異世界帰りのハイスペック勇者様は、一緒に連れ帰ってきた最愛の狐耳少女(パートナー)と平凡で穏やかなイチャコライフを送りたい! ~微コミュ障でオタクな最強タッグのあまあMAXな共依存物語~ 作:室谷 竜司
「ふぅ、極楽だわぁ……。最高……」
浴室に入った俺は、ささっと手早く身体を洗い、久々の我が家の湯船にどっぷりと身体を沈めて全身を伸ばしていた。
いやぁ、久しぶりの風呂はやっぱり最高だなぁ。もう彼是三年は湯船に浸かっていなかったからな。今日は存分に堪能させてもらうことにしよう。後に控えているユリシアと父親には申し訳ないが、今日のところは大目に見ていただきたい。いやまぁ、俺の事情なんて父親が知る由もないんだけどさ。
にしても、久しぶりのカレーを口にしたときは、あまりの懐かしさに思わず涙を流してしまった。ユリシアと父親の手前だというのにな。ちょっと情けなかったかな。
まぁ、向こうの世界ではユリシアに散々弱いところ見せまくったし、もはや抵抗なんてなかったんだけど。
そういえば、ユリシアから言ってきたんだっけ。"わたしには弱いとこ見せても良いんだよ"って。あの言葉のおかげで、俺は異世界でもなんとか生きてこれたと言っても過言ではないと思う。
あの時、ユリシアに俺の全てをさらけ出せていたからこそ、今の俺たちがいるんだと思う。パートナーとして互いに支え合う関係……、正直そんな関係を俺がユリシアと結ぶことができたことがどうしようもないほど嬉しかった。
まぁ、願わくばもっと深い関係にもなってみたいとは思うんだけどな。今は欲張らず、もう少しこのままの関係を保ち続けるのもそれはそれで良いだろう。
むしろ、下手に告白して玉砕して、今の関係にすら傷をつけてしまうのは躊躇われる。なんだかんだ、俺が最後の一歩を踏み出せない理由の大部分はこれだろう。童貞チキン野郎は、何時でもビビりなんだよ。察しろ。
「ユリシア、か……」
何となくだけど、仮眠から目覚めてからのユリシアの様子が少しおかしいように感じていた。顔が赤くなっていたし、少し息も荒くなっていた気がした。そして、気のせいかもしれないけど、ユリシアの放つ雰囲気がいつもより熱を帯びた者のように感じた。うーん、五感鋭敏化の能力の所為でそう感じただけか? 詳しいことは俺にはよく分からん。
体調が悪いのかと思って聞いてみても、帰ってきたのは否定だったしな。最初は誤魔化しかとも思ったが、カレーを掻っ込む様子から察するに、ユリシアの言う通り体調は本当に悪くなかったんだろう。
でも……、あの時のユリシア……、何処か色気のようなものを纏っていたようにも感じられたんだよなぁ。眼も潤んでいて、それでいて上気した頬と荒い息遣い……、正直滅茶苦茶エロかった。
い、いかんいかん……、ユリシア相手になんてことを考えているんだ……、俺は……。こんなことを考えていたとユリシアにバレれば、今までの関係が全て崩れてしまうかもしれない……。
だが、俺の妄想は膨らむばかり……。ついでに、股間の一物も膨らんでいく……。くっ、男の煩悩には逆らえん……。
まさか……、あれはユリシアの発情……なわけないか……。向こうの世界で、そんな素振りは一度たりとも見せなかったんだ。
それが、こっちの世界に来ていきなり突然なんて絶対に有りえない。むしろ、知らない世界に飛ばされた不安を感じているはずだ、ユリシアは。そんなユリシアに対して、穢れた妄想をしてしまうなんてクソだな……。いや、クズだな……。
俺は心の中で自分を侮辱し、余計な妄想を振り払う。一度冷静になるべきだ。自分の世界に好きな子を連れて戻ってこれたからって、勝手に舞い上がってるんじゃない。調子に乗るな、俺。
「あ、あの……、リョウ……」
すると突然、曇りガラスの引き戸越しにユリシアが俺に声をかけてきているのが分かった。一体、どうしたんだろうか?
「ユリシア? どうかしたのか? 何かあった?」
「そ、そのね……、お、お願いが……あるんだ……」
「お願い?」
俺は首を傾げつつ、ユリシアにそのお願いとやらの内容を聞いてみる。どうしてこんなタイミングなのかとか、いろいろと気になることはあるが、まずはその内容を確認しておく必要がある。
「う、うん……。わ、わたしね……、リョウと一緒に……お、お風呂に……入りたいなって……」
「……は」
一瞬、ユリシアが何を言っているのか分からず、俺は素っ頓狂な声を上げてしまう。い、今、俺の聞き間違いでなければ、"一緒にお風呂に入りたい"と言ったか!? お、俺の幻聴……とかじゃないのか……!?
「だ、だから、一緒にお風呂……、入りたいなって……。ダ、ダメ……かな……?」
「い、いやいや、どうして!?」
俺はつい大声でそう返してしまう。一緒に風呂というのは俺の聞き間違いでも何でもなかった。
もしかして寂しいのかとも思ったが、ユリシアはたったそれだけで異性である俺にこんなことを言ってくるほど恥じらい無しではない。それは、この三年間で分かっていることだ。
じゃあ、どうしてこんなことを……? ド、ドッキリ!? いやいや、ユリシアはそんなこともしない。
じゃあ、父親にでも誘発されたか!? ……うーん、それも違うような……。くそっ、全く分からん、ユリシアの魂胆が……。
「わ、わたし……、今日はリョウと一緒が良い……」
「で、でもさ……、一緒に風呂とか……そういうのは、もっと大切な人と……す、好きな人と入るべき……なんじゃないかなって……。お、俺は構わないけど……、ユリシアはもっと自分を大切にするべきだと俺は思う……かな。そ、それこそ、ユリシアにこ、恋人ができたら……、その人と……とかさ」
言っていて少し悲しい気分になりかけたが、今はユリシアを諭すことを優先させよう。
お、俺的にはユリシアの提案はものすごく魅力的なんだがな……。でも、ユリシアには自分の身体を無下にしてほしくない。
「あ……、言った……。そのまま言った……。ってことは……、つまりわたしの負け……なんだよね……」
外で何やらユリシアがぶつぶつと呟いていたが、その内容は良く聞こえない。まぁ、浴室の扉越しなのだからそれも仕方ないだろう。五感鋭敏化があるとは言えども、常時フル稼働しているわけではないからな。
まぁ、恐らくだけど、俺の言葉を受けて考え直してくれているんじゃなかろうか。ユリシアは言えば分かってくれる子だ。衝動任せに突き進む子じゃないと俺は思っている。
「じゃあ、入っても良い?」
「えっ!? どうして!?」
「リョウは良いんでしょ? なら、わたしは入りたい」
「じ、自分が何を言ってるのか分かってるのか!? さっきも言ったけど、もっと自分の身体は大事にした方が良いよ!?」
「分かってる。だからこそだよ」
そうしてがらりと扉が開け放たれ、外からユリシアが浴室に入ってきてしまった。もちろん、一糸纏わぬ姿で、である。
ユ、ユリシアの裸……、初めて目にした……。ヤ、ヤバい……。目を逸らさないといけないはずなのに……、どうしても逸らせない……。
見ちゃダメだ、見ちゃダメだ……。ああ、くそぉ!! 視線が吸い寄せられてしまう……。男って生き物は……、畜生!
小柄なその身体には不釣り合いな胸部の大きな二つの膨らみは、俺の視線を一瞬にして釘づけにしてしまった。大きく、それでいて若さを象徴するように重力に逆らって上を向いているユリシアの二つの山の先端部には、綺麗なピンク色の蕾がちょこんと鎮座していた。こちらもツンと上を向いている。
い、以前から思ってはいたことだが、本当にでかいな……。そして、こうして生で見るのは初めてだけど、ものすごく綺麗だ。あと、エロい……。いつの世も、女性の胸というのは、男の欲を掻き立てる不思議な魔力を秘めているのかもしれない。
「ユ、ユリシア……、何を……!?」
「リョウが良いって言うなら、一緒に入るのは何も問題ない。だ、だって……わたし……、その……ね……」
ユリシアが一呼吸おいてから再び口を開いた。
俺はそれを黙って聞いていることしかできなかった。
「ず、ずっと前から、わたしはリョウが好きだったの……!! これは、友達とかそういうのじゃなくて、一人の男の人としてのリョウが好きッて意味だから……。だ、だからわたしは……、そんな大好きなリョウと片時も離れたくない……。お風呂の時も寝る時だって、リョウの傍にいたい……
「っ……!?」
ユリシアの口から飛び出したのは、そんな突然の告白だった。俺の脳は、ユリシアの言葉を処理するためにぐるぐると回転する。その間、一言も言葉を発することができなかった。
ユ、ユリシアが……、あのユリシアが俺のことを異性として好き……だと!? そ、そんな夢のような話が本当にあるのか!? だ、だってつまり、俺とユリシアは両想い……ってことになるんだぞ!?
で、でも……、今のユリシアの眼は本気そのものだ……。そこには、全く嘘の感情などはないように感じられた。つまり、ユリシアの告白は……、夢でも何でもなく現実……ということになるのか……。
俺は自分の両頬をパチンと思い切り叩くも、夢から目覚めるあの浮遊感は感じず、代わりにじんじんと頬が痛む。や、やっぱり夢じゃない……。な、なんてことだ……。
「リョ、リョウ……!? ど、どうしたの……!?」
「ゆ、夢じゃ……ないみたいだな……」
「う、うん。これは現実。紛れもないわたしの本音。や、やっぱり……、迷惑……だったかな……?」
「そ、そんなわけあるものかっ!! う、嬉しいに決まってるじゃないかっ!! そ、そうじゃなくてさ……、まさかユリシアが俺のことをそんな風に思ってくれてたなんて知らなくて……、ちょっと信じられなかっただけなんだ……。でも、ユリシアの眼は、ちゃんと本気だって俺に証明してくれてる。だから、つい夢を疑っちまっただけなんだよ……」
「そ、それって……」
「なあ、さっきも言ったろ? 俺としては魅力的な提案だって。俺もユリシアのことが好きだから、そんなことを口走ったんだよ」
俺は真っすぐ、ユリシアの顔を見据える。
「ユリシア、俺もお前のことが一人の女として好きだ。風呂場で……、しかもユリシアの方から言わせるなんて、男として情けないってのは分かってる……。けど……」
俺は一度、二度と深呼吸を繰り返してから、再び言葉を紡ぐ。
「けど……、そんな情けなくて頼りない俺なんかで良ければ、俺の恋人になってくれませんか? 俺も、ユリシアとずっと一緒にいたい……です」
「うん……。 うんっ!! なるっ!! 恋人、なるっ!!わたしを……、あなたの傍にいさせてください……。恋のパートナーにしてくださいっ!!」
「ああ、もちろんだ。ずっと一緒にいよう」
俺は、浴槽の縁越しにユリシアの肩を抱き寄せる。彼女の瞳からは、大粒の涙がぽろぽろと止め処なく流れ続けている。きっと相当勇気を振り絞ってくれたのだろう。
本当、自分が情けない……。一人で勝手に怖がって勇気も出せず、こんな風に女であるユリシアから告白させてしまったのだから。俺は、そんな情けない自分に呆れてしまっていた。
何となく、俺の腕の中のユリシアの姿が、俺よりずっと大きく、それでいて何よりも輝いて見えていたのだった。