
駅構内を歩きながら、わたしとリョウが溜息を溢す。自分が今置かれている状況を、奴はちゃんと理解できているのだろうか? いや、あの様子だと理解できていないんだろうね。困ったものだ。
ホント、理事長の苦労が偲ばれるよ……。
「というかさ、あの女生徒も同罪だよね? 多分、あの先輩が停学期間中なのは分かってるはずだし」
「それを知ってる上で彼に同行してるんだもんね。あの子もただじゃ済まないかもね。自業自得だし、特に可哀そうとか思ったりはしないけどね」
「確かに。とにかく明日、あの証拠写真を理事長に見せに行こう」
「うん、そうだね」
ということで話はまとまった。と同時に、ホーム上に流れるアナウンスがわたしたちのいる改札階まで聞こえてきた。
「あっ、私と紅葉ちゃんの乗る電車だね」
「みたいだね。それじゃ二人とも、私たちはこれで」
「おう、じゃあな」
「また明日ね」
急いで会談を降りていくサヤとクレハを、わたしとリョウは手を振りながら見送る。やがて二人の姿が見えなくなったところで、わたしたちも電車を待つべく彼女たちとは別のホームに降りるのだった。
「ねぇ、リョウ」
「ん? どうした? ユリシア」
「リョウは、木戸田みたいにならないでね」
そう言いながら、わたしはリョウの手をぎゅっと握る。特に心配をしているわけではなかったのだが、何となく言っておきたかった。
すると次の瞬間、わたしはリョウにおでこをつんと突疲れてしまった。
「なるわけねぇだろ。そんなの有り得ないから」
「えへへ、だよね。分かってるよ」
「じゃあ言うな……」
最後にもう一度、わたしはリョウにおでこをつんつんされてしまった。けれど、わたしは自然と微笑んでしまっていた。リョウは木戸田とは違う……、当たり前なその事実が嬉しかった。
その後、わたしたちは到着した電車に乗って地元の駅まで向かい、そうして帰路に就いた。
ちなみに、その晩は予定通りわたし・サヤ・ルナ・クレハの4人でグループ通話をした。久々に見るルナの顔は、特に変わっていなかった。そりゃ、5日じゃ変わらないか。
「ユリシアさんは相変わらずだらしないお顔ですわね」
「うっさい。あんただって、相変わらず憎たらしい顔してるわよ、ルナ」
そんなやり取りが印象的だった。これだよ、こういう軽口の叩き合いが楽しいんだよ。というわけで、久々にルナとの会話を楽しんだわたしだった。画面の端に映るサヤのにまにま顔が少し気にはなったけど、ツッコんだらむしろ負けだと思いスルーした。
*
楽しい一夜が明けた翌日のこと……。
「おはよう」
「おはよー」
わたしとサヤの二人は、そんな朝の挨拶をしながらC組の教室に入っていく。のだが、教室内の雰囲気が少しおかしいようにわたしは感じた。
何か気まずい雰囲気が流れているような感じがした。何事かと思ったわたしは、既に登校していた友人の一人に話しかけてみることにした。
「おはよう。ねぇ、なんか教室の雰囲気変じゃない?」
「あー、気づいちゃうよね……」
わたしが話しかけると、彼女はさっとわたしから目を逸らした。何だろう、わたしに遠慮しているような……そんな雰囲気が今の彼女から漂っていた。
「どうかしたの?」
そこにサヤも加わる。サヤも何となく教室の雰囲気に違和感は覚えていたようだ。
「ねぇ、何かあったんでしょ? もしかして、わたしが何かしちゃったのかな……」
「ううん、それは違う。そ、その……、実はね……」
少しばかり強引に迫ってみると、彼女はようやく事情を説明してくれた。
曰く、昨日部活に向かったら、1年生はお断りだと言われて部室から締め出されてしまったようだ。
「な、何それ……!?」
「なんで1年はダメなのかって聞いてみたんだけど……」
すると、彼女は遠慮がちにわたしの顔へと視線を向ける。その瞳には、言うべきか否かという迷いが見受けられた。
「お願い、言って」
わたしはそう彼女に懇願する。正直、予測はついていた。だが、その予測は外れているかもしれない。
大きな焦燥と一縷の希望を抱きつつ、わたしは彼女の次の言葉を待った。
「……ユリシア・フォクサローゼリスが在籍している学年だから……って」
……願いも虚しく、わたしの予測は当たってしまった。……懸念していたことがホントに起きてしまうなんて、最悪の状況すぎる……。
わたしは思わずその場に蹲り、自身の頭を抱えてしまった。どうして……、どうしてわたし以外の人たちがこんな目に合わなきゃならないんだ……。迷惑……かけたくなかったのに……。