さて、今日のトランスフォーマーは!
「司令官、いつまで経ってもエネルギーなんてこれっぽっちも送られてきません、騙されたんでしょうか」
マイスターが仮設スペースブリッジを眺めて、一抹の不安を吐き捨てる。
「分からない。……マイスター、みんなを集めてくれ」
「はい」
コンボイ司令官はホイルジャックが人間によって破壊される前日、彼らしくもない弱音を洩らしていたのを盗み聞いていた。
『吾輩の発明は大きな過ちを生む原因となってしまった……生殖とは──かつて古代トランスフォーマーたちが有していたという自己増殖能力は──間違いない! 同じものだったんだ』
「そしてその自己増殖機能は危険視され、自ら封じたのだという」
コンボイが戦士たちの前で告げると、ラチェットは自分のナニを手に置きながら呟いた。
「つまり、ホイルジャックは古代トランスフォーマーの機能を復活させてしまったっていうんですか? ですが、戦力を確保できるのならデメリットはないように思われますが……ああ、性交をしたらデストロンを孕ませてしまうか」
「彼の使用していた実験室には、『金属生命体の増殖は黒色の悪夢を生む』という時間旅行者の書いた手記が遺っていたんだ」
エネルギー問題と、そして計り知れない脅威の影に、彼らは怯える事しかできないのだろうか……
*
「お、オレはもう死にたくねえ……! そうだ、サイバトロンは確か月に居を構えたとかⅡが言っていたっけな」
島に取り残された、別の未来から来たスタースクリームもまた、スウォームに対する自分の怯懦を感じていた。
「こうなったら、サイバトロンの連中を使うしかねえ!」
彼は煌めく霊体のボディを推進させ宇宙へと飛び立った。
*
その生命体は、慢性的な飢餓感に苛まれていた。
あらゆる生き物を喰い、記憶を吸収し、それを辿って先にある何かをまた喰らう。
食慾などではなかった。それは、意思を持つ生命でありながら自然に近しい。
自然に行われる淘汰──生物が成す、種の保存に相対する攻撃的な活動、その権化であった。
……スウォームは、その摂食による消費を続けながら、自身が誕生した事を呪う精神はなかった。
ただ追憶にあるのは、消費という不毛によって自身の根源に至ろうという原始的な力であった。
そして、今! スウォームはついに地球全土を壊滅させ、その記憶を頼りに月面基地へと現れたのである!!!
「し、司令官! あの黒い物体ってまさか!」
バンブルが声を荒げる。無理もない、先見性なき生殖の結果が不吉な未来をいざなってしまったのだから。
「レーザー砲用意! 時間を稼ぐんだ!」
「ダメです! ちっとも効きやしない」
影が渦巻くように動くスウォームは、ブラックホールの如く挙動であった。
「あれは……フム……」
「どうしたラチェット!」
「いえ司令官、奴の形がまるでアナルのようでして」
「フム……言われてみればそうだな」
ドラッグは二人の会話を目の当たりにして呆れ果てていた。
「まったく呑気なもんだ、これが我々の最期だというのか──うッ!?」
そんなドラッグの背後には、スタースクリームの幽霊が!
「コイツのブサイクボディでも構わねえや──おいコンボイ! オレ様の声が聞こえるか!?」
「!? どうしたドラッグ、声がどことなくおかしいぞ」
ラチェットも彼のほうへ振り向くと、顎を擦って診断を下そうとした。
「ンン? 発声回路がおかしくなったのかい? だが今それどころじゃ──」
「ンなこまけえ事ぁどうでもいいんだ! あいつは飢えた獣みてえにデストロンと地球を喰っちまいやがった! まともな方法じゃ勝ち目はねえ! だがなコンボイ、お前の持っているリーダーの証、マトリクスならもしかすると──」
焦燥感に駆られたスタースクリームは、ドラッグのボディを通じて力説した。かのユニクロンを退けたマトリクスの力があれば、目前に迫った厄災に対抗できると踏んだのだ。
「その声はまさか、スタースクリームなのか? いや……しかしマトリクスは、こないだオナホ代わりに使ってしまった時、叡智の光が失われてしまったよ」
「な……なんだとぉおっ!??!?! テメエなにしてやがんだあああ!!!」
「ああ……私の知的好奇心が招いた結果だ。だが、あれは何事にも代え難い絶頂体験だったよ」
「こ、このバカ野郎めがッ!」
コンボイは目を細めて語るも、スタースクリームは心の底から彼に失望した。
「それにしても、人間たちが奴に食われてしまったんなら、エネルギーが転送されてこないのも納得がいきますね」
マイスターも緊張感なぞどこ吹く風と言わんばかりに股間に取り付けられたレーザーガンを磨いていた。バンブルも、小さい体躯に似合わぬ極太ペニスを自分の股に挟み弄び、アイアンハイドに至っては尿道を開発しようとしていた。
「な、なんだよこの世界……終わっていやがる」
スタースクリームが辟易するのも無理はない! そして!! 痺れを切らしたスウォームの攻撃が始まった!!
「司令官! オイラたちの基地が吸収されてる!」
「まずいな、総員退避! トランスフォーム!」
崩れ去る、サイバトロン月面基地!
「あのとんでもない化け物、どうしましょう」
マイスターがレーシングカーのまま呟いた。どこか、臨場感のない声色だった。
「あの生命体は、我々の生殖行為によって誕生したというのなら──」
トラック形態のコンボイは、急ブレーキをかける。勢いよく過ぎ去っていったサイバトロンの仲間たちに心配を生んだのは言うまでもない。
「ど、どうしたんです司令官! 逃げないとやられちまいますよ」
「アイアンハイド! これを受けとれい!!」
右腕だけロボットモードに戻したコンボイが、赤い彼に投げつけたのは光のないマトリクスであった。
「? これは……」
「それはウルトラマグナスに渡すんだ。いいな」
「ですが、コンボイ司令──」
コンボイは再びビークルモードに変形し、スウォームに向かっていった。
「コンボイ司令官!!!!!」
敬愛されるサイバトロン軍のリーダーに、仲間の声が届いたかどうかは定かではない。
*
月の裏側から、地球を望遠できる面まで走行してきたサイバトロンたち!
「おい、そういえばウルトラマグナスはどこにいるんだ?」
アイアンハイドは困ったように言った。コンボイの遺言かも知れない命令を守れなくては、面目丸潰れである。
「オイラ知ってるよ! 月面の調査だとか言って、確か数多のクレーターの中心で床オナしまくってるって」
「やれやれ、探すのに手こずるな……」
「そんな事より、地球がなくなってら! あっちの方角にあったはずなのに」
バンブルが暗い天井なき空を指さした。広がる星々は、無限の暗黒を糧により輝きを我が物にしていた。
「本当だ……ン? おいあれを見ろ! ウルトラマグナスだ」
大きなクレーターの底で、巨体を誇る一人のトランスフォーマーが盛大な床オナを繰り広げていた!
「そ、その声はアイアンハイドか!? 今ちょうどいいところなんだ、邪魔しないでくれ……!!」
ウルトラマグナスは情けない声で応じ、腰と月の岩肌に挟まった細長い陰茎をズリズリと動かしていた。彼の腰使いはその熟達した所作からして、相当の経験と技量、そして熱意を感じさせる。
「ウ、ウオオア……イクッ!!!! アアアコンボイ司令官ンンン!!!!!!!!!!!!」
「見ろ、ウルトラマグナスの奴、司令官を想ってオナニーしてたんだ」
必死な床オナをする彼に対し、マイスターはシニカルな物言いだった。
「おい、そろそろいいかウルトラマグナス──コンボイ司令官からコレを預かっているんだ。受け取ってくれ」
マトリクスを与えられる意味は、今、賢者タイムの彼も理解していた。
「これが、コンボイ司令官の……ん? 中に精液が混じってるじゃないか!! どういう事だ!!!」
「そ、それは俺じゃない! コンボイ司令官がマトリクスニーをしたんだ!」
声を荒げるウルトラマグナスにつられ、つい語調を強めた弁明になってしまったアイアンハイド。しかし、ナンバーワンとなった彼は少しずつ穏やかな表情を取り戻す。
「こ、これはコンボイ司令の……グッ!! 舐めさせてもらう!!!!」
部下となった数名の戦士に囲まれ、彼はマトリクスをねぶりまわした。
*
その頃、当のコンボイ司令官は!!
「……スウォームよ」
コンボイは、自分の被造物ともとれる暗黒生命体と対峙していた。そして一人の意思ある生命体として、胸中に芽生えていた心情をぶつけたのである。
「いや、私の────子供よ」
赤子が原初の記憶を頼りに親を求めるのは、あまりにも自然な行為であった。だが、スウォームのアプローチは、暴力的に食したその記憶から機械的に『帰巣』する事しかできなかったのである。
多くの生命からすれば、スウォームの黒々しい外観とその破壊を超えた破壊は厄災でしかなかったが、その本質は極めて単純で、そして…………。
「お前は受け入れて欲しかったんだ。誰もがお前を憎む事しかできなかった。この世に生まれ落ちながら、自らの性質に苛まれ、多くの生命に疎まれ……お前は愛されたかった。肯定して欲しかったんだ。自分でも気づかなかっただろう、暗黒のその身には、母性が足りなかったんだよ」
スウォームに顔はないが、表情があるとすればそれは驚愕と安らぎ、どちらも内包しているものであったと考えられる。
「我が子よ、もう不安を糧になにかを喰らう必要はない。……さ、私の胸に飛び込んで来い!」
スウォームは従順に、ゆっくりとコンボイに向かって蠢き始めた。
…………コンボイの、ケツに。
「お、おい! そこは違うだろう!! やめろ!! おいよせ!!」
スウォームには、交尾の記憶が強烈に刻まれていたのである!! したがって、愛情表現はコレしか知らないのだった!!!!
「ホ、ホアアアアァァァアアアアッッ!!!!!!!!!」
この日、コンボイは多くの者の『母』となったのだという。
*
生殖という行為に、責任感と相補性を見出したトランスフォーマーたちは、戦争を休止した。それはあくまでも、休止であった。
「コンボイ司令、先日は大変でしたね……」
「ああ、スウォームが喰っていた地球の人々や国々、その全てを私が出産する羽目になるとはな」
ウルトラマグナスとコンボイが、金属生命体の闊歩する都市の一角で遠方の恒星を眺めていた。コンボイはスウォームを産み直し、同時にスウォームが喰らったものも、コンボイの産道を通って再び誕生した。
「まさか司令官のケツからサンフランシスコが出てくる場面に出くわすとは思いませんでした」
「私もだよウルトラマグナス……こんな経験は、あまりしたくない……おや、あれはメガトロン」
緑色の戦車が広大な道路を猛スピードで駆け、彼らに一直線に向かってくる。それは眼前でトランスフォームし、メガトロンとなった。
「やあメガトロン、私の息子よ。お前を生んだ時は大変だったよ、発砲するんだからな。ハッハッハッ」
コンボイは、自分の股ぐらからメガトロンの銃口が飛び出し、それがレーザー砲を撃ちまくったのを暢気に回想していた。
「お前がワシのママだと!? 冗談も大概にしろ! ワシはまだ征服を諦めたわけではないぞ、今ここにはデストロン軍がそこらじゅうに待ち伏せしているのだ」
オプティックセンサーをよく働かすと、遥か上空や道路の脇に、デストロンの兵士が隠れているのがわかる。
「……コンボイ司令! こんな奴ら、さっさとブチ犯して全員産婦人科送りにしてやりましょう」
「そう慌てるなウルトラマグナス──私は近親相姦は好かんよ。だが、母としてお尻をペンペンしてやるべきだな」
「ぅお、お尻ペンペンだと??!!」
「そうだぜメガトロン、私は司令ほど甘くないがな──!」
虚を突かれたメガトロンは、ウルトラマグナスの手によって押し倒された!! 成すがままに、メガトロンの膣にウルトラマグナスの物干し竿が挿入された。
「う──ウアオオオオオッ!!!」
「ハァハァ、こいつはたまんねえぜえ!」
「おい、程々にするんだぞウルトラマグナス。それにしても、こうなってはメガトロンも形無しだな」
メガトロンは声を押し殺すが、漏れた吐息はかえってウルトラマグナスを興奮させた。
「破壊大帝を名乗るのを辞めたらどうだ? もうお前は、淫乱大帝メストロンだ……ンッ!?! う、産まれる……!」
「! まずい、出産予定日的に、司令官が次に産むのは──」
人間たちの故郷、地球である!!!!!!!
*
両目がリペア不能となってから、基地の自室で寝静まり、エネルギーを摂取し浪費する日々を送っていたサンダークラッカーのもとにやって来たのは、スタースクリームだった。
「よおサンダークラッカー」
「…………生きていたのか」
サンダークラッカーは忘れ去られ──否、腫れ物のように扱われ、牢獄のようなこの一室に閉じこもっていた。外部とは一切連絡を取らず、情報を遮断しているので状況は知らないのである。
「──ああ、生きていたよ。お前、目が見えないんだってなア」
スタースクリームは、半透明になった自分の掌を眺めながら会話を続けた。
「…………その話はよしてくれ」
「なに、お前にとっていい話があるんだが──な、なんだ!?」
デストロンの基地を破って現れたのは、オメガスプリームであった!!
「最近セックス、シテナイ……オ前タチ、相手、シロ」
「ひ、ひいいっ」
サンダークラッカーはトラウマを煽られ、完全に正気を失っている。スタースクリームは、サイバトロン屈指の巨体に乗り移ってやろうとした……のだが!!!
「う、ウワアアッ!!! やめろ、お、お前のチンコなんて俺に這入るワケないだろうが!!!」
なぜか幽体のボディを鷲づかみにされ、オナホのように扱われるスタースクリーム!!
「挿レル」
スタースクリームの股が呆気なく裂けた。その後、彼らが……というより、この世界がどうなったのかは誰も観測していない。というのも──
オーガニズム作戦から始まったこの物語こそ、多くの時間旅行者や観測者が『母となったコンボイ』について話題を出すのをタブーとしている理由だから、である。
なお、この時空にも2005年にユニクロンが訪れたが、トランスフォーマーたちはユニクロンの内部でマスをかきまくり、ユニクロンを孕ませてしまっている。ベクタープライムは、この出来事が原因でユニクロンの眷属が存在していると嫌々ながら指摘しているが、実際にユニクロンの眷属が実子か否かの真相は不明である。